PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2006月10月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2006年10月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲の1曲”はこちらのページをご覧ください>


2006年10月1日(日) ビビ・グラ 「サントロペのお嬢さん」

 待ってました!! 
と声をかけたくなる曲がCD化されました。

 本当に少ない人しか知らない、というか、1960年代中期の洋楽のヒットパレード好きのみが知っている曲だと思います。

 日本では1967年春に公開されたフランス映画「大混戦」の主題歌として当時ちょっとヒットしました。
 映画の主演は『ファントマ危機脱出』(なんと!最近、渋谷の映画館でリヴァイバル上映されていたんですね)などでお馴染みだった喜劇役者のルイ・ド・フェネス。彼の大袈裟な身振り・手振りの演技が大好きでした。

 この曲を歌っている“ビビ・グラ”は、本来は女優で映画ではフェネスの娘役で出演してお色気をふりまいていました。

 ♪ ドゥリュ・ドゥリュ・サントロペ ♪
というリフレインが覚えやすく、一度聴いたら忘れられないフレーズです。ちなみに“ドゥリュ”というのは、ダンスという意味らしいです。
 ♪踊れ、踊れ、サントロペ ♪ 
 うれしいうれしいCD化です。森 勉

(『栄光のラジオ・デイズ・ヒッツ2』(KICP-1196 \2,500)に収録。)

★10月2日(月)は店舗休業日になります。ご了承くださいませ。

2006年10月2日(月) あした順子・ひろし 「僕の社交会」

 新宿末広亭へ柳家小さん六代目襲名披露興行へ行ってまいりました。

 落語界では古くから伝わる名跡を継いでいく慣習があり、今回は江戸時代から伝わる“小さん”という大名跡を、約5年前に亡くなった5代目小さんの息子(長男)である柳家三語楼が継ぐことになり、そのお披露目興行、というわけです。

 柳家の大名跡襲名、ということもあり、出演者も三遊亭円歌師匠、鈴々舎馬風師匠、橘家円蔵師匠といった会長クラスの古参噺家から、柳家権太楼師匠、柳家喬太郎師匠、柳家小ゑん師匠、柳亭市馬師匠(本日は口上参加のみ)など現在脂の乗りきった勢いのある噺家が並び、非常に充実した会でした。(六代目小さん師匠は「宿屋の富」をみっちり)

 その中にあって、僕が見て一番感慨深かったのが、実はこの漫才コンビ“あした順子・ひろし”。
 ひろしさんはもう今年で84歳(!)だそうだ。 最初舞台に上がってきたときは「久々に見るけど大丈夫かな?」と思っていたけれど、噺が進むうちにどんどんテンポが良くなってきて、お決まりのダンスを踊るシーンは本当に見ていて嬉しくなりました。

 連日の興行でお疲れかもしれませんが、是非これからも末永く寄席に出演していって欲しいものです。森 陽馬

★ちなみにCDもちゃんと出ています!
写真はあした順子・ひろし傑作漫才集(COCJ-33287 \2,100)。3話入。

2006年10月3日(火) Stanton Moore 「When The Levee Breaks」

 10月4日新譜が色々と入荷。【JET新作、リトル・バーリー新作、サラ・ブライトマンのベスト盤、忌野清志郎新作(スティーヴ・クロッパー・プロデュース!ナッシュビル録音)、吉井和哉新作、band apart新作、bird新作(冨田恵一プロデュース!)等】

 火曜日は新譜入荷日となることが多いので、その日の入荷してきた新譜を店頭でかけて聴きながら入荷処理、がCD・レコード店店員・毎週火曜日の慣例、となっているのです。
 まあ本来なら、その日一番多く仕入れしている新譜商品をかけることが営業的にも好ましいわけですが、それはやはりレコード店員も人間ですからね。好みもあります。

 というわけで、僕が今日一番最初にCDの封を切って(もちろん後で購入する)、入荷処理しながら聴いたのがこの1枚。スタントン・ムーア『V』(UCCT-1172 \2,548)

 スタントン・ムーアは、ニューオリンズ発の新世代ジャズ・ファンク・バンド“GALACTIC (ギャラクティク)”の超ファンキー・白人ドラマー! このアルバムがソロ3作目。
 なんとあのニューオリンズの観光名所として知られるプリザヴェーション・ホール(現在は閉鎖してしまっているそうだ)で録音したという1枚なのですが、さすがスタントン・ムーア、ガンガン叩きまくってます! オルガン奏者ロバート・ウォルターと格闘しているかのようなB曲目などは、後半これでもかっ!ってくらいガッツン・ガッツン!鬼のような気合ソロ爆裂! これがあの小さいほったて小屋のようなプリザヴェーション・ホールで録音されたっていうのが素晴らしい。

 ちなみに今日のこの1曲はその3曲目「Big 'Uns Get The Ball Rolling」にしようと思ったのですが、こんな曲もやっていたので、そっちを取り上げました。(「When The Levee Breaks」はレッド・ツェッペリン大名盤『4』のラストに収録されている曲のカバーです。) 森 陽馬

2006年10月4日(水) 忌野 清志郎 「激しい雨」

 喉頭癌と診断され、現在療養中の忌野清志郎が、休養前にナッシュビルまで赴き録音した作品『夢助』(“ユメスケ”と読む)が遂に発売。(UPCH-1520 \3,100)

 ブッカーT&MG'sに在籍し、ブルース・ブラザーズ・バンドのメンバーとしても有名な白人ギタリスト、スティーヴ・クロッパーがプロデュース。ナッシュビル録音ということで、バックのサウンドはガチャガチャしたところが全くなく落ち着いた演奏で、清志郎のワイルドな歌声を引き立たせています。

 どの曲も清志郎節が全開で、印象的なフレーズや歌詞が心に響く1枚ですが、特に3曲目に収録されている「激しい雨」にはジーンときました。

 ♪ RCサクセションがきこえる  RCサクセションが流れてる ♪
こう歌われるこの歌は、RCサクセションでも盟友であった仲井戸麗市との共作曲。清志郎のハーモニカ・ソロも最高にかっこいい!

 アルバム・タイトルは『夢助』ですが、ブックレットの裏側には一言、“DREAMER”の文字が・・・。
 夢を追い続ける男、“DREAMER 清志郎”からのメッセージを聴け。 森 陽馬

2006年10月5日(木) 忌野 清志郎 「オーティスが教えてくれた」

 この曲名で歌われている“オーティス”とは言うまでもなく、“オーティス・レディング”のこと。

 オーティス・レディングは、1960年代に活躍したSOUL/R&B界を代表する名サザン・ソウル・シンガーで、その情熱的なシャウトのみならず、代表曲「These Arms Of Mine」で聴けるようなこの上ないやさしさをも内包した歌声が魅力の“キング・オブ・ソウル”なヴォーカリスト。
 
 彼は67年12月に飛行機事故で急逝してしまっていますが、そのオーティスの魂が宿るかの如く、清志郎流サザン・ソウルを聴かせてくれるのがこの歌「オーティスが教えてくれた」。

 なんといっても、この入魂のナンバーを“スティーヴ・クロッパーが作曲し、プロデュースした”というのが最大の肝だろう。

 スティーヴ・クロッパーは、1960年代の南部ソウルを支えたと言っても過言ではないスタックス・レーベルを代表するバンド、ブッカーT&MG'sのギタリストであり、オーティス・レディングとも当時セッション、レコーディングに参加したこともある名プレイヤー。その彼が作曲したこのナンバーに清志郎が熱い詞を乗せたのが“OTIS TAUGHT ME”(これが英語タイトル)というわけだ。

 オーティスが亡くなって来年で40年。だが、今でもその“魂―ソウル・スピリッツ”は歌い継がれている。今から10年後、いや100年後にもそのスピリッツは受け継がれていくのだろうか?
 「清志郎が教えてくれた」と歌う、新しい世代の本当の“魂”を持ったシンガーがこれから出てきてくれることを切に願って止まない。森 陽馬

2006年10月6日(金) Little Barrie 「Pretty Pictures」

 格差社会、などと言われますが、ここ最近の音楽業界でもそれは顕著。
 以前は10万枚以上売れているミュージシャンがいれば、数千枚クラスのアーティストもたくさんいて、その個々のアーティストの個性が尊重されればセールスが上がらなくても、アルバムを続けて出していくことができ、それによってそのミュージシャンの成長も窺えたものなのですが、利益優先の現代社会では売れなければ即アウト! 1stアルバムが売れたとしても2ndアルバムが失敗するとすぐに業界から消えていってしまう、というアーティストが少なくありません。

 昨年ラジオでも楽曲がガンガンON AIRされ、1stアルバムがヒットしていたこのリトル・バーリーも、正直言ってこの2ndアルバムは個人的にあまり期待していなかったのですが、先日発売日に聴いてビックリ! 1stをも凌ぐような黒っぽいグルーヴ感に溢れたロック魂がギッシリ詰まっていて、とてもかっこいい1枚でした。(『Stand Your Ground』 HSE-30098 \2,300)

 リトル・バーリーは、ロンドン出身の3人組バンド。トリオ編成なので、サウンドはいたってシンプルなロック・サウンド。特に目新しいことをやっているわけではないのですが、キャッチーな節回しの楽曲とソリッドな演奏、古臭いロックの息吹が沁みついているかのような雰囲気が全体に漂っていて、聴いていてとても好感が持てる“イイ”バンドなのです。
古臭い昔っぽいロックをやっているけれど、ここ最近の新しいバンドを聴いてみたい、という方に特におすすめ。

 変に路線を変えたりせず、末永くこのスタイルで活動し続けていって欲しいものです。森 陽馬

2006年10月7日(土) Charlie & The Hot Wheels 「I Do」

 私事ながら、今日は店を途中で抜け出して、チャーリー&ザ・ホット・ホイールズのワンマン・ライヴat 新宿DOCTORへ行ってまいりました。

 今年最後のライヴ(早くも年忘れライヴ)ということもあり、ここ最近はやっていなかった古い曲から様々な名曲カヴァーまでガンガン連発・失禁寸前の約1時間半。いや〜楽しかったです。

 ライヴでよくやっているトレイドウインズの名曲「New York's A Lonely Town」だけでなく、先日の『首都高有鉛伝説』に収録されたビーチ・ボーイズ「Little Honda」、更にはゲイリー・アッシャー作「Hot Rod High」なんてレア・ナンバーまで登場! いやー、まさか西新宿の小さいライヴ・ハウスで「Hot Rod High」が生で聴けるとはね♪ さすがチャーリー&ザ・ホット・ホイールズ!

 途中、名ギタリスト、ロッキン・エノッキーさんがゲストで登場してやった「Do You Wanna Dance」(オリジナルはボビー・フリーマン)とかも最高だったけど、一番の驚きはアンコールでいきなりやった「I Do」!
 ブライアン・ウィルソン作の隠れた名曲と言われるナンバーで、元々はブライアンがキャステルズというグループに書き下ろした曲なのですが、現在ビーチ・ボーイズの名作アルバム『サーファー・ガール』のボーナス・トラックに、当時は発表されていなかったビーチ・ボーイズ・ヴァージョンの「I Do」が収録されており聴くことができます。山下達郎さんがカヴァーしていることでも有名(『レアリティーズ』に収録)ですね。

 ・・・と、なんかカヴァーのことばかり書いちゃいましたが、彼らの魅力は日本語のオリジナル曲でもあるので、是非アルバムも買って聴いてみてください。来年こそは乞う・フル・アルバム発売! 森 陽馬

★ジャケットはビーチ・ボーイズの名作3rdアルバム『Surfer Girl』。
今度11/15には特別価格\1,500で『Surf's Up」と共に限定再発されます。

2006年10月8日(日)デイヴィッド・ガーフィールド等 「ダンス・ダンス・ダンス」

「村上春樹の作品の中で一番好きな作品は?」
という質問をされたら、僕の場合はほぼ必ず『ダンス・ダンス・ダンス』と答えています。(厳密には『風の歌を聴け』からの初期3部作+『ダンス・ダンス・ダンス』の繋がりが、という答えの方が適切かもしれません)
 後半(ほとんどラスト前)の壁を抜けていく描写の部分が当時大好きで、その部分だけ何度も読み返したものです。

 さて、多くの読者を魅了する作家・村上春樹。今や世界的な知名度となりましたが、その彼の作品に魅せられたミュージシャンが、小説から受けたイメージを音で表現する、というインスパイアード・アルバム、その名も『アメリカから届いた10のオマージュ』というCDが先日発売になりました。(XQBL-1001 \2,800)

 各曲が小説タイトルの曲目、もしくは小説内に登場した楽曲のカバーとなっており、マイケル・ブレッカー、ロン・カーター、「コーリング・ユー」で有名なジェヴェッタ・スティール、ケニー・ランキンなども参加。曲によって参加アーティストが違うのですが、全体的にはジャズ・アレンジ中心。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』からは「エンド・オブ・ザ・ワールド」、『国境の南 太陽の西』からは「国境の南」といった具合の選曲なのですが、『ダンス・ダンス・ダンス』も選ばれています。

 以前、何かの本でも読んだことがあるのですが、やはりこの『ダンス・ダンス・ダンス』は、50年代から活躍している黒人コーラス・グループ“Dells”の曲「ダンス・ダンス・ダンス」から取られているのですね。僕は同名異曲のビーチ・ボーイズ「ダンス・ダンス・ダンス」の可能性もまだ捨てきれない、という気がしないでもないのですが、とにかくもこのオマージュ・アルバムでは、Dellsの「ダンス・ダンス・ダンス」のカバーが収録されていました。
 演奏しているのは、デヴィッド・ガーフィールドが中心となったバンドで、80'sフュージョン/クロスオーバー的なアレンジのインストでカバーしています。

 余談ですが、10年後、もしビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ50周年盤』が発売になったら、是非、村上春樹氏にライナー・ノーツを書いてもらってそれを読んでみたいなあ、と個人的に思っています。森 陽馬

2006年10月9日(月) The Kinks 「Till The End Of The Day」

 キンクス独特のギター・リフが強調された初期1964年から1966年あたりの曲は、今でも新鮮な響きを失っていません。

 ラジオからイントロが流れてきたとき、「なんて凄いイントロなんだろう!」と思った「ユー・リアリー・ガット・ミー」。
 FENだったので、きっとアメリカ盤をかけていたのでしょうね。ちょっとつぶされ気味の迫力ある音は、なんとも言えぬ雰囲気だったのです。
 キンクスでもビートルズのように、アメリカ盤仕様の選曲と音質でBOXを作ってくれるとうれしいですね。エコーが必要以上にかかった疑似ステレオの音が懐かしい。

 さて、「オール・デイ&オール・オブ・ザ・ナイト」、「タイヤード・オブ・ウェイティング・フォー・ユー」、「セット・ミー・フリー」と立て続けに放ったヒット曲もいいのですが、1966年(ボクのキンクス、ということでは後期?)の「ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・デイ」。
 これまた歪み気味のギターの音がたまりません!森 勉

2006年10月10日(火) Ronnie Lane 「Barcelona」

 1960年代英国モッズ・ブームで、The Whoと並び人気のあったグループ、“スモール・フェイセズ。スティーヴ・マリオットが脱退した後、ロッド・スチュアート&ロニー・ウッドが加入した“フェイセズ”。

 そのどちらにも在籍しバンドを支えていたロニー・レインは、ソロ作をたくさん出しているわけではないのですが、僕はどの作品も大好きです。英国人でありながらも、アメリカのシンガー・ソングライター的な音作り・雰囲気を持ち合わせているからでしょうか? とにかくも多発性脳脊髄硬化症という難病のために1997年に逝去してしまったのが悔やまれます。

 このアルバム『See Me』(AIRAC-1254 \2,730)は1979年発表。実質的には最後のオリジナル・アルバムになってしまいましたが、彼の暖かい人柄が曲と詞に表われていて、何時聴いてもほのぼのできる1枚です。

 その中でも5曲目に収録されている「バルセロナ」は心沁みるイイ曲で、なんとエリック・クラプトンとの共作曲。クラプトンは“らしい”渋いギターも弾いてます。森 陽馬

2006年10月11日(水) 布谷文夫 「冷たい女」

10月12日(木)19時より、ナイアガラ音頭でお馴染みの布谷文夫さんが、原宿のBlue Jay Wayというライヴ・ハウスで、ライヴを行います。

 なんとゲストに元はっぴいえんどの名ギタリスト、鈴木茂さんも出演予定、とのことなので、見に行こうかな、と思っていたのですが、ちょっとスケジュール的に店を抜け出すのは無理そうなので、見に行けそうな方は是非。

 「冷たい女」が収録されているこのアルバム『悲しき夏バテ』は73年発表のアルバムでA面5曲を大瀧詠一さんがプロデュース。30年以上経った現在は、この写真よりも老けた面持ちではありますが、自らの情念を全て吐き出すような強烈なブルース・シャウトは健在。
 最近は、「12月の雨の日」などのはっぴいえんどナンバーのカバーも時折やっていますので、久々にその曲での鈴木茂のギター・ソロを聴けるかもしれませんね。

 ちなみにBlue Jay Wayは、大人がくつろげる落ち着いた雰囲気が評判のライヴ・ハウスでしたが、今年いっぱいで閉店してしまうそうです。森 陽馬

2006年10月12日(木) Marlena Show 「California Soul」

マリーナ・ショウ、というとBlue Noteレーベルから1975年に発表したアルバム『Who Is This Bitch Anyway』が有名ですが、1969年録音された隠れた名作『The Spice Of Life』が先日、国内初CD化されました。(UCCU-3062 \1,800)

 今作はソウル・ジャズの名盤を数多く輩出したカデット・レーベルからリリースされたアルバムで、ブルースマンのT・ボーン・ウォーカーのカヴァーから、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作、そしてバリーマン&シンシア・ウェイル作など多彩な選曲でも楽しめる1枚。

 その中でも白眉はやはりこの名曲「California Soul」。
 モータウンの名曲を数多く書いているアシュフォード&シンプソン作。
マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルのデュエット・アルバムでヒットしたのが有名ですが、このマリーナ・ショウのヴァージョンも、グルーヴィーな演奏とオーケストラとの組み合わせが絶妙なアレンジで、彼女の伸び伸びした歌唱に合っている印象。

 今回のこの再発は、サバービアの橋本徹さんが監修したシリーズの中の1枚で、他にもミニー・リパートンが在籍していたニュー・ロータリー・コネクションの世界初CD化なども含まれており、値段も安いのでオススメです。森 陽馬

2006年10月13日(金) 黒沢 秀樹 「透明なBlues」

 黒沢秀樹は、90年代に活躍したグループL⇔R(エル・アール)に在籍していたギタリスト/シンガー・ソングライター。
 L⇔R活動休止後、あまり表立った活動はしてませんが、プロデューサー、アレンジャー、ギタリストとしてはもちろん、インディーズからコンスタントに良質な作品も発表してます。基本的にはその作品群は彼の公式サイでのネット通販、もしくは一部店舗のみの販売に限定されているのですが、遅ればせながら当店でも取り扱いを開始しましたので、ご紹介しましょう。

 2004年に発表された『winter』、『spring』に続いて今年4月に発売された今のところの最新作『summer』(OH-604 \1,500)は4曲入りのミニ・アルバム。“バンドで録った!”という意気込みを感じさせる1枚でどれも粒揃いの楽曲ですが、僕はラスト4曲目に収録されているこの「透明なBlues」に一番グッときました。

 タイトルに“Blues”とついていますが、メロディーがBlues調、というわけではありません。僕の私見ではありますが、ここで歌われている“Blues”とは漠然とした音楽ジャンルや言葉としての“Blues”というのではなく、自らの“魂”、“心”を表す暗喩のような意味合いが強いのではないでしょうか?

 その自らの心の奥底にあるもう1人の自分自身の“Blues - 魂”を奮い立たせるかのような演奏と歌声、そして彼のギターが程良く熱くROCKしていて、とてもかっこいいナンバーです。
 ポップな側面はもちろん、こういうロックな気持ちを内に秘めつつ時折ナイフのような切れ味でズバッと差し出す楽曲をこれからも期待しています。森 陽馬

2006年10月14日(土) Zilla 「Crouching Camel」

 現代ジャム・バンドの中でも実力・人気共に最右翼のバンド、ストリング・チーズ・インシデント。今年のフジ・ロックで彼らの痛快なライヴに打ちのめされた方も多いことでしょう。
 この“Zilla”(ジーラと読むのかな?)というグループは、そのストリング・チーズ・インシデントのドラマー、マイケル・トラヴィスがやっている別ユニットなのですが、これがなんとも不思議かつ強烈な個性を持ったバンドなのです。(『All Is』 SCIFI-1040 \2,499)

 彼らのやっている音楽を一言で表すと、“サイケデリック・エキゾチック・トランス・エレクトロニカ・インスト・ジャム”!

 オドロオドロしいジャケットのいかがわしさもさることながら、音もそんじょそこらの音響・エレクトロニカとは一線を画した飛び具合! 夜中聴いていると、漆黒の宇宙へトリップしてしまうような甘美な悪夢を見れること必至! サイケデリックなトランス・インプロヴィゼーションが2枚組CDにこれでもか、というくらいに繰り広げられます。

 エレクトロニカ的でありながら実はバンド編成のインプロ100%、というのも面白くて、ギター、ベース、ドラムにエレクトリック・カリンバ、サンプラーなどを重ねた音世界は、一度ハマってしまったら底なし沼のように脱出困難になる危険性あり。ROCKファン、ジャム・バンド好きの方よりも、CLUB系、エレクトロニカ・ジャズお好きな方にオススメ。ロータス気に入った方なら注目のユニットです。森 陽馬

2006年10月15日(日) The Smith Connection 「Angel Girl」

店入ってすぐ前の特設コーナーは、現在“ソウル名盤・定番”特集。
 2年前に当店で作成したフリーペーパー“SOUL MUSIC GUIDE”を見返してみたら、この2年の間に新たに出直しになった名盤などが色々とあったので、現在そのフリー・ペーパーは改訂中。来週中には店頭でご自由にピックアップできるように展示いたしますので少々お待ちください。

 さて、そのソウル名盤の中でもこれからの季節にピッタリの“スウィート・ソウルの定番アイテム”といえばこの1枚。

 スミス・コネクションはマイケル・ラヴ・スミスを中心とした兄弟ヴォーカル・グループで、このアルバム『Under My Wings』(PCD-22227 \2,310)が72年発表の1stアルバム。

 普通、スウィート・ソウルの名盤といってもアップ/ミディアムのナンバーが1曲くらいはアルバムに入っていたりするのですが、この作品は全11曲すべて甘〜いバラード・ナンバー。
 しょっぱなの1曲目「The Day You Leave」から、エレキ・シタールの音色/メロディーが切ない恋心?をくすぐります。

 ソウル・マニアの方々には「イイのはその1曲のみ」、とか、「全部同じ感じ」なんて悪口を叩かれているかもしれませんが、僕は10曲目に収録されているこの「Angel Girl」も大好きな1曲。秋の夜長はこの曲のサビの泣きのメロディーに酔いしれてください。森 陽馬

★10月16日(月)は店舗休業日になります。ご了承くださいませ。 

2006年10月16日(月) Sam Cooke 「Feel It」

ソウルのライヴ盤には名盤が多い、というのは僕の勝手な思い込みかもしれませんが、実際ロックのライヴ盤に比べて、臨場感あふれる音源が多いような気がします。

 このサム・クックの名作ライヴ盤もお気に入りの中の1枚。(『ライヴ・アット・ハーレム・スクエア 1963』 BVCM-37671 \2,100)

 1963年に行われ録音されながらも、黒人でありながらソフトな歌唱法で人気のあったサム・クックが黒人聴衆を前に激しくシャウトしまくるこのライヴ音源を、当時のレーベル担当者が彼に相応しくない、と決め付けお蔵入り。結局、サムがすでに亡くなった1985年にやっと発売された、といういわくつきのライヴ盤ではありますが、このライヴには確かにサムの“魂ーソウル”が宿っていますね。

 今年1月に音がリマスターされ、ジャケットも変わって再発売されましたが、僕は前のジャケットの方が好きだったかな。(今回のも悪くはないのですが・・・) 
 
 いつかこのライヴCDのデラックス・エディションとか出て、サムのこういう未発表ライヴ音源がドッチャリ入ることを期待しています。(映像とかもないのかな?) 森 陽馬

2006年10月17日(火) Lesley Gore 「Not The First」

レスリー・ゴーア ・・・ 実に懐かしい響きの名前です。
 1963年のヒット「イッツ・マイ・パーティ」にはギリギリ間に合わなかったのですが、1964年の「メイビー・アイ・ノウ」、「ルック・オブ・ラヴ」(いつかこの“今日のこの1曲”で取り上げたいと思っている大・大・大好きな曲!)を聴いて以来、ファンになりました。

 当時は17〜8歳のティーン・ポップ歌手だった彼女も今年60歳。
 このアルバムは2005年に発表。特殊なルートでしか流通していないもののようですが、めでたくペット・サウンズ仮店舗にも入荷してきました。

 サウンドは実に渋い作りで、レスリーの声も若い時に比べるとずいぶんハスキー。夜聴いていると、沁みてくる1枚です。
 「You Don't Own Me (恋と涙の17歳)」の再演も良かったのですが、一番気に入ったのは彼女の自作曲「Not The First」。
 カーペンターズの「Close To You」を思わせるピアノのリフが印象的な曲で、サビの部分でちょっと声を張るところなどは昔の彼女の面影を伝えてくれます。

 しばらくは毎日店頭でかかっているでしょうね・・・。ハマリました。森 

2006年10月18日(水) 流線形 「レインボー・シティ・ライン」

この“流線形”というグループ。皆さんはご存知でしょうか?

 クニモンド瀧口という男性のソロ・ユニットなのですが、そのユニット名からわかる通り、サウンドはもう完全に80'sシティ・ポップ!(ヴォーカルは全編女性ヴォーカル)
 RCA時代の山下達郎、ティンパンアレイ系ミュージシャン、ユーミンなど、“その時代”の日本ポップスがお好きな方なら、もう絶対に一聴の価値あり!の1枚です。(『TOKYO SNIPER』 HRAD-19 \2,520)

 この「レインボー・シティ・ライン」という曲名も、吉田美奈子さんの75年発表名曲「レインボー・シー・ライン」(作曲:佐藤博)を意識したものでしょうし、肝心の楽曲の方も、アンサー・ソング的(実際にはアンサー・ソングとは言わないかもしれませんが)な曲調で、佐藤博さんのキーボードを彷彿とさせるようなエレピ/ローズを全編に配しています。

 こういうのを聴くと必ず、“パクリ”だとか文句をつける人が出てくるかもしれませんが、アルバム全体を聴いてもらえば、もうここまでやれば文句無し!というくらいの素晴らしいこだわりぶりにまず感心するハズ。
 各曲の所々・端々に、様々なシティ・ポップの元ネタ、というかエッセンスが散りばめられていて、なおかつそれを新しい21世紀のポップスとして昇華しているのは本当にお見事! ドライヴしながら聴くのにバッチリ合いそうですね。

 パリス・マッチと共に、これからの“21世紀型日本シティ・ポップス”界を担っていって欲しいアーティストです。森 陽馬

2006年10月19日(木) John Mayer 「Waiting On The World To Change」

昨日18日(水)、深夜遅い帰宅になりしばらくしてからラジオをつけると、J-WAVEで大貫妙子さんがDJを務める新番組“The Universe”がちょうど始まったところでした。

 夜中の3時から明け方5時まで2時間。(FAX・メールでのメッセージをその場で紹介しているから生放送!) 早く寝なきゃと思いつつも、素晴らしい選曲についつい聴き入ってしまって、結局最後まで聴いてしまいました。
 深夜だからこそというのもあるかもしれませんが、本当に理想的なラジオ・プログラムで、おそらくこれからも僕は録音ではなく、水曜日は“楽しい夜更し”をしながらリアル・タイムで番組を楽しんでいこうと思っています。

 さて、その昨日の番組で大貫さんが大推薦していたのが意外?にも、ジョン・メイヤーの新作。
 彼は、現代のアメリカを代表する新世代シンガー・ソングライター&ギタリストで、すでにアメリカ最大の音楽賞であるグラミーも受賞していますが、そんな彼が先月発売したのが、オリジナル・アルバム3作目となるこの『Continuum』(SICP-1139 \2,520)。

 ラジオでは、彼の「Waiting On The World To Change」をかける前に大貫さんが歌詞を朗読してくれて、歌の意味、というか良さを伝えてくれました。こういうことは当たり前のようでいて、実は本当に意義深いことだと思う。
 このラジオを聴いていた人達は、ジョン・メイヤーの新作はもちろん、“様々な音楽を噛み締めるように楽しむ”、という音楽と触れ合う原点を改めて実感したはずだ。

 ちなみにこのアルバムのバックはスティーヴ・ジョーダン(Ds)、ピノ・パラディーノ(B)という強烈なトリオ編成が中心。歌だけでなく、ジョン・メイヤーの持ち味である切れ味鋭いギターも聴き所です。森 陽馬

2006年10月20日(金) Incredible Bongo Band 「Apache」

 もうお気づきになった方も多いと思いますが、トップページの写真を変えてみました。来年3月オープン予定の新店舗予定地の写真です。
 駅も地下化になって最近は様変わりした武蔵小山駅周辺の写真も含め、近々コラムコーナーにでも掲載しようと思っておりますのでその際はよろしくお願い致します。

 さて、このインクレディブル・ボンゴ・バンドというのは、アメリカのエンターテイメント界で活躍しているマイケル・ヴィナーという人が1970年代に友人とやっていたインスト・バンドで、ジャケットやアーティスト名からもわかる通り、パーカッションを前面に出したファンキー・インストゥルメンタルが持ち味。

 当時2枚アルバムを出していたようなのですが、その2枚全曲をこのCD1枚に全て収録。更にボーナス・トラックも追加収録されて輸入盤で先日再発されました。(以前P-VINEから国内発売されていたCDは既に生産中止)

 シャドウズで有名なインスト名曲「アパッチ」を彼らがやっているこのヴァージョンは、何故かHIP HOP界で大人気で、よくサンプリングされたり、Remixされています。(今回再発されたこのCDにも、数年前にCLUBヒットしたGrandmaster FlashによるRemixが収録されています)
 他にもR・ストーンズの「サティスファクション」やベンチャーズの「パイプライン」などもやっているので、Groovyなインスト好きな方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

2006年10月21日(土) 二村定一、天野喜久代 「あほ空 (My Blue Heaven)」

今週は結構暇な日が多かったですね。(今週じゃなくて毎週だろっ、てツッコミはなしヨ♪)

 強力新譜が少なくて給料日前の週、というのもあるかもしれませんが、やはり現在の音楽業界全体が下火になっている感は否めません。
 実際、多忙な生活を要因に音楽から離れていっているリスナーも多くなっていると思いますが、それにも増して、以前に比べて、音楽ファンを“惹きつける何か”が数段貧弱になっているのが一番の要因でしょう。

 本当にいいアーティストのいい音楽・いい歌であれば、それを欲している人はたくさんいるはずで、その人達にどのようにしていい音楽を訴求するか?が、音楽業界にとって一番のテーマなはずなのに、バカな音楽業界(僕らも含め)はそれを回避・逃避するかのように、売上低下の要因を音楽配信などのせいにして、いい音楽を届けよう、という精神をおざなりにしてしまっているわけだ。

 そして、その場限りの限定アイテムなどで同じものを同じ消費者に買わせる、という大切な顧客の足元を見るような商法を繰り返している現況・・・。これはどこのメーカーとかそういう問題ではなく、僕ら店舗にも大いに原因はある。
 強烈なシッペ返しを受ける覚悟を持っているならそれで構わないが、信念というものが残っているなら、自らも含め、今からその信念を原点に立ち戻らせる必要があるはずだろう。

 つまらないことをダラダラ書いてしまいスミマセン。
 ただ、この曲「あほ空 (青空)」を録音した戦前の日本(1930〜40年代)には、“いい歌・音楽を届けたい”という信念・精神が一番宿っていた時期ではないだろうか? 歌・演奏が上手い、とかそういうのではなく、この時代の“音楽”にはその演者の信念が込められた“惹きつける何か”が宿っているのだ。森 陽馬

★ジャケットは『日本のジャズ・ソング〜戦前編』(BRIDGE-66 \2,100)

2006年10月22日(日) The Stylistics 「First Impressions」

インディーズながらも良質な作品を多数リリースしていて、毎度日本語ブックレット・解説なども充実している信頼のレーベル、セレスト・レーベルから発売されている当店のロングセラー・アルバム。

 スタイリスティックスというと、「誓い」や「You Are Everything」などのヒット曲が有名ですが、なんといってもオススメしたいのが78年発表のこの隠れた名作『In Fashion』(CMYK-6179 \2,625)。

 78年発表、というとディスコ的アレンジ、という印象を持ってしまうかもしれませんが、ロイヤレッツなどのプロデュースで有名なテディ・ランダッツォがプロデュースしていることによって、その年代のディスコ色は全くといって皆無。そのかわり、甘く切ないメロディーと美しいストリングス・アレンジが最高の1枚に仕上がっています。

 特にA「First Impression」、E「I Just Can't Stop Loving You」のバラードはスウィート・ソウル・ファンなら必聴!のナンバーでしょう。他にもミディアムのB、Cも素晴らしい出来で、彼らの極上のヴォーカル/コーラス・ワークが如何なく発揮された全10曲。(捨て曲無し!)

 一般的にはもちろん、ソウル界でもあまり知られていない盤ではありますが、オールディーズ・ファンやAORファンなどにも幅広く推薦できる、大人の香りが漂うビタースウィートな1枚です。
★10月23日(月)は店舗休業日となります。ご了承ください。

2006年10月23日(月) Neil Young 「Cowgirl In The Sand」 

 来月、ニール・ヤングのライヴ・アルバムが発売されます。
 タイトルはなんと『Live At The Fillmore East』! 故ダニー・ウィットンがまだクレイジー・ホースに在籍していた1970年のフィルモア・ライヴ! 前座がマイルス・デイヴィスだった時の爆裂ライヴがオフィシャル化!
ということで、ニール・ファンにとっては嬉しいリリース。

 でもなんだかなー。何故か輸入盤では通常仕様と共にCD+DVDオーディオという仕様のものも発売されるようで・・・。
 ご存知の方には耳たこかもしれませんが、このDVDオーディオというのは基本的には映像は入っていなくて、高音質のオーディオ・トラック(サラウンドなど)を収録したもの。なので、要は収録されている音源はCDと同じなのです。

 まあ今回の場合、ライヴ写真、ニール・ヤング手書きの歌詞、当時の新聞記事などのデータもそのDVDオーディオに特典データとして収録されるらしいので、国内盤・輸入盤通常、に含め、このDVDオーディオ付きの盤も僕は買いますけどね・・・。(というか、特典データなくてもアンタ全買いするでしょ?ってツッコミ入れられそうですが・・・)

 まあでも、この時期のライヴは海賊盤で聴いたことありますがイイですよー! エレクトリックのニールにアレルギー反応を起こさない方で、長い曲にも我慢できる方だったら(これ大事!このライヴ盤に収められる「Cowgirl In The Sand」は約15分!)、オススメです。森 陽馬

2006年10月24日(火) ザ・クロマニヨンズ 「エレキギター」

 ブルーハーツ、ハイロウズ、そしてクロマニヨンズ。

 ヒロト&マーシーの新バンド、クロマニヨンズ待望のアルバムが遂に発売。
 全14曲ロックンローーーールな素晴らしい1枚。(シングルには収録されていた大好きな「クロマニヨン・ストンプ」が入っていないのは残念だけれど)

 2曲目のこの「エレキギター」はたった1分45秒にも満たない曲で、マーシーによる歌詞も至極シンプル。でもその数行の歌詞と1分45秒に、ロックンロールの全てが凝縮されている。

 「ブルーハーツ時代と曲が同じ」、「ハイロウズから特に変わっていない」、などと文句を言う輩もいるかもしれないが、そういう口だけの輩は、“<不変>であることの美しさ”、そしてそれを“<継続>していくことがいかに困難であるか”を知らないだけだ。

 花火のように一瞬咲きそして燃え尽きる“ROCK”も美しいが、蒸気機関車のように自らの命を削りながら宿命とばかりに走り続ける“ROCK”こそより美しいものなのだ。森 陽馬

2006年10月25日(水) Sadistic Mikaera Band 「Narkissos」

 サディスティック・ミカ・バンドに木村カエラがヴォーカルで参加し、17年ぶりとなるアルバムが発売。(『Narkissos』 初回DVD付 COZA-227 \3,465)

 木村カエラがヴォーカルのJ「タイムマシンにおねがい 2006」、@「Big-Bang,Bang!」以外の曲も聴きどころが多くて、高橋幸宏が作曲を担当し作詞をElvis Woodstock(これはリリー・フランキーの変名)がやっているF「Tumbleweed」、加藤和彦とサエキけんぞう氏の共作H「Low Life and High Heels」、小原礼作曲に奥田民生と木村カエラが詞をつけたA「Sadistic Twist」など、各曲を各メンバーが担当しながらも、とっちらかった感はなく、統一感ある1枚に仕上がっています。

 その中でも、実質的なラスト・ナンバー(「タイムマシンにおねがい 2006version」の前)である高中正義によるギター・インスト・ナンバー「Nakissos」。
 他メンバーも参加していますが抑え目なバックに徹していて、高中の郷愁漂うギターを引き立てており、心地良い余韻を残す印象的な1曲です。

 ちなみに来週11月1日には、高中正義がサディスティック・ミカ・バンドの曲を自らのギターでカヴァーした曲を集めた『Sadistic Takanaka』(LAG-9 \3,000)というアルバムも発売予定。
 「タイムマシンにおねがい」はもちろん、名盤『黒船』に収録されているナンバー、そして新作に収録されたこの「Narkissos」など新曲の別ヴァージョンも収録予定なので、こちらも楽しみです。森 陽馬

2006年10月26日(木) John Legend 「Save Again」

 新世代R&B男性シンガー&ピアニスト、ジョン・レジェンド。
 カニエ・ウエストのバックアップで2004年暮れに発売された1stアルバム『Get Lifted』はあれよあれよという間に大ヒットを記録し、なんとグラミー賞8部門ノミネート、新人賞含む3部門受賞。一躍トップスターとなった彼が先日発表した新作2ndアルバム。
 
 で、1曲目に収録されているこの「Save Again」。
 これどっかで聴いたことあるなあ・・・、と思っていたら、そうです! オールディーズ・ファンには「Traces」、「Spooky」などでお馴染み、クラシックス・フォーの名曲「Stormy」にソックリ! 曲の展開も雰囲気もそのまま!

 と思って、中のクレジットを読んだら、ちゃんと<contains samples from the composition "Stormy" written by Buddy Buie & James B.Cobb>という記載がありました。
 クラシックス・フォーの「Stormy」の演奏などをそのまま使用しているわけではないので、サンプリングではなく、はたまたカヴァーでもなくて、下敷きにした、というニュアンスが一番シックリくるでしょうか。

 この「Save Again」がリード・シングルなので、ラジオなどでかかっていたら耳を傾けてみてください。ちなみにこの曲のプロデュースは、ブラック・アイド・ピーズの中心人物、Will i am(ウィル・アイ・アム)です。森 陽

2006年10月27日(金) Robert Randolph feat Eric Clapton 「Jesus Is Just Alright」

 ここ最近のロックの曲で、ジワジワくる名曲的なものはジョン・メイヤーを筆頭に色々と出ていたものの、聴いた瞬間に“ウワッ!キタ!”と思える刺激的なナンバーが少なかったのですが、久々にキマした! それがこの曲!

 ドゥービー・ブラザーズ、The Byrdsで有名なナンバーですが、もともとはゴスペルのクラシック・ナンバーのようです。でもこのロバート・ランドルフが新たに録音しているのは、当時ヒットしたドゥービー・ブラザーズのヴァージョンを下敷きにしていて、まさにそれがツボ! ファンキー&グルーヴィーで最高にかっこいいアレンジ!

 更にこの豪華コラボレイト! エリック・クラプトンがヴォーカル&ギターで参加しているのですが、ロバート・ランドルフ・バンドの超アグレッシヴなプレイに釣られてか、自らの近作では鳴りを潜めていた感もあるデレク&ドミノス時代を彷彿とさせるようなギター・プレイが爆発! これはクラプトン・ファン絶対必聴!のナンバーですね。

 ちなみにこの曲が収録されているロバート・ランドルフの新作アルバム『COLORBLIND』(Warner 44393-2)は、今のところ輸入盤のみで国内盤の発売予定はなし。ボニー・ピンクやコブクロで今ノリにノッテいるワーナー・ミュージックさんですから、是非、ボーナス・トラックでライヴ・ヴァージョンなども追加収録して国内盤も出して欲しいものです。森 陽馬

2006年10月28日(土) 東京ローカル・ホンク 「すんだこと」

 最近は様々なライブへ行く機会が多いのですが、近年日本のアーティストを生で観ることはほとんど無い状態になっていました。
 しかしながら、大阪から上京しこの店で働き始めてから間もない頃、初めて観た東京ローカルホンクのライブがとても素晴らしく、先日約半年振りとなる横浜のライブも観ることが出来ました。

 約1時間半のステージ、演奏した曲はアルバムには入っていない新曲が多かったのですが、アンコールでは「すんだこと」をアカペラ・バージョンで披露。

 アルバムに収録されているバンド・ヴァージョンとはまた違ったアレンジで、ステージ中央にメンバー4人が並んで、メイン・ヴォーカルの木下弦二さんのみギターを持ち、あとはコーラスとお客さんの手拍子のみ。
 初めて観て聴いて手拍子して体験したこのヴァージョンに私は大感激! ホンクさんのまた違った魅力を知ることが出来、嬉しく楽しい気持ちになりました。

 新作制作準備のため、ライブは当分行わないそうですが、ライブで演奏されている新曲はどれもいい曲ばかりなので、来年発売(?)の新作がとても楽しみです。東尾沙紀

2006年10月29日(日) Eban Brown 「Livin' It Up」

 現在のスタイリスティクスのリード・ヴォーカリストを務めているのが、このEban Brown。

 まだ30代という若さながら、彼自身アイドル的存在であったあのRAY,GOODMAN & BROWNの後期リード・ヴォーカリストを務めていた、という経歴をも持つ彼が今年新たに発表した新作アルバムが超インディー・レーベルより発売。

 全体的にアーバン&ビター・スウィートな仕上がりで、ここ最近のR&B(アール&ビー)は聴き飽きている、という甘茶ソウル・ファンにも注目の1枚。前半5曲のオリジナルももちろんイイのですが、聴きものは後半のカヴァー・サイド。

 一般的にも有名なAOR大ヒット・ナンバー、ビル・ラバウンティが82年に発表したG「Livin' It Up」を今日のこの1曲に選びましたが、他にも、Cornelius Brothers & SisterRoseのソウル隠れた名曲E「It's Too Late To Turn Back Now」など、コアなソウル・ファンも悶絶必至の選曲。

 ちなみに、彼はヴォーカリストとしてだけでなく、ギタリストとしての腕前も天下一品で、この作品でもほぼ全編で彼のメロウなギター・プレイを聴くことができます。(ちなみに、アルバム楽曲内でもほぼ全ての楽器も自ら演奏!) 森 陽馬


★10月30日(月)は店舗休業日となります。ご了承くださいませ。

2006年10月30日(月) Beach Boys 「Add Some Music To Your Day」

 本日は、建築中である新店舗の建物の上棟式を行いました。

 上棟式とは、建物の工事が棟上げまで順調に進んだことを、建物の守護神と匠の神、そして工事関係者に感謝し、無事、建物が完成することを祈願する儀式なのですが、現在営業中の仮店舗から新店舗への視界が開けてきたことを実感すると共に、非常に身が引き締まる思いでもあります。

 もちろん商品構成などの面でも充実を図りたいとは思っておりますが、それ以上に精神的な意味合いでより、“CD・レコード店らしいCD・レコード店”を目指していきたい、と強く感じておりますので、これからもよろしくお願い致します。

 このビーチ・ボーイズの隠れた名曲「Add Some Music To Your Day」は、彼らの自らによるレーベル“ブラザー・レーベル”からの第一弾アルバム、1970年発表の名盤『Sunflower』に収録。

 “音楽の素晴らしさ”、それを“あなたの日々・人生に加えたい”、という思いが詰まったこの曲の本質を忘れずに、これからもCD・レコード店の仕事を続けていきたい、と思っています。森 陽馬

2006年10月31日(火) 高田漣 feat 細野晴臣 「Big Chief」

 ここ数年の高田漣の躍進ぶりは本当に凄い。
 “高田渡の息子”という形容詞はまったく必要としなくなったし、逆に、“あの名ペダル・スティール奏者:高田漣の父も高田渡というミュージシャンだった”と言われる日が将来的に来るような気がします。

 余談はさておき、本日入荷した高田漣の4枚目となる新作アルバム『12 Notes』(VACM-1293 \2,940)。
 YMO「Radio Junk」のカヴァー(高橋幸宏さんがヴォーカルを担当!)、細野晴臣さんの名盤『Hosono House』に収録されている「薔薇と野獣」カヴァー(サケロックの星野源がVo)なども含め、彼らしい不思議な空気感を持った1枚に仕上がっています。

 その中でも聴き逃せないのがこの1曲。
 「Big Chief」は、ニューオリンズ系のミュージシャンなら必ず誰もがカヴァー・演奏したことがある、というプロフェッサー・ロングヘアの名曲中の名曲なのですが、この曲になんと!細野晴臣さんがヴォーカルで参加!

 この細野さんのヴォーカルがもう最高に渋いっ! なんとなく聴いているだけだと、細野さんだと気付かないくらい普段とは違った独特な歌声で歌っていて、ドクター・ジョンの声マネをしながら歌っている雰囲気。

 ちなみに12月には、細野晴臣『クラウン・イヤーズ・オブ・ハリーホソノ 1975-76』というタイトルの3枚組CD+DVDのBOXが発売決定! 以前、『中華街BOX』として発売予定だったものが内容・タイトルを変更して、正式にリリースが決定いたしました。森 陽馬


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