PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2010月3月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2010年3月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2010年3月1日(月) Neil Young (Stills-Young Band)「Long May You Run」

 昨日2月28日は東京マラソンの日。
 友人の応援で20km地点(日比谷)へ行ってきました。
 10〜12時は風雨も強く、気温も低かったので走者は大変そうでしたね。ランナーの皆さんお疲れさまでした。

 ということで、今日は“Run”のつく曲を、と思っていたら、なんと!バンクーバー・オリンピック閉会式でニール・ヤングが登場し「Long May You Run」を熱唱! シビレましたねー!

 「Long May You Run」は、1960〜70年代に“バッファロー・スプリングフィールド”、“クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング”で共に活動していたニール・ヤングとスティーヴン・スティルスが再びコンビを組んで1976年発表したアルバム『Long May You Run (邦題:太陽への旅路)』(WPCR-75093 \1,800)に収録されている名曲。

 ♪どこまでもずっと 君は走り続けるのだろう♪
と歌われる内容からこの曲を選んだのでしょうが、閉会式の一番いい場面、聖火が消えるところでこの曲が歌われるとは。
 2001年911事件後行われた被災者追悼ライヴ『America a Tribute to Heroes』での「imagine」と並んで、ニール・ヤング名場面となりましたね。

 ちなみにこの曲、後半の歌詞にビーチ・ボーイズ「キャロライン・ノー」が出てくることでも有名な1曲です。森 陽馬

2010年3月2日(火) ロイヤレッツ 「イッツ・ゴナ・テイク・ア・ミラクル」

 久し振りに60'sガール・ポップをいってみましょう。

 明日3日はひなまつり。
女の子の節句ですので、それに合わせて今年もお送りいたします。

 昨年(2009.3.8)のこのコーナーでは、ちょうどその時期にACEからいいコンピがでたので、その中からジェリー・ビーンズを紹介しましたが、今年はこれといった新譜はないので、僕のオールタイム・フェイヴァリットなものを選んでみました。

 ロイヤレッツの1stアルバムから名曲「イッツ・ゴナ・テイク・ア・ミラクル」です。(CMYK-6142 \2,625)

 ローラ・ニーロのカヴァーの方が有名かもしれませんが、オリジナルは1965年に発表されたこのヴァージョンです。
 プロデュース&アレンジ&作曲はテディ・ランダッツォで、彼らしいドラマティックな展開がフィル・スペクター・サウンドとはまた違った魅力を感じさせてくれます。

 さて、今年のひなまつりは、アゲインで“出張ブランディン”というDJイベントがあります。宮治淳一さん、平本肇さんが所有の60'sガール・ポップのオリジナル・シングル盤をたっぷりかけてくれると思います。その場でしか聴けないレア盤もあることでしょう。
 3月3日(水)19時30分スタート。問い合わせはアゲインまでどうぞ。森 

2010年3月3日(水) 古内 東子 「Boyfriend」

 移籍第一弾アルバムながら快心の出来だった2008年10月発表作『In Love Again』から約1年半。古内東子の新作『PURPLE』が本日発売。(NFCD-27254 初回DVD付 \3,800)

 前作にも参加していた河野伸がプロデュース&アレンジを担当。
 恋愛小説を読んでいるような古内東子による歌詞&楽曲も秀曲揃いで、佐野康夫のドラミングなどバックの演奏もNICE! 名作と誉れ高い『Hourglass』や個人的に大好きな『Dark Ocean』と並ぶ彼女の代表作になりそうな1枚です。

 古内東子らしい歌詞で今作のハイライトともいえる@「LOVE SONG」、クールで躍動感あるB「Where You Are」、C「映画を見よう」、エレクトリック・シタール的音色使いのJ「レッスン」など、どれも魅力的な曲ですが、僕が一番気に入ったのはH「Boyfriend」。

 サビの歌い回しがドリカム「悲しいKiss」に少し似ていて、なおかつ古内東子らしい切ない歌詞なので、聴いた瞬間好きになってしまいました。

 ただ今回はこの曲のような実らない恋の歌より、好きな相手“君”への想いが詰まった恋愛の歌が多いですね。彼女の現在の恋愛模様が反映されているのかもしれません。森 陽馬

2010年3月4日(木)オーシャン・カラー・シーン「Magic Carpet Days」

 先日フジロック出演アーティスト第一弾が発表になりましたね。
 ジョン・ポール・ジョーンズが参加し話題のトリオ、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズやベル&セバスチャン、MUSEなど、第一弾から注目度の高いメンツ揃い!
 結成20周年を迎えるUKバンド、先日9枚目となる新作リリースしたオーシャン・カラー・シーンもフジロック出演が決定しました。

 時代に流される事無く、骨太なロックを鳴らし続けてきた彼ら。新作『Saturday』(PVCP-8263 \2,415 ボーナストラック2曲)でもその真っ直ぐなスタイルは変わりませんが、とにかく一曲一曲が良く、近作の中で一番!といえるほどとっても充実した内容です。

 ループ音がザ・フーの「Baba O'riley」を連想せずにはいられない曲で幕を開け、最後のサイケ風な曲(ドラム・パターンがもろにビートルズの「Tomorrow Never Knows」!)では、またそのループ音が登場するので、コンセプト・アルバム的作品になっているのかもしれません。
 ホーンを取り入れたタイトル曲には記載はありませんがパオロ・ヌティーニが参加。(聴いた感じは全然わかりません)
 美しいバラード、カントリーなど表情豊かに歌うサイモンのヴォーカルも一層魅力的になった気がします。

 先行シングル「Magic Carpet Days」も、キラキラしたイントロとポップなメロディーが耳に残る必聴曲! 今後はポール・ウェラーのバック・メンバーとしてだけでは無く、オーシャン・カラー・シーンとしてたくさん来日してくれると嬉しいなと思います。東尾沙紀

2010年3月5日(金) Sade 「In Another Time」

 シャーデーが約10年ぶりとなる新作を発売。(『Soldier Of Love』 EICP-1324 \2,520)

 前作『Lovers Rock』は、アコースティック・ギターの生音を基調にしたシンプルなサウンドが中心でしたが、今作はストリングスを効果的に使用。個人的にかなり気に入ってよく聴いています。

 特に6曲目以降、後半の楽曲が深遠な雰囲気でいい感じ。

 今日のこの1曲に挙げた8曲目「In Another Time」は、間奏のヴァイオリン、ピアノ、ストリングス、そしてサックスのソロが絶妙! より母性を帯びたシャーデー・アデュの歌声を引き立たせています。

 全体的に明るさはあまりありませんが、それはデビュー当時からそうでしたし、唯一無二の高潔感やナシュラルな佇まいは不変。この10年の間にもシャーデー的なグループは色々と出てきましたが、やはりシャーデーはシャーデーなのだな、と感じられる1枚です。森 陽馬

2010年3月6日(土) Orleans 「Dance With Me」

 渋谷の道玄坂にあるプライム・ビル6Fに、新しいライヴ・ホール『プレジャー・プレジャー』が来週オープン。
 以前は映画館だったスペースを、座席はそのままにステージを新設したライヴスペースだそうで、こけら落としは3月10日(水)、センチメンタル・シティ・ロマンスのライヴ。小坂忠さんもゲスト参加で2,000円!と格安です。センチ・ファンはもちろん、小坂忠さん好きの方も是非チェックしてみてください。

 今日のこの1曲は、そのセンチメンタル・シティ・ロマンスもライヴでよくカヴァーするオーリアンズの名曲「ダンス・ウィズ・ミー」。

 ジョン・ホールとラリー・ホッペンを中心に結成され、1970年代に活躍した名グループ、オーリアンズのオリジナル・アルバム『歌こそすべて』は名盤でありながらも、残念ながら現在国内盤が出ていない状況ですが、先日入荷したこのBOXに「ダンス・ウィズ・ミー」はしっかり収録されていました。

 『アコースティック・ギター・デイズ』は、宇田和弘さんが監修・選曲・解説を担当した70'sアメリカン・ルーツ・ロックの名曲を64曲集めた4枚組BOXセット。(WQCP-751 歌詞・解説付 \8,400) もちろん、好選曲のアメリカン・ルーツ・ロック・コンピとしても充分楽しめますがこのBOXの魅力はなんといってもブックレットでしょう。

・全曲のギター・コード(歌部分だけでなくイントロ部分もあり)
・全コード押える位置がわかりやすいダイアグラム付
・オリジナル・キーとプレイ・キー明記
・カポが必要な曲はカポの位置もわかりやすく記載
・オープン・チューニングに関しても記述あり
・プレイする際に参考になる簡単なプレイ解説
などなど、アメリカン・ルーツ・ロックをよく聴いていて、アコースティック・ギターを弾くのが好きな方にはうってつけのコンピです。

 通販限定商品で、新聞広告などでも評判&好評のBOXだそうですが、当店にて店頭販売しております。中もお見せできますので、気になった方はお気軽にお声をかけてください。森 陽馬

2010年3月7日(日) アソシエイション 「スノー・クイーン」

 このところ東京は3月らしい寒暖の差がある気候が続いています。
 数日前は20度くらいあったのに、今日7日は冷たい雨が降り風も少しあるので、気温は5度くらいしかないのではないでしょうか。そんな寒い時期に紹介したいのがこの曲です。

 キャロル・キング&ジェリー・ゴフィンの数ある名曲の中でも、特に美しい旋律を持った曲なのに、シングル・ヒットではないんですよね。
 シティのアルバム1曲目に収録していた、ということなので、キャロル・キング自身としては重要曲としてとらえていたのではないかと思いますが・・・。
 日本ではなんといっても、ロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズのヴァージョンが有名で、本当に素晴らしいカヴァーに仕上がっています。

 このアソシエイションのヴァージョンも、彼ららしいコーラスがバッチリでなかなかなものです。

 この曲が収録されているアルバム『ウォーターベッド・イン・トリニダード (邦題:アソシエイションの新しい世界)』(MHCP-984 \1,890)は、彼らの人気の旬が過ぎた時期のものだけにあまり語られないのが残念です。(でも知る人ぞ知る通好みのアルバム、ということでもいいかも。) 森 

2010年3月8日(月) クロスビー・スティルス&ナッシュ 「組曲:青い眼のジュディ」

 劇場公開中の恋愛コメディー映画『恋するベーカリー』を先日鑑賞。
 メリル・ストリープ主演映画ですが、思っていたよりもとても面白くて、楽しく見ることができました。

 “ベーカリー”とタイトルにつくもののパン屋の要素はあまり重要ではなくて、大人の恋愛模様(不倫)が大胆に描かれており、意外にもR15指定。かなりお下品な描写や“ハッパ”を吸ってブッ飛んじゃうというあからさまに不道徳な場面も出てくるので、お堅い方にはオススメできませんが、肩の力を抜いて笑いながら見れる映画です。
 2枚目俳優だったアレック・ボールドウィンがメタボおやじになってしまっていますが、なかなかイイ味だしていましたね。コメディ俳優のスティーヴ・マーティンも普段より抑え目ですが好演。

 ちなみにこの映画、60〜70'sのいい音楽もたくさん使われており、ビーチ・ボーイズ「素敵じゃないか」、エルトン・ジョンなどが印象的な場面でかかりました。

 今日のこの1曲には、デヴィッド・クロスビー、スティーヴン・スティルス、グラハム・ナッシュによるCSNの人気曲「青い眼のジュディ 原題:Suite:Judy Blue Eyes」。(CSNの69年発表1st『CS&N』に収録 WPCR-75338 \2,000)
 ♪トゥルルルル♪と歌われる後半のコーラスが印象的な名曲。映画内でもこの部分が使われています。森 陽馬

2010年3月9日(火) 神聖かまってちゃん 「ロックンロールは鳴り止まないっ」

 今夜の東京は雨が雪となり、強い風と相まって本当に寒かったですね。
でもその極寒を切り裂くような痛快な日本人バンドのアルバムが登場!

 “神聖かまってちゃん”は千葉在住による4人組ロック・バンド。
 ネット動画サイトから火がつき、SUMMER SONIC 09一般公募枠で約1600組の応募から選出されたにも関わらず、本番のステージでは1曲のみで演奏を終えるなど、デビュー前から話題となっていましたが、この度記念すべき1stミニ・アルバム『友だちを殺してまで。』を発表。(XQFL-1014 7曲+シークレット・トラック収録 \1,575)

 “ロック・バンド”、“パンク”とは名ばかりのグループがたくさんいますが、このバンドの音と歌は、久々に“ロック/パンクの初期衝動”を感じさせてくれましたね。

 歌も演奏も上手いわけではないし、好き嫌いも大きく分かれるでしょうが、前につんのめって倒れてしまいそうなロック精神が歌詞から伝わってくるんです。
 相対性理論の歌詞が面白いことで知られていますが、それとも違うグサッと刺さるような感触。

 ピアノのイントロや歌い回しがパティ・スミスの影響を感じさせたり、イギー・ポップのような楽曲&歌唱であったり、曲によってベンジー(浅井健一)っぽい雰囲気だったり、というところもいいですね。

 特に@「ロックンロールは鳴り止まないっ」。これは本当にかっこいい!
(パティ・スミス「ロックン・ロール・ニガー」&「ビコーズ・ザ・ナイト」になんとなく似ていると感じるのは僕だけでしょうか?)

 2010年、一般受け/セールスとは別次元でブレイク必至の大注目のバンドでしょう。森 陽馬

2010年3月10日(水) 大橋トリオ 「贈る言葉」

 当店大推薦の男性シンガー、大橋トリオの新作カヴァー・アルバム『FAKE BOOK』(RZCD-46458 \2,100)が本日発売。
 今日も風が冷たい一日でしたが、いつもの優しい歌声を聴き、いっそう春が待ち遠しくなりました。

 宇多田ヒカル、マイケル・ジャクソンなど曲目だけを見ると異色とも思えるものも、思わずカヴァー・アルバムだという事を忘れてしまいそうなほど見事に大橋トリオ色に染められています。

 今日の一曲はベタですが卒業シーズンということで海援隊の「贈る言葉」。

 アルバムの中では最も意外な選曲ですね。
 ホーン、アコースティック・ギター、ピアノの音色のあたたかみのあるアレンジが心地良い一曲。ちなみに大橋さんは3番の歌詞がお好きなのだそうです。

 原曲にあまり馴染みがなくても勿論楽しめる一枚。
 なお、当店オリジナル特典として、かわいい携帯ストラップを作成しました。先着で差し上げております。東尾沙紀

2010年3月11日(木) Soulive 「While My Guitar Gentry Weeps」

 センチメンタル・シティ・ロマンスの名ギタリスト、告井延隆さんによる大好評ビートルズ・カヴァー・アルバム『SGT.TSUGEI'S ONLY ONE CLUB BAND』。
 その第2弾アルバムの発売が3月25日に決定いたしました。

 当店のみの先着特典として、“SGT.TSUGEI”ギター・ピックも制作。
 通販コーナーに収録曲も掲載しましたので、チェックしてみてください。

 さて、ビートルズ・カヴァー繋がりということで、今日はこの1枚。
 新世代ジャズ・ファンク・バンド、ソウライヴの新作『ラバー・ソウライヴ』(PCD-93322 \2,415)。

 タイトル通り、ビートルズの名曲を“ソウライヴ流ファンキー・オルガン・ジャズ”でクールにカヴァーしたアルバム。ここ最近のオリジナル作はヴォーカルをfeatした曲が多かったのですが、今回は原点に戻ってトリオ編成。持ち味のグルーヴィーな演奏がゴキゲンです。

 全12曲中、ジョージ・ハリスン作が3曲収録(「Taxman」、「Something」、「While My Guitar Gently Weeps」)されており、その中ではやはり「While My Guitar 〜」。
 ニール・エヴァンスのオルガンとエリック・クラズノーのギターで順番に歌メロが奏でられ、後半はクラズノーによるギター・ソロがかっこいい1曲。

 しかしこの曲、何故かそのギター・ソロが盛り上がってきた3分40秒過ぎにフェイドアウトしてしまうんですよね・・・。これはもったいない! ソウライヴらしい10分近いジャム・バンド・アレンジで聴いてみたかったですね。
 5月に来日公演があるそうなので、そのフェイドアウトの続きはライヴで聴けることを期待しましょう。森 陽馬

2010年3月12日(金) Agustin Pereyra Lucena 「Pisadas En El Mar」

 昨日はボブ・ディラン来日公演の初日、Zepp Osakaにて無事行われたそうです。
 見に行かれた方のレビューを読むと、選曲も内容もかなり良かった模様。僕は再来週見に行く予定なので楽しみになってきましたね。

 来日というと気になっているのが、アルゼンチン出身の名ボッサ・ギタリスト、アグスティン・ペレイラ・ルセーナ。
 来週20日(土)から27日(土)まで、神奈川→愛知→岡山→大阪→愛知→東京とツアーが決定しています。

 特に初日の20&21日は鎌倉にある有名カフェ、カフェ・ディモンシュ(cafe vivement dimanche)で行われるとのことで、日程が合えば見に行きたかったのですが・・・。“鎌倉のブラジル音楽&ボッサ聖地”で見るルセーナ、きっと爽やかな春を運んでくれるライヴとなるでしょうから、お近くの方は是非チェックしてみてください。

 さて、今日のこの1曲はそのアグスティン・ペレイラ・ルセーナが、9年ぶりに発表した2008年作『42:54』(PCD-24219 \2,520)より。

 単なるシンプルなボサノヴァとも違って、浮遊感あるエレピの音とルセーナの繊細なギターがちょっとモダンな雰囲気も出していて心地良く響きます。ブエノスアイレス在住の女性シンガー、アドリアナ・リオスによる透明感ある歌声&スキャットもNICE!
 マルコス・ヴァリお好きな方ならイチオシの1枚ですね。森 陽馬

2010年3月13日(土) Tom Waits 「The Heart Of Saturday Night」

 レコード・コレクターズ誌2010年4月号が入荷。
 表紙&第一特集はジミヘンですが、第二特集のトム・ウェイツ特集が超充実していて読み応えがありますね。

 特にトムズキャビン麻田浩さんによる『1977年1月、トム・ウェイツは羽田に降り立った』と題された初来日公演ツアーの回想!
 打ち上げを居酒屋や焼き鳥屋でやっていたという話や、その雰囲気が伝わるトム・ウェイツが箸を使って何かを食べようとしている貴重写真などとても興味深い8ページ。トム・ウェイツ好きの方は必読ですね。
(麻田さんにはトム・ウェイツ話だけでなく、他にもトムズキャビンで呼んだミュージシャンの裏話を連載してもらいたいですね。)

 先日、トム・ウェイツの初期名作群7タイトルが限定紙ジャケ&最新リマスターで発売になり、本日は土曜日ということでこの1曲。

 73年発表1st『クロージング・タイム』が名作として誉れ高いですが、74年発表2ndアルバム『土曜日の夜』(原題:The Heart Of Saturday Night)も同じくらい素晴らしい作品。(WPCR-13775 限定紙 \2,200)
 ジェイムス・テイラー、ベット・ミドラーもカヴァーした「Shiver Me Timbers」、初来日公演でも披露されたA「San Diego Serenade」他、どの曲もピアノ&ベースが奥深く響き、さりげなくストリングスが効果的に使われているのも聴き所。現在とは比べ物にならないほど澄んだ歌声も魅力的です。

 タイトル曲Eも翌々年にリリースされた「トム・トラバーツ・ブルース」(ドラマ『不毛地帯』のエンディングで使われました)とは全く別人のようなやさしい歌声。曲中の効果音(クラクションと車が道を走る音)もイイ味だしてます。森 陽馬

2010年3月14日(日) 松尾 清憲 「何%チョコレート・ラヴ」

 今日ホワイト・デーは心地良い小春日和。
 皆さんはいかがお過ごしでしたでしょうか?

 昔はホワイト・デーのプレゼントというとマシュマロというイメージがありましたが、現在は甘いものならなんでも(甘くなくてもOK?)という感じですね。音楽業界活性化のために、好みのCD・レコードをプレゼントし合う、なんていう記念日はできないかな。

 さて、松尾清憲さん&本秀康さんから素敵なホワイト・デー・リリース作品が入荷してきました。(<EP> CDJ-0001 \1,575)

 CDジャーナル誌が創刊25周年を記念して企画したコラボ楽曲で、松尾清憲さんが書き下ろした曲を、レコスケくんでお馴染みのイラストレーター本秀康さんが楽曲を聴いてイメージしたイラストを手掛ける、という共同企画。

 松尾さんらしいビートルズ直系のメロディーを持った1曲で、「ゲッティング・ベター」的要素も入ったイチゴみたいに甘酸っぱいポップ・チューンです。
 CDジャーナルのWEBサイトでその楽曲を聴くことができましたが、やはり本さんのイラストでこのジャケット・サイズ。手元にあるとうれしいですね。中にポストカードも入っています。

 なお、このアナログEP盤は500枚限定生産。お早めにお召し上がりください。森 陽馬

2010年3月15日(月) Disney's Beach Party 「Catch A Wave」

 この新店舗に移ってから、今日でちょうど3年が経ちました。
 これもひとえにお客様皆様のおかげです。重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。(なお、当店は1981年4月オープンだったので来年は30周年!)

 ちなみに毎年書いているような気がしますが、3月15日はビーチ・ボーイズのマイク・ラヴの誕生日でもあります。(なんと!69歳!) おめでとう!マイク!

 1月のビーチ・ボーイズ来日公演を見て、マイクのパフォーマーとしての偉大さ、そして“続けること”の重要さを改めて実感させてくれましたね。ホント、うちの店も末永く続けていきたいと思っておりますので、これからもよろしくお願い致します。

 今日の1曲は、その来日公演で1曲目だったマイク作詞によるこの曲。
 ディズニーのレーベルから出た楽しいビーチ・ボーイズ・カヴァー集(『Disney's Beach Party』 861275-2)ですが、ダリアン・サハナジャ&ジェフリー・フォスケットも参加していてオススメです。森 陽馬

2010年3月16日(火) サカナクション 「表参道26時」

 個人的には、“第2回CDショップ大賞”と思っていた札幌出身5人組バンド、“サカナクション”。

 前作『シンシロ』後は、どのツアーも即SOLD OUT! 一般的な知名度も上ってきた彼らが約1年ぶりとなる4thアルバム『kikUU-iki』(キクウキ)を発表。(初回ボーナス曲あり VICL-63556 \2,800)

 アルバム出だしのintroこそSTS9『Artifact』を彷彿とさせるエレクトロニカ・コラージュながら、アルバム全体としては、今までよりもロック・バンドとしての可能性をより広げた印象。実験的な試みとポップな側面がバランスよく絡み合い、聴くほどに味も出てくる快心の新作となりました。

 サカナクションの代名詞となりそうな最高にかっこいいシングル曲C「アルクアラウンド」、ライヴでも盛り上がりそうなロック・チューンD「Klee」、合唱とストリングスも融合させたロック・オペラ的大作K「目が明く藍色」など聴き所満載ですが、キラー・トラックはI「表参道26時」。

 今までのサカナクションらしい要素と新味がうまく融合したポップ・チューンで、サビ部分をベーシストの草刈愛美と思われる女性によって歌われているのが特に印象的!
 
 彼女の遠い空を見つめるような澄んだ歌声はサカナクションのサウンドにピッタリ合っていて、例えが古いのですが、サザンオールスターズ「私はピアノ」(原由子による初のソロ・ヴォーカル曲)を初めて聴いたときのような感動を覚えましたね。

 山口一郎によるソング・ライティングの才能&成長もより感じられる1枚。サカナクションというバンドはまだまだ進化を辿りそうです。森 陽馬

2010年3月17日(水) AC/DC 「Highway To Hell」

14日の日曜日、さいたまスーパーアリーナにAC/DCを観に行ってきました。

 当日はスタンドの上までぎっしり。観客の大多数がグッズで売られていた赤いツノを頭に付けていたので、なんとも異様な光景が広がっていました。

 定時を少し過ぎ、ステージのスクリーンにはメンバーが乗る暴走機関車が会場に向かってくるストーリーのアニメーションが流れ、スクリーンが真ん中で分かれ、中から大きな機関車のオブジェが! 現時点での新作『悪魔の氷』からの曲「ROCK'N'ROLL TRAIN」からスタートしました。

 新作のツアーと銘打っているものの、「Back In Black」、「T.N.T」、「Thunderstruck」、「Let There Be Rock」等お馴染みの曲連発!
 「Hells Bells」では大きな鐘が下りてきたり、「Whole Lotta Rosie」では機関車にまたがる大きな女の人形が登場したり、アンガスがストリップ・ショーしたり...花火、火柱、大砲、真ん中まで伸びる花道、上昇するステージ、演出もすごくてエンターテイメント・ショーといった感じでした。

 一曲終わると少し間が空くのはやはり体力が持たないのかなというのを感じさせましたが、アンガスもブライアンも走り回って終始テンションが凄かったです。アンコールは「Highway To Hell 」「For Those About To Rock (We Salute You)」。お馴染みのダックウォークもガンガンのギターもとにかくエネルギッシュで最高でした。

 掲載ジャケットは先代ヴォーカリスト、ボン・スコットの30周忌追悼でリリースされた5枚組ボックス(SICP-2564 \10,000)です。東尾沙紀

2010年3月18日(木) 大滝詠一 「幸せな結末」

 今年もナイアガラ記念日(3月21日と勝手にナイアガラ・ファンが制定)がやってまいりました。(毎年こんな書き出しのような気がします)

 来年2011年、ロンバケ30周年の準備期間である2010年の今年は何もリリースがないかと思っていましたが、なんとうれしや、3種類もナイアガラ関連の発売があります。

@大瀧詠一作品集 Vol.1 (1980-1998)  『SONG BOOK T』
A大瀧詠一カバー集 Vol.1 (1978-2008) 『COVER BOOK T』
B大瀧詠一ファーストアルバムカバー集 (1980-2010)
以上の3種類です。

 @は1991年に出た作品集をリニューアル。曲を追加しジャケットも新装、そして大瀧詠一自身によるリマスター、及び解説も追加収録した盤です。(初回三方背BOX仕様 SRCL-5011 \2,100)
 今日はその中から新たに収録された「幸せな結末」を。

 1997年秋のTVドラマ『ラブ・ジェネレーション』の主題歌としてシングル発売された曲ですが、待望のナイアガラ関連アルバムへの収録となりました。(ソニー・ミュージックからの“90'sベスト”コンピものに収録されたりはしていましたが・・・)

 今回のライナーノーツには、この曲の井上鑑によるストリングス・アレンジの秘話が明かされています。色々なことが曲の裏側に隠されているのですね。いやはや、なんとも・・・深いです。

 それにしてもイイ曲だなあ〜。リヴァイヴァル・ヒットさせたいなぁ。森 勉

2010年3月19日(金) キタキマユ 「あなただけI LOVE YOU」

 今日は、『大瀧詠一カバー集VOL.1 (COVER BOOK 1)』からの1曲です。(初回三方背BOX仕様 SRCL-5012 \2,100)

 あちこちに散らばっていた大瀧作品が聴けるありがたいコンピで、レーベルを越えソニー以外の音源も収められています。現在は生産中止&廃盤になっているものも多く、これからVOL.2、VOL.3と続けていって欲しいシリーズです。

 さて、全17曲、どれもお気に入りのカバーですが、今日は軽快なノリが心地良いキタキマユ「あなただけI LOVE YOU」。

 オリジナルは1980年須藤薫のヴァージョンで、キタキマユのカバーは2001年発表のマキシ・シングル(もうこんな言い方しませんね)のカップリング曲として聴けた曲でした。

 つい最近出たと思っていたら、もう9年前なのですね。
 キタキマユの声はキュートでイイ感じだし、何よりも曽我部恵一のアレンジがポップ・ソウル風味の跳ねたリズムでたまりません。森 勉

2010年3月20日(土) Bobby Charles 「Happy Birthday Fats Domino」

 音楽ギフトカードが販売終了となるそうです。

 以前は図書券と並んでプレゼント用に購入される方も多かったのですが、音楽業界の衰退に伴って需要も激減。大手外資系等で取扱不可の店舗も多く、ネット通販利用者が増加したことにより将来的な見通しから発行継続が困難、と判断したようです。

 閉店/縮小など暗い話題が多い最近の音楽業界ですが、ここまで不況が波及するとは・・・。2010年代最初の年、まだこれからも様々な再編があるかもしれません。

 さて話変わって、最近気に入ってよく聴いている1枚をご紹介。
 今年1月に逝去した「スモール・タウン・トーク」で知られるシンガー・ソングライター、ボビー・チャールズの遺作が先日発売。(『TIMELESS』 輸入盤 RICE'N'GRAVY records 517)

 ドクター・ジョンをプロデュースに迎え新作を録音していた、という話題は、ボビー・チャールズが亡くなった記事に書いてあったので、今年の夏頃までには出るのかな、と予想していましたが思っていたより早くリリースされましたね。

 これが期待していた以上に素晴らしい出来で、ドクター・ジョン・プロデュース/サニー・ランドレスがギターということもありニューオリンズ色の濃い仕上がり。これでドクター・ジョンが歌ったらドクター・ジョンのアルバムになりそうな全体的な雰囲気で、遺作とは思えないほどほのぼのとした1枚です。

 特に1曲目「Happy Birthday Fats Domino」。
 この曲のみデレク・トラックスがリード・ギターを弾いていて、更にジョン・クリアリーやホーン隊も参加。タイトル通りにニューオリンズ・サウンドがゴキゲンな1曲。
 内ジャケにはボビー・チャールズとファッツ・ドミノの2ショット写真も掲載されています。森 陽馬

2010年3月21日(日)Dave Rawlings Machine 「Method Acting/Cortez The Killer」

 90年代以降のシンガー・ソングライターでは、Gillian Welchという女性シンガーが好きで、彼女のアルバムは4作全て持っているのですが、ここ最近は2003年発表作『Soul Journey』以来全くソロ・リリースはなし。

 元々寡作な人ではありましたが、もう音楽活動は止めてしまったのかな、と思っていた矢先、このアルバムが発表されました。(Dave Rawlings Machine 『A Friend Og A Friend』 ACONY ACNY-908)

 Dave Rawlings Machineは、ギタリストのDave Rawlingsによるユニット(と思われる)で、彼のこの1stアルバムにGillian Welchがギター&コーラスで全面参加しているのです。

 Dave RawlingsはGillian Welchが96年に発表したTボーン・バーネット・プロデュースによる1st『Revival』からギタリストとして参加していたミュージシャンで、後の彼女の作品ではプロデュースやソングライティングの面でも彼女と共作。彼の爪弾くアコースティック・ギターのメロディーは単なるフォークとかカントリーとは違った趣を感じさせてくれます。

 今作の1stで聴ける彼の朴訥とした歌声とオリジナル楽曲も魅力的ですが、一番の聴き所は4曲目「Method Acting/Cortez The Killer」でしょう。

 ブライトアイズ(新世代のボブ・ディラン・フォロワーとして評されているコナー・オバーストによるユニット)の「Method Acting」と、ニール・ヤング「Cortez The Killer」(75年発表『ZUMA』に収録)を繋げ、シンプルなアコースティック・アレンジでカヴァー。

 Gillian Welchの作品で聴ける凛としたアコースティックな質感がお好きな方にオススメです。森 陽馬

2010年3月22日(月) The Orleans 「Let There Be Music」

 本日東京は桜(ソメイヨシノ)の開花宣言が出されました。

 桜といえば、以前も取り上げた千葉へ移植した桜の木。再び切られそうになったものの、新たな移植先が確定しました。
 移植先は千葉にあるお寺で、そのお寺の住職さんや品川区にも了承済。しかしながら、咲こうとしている今移植すると木がダメになってしまうので、花を咲かせた後に移されることとなりました。

 ですので、今いる場所で咲くのは今年で最後となるでしょう。無事移植されて来年以降もまた花を咲かせられるといいですね。

 さて、桜開花ということで爽快なロック・ポップス・チューンでこの1曲。

 オーリアンズはジョン・ホールを中心に1970年代活躍したアメリカのロック・グループ。以前に90年代のライヴ音源がCD化されたこともありましたが、今回再発されたのは彼らの絶頂期といえる1975年、ボストンのHarvard Squareにて行われた音源。
 音質はブートっぽい粗さがあるものの、歌・演奏、そしてコーラス・ワークが最高! オーリアンズ好きは必聴のライヴ音源ですね。(『'75 LIVE HARVARD SQUARE』 FUEL 3020618122』)

 「ダンス・ウィズ・ミー」、「タイム・パッシズ・オン」などイイ曲をいっぱい歌っていますが、特にライヴ映えするのがG「Let There Be Music」。切れのある演奏と伸びやかな歌は本当にかっこいい! ドゥービーやイーグルスお好きな方にもオススメの1曲です。森 陽馬

2010年3月23日(火) キンゲン 「She's Mine」

 ジャケットにポツンと写るスーツを着たちっちゃな男性は、スウェーデン出身のピアノ・ロッカー、キンゲン。

 2008年に本国で発売された2ndアルバム『Ride With Me』に、ボーナス・トラック2曲をプラスした国内盤(XQCF-1021 \2,500)が先日発売になりました。

 ロカビリー調の曲もあり、見た目もなんとなく似てる所から、''ピアノ版ブライアン・セッツァー''といった雰囲気のある彼は、これまで様々なバンドを経験し、2004年に全編スウェーデン語のアルバムでソロ・デビュー。
 (ちなみに今作は全編英詩です) 今年で42歳、キャリアも長いようです。

 軽快なピアノ・ロックンロールを基本に、しっとりとしたソウル・バラード、ブルース、アメリカン・ルーツロックなどの影響を感じさせるポップな楽曲は、ライナーにもある通り''歌って楽しめるロック''!

 特にリード・トラックとなっている「She's Mine」はホーン・セクション、転がるピアノ、ソウルフルな歌声がかっこよく、個人的にスリー・ドッグ・ナイトの「Joy To The World」を連想させる一曲。ヒューイ・スミス「Tu-ber-cu-lucas And The Sinus Blues」のカバーなんかも収録。

 現在来日中のジュールズ・ホランドなどお好きな方にもオススメです。東尾沙紀

2010年3月24日(水) Ben Sidran 「Ballad Of A Thin Man」 

 23日(火)、ZEPP TOKYOにてボブ・ディラン来日公演。

 最近のボブ・ディランは神格化され過ぎている感があり、期せずして“想像上のボブ・ディラン”が膨らみがちであったのだが、久々に見たディランは、その“想像上のディラン”よりもずっと“ディランらしいボブ・ディラン”であった。

 68歳という年齢、そして、ステージ上ではギターをあまり持たずキーボードをずっと弾いている、という話は聞いていたので、レイドバックしているのかなと思いきや、実際はその真逆。
 活き活きとしたロック・アレンジで、楽しそうに“ROCK”しているディラン。見ているこちらも思わず体が揺れる楽しい一夜だった。

 今回の日本ツアーでは初披露だった「It's All Over Now, Baby Blue」、かっこいい「Shelter From The Storm」、この日ギターを持った唯一の曲「Under The Red Sky」などどれも印象深かったが、個人的には重厚な「Ballad Of A Thin Man」に感動させられた。1965年発表の名作『追憶のハイウェイ61』に収録されている曲だ。

 ベン・シドランはこの曲を気張らない歌声で軽やかにカヴァーしている。シンプルながらも味わい深いバックの演奏も魅力的。いかにも彼らしいセンスでディラン楽曲を料理している好盤だ。森 陽馬

★ジャケット写真はBen Sidran『Dylan Differrent』(輸入盤 BONSAI 794881938421)。

2010年3月25日(木) Connie Stevens 「She'll Never Understand Him (Like I Do)」

 ACEレーベル人気のソングライター・シリーズ、新譜が発売されました。ランディ・ニューマン作品集の第2弾です。(国内仕様CD 『ブレス・ユー・カリフォルニア〜モア・アーリー・ソングス・オブ・ランディ・ニューマン』 MSIG-639 \3,150)

 ランディ・ニューマンというと1970年代にシンガー・ソングライターとして活躍した、皮肉っぽくて風刺がきいていてマニアックで、一般的にはちょっととっつきにくい曲調のものが多くあるようなイメージがあります。

 しかしL.Aの音楽出版社に所属していた時に作られた1963〜1970年あたりの曲が収められているこの作品集を聴くと、そのイメージとは違ったまた別の魅力に溢れた彼の楽曲に触れることができます。

 このCDは全26曲入り。いい曲が多くてどれを選ぶか迷います。
 アラン・プライス・セット、ウィ・トーキーズ、エピックス、ダフィ・パワーなどイギリス人によるレア音源もとても新鮮だし、ペギー・マーチ、ジャッキー・デシャノン、アーマ・トーマス、クロディーヌ・ロンジェ、ライザ・ミネリ、エラ・フィッツジェラルドなどのジャンルを飛び越えた女性シンガーものも聴き応え十分です。

 ランディが1980年代から積極的にサントラを手掛けるようになるその兆候がすでに感じられる1963年のマーティン・デニー音源もナイス・チョイス。本当に内容の濃い作品集であちこちに気持ちがいってしまいますが、今日は美しいメロディーを持ったこの曲で。

 1970年にコニー・スティーヴンスがベル・レーベルから発表したなんともいえないウットリ感を与えてくれる隠れた名曲です。
 コニーのキュートな歌声にも対応のランディ作品の懐の深さ、凄いです。
 なお、この曲はジャッキー・デシャノン、ブライアン・ハイランドも歌っていますが、ちょっとタイトルが違うのでご注意を。(「She Don't Understand Him 〜」&「He Don't Understand 〜」) 森 勉

2010年3月26日(金)JULIE with THE WILD ONES 「涙がこぼれちゃう」

 先日発売になった『大瀧詠一 SONG BOOK』&『大瀧詠一 COVER BOOK』を最近よくかけていますが、続けてこの曲をかけても全く違和感がないのです。今日はそんな1曲をご紹介。

 ジュリーwithザ・ワイルド・ワンズは、加瀬邦彦率いるワイルド・ワンズと沢田研二が組んだスーパー・ユニット。(『JULIE with THE WILD ONES』 YICD-70072 \3,000)
 ここ最近精力的に活動している沢田研二の楽曲はロック色が強めでしたが、今作は加瀬邦彦が全体的なプロデュースを担当していることもありポップなナンバーが多いですね。

 特に1曲目「涙がこぼれちゃう」。
 出だしのリズム、メロディー、カスタネット、そしてストリングス・アレンジからしてナイアガラ色全開!
 ビーチ・ボーイズ風味もところどころにありますね。

 キーボードを担当している十川ともじ(そがわともじ)がアレンジした楽曲で、バックには宮田繁男(Dr)、渡辺等(B)、古川昌義(G)が参加。
 サザンオールスターズ「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」と「あなただけを」を合わせたような雰囲気の曲なので、サザンの曲を沢田研二が歌っている感じでもあります。欲を言えばもうちょいウォール・オブ・サウンドな感じだったら、フィル・スペクター・ファンにもアピールできたかも。

 とにかくもジュリーの声が若々しくて、いい曲ですね。森 陽馬

2010年3月27日(土) ジョージィ・フェイム 「メニー・ハッピー・リターンズ」

 1960年代のイギリスの音楽シーンは魅力的なミュージシャンが本当にたくさんいて、それがその当時ちゃんと大衆に受け入れられ、ヒットを出していたことに凄さを感じてしまいます。

 ジョージィ・フェイムに関しても、よくぞこんな大人な音楽がヒット・チャートに登場していたなぁ〜、と驚いてしまいますが、それだけ本物の音楽がきちんと受け入れられる時代だったということなのでしょう。

 このアルバム『サウンド・ヴェンチャー』(国内CD UICY-93172 \2,141)は、ハリー・サウス・ビッグ・バンドというジャズの楽団と共演した1966年発表作品。当時のイギリス・アルバム・チャートで9位まで上昇したアルバムだそうです。

 1曲目に収録の「メニー・ハッピー・リターンズ」はとても素敵なメロディーの曲で、作者はノーマン・スミス。

 このノーマン・スミスは初期ビートルズのレコーディング・エンジニアをやっていた人で、その後ピンク・フロイドのデビュー・アルバムなども担当。EMIを辞めてから1970年代前半は、ハリケーン・スミスの名前で「オー・ベイヴ、ホワット・ウッド・ユー・セイ」の大ヒットを記録しました。
 ジョージィ・フェイムが1966年にもうこの曲を歌っていたんですね。

 なおこのアルバムは、エルヴィス・コステロが“愛聴盤の内の1枚”として挙げているそうです。森 勉

2010年3月28日(日) Chris Rainbow 「White Trails」

 “英国の一人ビーチ・ボーイズ”
 クリス・レインボウの1979年発表3rdアルバムが最新リマスター&限定紙ジャケット仕様で再発されました。(VSCD-3339 \2,625)

 スコットランドのグラスゴー出身、クリス・レインボウは、1970年代に活動していたポップ職人。
 オリジナル・アルバムは70年代に3枚発表し、約10年前にEMレコードから本人編集によるベスト盤がリリースされましたが、現在はどれも入手困難状態。知る人ぞ知る名ミュージシャンです。

 この度発売されたのは現在のところ最新となる(といっても31年前)彼の3rdアルバム『White Trails』で、先に挙げたベスト盤にもこの作品から8曲中7曲も選曲されていることから、全曲素晴らしい仕上がりの1枚。
 ビーチ・ボーイズ、トッド・ラングレンお好きな方には絶対にオススメのアルバムですね。

 タイトル曲F「White Trails」は、このアルバムから唯一ベスト盤に収録されなかった楽曲ですが、彼の多重コーラスが活かされ、3分前後から転調する楽しい1曲。後半の♪ララーララーララララー♪を聴くと、山下達郎「アトムの子」を想起してしまうのは僕だけ? 森 陽馬

2010年3月29日(月) She & Him 「Over It Over Again」

 今年の一月に劇場公開された映画『(500)日のサマー』でサマー役を演じ、鑑賞した老若男女皆をメロメロにしたズーイー・デシャネル。

 映画の中で歌声を披露するかわいいシーンがありましたが、彼女が女優と並行し活動しているのが、マット・ウォードとの男女ユニット“She & Him”です。その2枚目となる新作『VOLUME TWO』(PCD-93325 \2,415)が先日リリースされました。

 2008年発表1stではビートルズやスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズなどのカバーを収録。今作ではNRBQの「Ridin' In My Car」とスキーター・デイヴィスやペイシェンス&プルーデンスで知られる「Gonna Get Along Without You」をカバー。ボーナス・トラックには、ビーチ・ボーイズのカヴァーでも有名な「I Can Hear Music」のゆったりとしたアコースティック・カバーも収録されています。

 オリジナル曲は全て彼女が作詞作曲。ブライアン・ウィルソンのメロディー+ちょっとゆるいスペクターサウンドっぽい曲や、ビートルズ、ガール・ポップなど影響を感じさせるポップなメロディー、飾らない歌声がキュートです。

 特に気になったのが「Over It Over Again」。
カスタネット、鈴の音がアクセントになったほんのりナイアガラ・サウンド。全体的にコーラスが多いのもグッドです。
 オールディーズ好きな方も是非聴いてみてください。東尾沙紀

2010年3月30日(火) Regina Spektor 「Eet」

 昨日に引き続き映画『(500)日のサマー』関連のミュージシャン。

 “ブロンクスのビョーク”
 そう形容されているロシア出身の女性シンガー・ソングライター、レジーナ・スペクター。2009年発表アルバム『ファー』が今年1月に映画『(500)日のサマー』劇場公開に合わせて国内盤で発売されました。(WPCR-13768 歌詞・対訳付 \2,580)

 『(500)日のサマー』で使われた楽曲「Us」は2003年発表3rdアルバム『Soviet Kitsch』収録曲だったそう(今回の国内盤にボーナス・トラックとして追加収録)ですが、6年を経た今作も「Us」で感じられた強烈な個性は退化することなく、より進化したソングライティングが印象に残る素晴らしい1枚に仕上がっています。

 1980年ロシア(当時はソビエト連邦)で写真家の父と音楽教師である母の間に生まれた彼女は1989年にブロンクスへ移住。ユダヤ教の礼拝堂でピアノを習いながら、ジャズ、ポップ・ミュージックを聴いて育ち、やがてソング・ライティングを始めたそう。ストロークスのゴードン・ラファエルプロデュースで先に挙げた3rdアルバムを発表した後、徐々にキャリアを重ね、『(500)日のサマー』のヒットに伴い、この度日本でも知られるようになりました。

 ソングライティングも個性的ですが、彼女の魅力はなんといってもその歌声とピアノでしょう。キュートなようでいて芯の深さを感じさせる歌声、そしてやさしく囁くかと思えばいきなり躍動するピアノのリズム感。
 楽曲のタイプは全然違いますが、聴いていてクラムボンの原田郁子さんと同じような魅力を僕は感じました。

 5月6日ビルボード・ライヴにて来日公演も決定し、これからも末永く注目したいシンガー・ソングライターです。森 陽馬

2010年3月31日(水) aiko 「戻れない明日」

 今日で3月は終わり明日から4月。卒業、入学、入社、異動など様々な出逢いと別れが人それぞれに多い時期ですね。

 浜田真理子「胸の小箱」という曲の歌詞に
♪出会ったのはなにかのご縁ですね でもお別れもまたご縁なのです♪
という言葉がありますが、それにしても“出逢いと別れ”、そして“縁”というのは不思議なものだな、と時々ふと考えたりします。今日発売になったaikoの新作を聴いていたら、そんな感慨を覚えました。

 約2年ぶりとなるaikoの新作『BABY』(PCCA-3170 \3,059)。
 ここ最近の楽曲はバラード系が多くて、前作『秘密』も悪くはないもののグッとくるものが少なかったのですが、今作は活気あるアップ〜ミディアムな楽曲が増え、声も演奏も活き活きした印象。
 別れの歌ではないのに、どこか切ない気持ちになる“aikoメロディー”も健在の1枚です。

 シングル曲以外も充実していて名曲揃いですが、特にドラマ『曲げられない女』主題歌のJ「戻れない明日」。
 サビのフック&メロディー、そして抑揚の効いた歌声はaikoの真骨頂ともいえる1曲で、ソウルフルなハモンド・ピアノのイントロと、さりげないストリングス・アレンジも絶妙。

 新しい出会いに期待と不安が入り混じる4月。繰り返し聴き続けたいアルバムです。森 陽馬






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