当店店長 森 勉による
ビーチ・ボーイズ フジ・ロック 2005 レポート!




                        <セットリスト>

                    1. Do It Again (Mike)
                    2. Surfin' Safari (Mike)
                    3. Catch A Wave (Mike,Randell)
                    4. Hawaii (Randell,Mike)
                    5. Dance Dance Dance (Mike,Randell)
                    6. Do You Wanna Dance (Bruce)
                    7. Surfer Girl (All,Bruce)
                    8. Don't Worry Baby (Randell)
                    9. Little Deuce Coupe (Mike)
                   10. I Get Around (Mike,Randell)
                   11. Good Vibrations (Randell)
                   12. Kokomo (Mike,John)
                   13. Sloop John B. (Chris,Mike)
                   14. Wouldn't It Be Nice (Randell,Mike)
                   15. California Girls (Mike,Randell)
                   16. Rock And Roll Music (Mike)
                   17. Help Me Rhonda (John)
                   18. Barbara Ann (Randell) <Mike&Bruceの踊りあり>
                   19. Surfin' USA (Mike)
                      [encore]
                   20. Summertime Blues (Mike,Chris)
                   21. Fun Fun Fun (Mike)




いつ聴いてもいい響きだ。
ビーチ・ボーイズがステージに登場する時のMC。

"フロム・サザン・カリフォルニア・・・ザ・ビーチ・ボーイズ!"

彼らのライヴを待ち望んでいたファンには、
まずそれだけで胸いっぱいになってしまうコールだ。


ほぼ定刻の17時半ごろ、8名のメンバーがステージに現れる。
マイク・ラヴはオレンジ、イエローを基調とした長袖のストライプ・シャツに長ズボン。
ブルース・ジョンストンは、ブルー地のアロハ風半袖シャツに短パンといういでたち。
久し振りに生で見る彼らを目の当たりにして、
ボーッと見とれている間に1曲目「ドゥ・イット・アゲイン」が始まる。

 しょっぱなの声の出が少し悪かったが、すぐに持ち直し、
その後は演奏もコーラスも申し分ない音が会場に届けられた。
 野外ということもあり、音に関してはあまり期待していなかったが、
予想以上の音の良さだった。
ちなみに、僕のいた場所は、ステージ一番前のブロックの一番後ろほぼ真ん中あたり。
(ステージまで約20mぐらいの位置)
ステージ両脇のヴィジョンも見たかったので、その場所にしました。

<ビーチ・ボーイズ ステージ上の写真はこちら!とこちら!>

 2曲目は「サーフィン・サファリ」、そして「キャッチ・ア・ウェイヴ」、
「ハワイ」、「ダンス・ダンス・ダンス」と初期の彼ららしい曲が続く。

 次は、ブルースがリードをとる「ドゥ・ユー・ウォナ・ダンス」。
声の衰えは否めないが、もうブルースが歌ってくれるだけでも幸せな気分。
初来日の1966年の時は、
この曲をデニス・ウィルソンがドラムスを叩きながら髪をふり乱して歌っていたんだよなぁ〜、
なんてことも思い出してしまった。
そんな感慨に耽っている間に、どんどん曲は消化されていく。
 この曲が終わったところで、腕時計を見るとなんと、
まだ始まって10分間ちょっとしか経っていない。

「まだ彼らと一緒にいれる時間は充分残されている」と思ってから、
やっと少し冷静な気持ちでステージを見られるようになった。

 そんな時に最高の選曲 ― 「サーファー・ガール」。
バンドのメンバーのハーモニーもいい感じだ。
観客も両手を頭の上で波のように揺らせて、この曲のリズムに合わせる。
マイクとブルースも歌いながら、その美しい光景に笑顔になる。
ライヴならではの幸せな瞬間だ。

「はるばる苗場まで来て、本当に良かった!」 
― その気持ちは次の「ドント・ウォーリー・ベイビー」にも持続。
ステージ向って左側の新加入、ランデルのファルセット・ヴォイスが冴える。
彼のファルセットは、他のバンド・メンバーとのバランス上も
ナチュラルな感じが出ていて良かった。


 9曲目は、マイクの十八番「リトル・デュース・クーペ」。
 実はこの日の朝、会場入りする時に最初に聴こえてきたのはこの曲でした。

 入り口ゲート横のCD/DVD販売ブースで、
ちょうど『ビーチ・ボーイズ/1964ロスト・コンサート』の映像が流れてやっていたのが、
まだ若い頃のメンバーによるこの曲。
そんなこともあり、そのDVD映像のように、
メンバー紹介をしながら、この曲を始めてくれれば、もう言うことなしだったのに・・・。
(結局、今回はメンバー紹介は無しでした。)

 でもこの曲で、マイクはハンドマイクを持ち、ステージ両端まで行ってファン・サービス。
その模様をカメラがマイクの後ろから捉え、ヴィジョンに映し出されたが、
その映像はなかなかいい絵だった。
"大観衆に向かって歌う64歳のマイク!" ― というキャプションを入れたくなった。


 続く3曲は、全米No.1ヒット3連発!
・「アイ・ゲット・アラウンド」  (手拍子乱打も楽し)

・「グッド・ヴァイヴレーションズ」
        (中間のブレイク後、'Gotta Keep Those Lovin' Good ・・・'を
         客に歌わせるのがなかったことが少し残念)

・「ココモ」  (隣で見ていた若い男の子が、
         'アールバ、ジャマイカ、バミューダ、バハマ、・・・、キーラゴ、モンティゴ'
          と、一緒にコーラスをしているのを耳にして嬉しくなってしまった。)

やはり、「ココモ」は今のビーチ・ボーイズの顔となる曲なんだな〜、と実感。しかし、
レコードでは聴けるあの印象的に切れ込んでくるカール・ウィルソンのヴォーカルはない。

カールがこの場にいてくれたら・・・、叶わぬ不埒な気持ちをも頭をもたげてしまった。

そんな複雑な心境を持ったファンのことなど置いていくぞ、
とばかりに、ビーチ・ボーイズのステージは続く。

ベーシスト(クリス・ファーマー)が、「スループ・ジョン・B」を歌い始める。
いい感じだ。後半のコーラスもきれいにきまって聴こえた。


 この日、個人的には一番良く聴こえたのが、
次の「素敵じゃないか(Wouldn't It Be Nice)」だった。

 なんてったって、アルバム『ペット・サウンズ』の1曲目だからね。
 苗場のフジ・ロック・フェス会場で流れるイントロのギター、本当に素敵でした。
そして、このバンドのハーモニーも。
 特に中間部(レコードで言うと1分40秒あたりから)のコーラスには、
新解釈も入ってなんとも心地良いものでした。

 とにかくあまり曲間を置かずにどんどん曲が進むので、
ゆっくり浸っている暇がないのが残念だが、そろそろ怒涛の寄りが始まる気配。
 「カリフォルニア・ガールズ」の12弦ギターによるイントロは、
いつ、どんな時に聴いてもその楽しさは変わることがない。
多くのファンがこの曲が1曲目と予想したのではないかと思うが、
マイクはラスト・スパートの1曲目にこの曲を選んだようだ。憎いね。

 そしてエンディング。
 ブルースが、'Wish They All Could Be ジャパニーズ・ガールズ!'と歌い、
日本のファンへの彼ららしい優しい心遣いを見せてくれた。
 ありがとうブルース。素晴らしい笑顔、いつまでも忘れないよ。

・「ロック&ロール・ミュージック」   (マイクのヴォーカルも熱を帯びてきたように感じた。)

・「ヘルプ・ミー・ロンダ」
            (キーボードのジョン・カウシルがハンドマイクでフロント・ステージに登場。
             力強いヴォーカルが印象的だった。・・・が、
             ここでまた不埒な気持ちが・・・。
            やっぱりこの曲はアル・ジャーディンの十八番だったんだよなぁって・・・。
            もうこの世にいないデニスとカールは無理だとしても、
            アルが今のビーチ・ボーイズのメンバーにいないのは残念。
      「ライヴ・バンドとしてカールのいないビーチ・ボーイズは、ビーチ・ボーイズじゃない」
            というアルの言い分は充分理解しているのですが・・・。)

・「バーバラ・アン」   (マイクとブルースが、老体に鞭打ったような<失礼!>ダンスを披露)

・「サーフィンUSA」
             (もう会場はみんなダンスダンスダンス状態。
              ちょっと余談ですが、この日最初に観たナックのこと。
              最後の曲はおきまりとも言える「マイ・シャローナ」だったのですが、
              後ろの方でのんびりシートに座ってみていた人の多くが、
              この曲が始まった途端、前の方に押し寄せて、
              ノリノリになっているのを目撃しました。
              ビーチ・ボーイズの時も「サーフィンUSA」が始まった時に
              そんなシーンが客席後方で展開されていたら、
              それはそれでオールド・ファンにとっては嬉しいのですが、
              どうだったのでしょうか?)


これで、一度メンバーは全員ステージを降りて、本編終了。
我にかえって時計を見ると、ここまで約50分。
アンコールの拍手が続く。
せっかく日本まで来てくれたんだから、
それにこちらも苗場まで来たんだから、もう少し演ってよ・・・。
― そんな思いでありました。


 楽屋まで戻らず、ステージ脇でスタンバイしていたメンバーは、
わりとすぐにアンコールに応えてくれた。
 
 細かな言葉はわからなかったが、
マイクが「夏だからね」みたいなことを言って始まったのが、なんと「サマータイム・ブルース」!
 あのエディ・コクランのカヴァーだ。
 ビーチ・ボーイズは、ファースト・アルバム『サーフィン・サファリ』の中で演っているが、
予想外の選曲で嬉しい。
それに、今回のヴァージョンは、彼ららしいコーラス付きときている。


 さあ、アンコール2曲目。
そろそろ、あの曲? と思っていたところに、ピッタリとはまる「ファン・ファン・ファン」!
最近のブライアン・ウィルソンのライヴでも盛り上がりの最後はこの曲と相場がきまっている。
マイク&ブルースのビーチ・ボーイズでもそれは同じだった。
この曲は本当に大好きな曲で、聴くのは楽しいし、高揚感も一番。


でもこの曲でコンサートも終わり、という意識も働いてしまう。
「ファン・ファン・ファン」で嬉しくもあり、淋しくもあり、複雑なのよね、ファン心理は・・・。
そうそう、マイク・ラヴのマイクロフォン・スタンドを逆さにして
ハンドルのように見立てるパフォーマンスも久し振りに見れて良かった。
あれをやってくれる限り、マイクも元気だということで。


楽しい時間は過ぎてみればあっという間。
2005年7月31日 日曜日。苗場スキー場でのフジ・ロック・フェスティヴァル。
グリーン・ステージ17時30分からのビーチ・ボーイズのステージは、
約55分。全21曲でお開きとなった。



行くことを躊躇していた時期もあったが、行って本当に良かった、というのが感想だ。
やっぱり、夏に野外で見れたのは収穫。

マイクとブルースしかいないビーチ・ボーイズでも、
やはりツアー・メンバーだったこの二人がいれば、
特にフロントマンとしてマイクがいて、
バンドのメンバーがしっかりした演奏とコーラスをしてくれれば、
それはライヴ・グループとしてのビーチ・ボーイズなのだろう、今は。
カール、デニス、アルがいないのは残念だが、時の流れはいたしかたない、と思わなければ。



あと思ったことを少し。

★ ビーチ・ボーイズをフェスに出演させてくれたフジ・ロックの関係者に感謝したい。
  いいものを見せてもらいました。ありがとうございました。
  今回は彼らとしても、日本での最高人数観客を前に演奏できたのだから。
  1966年は2000人収容のホール。
  1979年は江ノ島ヨット・ハーバー横の特設会場で約1万人。
  1991年は武道館。
  そして今回は一番大きなグリーン・ステージで約2万人。
  (実際はどのくらいかわかりませんが、このぐらいの人はいたのでは)
  ステージを去る時のマイクの満足そうな笑顔も印象に残っています。


★ そう言えば、開演前のサウンド・チェックで、
  「ゴッド・オンリー・ノウズ」のフレーズがピアノで弾かれたりしていました。
  いい余興でした。


★ コンサートの翌日、8月1日付の「スポーツ報知」では、
  写真入りでビーチ・ボーイズのフジ・ロック出演が報じられていました。

  気になるのは、"28曲演奏した"と書かれてあったこと。本当は21曲です。
  マスコミ関係者に配布されたセット・リストには28曲書かれてあったのでしょうね。
  あと7曲、演る予定があったということなの? なんだったんだろう?
  「リトル・ホンダ」、「シャット・ダウン」、「バラード・オブ・オール・ベッツィ」、
  「ガールズ・オン・ザ・ビーチ」、「ゲッチャ・バック」、
  そして「ディズニー・ガールズ」の7曲どうでしょう。
  僕の勝手な妄想です。


いろいろ書いてきましたが、なにぶん興奮した気持ちでのレポートですので、お許しを。
ライヴが終わってから10日間ほど、
自分の中で熟成させ落ち着かせたのですが、このありさまです。



ビーチ・ボーイズの様々なことは、僕にとって、あばたもえくぼなのです。


ではこのへんで、また、いつか。


2005年8月12日 森 勉



トップへ
トップへ
戻る
戻る


PET SOUNDS RECORD
Good Timin' (コラム)
VOL.6  FUJI ROCK FESTIVAL '05 観戦記