PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2009月10月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2009年10月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2009年10月1日(木) Doobie Brothers 「Takin' It To The Street」

 昨日9月30日、ドゥービー・ブラザーズVSデレク・トラックス・バンドのコンサートをNHKホールで見てきました。

 結論から言うと、なんとも歯痒くモヤモヤした思いが残るライヴでしたね。
 デレクもドゥービーも、バンド自体の演奏や歌は素晴らしかったものの、ドゥービーのセットの出だし1曲目&2曲目にて、機材トラブルかPAミスかで外音スピーカーが全く出ない状態となってしまったのです。

 ミュージシャン側のモニターの音は出ていた(というか場内はモニター音のみしか聴こえない状態だった)ので、バンド・メンバーは気付いていなかったようで1曲目終了後、何事もなかったように2曲目「Jesus Is Just Alright」へそのまま突入。観客側にとってはほぼマイクが入っていない状態で演奏を続けられているので、トム・ジョンストンが盛り上げようとアクションしても盛り上がれない消化不良な時間がかなり長い間続いてしまいました。
 3曲目くらいからやっと音が出るようになりましたが、最後までベース音は小さく、随所でトム&パットのリード・ギター部分も聴こえなかったりして、ドゥービーのメンバー達が頑張っていただけに余計複雑な心境でした。

 愚痴はさておき、肝心のライヴの内容は様々なサプライズもあってとても良かったです。
 デレクのセットでは、デレク&ドミノスで有名な「Key To The Highway」のカヴァーにトム・ジョンストンとパット・シモンズが参加。更にドゥービーの他メンバーも所々でゲスト参加し早くもサービス満点の演出。
 ドゥービーのセットでも「Don't Start Me To Talkin'」というブルース曲でデレクが登場し、豪放なブルース・ジャムを聴かせてくれて、カップリング公演の魅力を十二分に味わうことができました。

 でも、なんだかんだ言って一番盛り上がったのは、ドゥービーの名曲群。ラストの「Listen To The Music」は観客総立ちでサビ大合唱となり、場内が多幸感に溢れました。

 あと、意外に反応が良かったのが「Takin' It To The Street」。
 マイケル・マクドナルドが加入した1976年発表の同名アルバム(邦題『ドゥービー・ストリート』)に収録の人気曲で、村田和人さんが当店作成リーフレット内の“ずーーっと聴いていたいこの1枚 ベスト5”に選出していた名作でもあります。
 スカイラークという背の高いベーシストがヴォーカルをとっていましたが、歌もうまくて良かったです。森 陽馬

★掲載ジャケットは『ドゥービー・ストリート』。最新リマスター&紙ジャケット仕様で先月再発されました。(WPCR-13658 \2,500)

2009年10月2日(金) Allman Brothers Band 「Statesboro Blues」

 話は前後してしまいますが、先日9月28日(月)にドニー・フリッツ&ザ・デコイズのコンサートを渋谷O-EASTで見てきました。

 東京のど真ん中・渋谷にいながら、アメリカ南部の滋味というか良心を存分に味わえたいいライヴでしたね。
 ドニー・フリッツの風格ある歌と立ち振る舞いも良かったですが、なんといってもバック・バンドの“THE DECOYS”が素晴らしかった!

 ちゃんとチラシをチェックしていなくて会場で初めて知ったのですが、この“デコイズ”というバンドにデヴィッド・フッドも参加!
 この人はアメリカ南部のマッスルショールズにあるスタジオで、1960年代後半からソウル/ロックの名曲に多数携わってきた知る人ぞ知る名ベーシスト。あまり前に出てくることはありませんでしたが、貫禄のベース・プレイを聴かせてくれました。

 ドニー・フリッツがステージ上へ出てくる前に、そのデコイズが7曲ほど演奏したのですが、どの曲も良かったですね。その中で一番意外?な選曲だったのが、今日のこの1曲「ステイツボロ・ブルース」。
 サザン・ロック・ファンならお馴染み、オールマン・ブラザーズ・バンドの代表曲で、オールマンといえばこれっ!、というくらい有名なギター・フレーズが印象的な痛快ロック・ナンバーです。

 デコイズの演奏は、ほぼオールマンのオリジナルと同じアレンジで演奏。ドラマーの人がドラムを叩きながら歌っていました。
 なんで、この曲をやるのかな?と思ったら、ドラマーのMike Dillonという人が、オールマンに在籍していたディッキー・ベッツ(G)のバンドでドラムを叩いていた人だったようです。どうりで歌もドラムもうまいハズ。
 今回のメンバーの中ではこのドラマーが一番若そうに見えましたが、デヴィッド・フッドとの相性も抜群で、リズム隊がとても安定していました。

 ちなみにこの日は日本が誇る名ギタリストのKunio Kishidaさんもゲスト参加し、デュアン・オールマンばりのかっこいいスライドを聴かせてくれました。森 陽馬

★掲載ジャケットは、「ステイツボロ・ブルース」収録のコンピCD『デュアン・オールマン・アンソロジー』(UICY-93507 SHM-CD限定紙ジャケ \3,800)。
 キング・カーティス「Games People Play」などデヴィッド・フッドが参加している曲も数曲収録されています。

2009年10月3日(土) ? & The Mysterians 「96 Tears」

・「1.2.3」(レン・バリー)
・「634-5789」(ウィルソン・ピケット)
・「98.6」(キース)
・「19回目の神経衰弱」(ローリング・ストーンズ)
・「1.2.3.レッド・ライト」(1910フルーツガム・カンパニー)
・「7・ルームズ・オブ・グルーム」(フォー・トップス)
などなど、ミドル60'sのヒット曲には、数字がタイトルに使われている曲が結構ありました。

 その中でも1966年全米No.1に輝いたこの「96粒の涙」(原題「96 Tears」)は、特に印象に残っている数字ソングです。

 まずグループ名がちょっと変。
 “クエスチョンマーク&ミステリアンズ!”

“?”を使うなんて、話題的にはグッド・アイディアでした。
“?”はルディ・マルティネスという名前だと判明しますが、サングラス姿がなんとも言えないインパクトを与えてくれました。

 そしてサウンドの方は、いかにもミドル60'sという怪しげなオルガンの音が耳に飛び込んできます。VOX社のオルガンを使用とのことですが、この音がグループ名のようにミステリアスな感じ。

 このCDは彼等が発表した2枚のLPに未発表ヴァージョンを加えたもの。(『The Best Of 〜』 全27曲収録 abkco 001877192322)
 近年、“アーリー・パンク・ロック・グループ”と言われるようになっていますが、アルバム全体を聴くと、僕はローリング・ストーンズの影響が大きいように思います。森 勉

2009年10月4日(日) ジャッキー・エドワーズ 「ガール、ユール・ビー・ア・ウーマン・スーン」

 ジャッキー・エドワーズはスペンサー・デイヴィス・グループのヒット曲「キープ・オン・ランニング」、「サムバディ・ヘルプ・ミー」の作者として、マニアのみに知られるジャマイカ出身のシンガー・ソングライター。

 アイランド・レコードのクリス・ブラックウェルが1960年代半ばにイギリスでデビューさせましたが、残念ながら歌手としてはヒットが出ませんでした。
 なかなかいい声を持っている人だと思うんですがねぇ。

 さて、ACEレーベルからソングライター・シリーズの新しい企画がまた発売になりました。
 『ひとりぼっちの男〜アーリー・ソングス・オブ・ニール・ダイアモンド』というタイトルです。(国内仕様CD 英文解説の対訳付 MSIG-601 \3,150)

 その中に、ニール・ダイアモンド自身も歌って1967年のベスト10ヒットとなった「ガール、ユール・ビー・ア・ウーマン・スーン」のジャッキー・エドワーズが歌ったものが収録されています。
 以前から好きな曲だったので、今回初めて聴いたこのヴァージョンもお気に入りの仲間入りになりました。

 初期のニール・ダイアモンド(ジェフ・バリー&エリー・グリニッチが強力サポートしていた1966〜7年のBANGレコード時代)は好きな曲が多かったので、この作品集では、ジャン・タンジー、ジミー・クラントン、マーシー・ブレインなどのティーン・ポップス系の曲にも注目です。森 勉

2009年10月5日(月) Fotheringay 「Peace In The End」

 芸術の秋、食欲の秋、フォーク、トラッドの秋...という事で(??)、最近はこのアルバムを引っ張り出して聴いています。

 60〜70年代のイギリスを代表する女性シンガー、サンディ・デニー。
 トラッドを探求し続けるフェアポート・コンヴェンションを脱退し、彼女が自分の歌いたいものを...と、当時の恋人でのちに夫となるトレヴァー・ルーカス(vo.g)らと結成したのが、このフォザリンゲイ(UICY-94804 \2,800 ボーナストラック7曲&SHM-CD仕様)というバンドです。
 70年に一枚アルバムを残しただけですが、今尚名盤として人気のアルバムだそう。

 ジャケットはインパクト大で、初めは見た目の印象だけで、サイケ・フォークっぽいのかなと勝手に想像しましたが、“いかにも”なトラッドからは少し離れ、カントリータッチの楽曲も多くとても馴染みやすいアルバムだなと思いました。

 アルバムの大半を占める彼女の自作曲からは、ジョニ・ミッチェルなど当時のアメリカの女性シンガーからの影響も感じさせます。
 トレヴァーがメイン・ヴォーカルを取る曲もあり、ゴードン・ライトフット「The Way I Feel」やボブ・ディラン「Too Much Of Nothing」のカバーなんかがそうです。ライトフットのカバー、終盤の演奏も聴きものです。

 デュエットしている2人の共作曲ではリラックスした雰囲気さえ漂います。恋人といつも一緒に居られた幸福感からでしょうか。ゆったりとしたメロディーと力強さが混在したとても良いアルバムです。東尾沙紀

2009年10月6日(火) ビル・ラバウンティ 「Livin' It Up」

 ここ最近のこのコーナーはライヴ・レポートばかりになってしまい恐縮ですが、本日もその続きということで・・・。
 昨日5日(月)、丸の内にあるコットンクラブでビル・ラバウンティの来日公演を観てきました。

 ギター、ベース、ドラムに、キーボード、サックス奏者も加えたビル本人を含め6人のバンド。更に途中から名ジャズ・ギタリスト、ラリー・カールトンもゲストで加わるという豪華な編成で、アダルトな大人のAORサウンドを堪能できました。
 欲を言えば、もっとラリー・カールトンの出番が多ければなあー、という感じでしたが、10日からブルーノートで単独公演を控えているラリー・カールトンの円熟味あるプレイをすぐ目の前で見れただけでもお得でしたね。

 今年5月に発売された18年ぶりの新作アルバム『バック・トゥ・ユア・スター』(TACM-7 \2,625)から中心の選曲でしたが、もちろん!この曲もやってくれました。ビル・ラバウンティの代表曲「リヴィン・イット・アップ」。

 バリーマン/シンシア・ワイル夫妻との共作曲で、サビの♪Livin' It Up♪部分が印象的な1曲。イントロ〜歌い出しのところもバリーマンらしい切ないメロディですね。
 明日7日(水)も公演がありますので、気になる方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

★掲載ジャケットは最新作。国内盤ボーナス・トラックとして、ラリー・カールトンのギターをfeatした「リヴィン・イット・アップ」の新アコースティック・ヴァージョンが追加収録されています。

2009年10月7日(水) 高野 寛 「道標 (みちしるべ)」

 祝ソロ・デビュー21周年♪
 1988年10月7日にソロ・デビューを果たした高野寛が、21年後のちょうど今日、新作アルバム『Rainbow Magic』をリリースしました。(UMCC-1038 \3,000)

 いやーー!これは彼の最高傑作と称しても過言ではないでしょう!
 それくらい素晴らしいアルバムに仕上がっていました。

 最近の高野寛の楽曲は、高橋幸宏さんを中心としたユニット“pupa”での曲もそうでしたが、メロディーが地味目でエレクトロニカ的アレンジを施されたものが多く、初期のようなポップ感がやや後退した印象がありました。

 でも、この新作を聴くかぎり、まだまだ彼のポップ・センスは健在ですね!
 シングル・カットされた亀田誠治プロデュースの15曲目「Black & White」なんかは、『RING』の頃に作られたんでは?と思えるほどにアレンジや楽曲の雰囲気が初期の雰囲気で、もう笑っちゃうくらい高野寛節の1曲。

 他にも、忌野清志郎との共作で清志郎もギター&コーラスで参加しているG「今日の僕は」、クラムボンの原田郁子とのデュエットで細野晴臣も参加しているF「CHANGE」、ハナレグミが参加しているL「明日の空」などゲストも多彩ですが、僕が一番気に入っているのが、3曲目「道標」。

 彼らしいフックが効いたメロディーも魅力ですが、この曲、歌詞もすごく良いんですよねー。
 “ソングライター高野寛”を実感できる1曲です。

 ちなみにラスト16曲目に「虹の都へ」の2009年ヴァージョンというのが収録されていますが、それが蛇足に思えるほど全曲ポップ感覚溢れるいい曲ばかり! 高野寛を昔よく聴いていたという方はもちろん、まだ1枚も持っていない若いリスナーにも是非聴いてもらいたい1枚です。森 陽馬

2009年10月8日(木) ビートルズ 「ドライヴ・マイ・カー」

 9/9発売後、あっという間に売り切れてしまったビートルズ『MONO BOX』ですが、先日当店に再入荷しました。(TOCP-71041 \39,800)

 ヴァージョン違いが多く含まれている『ホワイト・アルバム』など、モノラルならではの重厚な音が魅力ですが、今回の『MONO BOX』の裏の楽しみ方として、『ヘルプ!』と『ラバー・ソウル』にオマケとして収録されている<オリジナル・ステレオ・ミックス>というものがあります。

 そもそも1987年に初CD化された際に、ジョージ・マーティンが左右にはっきりと分かれた音を、聴きやすくなるように少しリミックスして『ヘルプ!』と『ラバー・ソウル』を発売しました。(今回のステレオ・リマスター盤にも、このミックスが採用されています。)

 その後の『リヴォルヴァー』、『サージャント・ペパーズ〜』なども、その手法でリミックスを施す予定だったらしいのですが、『ヘルプ!』&『ラバー・ソウル』だけで多くの時間を費やしてしまい、他の作品をリミックスする時間がなくなってしまった、というのが、当時の顛末だったようです。

 ということで、<オリジナル・ステレオ・ミックス>は初CD化です。
 片チャンネルに、ギター、ドラムス、ベースの演奏とジョンの合いの手コーラス。もう片チャンネルはポールのリード・ヴォーカルとコーラス、リード・ギター、ピアノ、そして印象的なカウベルという割り切りがはっきりしたミックスになっています。

 我々の世代がレコードで散々聴いたのは、この音です。
 またしても懐かしい音との再会です。森 勉

★明日10月9日(金)はジョン・レノンの誕生日です。

2009年10月9日(金) no.9 「flower shop」

ビートルズのリマスター盤発売から1か月が経ちました。

 ジョン・レノンのフェイヴァリット・ナンバーだったと言われる9並び、2009年9月9日発売ということで、その時の音楽の話題はビートルズで占められていた感がありましたが、もちろんビートルズ以外にも様々なCDがリリースされていました。
 今日のこの1曲、No.9の新作アルバムも9月9日発売だった作品です。

 no.9(ナンバー・ナイン)は、日本人クリエイター城隆之による一人ユニット。
 エレクトロニカと生楽器を融合させた音響インストで、全体的なサウンドの雰囲気としては“CLUB MUSICをイージー・リスニング風にした”感じですね。
 オーガニックな音色も含みつつ、都会的なBGMとしても楽しめるアルバムです。

 この作品リリースと合わせて特設サイトもアップされており、そこではアルバムとリンクした映像や写真、はたまた音楽を聴きながら閲覧者が音を付け加えたりすることもできます。
 これからはただ歌う/演奏する、というのではなく、これまで以上にインターネットや映像と結びついて表現方法を広げていこうとするアーティストが増えていくだろうな、と感じた1枚でした。森 陽馬

2009年10月10日(土) ヴァン・モリソン 「クレイジー・ラヴ」

 “京浜ロック・フェスティバル'09”が近づいてきました。

 10月12日(月・祝)、川崎・東扇島東公園にて開催される大人の野外フェスで、久保田麻琴さんプロデュースにより、今年は細野晴臣、The SUZUKI、友部正人、あがた森魚などが参加。
 更に、当店が長らく応援しているバンド、東京ローカル・ホンクも出演し、単独出演のみならず友部さん等のバック・バンドも担当することになったそうでとても楽しみです。(天気も今のところ予報では大丈夫そうですね。)

 ちなみに、細野晴臣さんのステージは15時30分からの予定になっていますが、昨日アップされた情報によると、その細野さんのセットに久保田麻琴さんもゲスト参加が決定! 1999年にアルバムも発表した二人のユニット“ハリーとマック”が復活するようです。

 短い時間なので、やる曲が限られるとは思いますが、こんな曲もやってくれるでしょうか? ヴァン・モリソン1970年発表作『ムーンダンス』に収録されている名曲「クレイジー・ラヴ」。

 ハリーとマック名義で出した1999年作『Road To Loisiana』(ESCB-2040 \3,059)に「クレイジー・ラヴ」のカヴァーが収録されているのです。
 残念ながらこのアルバム、現在は生産中止の状態。せっかくなので再発してほしいですね。森 陽馬

★掲載ジャケットは、ヴァン・モリソン『ムーンダンス』。

2009年10月11日(日) Mayer Hawthorne 「The Ills」

 今、ソウル好きの間で話題になっている、メイヤー・ホーソン。

 彼はモータウン発祥の地であるミシガン州デトロイトの近隣アナーバー出身、現在はLAを拠点に活動している白人男性ミュージシャン。
 元々はDJをやっていたそうですが、CLUB MUSICを中心にリリースしているLAのインディー、STONES THROWレーベルから生音重視のブルーアイド・ソウル・アルバム『A Strange Arrangement』を発表しました。(輸入CD STH-2230)

 これがなんとも“ソウル愛”に溢れた傑作で、最近のR&B系とも違って、60〜70'sの古き良きソウル・マナーを下敷きにしたサウンド。
 オリジナル曲ながら、あの人のあの曲に似ている・・・、と感じさせる楽曲が並び、メロディーも良いのでソウル・ファンのみならず、ポップ好きの方にも楽しんで聴ける作品に仕上がっています。

 一例を挙げると、9曲目「The Ills」。
 これは、モロにカーティス・メイフィールド「Move On Up」ですね。
 パーカッションの使われ方や疾走感あるリズム、そしてファルセットを使った歌い方も“カーティス”している1曲。

 正直言って、「歌がよりソウルフルで、演奏にも重量感というかFUNKYなキレがあったら、もっと良いのになあ〜」、とも感じますが、まあこれが1枚目ですしこれからに期待しましょう。
 とにかくも一聴の価値あるニューカマーです。森 陽馬

2009年10月12日(月) Kings Of Convenience 「Peacetime Resistance」

 “ノルウェーのサイモン&ガーファンクル”
と称される結成10年のフォーク・デュオ、キングス・オブ・コンビニエンスが約5年ぶり、3枚目となる新作『Declaration Of Dependence』(TOCP-66917 \2,500)をリリースしました。

 この5年の間、それぞれソロ活動などに取り組んでいたようですが、久々の新作でも息の合った素朴なハーモニーを聴かせてくれます。

 ドラム、打楽器は一切使用せず、アコースティック・ギター以外では、ダブルベース、ヴィオラ、ピアノが入るくらいの本当にシンプルな編成。
 打楽器がないかわりに、ギターを叩きながら演奏する軽快なタッチの曲もありますが、2人の歌とギターのみの曲がアルバムのほとんどを占めています。

 リバーブをかけたギターのひんやりとした残響音が美しく幻想的な雰囲気も漂います。(シーンと静まり返った空っぽな大きなホールで、2人だけで歌っているイメージ。実際そういう場所でリハーサルなどを重ねたそうです。)

 ビーチで撮られたジャケット写真とボサノヴァっぽい曲もあるので、夏をイメージさせますが、どことなく寂しげなメロディーが秋冬の乾いた空気にもぴったりとハマリそう。
アコースティック・ギターお好きな方にもオススメの一枚です。東尾沙紀

2009年10月13日(火) The SUZUKI 「I Don't Want To Talk About It」(もう話したくない)

 昨日12日(月・祝)に行なわれた京浜ロック・フェス。
 いやー、とても楽しかったです。

 会場だった川崎・東扇島東公園がまたゴキゲンな場所で、天気も最高だったこともあり、広々としたスペースで海沿いの心地良い風を感じながらGood Musicを満喫することができました。
 夜はかなり冷え込みますし、飲食持込不可という不便さもありましたが、是非来年も開催してもらいたいです。

 さて、ライヴの方はどのミュージシャンも良かったのですが、陽がやや傾いてきた15時半に登場した細野晴臣さんはやはり格別でしたね。
 1曲目はスタンダード・ナンバー「Smile」のカヴァー。ぽかぽか陽気の昼下がり、細野さんの朴訥とした歌声が沁みました。(ちなみに、先日このページでも取り上げた「クレイジー・ラヴ」を久保田麻琴が歌ってくれました!感激!)

 そして期待の我等が東京ローカル・ホンク。
 彼等がバックを務めた“友部正人”→“The SUZUKI”→“あがた森魚”でのセッションは素晴らしかった! 友部さんのステージは、“和製・ボブ・ディラン&ザ・バンド“といった感じでしたね。MCでも話していましたが“友部正人&東京ローカル・ホンク”のアルバムが来年には発売されるそうで、とても楽しみです。

 さて、その後半のセッションで個人的にうれしかったのが、The Suzuki(鈴木慶一&鈴木博文+武川雅寛)がやったこの曲。
 ニール・ヤングとの交流で知られるバンド、クレイジー・ホースに在籍していた故ダニー・ウィットン作の名曲「I Don't Want To Talk About It」(邦題:もう話したくない)の日本語カヴァー。
 東京ローカル・ホンクのバック演奏もレイド・バックしていて、味わい深く良かったですね。森 陽馬

★掲載ジャケットは、この曲が収録されている1997年発表、The SUZUKIの1stアルバム『Everybody's In Working Class』(compactron-49 \3,150)

2009年10月14日(水) ボブ・ジェイムス 「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」

 「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」は、ロバータ・フラックが1974年に全米No.1ヒットにした名曲ですが、様々なアーティストによってカヴァーされています。

 ナンシー・ウィルソン、マリーナ・ショウ、ジョージ・ベンソンなど、ジャズ系アーティストによってのカヴァーが多いようですが、その中でも極めつけが、このボブ・ジェイムスのインスト・ヴァージョンです。

 CTIレーベルでの1974年発表の1stアルバム『はげ山の一夜』に収録されていました。
 あまり知られていませんが、なんとシングル盤(エディット・ヴァージョン)でも発売され、当時最高位88位ですがチャートインしています。

 この曲の魅力はなんといってもボブ・ジェイムスの弾くエレクトリック・ピアノの音色です。ツボを優しく刺激してくれるマッサージのように、心とからだをゆったりと癒してくれます。

 このCDはボブ・ジェイムスの70年代のオイシイ所が満載です。音のいいSHM-CDでの発売。(VICJ-45001 \2,400) 森 勉

2009年10月15日(木) Najee 「Needless To Say」

 東京はめっきり涼しく(というか寒く)なってきて、夜は上着を羽織らないと風邪をひいてしまいそうなほどの冷え込み。この時期は個人的にアーバンなフュージョン/スムース・ジャズが聴きたくなってきます。

 今日のこの1枚は、「70〜80'sにヒットしたジョージ・ベンソン的な安心して聴ける大人のインスト・フュージョン作品、もしくはケニーGのようなメロウ・インストものの新譜が最近は少ない」とお嘆きの方にオススメのアルバム。(輸入CD Najee 『Mind Over Matter』 Heads Up HUCD-3156)

 Najee(ナジー)は1980年代から活動しているニューヨーク出身のサックス奏者。コンスタントに作品を発表しているものの近年は今作含め国内盤が出ていないため一般的な知名度はありませんが、毎作良質なスムース・ジャズを聴かせてくれています。

 5曲目に収録されているエリック・ベネイがヴォーカル参加した「We Gone Ride」は期待ほど良くなかったのですが、それ以外の楽曲はどの曲もNajeeらしいアーバン・スムース・ジャズ。一昔前FMラジオの早朝or深夜によくかかっていたような都会的インスト・サウンドです。

 メロウな感じだけれども甘すぎず、適度にグルーヴ感があって、大人の夜を演出してくれそうな1枚。
 アルト&ソプラノ・サックスの音色や作品全体の雰囲気も、ユルさというか隙間があり、硬派なジャズ・ファンからは“軽すぎ”と非難されそうですが、僕的には聴きやすくて好きなタイプの音です。森 陽馬

2009年10月16日(金) Ernie Hines 「Your Love (Is All I Need)」

 音楽業界大不況、とか言われながら、日本では色んなCDが新譜・旧譜問わずガンガン出ています。

 あの作品が廃盤になっていて現在入手困難、とか未だCD化されていない、など不平・不満をこぼす方もいらっしゃいますが、英語圏でもないのに海外の作品がCDでこれだけ発売されているのは、ホント日本だけでしょうね。
 それも日本語解説がちゃんと付いて、CD店も減ってきたとはいえ中心地に行けばそれなりの大型店があるので、音楽ファンにとって日本は、アメリカ含めた諸外国よりも恵まれている国だと僕は思っています。

 さて、今日紹介するアルバムも、先日日本盤で発売された珍しい1枚ですが、これが、ソウル・ファンは必聴!と言いたくなるような素晴らしい出来! 個人的にもこの秋一番良く聴いているソウル・アルバムですね。

 アーニー・ハインズは1938年生まれのミシシッピ出身黒人シンガー。
 当初はチェス・レーベルと契約し、ギタリストとしても活動。ゴスペル〜ブルース関連の仕事を中心にしていたようですが、1970年にスタックス傘下のWe Produce(ウィー・プロデュース)と新たに契約。1972年に発表したのがこのアルバム『Electrified』です。(UCCO-9872 \2,000)

 スタックス、というとオーティス・レディングを中心としたサザン・ソウルのイメージが強いものの、このアルバムは1972年という年代のせいか、程よくフィリー・ソウルっぽさが混ざっていて、そこまで黒々しくなく聴きやすい印象。

 バック演奏はスタックスの屋台骨であったバーケイズやMG'sなどが担当し、更にフィリー・ソウル的な上品なストリングスがほぼ全編に使われています。コーラスも随所に配されていて、全体的なアレンジがNICE!ですね。

 サム・クックの名曲「A Change Is Gonna Come」のカヴァーをやっていたり、当時シングル・カットもされたC「What Would I Do」もサビが印象的で聴きものですが、今日の1曲は3曲目「Your Love」。
 インプレッションズ的なコーラスが印象的なミディアム〜スロー・バラード。まだまだ埋もれているイイ曲がたくさんあるんだなあ、と実感した1曲です。森 陽馬

2009年10月17日(土)Pete Yorn & Scarlett Johansson 「I Don't Know What To Do」 

 昨年トム・ウェイツの楽曲をカバーしたアルバムで歌手デビューを飾った若手人気女優、スカーレット・ヨハンソンと、アメリカの男性シンガーソングライター、ピート・ヨーンがデュエット・アルバム『BREAK UP』をリリース。(輸入CD ATCO 8122799242)

 男女のデュエット・アルバムを作らなきゃ!というピート・ヨーンの突然の閃きと、“'セルジュ・ゲンズブールとブリジット・バルドー”をイメージして作られたという今作。
 とはいってもフレンチ・ポップ等をやっているという訳ではなく、バンジョーを使用したカントリー・ポップ調あり、ゆったりとしたハーモニー・ポップあり。スライド・ギター、ペダル・スティールを交えた浮遊感のあるアレンジなど、ちょっと変わったポップ・アルバムになっています。

 クレジットを見るとドラマーはおらず、全編打ち込み。参加メンバーを見ても知らない名前ばかりで、プロデュース&プラグミングで参加しているSunny Levineという人は今回初めて知りましたが、クインシー・ジョーンズの孫なのだそう。
 プロデュースも兼ねているピートが全9曲のうち8曲を手掛けており、うち1曲は元Big Starのクリス・ベル作「I Am The Cosmos」のカバーが歌われています。

 クレジットを続けて見て気になったのがMasaki Koike(Art Direction&Design)という名。
 日系人の方でライノの仕事を主にされているそうですが、2008年グラミーの最優秀デザイン賞を受賞するなど、注目のデザイナーだそうです。失礼ながら全然知りませんでした...。

 ちょっと気だるい感じのスカーレットの歌と、線の細いピートの声はなかなか相性が良いようです。中のツーショット写真もとても素敵ですよ。東尾沙紀

2009年10月18日(日) ウーゴ・モンテネグロ 「アゲイン」

 当店地下にある“カフェ・アゲイン”の命名元のひとつは、スタンダードの名曲「アゲイン」です。

 マスターの石川さんが大好きな曲で、多くのアーティストが取り上げています。
 ドリス・デイ、ナット・キング・コール、フランク・シナトラ、メル・トーメ、クリフ・リチャード、ダイナ・ワシントン、美空ひばり、雪村いづみ、江利チエミ、ナンシー梅木などなど。
 (これらのアーティストを聴いてみたい方は是非“カフェ・アゲイン”にいらしてください。石川さんが色々とレクチャーしてくれると思います。)

 この「アゲイン」を作曲したのは、ライオネル・ニューマン。
 ランディ・ニューマンのおじさんにあたる人です。

 1968年製作、フランク・シナトラ主演の私立探偵ものサスペンス映画『セメントの女』(原題:Lady In Cement)のサントラ盤が最近再CD化されましたが、ウーゴ・モンテネグロのオリジナル曲に混じって、なんとその「アゲイン」が入っていました。(MSIL-77 \1,995)

 モンドなヴィブラフォンとオルガン(?)のユニゾンの音と、美しいストリングスの演奏は絶品で、思わぬ掘り出し物を見つけた気分です。森 勉

2009年10月19日(月) SOULIVE 「Cannonball」

 これぞソウライヴ!
 本領発揮といった感もある作品がやっと出ました。
(『ライヴ・アット・ブルーノート東京』 2枚組CD PCD-25101 \2,625)

 ソウライヴはアラン・エヴァンス(ds)、ニール・エヴァンス(key)、エリック・クラズノー(g)による新世代JAZZ FUNKグループ。
 2001年にブルーノートからリリースしたアルバム『ドゥーイン・サムシング』は、新世代JAZZの名作として個人的に今でもよく聴いているものの、ここ最近のソウライヴの作品は今ひとつ・・・の作品が続いていたため、正に待望の1枚です。

 2008年7月ブルーノート東京で行なわれたライヴ音源で、収録曲は結成10周年を総括するようなベスト的選曲の2CD。
 どちらも充実度タップリですが、特にディスク2! サム・キニンジャー含むホーン隊が加わったディスク2の方はとにかくFUNKYでかっこいいですね。

 聴きものは名ジャズ・サックス奏者、キャノンボール・アダレイから名付けられた大人気曲@「キャノンボール」! そして何故かジャケット表記されていない7曲目には、アーチー・ベル&ドレルズ定番ファンキー・チューン「タイトゥン・アップ」のカヴァーが収録。激キラーなグルーヴィー・アレンジで、会場の熱気が伝わってきます。

 この2CDで2,625円はお買得。ジャズ・ファンク好きの方は持ってて損なし!の必聴盤でしょう。森 陽馬

2009年10月20日(火) Eric Krasno 「Get Back」

 昨日紹介したライヴ盤と同時発売で、ソウライヴのギタリスト、エリック・クラズノーもソロ・アルバムを発表。(『REMINISCE』 PCD-93287 \2,415)

 こちらもジャズ・ファンク・サウンドかな、と思いきや、彼の音楽的ルーツが様々なかたちで表現されたギター・インスト作品に仕上がっていて、ジャズでもロックでもソウルでもない、ジャンル関係なくかっこいいギター・アルバムでした。

 特に2曲目「76」は、予備知識なしに曲だけ聴くと、ジェフ・ベックの未発表曲?と勘違いしてしまいそうな楽曲。
 ジミ・ヘン「Manic Depression」(これはヴォーカル入り)なんかもカヴァーしていて、ジャズ・ギタリストとしてだけでなく、懐の深さを感じさせるギター・プレイを全編で聴かせてくれます。

 今日のこの1曲には、ビートルズのカヴァー「Get Back」。
 ちょっとベタな選曲?と思いきや、超クールなジャズ・アレンジになっていて、これはかっこいいカヴァーですね。

 ソウライヴのエヴァンス兄弟と、エリックが在籍している“レタス”というジャズ・ファンク・グループの超絶ドラマー、アダム・ダイチも参加しているので、もちろんジャズ・ファンク・ファンにもオススメ。タイプは全然違いますが、デレク・トラックスお好きな方にも聴いてもらいたい1枚です。森 陽馬

2009年10月21日(水) キャス・エリオット 「Oh Babe, What Would You Say」

 伝説の名レコード店、“パイド・パイパー・ハウス”の店長であった長門芳郎氏が監修した再発CDシリーズ、“パイド・パイパー・デイズ”。本日新たに5タイトル発売されました。

 世界初CD化で、豪華ゲストが多数参加しているカレン・ベス、エステル・レヴィット、そして、エヴァリーの70年代作品も魅力的でしたが、今日はママ・キャス(キャス・エリオット)のアルバムを取り上げます。

 キャス・エリオットは、「カリフォルニア・ドリーミン」の大ヒットで知られるママス&パパスの女性シンガー。
 今日のこの『ザ・ロード・イズ・ノー・プレイス・フォー・ア・レディ』は1972年発表作で、この度世界初CD化です。(完全限定盤 紙ジャケット仕様 BVCP-40112 \1,995)

 僕も初めて聴きましたが、イギリス・ロンドン録音ということで、ママス&パパスとも違う雰囲気の楽曲が並び、作家陣も多彩。
 ジミー・ウェッブ作A「Saturday Suit」(アート・ファーファンクルが78年作『ウォーターマーク』で取り上げていました)、ポール・ウィリアムス作E「Say Hello」、リア・カンケル作C&I、ゴーゴニ・マーティン&テイラー作G「Love Was Not A Word」、ボーナス・トラックに収録されているマーゴ・ガーヤン作Lなど珍しい曲を色々とやっていて面白いですね。

 その中でもこんな曲もやっていたのか、というのがH「Oh Babe, What Would You Say」。
 オリジナルはビートルズのエンジニアでもあったハリケーン・スミスによる全英ヒット曲で、ほのぼのとしたニューオリンズ的雰囲気の1曲。キャス・エリオットが意外にも本家に負けじとダミ声っぽく歌っています。

 それにしてもこのシリーズは、解説がしっかりしていて、更に歌詞・対訳も付き、紙ジャケット仕様で2千円以下、という素晴らしい仕事ぶり。
 他のメーカーの再発ものも、このくらいの値段で解説・歌詞・対訳がしっかり付いているとうれしいんですけどね。森 陽馬

2009年10月22日(木) ルー・ドナルドソン 「アリゲイター・ブーガルー」

 先日、<東京JAZZ 2009>のライヴの模様がテレビでダイジェスト放送されているのを見ました。

 大御所マッコイ・タイナーの独特の手さばきによるピアノ・プレイに釘付けになったり、オランダの若者ウーター・ヘメルが歌いながら弾いていたオートハープに反応したり。
 その中でも個人的な注目度は、サックスのルー・ドナルドソンが中心となったギター、オルガン、ドラムスのクァルテットによる、あの「アリゲイター・ブーガルー」でした。

 ルーはなんと82歳! この曲の大ヒットから40余年。
 元気な姿を見れて嬉しかったです。

 この曲は1967年にダンス・ミュージックとしてヒット。
 ブーガルーというラテン・ソウル・ジャズのミックスしたサウンドが、アメリカではかなり流行していた時代でした。
 (ファンタスティック・ジョニー・Cの「ブーガルー・ダウン・ブロードウェイ」が一番印象に残っているでしょうか。日本では、「アリゲイター・ブーガルー」にハプニングス・フォーが歌詞を付け歌っていましたっけ。)

 ジャズ系の曲がよくチャートに上ってきた時代ではありましたが、なんでもありの60'sならではのヒット曲かもしれません。

 なお、この曲でのギターは24歳の若きジョージ・ベンソンです。森 勉

★現在、ルー・ドナルドソン『アリゲイター・ブーガルー』のCDは、デジタル・リマスターされた国内盤が1,100円(!)という超お買い得限定価格で発売されています。(TOCJ-8564 \1,100)

2009年10月23日(金) 松田幸一 「Don't Worry Baby」

 日本産ナッシュビル・サウンドの雄!、“ラストショウ”のアルバム2作が12月に再発されることになりました。

 “ラストショウ”は徳武弘文(G)、松田幸一(harp)、村上律(Pedal Steel)、島村英二(Dr)、河合徹三(B)を中心メンバーとした音楽職人バンド。(バンド名の由来は、ジェフ・ブリッジス出演の名作アメリカ映画から取られています)

 元々は1974年泉谷しげるのバック・バンドとして結成され、その後もアグネスチャンなどのバックをしていたそうですが、1977年&78年にリリースしたアルバムは永らくCD化されていませんでした。以前に編集盤が出ていましたが、それも現在入手困難となっていたのでうれしい再発ですね。(紙ジャケ&リマスター&ボートラ追加。詳細は通販コーナーをご覧ください)

 今日のこの1曲は、そのラストショウのメンバーであり、名ハーモニカ奏者である松田幸一さんの新作アルバム『ポピティ・ポップ』(TRYM-908 \3,000)より、ゴキゲンなビーチ・ボーイズ・カヴァー。和みのハーモニカの音色が哀愁あるメロディーにピッタリ合っていますね。
 他にも「Smile」やガーシュイン・ナンバーなどの名曲をカヴァーしていますが、オリジナル曲も良い曲なのでハーモニカ好きならずとも要チェックの1枚です。森 陽馬


★これを書いている途中に知ったのですが、なんと!なんと!ビーチ・ボーイズの来日が決定したそうです!
 来年2010年1月20、21日ビルボードライヴ大阪、22〜24日ビルボード・ライヴ東京にて!
 マイク・ラヴとブルース・ジョンストンによるビーチ・ボーイズが前回来日したのは、2005年のフジロックだったので、約4年半ぶり!
 ビルボード・ライヴは、終演後にアーティストのサイン会もよく行なわれるので、マイク&ブルースとも話せるかも! いやーーー、今年の冬は暑くなりそうですね!

2009年10月24日(土) Prefab Sprout 「Last Of The Great Romantics」

 現在はパディ・マクアルーンの一人ユニット状態となっているプリファブ・スプラウトが、前作から約8年ぶりとなる新作『Let's Change The World With Music』(EICP-1275 \2,520)をリリース。

 『ヨルダン:ザ・カムバック』(90年)の次の作品として、92年秋から制作が開始されたもののお蔵入りとなっていた音源に新たに手を施し、17年の歳月を経て、パディ一人で完成させたアルバム。
 聴くと当然のごとく歌声も当時のものなので、新作を聴いているというよりはサウンド的にも80年代のアルバムを聴いているような感覚です。

 パディ自身の独特な文章のライナーノーツには、若い頃ビーチ・ボーイズの『スマイル』に思いを馳せた...など、ブライアン・ウィルソンへの憧れみたいなものも文から伝わってきます。
 サウンド的には全然違いますが、アレンジ面でブライアンからの影響を感じさせる曲もあります。

 最後に、渡辺亨氏による詳細な解説が載っているのですが、そこに、な・な・なんと当店“ペット・サウンズ・レコード”の事が!

 “92年にパディにインタビューした際、彼に東京の武蔵小山に「ペット・サウンズ」というお店があるんだよという事を伝えたけど憶えているだろうか...”という風に書いてくださっています。
 パディ、憶えてくれていると嬉しいですね! 東尾沙紀
 
★84年の1st『スウーン』の他、『アンドロメダ・ハイツ』、『プロテスト・ソングス』など80〜90年代の作品も最新リマスター&紙ジャケで再発されました。

2009年10月25日(日) 9mm Parabellum Bullet 「青い空」

 ビーチ・ボーイズ来日決定!ということで、思い出すのは2005年のフジ・ロック・フェス

 この年のフジ・ロックはここ近年の中でも指折りの、天候に恵まれなかった3日間でしたが、3日目ビーチ・ボーイズのステージ中はギリギリ雨が降らずに持ちこたえて、彼等らしいライヴを楽しめて良かったですよね。(終わった途端に豪雨がまた降り出しましたが・・・)

 そのビーチ・ボーイズが出る前、グリーン・ステージでパフォーマンスしていたのがくるりだったのも印象に強く残っています。
 僕は途中から見たのですが、その堂々たるステージングで、次出演するビーチ・ボーイズ待ちのおじさん達をも魅了させていました。

 くるりは1998年メジャー・デビューなので、もうすぐ11周年突入、ということになりますが、そのくるりのトリビュート盤『くるり鶏ビュート』が先日発売になりました。(BNCL-40 \3,000)
 奥田民生、矢野顕子、松任谷由実などの大御所から、木村カエラ、曽我部恵一、高野寛、andymori、ハンバートハンバートなど様々なミュージシャンがくるりの名曲群をカヴァー。くるりの楽曲の妙を再認識できる1枚です。

 特に耳に残ったのはやはり「青い空」。
 数あるくるりの曲の中で、最もエモーショナルかつテンポの速い1曲。
 そのロッキンなナンバーを今一番旬な日本ロック・バンド、“9mm Parabellum Bullet”がカヴァーしており、基本的なアレンジは同じながら、アグレッシヴさをより加えたカヴァーになっています。

 ちなみにこの曲の最後の部分で聴ける、オールマン・ブラザーズ・バンド的なクロスするギター・ソロが面白いですよね。
 9mmのカヴァーでもその部分はオリジナルに忠実にちゃんと演奏されています。森 陽馬

2009年10月26日(月) 馬の骨 「Carol」

 東京は台風20号の影響もあって、ずっーーと雨。
 風も強くて寒かったですね。

 今秋初めて暖房をつけ、先日発売されたスティングのウインター・アルバム『ウインター・ナイト』なんかを聴いていると、ちょっと早いかもしれませんが、もう冬だな、と感じてしまいます。
 ということで、一足先にクリスマス・ソングの新曲をピックアップ。

 兄弟ポップ・ユニット“キリンジ”のヴォーカリスト(弟)、堀込泰行のソロ・プロジェクトである“馬の骨”が約4年ぶりとなる2ndアルバム『River』を発表。(初回DVD付 COZP-409 \3,465)

 2005年発表の前作1stは、キリンジとはまた違った音楽性で、超マイナーなロバート・レスター・フォルサムという人のカヴァーをやっていたり、ややひねくれた感もある楽曲が多かったのですが、今作2ndは、キリンジのアルバムに入っていても全く違和感のない超ポップな曲がズラリと並び、とっても聴きやすい1枚。

 4曲目に収録されている「Carol」は、歌詞に“メリー・クリスマス”、“サンタクロース”という単語が出てくる直球クリスマス・ソング。(ノーナリーヴスのドラマー、小松シゲルと名セッション・ベーシストの沖山優司が参加)

 ちょっぴり切ないポップなメロディーと、彼の歌声がピッタリ合ったイイ曲です。森 陽馬

2009年10月27日(火) Curly Giraffe feat Bonnie Pink 「Run Run Run」

 昨日の風雨はどこへやら。
 東京は台風一過でポカポカ陽気。とても気持ちよい天気でした。

そんなスカッとした青空のように、爽快感あるナンバーが今日のこの1曲。

 カーリー・ジラフは、日本ロック・バンド“グレート3”のベーシストである高桑圭によるソロ・ユニット。(まっさらな状態で音楽に接して欲しい、ということから一般的には名前が伏せられています)
 最近では佐野元春のバックも担当していたり、様々なセッションに引っ張りだこの彼ですが、豪華ゲストを多数招いたオリジナル・フル・アルバム『Thank You For Being A Friend』を発表しました。(BUCA-1030 \2,940)

 全13曲、彼のオリジナル曲ながら、各々に女性ヴォーカルをフィーチャー。それも木村カエラ、Cocco、ボニー・ピンク、チャラ、ラヴ・サイケデリコ、新居昭乃、安藤裕子、平岡恵子という名実共に知られた女性シンガーが集い、彼のポップな楽曲に華を添えています。

 その中でも特に気に入ったのが4曲目「Run Run Run」。
 開放感溢れる超ポップなナンバーで、ボニー・ピンクのキュートながら芯のある歌声がとっても魅力的。本当に心弾む1曲ですね。

 他の楽曲もとても聴きやすく、全曲英語詞なので、J-POP好きの方にはもちろん、洋楽女性ヴォーカル好きの方にもオススメの1枚です。森 陽馬

2009年10月28日(水) スタイリスティックス 「ユー・アー・エヴリシング」

 相変わらず<ギャッツビー>のCMで「愛がすべて」(「Can't Give You Anything」)が使われ続けているスタイリスティックス。
 1970年代、アメリカでも日本でもとても人気がありましたね。
 そしていい曲が多かった。

 ラッセル・トンプソン・ジュニアのきれいな裏声は、にごりのない清流を思わせてくれるもので、多くのファルセット・ヴォイスの中でも特に純正さを感じさせてくれます。

 この曲は、1971〜2年にかけての大ヒット。
 リンダ・クリードと、プロデューサーでもありアレンジャーでもあるトム・ベルによる作品で、この後マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスのデュエット・アルバム『ダイアナ&マーヴィン』でもカヴァーされました。

 1974年の彼等最大のヒット「誓い」(「You Make Me Feel Brand New」)と同様に、エレクトリック・シタールがうまく使われた演奏にも注目です。森 勉

★掲載ジャケットは最近発売されたSHM-CD仕様ベスト盤(VICP-45002 \2,400)。

2009年10月29日(木) 西海 孝 「父の言葉」

 先週の話で恐縮ですが10月22日(木)横浜サムズアップにて、僕の大好きなバンド、東京ローカル・ホンクと、洗光舎(西海孝&西海しげる)のライヴを見てきました。

 “洗光舎”は、テキーラ・サーキットというグループで活動し、更に数多くのセッションに参加してきた名ギタリスト西海孝さんと、その弟でこちらも超絶ギタリストのしげる氏によるユニット。
 このご兄弟の実家が“洗光舎”という名のクリーニング店だそうで、この日はそのクリーニング店を営んでいるお父様&お母様もご来店されていたこともあり、アットホームで楽しいライヴでした。

 今日のこの1曲は、その西海孝さんが今夏に発表した記念すべきソロ1stアルバム『空を走る風のように、海を渡る波のように』からご紹介。(XQBU-1005 \2,500)

 この作品は、スティーヴン・フォスターやアイルランド民謡/スコットランド民謡など、日本にも馴染みのある海外唱歌ともいえる名曲に、彼自身の言葉による日本語詞をつけた楽曲を集めた1枚。

 西海孝さんの歌声は、彼が爪弾くギターの音色と同じように、聴く者の心をどことなく暖かくしてくれるような声色で、この曲「父の言葉」は実際にお父様がいらっしゃる前で歌っていたせいか、ライヴでもとても印象に残った1曲でした。(この曲のメロディーはスコットランド民謡の「アニー・ローリー」が元になっています)

 ちなみに、西海兄弟が参加したこの日の東京ローカル・ホンク「カミナリ」が最高の出来で、西海孝さんによるバンジョー(!)が、井上文貴さん奏でるスライド・ギター&西海しげる氏の痛快エレキ・ギターと見事融合。
 ♪雪の降る夜の不思議なカミナリ♪の如く、幻想的に響いてました。森 陽馬

2009年10月30日(金) 浜口 茂外也 「Do You Wanna Dance」

 来週11月4日(水)、当店地下アゲインにて、浜口茂外也さんのライヴが急遽決定しました。

 昭和の名作曲家:浜口庫之介の息子であり、ティンパンや細野晴臣さんのセッションなどでも活躍中のマルチ・ミュージシャンである茂外也さん。実は、私の父・勉と小学校で同級生だったそうです。

 突然決まったこともあり、今回は弾き語り中心となる予定ですが、茂外也さんの歌声は父・庫之介さん譲りの味わい深さがあるので、きっと暖かみが伝わる良いライヴになると思います。ご興味ある方は是非。

 今日のこの1曲は、浜口茂外也さんが昨年リリースした最新オリジナル・アルバム『月影の恋』(EGDS-31 \2,625)から、ビーチ・ボーイズのカヴァーでも有名な「Do You Wanna Dance」。(オリジナルはボビー・フリーマン)

 ビーチ・ボーイズのロックン・ロールなヴァージョンとは全然違って、グッとテンポを落とし、落ち着いた大人のスロー・ダンス・ナンバーにアレンジ。

 ♪ドゥユ・ドゥユ・ドゥユ・ドゥユ・ウォーナ・ダンス♪の部分も、大人の女性を耳元でやさしく口説くような雰囲気で、まさに“月影の恋”的・夜向きダンス・ナンバーに仕上がっています。森 陽馬

2009年10月31日(土) 7 WORLDS COLLIDE 「You Never Know」 

 2001年にチャリティー・プロジェクトとしてライブからスタートした、ニール・フィン(クラウデッド・ハウス/スプリット・エンズ)が主催のユニット、“7ワールズ・コライド”が久々に始動。
 2枚組スタジオ・アルバム『The Sun Came Out』(SICP-2424 \3,780)をリリースしました。

 2008年の12月から2009年1月にかけて、オークランドのニール所有のスタジオで録音された本作。

 メンバーは2001年にも参加していたジョニー・マー、レディオヘッドのエド・オブライエン&フィル・セルウェイ、ニールの兄ティム・フィン、ウィルコ(全員参加!)、ニールと同郷ニュージーランドの歌姫ビック・ルンガ、初参加のKTタンストール等々、更に彼らの家族も歌や演奏に参加。国も世代も様々なメンツが大勢集まり、和気藹々と制作された様子がブックレットの写真からも伝わってきます。

 各々が曲を持ち寄って思い思いに録音された全24曲。
地味ではありますが、聴き込むほどに味わいが増しそうな曲がズラリ。

 レディオヘッドのスキンヘッド・ドラマー、フィル・セルウェイが意外にも繊細な歌声を披露している事がアルバムの中では話題となっているようですが、 個人的に気になった曲はウィルコのジェフ・トゥイーディが歌う「You Never Know」。

 メロディーやギターがジョージ・ハリスンを連想させる一曲です。
他のメンバーが歌う曲が数曲あるのでウィルコ・ファンは要チェックでしょう。
 あと今まで知らなかったビック・ルンガ、すーっと耳に馴染むきれいな歌声にとても惹かれました。

 ちなみに来年にはクラウデッド・ハウスとしての新作もリリースする予定だそう。現在日本では地味な存在かもしれませんが、素敵なポップ・アルバムを届けてくれるのを楽しみにしましょう。東尾沙紀






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