PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2006月2月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2006年2月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2006年2月1日(水) Bob Dylan 「Maggie's Farm」

 棚卸も無事?終わりましたが、本日は終日大雨。
 場所などにもよるかもしれませんが、基本的にCD・レコード店は雨になるとダメですね。
 約7年前、新宿マルイの地下にあった今は無きヴァージン・メガストアに一時期勤めていたことがあり、あそこは地下鉄などの地下道と通じていたので、雨が降ると忙しくなる、ということがありましたが、それは例外中の例外。
やはり、新譜が色々と発売になる日などは天気が気になるものです。

 さて、今日は大した大型新譜も無かったので、普通に?暇な1日。
 ボブ・ディランが76年発表したライヴ・アルバム『Hard Rain』を大きめな音で聴きながら、棚卸後の整理をやっておりました。

 75年からディランが行っていた“ローリング・サンダー・レビュー”というツアーは、“音楽一座団”といった感じで、ライヴ関係者総勢数十人が、各地を巡礼するかの如く、ライヴ告知をその土地でのビラ撒きなどで限定して行っていた名ツアー。この『Hard Rain』はそのツアーの1976年5月、コロラドでのライヴ音源を1枚にまとめたもの。
 
 これ、映像も撮られていて、当時日本でも放送されたらしいのですが、いまだに商品化されないですよね〜。なんででしょう?
 以前に海賊版DVDで1回だけ見たことあるのですが、汚い映像ながら、ミック・ロンソン他ギタリストが5人!ステージ上にずらっー!と並んでいる様は壮観だったなぁ。
 『ディラン30周年記念ライヴ』と共に、DVD化を切に望みます。森 陽

2006年2月2日(木) Jack Johnson with G.Love 「Jungle Gym」 

 ジャック・ジョンソンの新作は、絵本で誰しもが見たことがあるであろう『おさるのジョージ(原題:Curious George)』の映画作品サントラ盤。

 今までにもジャック・ジョンソンは、自らが製作したサーフィン映画のサントラなどを手掛けてきましたが、今回のサントラ盤は、もう彼のオリジナル・アルバムといってもいいくらい全編に、ジャック・ジョンソン的ハート・ウォーミングなサウンド&ヴォーカルが溢れる1枚。<ブックレットもNice!>
 聴く前にほぼ想像していた雰囲気のまま、期待通りの内容と言っていいでしょう。

 ただ、今までと若干違う点は、絵本の映画化作品ということで、歌詞がシニカルな内容のものではなく、子供でもわかりやすい単語でシンプルな暖かい視点で描かれた“歌”であるということ。
 あと、音もよりアコースティックな路線で、心地良い陽射しが降り注ぐ昼下がりに聴くとより気持ち良さそう。(今聴いてるとちょっと寒い?)

 まあ兎に角も、あれよあれよという間に日本で大ブレークしてしまいましたが、このスタンスは変えずに良質な作品を出し続けていって欲しいものです。
(しかし、4月に幕張メッセ9番ホールで来日公演をやるそうですが、そんな大きな箱でジャック・ジョンソンを聴くっていうのはちょっと・・・?)森 陽

2006年2月3日(金) David Snell 「Close To You」

 オムニバス盤の楽しみは、今まで聴いたことのない曲や知らなかったアーティストに出逢えることです。

 このバート・バカラックの曲を集めたCDが1999年に出た時、リサ・シューンの「カム・アンド・ゲット・ミー」、ビリー・デイヴィスの「ラスト・ワン・トゥ・ビー・ラウド」、ジュリー・ロジャースの「ロング・アフター・トゥナイト・イズ・オール・オーヴァー」などのガールもののバカラック・ナンバーを何回もリピートしたものでした。

 久し振りに引っ張り出して聴いてみて、グッときたのが、あやしげなファズ・ギターと低音の歌声が耳に残るトニー・コディ「ウォーク・オン・バイ」と今日の主役であるデヴィッド・スネル「クロス・トゥ・ユー」(遥かなる影)です。

 この「クロス・トゥ・ユー」は、ハープによるインスト・ナンバーで、アーティストのデヴィッド・スネルに関しては何の情報もないのですが、アルバムも聴いてみたくなりました。森 勉

(国内盤CD)V.A『ソングス・オブ・バート・バカラック 〜 トレインズ&ボーツ&カヴァーズ』(MSIF-3789 \2,520)より。一応店内に在庫ございます。

2006年2月4日(土) ロネッツ 「Baby, I Love You」

 ロネッツのヴォーカリストだったロニー・スペクターが19年ぶりの新作オリジナル・アルバムを出すらしい。
 国内盤は3月24日発売予定で、メーカーからの案内書には曲目もすでに書いてあるので、ほぼ確定と言ってよさそう。

 タイトルが意味深?で、『The Last Of The Rock Stars』。
 (日本語タイトルは、“ロック・スターの最期”。裁判中の元夫への皮肉か?)

 ストーンズのキース・リチャーズがギターだけでなく、ヴォーカルでも参加。
 更に、パティ・スミスやジョーイ・ラモーンまでもがヴォーカルで参加しているようで、まあ正直なところ、あまり期待し過ぎないほうが無難かもしれませんが、でも現役感があっていいですよね。

 音はまだ聴いてませんが、新作の曲目で注目は「Girl From The Ghetto」。
 「イパネマの娘」に対抗して、“ゲットーの娘”とはこれいかに!?

 ということで、今日のこの1曲は、ロネッツのベスト盤から。
 「Be My Baby」と同じく、スペクター&ジェフ・バリー&エリー・グリニッジのトリオによる作。森 陽馬

2006年2月5日(日) ココナツ・バンク 「ココナツ・ホリデー2003」

 “ナイアガラ復刻30周年記念事業” 
 すでに山下達郎氏との新春放談などでも話題に上っていましたので発売されるのは確かだろう、とは思っていましたが、昨日店に届いたSONYからの新譜案内書に遂に『ナイアガラ・トライアングル 30th Anniversary Edition』の発売案内が掲載。
 ほぼ正式に発売日(3/21発売)確定といってよさそうです。

 で、本日は新生ココナツ・バンクのこの曲を。

 ココナツ・バンクは伊藤銀次が1971年に大阪で結成した日本語ロックバンド「ごまのはえ」から派生したグループ。
 当時、大瀧詠一による初のプロデュース・バンドとなる予定ながら、はっぴいえんどの1973年解散記念コンサートに一度登場しただけで解散してしまったのですが、このアルバムは2003年に伊藤銀次、上原裕、井上富雄、久保田光太郎の4人で作り上げたココナツ・バンクとしては事実上初のオリジナル・アルバム。(OMCA-5015 \2,000)
 上原“ユカリ”裕さんのドラムがどの曲もかっこよくて聴き応えがあります。

 76年に発表された『ナイアガラ・トライアングル』に「ココナッツ・ホリディ'76」が収録されていますが、30年経った今年、“ココナッツ・ホリディ2006”をどこかで聴ける日は来るのでしょうか?
 個人的には、狭山ハイドパーク・フェス2006に、ココナツ・バンクが参加してくれるといいなあ、と密かに期待しているのですが・・・。森 陽馬

2006年2月6日(月) Beckley-Lamm-Wilson 「Like A Brother」

 本日2月6日は、カール・ウィルソンの命日でした。

 カール・ウィルソンは、ビーチ・ボーイズのオリジナル・メンバーでヴォーカルとリード・ギターを担当。兄のブライアンがビーチ・ボーイズとしての活動から離れてしまった後も、音楽的&精神的な支柱としてバンドを支えてきたのですが、1998年に癌でこの世を去ってしまいました。

 そのカールが最後に僕らに残してくれたプレゼントがこの曲。「Like A Brother」。

 カールの死後、2000年に発表された作品で、カールの友人であったアメリカのジェリー・ベックリー、シカゴのロバート・ラムが組み、お蔵入りとなっていた音源を集めてリリースされた1枚。
 その最後に収録されている「Like A Brother」を聴くたびに、愚問愚答だとわかっていても、「ああ、カールが今も生きていてくれたら、ビーチ・ボーイズも・・・」と思ってしまうんですよね。

 そのカールが亡くなってから8年・・・。

 でもこの8年の間に、兄のブライアンは僕らの想像をはるかに超えるような“復活”を見せてくれていますね。まるで、カールの魂が乗り移ったかのように。森 陽馬

2006年2月7日(火) Buckwheat Zydeco 「Cryin' In The Streets」

 アメリカ音楽の本質と新しい波をいい意味で共存させている良質な作品をここ最近多くリリースしているノンサッチ・レーベルが、ハリケーン“カトリーナ”の被害を受けたニューオリンズの人々のために制作したベネフィット・アルバム。全曲が新レコーディングの作品。(WPCR-12241 \2,680)

 チャリティーものやらトリビュートものには個人的にもやや食傷気味だったのでこれも敬遠しようかな、と思いつつも聴いてみたら、めちゃくちゃ良くて大感動! すっかり現在では当店大推薦盤になっております。

 ラジオでよく流れているらしいアラン・トゥーサン「Yes We Can Can」(ポインター・シスターズで有名)もかなりゴキゲンですが、敢えて取り上げたいのが5曲目に収録されているこの1曲。

 バックウィート・ザディコは、ニューオリンズを拠点に古くから活動しているザディコ・ミュージシャンですが、この曲のバックでギターを弾き、そしてプロデュースも担当しているのがあのライ・クーダー!
 久々に・・・と言ったら彼に悪いかもしれませんが、味のあるライ・クーダーらしいスライドを本当に久方振りに聴いたような気がします。昨年発売されたライ・クーダーのオリジナル・アルバムも悪くはなかったのですが、これ聴いちゃうと、「こういうのをもっと聴きたいんだよ!」と言いたくなってしまいますね。

 更に、この曲のジム・ケルトナーの重量感あるドラムも最高!
 約8分30秒もある曲で、最後の方はゆったりしたテンポながらほとんどジャム状態。「もうこのくらいで止めにしよう」といった感じで、エンディングがバタバタと終わるのが、いかにもニューオリンズ的なスタジオ・ライヴ・テイクで、聴き終わって思わずニヤついちゃいました。森 陽馬

2006年2月8日(水) フランス・ギャル 「ジャズ・ア・ゴー・ゴー」

 「ジャズは大人の音楽」。
 2006年の現在でもそう思われていますし、1960年代はもっとそんな雰囲気が漂っていました。

 しかし、ティーネイジャーが親しんでいたヒット・ポップスの中にジャズの要素がタップリ含まれていた曲があったため、自然とジャズ的なものに興味を持てるようになったような気がします。

 フランス・ギャルの「ジャズ・ア・ゴー・ゴー」もそんな1曲です。
 なんともいかした曲を書いたのは、彼女のお父さん、ロバート・ギャル(作詞)とジャズ・ピアニストとしても有名だったらしいアラン・ゴラゲール(作曲)。

 モダンなドラムのビートに和音を刻むギター、そして大活躍のハモンド・オルガンの音色が大人の世界を演出してくれます。

 もちろん、当時16〜7歳のフランス・ギャルの背伸びしたキュートなヴォーカルも聴きものです。森 勉

2006年2月9日(木) Earl Klugh 「moon river」

 名ジャズ・ギタリスト、アール・クルーが昨年発表した新作アルバムより。
 
 国内盤が出たら店頭に入れよう、と思っていたのですが、いつまで待っても国内盤が出そうもないので輸入盤で仕入れしちゃいました。(KOCH KOC-CD-9949 \2,625)

 もう完全に無駄な音が一切入っていないアコースティック・ギター一本によるソロ・ギター作。

 これは癒され(?)ますよー。
 というか、本当にシンプルながらも味わい深くて、なおかつ耳馴染みがいいので、朝身支度しながら、とか、開店時の午前中、とかに心落ち着かせて聴くことのできる極上の1枚。

 ジャズ・スタンダードからビートルズのカヴァー「I Want To Hold Your Hand」など色々やってますが、個人的にはヘンリー・マンシーニの定番曲「ムーン・リヴァー」のカヴァーが一番良かったですね。

 ワン・フレーズ/ワン・フレーズ、タメが効いていて、サビの部分が出てくる瞬間がなんとも感動的。
 ギター一本だけでもこれだけ表現できる、ということを感じさせてくれる見事な1曲でした。森 陽馬

2006年2月10日(金)U2 「Sometimes You Can't Make It Your Own」

 もうすでに新聞やニュースでご覧になって皆さんご存知だとは思いますが、第48回グラミー賞の受賞者が発表。(こちらの公式サイト参照)

 マライア・キャリーがあんなにノミネート&受賞するのはちょっと意外な感じがしないでもないですが、まあそれ以外は順当なところか。特に今回、5部門を受賞したU2に関しては、文句なし!といっていいでしょう。

 グラミーの対象期間がよくわかっていないのですが、このU2の作品は厳密には2004年の作品なのでちょっと一昔前のアルバムという印象もありますが、今だ続いている大規模なツアー(もうすぐ来日!)、ライヴ8の開催などを含め、まさに2005年はU2の年といっても過言ではなかったと思います。

 “祝グラミー受賞”ということで、久々に店頭でこのCDをかけましたが、『How To Dismantle An Atomic Bomb』(訳すと、核爆弾の解体方法!)という物凄いアルバム・タイトルが付いているわりには、サウンドはここ最近のU2の作品の中では一番ポップで聴きやすい仕上がりになっていて、本当にいいロック・アルバムですね。

 ただ悲しいかな、英語圏でない日本人には今ひとつ、ボノの訴えるメッセージみたいなものが伝わりきっていない感もありますよね。昨年行われた『ライヴ8』しかり。今度の来日公演では、そういうものを生で感じとれるライヴを期待しています。

 ちなみにこの1曲は、アルバムの3曲目に収録されているスロー・ナンバーで、2001年に死去したボノのお父さんに捧げられている名曲。森 陽馬

2006年2月11日(土) The Bamboos 「Tighten Up」

 ニュー・マスターサウンズやスピードメイカーなど、“アメリカ出身ではないグループによる70年代アメリカの黒人音楽を彷彿とさせるジャズ・ファンク”が色々と出てきていますが、このバンブースはオーストラリア出身の新人ジャズ・ファンク・グループ。

 この1stアルバム『Step It Up』(PCD-23742 \2,415)には、「TOBAGO STRUT」なんていうタイトルの曲もやっていて、やはりこのグループもミーターズやJBなどの黒人音楽の影響を大きく受けているのでしょうが、メンバー6人全て白人ということもあってか、ファンキーながらもどことなく洗練されている感じではあります。

 でも2曲目に収録されているこの曲はやっぱりヨイですね〜。
 もうほとんど反則!という感さえある選曲、アーチー・ベル&ドレルズのソウル・インスト大名曲のキラー・カヴァー「タイトゥン・アップ」。

 アーティスト名や曲名を知らなくても、どこかでお聴きになったことがあるハズ!のこのメロディーはやはりゴキゲン。演奏もリズミカルでNice!

 各曲どれも悪くはないのですが、ただ、アルバム全体を通して聴くと、ちょっと一本調子かなー、という印象。ドラムとかもめちゃくちゃうまいんだけれど、ベイカー・ブラザーズみたいにもっと荒々しくてもよいかな、とも思ったりして。
 まあ結論としてはやはりオリジナルが一番ということかな。森 陽馬

2006年2月12日(日) オーサカ=モノレール 「Mother Popcorn」

 昨日ご紹介したバンブースのように、様々な国から、新世代白人ジャズ・ファンク・バンドが出てきていますが、日本が誇れるファンク・バンドといったら、このオーサカ=モノレールが最右翼の存在でしょう。
 というか、他の国のグループと比較しても全く引けをとらない、というか、“FUNK”のスピリット(魂)を一番引き継いでいる白人グループといっても、決して過言ではないと僕は思っています。

 90年代に大阪にて結成され早10年以上、地道に活動してきた彼らではありますが、そんなオーサカ=モノレールの本領発揮の舞台ともいえるライヴ作品がこの1枚。(RDR-1043 \2,520)

 2005年4月大阪での熱いライヴ!
 オリジナルあり、JBカヴァーあり、「シャフト」のカヴァーあり、「Soulful Strut」のカヴァーあり、etc...と、緩急に富みながらも、その熱い精神が持続し凝縮された全24トラック。
 今までにもオリジナル・アルバムを何枚か発売してますが、「オーサカ=モノレールをまだ1枚も持っていないけれど、何から買えばいい?」と尋ねられたら、迷わずこの1枚をオススメするでしょう。

 ちなみに今日のこの1曲「Mother Popcorn」は、JBのライヴでも定番中の定番!ファンキー・ナンバー。本家JBのライヴでは1曲というより、ジングル/Reprise的な感じで使われたりもしています。森 陽馬

2006年2月13日(月) 寺尾 紗穂 「猫のいない夜」

 映画を見るのは大好きなのに、“趣味は映画鑑賞”と公言できないくらい最近は映画を見に行っていなかったので、夜の余暇を利用して久々に映画館へ。

 ご無沙汰だったせいか、渋谷の映画館の場所や名前が変わっていたりして、ちょっとビックリ。まあそれはさておき、シネマ・アンジェリカという映画館で、スイス映画『ひとすじの温もり』を鑑賞。(映画の内容は、リストラされた夫を中心とした家族を描いたスイスのヒューマン・ドラマ。味わい深い佳作でした。)

 で、その映画のラストのタイトル・ロールが終わって出てきた文字が、“翻訳:寺尾次郎”の文字。ちょうど、渋谷に来る途中ウォークマンで寺尾紗穂さんの曲を聴いてきたので、ちょっとした偶然に嬉しくなってしまいました。

 寺尾紗穂は、シュガーベイブのベーシストであった寺尾次郎さんの娘さん。その父・寺尾次郎さんは、現在、フランス語を中心とした翻訳家として第一線で活躍中で、他にも名作映画の翻訳を数多く手掛けているのです。

 寺尾紗穂さんのこの曲は、当店通販コーナーにも掲載しているiMLレーベルのコンピCD(IML-1001 \2,500)に収録されていますが、なんと彼女のソロ・デビュー作の発売が決定! 6曲入りのミニ・アルバムが3月24日に発売となり、そのアルバムにもMIXを少し変えて収録される予定のようです。

 実はその作品の音を一足早く聴かせてもらったのですが、いや〜、ホントこれはイイですよー。
 “声が大貫妙子、歌い方が吉田美奈子、ピアノが矢野顕子”!と形容していましたが、“声は金延幸子、もしくは和製ジョニ・ミッチェル”、とも例えられるなあ、と感じています。久々にリピートして何度も聴きたくなる新譜の登場。ジャケットが決まり次第、当店通販コーナーなどにも掲載しますので、皆さんも是非チェックしておいてください。森 陽馬

2006年2月14日(火) Nilson 「The Moonbeam Song」

 この時期は晴れの日が多く、空気も澄んだ感じがします。

 夜、空を見上げると月がとてもきれいに光り輝いています。
 満月もいいし、少々欠け気味の月も、三日月も(関係ないけど、旗本退屈男の額の傷を思い出します)、そして朧月も、みんな素敵な形と光り方です。そんな月を見ていて、ふと聴きたくなったのが、ニルソンの「ムーンビーム・ソング」。

 この曲が収録されている『ニルソン・シュミルソン (+9)』(BVCM-37247 \2,100)には大ヒット「ウィズアウト・ユー」、「ココナッツ」が収録されていることで知られています。その中に小品ながら、こんな小粋な曲も隠れているのですねぇ。

 さりげない12弦のギターに60年代風カンツォーネのバックで聴こえてくるような音のベース、ニルソンの“ほっ”とさせてくれるささやきのようなヴォーカルとコーラス、そして、エンディングで月の光の如く静かに気持ちをほぐしてくれるメロトロンの響き・・・。
 
 今日は月がとっても青いから遠回りして帰ろうかな。森 勉

2006年2月15日(水) Special Delivery 「Oh Let Me Know It Pt.2」

 時折、無性にスウィートなソウルを聴きたくなることがあるのですが、そういう時にうってつけの1枚がめでたく初CD化!

 スペシャル・デリバリーのこのアルバムは、スウィート・ソウルの大名盤として知られるテリーハフ&スペシャル・デリバリー『ジ・オンリー・ワン』からテリー・ハフが抜け、女性ヴォーカリストが加入し、78年に発表された1stアルバム。

 7曲目に収録されている「Oh Let Me Know It」がよく山下達郎さんのラジオでかけられていてご存知の方も多いかもしれませんが、このCD化に際して、シングル・ヴァージョンPt.1とPt.2も追加収録。
 シングル・ヴァージョンはアルバム・ヴァージョンに対して、30秒ほど長く、Pt.2に関しては、ファルセットのメイン・ヴォーカルに、テナー・シャウトのコーラスが絡むという展開もあり、これは嬉しいボーナス・トラックですね。

 ちなみに1曲目「Your Love Is My Love Song」(いかにも、スウィート・ソウル!という感じの曲名ですな)も、メロウないい曲で個人的にはこちらも大好き。
 78年発表作なのでミディアム・ナンバーもありますが、変に“ディスコ一直線”という雰囲気ではなく、曲も悪くないので通して聴いていても全く違和感ない仕上がり。しばらく店頭でもヘヴィー・ローテーションになりそうな1枚です。森 陽馬

2006年2月16日(木) New Mastersounds 「Spooky」

 新世代ジャズ・ファンク・バンド、UKの雄! エディ・ロバーツ率いるニュー・マスターサウンズの新作となるライヴ盤が発売。(PCD-23744 \2,415)

 彼らの勢いそのままに、疾走感溢れるファンク・ナンバーから、JB的FUNKで人気の「You Got It All」(パーカッション・ソロがかっこいい!)など、一気に聴かせる全10曲。
 さすがに、オリジナル・アルバムのような完璧な演奏、とはいきませんが、いい意味で荒々しい演奏がライヴ盤らしくてよい感じ。

 で、その収録曲の中で、異色だったのが9曲目に収録されているこの「スプーキー」。

 オールディーズ・ファンなら、ご存知であろうクラシックス・フォーの1968年発表名曲を、ジャジーなインストでカヴァー。
 “現代のイギリス白人ファンク・バンドが何故に「Spooky」?”・・・なんて思っちゃいましたが、ファンク一本槍ではなく、こういうセンスも併せ持っているのが、イギリスのバンドらしいところでしょうか。

 初来日も決まったそうですので、東京公演は見に行きたいと思っております。森 陽馬

2006年2月17日(金) Soul Generation 「Sailling」 

 昨年10月29日このコーナーで取り上げたソウル・ジェネレイションのアルバムが、めでたく紙ジャケCDで再発されたので、再度取り上げることにしましょう。

 ファルセット・ヴォイスが魅力的なクリフ・パーキンスが中心人物、ニュージャージー出身のソウル4人組グループ、ソウル・ジェネレイション。彼らが72年発表にしたの唯一のオリジナル・アルバムがこの『Beyond Body & Soul』。(PCD-22230 \2,415)

 スウィート/メロウな魅力はもちろんですが、バック・メンツにジョー・サンプル(p)、チャック・レイニー(b)、ポール・ハンフリー(dr)などクルセイダーズの面々も参加していて、そういう面でも侮れない1枚。

 当時はクリフ・パーキンス名義で発売され、彼のリード・ヴォーカルのみというA「In Your Way」やB「Wait So Long」も良いですが、やっぱりリードにコーラスがかぶさる曲の方が僕はやっぱり好きですね。6曲目に収録されているこの曲も、ヴォーカル&演奏共、後半盛り上がっていく感じがあって好きなパターンです。

 ちなみに、今回の紙ジャケ再発に際して、デジタル・リマスターもされた模様。(ボーナス・トラックは、アルバム未収録のシングル曲4曲を追加収録。これで彼らの音源はコンプリート...のはず) 森 陽馬

2006年2月18日(土) □□□ (クチロロ) 「パーティー」

 最初は誰しもこのバンド名を発音できないと思いますが、“□□□”と書いて、“クチロロ”と読みます。(僕も最近知りました。あしからず・・・。)

 このバンドはもともとはブレイク・ビーツ・ユニットだったそうなのですが、2003年にくるり主宰のレーベル、ノイズ・マッカートニー・レコードのコンピに収録されるなどして徐々に話題になり、2004年にアルバム・デビュー。そのアルバムも不思議なポップな魅力あふれる佳作でしたが、約1年置いて2005年の11月に2ndアルバム『ファンファーレ』(HEADZ-60 \2,500)を発表。

 この2ndアルバムが正統派ポップスから、エレクトロニカ的ナンバー、はたまたヒップホップ的な解釈のナンバーなど変化に富みながらも全10曲さらりと聴き通せるポップな1枚に仕上がっています。

 男性&女性ヴォーカルが特に秀でているわけではなく、そのサウンド&ポップ・センスがなんとも一筋縄でいかない面白い感じで、そういう面では、くるりやスーパーカーなどお好きな方にはオススメのバンドですね。
 プロデュースを担当しているのが、ROVOのメンバーでもある益子樹という方だそうで、その方のサウンド・センスが絶品の印象。

 ちなみに今日のこの1曲「パーティー」は、アルバムの1曲目に収録されているのですが、これ聴くと、なんか山下達郎の「ターナーの汽罐車」を思い浮かべちゃうんですよねー。イントロがちょっと似ているのです。森 陽馬

2006年2月19日(日) SPIRITS REJOYS 「soulife」

 先日こちらでも紹介したジャック・ジョンソンの新作も良かったですが、うちの店ではこのSPIRITS REJOYSの方が、店内で今でもヘヴィー・プレイ! 内容もめちゃめちゃイイですよー。

 このスピリッツ・リジョイズは、グジョウ・タク、アベ・コウイチロウ(ワッツ・ラヴ、ワック・ワック・リズム・バンドのベーシスト)を中心とした日本人5人グループ。
 2003年に結成されたそうですが、そんな彼らが昨年発売した1stミニ・アルバムがこの1枚『ONE』。(NMNL-1007 \1,600)

 決して気張らないオーガニックな生音重視のサウンド・演奏に、ソフトな語り口の男性ヴォーカルが心地良くも、時にファンキー、時にメロウに沁みてくる極上の6曲入り。
 ホント、ジャック・ジョンソンお好きな方には、是非聴いてもらいたいバンドですね。
 ちょっと毛色は違いますが、大ブレイクしたDef Techにハマった人たちにも気に入ってもらえるハズの1枚。

 ジャンル的には、ROCK、SOUL、HIP HOP、レゲエ、JAZZなど様々な要素がミックスされている雰囲気ですが、いい意味で、これが新世代の“クロスオーバー(死語)”なのでしょう。とにかく今年の活動にも要注目のグループです。森 陽馬

2006年2月20日(月) Joni Michell 「Blue」

 本日はあいにくの雨でしたが、こういう天気の日にこそ、一人で息を潜めるようにして聴きたい作品、というのがあって、ジョニ・ミッチェルのこのアルバムは、まさにそういう1枚。

 カナダ人女性シンガー・ソングライター、ジョニ・ミッチェルが71年に発表した名作『BLUE』(WPCR-2521 \1,785)。

 全体的にシンプルな音作りで、ほとんど弾き語り的なバック・サウンド。
 しかしながら、いつ聴き返しても新しい発見と驚きを提供してくれるアルバムで、不思議な変則チューニングのギターとピアノの響き、恋多きジョニの吸い込まれるような歌声に、毎度ハッとさせられるのです。

 “ブルー、歌は刺青のよう・・・”
という歌詞で歌いだされるタイトル曲「BLUE」。

 この曲の歌詞は全体的に抽象的で、何度読み返してもメビウスの輪のように思考が追いつかなくてスタート地点に戻ってきてしまうのですが、“GREEN”でも“RED”でもなく、“BLUE”であることは必然だったのだろう、と最近なんとなくではありますが、感じられるようになりました。

 それでも僕は未だにこの“青”の本当の深さを僕は理解していないのかもしれません。森 陽馬

2006年2月21日(火) 堂島孝平 「スマイリン・ブギ」

2月22日新譜が色々と入荷。

 今年に入ってから一番タイトル数が多い1日で、大型新譜としては、ドリカム新作、槙原敬之新作、冨田ラボ新作、クリスタル・ケイ新作、吉田美奈子新作、YUI 1st、中島美嘉新曲、宇多田ヒカル新曲他、リイシューものでは、キング・クリムゾン各種紙ジャケ再発、長門芳郎さん監修“名盤の殿堂”シリーズ<マーク・ベノ他>、映画DVD『リンダリンダリンダ』などなど。

 他にも、バート・バカラックの新作やら、吉田美奈子BOX、木村カエラのCD付きキットカットなどもありましたが、店内でかけて一番インパクトがあったのがこの1枚。堂島孝平の新作アルバム『smiles』(TKCA-72982 \3,000)。

 デビュー10周年を記念して発表された記念すべき10作目のオリジナル・アルバムですが、この1枚がもう大傑作に仕上がっているのです。スカパラのメンバーや、ノーナリーヴス、土岐麻子、真城めぐみなどの豪華バック・メンツを従えて収録された入魂の全15曲。どの曲もポップでカラフルでキラキラしていて、本当に充実した1枚。

 この「スマイリン・ブギ」は、アルバムの1曲目に収録されているのですが、吾妻光良&スウィンギン・バッパーズのナンバー等を下敷きにしたと思われる楽曲で、今までの堂島孝平のパブリック・イメージを覆すような日本語ブギ・ソング!

 ジャケットと帯はいかにも“ナイアガラ”的な装丁ではありますが、そんな“飾り”なんかなくても存分に“堂島孝平ポップ・ワールド”の魅力を体感できるJ-POP名盤の登場です。森 陽馬

2006年2月22日(水) Marc Benno 「Lost In Austin」

 テキサス出身の70'sシンガー・ソングライター/スワンプ・ロッカー、マーク・ベノの名盤各種がめでたく限定紙ジャケでCD化。

 最高傑作とも称される『雑魚』もいいですが、7年間の沈黙を破って当時A&Mから発表された79年発表のこのアルバム『ロスト・イン・オースティン』もスゴク良いですね。

 父も言ってましたが、“ジョージ・ハリスンっぽい曲が多い感じがする”アルバムで、スワンプ&ブルースだけではなく、程よいポップ・フィーリングがアメリカン・ルーツ・ミュージックに馴染んだゴキゲンな1枚。

 バック陣がまたすごくて、ジム・ケルトナー他の鉄壁リズム隊に、エリック・クラプトンとアルバート・リー、そしてマーク・ベノのギターが絡みまくって、もうやたらかっこいい!

 昨年夏に行われた狭山ハイドパーク・フェスの時もそうでしたが、開演前に会場内を徘徊していた時(観客からの記念写真やサインにも気さくに応対してました)は単なる外人のオッサンだったのが、ステージに上がったらオーラ出まくりで、徳武弘文さんとの共演もかっこよかったよな〜。

 ちなみに今回のCD帯に書いてある“74年発表”というのは誤植で正しくは“79年発表”。(ブックレット内にも一部誤植あり) 森 陽馬

2006年2月23日(木) Keith Moon 「Don't Worry Baby」

 「ビーチ・ボーイズの曲の中でどの曲が好き?」
と時折尋ねられることがあるのですが、そういう時は迷わず!「Don't Worry Baby」と僕は答えています。

 純粋な心を映し出すような美しい歌詞、そしてブライアン・ウィルソンのファルセットが美しい1964年発表の名曲で、色々な人がカヴァーしていますが、その中でも有名かつほぼ完コピながらも異色であるのが、The Whoの名ドラマーであるキース・ムーンのこのカヴァー。

 ロック界のNo.1ドラマー!と称されながらも、“奇人”のレッテルを貼られることも少なくないキース・ムーンが、75年に発表した唯一のソロ・アルバム『Two Sides Of The Moon』(WAS-1091 限定紙ジャケ \2,940)に収録。

 キース・ムーンの歌はお世辞にも決して上手、とは言えないのですが、彼の“ビーチ・ボーイズ大好き!オーラ”が聴いているとビンビン伝わってきて、微笑ましく楽しい1曲ですね。

 今回クレジットを見て初めて知ったのですが、この曲ではキース・ムーンは自分ではドラムを叩いてなくて、他の人に任せているのです。そして、やたらギターを弾いているのが豪華メンツで、ダニー・コーチマー、ジェシ・エド・デイヴィス、ジョン・セバスチャンも参加。

 なお、今回CD化されたボーナス・トラックには、この曲の<single mix>が追加収録されているのですが、こちらはオリジナルと全く違うテイクで、キース・ムーンが無理して?ファルセットで歌っているヴァージョンを聴くことができます! このヴァージョンもイイなあ〜。森 陽馬

2006年2月24日(金) Disney's Beach Party 「I Get Around」

 ここ最近の日本音楽業界は、初回限定・上限商品ばかりですよ。
 もうホント、困ったものです。

 プレス枚数があらかじめ決まっている初回限定生産ものに関しては、“セールス配分”といってその店の売り上げ規模などによって割り当てられてしまい、各店舗の希望枚数はほとんど反映されず、10枚注文したのに1枚しか入らない、というものばかり。倖田來未の65万枚限定(!)というのも、こんな作るんだから大丈夫だろう、と思ったら、「えっ?!これだけ?」っていうくらいしかうちには入ってこないし・・・。

 このようなことによって、昔から予約して買ってくれているファンがいるのにそういう顧客が大型店に流れてしまう、という現象が全国の街のCD店で起こってしまっているのです。
 ホント、メーカーも卸業者も大型店に100枚とか1000枚とか出荷するのなら、1枚でもいいから回してもらいたいのですが、もう全体のシステムがこうなってしまっているので歯止めがきかないのでしょう。いやはや・・・。

 こんな感じで気分を害した時は、決まってビーチ・ボーイズを聴くようにしてます。いや〜、やっぱり楽しいですね。ビーチ・ボーイズ。最近は特に『PET SOUNDS』以後が再評価著しいですが、やっぱりね、初期の曲ですよ!初期!

 このアルバムは、あのディズニーが企画したビーチ・ボーイズのカヴァー・アルバムで、正直あんまり期待していなかったのですが、演奏も歌もコーラスもかなり良くてビックリ! 「誰?この見事なコーラス?」と思ったら、ジェフリー・フォスケットとダリアン・サハナジャ(現在のブライアンのバンド中心人物の二人)がちゃっかり参加してました。

 今日は寒い1日でしたが、“「I Get Around」でのライヴ恒例、波乗りポーズと手拍子を今年もやりてぇ〜”と思った如月の1日でした。森 陽馬

2006年2月25日(土) ビートルズ 「ドント・バザー・ミー」

 ビートルズの日本で初めて発売されたLPレコードは、『ウィズ・ザ・ビートルズ』と同じ写真を使った『ミート・ザ・ビートルズ』でした。

 A面1曲目が「抱きしめたい」、2曲目が「シー・ラヴズ・ユー」・・・。
そしてA面ラストの7曲目にこの「ドント・バザー・ミー」が入っていました。
 みんないい曲ばかりでしたが、なぜか最後の曲が気になり、B面にひっくりかえす前にもう一度聴いたような記憶があります。

 まだこの曲をジョージ・ハリスンが作ったとか、リード・ヴァーカルがジョージだなんて知らなかったのに、何かを感じちゃったのでしょうね、当時中学1年生になったばかりの少年は。このアーティストがその後大好きなミュージシャンになる人だと・・・。
 ジョージの重ねられたヴォーカルがどことなく寂しげで哀愁が漂っている雰囲気には今でも惹かれてしまいます。

 映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』で、ホテルを抜け出した4人が行ったクラブでダンスをしたりしているシーンで使われてて、嬉しかったよなぁ〜。ジョージの曲が映画で流れている!ってね。(その頃はもうファンになっていたので)

 もう亡くなってしまった人の誕生日を祝うのもなんですが、2月25日はジョージ・ハリスンの誕生日。
 この曲をメインに、わがペット・サウンズでは、「ラヴ・カムズ・トゥ・エヴリワン」(ジョージ、及びエリック・クラプトンの両方のヴァージョン)、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」で、今年はお祝いさせてもらいました。森 勉

2006年2月26日(日) 布谷文夫 「ファイアー&ウォーター」

 布谷文夫&ブルース・ブレイカーズ(布谷さん命名)@渋谷 LIVE HOUSE KABUTOへ、夜、お店を抜け出して行ってまいりました。

 いや〜〜〜、スゴイッ! 布谷さんの魂あふれる歌声にはホント感動のあまり、腰が抜けましたよ。

 バックのメンツも今日はスゴくて、ナイアガラ・セッションなどでもお馴染みの名ドラマー上原裕(Dr)、元ハックルバックの田中章弘(B)、山善のキーボーディスト石井啓介(Key)、そして、四人囃子の名ギタリスト森園勝敏(G)、という鉄壁の布陣!

 相変わらず?のおとぼけなMCとはうって変わって、マイクを持って唄いだすと、布谷文夫さんの中にあるまさに“布谷文夫”という男の情念が、唯一無二のブルース・シャウトと共にすべて吐き出し叩きつけられ、それが爆発的な波動となって聴いている僕等を金縛りにさせるのです! これはやっぱり言葉やCD、映像でも伝わりにくいよな〜。

 73年発表『悲しき夏バテ』(ISCP-1167 \2,625)に収録されている「颱風13号」、「冷たい女」他、布谷さんといえば・・・という「ナイアガラ音頭」(アカペラ&手拍子&布谷さんのヴォイス・パーカッション付き♪)、はっぴいえんどの「12月の雨の日」(!)なんて選曲もありましたが、個人的にツボだったのはコレ。60's後半〜70's初期に活動していたブリティッシュ・ロック・グループ、ザ・フリーが70年に発表した3rdアルバム『Fire And Water』より。

 バックの演奏もハマっていて、胸にグッときたなあ。森園さんのギターもホントかっこよかった。上原“ユカリ”さんの重量感あるドラムも最高!

 ちなみに布谷さんもMCで宣伝?してましたが、今度3月21日発売になる『ナイアガラ・トライアングルVol.1 30th Anniversary Edition』のボーナス・トラックに、「あなたが唄うナイアガラ音頭」が収録されるのが決定いたしました。当時の「ナイアガラ音頭」7'EPシングルのB面でカラオケではありますが、初CD化ですのでナイアガラ・ファンはチェックしてくださいね。森 陽馬

2006年2月27日(月) The Stills-Young Band 「Long May You Run」

 映画『マイ・アーキテクト』を渋谷Q−AXシネマのレイトショーにて鑑賞。

 アメリカの名建築家、ルイス・カーンのドキュメンタリー映画で、そのルイスの息子(厳密には二人目の愛人の息子)であるナサニエル・カーンが自ら監督・主演し、1974年3月にペンシルベニア駅にて急死した父の人生を、関係者へのインタビューやルイスが手掛けた建築を訪れながら追っていくノンフィクション・ストーリー。

 建築には疎い僕でも非常に感銘を受けました。
 バングラデッシュなんて今まで興味がなかったのに、そのルイスが手掛けた議事堂を見に行くだけでも価値があるかも、と思えてきたり。

 で、そういうドキュメンタリーゆえ、ストーリー展開上映画の背景に流れる音楽はそれほど多くないのですが、驚いたことに何故か(?)このニール・ヤング作のこの曲が2回も劇中で使われているのです。

 1960〜70年代にかけて、“バッファロー・スプリングフィールド”、“クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング”というグループで共に活動していたニール・ヤングとスティーヴン・スティルスが再びコンビを組み、1976年に発表した隠れた名作『太陽への旅路(邦題)』(WPCR-75093 \1,800)に収録。

 穏やかな曲調で、後半の歌詞にビーチ・ボーイズ「キャロライン・ノー」が出てくることでも知られていますね。
 もう30年前の曲ではありますが、ニールは最近のライヴでもこの曲を時々歌っています。森 陽馬

2006年2月28日(火) 吉田美奈子 「CASCADE」

 ちょっと1週間遅れのご紹介となってしまいましたが、吉田美奈子さんの新作『Spangles』(IOCD-20137 \3,150)が発売になりました。

 今回の作品は全体的に生音重視の作りで、ミディアム〜スローなナンバーが中心。吉田美奈子さんもデビュー・アルバム『扉の冬』が73年発表ですから、デビューから今年でもう33年ということになるのですね。そのキャリアと経験を感じさせるに相応しい貫禄の1枚に仕上がっております。

 特に、ラスト前の9曲目に収録されている「CASCADE」。
 作詞・作曲とも吉田美奈子本人が手掛けた7分を越える大作で、その歌声もアルバム中で一番力強く感じられます。

 “仰々しい”ヴォーカルは個人的に元来苦手だったりするのですが、彼女のその歌い込む歌唱はそういう枠を超えて素晴らしく、単なる歌のうまさとはまた違った強力な磁波を感じるのです。

 おそらく彼女のこれからのライヴ活動などでも軸になっていくであろう1曲ですね。森 陽馬


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