PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月4月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年4月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年4月1日(火) Papa Grows Funk 「Come Together」

 暖かくなってこの時期になると、毎年4月下旬〜5月上旬にニューオリンズで行なわれる<New Orleans Jazz & Heritage Festival>が気になってきます。(上記リンクは公式サイト)

 4/25〜5/4に行なわれる今年もすごいラインナップで、有名なアーティストをザッと挙げると、ロバート・プラント&アリソン・クラウス、スティーヴィー・ワンダー、シェリル・クロウ、ビリー・ジョエル、コステロ&アラン・トゥーサン、サンタナ、ランディ・ニューマン、マイケル・フランティ、アル・グリーン、メイズ、タワー・オブ・パワー、リチャード・トンプソン、デレク・トラックスなどなど。
 これにもちろん、ネヴィル・ブラザーズ、ドクタージョン、ギャラクティク、サニー・ランドレスなどニューオリンズゆかりのミュージシャンも多数出て、更に初めて見る名前の知らない人で凄いパフォーマンスを見せてくれるミュージシャンがゴロゴロいて、それらをガンボとつつきながら見れる・・・、という音楽ファンにはまさに夢のようなフェス。以前(15年前くらいは10〜15ドル前後だったと思います)より入場料が高くなりましたが、これで1日50ドルなら安いですよね。またいつか観に行きたいものです。

 そんなニューオリンズのへの思いを馳せながら、最近店で時々かけているのがこのアルバム。ジャズ・フェス公認のライヴCD-Rシリーズで、この前入荷してきたのは山岸潤史率いるファンク・バンド、パパ・グロウズ・ファンクの2007年ライヴ盤。熱いギターに極太ファンクネスがかっこいいッス。このビートルズのカヴァーも重たいファンクなアレンジ。いやー、ニューオリンズ本土の野外で聴いたら、さぞ痛快だろうなー。森 陽馬

2008年4月2日(水) Dani Sheridan 「Guess I'm Dumb」

 思わぬところに思わぬカヴァーが入っていたりするとうれしくなります。そしてそれがいいカヴァーだったりすると、もっとうれしくなります。今日はそんな1曲。

 去年イギリスで発売された『Dream Babes Vol.7 〜 Beat Chic』(RPM 327)。このガールズものコンピの中に凄い曲が入っています。
 ブライアン・ウィルソンとラス・タイトルマンが共作してグレン・キャンベルが歌った「ゲス・アイム・ダム」(山下達郎さんも取り上げたことがありますね)を1965年にカヴァーしているのですから、さすが!ビーチ・ボーイズ・フリークが多いイギリスです。

 歌っているのは、全く知られていないダニ・シェリダンというなかなかいい声を持った女性。アレンジも誰だかわかりませんが、オリジナルのサウンドをより拡大解釈したもので魅了されてしまいます。
 力強いドラムのビートとブラスの響き、そして間奏で出てくるしっかりとしたストリングス、すべてがうまくまとまって1曲を構成しているアレンジです。

 ブライアンも時間があったら、こういうサウンドにしたかったんじゃないかな・・・。森 勉 

2008年4月3日(木) 大橋トリオ 「GRAVITY」

 先日お客様から教えてもらった日本人ミュージシャン“大橋トリオ”。
 インディーズから昨年末アルバムを出していて、ためしに注文して聴いてみたら、ものすごく良くてビックリ!!! 店内の試聴機にも入れて、個人的にもすっかりヘヴィー・ローテーション中の1枚です。(『PRETAPORTER』 PWSR-1017 \2,000)

 “大橋トリオ”と名前は付いているのですが、実は大橋好規という男性の一人ユニット。しかしながら、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードなどの全楽器からコーラス、アレンジ、プロデュース全てを一人でこなしてしまうその生楽器の魅力を生かしたサウンドは、“バンド”そのもの。
 全曲彼本人によるオリジナル、という楽曲センスも抜群で、とにかくメロディーが素晴らしく、どの曲も心地良く耳に残ります。

 ちょっと極端な例えをすると、“ジャック・ジョンソンとくるりと足して2で割った”感じ。ジャック・ジョンソンをもうちょっとソウルフルにメロディーを前に押し出して、その楽曲をくるりの岸田くんが歌った雰囲気なのです。

 オーガニックなシンガーソングライター好きの方にはホント絶対におすすめのアルバム! ライヴも見てみたいと思っています。森 陽馬

2008年4月4日(金) スキマスイッチ 「ズラチナルーカ」

 大橋卓弥と常田真太郎によるスキマスイッチ、2007年末に行なわれたアリーナ・ツアーのライヴ盤が2枚組CD+DVDという仕様で発売。(AUCK-18025 \3,675 6/11にはライヴDVDも発売)

 実際に代々木第一体育館で行なわれたコンサートは観に行っていたのですが、彼らが一番リスペクトしているというミスター・チルドレンに、楽曲だけでなくステージングも影響を受けているな、と感じられるライヴ・パフォーマンスで、スキマスイッチの二人だけでなく、バックを固める古田たかし(ds)、井上富雄(b)、若森さちこ(per)、大島俊一(key,sax)、浦清英(key)、新井健(g)と一体になった“バンド”感のあるコンサートでした。

 その中でも印象的だったのが3rdアルバム『夕風ブレンド』に収録されていた「ズラチナルーカ」のライヴ・ヴァージョン。後半のスリルあふれる即興的な演奏がかっこよくて、さながら“ライヴ・バンド”としての持ち味が存分に押し出されていた1曲でした。

 ちなみにアリーナ・ツアーの前のホール・ツアー(NHKホール)も観に行っていたのですが、個人的にはホール・ツアーの時の方が音も良かったですし構成としても好きでしたね。
 やはり代々木体育館はコンクリート面が多いせいか音が悪い・・・。人気が出過ぎてしまったので難しいかもしれませんが、またホールでやるライヴを観てみたいです。森 陽馬

2008年4月5日(土) Fabiana Passoni 「Darlin'」

 東京の桜は早くも散ってきており、日中はずいぶんと暖かくなってきました。それと共に、ビーチ・ボーイズ的な話題も続々と登場。

 アル・ジャーディンのHP(音が出ます)が最近リニューアルし、そこに掲載されているように彼の新作アルバムが発売になるようです。
 ゲスト・ミュージシャンが超豪華で、ブライアン・ウィルソン、デヴィッド・マークスなどのビーチ・ボーイズ人脈以外に、ニール・ヤング、スティーヴン・スティルス、ジェリー・ベックリー、デューイ・バネル、スティーヴ・ミラーなどの名前も挙がっており、サイトにアクセスしている最中かかり続けている曲もアルらしい楽曲でニンマリ。他にも何曲か試聴できますが期待してよさそうです。

 さて、ビーチ・ボーイズ繋がりでゴキゲンなカヴァーを1曲ご紹介。
 ファビアンヌ・パッソーニはブラジルはミナス出身の女性シンガー。2007年発表アルバム『E Minha Vez』は軽快なブラジリアン・フュージョンが心地良い作品ですが、このアルバム内でビーチ・ボーイズの名曲「ダーリン」をナイス・カヴァーしているのです。

 単なるありきたりなボッサ・カヴァーなどとは違い、ビリンバウなど変わった楽器の音色も色々と入っていながら、曲本来が持つ清涼感をより引き立たせている爽やかなかっこいいカヴァー。ビーチ・ボーイズ好きの方ももちろんですが、ブラジリアン・フュージョン好きの方に特にオススメしたい1枚です。森 陽馬

2008年4月6日(日) 村田 和人 「アイ・ラヴ・ユー」

 2006年にムーン・レコードでの5枚、2007年にビクターでの3枚が再発された村田和人。(残るは東芝での3枚)

 今年は13年ぶりのニュー・アルバムをリリース!
といっても純粋な新曲でのニュー・アルバムではなくて、1982年に「電話しても」でレコード・デビューする前に作られていたが、今までにレコーディングされなかった曲を、今の村田和人が新たに自宅録音したもの。

 全10曲、どの曲も“村田メロディー”らしい、ロックあり、ポップスあり、バラードありの普通に他のアルバムに収録されていても全く違和感のない楽曲ばかり。こんな曲たちを30年近くも眠らせておいたなんてもったいない。

 特にこの「アイ・ラヴ・ユー」は好バラード曲。初期ライヴでアンコールのアンコールで歌われた時に偶然耳にして以来、「イイ曲だった」と脳裏の片隅に残っていた曲が毎日CDで楽しめるようになりました。森 勉

通販ピックアップコーナーにも掲載いたしました。

2008年4月7日(月) ボビー・ハンフリー 「Home Made Jam」

 少し前からソウルなどで聴けるフルートの音色が好きで、たまたま入っていたりすると、「おっ♪」となんだか嬉しくて聴き入ってしまいます。

 先日ソニーから『Vintage in 70's』第一弾、ファンキー・フュージョン編としてワー・ワー・ワトソン、ジョージ・デュークなどCDになっていなかった70年代後半のレア盤10タイトルが限定盤で再発されました。
 その中の1枚、前々から気になっていた女性フルート奏者ボビー・ハンフリーの78年作(『フリースタイル』 SICP-1795 \1,890)をこの機会に聴いてみました。

 バックにはリチャード・ティー(key)、エリック・ゲイル(g)、アンソニー・ジャクソン、マーカス・ミラー(b)、スティーヴ・ガッド(ds)など豪華面々。
 彼女のかわいらしい歌声が聴けるメロウな曲もあり、普段フュージョンを聴かない私でも非常に聴きやすい1枚です。

 今日の1曲は、スティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加したアルバムの中でもひと際ファンキーなインスト曲。彼女の流麗なフルートの音色もかっこよくてツボです。
 こんなフルート奏者がいる、この曲のフルートがいい!など、他にもお薦めがありましたら是非教えて頂ければなと思います。東尾沙紀

2008年4月8日(火) 斉藤 花 「I Like Chopin」

 ここ最近、本当にカヴァー・アルバムが多い。いい曲はいい、という根本はあるのだけれど、ちょっと乱発し過ぎ、安易なものが増えてきたかな、という印象です。

 もちろん今までにもカヴァー・アルバムというのはあったのだけれど、もうちょっとコンセプトであるとか、そのアーティストのルーツであるとかが反映された作品づくりになっていたはずですが・・・。まあでも、カヴァーというのは、そのアーティストや曲が広く知られるきっかけになるので、いい曲をカヴァーする、というのは好ましいことだと思っています。

 さて、この斉藤花という女性アーティストのデビュー・ミニ・アルバムも8曲中7曲がカヴァーなのですが、選曲が気に入りました。
 大滝詠一「カナリア諸島にて」、シュガーベイブ「ダウンタウン」、スキマスイッチ「奏」、ユーミン「やさしさに包まれたなら」など個人的にも好きな曲が多かったこともありますが、歌い方もどこかしら古風な歌唱。シンプルなアレンジも聴きやすいです。

 8日は雨が凄かったこともあって、歌詞に♪Rainy Days♪という印象的なフレーズが出てくるガゼボの1983年ヒット「アイ・ライク・ショパン」のカヴァーが心地良く響きました。
 ちなみにバックには、『サニーロック』のコンピで細野さんソックリに「ハリケーン・ドロシー」をカヴァーしていたYANCYと、Sachiko&佐藤克彦の活動で知られる名ギタリスト、佐藤克彦さんがほぼ全曲で参加しています。森 陽馬

2008年4月9日(水) 鈴木 茂 「砂の女」

 4月23日に発売予定の鈴木茂『バンド・ワゴン』と『ラグーン』の新エディション。収録曲の詳細がやっとわかりました。
 以下、ボーナス・トラックの曲目を抜粋すると、

10.GaGaKu 未発表インスト [02:31]
11.八月の匂い アウトテイク・インスト [05:09]
12.微熱少年 アウトテイク・インスト [05:10]
13.ウッド・ペッカー アウトテイク [03:09]
14.夕焼け波止場 アウトテイク・インスト [05:40]
15.砂の女 未編集ロング・ヴァージョン [04:41]
16.八月の匂い 未編集ロング・ヴァージョン [03:52]
17.100ワットの恋人 未編集ロング・ヴァージョン [05:52]
18.ウッド・ペッカー 未編集ロング・ヴァージョン [04:28]
19.銀河ラプソディー 未編集ロング・ヴァージョン [04:14]

 ムムム・・・、どれも30秒〜1分以上のロング・ヴァージョン、そして未発表&アウトテイクインストも収録されていて、なんとも魅力的なボーナスですね。

 約3年前のDVDが付いた『バンド・ワゴン“Perfect Edition”』っていうのはなんだったんだー?と愚痴もこぼしたくなりますが、まあそれはそれとして、今回新たにオリジナルのマルチトラック・テープが見つかったということなので、それを素直に喜ぶことにしましょう。森 陽馬

2008年4月10日(木) 大橋トリオ 「BAUMKUCHEN」

 先日4月3日のこのコーナーでも取り上げた大橋トリオ。
 渋谷のapple storeで夜20時からフリー・ライヴがあったので観に行ってきました。

 荒天にもかかわらずまずまずの入り。アルバム『PRETAPORTER』(PWSR-1017 \2,000)では、ギター、ベース、ドラム、キーボードなど全ての楽器を1人でこなしていますが、本日のライヴではドラム(パーカッション)、ベース、ギターの3人を従えて演奏。
 さすがにアップル・ストア内の音響設備、細かい音が伝わりにくい環境ではありましたが、バンドの演奏もとても良かったです。ちゃんとしたフル・ライヴではキーボード奏者も入るそうなので、5月に渋谷7th floorで行なわれる予定というライヴも楽しみ。

 ちなみに今日のこの1曲「BAUMKUCHEN」(バームクーヘン)は、柿本ケンサク監督、一色紗英なども出演している映画『BAUMKUCHEN』に主題歌として使われた曲だったそう。派手さはないもののやさしく素朴なメロディーが沁みるいい曲です。他の曲も彼のMy Spaceのページで聴くことができるので気になった方はチェックしてみてください。森 陽馬

2008年4月11日(金) Michael McDonald 「Hallelujah」

 ドゥービー・ブラザーズの中〜後期ヴォーカリスト、そしてソロ・ヴォーカリストとしても白人ながらそのソウルフルな歌声で多くの人を魅了してきたマイケル・マクドナルドが久々となる新作『Soul Speak』(UniversalMotown B10806-02)を発売。

 ジャケットビニールに貼ってあったステッカーには、“THE UNFORGETTABLE VOICE RETURNS!”という売り文句が書いてある通り、聴いてすぐ彼のそれとわかる重量感あるソウルフルな歌声は健在。新曲とカヴァーが程よく配置された選曲もなかなか良いです。

 ちなみにカヴァーは、スティーヴィー・ワンダー「Living For The City」、テディ・ペンダーグラスの名唄で知られる「Love T.K.O」、バカラック作「Walk On By」や、意外なところではヴァン・モリソン「Into The Mistic」などを取り上げており、どれも秀逸な出来ですが、興味深いアレンジだったのが、レナード・コーエンの名曲カヴァー「Hallelujah」(ハレルヤ)。

 アルバムのプロデュースを、近年エリック・クラプトンとの仕事で有名な英国白人サイモン・クライミーが担当しており、ネイサン・イースト(B)やドイル・ブラムホール(G)なども参加。クラプトン絡みの人材が多いせいか、この「ハレルヤ」のカヴァーが、どことなくクラプトン「Old Love」を彷彿とさせる出だしのアレンジなのです。

 ちなみに発売元は昨年フランキー・ヴァリの新作もリリースしたユニバーサル・モータウンから。今のところ、まだ国内盤の発売予定がないのが残念です。森 陽馬

2008年4月12日(土) Thurston Harris 「Little Bitty Pretty One」

 1950〜60年代ロックンロール、リズム&ブルースの多くのヒット曲でドラムスを叩いていたアール・パーマーにスポットを当てたCDなんて、よくぞ企画してくれました、という感じです。イギリスのACEレーベルは本当に凄い企画力と実行力のあるレーベルだと思います。

 今日はその中から1曲。黒人シンガー、サーストン・ハリスが放った1957年の大ヒット「リトル・ビティ・プリティ・ワン」という曲。♪ウーン、ウーン、ウッウッウッ・・・♪、または♪アーアーアッアッアッ♪というフレーズが印象的なロックンロール・ナンバーです。

 さて、今日なぜこの曲をここで取り上げたかと言うと、この曲をカヴァーしているグループのことに触れたいからなのです。そのグループとは、“デイヴ・クラーク・ファイヴ”!
 現在彼らのCDがリリースされていないので、裏ワザとしてカヴァーしたことのある原曲を話題にして、無理やりに話を持っていこうというわけです。(ちなみに、シングル「リーリン&ロッキン」のB面でカヴァーしていました。)

 デイヴ・クラーク・ファイヴは、ビートルズと同時期に活躍したイギリスのビート・グループで、当時とても人気のあった5人組です。が、本人たちで音源を管理しているために、10年に1度ぐらいしかCD化されていないので、いつも多くの人々が彼らのCDを探している状態が続いています。

 というわけで、現在は入手困難となってしまっているDC5(こう略します)をみんなで楽しもう、ということで、毎月地下のアゲインで行なっている<気まぐれ音楽寄席>でDC5を特集しようと思っています。今回は音だけではなく、映像で楽しむ“動くDC5”も予定しています。4月20日は日曜日ですので、16時30分開場、17時開演です。よろしく。森 勉

2008年4月13日(日) ベベチオ 「お花畑」

 現在、店内中央の特設コーナーでは、当店がオススメしている新人アーティストを特集。
 
 「最近のJ-POPは今イチいい曲が少ない・・・」と感じている方も多いとは思いますが、今月何度か取り上げた大橋トリオやカットマン・ブーチェ、アオヤマ、シャンティ、モダーン今夜など、一般的には知られていなくても、いい音楽・いいアーティストはまだまだたくさんいるんだ、というのを知っていただきたいのです。

 今日紹介する“ベベチオ”は、関西在住の2人組ユニット(Vo,G 早瀬直久、B 平良正仁)で、今までにミニ・アルバムなどは何枚か発表していましたが、この『ちょうちょ』(XNHL-14002 \2,625)が1stフル・アルバム。

 “21世紀のサニー・デイ・サービス”と評したくなるような純正J-POPで、“喫茶ロック”的な雰囲気がお好きな方なら気に入ること必至の1枚です。

 先日店頭で、「ラジオでベベチオというアーティストを聴いたんだけれどある?」と、いつもはチャートヒットものをお買い上げされる40〜50代男性のお客様からお買い上げいただいたこともありました。ベベチオの音楽の素晴らしさと共に、ラジオでかかる音楽の影響の大きさを実感した次第です。森 陽馬

2008年4月14日(月) A.J.Croce 「Maybe I'm Amazed」

 オムニバス『ア・ソング・フォー・マイ・ファーザー』にも参加していたジム・クロウチの息子である、71年生まれのA.J.クロウチ。

 自身のレーベルから、もう5〜6枚ほどアルバムを出しているようで、最初の頃は国内盤が出た事もあったようですが、過去何作品と、この最新作『CANTOS』(2006)含め、国内盤発売の予定はなさそうです。

 アコースティック・ギターで歌われる曲もありますが、父親に似ている所は意外に少なく、声のかすれた感じやポップな曲調のものは、元々似ているのか似せているのか、ポール・マッカートニーに雰囲気がとても似ています。
 それに彼はピアノを弾くので、+ビリー・ジョエルといった感じもあります。

 今日の一曲は『Maybe I'm Amazed』。やっぱり?な、ポールのカバー曲。
 他にもオリジナルで、ポールみたいな曲があるので、きっと好きなのでしょうね。原曲に忠実なカバーで力強いピアノも魅力的ですが、アルバム全体的にもこれといった個性に欠けているようにも思えます。でも曲もいいですし、好きです。他の作品も聴いてみたくなりましたし、このカバーを聴いて、曲の良さを再認識させられました。ベン・ハーパーも参加しています。東尾沙紀

2008年4月15日(火) HY 「散歩に行こう」

 沖縄出身のロック・バンド、“HY”が新作『Hearty』(HYZK-10005 \2,500)を発売。

 2003年発表の2nd『Street Story』、2004年発表の3rd『Trunk』は素晴らしい作品でお気に入りのアルバムだったのですが、2006年に発表された4thアルバム『Confidence』(オリコン・チャートでは当時1位を獲得)が個人的にはかなり今ひとつの印象だったため、聴く前は半信半疑だったのですが、今回の新作はいいですね。

 メロディーや歌は基本的にHY的な感じで変わらないのですが、今作は笹路正徳によるサウンド・プロデュースがとにかく冴え渡っている。この1曲目「散歩に行こう」でもトロンボーン奏者村田陽一、テナー・サックス山本拓夫他のホーン隊を配し、ポップな楽曲に絶妙の味付けがされています。今までのHYではあまり聴けなかったストリングス・アレンジの楽曲や二胡が入った曲なども新鮮に響きます。

 ただ、このアルバム。タワー・レコード限定盤、新星堂限定盤、HMV限定盤、ツタヤ限定盤、そしてその他のCD店で販売している限定盤、と、エンハンスドで収録されているビデオ・クリップの内容とジャケットが違うものが5種類も出ていて、更に通常盤も発売、とあまりにもファン泣かせのリリース。
 もちろん収録曲自体は同じ。コアなファンは6種類買うのでしょうか? そこまでしてセールス面に躍起になると、逆に顧客が<CD離れ→配信&ダウンロード寄り>になってしまわないか、と売る側としては不安になってしまいます。森 陽馬

2008年4月16日(水) Neil Young 「Be The Rain」

 韓国で“Flower Power Peace Festival”という音楽フェスが5月4、5日にあるらしいのですが、それにニール・ヤングが出演する(!?)という情報が先日入ってきました。

 ニール公式サイトのツアーインフォなどにもそのような情報がないので、本当ー?と思っていたのですが、そのフェスのチラシを見ると・・・、

おおー、一番上に書いてありますねー。

でも、そのフェスの公式サイト(韓国のサイトで音が出ます)を見ると、どうやら出演がキャンセルになった(?)のでしょうか。 出演日にも名前が載っていないですし、よくわからない英語なのですが、ニール側から通知がきた、という内容のことも書いてあるのです。(ちなみに上記チラシに掲載されているリンダ・ロンシュタットも病気のためキャンセルになった模様。)

 うーーーん、このゴールデン・ウィーク。急遽の韓国遠征も本気で考えていただけに、淋しいようなホッとしたような・・・。とにかくもまたいつか、生の勇姿を見たいものです。

 ちなみに今日のこの1曲は、近年のニールの曲で一番好きな曲。2003年発表コンセプト・アルバム『GREENDALE』に収録されていて、そのライヴ・ツアーでも核となっていたナンバーです。森 陽馬

2008年4月17日(木) Noreen Corcoran 「Love Kitten」

 最近、UKのACEレーベルから発売されたCDで評判なのがこのアルバム『FELINE GROOVY』(ACE CDCHD-1168)。

 ジャケットに猫の絵が描かれているように、曲名に“CAT”が付いていたり、曲中に猫の鳴き声が入っていたり、と、1950〜60年代の楽曲を中心に、“猫”関連曲を集めた、という面白い企画のコンピです。
 ブックレットも充実していて、1曲ごとの解説(英語)とオリジナル盤の写真、そしてかわいい猫の絵や写真も満載、というACEならではの丁寧な仕事が嬉しい1枚。

 リーバー&ストーラー作の名曲「Three Cool Cats」(コースターズ)から始まり、トム・ジョーンズによる定番曲「What's New Pussycats?」やジミー・スミスによるジャズ・オルガンの名曲「The Cat」などの有名曲はもちろん、リードーシーやペギー・リー、ルーフトップ・シンガーズから、猫に関連あるのかな?と思いきや最後の最後で猫の鳴き声が入る当時シングルのみの珍しいナンバーまで、とても楽しめる全24曲。

 今日のこの1曲は、当時子供俳優だったNoreen Corcoranという女の子が歌ったガール・ポップ曲で、これが超ポップなイイ曲! メロディーに合わせて繰り返しコーラスとして入る♪キティ・キティ・キティ・ウォーウ・イエー♪というキュートな掛け声♪ 一度聴くと耳から離れなくなること必至です! ニノ・テンポ作の隠れた名曲で、ガール・ポップ・ファンなら必聴のナンバーでしょう。

 他にもジャンル問わず、いい雰囲気の楽曲ばかり。とにかく“猫”好きの方には絶対オススメの1枚です。森 陽馬

2008年4月18日(金) The Parade 「Sunshine Girl」

 ソフト・ロック・ファンが切望していたパレードのCDが、未発表だったデモ曲なども含めた形で再発されました。(SG-20 \2,625)

 彼らは1967年と1968年にA&Mからシングル・レコード7枚を発売しただけで解散したので、活動時アルバムを発表しませんでした。
 それがレア曲も含めて全23曲入りの『コンプリート・レコーディングス』ですから、ありがたい時代になったものです。

 パレードはフィル・スペクターとも関係があるジェリー・リオペル、その後ロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズに加入するマレイ・マクレオド、そのマレイと一緒に曲を作ったりしていたスモーキー・ロバーズの3人で結成。途中から共作者スチュワート・マーゴリンも準メンバーのような形で活動していたりもしました。

 さて、この「サンシャイン・ガール」は1967年のデビュー曲にして唯一のヒット曲。フィンガー・スナッピンが印象的ななんともさわやかな名曲です。

 今回のブックレットで初めて知りましたが、バックにはドラムスにアール・パーマー、ベースにキャロル・ケイ、ギターにジム・メッシーナが参加しているとのことです。森 勉

2008年4月19日(土) 山下達郎 「エスケイプ」

 シングル「ずっと一緒さ」購入者応募抽選、及びTOKYO FM応募抽選だった<山下達郎アコースティック・ミニ・ライヴ2008>。どうやら昨日・本日に封筒で当選通知が届いているようですね。当選された方、おめでとうございます。

 まさかな・・・、と思い、ためしにヤフーオークションを見てみると・・・。いやはや、かなりの数の当選通知が早くもオークションに出品されていて、ハンパじゃない取引額になってしまっているのです。

 もう、なんというか・・・。ホント、なんのための抽選かわからないですね。開催日の直前に行けなくなってしまったのならまだしも、当選通知が届いたその日にオークションに出す、というのは転売目的の何物でもないわけで。
 こうなることはメーカー側も事務所も予想していたことだと思うので、スマイル・カンパニーorワーナーには、昨日・本日アップした出品者から経費を使って力ずくででも落札して、次回のライヴに備えてブラック・リストを作成して欲しいものです。

 さて、上記の話題はさておき、今日のこの1曲は1978年発表のライヴ盤『イッツ・ア・ポッピン・タイム』(BVCR-18025 2枚組 \3,200)より。松木恒秀さんのタメの効いたギターが最高。若き坂本龍一のキーボードプレイも光っています。
 ちなみに、このアルバムも30周年なのですね。たとえばこの「エスケイプ」も途中でフェイドアウトしてしまうので、ロング・ヴァージョンであるとか、別の場所でのライヴ音源を更にプラスして30周年記念BOX、なんていうのも出して欲しいものです。森 陽馬

2008年4月20日(日) Lettuce 「Move On Up」

 まだ3ヵ月先(というか、もう3ヶ月先)ですが、夏フェスの出演アーティストがだんだん出揃ってきましたね。

 フジ・ロックは、マイ・ブラの復活、アンダー・ワールド、プライマル・スクリームなどの大物に加え、ロジャー・ジョセフ・マニングJr、ジェイソン・フォークナー、ベン・フォールズなどのポップ組も出演決定。日本勢ではくるり、エルレガーデン、スペシャル・アザーズ、友部正人(!)なんてところも決定し、更にはマイケル・フランティやギャラクティク、ブーツィ・コリンズ、ベティ・ラヴェットなど、ソウルフルなミュージシャンも色々と出るようです。
 今日紹介するジャズ・ファンク・グループ、“レタス”も決まったようで、このステージは見逃せないですね。

 “レタス”は、ブルー・ノートから2001年にデビューしたソウライヴのメンバーであるエリック・クラズノー(G)、元ソウライヴのサム・キニンジャー(Sax)、超絶ドラマーのアダム・ダイチ(Ds)等、凄腕メンバーによるジャズ・ファンク・ユニット。
 ソウライヴ名義で出演した際、圧巻のライヴで伝説を残したこともあるフジロックでどんなステージを見せてくれるのか楽しみです。

 ちなみに今日のこの1曲は、カーティス・メイフィールドの名曲「Move On Up」のカヴァー。とてもかっこいいのですが、正直言うと途中でフェイドアウトしてしまうこともあり少々物足りなさも感じるカヴァーです。どうせだったら、この曲のアルバム・ヴァージョン(カーティスのこの曲のアルバム・ヴァージョンはよく知られるシングル・ヴァージョンよりも長くて、後半の演奏もファンキー!)でカヴァーして欲しかったものです。まあそれはフジ・ロックに期待、ということでしょうか。森 陽馬

2008年4月21日(月) Leonard Julien V 「Never Give You Up」

 ここ最近はHIP HOP全盛の時代も過ぎ、また歌モノのソウルが復活してきたようです。
 Ne-Yo(ニーヨ)の大ヒットもあり、それに続く甘めのR&B(この場合、リズム&ブルースではなくて“アール&ビー”)が巷では大流行。メーカー側からのインフォでも、“第2のNe-Yo”なんて謳い文句が増えてきました。

 もちろんNe-Yoも悪くはないのだけれども、もうちょっと昔風の歌モノ、80's的な正統派ソウルが聴きたい、という方に今オススメしているのがこのアルバム。(Leonard Julien V 『Reflections Of Soul』 LH-1 \2,625)

 レオナルド・ジュリアン3世はルイジアナ出身、現在はアトランタを中心にシンガー&サックス奏者として活動している43歳のミュージシャン。その彼の満を持して発表したソロ・デビュー作は、古き良き80'sソウルが息づくメロウな傑作に仕上がっており、デヴィッド・ラフィンやルーサー・ヴァンドロスなどのソウル・ヴォーカルがお好きな方に大推薦の1枚です。

 特に6曲目「Never Give You Up」! ジェリー・バトラーの隠れた名曲をナイス・カヴァー! ラストの10曲目「You're Gonna Miss Me」は、彼がリスペクトしているサム・クックの楽曲「Touch the Hem of His Garment」に節回しが似ており、これにも思わずニヤリ。ほぼ全編ミディアム〜スローなので、最近は新譜を買っていない、というソウル・ファンの方でも安心して聴ける作品です。森 陽馬

2008年4月22日(火) 鈴木 茂 「八月の匂い」(未発表アウトテイク・カラオケ)

 1975年発表の名盤中の名盤『バンド・ワゴン』のオリジナル・マルチ・テープが、クラウン・レコードの倉庫から奇跡的に見つかり、鈴木茂がそれを自ら丹念にミキシングしたのがこの<2008スペシャル・エディション>(CRCP-20424 \2,500)です。

 アウトテイクやフェイドアウトされないロング・ヴァージョン、そして未発表曲など今回ボーナス・トラック10曲プラスと、ファンは聴き逃せない内容となっています。
 今までのリマスターとは一味も二味も違う新ミックスは、今まで愛聴してきた方々にはいい意味でかなり刺激的だと思います。

 11曲目に入っている「八月の匂い」はバック・トラックだけですが、通常より1分30秒も長いアウトテイク・ヴァージョン。
 デヴィッド・ガリバルディ(タワー・オブ・パワー)のスティックさばきの見事さが、よ〜くわかるうれしい未発表です。

 リラックス・サウンドの『ラグーン』もプラス7曲で同時発売されています。森 勉

2008年4月23日(水) Alex Chilton 「Don't Worry Baby」

 これまでレッド・ツェッペリンやREMなど様々なミュージシャンがレコーディングしたスタジオであり、レーベルとしても“ビッグ・スター”などポップ・バンドを輩出したメンフィスの<ARDENT Records>(アーデント)。
 このレーベルの音源を60's、70'sに分け、レアもの、未発表音源などを収録した2枚組アンソロジーが出ました(『THANK YOU FRIENDS:THE ARDENT RECORDS STORY』 CDWIK2-273)
 
 ディスク1(60's)にはレアだけあって名前を見てもさっぱりで、その時代の音ということもあってかサイケっぽい結構ヘンテコなものが多い印象です。(時折バーズのようなのがあったりするのですが)

 ディスク2(70's)は殆どが“ビッグ.スター”や、ソロ名義の“アレックス・チルトン”で構成されています。その中の“CARGOE”というグループの曲はなかなか良くて、“THE HOT DOGS”というバンドはジョニー・キャッシュの曲をカバーしてたりします。

 一番最後にはアレックス・チルトンによるビーチ・ボーイズの名曲「Don't Worry Baby」のカバーが収録されています。でも曲の一部という事なのでたった54秒しかなく、少々物足りなさが残りますが、こんなカバーもありますという事で...。
 
 たっぷり48曲。ビッグ・スターほかパワー・ポップお好きな方はチェックしてみて下さい。東尾沙紀

2008年4月24日(木) モアシル・サントス 「The City Of LA」

 “チェット・ベイカー、モアシル・サントス、アントニオ・カルロス・ジョビン、ポール・サイモン、ニック・デカロ、・・・。『ラグーン』をレコーディングする前によく聴いていた。
モアシル・サントスのレコードで聴いた、マーク・レヴィンのエレクトリック・ピアノにショックを受けた。何とか彼と連絡をとり、レコーディングに参加してもらった。これが『ラグーン』のスタートだった。”

 鈴木茂『ラグーン』新エディションのブックレット内に、上記のような鈴木茂さん本人のコメントが掲載されているのですが、そのモアシル・サントスというアーティストは、ブラジル出身のマルチ・ミュージシャン。
 『ラグーン』録音前に鈴木茂さんがよく聴いていた、というのは、ブルーノートからリリースされた1974年録音2ndアルバム『サウダージ』(TOCJ-6718 \1,500)のことだと思われます。

 L.Aでの録音ながら、ブラジル/ラテン/ボッサの風味が効いた爽やかなサウンドがとても心地良い作品で、お聴きになっていただければ、まさに『ラグーン』の下敷きとなった1枚、というのが実感できるブラジリアン・サウダージ溢れる名作。
 4曲目に収録されている「The City Of LA」は、その『ラグーン』にも参加したピアニスト、マーク・レヴィン作による1曲で、RAY PIZZIのフルートの響きが涼しげな風を運んでくれるブラジリアン・フュージョン的なインスト・ナンバーです。

 現在、限定価格の1,500円で発売されているので、『ラグーン』の世界にドップリ浸りたい方は、これからの季節にもピッタリのこの1枚を是非チェックしてみてください。森 陽馬

2008年4月25日(金) Ryan Shaw 「Mish Mash」

 今月は、オーティス・レディングの貴重映像がタップリ収録されたドキュメンタリーDVD(UCBO-1004 \3,800)が発売されたり、ソウル名盤『オーティス・ブルー』のデラックス・エディションが奇跡のリリース、とオーティス&スタックス関連アイテムが色々と出たのですが、それらの“リアル・ソウル”がお好きな方に、是非とも聴いてもらいたいのが、今日紹介するライアン・ショウ。

 まさに、“現代のオーティス・レディング”!
 「ちょっと、大袈裟なんじゃない?」と思われた方でも、一聴して、これは現代の歌手?と問い合わせたくなるような、ソウルフルな歌声と60〜70'sマナーなサウンドなのです。

 このライアン・ショウという黒人アーティストは、ジョージア州出身の27歳。シンガーとして影響を受けたのは、サム・クックとダニー・ハサウェイ、ということで、実際、彼のこの作品『This Is Ryan Shaw』(VICP-64109 \2,310)もその二人の歌声を足してサザン・ソウルを歌わせた雰囲気。

 カヴァーの選曲もやたら渋くて、ウィルソン・ピケット、ジャッキー・ウィルソン、ボビー・ウーマック、チェアメン・オブ・ザ・ボードから、かなりコアなソウル・マニア向けな楽曲を、見事現代に甦らせ新たな息吹を詰め込んでいるのが、とにかく素晴らしい!

 今日のこの1曲は、1962年コンボ・キングスというフィラデルフィアのソウル・グループによる珍しい曲のようなのですが、これがライヴ仕立てになっていて、もう最高にかっこいいのです。
 決して懐古趣味などではなく、この21世紀に新たなソウル魂を沸き立たせてくれるミュージシャンの登場を素直に喜びましょう。森 陽馬

2008年4月26日(土) Inara George 「A Day」

 “イナラ・ジョージ”と聞いてピンときた方は、相当鋭いか音楽通でしょう。彼女は、リトル・フィートの名ギタリスト、故ローウェル・ジョージの娘なのです。

 すでに“ザ・バード&ザ・ビー”というユニットでアルバムを発表し、昨年フジ・ロックにも来日したので、それでご存知の方も多いかもしれませんね。このイナラ・ジョージ名義の作品『オール・ライズ』(PCCY-1869 \2,310)は、ザ・バード&ザ・ビー結成前の2005年に発表していた1stソロ・アルバム。ボーナス・トラックが追加収録されて国内盤が先日発売となりました。

 弾き語りではないものの、比較的シンプルな演奏をバックにしたシンガー・ソングライター作で、全体的に地味な印象もありますが、ジョー・ジャクソンのカヴァーE「Fools In Love」、そしてジャクソン・ブラウンがコーラスで参加している10曲目「A Day」はなかなかいい曲で気に入っています。

 ちなみに“イナラ”という名前は、ジャクソン・ブラウンが名付け親だそう。彼女の歌い方がどことなくジャクソンに似ているように感じるのは僕だけでしょうか。森 陽馬

2008年4月27日(日) Skeeter Davis 「Gonna Get Along Without You Now」

 発売が遅れていた“ジャケガイノススメ”シリーズBMG編、3タイトルがめでたくリリースされました。

 マーゴ・ガーヤン『テイク・ア・ピクチャー』、ロリー・ブロック『ロリー・ブロック』、そして、このスキーター・デイヴィスの『レット・ミー・ゲット・クロース・トゥ・ユー』(BVCM-35253 \2,310)の3枚です。完全生産限定紙ジャケ仕様ですので、興味ある方はお早めに。

 スキーター・デイヴィスは1961年の大ヒット「エンド・オブ・ザ・ワールド」が有名ですが、この作品は1964年に発表したもの。カントリー畑で有名なスキーター・デイヴィスですが、このアルバムは典型的な<60'sガール・ポップス>で占められているので、ポップス・ファンもタップリ楽しめる1枚。
 また、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作品がアルバム・タイトル曲を含めて3曲収録されているのがうれしいところ。

 この今日の1曲はキング&ゴフィン作ではありませんが、ペイシェンス&プルーデンスのかわいらしいヒット曲のカヴァー(彼女たちのもカヴァー・ヒットなのですが)で、♪ア〜ハ、ウーフ♪のリフレインが個人的には大好きな1曲です。
 アルバム全体のプロデュースはチェット・アトキンス、アレンジはアニタ・カーが担当しています。森 勉

2008年4月28日(月) Bob Dylan 「Just Like A Woman」

 先日、劇場公開中の映画『ファクトリー・ガール』を鑑賞。
 1960年代半ばアンディ・ウォーホールがニューヨークに構えていたスタジオ“ファクトリー”。そこに集っていた様々なアーティスト等に混じって、自由奔放な魅力を振りまいていた女性、イーディ・セジウィックにまつわる物語を描いた映画です。

 彼女自身は、麻薬過剰摂取で1971年に28歳という若さで亡くなってしまっているため、華々しくも悲劇的なストーリーではありますが、イーディ役のシエナ・ミラーとウォーホール役のガイ・ピアースの熱演もあり、先鋭的なウォーホール的60'sカルチャーを現代で楽しむことができる映画に仕上がっています。

 しかしながら、イーディ、ウォーホール、ミック・ジャガー、ニコなどを含め、実在の人物が映画内にて実名で描かれている中で、あからさまにボブ・ディランとわかる役名のみ“ビリー”となっており、“ボブ”ではなくビミョーにぼかされているのに苦笑・・・。実際、当時ボブ・ディランとイーディは付き合っていたそうですし、映画内でもその“ビリー”とイーディのベッド・シーンがあるということに、ディラン側が難色を示したのでしょうか。どうせだったら、思いっきり割り切って、その“ビリー”をジェイコブ・ディラン(ディランの息子 exウォール・フラワーズ)に演じてもらいたかったものです。(それは絶対に無理だったでしょうが)

 さて、ボブ・ディランがイーディと付き合っていたのはこのアルバム『ブロンド・オン・ブロンド』(1966年発表 MHCP-373 限定紙ジャケ \1,890)を録音した頃と一般的には言われています。この今日の1曲「Just Like A Woman」(邦題:女の如く)もディランがイーディにインスパイアされて書いた曲で、他にも直接的な愛を歌った曲(「I Want You」など)が多いのは、イーディとの激愛があったからでしょうか。
 ちなみに当然のことながら映画内では、ディランの曲は1曲も使われておりません。森 陽馬

2008年4月29日(火) Bryan Adams 「Mysterious Ways」 

 すでに関東圏では劇場公開が終了してしまっているのですが、数週間前に観た映画『フローズン・タイム』(原題『Cashback』)は実に面白い作品でした。

 <恋人との破局から不眠症となってしまった美大生が、“時間を止めることができる”という不思議な能力を持つようになり、そしてアルバイト先のスーパーマーケット店員女性に恋をする>という、文字にするとなんてことのない恋愛映画で、ツっコミどころも満載ではあるのですが、映像面を中心にとても凝っていて、コメディー的要素もふんだんにあり、とても楽しく観ることができました。

 ショーン・エリスというファッション写真家として有名なアーティストによる初監督作ながら、印象に残る美しい映像/カットが所々に配置されており、特にラストシーンはストーリーと共にロマンチックなことこの上ない名場面といえるでしょう。(全編にわたって女性の裸がたくさん出てくる、というのもポイント高いですね!・・・なーんて、失礼しました・・・)。

 さて、その映画内で使われていたのが今日のこの1曲。ブライアン・アダムスの新作アルバム『11』(UICP-1089 \2,500)からのナンバーです。

 アコースティック・ギターのカッティングから始まるミディアム〜スロー・テンポの曲ですが、いかにもブライアン・アダムスらしい楽曲で、彼自身による中間のギター・ソロも味があっていい1曲。アルバム全体的にも聴きやすいロックなナンバーが並び、健在ぶりを感じさせてくれます。森 陽

2008年4月30日(水) カーメン・マクレエ 「アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー」

 ロック好きでも、たまには渋くしっとりとしたジャズ・ヴォーカルを聴きたくなってしまいます。そんな時、よく引っぱり出してくるのがこのアルバムです。(カーメン・マクレエ『グレート・アメリカン・ソングブック』 WPCR-75360〜1 \2,800)

 2枚組にたっぷり詰め込まれた名曲・名演・名唱。南青山のブルーノートでいいライヴを2ステージ続けて観たような満足感を得られる名作ライヴCDで、1971年L.Aのクラブ“ダンテ”での録音。バックはピアノ、ギター、ベース、ドラム、というホーンなしの編成で、カーメン・マクレエのヴォーカルがより際立って聴こえてきます。

 彼女はこの録音時、もうすぐ50歳という年齢。貫禄と円熟味を感じさせてくれます。「サテンドール」、「デイ・バイ・デイ」あたりの曲にしようかとも思ったのですが、今日は個人名を歌詞の中に織り込んだ「アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー」。

 この曲の前はギターのジョー・パスの伴奏をフィーチャーした曲だったので、その繋がりか?
 ♪私の目にはあなたしか見えないの、ジョー・パス♪
と歌うところが実にシャレてます。

 この曲は1959年、R&Bヴォーカル・グループ、フラミンゴスのヒット曲としてオールディーズ/ポップス・ファンには知られていますが、元はハリー・ウォーレル(作曲)とアル・ダービン(作詞)が1934年の映画「Dames」(泥酔夢)の主題歌として作ったとのことです。アート・ガーファンクル、山下達郎のカヴァーも秀逸でしたね。森 勉





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