当店店長 森 勉による
 ♪ ブライアン・ウィルソン 『スマイル』を聴いての感想 ♪



<CD> ブライアン・ウィルソン 『スマイル』
国内盤は歌詞・対訳・解説付き。更にボーナス・トラック2曲収録!
2004年10月6日発売  WPCR 11916(税込 \2,625)

1.アワ・プレイヤー/ジー 2.英雄と悪漢 3.ロール・プリマス・ロック 4.バーンヤード 
5.オールド・マスター・ペインター/ユー・アー・マイ・サンシャイン 6.キャビン・エッセンス 7.ワンダフル 
8.ソング・フォー・チルドレン 9.チャイルド・イズ・ファザー・オブ・ザ・マン 10.サーフズ・アップ 
11.アイム・イン・グレイト・シェイプ/アイ・ウォナ・ビー・アラウンド/ワーク・ショップ 12.ヴェガ・テーブルズ 
13.オン・ア・ホリデイ 14.ウィンド・チャイムズ 15.ミセス・オレアリーズ・カウ 
16.イン・ブルー・ハワイ  17.グッド・ヴァイブレーション

<ボーナス・トラック>
 18.英雄と悪漢(インストゥルメンタル) 19.キャビン・エッセンス(インストゥルメンタル)



"LOOK! LISTEN! VIBRATE!"

<2004年にブライアン・ウィルソンが『スマイル』を発表するまで>



『スマイル』は1967年ビーチ・ボーイズが
『ペット・サウンズ』の次に発表する予定だったアルバムのタイトルだ。
その予告編というか契機付けのような形で発表された「グッド・ヴァイブレーション」は
非常に凝った音作りにも関わらず、
キャッチーなメロディ・ラインが多くの人に支持され、全世界的な大ヒットとなった。
テルミンというマイナーな楽器が一躍注目されるきっかけにもなったヒット・ソングでもある。
シングル「グッド・ヴァイブレーション」は1曲にも関わらず、
当時のシステムとしては考えられないような多くの時間と費用を
費やして録音されたものだった。
90時間以上のテープの中からブライアンが独自の感覚で
見事に3分間のポケット・シンフォニーに仕上げたものだった。
当時の音楽界の常識を越えて作り出された1曲でもあった。

ブライアンは「グッド・ヴァイブレーション」の手法で
あと何曲かを完成させようとしていた。
そして、その楽曲はそれぞれ独立したものではなく、
アルバム『スマイル』のためにきちんとコンセプトを持ち、
いくつかのテーマによって組曲風に仕上げられるはずだった。
ブライアンの直感に導かれて録音されたアイティアやメロディの素材は、
1枚のアルバムを作るのに充分すぎるほどにたまっていた。
しかし、レコード会社からの締め切りのプレッシャー、
メンバーからの制作に対しての異論など、
外部からのブライアンの創造力と実現力を否定するような動きが
大きな精神的苦痛になり、彼自身が制作を放棄するようになってしまった。
ビーチ・ボーイズとしての『スマイル』は未完成のまま、幻のアルバムになってしまった。



ブライアンはその後遺症もあり、
ビーチ・ボーイズのレコード制作においても第一線を退いてしまう。
1976年に復帰するが、健康及び精神状態は益々悪化することもあった。
1988年にソロ・アーティストとして1stアルバムを発表してからの約10年間に
ブライアンは音楽人として見事に復活した感があった。
ライヴ・ツアーを積極的に行なうようになった1998年からは
ブライアンの今までのキャリアをよく知り、尊敬している仲間達に囲まれ、
ファンがビックリするような企画を成功させている。
アルバム『ペット・サウンズ』全曲をライヴ披露しようなんてことも
素晴らしい出来でクリア。
そして以前は考えもしなかった幻のアルバム『スマイル』を
スタジオ録音としても完成させる…。

幻となってから37年。
ブライアンが歩んできた長い苦悶の日々を考えると、
とても普通の気持ちでは聴くことができないと思っていた。

が、しかし、1曲目のコーラスがスピーカーから出てきた途端、
そんな様々な思いはどこかに吹き飛んでしまった。

何と言ったらいいのだろう、とても吸引力が強く、包容力のある音楽がそこにはあった。

「英雄と悪漢」「キャビン・エッセンス」「サーフズ・アップ」「グッド・ヴァイブレーション」など
各パートのメインとなる曲は抜群のインパクトがあるし、
そこへ導いてくれる曲たちも素晴らしい流れを作ってくれている。


是非、多くの人に『スマイル』を手にとって、
見て、聴いて、感じてもらいたいものだ。


ブライアンの『スマイル』は懐かしくもあり、
新しいテイストもたっぷり盛り込まれたものだった。


2004年10月1日作成 森 勉

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