PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月6月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年6月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

この月の後半は、PC通信不具合のため、更新ができない時期がございました。
あらかじめご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年6月1日(日) Miriam Makeba 「Pata Pata」

 イギリスのACEレーベルから発売されているソングライター/プロデューサー・シリーズ編集盤は、リーバー&ストーラー、ドク・ポーマス&モート・シューマン、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィンなど素晴らしい内容が評判になっています。

 ここでも何度か取り上げていますが、今回は昨年、山下達郎の<サンデー・ソングブック>でも特集された、ジェリー・ラゴヴォイ作品集が発売されました。(『The Jerry Ragovoy story』 輸入ACE CDCHD-1183)

 1950年代から1970年代のソウルフルでブルージーながらも、親しみやすい曲がタップリ楽しめます。
 ローレイン・エリソン「ステイ・ウィズ・ミー」、メイジャーズ「ア・ワンダフル・ドリーム」、ガーネット・ミムズ「クライ・ベイビー」、そしてローリング・ストーンズのカヴァーが有名なカイ・ウィンディング「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」など、注目曲が目白押しです。

 「パタパタ」は1967年全米12位の大ヒット。
 当時、高校生でしたが、この曲はよく聴きましたね。歌詞はアフリカの言葉で何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたが、リズム感が好きでした。

 アレンジ&プロデュースはジェリー・ラゴヴォイ。
 曲は彼とミリアム・マケバとの共作。ちなみにミリアムは1968年、「グレイジング・イン・ザ・グラス」のインスト・ヒットを放ったヒュー・マサケラの奥さまです。森 勉

2008年6月2日(月) Steve Tyrell 「A House Is Not A Home」

 渋い低音ヴォーカルが魅力のスティーヴ・タイレル。新作はバカラックのカヴァー集。・・・と、これだけだと、よくありがちな単なるバカラック作品集に感じるかもしれませんが、これが素晴らしく感動的な1枚でした。(『バカラックへの想い』 VICJ-61560 \2,520)

 彼は元々バート・バカラックやディオンヌ・ワーウィックのリリースで知られるセプター・レーベルのA&R(アーティスト育成・契約などを担当するディレクター的役割)として活躍。数々の名作にプロデューサーとしても携わり、あるきっかけで50歳でソロ・シンガーとしてデビュー。その後6枚ほど作品を発表していましたが、今作のバカラック集こそが彼の集大成ともいえる作品のようです。

 本人による解説及びライナーノーツによると、2002年にこのバカラック作品集を手掛けている途中、彼の奥さんがガンで亡くなってしまったとのこと。一時期思い出が詰まったバカラック作品には手が付けられない状態になったものの、それを克服し6年越しで完成させたのが本作なのです。

 バカラック本人がピアノを弾き、ジェイムス・テイラー、ロッド・スチュアート、ディオンヌ・ワーウィック、マルティナ・マクブライドという豪華ゲスト・ヴォーカリスト陣が一節ごとに歌い継いだD「世界は愛を求めている」が、聴き所としてはこのアルバムのハイライトなのかもしれませんが、それ以上に心に沁みるのが今日のこの1曲「A House Is Not A Home」。

 1964年同名映画の主題歌として作られたこの曲は、
♪椅子は今も変わらず椅子のまま〜その上に座る人がいなくなっても〜でも椅子は家じゃない〜そして家は家庭じゃない〜そこにしっかり抱きしめる相手が誰もいなくて、おやすみのキスをしてあげる人がひとりもいなければ (中略) ときどききみの名前を読んでしまう (中略) ひとりぼっちで生きるなんていやなんだ〜この家を本物の家庭に戻してくれ♪
という歌詞が切ないトーチ・ソング。

 亡くなった奥さんの追悼式に、この曲をバカラックによるピアノ伴奏/ジェイムス・イングラムによって歌われたそうです。
 今作に収録されているスティーヴ・タイレル本人が歌ったこの曲は、そういうバックグラウンドを知るとより深みが感じられる1曲といえるでしょう。森 陽馬

2008年6月3日(火) トータス松本 「FA-FA-FA-FA-FA (SAD SONG)」

 ウルフルズのトータス松本がソロ名義でシングルを発売。(WPCL-10505 \1,200)

 上戸彩主演ドラマ「ホカベン」主題歌の「涙をとどけて」が1曲目ですが、ノンタイアップの2曲目「いつもの笑顔で」が、王道サザン・ソウル的なサウンドを見事日本語歌謡に昇華させていてすごくイイ曲! (バックは古田たかし、井上富雄、伊東ミキオ、山本拓夫という渋いメンツ!)

 そして、3曲目には、オーティス・レディングの名曲「FA-FA-FA-FA-FA (SAD SONG)」をカヴァー。これも3分足らずながら、彼のR&B好きが伝わってくるような1曲です。(こちらはドラムスで“日本のリヴォン・ヘルム”こと椎野恭一が参加)
 なお、CDのレーベル面も“ATLANTIC”のロゴが入ったレーベル(ソウルファンにはお馴染みの赤と黒のデザインのやつね)になっていて、そういう部分にもこだわりが感じれますね。

 プロデュースはもちろん伊藤銀次&トータス松本。2003年に発表したトータス松本のソロ作『トラベラー』(TOCT-24938 \3,000)が素晴らしい作品だっただけに、次作にも期待が高まります。森 陽馬

2008年6月4日(水) 告井 延隆 「イン・マイ・ライフ」

 センチメンタル・シティ・ロマンスのリーダー、告井延隆、初のソロ・アルバム『サージェント・ツゲイズ・オンリー・ワン・クラブ・バンド』は、アコースティック・ギター1本によるインスト・アルバムです。

 それもダビングなしの本当に一発録り!で、ビートルズのバック演奏、コーラス、そしてリード・ヴォーカルのメロディのニュアンスを再現しよう、というのですから、普通のインストにあるような安易な方法でないのが凄いところです。

 6月2日(月)当店地下のアゲインでは、そのCDの音を目の前で体験できるライヴが行なわれました。この今日のこの1曲「イン・マイ・ライフ」も披露され、CDの音そのままに繊細な音作りが生で堪能できました。

 ライヴは約2時間、全31曲。まだCD化されていない曲も含めてタップリ聴けました。
 コード・チェンジや弦の弾き方を近い位置で見れて、その超絶ギター・テクニックとビートルズ・メロディーの良さにひたれた素晴らしい夜になりました。その場にいた皆さんは、天気は雨でしたが良い気分で家路につかれたのではないでしょうか。
 なお、7月28日(月)にアゲインでの再ライヴが急遽決定したそうです。まだご覧になったことがない方にこそ見ていただきたいライヴですので、ご興味ある方は是非。森 勉

2008年6月5日(木) The Explorers Club 「Forever」

 今までにも“ビーチ・ボーイズ・フォロワー”と評されるバンドは数多くいましたが、おそらく今日紹介するこのエクスプローラーズ・クラブが最もビーチ・ボーイズ的なサウンドとコーラスを受け継いでいるのではないでしょうか。
 大袈裟に聞こえるかもしれませんが、音を聴いていただければビーチ・ボーイズ・ファンの誰しもが納得するはず! そのくらいこのバンドの音は21世紀の現代において、本格的に“ビーチ・ボーイズ”しているのです。

 エクスプローラーズ・クラブは、アメリカ南部、サウス・キャロライナ出身の6人組バンドで、このアルバム『Freedom Wind』が1stアルバム。(国内盤は紙ジャケ ARTD-5532 \2,200)
 ジャケットがビーチ・ボーイズの『All Summer Long』的な雰囲気ですが、収録されている楽曲全12曲も彼らのオリジナル曲ながら、各曲ワンパートごとにビーチ・ボーイズの名曲的要素が要所要所に散りばめられています。

 1曲目「Forever」(これもデニスのあの曲ではなく、オリジナル曲です)は、最初の出だしがロネッツ「Be My Baby」のイントロ部分、そしてAメロからサビあたりはどことなく「Don't Worry Baby」的、そして間奏はモロに「Please Let Me Wonder」・・・、と、ビーチ・ボーイズ・サウンドのオイシイところをうまーく繋ぎ合わせていて、なおかつメロディーがキャッチー。ヴォーカルもいい感じで、コーラスの配置も文句なしなので、ホント、21世紀に若返ったビーチ・ボーイズの新作を聴いているような錯覚を覚える1枚です。

 ちなみに解説は萩原健太さんが執筆。健太さんも絶賛しています。
 蛇足ですがCDに貼付されているシールに、“サンシャイン・サイケ・ポップ・バンド”という形容がされているのですが、“サイケ”では全然ないですね。ある意味、“正真正銘のビーチ・ボーイズ・フォロワー・バンド”が正しいと僕は思います。森 陽馬

★なお、デニス・ウィルソンの『Pacific Ocean Blue』、国内盤の発売も決まりました。7月23日発売で3,780円(解説・歌詞・対訳付)。輸入盤は6月中〜下旬入荷予定。ビーチ・ボーイズ情報コーナーも近々更新したいと思っております。

2008年6月6日(金) 小坂 忠 「セイリング」

小坂忠@横浜サムズアップを見てまいりました。

 バックはセンチメンタル・シティ・ロマンスから中野督夫、細井豊、ドラムスは元シュガーベイブの上原裕、そしてゲストに鈴木茂、とアナウンスされていたのですが、蓋を開けてみると更にEPOが飛び入りで出演し「ダウンタウン」を熱唱!→更に金子マリ&森園勝敏が加わってキャロル・キング・カヴァー「君の友だち」!→更に更に鈴木茂コーナーで自身の名曲連発!と、オマケも盛りだくさん!

 この後も「機関車」、「ほうろう」などの名曲、2001年作『PEOPLE』から「Hot or Cold」、「I Believe In You」などを演奏。(個人的には忠さんによる鈴木茂作「氷雨月のスケッチ」が良かったですねー。) ラストはオールキャストで「Birthday」、と小坂忠さんの暖かい人柄に癒された至福の2時間40分でした。

 観客との一体感が一番生まれたのは後半に歌われたロッド・スチュアート「セイリング」のカヴァー。「People Get Ready」と同じように日本語歌詞を付け加えたヴァージョン。
 「今年の秋にレコーディングして、来年始めに新しいアルバムを発売」とMCでおっしゃっていたので、その新作にも収録されるかもしれませんね。楽しみです。

 ちなみに鈴木茂のギターももちろん良かったのですが、細井豊さんのキーボード・プレイが冴え渡っていて、各々の楽曲により温か味のある躍動感が出ていたのが印象的でした。森 陽馬

(掲載ジャケットは前作『PEOPLE』(ESCL-2267 \3,059)

2008年6月7日(土) ハーパース・ビザール 「59番街橋の歌(フィーリン・グルーヴィー)」

 今年はワーナー・ブラザース・レコード部門が出来てから50周年! それを記念して日本のワーナーでは粋な企画がスタートしました。

<フォーエヴァー・ヤング・スペシャル>シリーズ。アーティスト単位で再発することが多かった<フォーエヴァー・ヤング・シリーズ>ですが、今回は様々なアーティストの歴史的名盤をナイス・チョイス。価格も1,800円で解説・歌詞・対訳付といううれしい心づくし。以前このコーナーで取り上げたボニー・レイットをはじめ、シールズ&クロフツ、アメリカ、マリア・マルダー、フィフス・アヴェニュー・バンド、ニコレット・ラーソンなどが発売されました。6月25日にはハース・マルティネス、ジェシ・コリン・ヤング、リッキー・リー・ジョーンズなどが2008年ニュー・デジタル・リマスターで出ます。楽しみです。

 ハーパース・ビザールは1967年デビュー。ソフトなヴォーカル・ハーモニーが魅力でした。演奏は古き良きアメリカ映画で奏でられているようなオーケストレーションで、これも落ち着いた雰囲気を演出してくれます。

 この曲はポール・サイモン作品で、サイモン&ガーファンクルのレパートリーにもなっていますが、ハーパース・ビザールは中間部分にアカペラ・コーラスのパートをあしらい、彼らならではの新しさをアピールしています。デビュー・シングルとして当時大ヒットを記録しました。メンバーのテッド・テンプルマンは、後にドゥービー・ブラザーズやヴァン・ヘイレンなどのヒット作を生み出し、プロデューサーとして大成功しました。

 そうそう、忘れていけないのが、今シリーズのデザイン上の隠し味。レーベル・デザインがすべてオリジナル・レコード・レーベルの色・デザインを再現しています。この『フィーリン・グルーヴィー』(WPCR-75385 \1,800)は懐かしのゴールド・レーベル! 森 勉

2008年6月8日(日) Nicely Nice 「Fine View」 

 本日当店地下のアゲインにて、マイクロスター『microstar album』発売記念イベントが行なわれ、大盛況のうちに無事終了。マイクロスターの佐藤清喜さま、イベントを取り仕切られた土橋一夫さま、VIVID SOUNDの寺村さま、他関係者の方々から、お越しになられた皆々様、どうもありがとうございました。

 そのイベントに合わせて、佐藤さまが持ってきてくれたのがこのアナログ12インチ。“Nicely Nice”は佐藤さまがマイクロスター前に活動していたユニット、“ナイス・ミュージック”の流れを引き継いだテクノ・ポップ・プロジェクトで、このアナログ盤にはその“Nicely Nice”の唯一の音源が収録。

 マイクロスターのオールディーズ/ガールポップ的なサウンドとは全然違って、エレクトロニカ・サウンドに佐藤さまご自身のソフト・ヴォーカルが入るスタイル。音楽的志向がマイクロスターとは異なるため、マイクロスターをお好きな方皆が必ずしも気に入るようなサウンドではないかもしれませんが、アンビエント/エレクトロニカものをお好きな方、YMOも大好き!という方なら是非聴いてもらいたい12インチです。

 これがリリースされたのは1999年で、当時佐藤さまはエール(フランスのテクノ・ラウンジ・ポップ・ユニット“AIR”)の1stをよくお聴きになっていたとのこと。僕の個人的な印象としては、<エイフェックス・ツインのアンビエント・ワークスに多少ドラムン・ベース的な展開などを取り入れ、そこにヴォーカルも入れた雰囲気>に感じました。

 佐藤さまのご自宅にもあと30枚くらいしか残っていない、ということなので、ご興味ある方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

2008年6月9日(月) The Draytones 「Summer's Arrived」

 UKに1965 Recordsという名のレーベルがあるのですが、そこからはなかなか良いバンドが色々と出てきています。
 
 アルゼンチン出身のガブリエル・ボカッチ(vo./g)を中心にノース・ロンドンで結成された3人組、ザ・ドレイトーンズもその内の一組。昨年ミニアルバムをリリースし、サマソニでの来日も果たしています。

 彼等の初のフル・アルバムとなる『アップ・イン・マイ・ヘッド』(BVCP-25136 レーベル名にちなんで“\1,965”)はミニアルバムに引き続き、スタン・カイバートがプロデュース。プロデューサー繋がりでポール・ウェラーが気に入り、5月のツアー・サポートに抜擢されました。
 
 ガブリエルのギターヒーローはデイヴ・デイヴィスという事で、キンクスなど60〜70年代バンドに大きな影響を受けています。歌や演奏が上手すぎない所がまた昔っぽい雰囲気が出てて良いのです。レビュー等にサイケと書かれている事が多いのですが、曲は割とキャッチーなものが多いので、とても聴きやすいと思います。
 
 この曲はタイトルで選びました。ずばり「夏が来た」。
 最後フェイド・アウトして、続けて聴くとモッドなオルガン・インストが流れてきます。こういう所にちょっとしたこだわりが見えて、とてもセンスがいいなと思いました。東尾沙紀

2008年6月10日(火) GONZALES 「Gentle Threat」

 2007年世界的に最もブレイクした女性シンガーの1人、“ファイスト”。
 彼女の名前を知らなくても、iPodのCM曲「1234」(ワン・トゥ・スリー・フォー)はどこかでお聴きになられたことがあるでしょう。
 そのファイストの彼氏、であり、その「1234」が収録されている大ヒットアルバム『リマインダー』をプロデュースしたのがこの“ゴンザレス”。

 本名ジェイソン・ベック、カナダ生まれながらベルリンに移住し、元々はエレクトロ・ヒップホップのクリエイターだった、という彼が数年前にリリースした作品が『ソロ・ピアノ』。
 ゴンザレス自身の2008年発表新作『SOFT POWER』(輸入盤。今のところ国内盤発売予定なし)発売を機に、国内盤で値段が安くなって再発されました。(PCD-22315 \2,310)

 タイトル通り、彼が弾くソロ・ピアノ作品ですが、ジャズでもなく、クラシックでもなく、だからといってロックでもない。でもイージー・リスニング的なピアノとも違う独特な浮遊感を持ったソロ・ピアノの奏は心地良いアンビエントな佇まい。ジェーン・バーキンの2003年発表アルバムをレコーディングしている合間に作ったそうです。

 16曲収録されていますが、今日のこの1曲には10曲目「Gentle Threat」。この曲が、矢野顕子さん1992年発表作『SUPER FOLK SONG』に収録されている山下達郎カヴァー「スプリンクラー」の雰囲気にそっくりなのです。
 坂本龍一や矢野さんのピアノ曲をお好きな方、さりげないBGMお探しの方にオススメの1枚。インナースリーヴにプリントされている謎の影絵がさりげなくシャレてます。森 陽馬

2008年6月11日(水) PF SLOAN 「孤独の世界」

 2007年末、山下達郎のサンデーソングブックで“PF SLOAN特集”をやった際、多くの方から問い合わせを受けたものの、その時は、PFスローンのこれといったいい編集盤CDが発売されていませんでした。

 ところが、同じくサンデーソングブックで特集されたことがあったジェリー・ラゴヴォイと同様、このPFスローンのCDもACE傘下のレーベル(BIG BEAT)から最近めでたく発売になりました。(“ACE”はUKの再発レーベルなのですが、サンデーソングブック・ファンがいるのかも・・・?)

 PFスローンはルー・アドラーが主宰していたダンヒル・レーベルのソングライターとして活躍。バリー・マクガイア「明日なき世界」(原題:Eve Of Destruction)、グラス・ルーツ「あなたのメロディー」(原題:A Melody For You)などのヒット・シングルは彼の作品です。

 彼の代表曲ともいえるこの「孤独の世界」(原題:From A Distance)は1966年にリリースしていたのですが、当時アメリカではほとんど売れず、少し遅れて1969年に日本で大ヒット。そのため、アメリカでの編集盤などではこの「孤独の世界」が入っていなかったりしたのですが、さすがACE傘下のBIG BEAT! ブックレット内には当時の国内盤EPのジャケットも掲載され、上記の「明日なき世界」、「あなたのメロディー」をPFスローン自らが歌ったヴァージョンも今回ちゃんと収録されています。

 彼のこの当時の楽曲は、ボブ・ディランに影響を受けたものが多いので、オールディーズ・ファンのみならず、60'sフォーク/ディラン好きの方にも聴いてもらいたい1枚です。森 陽馬

2008年6月12日(木) Beach Boys 「Baby Blue」

 6月半ば、ということもあり、夏らしい陽気の日が増えてきましたね。ビーチ・ボーイズの各種アルバムが期間限定1,500円で再発され、これからも様々なBB5関連アイテムが発売予定。すっかり“ビーチ・ボーイズ・モード”といった感じです。(当店の場合は一年中かもしれませんが・・・)

 さて、最近ビーチ・ボーイズのアルバムとしては『L.A.』をよく聴いています。1979年発表カリブ/CBS移籍第一弾作で、一部ファンには不評?な「Here Comes The Night」のディスコ・ヴァージョンが収録されているせいか、敬遠されがちな1枚なのですが、いやいや、これは隠れた名作ですよ。(TOCP-54105 \1,500)

 ブライアン&カールの共作@「Good Timin'」からA「Lady Lynda」への穏やかな流れ、日本語で歌われる和やかな「想い出のスマハマ」など、ブルース・ジョンストンのやさしい音作りが楽しめる好盤です。

 今日の1曲には8曲目「Baby Blue」。この曲はデニス・ウィルソンが発表する予定だった幻の2ndアルバム『バンブー』に収録予定だった楽曲で、目立たないながらもデニスらしいイノセントな輝きを放つ切ない小品的名曲。シカゴのロバート・ラムの奥さんであったカレン・ラム(後にデニスとも結婚するがすぐに離婚)へ捧げた1曲だったそうです。

 ちなみにデニスの唯一のオリジナル・アルバム『Pacific Ocean Blue』がもうすぐ再発になるのですが、そのボーナス・ディスクに、この楽曲を作った時期の“バンブー・セッション”が初めて公式に収録されます。残念ながらこの「Baby Blue」は入らない予定ですが、何度かブートで出たことがある音源もかなり音が良くなっている、ということなので楽しみですね。森 陽馬

2008年6月13日(金) ホルスト・ヤンコフスキー 「森を歩こう」

 ミドル60'sポップス・ファンには、ピアノ・インストゥルメンタルの名曲としてこの曲を記憶している方々も多いのではないでしょうか?
 軽やかなピアノの音色とメロディはまるで森の中を楽しそうに散歩している気分にさせてくれるようです。(ちなみに「森を歩こう」の原題は「A Walk In The Black Forest」と言います。)

 ホルスト・ヤンコフスキーはドイツ出身のジャズ系ピアニスト。1965年、突然この曲がアメリカで大ヒット。日本でもラジオのヒットパレードではビートものにまじって、一服の清涼剤的な感じでよく流れていたのを想い出します。

 単体でCD化されることも難しいし、イージー・リスニングのジャンルなので、オムニバスにもあまり収録されなかったり、でしたが、なんとこんなCDの中に見つけてしまいました。

 ユニヴァーサルが今年3〜4月に全48タイトルリリースした<ポピュラー定番大全集>(2枚組\2,500)の中の『ムード・ミュージック全集』(UICY-8077 2CD \2,500)に入っていました。
 ポール・モーリア、マントヴァーニ、フランク・チャックフィールドなどの中にポツンとホルスト・ヤンコフスキーが1曲! よくぞ入れてくれました。森 勉

2008年6月14日(土) Char 「All Around Me」

 先日、ビルボード・ライヴ東京でジム・コープリーwith Charのライヴを見てきました。

 いやー、これが素晴らしく良かったです。B.B.KINGで有名なブルース・ナンバー「Everyday I Have The Blues」から、Char弾きまくり!ポール・ジャクソン(b)のベース爆発!小島良喜のキーボードも絶妙!で最高のグルーヴ感。

 ジェフ・ベックなど多数の名セッションを経験してきたジム・コープリーは英国の貴人的佇まい。その彼のドラミングはタムをほとんど使わないスタイルで、重量感あるリズムやフィルインをスネアとバスドラの見事なコンビーネーションで聴かせてくれました。当たり前ですが、やはり単なる上手いだけのドラマーではないですね。

 ショー半ばから元ホワイト・スネイクのギタリスト、ミッキー・ムーディがゲストとして加入。チャーのギターもよりドライヴ感を増し、ラストの「Smoky」もかっこよかったですねー。(“ビルボード・ライヴ”はロック向きのハコではないかな、と思っていたのですが全然そんなことなかったです。迫力あるライヴを楽しめました。)

 どの曲も良かったですが、やはり「All Around Me」は沁みました。
 チャーが曲前に「ジムと初めてスタジオで録った曲です」とMCで話して始めたこの曲は、1988年発表作『PSYCHE』(BVCK-17013 紙ジャケ \2,415)に収録の大名曲。チャーは主にギタリストとして語られることが多いのですが、ソングライターとしての才能も強く感じさせてくれる1曲です。ギターもいい音してましたね。森 陽馬

2008年6月15日(日) Led Zeppelin 「Stairway to Heaven」

 海外ローリング・ストーン誌で、“100 Greatest Guitar Songs”と題して、ギター・ソングのベスト100が公開されています。(上記リンク先は、ローリング・ストーン誌のサイトでベスト100が掲載)

 1位は・・・、ちょっと予想外ですが、言われてみれば納得の1曲。2位は・・・、これもまあ順当なのでしょうか。3位は・・・、これもまあ納得といえば納得ですが、3位に入ってくるのは意外な感じもします。
 ということで、レコード・コレクターズ誌のベスト・アルバム100シリーズに続いて論議を呼びそうな順位ではありますが、なんだかんだ言って楽しいですね。日本人が選ぶとまた全然違った順位になりそう。

 さて、僕の予想はこれが1位だと思っていました。レッド・ツェッペリンの71年発表4thアルバム(『4』 WPCR-75004 \1,800)に収録されている名曲「天国への階段」。
 この曲は8位だったのですが、ベタすぎて逆に票が集まらなかったのかもしれませんね。(LZは「Whole Lotta Love」が11位にもランクイン)

 ちなみに、ツェッペリンの各アルバムがSHMCD仕様でまた限定紙ジャケで8月に再発予定だったのですが、諸事情により発売中止になったようです。森 陽馬

2008年6月16日(月) Steve Winwood 「Fly」

 ハモンド弾きまくりの名作『アバウト・タイム』から約5年振りに新作『ナイン・ライヴス』をリリースしたスティーヴ・ウィンウッド。国内盤発売から2週間、最近やっと限定盤(SICP-1856 \3,780)に付属のDVDを鑑賞しました。

 30分ちょっとという短い時間ですが、自宅でのインタビュー、バンドとのリハーサルなどの他、トラフィック等の昔の映像、クラプトンとの昨年の共演ライブ映像等を挟みつつ、彼のこれまでの活動を簡単に振り返るという意味でも、なかなか充実した内容でした。

 DVDの中でも語られていますが、アルバムの中でも中心的役割を果たしているという「Fly」という曲。伸びやかな歌声とパーカッションやサックスの音が心地良く、リラックスした雰囲気が伝わってくる個人的にとても好きな曲です。
 アルバムのハイライトとしてはやはり、クラプトンが渋いギター・ソロを弾く、新作のリード・トラック「Dirty City」も聴きものです。

 ちなみに余談なのですが、映像の中に登場する、彼の自宅周辺の絵に描いたようなきれいな牧草地を見て、彼と同じ48年生まれであるミュージシャン、トム・ロビンソンが「ウィンウッドは狩猟が趣味なんだよ。」と教えてくれたのをふと思い出しました。東尾沙紀

2008年6月17日(火) ハンバートハンバート 「透明人間」

 本日は18日新譜が色々と入荷。(B'zベスト、ラヴ・サイケデリコベスト、バンプ・オブ・チキン、グレイプバイン、柴田淳、リンゴスター紙ジャケ再発、ニック・デカロ再発、アル・グリーン新作など)
 やはりB'zのベスト盤は爆発的とまではいきませんが、ここ最近のオリジナル・アルバムよりは売れましたね。さすがに20周年ということで、「ここんとこ買っていなかったけれど久々にCDを買おうかな」という方が手に取っていた感じです。

 さて、今週出た日本人アーティストの新譜で、オススメしたいのはなんといってもこれでしょう! ハンバートハンバートの新作『まっくらやみのにらめっこ』(MDCL-1489 \3,150)。

 “ハンバートハンバート”は佐野遊穂と佐藤良成の男女二人によるユニット。フェアポート・コンヴェンション的なブリティッシュ・トラッドの香りがするサウンドに、アメリカン・ルーツや日本フォークの良心をまぶしたような一本筋の通った楽曲。そして、なんといっても佐藤良成が手がける詞世界が今作は特にすごいのです。
 特にD「国語」とF「透明人間」。この2曲は歌詞カードで文字を追わず、実際に歌を耳にして聴いてもらいたいですね。

 時として、彼らの歌詞は暗いと形容されることがあるのですが、実際に暗いのではなくて、人間として真正直に感じた心象をそのまま表現しているだけなのだ、と思うのです。
 だから気取った日本語詞で埋められたヘタな作り物の“ウタ”なんかよりもまっすぐに聴く者の心に届くのでしょう。
 はっきりいって万人に受けるサウンドや歌詞ではないのですが、邦楽史に残る名盤の誕生です。森 陽馬

2008年6月18日(水) Al Green feat Corinne Bailey Rae 「Take Your Time」

 気が早いかもしれませんが、“2008年SOULベスト・アルバム”!と言い切ってしまいたいほど、素晴らしい作品が登場しました。アル・グリーンの新作『Lay It Down』(TOCP-70510 \2,500)。

 1970年代にハイ・レーベルという黒人レーベルから名作『Let's Stay Together』を発表するなど活躍したアル・グリーン。80年代以降はゴスペルの世界へ行ってしまってましたが、21世紀に入ってからコンスタントに70's的な原点回帰の良作を発表。そして3年ぶりにリリースしたのがこのアルバムです。

 アル・グリーンというば、先に挙げた1972年作『Let's Stay Together』が有名ですが、いやいや、この新作はそれ以上の出来、といっても過言ではないでしょう。
 誇張に感じる人は是非とも音を聴いてみてください。まさに“ハイ・サウンド”な音作りと演奏! 全盛期の艶のあるファルセットから更に憂いを帯び、包み込むような温もりを備えた彼の歌声は絶品の一語です。

 そしてなにより曲がイイッ! クレジットを見ると、作曲クレジットがアル本人だけでなく、今作のバック・バンドを務める各メンバーとの共作となっており、アルを慕いリスペクトしている下の世代のミュージシャンとセッションをしながら曲が出来上がっていった、というのが伝わってくるのです。

 今日のこの1曲は“黒人のノラ・ジョーンズ”と各方面から絶賛されている新世代女性シンガー、コリーヌ・ベイリー・レイとのコラボ作で、実際にこの曲は、コリーヌ・ベイリー・レイがギターで弾き語りをしているところにベース、ドラムなどが加わって出来上がったとのこと。ホント、ムチャクチャいい1曲なのです。
 ジョン・レジェンドをfeatしたG「Stay With Me (By The Sea)」など、他の曲もまさに“21世紀型ハイ・サウンド”といえる素晴らしい出来! ここ最近の生ぬるいR&B界に満足している若者や懐古主義のソウル・ファンにこそ聴いてもらいたい1枚ですね。森 陽馬





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