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 Vol.3 『ペット・サウンズ』と『スマイル』



当店の閉店、及び立ち退き期限が、遂にカウントダウンとなってきました。
昨年12月中旬、閉店セールの初めは、
「あと1ヶ月以上あるから…」と思っていたのも束の間、
あっという間に今年も1ヶ月が過ぎようとしています。

 最近、お客様に、
「閉店後はどうするのですか?」
「どこか別の場所でやるのですか?」
「いつから再開するのですか?」
ということをよく聞かれるのですが、正直な話、まだ詳しいことはほとんど決まっておりません。
 とりあえず、ほぼ確定している事は、

★現在の場所から西小山に向かって線路沿いに50mほど行った場所(ミスター・ドーナッツの
向かいの駐輪場になっている場所)に、品川区側から、現在の店舗と同じ大きさの土地を代替
地として用意してもらえそうだということ。

★ただ、まだその土地は所有権が移っていないので、その土地を取得後に建物を建てて、そ
の新しい土地で現在と同じように営業できるのは、来年の夏頃になりそうだ、ということ。

★とりあえずこのようなことが決定したのが、昨年の11月末で、仮店舗が決まらないうちに立ち
退きになってしまうため、まだどの場所でいつから再開するかは、未定。

ということです。

 とりあえず、現在の店舗から徒歩約7分の場所に倉庫を契約し、
立ち退き後はそちらに荷物を移動、引越し作業などが完了した後、
仮店舗の場所を探す予定です。
 もちろん通販も可能ですので、ご希望の商品などございましたら、
お気軽にお問い合わせくださいませ。





 さて、先にも書きましたが、もうあと数日で当店も一時閉店となります。
それと同時に、ブライアン・ウィルソン来日公演『スマイル・ツアー』も、
もうすぐ目の前まで近づいてまいりました。
 すでにご存知の方が多いかと思いますが、当店名『ペット・サウンズ』は、
ビーチ・ボーイズの1966年発表作からとられたものです。
『スマイル』というのは、その『ペット・サウンズ』の次のビーチ・ボーイズの作品として発売予定
されていた作品のタイトルだったのですが、当時諸々の事情により発売中止となり、以後発表
されなかった幻の作品として、ロック・ファンの間では語り草となっていた1枚でした。
 その『スマイル』が、昨年、ブライアン・ウィルソン本人による新録音で遂に公式に発売、
更には、『スマイル』の作品全曲を曲順通りに演奏する、という当時のビーチ・ボーイズファンに
とっては、夢のようなコンサートが、今回のその『スマイル・ツアー』なのです。





 土地収用法にかけられ、代替の土地がない状態での立ち退きになりそうだった昨年初頭、
ブライアン・ウィルソン『スマイル』が発売になる、という報が届いた初夏あたりから、
徐々に話が好転して代替地のメドがたち、ブライアンがその『スマイル・ツアー』で
来日する1月30、31日をもって、当店『ペット・サウンズ・レコード店』が一時閉店・・・、
となるのも何かの縁でしょうか。

 当初、日本での『スマイル・ツアー』は昨年末、というのが一部で噂だったのですが、
結局なんだかんだで年明けになり、それも東京公演がちょうど、当店の閉店の日と重なること
となりました。都合をあわせてくれた(?)ブライアンに感謝しなければなりませんね。
(なので、30、31日は、15時前に閉店となりますのでご了承くださいませ。)





 もうあと数日でその『スマイル・ツアー』。
『スマイル』に込められた皆さんの思いはそれぞれで、
積年の思いが叶い念願となるオールド・ファンの方から、
最近『ペット・サウンズ』を聴いてファンになった若年層まで、
様々な思い入れがあるでしょうが、これらの立ち退き・閉店などのこともあり、
私たちにとっては、より感慨深い思い出のコンサートとなりそうです。

特に、約24年間、『ペット・サウンズ・レコード店』を続けてきた私の父にとっては、
本人は言葉には出しませんが、
誰よりも熱い思いを心に秘め、心待ちにしているはずだ、
と息子の私はイマジネーションしています。

 だから、というわけではないのですが、
『ペット・サウンズ・レコード店』の店員であるにもかかわらず
恥ずかしながら『スマイル』の詳しい予備知識を持ち合わせていない私は、
"この曲の導入部分におけるティンパニの音とリズム・パターンがどうだ" とか、
"あの曲のコーラス部分の前に入るドラム・フィルの音がこうだ"
とかいうようなことはよくわかっていないですし、実際、ほとんど興味がありません。

 ブライアン・ウィルソンとそのバンドが、
私たちの心と夢にどのようなヴァイブレーションを与えてくれるだろうか、
という漠然とした期待とほんの一握りの不安を胸に、
会場の席につく瞬間を未だ夢に描いているのみなのです。


            


 『スマイル・ツアー』と共に、当店も一時閉店となりますが、
もちろんこれで終わりではありません。
 ブライアン・ウィルソンがインタビューで答えているように、
『スマイル』の次回作として、新作の構想もすでに出来上がっているようですし、
私たちもこの立ち退き&一時閉店をひとつの通過点として、
更に多くの方々に喜んでいただけるような"街のレコード・CD店"作りに励み、
前に進んでいく所存です。


 『ペット・サウンズ』、そして『スマイル』。
夢の続きはまだまだこれからです。


 


2005年1月27日(木)
<ペット・サウンズ・レコード店 森 陽馬>



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