PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2006月5月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2006年5月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2006年5月1日(月) 空気公団 「夕暮れ電車に飛び乗れ」

 先日のタモリ倶楽部、ご覧になられましたでしょうか?
 目黒線・武蔵小山駅の地下化工事ネタで、ホームなどもかなり出来上がっていましたね。

 まだかまだか、と思われていた線路・駅の地下化ですが、どうやら今年7月に切り替えを行うのがやっと正式に決まったようです。(詳細は東急公式HPのこちら

 これで、踏切がなくなり、渋滞などが解消されるのはいいことですが、<いざ急いでいるときに、踏切の遮断機が降りる音を聞いて、走って電車ホームに向かう>ということはこれからはできなくなりますね。

 “武蔵小山”の駅が地下にもぐる、というのもなんだか味気ないような気がしますし、もうちょっと個性的な駅ホームにならないのかな?とも思いましたが、なにはともあれ、もうあと2ヶ月で現在の駅や踏切ともおさらば。煩わしかった踏切待ちもなんとなく感慨深くなって、走れば渡れるのにわざと踏切待ちしてみたりして。

 空気公団は、荒井由実似のヴォーカルと心地良いポップ・センスが光るメロディーが特徴の、山崎ゆかり、窪田渡を中心にした日本ポップ・グループ。一時期活動休止していましたが、第2期メンバーということで、また活動を再開してようですね。

 この曲は、2001年発表メジャー・デビュー・アルバム『融』(現在は生産中止)に収録されているナンバー。耳馴染みのいい曲で、当時シングル・カットもされました。森 陽馬

2006年5月2日(火)Carnie Wilson feat Brian Wilson「You Are So Beautiful」

 ブライアン・ウィルソンの娘であり、ウィルソン・フィリップスのメンバーであったカーニー・ウィルソンの新作『A Mother's Gift:Lullabies From The Heart』(Big3 Record 36787-2)が輸入盤で本日入荷。

 “生まれてきた子供に捧げるララバイ(子守唄)アルバム”というのは知っていたので、シンプルなアレンジにはなるだろうな、くらいの期待しかしていなかったのですが、聴いてみたら予想以上に感動的な素晴らしい出来でビックリ! ただ単に演奏をシンプルにしているのではなく、そのシンプルさを美しいコーラスなどで補っていて、カーニーの美声をより引き立たせています。

 選曲も良くて、「Over The Rainbow」、「What A Wonderful World」という定番曲から、ビーチ・ボーイズ・ファンにとっては、涙なしでは聴けない今は亡きデニス・ウィルソン作「Forever」! 更に亡きカール・ウィルソン作の隠れた名曲「Heaven」!まさに泣き所を押さえた必殺のカヴァーが連発です。

 その中でもグッときたのはやはりブライアンが参加しているこの曲。
オリジナルはビリー・プレストンで、一般的には70年代にジョー・コッカーがヒットさせたのが有名ですが、ビーチ・ボーイズ・ファンにとっては、なんといっても故デニスが晩年にライヴで歌っていたのが印象的なナンバーですね。

 この曲をブライアンが、娘、そして孫にやさしく語りかけるように歌う、というのが、ホント、ニクい演出♪

 わずか2分半の曲ではありますが、もう歌が始まる前、♪ウー♪というブライアンによるコーラスだけでもう、このアルバムが聴けてよかったな、と思えてしまうくらい、聴いていてグワーと感動が押し寄せてきてしまいました。

 “子守唄アルバム”ではありますが、ビーチ・ボーイズ・ファンにとっては、一生聴き続けられる素晴らしいヒーリング・アルバム、といえる作品でした。森 陽馬

2006年5月3日(水) Ronee Blakley 「Sleepin' Sickness Blues」

 ロバート・アルトマン監督、1975年制作映画『ナッシュビル』をご覧になったことがありますか?

 ・・・と、もの知り気取り的に書き始めてしまいましたが、実は僕もまだ見たことがありません。
 日本公開は1976年。アルトマンの作品はいくつかDVD化されましたが、何故かこの1本は日本では未だDVD・ビデオ化されていないのです。(本国アメリカではDVDで出ているようです)

 この映画に“カントリー&ウエスタンの女王”バーバラ・ジーン役で出演しているロニー・ブレイクリーのCD2作がアメリカの名再発レーベル、Collector's Choiceレーベルより初CD化されました。(CCM-669 \1,980)

 知名度のある女優さんというわけではないのですが、アカデミー助演女優賞にもノミネートされたことがあるらしく、ヴィム・ヴェンダース監督の元奥方でもあるそうですね。(ディランのカルト映画『レナルド&クララ』にも出演)

 そんな彼女の歌声は、エミルーハリスとジョニ・ミッチェルとマリア・マルダーを足して3で割ったような清々しい歌声で、ラス・カンケル(ds)、リー・スクラー(b)も参加。70年代女性シンガーがお好きな方なら落ち着いて聴ける1枚に仕上がっています。

 同時発売された2ndアルバムの方はマッスルショールズ録音で、そちらには、映画『ナッシュビル』でも使われた「Idaho Home」、「Tapedeck」という曲も収録。映画ファンも要チェックの作品です。森 陽馬

2006年5月4日(木) 西岡 恭蔵 「春一番」

 『1972 春一番BOX』が先日発売(BRIDGE-051 CD10枚組 \18,900)されましたが、その冒頭に収録されているのが西岡恭蔵の「春一番」。

 西岡恭蔵は、関西フォーク/シンガー・ソング・ライターで、彼が作った曲の中では、ジャズ・シンガー安田南をモデルとして書かれた「プカプカ」が、大西ユカリなどにカヴァーされ有名ですが、2ndアルバム『街行き村行き』に収録されることになるこの「春一番」も、是非多くの人に聴いてもらいたい名曲です。

 その74年発表アルバム『街行き村行き』は、細野晴臣プロデュースで、鈴木茂やかしぶち哲郎、岡田徹、武川雅寛なども参加。単なる弾き語りの“フォーク”とは違って、聴いていてロードムーヴィーを見ているような気分にさせてくれる歌詞とメロディーが切なくも印象的な作品です。

 ちなみにこの『街行き村行き』は、現在単体では発売されていませんが、この西岡恭蔵BOX(といっても1st『ディランにて』との2枚組)で聴くことが可能。(BZCS-9007 \3,000)

 1999年、先立った妻KUROさんの後を追うように自殺してしまった西岡恭蔵ですが、今頃、天国で高田渡と酒でも酌み交わしているのでしょうね。森 陽馬

2006年5月5日(金) Neil Young 「Let's Impeach The President」

 ジョナサン・デミ監督映画『ハート・オブ・ゴールド』のサントラが5月24日発売・・・なんて思っていたら、ニールは突然心変わりしたそうで、ブッシュ政権・戦争を痛烈に批判したプロテスト色の強い作品をわずか数日で録音し、急遽(本当に急遽!)新作『LIVE WITH WAR』を発売することが決定!

 もう来週にはUSで発売されるそうで(国内盤は6月21日)、肝心のサントラ盤は「もう古い!過去のこと!」と言わんばかりに発売が中止になったそうな。 <いやはや、ニールらしい!>
で、その『LIVE WITH WAR』ですが、これがハンパじゃなくイイ!! というかスゴイ!!!

 こちらのサイトで発売前にも関わらず全曲聴ける!(突然音が出てくるので注意)のですが、いやーーー、もうヤバいです! エレキ・ギターばりばりのサウンドもすごいですが、特に歌詞!

 「大統領を弾劾しよう!」というタイトルがつけられたこの曲なんか、ホント大丈夫?と心配になるくらいの過激な内容。

♪ウソをついてアメリカを戦争に駆り立て、私達国民の力を乱用し、私達国民の金を使い果たした大統領を弾劾せよ!♪
♪アルカイダがもし防波堤を吹き飛ばしていたら、ニューオリンズはむしろ今より安全だったといえるのか? それとも政府がガッチリ守ってやったとでもいうのか? それともやっぱりその日も大統領は“お留守”?♪

なんて感じで、更には途中、ブッシュのスピーチをコラージュして使用しており、アルバム中でも特にキーポイントとなる1曲になりそう。これ以外も全曲プロテスト・ソングで、ボブ・ディラン「Chimes of Freedom」のアンサー・ソング的なナンバーもある。とにかくアルバム全体に“怒”、“生”、“気”、“情熱”がほとばしっているのだ。

 さすがにアメリカのTV・ラジオ局では頻繁にはオンエアできないだろうから、ニールの意志に賛同した様々なwebサイトを利用して、とにかくたくさんの人に聴いてもらおう、というニールの本気の姿勢がひしひしと感じられる。

 予定調和という悪しき慣習が根付いてしまった生ぬるい音楽業界と、全世界が疑問に思っているはずの戦争に真っ向からブチ当たる決意を示したといえるニール魂の1枚。本当に真の意味での“ROCK”アルバムが久々に登場だ。森 陽馬

★本来このコーナーは店頭でかけた曲を紹介するコーナーですが、本日はニールの新作をいち早くご紹介したいと思い、まだ未発売のこの曲を選びました。申し訳ございません。

2006年5月6日(土) 細野 晴臣 「Chattanooga Choo Choo」

 現在、スタンダード・ナンバーと呼ばれる名曲は、映画やミュージカルのために作られた曲がかなりの割合を占めているように思います。

 この曲のおおもとは、1941年の「銀嶺のセレナーデ」(原題:「サン・ヴァレー・セレナード」、当時のアイス・スケートのスター、ソニア・ヘニーが主演)という映画に使われたグレン・ミラー・オーケストラのヴァージョンとのこと。
 その後、1942年制作、ベティ・グレイブル主演の「ロッキーの春風」にも使われました。この映画にはカルメン・ミランダがポルトガル語で歌うシーンがあり、レコード化もされました。

 僕が初めてこの曲を知ったのは、1965年頃に買ったシャドウズのLP『ダンス・ウィズ・ザ・シャドウズ』の中の1曲としてでした。それ以来、大好きな1曲でしたが、それを細野晴臣がカヴァーしてくれたので、大変うれしかったことを思い出します。アルバム『トロピカル・ダンディー』は1975年発売ですから、それから31年。キャラメル・ママが繰り広げる演奏は全く古くなっていないような気がします。

 この曲を作曲したハリー・ウォーレンにも触れておきたいので今日はもう少しお付き合いください。

 彼は1893年ニューヨーク・ブルックリン生まれ。20代から作曲を始め、30代になってからヒットが出て、映画音楽を任されるようになりました。
 1934年の映画『デイムス』には、「I only have eyes for you」、
 1935年『ゴールド・ディガー』には、「Lullaby of Broadway」、
 1937年『二人のメロディ』には、「September In The Rain」が使われ、評判を呼びました。

 このハリー・ウォーレン。調べてみると実に僕の大好きな曲をたくさん書いているということに気がつきました。
 我々の世代にはクリス・モンテスのヒット曲として有名な「モア・アイ・シー・ユー」もなんと彼の曲なのです。点と点が線で結ばれ、またまた音楽の奥深さと楽しさを感じてしまいました。森 勉

2006年5月7日(日) Carol Welsman 「It's My Party」 

 ここ最近の新譜でジャズ・ヴォーカルもの、というと、正直言ってこれといったものがなかったのですが、このキャロル・ウェルスマンの新譜は聴きやすくて、ヘビロテ中です。

 キャロル・ウェルスマンはカナダ出身のジャズ・ヴォーカリスト。
 あまり日本では知られていませんが、すでに5枚もオリジナル・アルバムを発表しているようで、2006年発表のこの作品『Whatcha Got Cookin』(国内盤 COCB-53505 \2,520)が6枚目となる新作アルバム。

 <カントリーの名曲をジャズ・アレンジで>、というコンセプトも含まれているようで、選曲の妙も楽しめる1枚。
 ジミー・ウェッブ作でグレン・キャンベルがヒットさせた「恋はフェニックス」や、ハンク・ウィリアムス「Hey Good Lookin'」&「Your Cheatin' Heart」、ウィリー・ネルソンがヒットさせた「Always On My Mind」、タミー・ワイネットの代表曲「Stand By Your Man」など。

 カントリー曲以外では、ニルソン「うわさの男」やカーラ・ボノフ作の曲も収録されているのですが、特に意外?なカヴァーが、人気60'sガール・ポップ・シンガーであるレスリー・ゴーアの名曲「It's My Party」のカヴァー。

 大幅にテンポ・ダウンさせたジャズ・アレンジで、原曲を聴いたことがある人でも途中まで誰の曲かわからないであろうゆったりとした雰囲気でカヴァーしてます。

 ダラダラと書いてしまいましたが、クセのない美声ヴォーカルとそれを邪魔しないシンプルなバック演奏なので、特に原曲を知らなくても、女性ジャズ・ヴォーカルもの新作、としてオススメできる1枚です。森 陽馬

★5月8日(月)は店舗休業となります。ご了承くださいませ。

2006年5月8日(月) 柳家 権太楼 「子別れ」 

 鈴本演芸場<鈴本新緑寄席 特別興行>へ行ってまいりました。
 ここ数年、このGWの休みが入る5月上席(1〜10日)は、権太楼師匠があらかじめ演目を決めてトリをとるというのが恒例となっていて、本日のお題は「子別れ」。

 人情噺の大ネタということもあり、開場の15分前くらいに会場に早めに足を運びましたが、さすがに連休明けの平日ということもあって、客入りは7割程度。それでも昭和のいるこいるさんや喬太郎師匠、そしてさん喬師匠などが熱演を見せてくれました。
 そして権太楼師匠の「子別れ」。
 
 腕はいいけど大酒飲みの熊五郎、吉原遊びが過ぎて、女房・子供が家を出て行ってしまい、その後後悔するが後の祭り。きっぱりと酒を断って3年後、立派に立ち直ったところ偶然に息子の亀坊に会い、子供の愛にひさかれて一家がもとのサヤにおさまる、
というのが、人情噺「子別れ」の筋書き。

 とても長い噺なので、落語会などではかけられることもありますが、あまり寄席では聴けない一席。本日も前半は軽く端折って、熊五郎が厚生する場面からじっくり話し始めましたが、迫真の高座に見ている観客皆が圧倒されているかのような素晴らしい一席でした。

 女手ひとつで息子の亀坊を面倒みているおかみさんの涙が、本当に権太楼師匠から流れているかのような熱演。弟子である三太楼師匠の問題(権太楼師匠のHP・BBSに権太楼師匠本人の言葉が添えられています)で、色々と苦渋の思いをされたかもしれませんが、是非これからも末永く素晴らしい落語を聴かせてもらいたい、と思います。森 陽馬

2006年5月9日(火) Red Hot Chili Peppers 「Dani California」

 レッチリの新作『ステイディアム・アーケイディア』が本日入荷。(CD2枚組 WPCR-12300 \2,980 先着でポスター付)

 まあ、色んな雑誌やサイトでレビューが書かれていると思うので、各曲の詳細などはそちらを見ていただくとして、僕としての感想は率直に「良かった!」、でしたね。

 23年やってきて、メンバー本人達もまさかここまで、“レッド・ホット・チリ・ペッパーズ”という存在がここまで大きくなるとは想像していなかったのでは。
 アメリカ本国だけならまだしも、ヨーロッパ各国はもちろん日本でもこれだけの人気を得て、新しいファンがついて、それでもやっぱり昔のファンからすると、「どファンク・ナンバーが減った」、やら「唸るような勢いのある曲が減った」などと言う人もいるかもしれないけれど、あまりにも全世界的に肥大化したレッチリにとって、100人中100人のファンの欲望を満たすことはもうすでに不可能。

 だからもう作品の良し悪し、とか、「ジュピター〜木星」「マーズ〜火星」の2枚に分けられたコンセプト、とかの理屈ではなく、いかに聴き手が気持ちよく聴けるか、というのが最重要課題だったりするわけで。
 
 そういう観点からいうと、どの曲からもシングルが切れそうな粒揃いな楽曲で、ホント充実の新作アルバム。なんだかんだいっても、この1枚を聴かずに2006年のロックは語れない、という作品になるのではないだろうか。

 1stシングルのこの「ダニー・カリフォルニア」は、ラジオでも発売前からかかっていたので、ポップなメロディーは耳に入っていたが、ラジオではフェイドアウトされてしまうこの曲のラストに、ジョン・フルシャンテの超ノイジーな“らしい”ギターがガツン!と入っていて、こういう部分にレッチリらしさ、というか、プロデューサーのリック・ルービンらしさ、を感じたのでした。森 陽馬

2006年5月10日(水) Red Hot Chili Peppers 「Desecration Smile」

 昨日に続き、レッチリの新作。
 ちなみに昨日取り上げた「ダニー・カリフォルニア」は、アルバムからの1stカット・シングルでした。

 で、2ndカット・シングルを予想してみたのですが・・・、
う〜ん難しいですねー。どれもシングル曲になりうる質の高い楽曲で、全28曲どれも可能性ありそう。

 ということで、大本命かもしれませんが、2枚組中のもう片一方のディスク“MARS”discに収録されている1曲目「デセクレイション・スマイル」と予想してみました。

 最初の出だしは、レッチリ・ファンならば前作『By The Way』に収録されていた隠れた名曲「ドースト」を思い起こさせるようなナンバーで、更にそれに「アンダー・ザ・ブリッジ」を足したような雰囲気!、というレッチリらしい泣きのメロディーが炸裂の1曲。

 僕がこの曲を好きなのは、メンバーのコーラスが結構マメに入っているところで、4年前の前作発売の際どこかの評論家が「下手なコーラス」なんて叩いていたこともありましたが、いやいやなかなかどうして、レッチリのコーラスは音楽への愛を感じる素敵なコーラスですよ。

 演奏しながらのコーラスは大変かもしれませんが、これからも是非こういうコーラスの入ったナンバーを作っていって欲しいものです。森 陽馬

2006年5月11日(木) Gerry And The Pacemakers 「Ferry Cross The Mersey」

 リヴァプールの“バタヤン”(※注)こと、ジェリー・マースデン率いるジェリー&ペイスメイカーズは、1960年代中期、英米ではもの凄い人気がありました。

 ビートルズと同じマネージャー、ブライアン・エプスタインの手腕もあったでしょうが、やはりイイ曲も多く、それがテレビなどで身近に見聞きできたこともあったと思います。
 日本では、あまりレコード会社がプッシュしませんでしたし、もちろん来日もしてくれませんでしたし・・・。

 動いているところをみれたのは、1965年春、アメリカ放送より1年遅れのエド・サリヴァン・ショーでした。たしか、「アイ・ライク・イット」と「ドント・レット・ザ・サン・キャッチ・ユー・クライング」の2曲。
 今でも彼等の姿が目に焼きついています。

 この『マージー河のフェリーボート』は、同名映画の主題歌で哀愁を帯びたメロディーが昔から大好きです。映画は未公開でしたが、マージー河が写っているこのジャケットのサントラ盤は日本でも当時発売されました。
 その写真を何度も見て、リヴァプールに想いを馳せたものです。

 なおこの曲には、ドラムスのブラシで始まるステレオ・ヴァージョン、ギターで始まるモノ・ヴァージョンがあります。このCD(国内盤 TOCP-67105 \2,548)にはうれしいことに両方入っています。森 勉

(※注)バタヤン:田端義夫のこと。 ギターを抱える姿がちょっと似ていると個人的に思っているだけなのです。(森 勉)

2006年5月12日(金) Paris Match 「恋の兆し」

 名“音職人”杉山洋介と古澤大、そして女性ヴォーカル・ミズノマリの3人によるユニット、パリス・マッチの6作目となる新作アルバム『after six』(VICL-61882 \3,045)。

 スタイル・カウンシルの曲名から付けられたという“Paris Match”は、今まで僕のイメージの中では、“日本のスウィング・アウト・シスター”という印象で、<心地良い昼下がりの午後に聴くのにピッタリ!>なんていうコメントをいつもCDに付けていたのですが、今回の新作は、そういうイメージとはまた違った側面を見せるコンセプチュアルな1枚。・・・というか、この新作、ホント素晴らしい名作なのです!

 ジャケット、そしてタイトルに『after six』とあるように、午後6時以降から明け方6時までの“夜”を表現した作品で、1曲ごとに1時間ずつ時間が過ぎていくイメージ。(1曲目が「after six pm」で、ラスト14曲目が「after six am」という曲名で構成されています)

 サウンド的には今までのパリスマッチと特に大きく変わった部分はないのですが、その1曲1曲に様々な“夜”の側面やら表情が見えてくるようで、ミズノマリのヴォーカルも心なしかとてもセクシー。

 この今日のこの1曲「恋の兆し」は6曲目に収録されているので、だいたい23〜24時頃というイメージでしょうか? アップテンポなナンバーですが、フリーソウル的なコーラスや吉川忠英の絶妙なギターが味付けされた見事な楽曲。ライトが暗い上品なCLUBで華やかな美しい女性に出会った時のような錯覚に陥りそうな1曲ですね。(例えが変でスミマセン)

 ヘタな海外のCLUB JAZZやら、女性ヴォーカルもの聴くよりも全然質が高くて、なおかつ聴きやすいポップスに昇華されている彼等の音楽性はもっと評価されてしかるべきだと改めて思いました。森 陽馬

2006年5月13日(土) Nicolette Larson 「Last In Love」

 70'sウエスト・コースト・ロックの様々なバンドのバック・コーラスとして活躍。更には、ニール・ヤングが彼女のために書き下ろした名曲「ロッタ・ラヴ」を歌いヒットさせた女性シンガー、ニコレッタ・ラーソン。

 彼女がその「ロッタ・ラヴ」をリリースし、ヒットしていた直後の78年12月に、ロキシーで行った貴重なライヴ音源がライノ・ハンドメイドより全世界完全限定5,000枚でCD化。(RHINO RHM2-7736 \3,280)

 全10曲収録、見開きパッケージ内にナンバリングがあるものの、ブックレットなど詳細な記述はなく、ライノらしくないちょっと寂しい体裁の作りではありますが、ライヴ音源の内容は抜群!
 バックに、アルバート・リー(G)やリトル・フィートのビル・ペイン(key)を従え、堂々とした歌いっぷり。

 前述のニール・ヤング作「ロッタ・ラヴ」、サム・クックの名曲「ユー・センド・ミー」のカヴァーももちろんいいのですが、個人的に大好きな甘いバラード曲「ラスト・イン・ラヴ」が入っていたのがやはり嬉しいですね。

 J・Dサウザーとイーグルスのグレン・フライによる共作曲で、79年に発表されたJ・Dサウザーの名作アルバム『ユア・オンリー・ロンリー』にも収録。そちらのセルフ・カヴァーの方が有名かもしれませんが、このニコレッタが歌っている方はよりシンプルかつ、テンポを落としたヴァージョンでなかなかよいです。(歌声がリンダ・ロンシュタット的?)

 1997年に45歳という若さで逝去してしまった彼女ですが、今度彼女の80年代の作品も国内盤でCD化されるので、興味ある方は是非他の作品も聴いてみてください。森 陽馬

2006年5月14日(日) Carnie Wilson 「A Mother's Prayer」

 本日は『母の日』ということで、ベタかもしれませんがこの曲を。

 5月2日のこのコーナーでも紹介したブライアン・ウィルソンの娘、カーニー・ウィルソン新作アルバム『A Mother's Gift』(輸入盤 BIG3 Records 36787-2)より。

 ブライアンが参加した「You Are So Beautiful」や、故カール・ウィルソン作「Heaven」、故デニス作「Forever」、カーニー夫妻が書いた「When You Dream」など、ビーチ・ボーイズ・ファンにとっては色々と話題の尽きない1枚なのですが、僕が純粋に一番気に入った楽曲だったのは7曲目に収録されているこの「A Mother's Prayer」というナンバー。

 ジム・ブリックマンのピアノをフィーチャーしたドラマチックなバラード曲で、ブックレットに記載されているカーニー自身のライナー・ノーツにも書いてある通り、とても“感動的”な美しい1曲。

 ここ最近のビーチ・ボーイズの評価、というと『PET SOUNDS』や『SMiLE』の革新性ばかりが取り沙汰されていて、聴いた人全ての人が幸せな気分になれるようなビーチ・ボーイズ本来のポップ性に対する正当な評価がなされていないような気がしてならないのですが、このカーニーの新作は、大衆性&万人向けでありながらも、芸術性も失われていない、ある意味、ここ最近のBB5関連作品で一番“ビーチ・ボーイズらしい”作品と言えるような気がします。

 ジャケットに映っているカーニーの子供、つまりブライアンの孫が将来、『PET SOUNDS』のような素晴らしい作品を作ってくれるといいですね。森 陽馬

2006年5月15日(月) Chocolat & Akito 「Cider'73」

 タワー・レコード傘下のレーベル、NMMLレーベルから、ナイアガラ(大滝詠一)・トリビュート・アルバムが春夏秋冬、季節ごとに4作発売が決定。

 その第一弾『NIAGARA SPRING』(TOWER-1012 \1,800)が5月17日に発売なのですが、サンプルが先日届いたので、一足早く聴かさせていただきました。

 5曲収録されているのですが、白眉はなんといっても1曲目に収録されているショコラ&片寄明人によるこのサイダー・ナンバー!(蛇足かもしれませんが、この曲は元々、大滝詠一作で三ツ矢サイダーのCMソングに使われていた曲です。)

 元ロッテンハッツ、そしてGREAT3の片寄明人とその奥方であるショコラさんによるデュオ名義ではありますが、更にプラスして“& Little Creatures”と付け加えたくなるほど、この曲でピアノを弾いている鈴木正人とドラム&ギターの栗原務のプレイが光っています。

 特に鈴木正人のピアノが転がりまくっていて、オリジナルに忠実ながらもまったく新しい“サイダー”に生まれ変わっているのが素晴らしいところ。ショコラさんのハスキーな歌声もナイス! 聴きものです。森 陽馬

2006年5月16日(火) THE BEACH BOYS 『PET SOUNDS』

 本日は、“今日の1曲”ではなく、“今日の1枚”ということでお許しを。

 というのも、今日5月16日は、当店の店名由来にもなったビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』が、1966年アメリカで発売された記念すべき1日なのです。

 巷は“ビートルズの来日40周年”、ということで色々とマスコミなどでも取り上げられていますが、一応、ビーチ・ボーイズも来日40周年、そして“『ペット・サウンズ』発売40周年”でもあるのです。

 この『PET SOUNDS』というタイトルは、<このアルバムを制作したブライアンの“ペット”(犬の鳴き声なども入っていますね)と、ブライアンの好きな“サウンド”が入っている>、ということで、マイク・ラヴが名付けたそうなのですが、これが万が一、アルバム収録曲のタイトル(例えば「God Only Knows」とか)から取られていたとしたら・・・。どうなっていたでしょうね。

 (それこそ「神のみぞ知る」ということか・・・) 森 陽馬

2006年5月17日(水) Neil Young 「The Restless Consumer」

 5月5日の<今日のこの1曲>で取り上げたニール・ヤング衝撃の新作アルバムが輸入盤で入荷。

 もうすでにニールの公式サイトで全曲フル完奏で聴いていたのですが、こうしてCDを手に入れて爆音で聴くと、よりニールの怒りというか熱い思いが伝わってきて、とても触発されるものが込み上げてきましたね。

 特に3曲目に収録されているこの曲なんか、エレキかき鳴らしながら、歌っているというよりも思いつくままにアジっている雰囲気で、このアルバムを表現するにニール本人曰く、“メタル・フォーク・プロテスト”と名付けた所以はこういうところにあるのかな、と。

 毎度のニールの作品に言えることではありますが、各曲雰囲気が似ている曲がありながらもそれぞれの曲にテーマがあって、じっくりと歌詞を読むと本当に凄い内容。
(海外在住ニール・ファンの方のこちらのサイトで日本語全訳詞を読むことができます! 興味ある方是非ご覧ください。)

 国内盤は6月21日発売が決定したようです。
 日本人でもこのくらいやってくれるアーティストが出てこないかな・・・。森 陽馬

2006年5月18日(木)Burt Bacharach「In our time」〜「Who are these paople?」

 昨日紹介したニールの新作はブッシュ政権&戦争を批判した凄い内容でしたが、そういうコンセプト・信念を持って音楽活動を続けたり、作品を発表しているのはもちろんニールだけでありません。

 昨年末(国内盤は今年の2月)に発売されたバート・バカラックの新作『アット・ディス・タイム』(BVCM-31186 \2,548)も、穏やかな曲調の中に様々な思いが込められた素晴らしい作品でした。

 バート・バカラックは1928年生まれということですから、もう78歳!
 20世紀を代表する、といっても過言ではない作曲家/サウンド・クリエイターで、彼の名前を知らない人でもカーペンターズやダスティ・スプリングフィールドなどの有名なヒット曲をどこかで必ず耳にしたことがあるはずです。そのくらい多くの名曲を手掛けた、真に“作曲家が憧れる作曲家”(by 筒美京平)なのです。

 そんな彼の新作で一番焦点となっているのは、作曲だけでなく、作詞も彼が手掛けた、という点。
 で、その歌詞が今までのような恋愛ものばかりではなく、様々な問題を抱えた現代社会に深く切り込んだ内容になっており、一聴しただけでは単なる心地良いバカラックらしい良作、という印象かもしれませんが、繰り返し聴くほどにバカラック自身の怒りや思いがじわじわと深く沁み込んでくる1枚に仕上がっています。

 特に3曲目「In our time」と名付けられたインスト・ナンバー(何気ないこの曲名も素晴らしい!)から、エルヴィス・コステロが歌う4曲目「Who are these people?」の流れは、美しさの中に様々な悲哀が込められているようで、何度繰り返し聴いても心を打つナンバー。
 「僕らに向かって嘘をつき続けるあの連中はいったい何者なんだろう?〜こんな状況は絶対にかわらなきゃいけないんだ。手遅れになってしまう前に・・・」(歌詞より抜粋)と歌われるこの曲をコステロに歌わせた、というのもこれ以上ない人選!

 ちなみに国内盤のライナー・ノーツを朝妻一郎氏が書かれている、というのも素晴らしい人選ですね。森 陽馬

2006年5月19日(金) Murry Wilson 「ITALIA」

 書籍『Beautiful Covers ジャケガイノススメ』が本日入荷。

 当店店長・森 勉も<ジャケガイトワタシ>というコラムを寄稿しているのですが、そのページ以外(爆)は本当に素晴らしいジャケット&写真が満載!の1冊。

 ホント、過剰な売り文句でも何でもなしに、ここまでジャケットが美しく写っている本は今までなかったのではないか?と思えるほどの出来映えです! 本屋さんで見かけたら是非立ち読みでも構いませんのでお目通しのほどを。

 ということで、本日はこの本に掲載されていた1枚をかけてみました。
 ブライアン・ウィルソンのお父さん、マリー・ウィルソンが1967年に発表したイージー・リスニング・アルバム。

 正直言ってビーチ・ボーイズとかブライアン的な音世界を期待したらガッカリするかもしれませんが、これはこれで、華麗で気持ちのいいオーケストラ・アレンジが、落ち着いた雰囲気で楽しめるイージー・リスニング作品に仕上がっています。バート・バカラックやトニー・ハッチ的なインスト・アルバム、という感じでしょうか。

 まあこれといって、名曲!といえるようなナンバーが収録されているわけでもないのですが、珍しいところでは、ビーチ・ボーイズのメンバーであるアル・ジャーディン作「イタリア」が収録されている、というところ。あと、ビーチ・ボーイズのバラード名曲「The Warmth Of The Sun」のカヴァーも収録。

 ちなみにこの盤は日本で2002年に世界初CD化(TOCP-66037 \2,548)されましたが、もうそろそろ生産中止になってそうですので、まだ手に入れていなかったビーチ・ボーイズ・コレクターの方はお早めに。森 陽

2006年5月20日(土) Rosie & The Originals 「Angel Baby」

 ひとくちに“60'sガール・ポップ/オールディーズ”といえども、色々なタイプ・種類のアーティストとサウンドがありますが、その中でも僕が一番好きな曲はやっぱりこのナンバー。

 ロージー&ザ・オリジナルズは、ロージーことロザリー・ハムリン(当時まだ15歳)が、1960年に友人のバンド“オリジナルズ”と組んだグループで、この名曲「エンジェル・ベイビー」は当時彼女が想いを寄せていたボーイ・フレンドに書いた曲、とのこと。

 61年にビルボード・シングルチャートで最高5位となり、後にジョン・レノン自身が“大好きな曲!”ということで『ロックンロール』というカヴァー・アルバムでカヴァーしたり、変わったところでは戸川純がカヴァーしたりなど、ガール・ポップ・コア・ファンでなくても知っているような有名な1曲となりましたが、やはりこのロージー本人が歌うヴァージョンが一番!

 特に素晴らしい演奏というわけでもなく、印象的なコーラスなどが入っている、というわけでもないのですが、ロージーの無垢な歌声とシンプルながらもちょっぴり切なくなるようなメロディー、口ずさめるような歌詞、などが合わさって、永遠にイノセントな魅力を放つ素晴らしい1曲に仕上がっています。

 ちなみに、この編集盤(『ベスト・オブ・〜』 PCD-887 \2,940)には、この「エンジェル・ベイビー」が再録ヴァージョン、USヴァージョン、UKヴァージョンの3ヴァージョンも収録。聴き比べしてみるのもイイですヨ。森 陽馬

2006年5月21日(日) Temptations 「Just My Imagination」

 モータウンのファルセット・ヴォイスと言えば、まずスモーキー・ロビンソンが思い浮かびますが、この人を忘れてはいけません!
 − エディ・ケンドリックス! −

 1960年代のテンプテーションズは出る曲出る曲いい曲ばかり。
 「マイ・ガール」、「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」でのデヴィッド・ラフィンの声も良かったのですが、「ゲット・レディ」や「ユーアー・マイ・エヴリシング」での、エディのなんとも言えぬツヤのあるファルセットが好きでした。

 1960年代終わりごろからは、ちょっとテンプスらしくない曲が多くなり、彼等のことを忘れていた頃に出たのが、この「ジャスト・マイ・イマジネーション」でした。

 ゆったりした調子で歌うエディのリードと、グループのコーラスに極上の形でアレンジされたストリングスが絡み、素晴らしいバラード曲に仕上がっています。

 遠くから好きな女の子を眺めているだけのプラトニックなはかない想いを寄せる男心を“歌”にしたのは、ノーマン・ホイットフィールド&バレット・ストロングのソングライター・コンビ。

 この後エディはソロになり、テンプスを脱退してしまいますが、このラスト・リード・ヴォーカル曲は見事に全米No.1に輝きました。森 勉

ジャケットは、2枚組CD全36曲収録ベスト盤(UICY-1295 \2,980)

★5月22日(月)は店舗休業日となります。ご了承ください。

2006年5月22日(月) Beatles 「When I'm 64」

 先週あたりに新聞やニュースなどで報道されましたが、ポール・マッカートニーの離婚にはちょっと驚きましたね。
 元奥様のリンダ・マッカートニー死後、再婚して様々な慈善活動にも夫婦揃って参加し、おしどり夫婦と思っていたのですが、どうやら現実は違っていたようで・・・。

 まだ詳細は決まっていないようですが、それにしても慰謝料がハンパじゃない額になるようで、あるメディアによると425億円(!)は下らない、とか・・・。「法廷では争わず,、妥協して106億円」、とも書いてあって、もうケタが違いすぎてわけがわからない。(ちなみにポールの現在の資産は1750億円とのこと)

 というか、そのお金をチャリティーに回さないの? なんて疑問も出てくるのだが、まあそれは置いといて、ポールもこの曲を発表した1967年当時に、まさか自分が64歳になって、離婚&慰謝料を払うなんて思いもよらなかっただろうな、と。

 今日のこの1曲「When I'm 64」は、ビートルズが67年に発表した名盤『Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band』に収録されているポールの名曲。僕の世代としては、ポンキッキに使われていたこともあり耳馴染みのあるナンバーなのですが、ロビン・ウィリアムス主演の映画『ガープの世界』(1982)でも効果的に使われていたのが印象深いですね。

 今年はめでたくポールが64歳になったので、“When I'm 64 ツアー”とか銘打って来日してくれることを楽しみにしていたのですが、現実的には難しいかな? 森 陽馬

2006年5月23日(火) Allen Toussaint 「Basic Lady」

 ニューオリンズの重鎮、アラン・トゥーサンが緊急来日!
 なんと1日限り(6/1)のライヴもやるらしい。(詳細はこちら

 アラン・トゥーサンは、5月27日にエルヴィス・コステロと組んだ夢のコラボレーションCDが発売になる予定なのですが、当初2月に来日公演を行う予定であったコステロの公演が6月2日に延期され、その公演に合わせてアラン・トゥーサンも急遽来日、と相成ったようだ。

 実はその今度発売になる新譜(エルヴィス・コステロ&アラン・トゥーサン『ザ・リヴァー・イン・リヴァース』 初回DVD付 UCCB-9011 \2,800)のサンプルが先日届いたので、一足先に聴かさせていただいたのだが、それもめちゃくちゃイイ! もうすでに68歳になろうかというアランではあるが、来日公演の期待も高まるばかりだ。


 で、今日は来日決定を祝して、75年発表の代表作、ニューオリンズ大定盤である『サザン・ナイツ』(WPCR-2592 \1,785)からこの1曲。

 バックはミーターズで2分ほどの小気味いい短いナンバーであるが、味わい深いリズムが耳に残る隠れた名曲。曲の最後の方に、この次に収録されている「サザン・ナイツ」のRepriseが少しだけ流れるのですが、これは元々アナログ盤では「Basic Lady」がA面の最後の曲であったため、B面の頭へブリッジのように繋ぐ意味合いもあり収録されているのでしょう。

 ちなみに、この「Basic Lady」を聴くといつも、伊藤銀次作「日射病」(『ナイアガラ・トライアングルvol.1』に収録)を思い出してしまうのは僕だけ? 森 陽馬

2006年5月24日(水) Silvetti 「Spring Rain」 & 「Coconut Rain」

 “ジャケガイノススメ”本に続き、“ジャケガイノススメ”シリーズのCDも9タイトル無事発売。

 WEB上ではなかなか伝わりにくいかもしれませんが、実際に入荷して手に取ると、どれもやはり“ジャケ買い”したくなるようなブツばっかりで、店員でありながら「ああ・・・、これも欲しいなあ・・・」と迷ってしまっています。特にこのシルヴェッティのアルバム・ジャケットは美しいですよね。

 今日は雨も突然降り出したということで、ベタかもしれませんがこのシルヴェッティの作品の中から一番有名なこの曲を選びました。
 「スプリング・レイン」は電気グルーヴが1997年に大ヒットさせた「Shangri-La」の元ネタ、ということで、この曲自体は知らなくても、20歳以上の方ならどこかで聞き覚えがあるナンバーだと思います。

 しかしながら77年に発表されたこのシルヴェッティのオリジナル・アルバムは今までCD化されたことがなかったので、この曲以外は正直言って聴いたことがなかったのですが、意外にもいい雰囲気のナンバーが多くて、アルバム全体的に心地良く聴くことができました。

 6曲目には「ココナッツ・レイン」という“レイン・ソング”がもう1曲収録されていて、そちらは「スプリング・レイン」の切ないメロディー展開とは違って、“楽しいジャマイカの天気雨”といった雰囲気のインスト・ナンバー。
 アルゼンチン出身のピアニスト/プロデューサーによるソロ名義の作品なのですが、ピアノだけでなく、全体を包む雰囲気や流れが絶妙ですね。何気ないBGMとしてもオススメできる“ジャケ買い”して損なし!の1枚です。森 陽馬

2006年5月25日(木) Joao Gilberto 「Chega De Saudade」

 “ボサノヴァの神” ジョアン・ジルベルトが来日したのもつい最近、なんて思っていたら、2003年のことらしいのでもう3年が経ってしまったようだ。まさに光陰矢の如し。

 ちょうどその来日に合わせて、ジョアンの初期作品が国内盤で発売予定になり、東芝の新譜案内書にも一度掲載されたのだが、結局発売中止。
 その後も全世界的に廃盤状態だったので、やはり権利関係か何かで難しいのかな?・・・なんて思っていたら、今になっていきなり韓国盤(!)で発売になった。発売元は“EMI-KOREA”、ちゃんとEMIマークも入っているので、正規リイシューのようだ。
 「何故にアメリカ、イギリス、フランス、日本ではダメで、韓国ならOK?」と疑問に思ってしまうがまあ素直に再発を喜びましょう。

 以前、国内盤で一度再発されたこともあった人気盤で、邦題が『ジョアン・ジルベルトの伝説』。結構、探していた方も多かったようで、問い合わせもちょくちょくあった盤なのですが、それもそのはず。CDは一枚ものですが、全38曲収録! そのどれもが代表作といっても過言ではない内容で、大袈裟な表現をしてしまえば、“ボサノヴァの原点”とも言える1枚でしょう。

 ちなみに、入荷したCDの外ビニールに、国内盤によくあるのと同じように、ジョアン及びこのCDの説明が韓国語で書かれたシールが貼ってあるのですが、その読解できない韓国語の中に混じって読める漢字が2文字だけ入っていて、それが、<巨人>、<奇人>、というのには笑わせてもらった。やはりどこにいっても、<奇人>は<奇人>ということか。森 陽

2006年5月26日(金) エルヴィス・コステロ and アラン・トゥーサン
  「Freedom For The Stallion」

 エルヴィス・コステロとニューオリンズの重鎮、アラン・トゥーサンの夢の共演盤が本日入荷しました。(当初6月2日発売予定だったのですが、来日公演もあるということで繰り上がって発売。)

 いや〜、期待通りというか期待以上の内容で、ニューオリンズ・ファンの僕としては本当に嬉しい1枚。
 ロックしているコステロもいいけど、最近はコステロ節というかコステロの“歌心”がより熟成してきた感じで、こういう味わい深い1枚が似合うようになってきた感もありますね。

 コステロが書き下ろしたタイトル曲以外は、新曲も含め全てアラン・トゥーサン作絡みで、特に1曲目に収録されている「On Your Way Down」というトゥーサンが72年に発表した名盤『Life, Love, And Faith』からの曲は、コステロの歌が見事に合っていて、まるでコステロに歌われるために書かれていた曲みたい。

 もちろんそのナンバーも良かったですが、今日のこの1曲は7曲目に収録されているこのナンバー。

 「あれ?どこかで聴いたことがあるような・・・」と思う方もいらっしゃるかもしれません。元々はアラン・トゥーサンがニューオリンズR&Bシンガーであるリー・ドーシーに提供した曲ではあるのですが、そのオリジナル以上に印象深いのが、アン・サリーが2003年に発表した名作『Day Dream』にてカヴァーしているヴァージョンでしょう。

 アン・サリーのカヴァーも素晴らしかったですが、コステロが歌うこの曲もイイですねー。何度も繰り返し聴きこみたくなる1曲です。森 陽馬

2006年5月27日(土) 大滝詠一 「GO! GO! Niagaraのテーマ」

 明日は競馬の祭典“日本ダービー”の日。

 3歳牡馬(人間でいうと20歳くらいの男)の最強決定戦みたいなレースで、つまり馬にとっては、一生に一度しか出走できない大事なレース。毎年出走できる頭数が18頭と決まっているので、トライアル・レースで3着以内に入った馬や、実績のある賞金上位の馬しか出れないのですが、今年はなんとそのダービーにこんな馬名の馬が出走!

 その名も、“ナイアガラ”!

 実はこの“ナイアガラ”、ダービーには登録していたものの数週間前には賞金が足りず除外対象だったのです。ところが強運なことに、レースが近づくにつれ賞金上位の馬が何頭か故障してリタイア、4頭中2頭出走できるという抽選にも通って、見事出走することができました。

 3勝もしている馬なので、そんなに弱い馬ではないとは思うのですが、いかんせん注目度の低さもあり、なんと現在のところ単勝オッズがなんと約150倍!(1着に入ると100円が15,000円!) 武豊が乗っているアドマイヤムーンとの馬連でも約800倍! 更に3連単でナイアガラが1着になった場合はどんなに人気の馬が2・3着にきても10,000倍以上!(100円が百万円!)、下手に大穴つれてきたら50万倍なんてのもある。(100円が5千万円!!)

 ちなみにこの「Go! Go! Niagaraのテーマ」は、1976年に発表された大滝詠一のアルバム『Go! Go! Niagara』の1曲目。オリジナルは、Bobby.B&The Socksというグループの「ドクター・カプランズ・オフィス」という曲で、あのフィル・スペクターが手掛けた楽曲。
 そのナンバーを上原裕(dr)、田中章弘(B)、坂本龍一(Key)、村松邦男(G)というメンツで録音・カヴァーしたものです。

 『Go! Go! Niagara』発売30周年となる今年、第73回ダービー優勝馬 “ナイアガラ” となるか? 果たして結果は?
 明日5月28日 15時40分発走です。 森 陽馬

2006年5月28日(日)Jackie Trent and Tony Hatch「Just Beyond Your Smile」

 第73回日本ダービー、昨日紹介した“ナイアガラ”はほとんど見せ場を作ることもできず17着に惨敗・・・。まあでも、“ナイアガラ”は芝のレースよりもダートのレースの方が得意のようなので、ダービーは残念でしたが是非これからも末永く元気に走ってもらいたいものです。

 さて、大好評!の書籍『ジャケガイノススメ』と、それに連動した“ジャケガイノススメ”シリーズCD。今回再発された9種類の中で、うちの店の一番人気は、やはり!というか意外というか、フィル・スペクター在籍の“テディ・ベアーズ”と、ガール・ポップ・ファン垂涎のリイシューとなった“ピクシーズ・スリー”の2枚が同率で1位!
 それに続くのが何か?というと、外資系大型店なら“シルヴェッティ”あたりに落ち着きそうな感じですが、当店ではなんと、この1枚です。

 イギリスのおしどり夫婦コンビ、ジャッキー・トレント&トニー・ハッチの68年発表作『Live For Love』(BVCM-37703 \2,310)。

 “イギリスのバート・バカラック”とも称されるトニー・ハッチが、バック・サウンドを手掛け、奥方のジャキー・トレントが歌う、というコンビですが、ただ単に“バカラック的”というのではなくて、ジャズ/ボッサ/フィル・スペクター的な部分なども取り入れ、奥行きのあるサウンドを見事に『Live For Love』というタイトルそのままのハッピーな雰囲気に昇華させています。

 ちなみにこの今日の1曲はロジャー・ニコルスのカヴァーで、僕の大好きな「Love So Fine」もアルバムに入っていますが、どちらもオリジナルに負けないくらいの素晴らしい出来。ホント、ロジャ・ニコ好きの方には大推薦のアルバムですね。

 ジャッキー・トレントの声は、結構低い声でそんなにキュート♪というわけでもないのですが、トニー・ハッチのサウンドにも曲にも合っている感じ。当然のことながらジャケットも素晴らしいのでオススメの1枚です。森 陽馬
 
★5月29日(月)は店舗休業となります。
なお31日(水)も臨時休業とさせていただきます。ご了承ください。

2006年5月29日(月) Ronnie Spector 「There Is An End」

 ジム・ジャームッシュ監督、ビル・マーレイ主演映画『ブロークン・フラワーズ』を鑑賞。

 ジャームッシュの映画はほとんど全部見てきましたが、この映画は最高傑作ですね。セリフやカメラワーク、ストーリー展開から様々な情景まで全体的に本当にウィットに富んでいて、とても面白かったです。
 “中年男のロードムービー”と言ってしまえばそれまでですが、美化された過去と惨めな現在を直視したからこそ、自我を再発見する中年男性をビル・マーレイが好演しています。

 さて、その中で使われているのが「There Is An End」という曲。
 この映画の予告編でも流れていて、ちょうどその予告編を見た頃に発売になったロニー・スペクターの新作アルバムの中にもこの曲が入っていたので、てっきりこのロニー・スペクターのヴァージョンが使われているものだと勘違いしていましたが、実際はジャームッシュの友人がやっているオハイオ出身のロック・バンド“The Greenhornes”というグループのヴァージョンがオープニング及びエンディングで使われていました。(付く足すとこの曲は、The GreenhornesのメンバーであるCRAIG FOXという人が作ったナンバー)

 帰宅してからロニー・スペクターのこの曲も聴きかえしてみましたが、バックのオケはほとんど同じ感じ。映画のThe GreenhornesヴァージョンはHolly Golightlyという女性ヴォーカルをfeatしていましたが、この曲はやはりクセのあるロニーのヴォーカルの方が合っている印象。

 ちなみに、映画内にジム・ジャームッシュのニール・ヤング好きが実感できる場面(というか人名)が出てきます。単なる偶然じゃないハズ!森 陽馬

2006年5月30日(火) クラムボン 「I Shall Be Released」

 クラムボンの新作(『LOVER ALBUM』 COCP-50924 \2,940)が入荷。

 今回のアルバムは全曲カヴァーという内容で、矢野顕子、真心ブラザーズ、YMO、岡村靖幸(!)、フィッシュマンズ、おおはた雄一などの日本人アーティストの曲から、ビートルズ、ジュディー・シル、ザ・バンド、ソフト・マシーン(!)など、クラムボンならでは、なマニアックな選曲でカヴァーが全13曲収録。各曲に各メンバー(原田郁子、mito、伊藤大助)の趣味・嗜好が反映されていて、なかなか面白い作品でした。

 その中でもアルバムのラストに収録されているザ・バンドの名曲「I Shall Be Released」のカヴァーは、ほぼ完コピながらとても良かったですね。

 この曲はヴォーカリストが3人いて、1番の歌詞をmito、2番の歌詞を原田郁子、3番の歌詞をゲスト参加の永積タカシ(ハナレグミ)が歌ってるのですが、サビの部分は3人での合唱になるところが非常に美しくて感動的。

 特に原田郁子さんのピアノが絶品!
 以前、センチメンタル・シティ・ロマンスの名キーボーディスト、細井豊さんとお話する機会があった時に、「最近、注目されているピアニストはいらっしゃいますか?」と伺ったら、真っ先に原田郁子さんの名前が出てきたことがありました。
 いつか原田郁子さんのソロ・ピアノライヴ、なんてのも見てみたいですね。森 陽馬

★5月31日(水)は店舗休業させていただきます。ご了承くださいませ。
(もしかしたら夕方以降〜夜から開けられるかも?)

2006年5月31日(水) マーク・ベノ 「フラニー」

 本日は当店仮店舗の店内にて、ある有名ミュージシャンの新作告知CM撮影が入りました。そのため、急遽夕方まで臨時休業ということになってしまい、その間にいらっしゃっていただいたお客様にはご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。
 撮影スタッフと朝7時より撮影開始し、当初は17〜19時頃終了の予定でありましたが、様々な段取りが順調に進んだようで、夕方前には撮影が終了。店も開けることができました。

 その有名ミュージシャンとは・・・。今のところまだオフレコなのでここには書けないのですが、そのミュージシャンと撮影の合間に雑談した際、そのミュージシャンが好きなアルバムとして話題となったのがこの1枚。

 マーク・ベノは70'sに活躍していたテキサス出身のシンガー・ソングライター/スワンプ・ロッカー。昨年狭山で行われたハイドパーク・フェスティバルに来日したのも記憶に新しいですね。

 1971年に発表した2ndアルバム『雑魚(原題:minnows)』は、彼の代表作とも言える1枚で、ボビー・ウォマック、クラレンス・ホワイト、ジム・ケルトナー、リタ・クーリッジなど様々なミュージシャンが参加していますが、特にジェシ・エド・デイヴィスのスライド・ギターがいぶし銀の切れ味で渋いっ! ブルース好きの方にもオススメの作品です。

 ちなみにそのミュージシャンはこの名作をアナログ盤で持っているそうで、魚がプリントされたインナーがオマケのような形で入っているのを憶えていました。
 「それってCDにも入っているのかな?」と聞かれたのですが、ちゃんと厚めの銀紙に魚がプリントされたインナーも再現して入ってますね。今年再発された限定紙ジャケット(UICY-93002 \2,141)、解説は長門芳郎氏と天辰保文氏が手掛けております。森 陽馬


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