★ 当店店長 森 勉が独断と偏見で選ぶ ★
<ビーチ・ボーイズがカヴァーした曲 10選>



初めてビーチ・ボーイズを意識して聴き始めたのは1964年の初夏だったと思う。
その頃、日本でのラジオのベスト10番組では「夢のハワイ」がヒットしていた。
メンバーの名前もまだ知らなかったが、♪ゴー・トゥ・ハワイ♪
という甲高い裏声が妙に印象に残った。
そして、その曲の虜になり、シングル盤を買い、
ビーチ・ボーイズが大好きになった。

それから40年。
自分自身にとってファンになって40周年記念なんだ、と今、気づきました。
そのことがわかると『スマイル』がブライアンの手によって、
新録で発売される年が今年だなんてラッキー! 
個人的な40周年を祝ってくれているようで嬉しい。

さてそろそろ本題に。
彼らは色々なことを教えてくれた。
そのひとつはカヴァー曲によって
様々なジャンル、曲、アーティストに興味を持たせてくれたことだ。

中学、高校生の頃、まだ音楽を聴き始めで
その当時に人気のあったアーティストしか眼中にない時期だった。
まずは無意識にビーチ・ボーイズが歌っているということで耳から入り、
少したってから、これにはオリジナルがあり、
彼らが影響を受けたり、好きな曲なんだということがわかる。
ブライアン・ウィルソンが作る曲と同様にそんなカヴァー曲も
彼らの魅力を深く知る上で重要な要素であると認識するようになっていった。
しかし、1960年代は今と比べると圧倒的に情報は少なく、
彼らがカヴァーした曲について、あまりくわしく知ることもできなかったし、
そのオリジナル・アーティストの音源を聴く機会も少なかった。
1970年代に入り、映画「アメリカン・グラフィティ」のヒットなどあり、
1950〜60年代のレコードがたくさん再発されるようになった。
そのことにより、おぼろげだったものが徐々に晴れ、
ブライアンを始め、各メンバーの音楽的ルーツが感じられるようになってきた。

カヴァー曲の魅力を探ることにより、
オリジナル曲ももっと味わいが増してくるから不思議。
カヴァーはそのミュージシャンによっても、
ファンにとっても重要なポイントになるような気がする。
 


ビーチ・ボーイズは多くのカヴァーを発表している。
その中から、是非、気にとめていただきたいと思う曲を
スペースが許すかぎり、紹介していきます。


◆ 1.Graduation Day ◆



  1964年『ビーチボーイズ・コンサート』で初発表。
ライヴならではの楽しい余興を含んだものだが、
素晴らしいコーラスに圧倒された1曲。
長らく、このライヴ音源しか聴けなかったが、
1990年に発表された2in1での『トゥデイ/サマーデイズ』CD化の
ボーナス・トラックとして未発表スタジオ・ヴァージョンが初公開された。

      オリジナルはビーチ・ボーイズのコーラス・スタイルに
大きな影響を与えたフォー・フレッシュメンの1956年、全米17位のヒット。
卒業シーズンの情景を描いた詞とその郷愁漂うメロディーが心に残る。



◆ 2.Hushubye ◆



  1964年7月『オール・サマー・ロング』の1曲として発表される。
その2ヵ月後には「ウェンディ」「リトル・ホンダ」などを
収録した4曲入EP「4-by The Beach Boys」でも発売。

      1959年ニューヨーク、ブルックリン出身の白人ヴォーカル・グループ、
ミスティックスの全米20位のヒット曲を
オリジナル以上に緻密なコーラス・アレンジで練り上げている。
 作詞・作曲はエルヴィス・プレスリーの
「サレンダー」「リトル・シスター」「ラスヴェガス万才」、
コースターズ「ヤング・ブラッド」他、隠れた名曲としては
アンディ・ウィリアムス「キャント・ゲット・ユーズド・トゥ・ルージング・ユー 〜もう話さない」
など多くのヒット曲を書いたドク・ポーマス&モート・シューマンのコンビ。



◆ 3. I'm So Young ◆



1965年発表『トゥデイ』に収められている
ブライアンのリード・ヴォーカルが
実にいい雰囲気を醸し出しているドゥーワップ・ナンバー。
ビーチ・ボーイズとしては前半押さえ気味のバック・コーラスだが、
後半本領発揮といった感じのアレンジが素晴らしい。

      オリジナルはオハイオ出身の黒人ヴォーカル・グループのステューデンツ。
1958年にシングルが発売された時は、ヒットしなかったが、1961年に再発され、
ポップ・チャートには登場しなかったものの、R&Bチャート26位を記録した。
ステューデンツというくらいだから、10代の子たちだと思うが、
素晴らしく伸びのあるリード・ヴォーカルだ。

      この曲はフィル・スペクターのお気に入りでもあったようで、
ロネッツのリード・ヴォーカリストであるヴェロニカ(ロニー・スペクター)名義で
カヴァーされている。「So Young」というタイトルで1964年にシングル発売されたが、
残念ながらヒットには至っていない。
現在はロネッツのベスト盤CDでそのヴァージョンが聴ける。



◆ 4. Why Do Fools Fall In Love ◆



 1964年2月シングル「ファン・ファン・ファン」のB面として初お目見え。
この時はイントロにコーラスが入っていたが、
1ヵ月後に発売されたアルバム『シャット・ダウンVOL.2』には、
コーラス抜きの7.8秒短いヴァージョンが収録された。
フィル・スペクター的なアレンジでドゥーワップをカヴァーするという
ブライアンのアイデアに脱帽。

      オリジナルはニューヨーク、ブロンクス出身の
黒人ヴォーカル・グループ、フランキー・ライモン&ティーネイジャーズ。
1956年に全米6位(R&Bチャートでは3週間1位)の大ヒットを記録。
リード・ヴォーカルのフランキー・ライモンはこの時13歳というから、いやはやなんとも驚き。
      この曲は色々なアーティストにカヴァーされている。
フォー・シーズンズ、カリフォルニア・ミュージック、
ダイアナ・ロス、ジョニ・ミッチェルなど、
それぞれ個性豊かにカヴァーしたヴァージョンも一聴に値する。



◆ 5.Just Once In My Life ◆



  ブライアン・ウィルソンが復帰した1976年の『15ビッグ・ワンズ』に収録。
頼りがいのあるカールのヴォーカルにブライアンが絡み、
マイク、デニス、アルのコーラスが後半を締めるアレンジがいい。
このアルバムが発売された当時、
あまりにもしゃがれ声に変わってしまったブライアンにショックを受けたが、
あれからもう28年。時の経つのは早いものだ。
サウンドの方はこの当時の最新機器、ムーグ・ベースの使用
及び、ハル・ブレイン風のデニスのドラムスが重厚感を演出している。

   オリジナルは1965年全米9位のヒットとなったライチャス・ブラザーズ。
曲はキャロル・キング、ジェリー・ゴフィン、フィル・スペクターの共作。
プロデュースはフィル・スペクター。
ビーチボーイズのヴァージョンは充分すぎるほどスペクターを感じさせてくれる。
1976年当時のブライアンには好きな曲を取り上げることによって、
少しずつ昔の自分を取り戻したいという気持ちが
自分にも回りにもあったことがうかがえるカヴァーと言えるのではないか。
そんなことを思いながら聴くと、よりブライアンの声が沁みたりして…。



◆ 6.There's No Other ◆




スペクター作品が続く。1965年発表『パーティー』の中の1曲。
ブライアンが歌い出し、コーラスが加わってくる所のハーモニーが
さすがビーチ・ボーイズという感じ。

オリジナルは1961年に発表された
ブルックリン出身のガール・グループ、クリスタルズのデビュー曲。
1962年に全米20位のヒットとなっている。

後半、ジョニー,ビリー,ボビー,と男の子の名前を呼ぶ歌詞が出てくるが、
ビーチ・ボーイズのヴァージョンではそれが、
サンディ,シェリー,ウェンディ,と女の子の名前になっている。



◆ 7.Tell Me Why ◆




  これもアルバム『パーティー』に収められている。
きちんとしたスタジオ録音を残して欲しかったと思うくらいのいい雰囲気。
ブライアンのコーラス・アレンジメントも曲に新しい良さを与えている。
 オリジナルはビートルズ。
映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』で後半の劇場ライヴ・シーンで使われている。

ブライアンのビートルズ好きはよく知られているが、
今年2004年の"スマイル・ツアー"でリヴァプールを訪れた際、
御当地ならではの選曲ということで、
他では歌われなかったこの「テル・ミー・ホワイ」を
ファンの前で披露している。いいぞ!ブライアン! さすがにわかってらっしゃる。



◆ 8.I Was Made To Love Her ◆




  1967年末に発売された『ワイルド・ハニー』に収録。
当時、カールが気に入っていたということで取り上げたのだろう。
力のこもったハイトーンのヴォーカルは
カール、コーラスはビーチ・ボーイズならではの味が出ている。
1983年発表『レアリティーズ』にはラストにアカペラ・パートが加わったヴァージョンが収録。

  オリジナルはスティーヴィー・ワンダー17歳の時、1967年全米2位のヒット。
当時FENで聴いた時にこの曲を好きになったが、
ビーチ・ボーイズがカヴァーしたことを知って、
益々好きになってしまったことを思い出す。

 もう永遠の夢になってしまったが、
カールには彼の好きなR&Bのカヴァー・アルバムを出して欲しかった。

夢のラインナップは… 

          「スウィート・ソウル・ミュージック」(アーサー・コンレイ)
          「アイム・ユア・パペット」(ジェイムス&ボビー・ピュリファイ)
          「ハイヤー&ハイヤー」(ジャッキー・ウィルソン)
          「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」(スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ)
          「レッツ・ゲット・イット・オン」(マーヴィン・ゲイ)
          「カム&ゲット・ジーズ・メモリーズ」(マーサ&ヴァンデラス)
          「イッツ・オール・ライト」(インプレッションズ)
          「テル・イット・ライク・イット・イズ・」(アーロン・ネヴィル)

          と自分の好きな曲を並べてみました。



◆ 9.School Days ◆




  1980年発表『キーピン・ザ・サマー・アライヴ』に収録。
リード・ヴォーカルはアル・ジャーディン。
この当時のアルのヴァーカルは声がよく出ていて実にいい。
コーラスもイントロのアカペラでぐっと引きつけて、
あとは鉄壁のハーモニーが続いていく申し分ない構成だ。

ライヴでもこの当時よく歌われ、
近年やっと発売になった1980年のイギリスでの録音
『ライヴ・アット・ネブワース』(CD及びDVDも発売)の中にも
ゴキゲンなヴァージョンで収録されている。

  オリジナルはチャック・ベリー。1957年の全米3位のヒット。



◆ 10.Devoted To You ◆




  もともとは『パーティー』に収録されているが、
今回選んだのは2001年に発売になった未発表音源を
たっぷり収めた2枚組『ホーソン・カリフォルニア』からのもの。
パーティー・ノイズがない純正ヴァージョンを聴くことができる。
これは本当に嬉しい収録だった。
(『パーティー』の中の曲は、すべてノイズがないヴァージョンがあるはずなので、今後に期待。)

 ブライアンとマイクによるデュエットの曲で
素晴らしいハーモニーがクリアに聴こえ、より心に沁みてくる。
2人が学生だった頃から大好きな曲というのが伝わってくるストレートでいいカヴァーだ。

        オリジナルは1958年全米10位のヒットとなったエヴァリー・ブラザーズ。
ドン&フィルのエヴァリー兄弟の数多いヒット曲の中でも名バラードのひとつ。

他の人によるカヴァーとしては、
1978年発表のカーリー・サイモンのアルバム
『ボーイズ・イン・ザ・トゥリーズ』の中に収められている、
当時は夫婦だったジェイムス・テイラーとのデュエットがいい雰囲気だ。
シングル・カットもされ、同年全米36位のスマッシュ・ヒット。




◆ <オマケ> I Wanna Be Around ◆




  今回、発売の『スマイル』11曲目にメドレーの形で収録。
ブライアンがスタンダード・シンガーのように雰囲気たっぷりに歌っている。

  1963年にトニー・ベネットが全米14位のヒットを記録したジョニー・マーサーの作品。
ブライアンとヴァン・ダイクがどうしてこの作品を取り上げたのかは、現在のところ不明。




♪ 他にもビーチ・ボーイズは様々な曲をカヴァーしています。
チェックしてみてくださいね。

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