PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2005月10月>

立退き閉店のため、店舗を一時休業していた
2005年10月に更新した
“今日のこの1曲”コーナー

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2005年10月1日(土) Ben Taylor 「Digest」

個人的には“今年の新作アルバム ベスト5”に入るであろう愛聴の1枚。

 70年代から現在まで末永く活動し良質な歌を歌い続けている名シンガー・ソングライター、ジェイムス・テイラーの息子、ベン・テイラーの新作アルバムが到着しました。

 1990年代中期のアメリカ映画『Bye Bye Love』のサントラ盤に参加していたのは、もう10年ほど前のこと。そのあまりに父親そっくりの歌声を初めて聴いた時は、デビューを本当に心待ちにしていたのですが、随分待たされてやっと発売になった2003年発表の1stアルバムは、正直言ってちょっと期待外れ・・・。(悪くはなかったのですが・・・)

 しかしながら先日発売になったこの2ndアルバムは楽曲も素晴らしく、アコースティックを基調にしたサウンドも最高! なにより彼の歌声が気張った感がなくなり、シンガーとしてもソングライターとしても本当に成長した姿が窺えます。

 “今日のこの1曲”をお父さんの名作アルバム・タイトル『One Man Dog』をもじったかのような4曲目「One Man Day」にしようかな、とも思ったのですが、やはりアルバム中で一番のお気に入りのこの曲「Digest」にしました。

 イントロのアコースティック・ギターのリフが、エリック・クラプトンの「レット・イット・グロウ」を彷彿とさせる感じ。キーがわりと低い曲なので、歌声がアルバム中でも一番父親そっくりに感じられる曲です。

 これからも活動がますます楽しみになってきましたね。森 陽馬

2005年10月2日(日) My Morning Jacket 「What A Wonderful Man」

 今年のフジ・ロックで、個人的には一番の“収穫”であったバンド、マイ・モーニング・ジャケットの2年ぶりとなる新作が発売。

 アメリカはケンタッキー州出身、サザン・ロックなどの骨太なロックをルーツにしながらも変化に富んだ曲構成で、いかにもライヴ・バンド/ジャム・バンド好みのそのステージは非常に印象深かったのですが、そんな彼らの新録スタジオ・アルバム。

 かなり期待していたのですが、正直言うとちょっと拍子抜け・・・、というか、思っていたよりもガツンッ!とくるタイプのハードエッジなナンバーが少なかったのですが、まだ数回しか通して聴いていないですからね。もうちょっと聴きこまないといけないかもしれません。(CDブックレット内の絵が不思議で面白い)

 その中で、2003年発表の前作『It Still Moves』にも収録されていたような、ドラムがガンガン鳴りながらエレキ・ギターが交差していくような爽快なナンバーがこの4曲目に収録されている「What A Wonderful Man」。何故か3分足らずの短い曲なのですが、ある意味いかにも“彼ららしい”曲です。

 ちなみに、ライナーノーツに書かれてあったのですが、今秋日本公開される予定のキャメロン・クロウ監督映画『エリザベスタウン』(主演:オーランド・ブルーム)の劇中に、マイ・モーニング・ジャケットのメンバーも出演していて、あのレーナード・スキナードの名曲「Free Bird」を熱演しているそうです。
 キャメロン・クロウ監督作ということもあり、ロック・ファンも要チェックですね。森 陽馬 

2005年10月3日(月) Speedometer 「At The Speakeasy」

 70年代FUNKをルーツにしているアーティストは少なからず存在しますが、ここまで徹底してこだわって楽曲作りしているグループも珍しいな、と。

 “スピートメーター”は、とても現代のバンドとは思えない程、音が70年代している激ファンキーなUKの8人組SOUL/FUNKグループ。 2004年に発売された1stアルバムも当店で大好評&大ロングセラーでしたが、今年発売された新作アルバム(PCD-23647 \2,415)もファンキー度では更に上回った感もある最高の内容の1枚。

 どの曲も捨て曲なしの痛快ナンバー連発なのですが、豪放なホーン&唸りまくりのベースラインが最高にカッチョいいインスト・ファンク@「At The Speakeasy」から、いきなりJB的ノリが感じられてニヤリ。

 新世代ジャズ・ファンク・ファンのみならず、JBファンや70年代ソウル/ファンクしか聴かない、という方々にこそ聴いてもらいたいアルバムですね。

 初の来日公演も決まった!ということなので期待してたら、何故か名古屋と大阪だけで東京公演がないようで・・・。うーーーん何故に東京には来ないのかな〜?

 それにしても、こういうジャズ・ファンクをやっているのが、白人だというからホント驚き!
 逆に最近の黒人アーティスト/グループでこういうのをやっている若いアーティストは少ないですよね。HIP HOPアーティストは雨後のタケノコのように色々と出てきているんですけど・・・。いるのかもしれないけれど、若者にはウケない、とメジャー・レーベルが判断して表に出てこないだけなのかな? まあ最近の白人バンドでイーグルスのような70年代ロックをやっているアーティストが少ないのと同じことかもしれませんが・・・。森 陽

2005年10月4日(火) Al Green 「How can you mend a broken heart」

 昨日ご紹介したようなファンキー・ソウルは大好きなのですが、夜遅くなどにそこまで跳ねるリズムでないソウルを聴きたい時というのももちろんあって、でもだからといって、歌いあげるようなディープすぎるものもちょっと・・・、という気分の時によく聴くのがこの名作。

 アル・グリーンは、サザン・ソウル/メンフィス・ソウルを代表する名レーベル、“ハイ・レーベル”の看板アーティストとして70年代に活躍した名ソウル・シンガー。

 このアルバム『Let's Stay Together』は、72年発表のソウル名盤で、1曲目に収録されているタイトル曲「Let's Stay Together」は特に有名。南部独特の味わい深いリズム・セクションにホーンなどの味付けがなんとも渋い作品。

 今日のこの1曲「How can you mend a broken heart」は、そのアルバム内でも一番長い曲で6分近くあるのですが、元来の曲の良さと、アル・グリーンのソウルフルなヴォーカル&バックの演奏が暑過ぎず、だからといって緩くもなく、絶妙のバランスが取れていて長さを感じさせないナンバー。
 
 オリジナルは、あのギブ兄弟率いる名グループ、ビージーズの71年ビルボードNo.1ヒットで、邦題は「傷心の日々」。
 このオリジナルももちろん好きなのですが、アル・グリーンのアレンジはいかにも、当時のハイ・サウンドを象徴していて、聴き比べてみるのもオススメです。森 陽馬

★11月23日にこの名作が1,500円(期間限定価格)という安い値段で再発予定です。

2005年10月5日(水) Bee Gees 「New York Mining Disaster 1941」

 昨日のこのコーナーで、ビージーズの話題が出たのでなんとなくこのアルバムを聴きたくなってしまいました。

 ビージーズというと、日本ではやはり映画『サタデー・ナイト・フィーバー』での「ステイン・アライヴ」の印象が強いようですが、1960〜70年代の初期には本当に良質な作品が多く、コーラスものがお好きな方には選り好みしないで是非聴いてもらいたいですね。

 なんて、偉そうなことをぬかしている私も当然のことながら後追いですので、もちろん初期の良さは最近になって認識しました。
 更にはこの彼らの1967年発表1stアルバム(UICY-3804 \1,835)も“ソフト・ロック”なんていうジャンルの範疇でなんとなく聴いていたのですが、いやはや、歌詞やサウンドなどをじっくり聴きこむとなんとも不思議なアルバムですね。

 特に8曲目に収録されているこの曲。
 邦題「ニューヨーク炭鉱の悲劇」。

 ベスト盤などにも収録されていたので今までは、キーの高いヴォーカルとポップなサウンドが初期のビージーズらしい曲だな、くらいの認識だったのですが、とても社会的皮肉も混じったかなり複雑な心境を描いた歌詞で、この曲及びビージーズに対する先入観が変わってくる1曲。

 この曲以外にも、ニーナ・シモンやトム・ジョーンズ、アニマルズなどのカバーでも有名な「To Love Somebody」の名曲も歌詞を読むと、恋愛の歌というよりはストーカーすれすれのナンバーといっても過言ではないようなちょっと思い込みの激しい屈折した歌詞だったり、なんとも面白い作品です。

ちなみに村上春樹の短編集『中国行きのスロウボート』の中に、この曲と同じタイトル「ニューヨーク炭鉱の悲劇」という短編が収録されています。森 陽馬


PS この1stアルバム国内盤には、日本語訳の歌詞は付いておりません。もし日本語訳歌詞がお読みになりたければ、2枚組ベスト盤(UICP-1040 \3,670)をオススメいたします。

2005年10月6日(木) Belinda Carlisle 「Heaven Is A Place On Earth」

 1978〜84年まで活動していたゴーゴーズ(その後、何度か再結成されています)の時は、特にベリンダに興味があったわけではなかったのですが・・・。やはり楽曲の魅力でしょうか。

 1987年秋から次の年の春までロング・ヒットしていたこの曲は今でも大好きな1曲です。その当時のアルバム・プロデュース&アレンジを担当していたリック・ノーウェルスとエレン・シップリーの作品。

 ベリンダの少々枯れた声と歌い方は、フリートウッド・マックのスティーヴィー・ニックスに大きな影響を受けているように思えます。
 ルックス的には変なキラキラ感ではなく、“30歳手前のちょっといい感じのオンナ”的雰囲気が良かったのかな。

 ちなみに、このベリンダ・カーライルという女性は不思議な人で、僕の大好きな人をこの後、自分の曲に参加させることになるんです。

・1989年、「リーヴ・ア・ライト・オン」でスライド・ギター・ソロで、ジョージ・ハリスン。
・1996年、「カリフォルニア」では、コーラスにブライアン・ウィルソンが参加。

 何かがどこかで繋がっているんでしょうね。森 勉

2005年10月7日(金) PFM 「Four Holes In The Ground (原始への回帰)」

 最近、“ジャム・バンド”というジャンルが音楽ファンの間で確立しつつありますが、60〜70年代のプログレッシヴ・ロックを聴いていると、これらのプログレ・バンドが現在活躍していたら、ジャム・バンドと呼ばれていたかもしれないな、と思えてきます。

 PFMはイタリアン・プログレッシヴ・ロックを代表するグループ。
 74年に発表された今作『甦る世界』は、EL&Pのグレッグ・レイクやピート・シンフィールドを中心に設立されたマンティコア・レーベルより発売されたアルバムで、英語版(青いジャケット)とイタリア語版(緑のジャケット)の2種が存在。

 ちょっと特殊なジャケットになっていて、ジャケ真ん中のくりぬきを取ると、海に浮かぶ孤島が出てくる仕様になっています。(紙ジャケットCD<VICP-62742 \2,205>ではそれを再現)

 高度な演奏力に加え、メロトロンとシンセによってどの曲もドラマチックな展開が楽しめる曲が並び、彼らの最高傑作とも称されていますが、中でも4曲目に収録されているこの曲(邦題「原始への回帰」)は、非常に印象的なサビが頭から離れなくなる名曲。

 6分20秒くらいの曲ながら、途中めまぐるしく転調&曲調が変わり、その転調を乗り越え何度も顔を現すサビのフレーズがなんとも感動的。
(ピート・シンフィールドによる英語詞は正直言って難解すぎ。謎)
 
 75年発表『Cook』に収録されているライヴ・ヴァージョンもオススメです。森 陽馬

2005年10月8日(土) Craig Doerge 「Fair Weather Friends」

 クレイグ・ダーギーは、ウエストコースト・サウンドの名バック・バンドとして数多くのセッションに参加し活躍した“セクション”のキーボード奏者。(有名なところでは、ジェイムス・テイラー、ジャクソン・ブラウン、デヴィッド・クロスビー&グラハム・ナッシュなどの作品に参加しています。)

 そんな彼の73年に発表された唯一のソロ・アルバムは、素朴なシンガー・ソングライター・アルバム。

 決して派手さもなく、歌も特別上手くはないのですが、ダニー・コーチマーや、デヴィッド・スピノザ、ラリー・カールトンなどの名ギタリストに加えて、ラス・カンケル(ds)、ジム・ケルトナー(ds)、リー・スクラー(b)などの職人ミュージシャンが多数参加。名盤とまではいかないけれど、味わい深い渋い1枚。

 今日のこの1曲「Fair Weather Friends」は、クレイグ・ダーギー本人によるライナー・ノーツによると、名女性シンガー・ソングライター、ローラ・ニーロについて書かれたもの、とのこと。
 ハーモニカでピーター・アイヴァースが。更には、何故かWedge Majesticという変名でデヴィッド・リンドレーがコーラスで参加しています。

 ちなみにこのクレイグ・ダーギーの奥様は、声が特徴的な女性シンガー・ソングライターとしても有名な、Judy Henske(ジュディ・ヘンスキ、と読むのが正しいのかな?)。
 このクレイグ・ダーギーのアルバムも、作詞は全て彼女が担当(作曲はクレイグ自身)が担当しています。森 陽馬

2005年10月9日(日) 喜納昌吉&チャンプルーズ 「東崎」

 東京ローカル・ホンクのコア・ファンならば、この曲は知っているはず。
 今年行われた東京ローカル・ホンクのライヴで、何度かヴォーカル&ギターの木下弦二さんがカヴァーしているのです。

 「東崎」と書いて、“あがりざち”と読むこの曲は、77年発表、喜納昌吉&チャンプルーズのメジャー・デビュー・アルバム、5曲目に収録。
 喜納昌吉のヴォーカルと女性コーラス、それに三線(さんしん)の演奏によるシンプルな曲に、波の音などの効果音&シンセを若干かぶせた郷愁を呼ぶ1曲。
ちなみに東崎は、琉球列島の最南端にあたる与那国島の左端にある地名。

 それにしてもこのアルバムのすごい?ところは、喜納昌吉が地元でライヴ演奏した音源に、林立夫(ds)、矢野顕子(key)、井上憲一(g)、田中章弘(b)、恩蔵隆(b)、松武秀樹(シンセ)らの名ミュージシャンが東京のスタジオで音を付け足し、矢野誠がプロデュースして作られた作品、だということ。

 約30年以上前に、このような手法で1枚の作品を作り上げたという事実もそうですが、それが全く嫌味なく作品に溶け込んでいるところが素晴らしいな、と。

 更に言うと、このアルバムの1曲目にも収録されている「ハイサイおじさん」を、いち早くカヴァーして、ニューオリンズ風味もまぶして、全国にチャンプルー・サウンドを広めた久保田麻琴さんもすごいな、と改めて感じました。(久保田麻琴75年発表作『ハワイ・チャンプルー』に「ハイサイおじさん」収録。細野晴臣プロデュース。)森 陽馬

2005年10月10日(月) サザンオールスターズ 「キラー・ストリート」

 8年ほど前、僕が某CD店でアルバイトをしていた時の店長は、何故かサザンオールスターズを毛嫌いしているジャズ・ヴォーカル・マニアの方で、もちろん人それぞれ好き嫌いがあるのは当然としても、自慢するかの如く、やたら自分のサザン嫌い(基本的にJ-POP嫌いだった)を公言していた人だった。

 まあその人がサザン嫌いなのはどうでもいい話なのだが、何故か、というか、やはり、というか、そのサザン嫌いの店長とはウマが合わなかったのを記憶している。

 少し話しがそれたが、今回のサザンの新作。
 そういうサザン嫌いの人には縁遠い作品かもしれないが、要するに、そういう人を除いて、サザンの音楽に少しでも触れたことがあり、楽しめたことがある方なら、桑田佳祐の音楽に対する愛情・ひた向きさ、を享受できる作品だということ。サウンドor唄うんぬんではなく、やはり“サザン”は“サザン”だな、と。

 それにしても、ブックレット内の桑田佳祐本人によるライナーノーツ(曲目解説)は、素晴らしいの一語!
 もういいかげん日本の音楽業界も、「ライナーノーツは、洋楽の作品、もしくは再発商品のためのもの」みたいな認識は改めて、こういう作り手の意図をしっかりと聴き手に伝えてくれる文章なり方法を、“ネット上に公開”とか、“○誌に掲載”などとするのではなく、しっかりと販売している商品内に記してもらいたいものだ。

 ちなみにこのタイトル曲「キラー・ストリート」は、アルバム中唯一のインスト曲。桑田佳祐本人によるライナーノーツによると、“イタリア映画の哀愁をイメージ”というように、エンニオ・モリコーネやニーノ・ロータにインスパイアされたのかもしれないのですが、僕的には、
 “サザン版 グリーンスリーヴス” という印象のナンバーでした。
(「グリーンスリーヴス」は多くのアーティストがカヴァーしている有名なトラディショナル・ナンバー) 森 陽馬

2005年10月11日(火) U2 「Dirty Day」

 渋谷シネアミューズのレイトショーにて、ドキュメンタリー映画『ブコウスキー:オールドパンク』を鑑賞。

 アメリカ文学界の奇人・変人作家/詩人である故チャールズ・ブコウスキーの生涯を、当時の様々なインタビュー&講演での映像を挟みながら、彼に関わった人たちの証言にて描いていくドキュメンタリー。

 出版関係者や詩人仲間だけでなく、彼の友人&ファンの代表として、トム・ウェイツやU2のボノもインタビューに登場。それもちょこっとだけではなく、何度も出てくるので彼らの大ファンでもあったら要チェックですね。

 もちろん、そういう彼らの証言も面白かったが、やはりブコウスキー自身の破天荒というか常人離れ?したエピソードの多くにはかなり笑わせてもらった。
 競馬場での便所に落とした金で馬券を買う話やら、初体験が24歳とかで110キロ以上のデブの娼婦とヤッたエピソードなどをゆっくりと話すブコウスキー。いやはや、近くにこういう人がいたら困り者だが、赤の他人だと笑えるから面白い。ただ、“オールドパンク”なんて副題が付いちゃっているが、実際の彼はパンクなどは聴かず、落ち着くクラシック音楽が好みだったようだ。

 ちなみに上記などのエピソードだけを読むと、彼はかなりの変人と思われるかもしれないが、映画では親から虐待を受けていた事実や、郵便局員時代(15年も勤めていたそうだ)の貧しい生活なども語られ、ブコウスキー自身の人間味に触れられる作りになっているので、彼を知らない方にもオススメかも。

 さて、このU2の93年発表作『Zooropa』(UICY-2435 \2,243)に収録されている「Dirty Day」は、ボノがブコウスキーに捧げた歌であった、とのこと。映画内にこの曲がかかったわけではないのですが、実際にこの曲には、ブコウスキーの詩の言葉が引用されているそうです。(ちなみにこの曲はU2の後期ベスト盤にも収録されています。)
 
 トム・ウェイツがブコウスキー好き、というのは知っていたし、なんとなくわかる感じがするのだが、ボノがあんなに熱狂的なファンだったとは・・・。結構意外。森 陽馬

2005年10月12日(水) Peaches & Herb 「Close Your Eyes」

 同名異曲もありますが、これは50'sR&Bシンガーのチャック・ウィリス作によるバラード・ナンバーで、いくつかのドゥーワップ・グループや、アーロン・ネヴィル&リンダ・ロンシュタット、そして、山下達郎も80年発表アルバム「On The Street Corner 1」でカヴァーしている名曲。

 ピーチズ&ハーブの「Close Your Eyes」は、67年に発表され、R&Bシングル・チャートで最高位4位まで上がったヒット・シングル。
 その後ピーチズ&ハーブは、しばらく活動していなかった期間を経て、1979年ディスコ・ブーム時に「Reunited 邦題(恋の仲直り)」で再びヒットしたことで、その時代の曲の方が有名かもしれませんが、僕はやっぱりこの60年代のオールド・タイムなデュエット・ナンバーの方が好きですね。

 ちなみに僕の不勉強で今まで知らなかったのですが、このピーチズ&ハーブの男女二人の関係は、恋人などでは全然なかったようで、実際ハーブ(男性の方:ハーブ・フィームスター)は、ピーチズ&ハーブを始めるかなり前60年代初期に結婚しており、ピーチズ側(女性の方)にかぎっては、この「Close Your Eyes」を歌っている初代ピーチズ、フランシーン・パーカーが68年に“寿退社”した後、ピーチズの名前は芸名としてそのままに、4回ほども違う女性が入れ替わっていたそうです。(出戻りも数回あったそうだ)

 仲睦まじく写っているジャケットや二人の歌を聴いていると、まさに“恋人”なのだが、それも歌唱力の為せるわざか。デュエットの魔術恐るべし。森 陽馬 

2005年10月13日(木) ハーフ・ブリード 「不思議な夢」

 1960年代後半、日本ではスパイダース、ブルー・フメッツ、タイガース、テンプターズなどの人気どころを筆頭に、G.S.(グループ・サウンズ)の一大ブームが起こった。

 数多くのグループが登場し、数多くの楽曲が発表されたが、残念ながら僕が本当に気に入った曲は、本当にわずかだった。
 格好と雰囲気はロック・グループの体裁を取っていたが、曲の作りはまったくそれまでの歌謡曲と同じようなものが多く、「日本人がやるものだから、しょうがない・・・」と思うことしきりだった。

 ハーフ・ブリードはシングル盤2枚しか発表せずに消えていってしまったが、1969年1月に発表されたこのデビュー・シングルは、今でもフェイヴァリットG.S.ソングの1枚。

 彼らはグループ名にあるように、アメリカン・スクールで出会った混血児を中心に結成されたユニークなG.S.。

 とにかく、曲がいい。
 ソフト・ロック・テイストにスィート・ソウル風味をふりかけたサウンド、とでも表現しようか。

 B面の「ムーン・アンド・スターズ」もB面ではもったいない名曲。森 勉

2005年10月14日(金) Neil Young 「This Old Guitar」

 すでに輸入盤では先日発売された(国内盤は10月26日発売)、ニール・ヤングの新作を遅ればせながらご紹介。

 ニール・ヤングの熱心なファンの方々ならばわかってくれると思いますが、もう内容がどうとか、曲が良い悪いとか、そんなのはホントどうでもよいんですよ。ぶっちゃけた話。
 生きていて、派手さはなくても活動し続けてくれれば、もうそれだけでファンとしては満足。そして新作を発売してくれた、ということだけで、ファンとしてはうれしいんですよね。

 でもですね、今回のアルバムはかなり良いですよ〜。
 全体的にアコースティックな雰囲気で、ニール・ファンでない方にもオススメできるアルバム。

 この8曲目に収録されている「My Old Guitar」。
 曲は「Harvest Moon」っぽいフレーズが軸になっていて、苦楽を共に歩んできたギターに語りかけるような詞&唄がニールらしい1曲。

 ちなみに、各店のHPや音楽誌などで紹介されている文を読むと、
“ロック史に燦然と光り輝く超名盤『ハーヴェスト』、『ハーヴェスト・ムーン』の続編であり、それら2作の続編にして3部作の完結編となるアルバム”
なんて大袈裟な表現で書かれていたりするのですが、僕個人の思いとしては、ちょっと違うかな〜という感じ。

 まあ確かにアコースティック路線の作品であり、そのようにプロモーションした方がインパクトはありますが、僕的には、『ハーヴェスト』&『ハーヴェスト・ムーン』に関わっていたジャック・ニッチェが亡くなってしまった時点で、もうその続編は無いに等しいと考えていましたので・・・。
 “ニールがナッシュビルに敬意を表し捧げたアルバム”という表現の方が正しいような気がします。森 陽馬

2005年10月15日(土) Alder Ray 「Cause I Love Him」

 ライノ・レコードがまたまた凄いボックスを出してくれました。
その名も『ガール・グループ・サウンズ 〜 ロスト&ファウンド』。

 1960年代中期の作品を中心にしたアメリカ、イギリスのガール・ポップスを全120曲!4枚組CD BOXに収めたもので、副題に、“ロスト&ファウンド”とあるように、レア音源満載のマニアにはたまらない内容となっています。

 ブックレットもガールものには欠かせないアーティスト、及びレコードジャケット写真など、たっぷりの充実感あふれる204ページ。ディスクは化粧箱用のミラー付きコンパクトに収めた形で、パッケージは直径22cmほどの円型BOXとシャレたものです。

 いい曲ばっかりですが、その中で“今日のこの1曲”は、ディスクUに収録されているアルダー・レイ「コーズ・アイ・ラヴ・ヒム」にしました。

 プロデューサーが、マーシャル・リーブ(元テディ・ベアーズ)、アレンジが、レイ・ポールマン(レッキング・クルーのベーシスト)、というフィル・スペクター人脈に加えて、イエロー・バルーンなどソフト・ロック・ファンにはお馴染みのゲイリー・ゼクリー作品! とくれば、想像するだけで何かを期待したくなってしまう。
 そしてなんと、ステレオ・ヴァージョン!こんないい音でこの曲が聴けるなんて。
  
 ちなみにこの曲は、ナイアガラ・ファンも必聴です。
 『ロンバケ』のあの曲のエッセンスのひとつになっていると思いますので。森 勉

2005年10月16日(日) Crosby & Nash 「Lay Me Down」

 ここ最近は個人的にニール・ヤングの新作がヘヴィー・ローテーションなのですが、そういえば昨年発売されたクロスビー&ナッシュの新作も結構良かったんだよなあ、と思い出して久々にCDを棚から引っぱり出して聴いてみました。

 クロスビー&ナッシュは、元バーズのデヴィッド・クロスビー、元ホリーズのグラハム・ナッシュ。共にCSN&Yなどでも活動し、すでに60歳を越えた二人が再びコンビを組んだ2004年発表作は、アルバム・タイトルそのものが『クロスビー&ナッシュ』と冠した意欲作。

 2枚組全20曲というボリュームの新作の1曲目を飾るのがこの曲なのですが、イントロ後の歌いだし、デヴィッド・クロスビーの声がいいですね。
 昔からドラッグ中毒やらアル中やらを繰り返してきた彼ですが、最近はまた復活してきた感じで、伸びのあるヴォーカルが深遠さを増して、更に良くなってきた印象。

 そしてサビ近くにはナッシュのコーラスも加わり、改めてこの二人のコンビのコーラス・ハーモニーの素晴らしさを実感できる作品です。

 ちなみにバックは、リー・スクラー(b)、ラス・カンケル(Dr)等の盟友が参加。
 アコースティックを基調にしたやや抑え目な演奏が、より彼らのコーラスを引き立たせています。森 陽馬

2005年10月17日(月) 吉田美奈子 「Black Moon」

 まずは、千葉ロッテ・マリーンズ優勝おめでとうございます。
 とてもいい試合でしたね。
 最近は大リーグばかりがクローズ・アップされていましたが、まだまだ日本のプロ野球も捨てたもんじゃないな、と。

 さて、話は変わって、今日のこの1曲。
 雨が降り続いているので、大好きな曲「Rainy Day」が収録されているこの吉田美奈子さんの80年発表アルバム『Monochrome』を夜は聴いていたのですが、その「Rainy Day」の次に収録されているこの「Black Moon」も実は結構好きなナンバー。

 もの静かなバラード「Rainy Day」のしっとりとした余韻の後に、突然鳴り響くピアノのメロディーにドキッ!とさせられ、その出だしのピアノに絡んでくる松木恒秀のギターがまたなんとも言えず心に響いてくるイントロ。そして、吉田美奈子本人による多重コーラス。

 ちなみにこのアルバムは全体的に、彼女の多重コーラスが各曲の随所に散りばめられていて、そのコーラスとメインのヴォーカルとの対比がまたひとつの味になっているのですが、特にこの「Black Moon」はそれが顕著な1曲で、コーラスによるパートと、メイン・ヴォーカルのパートが交互に進行していく曲展開が見事。いつ聴いても不思議な魅力を感じます。

 ラスト付近、Aメロ?のリフレインになる部分は、岡沢章のベース・ラインがかっこよくてNice!。突然プツッと切れるように終わる最後も僕的に好きな終わり方です。森 陽馬

2005年10月18日(火) Fayray 「I Believe In You」

 何故にフェイレイ? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、いやいや、この子は侮れないですよ。
 特に今年発売になったこのカヴァー・アルバム(『covers』 YRCN-11049 \2,500)の選曲は圧巻です。

 エルトン・ジョン、ロバータ・フラックはまだ普通としても、キング・クリムゾン、PJハーヴェイ、キャット・スティーヴンス、ジミヘン、サイケデリック・ファーズ、etc・・・ですから!

 で、この曲「I Believe In You」は、ニール・ヤングの70年発表名作『アフターザ・ゴールド・ラッシュ』の10曲目に収録されている地味ながらもニールらしいスロー・ナンバー。

 もともと歌はとても上手な女性シンガーでしたので、こういうシンプルなアレンジの作品が合っていると思いました。

 デビュー当初は、浅倉大介プロデュースのダンス・ナンバーを歌っていた彼女ですが、レーベルなども変わり、本来はこういう70〜80年代の洋楽が好きなようですので、これからのシンガー・ソングライターとしての彼女の活躍に応援&注目したいと思っております。森 陽馬

2005年10月19日(水) 1910 Fruitgum Company 「Bubble Gum World」

 “ナインティーン・テン・フルーツガム・カンパニー”と読みます。

 1968年にブッダ・レーベルよりデビュー。
 「サイモン・セッズ」がアメリカをはじめ全世界で大ヒットし、バブルガム・ミュージックの大ブームが起こりました。
 日本でも「カイアント・ステップ」、「インディアン・ギヴァー」、「トレイン」などが大ヒット。オリコンのシングル・チャートを賑わせるほどの大衆性を獲得していました。

 シングル・ヒットではありませんが、「バブル・ガム・ワールド」という曲は、テレビでお馴染みの“サザエさん”のエンディング・テーマ曲にイントロからしてよく似ています。

 そんなことからも彼らの曲がいかに日本人に浸透していたかがわかる興味深い一例ですね。
(もちろん1910フルーツ・ガム・カンパニーが先です)

 個人的には彼らの曲の中では、あのトレイド・ウインズがバック・コーラスに参加していると言われる「1、2、3、レッド・ライト」が一番好きです。森 勉

ジャケットは、全28曲収録ベスト盤(BVCM-2606 \2,243)。

2005年10月20日(木) Stevie Wonder feat Aisha 「How Will I Know」

 やっと出ました! スティーヴィー・ワンダー新作。
 
 いやはや、何度発売延期になったことか。
 一番最初にメーカーから新譜の案内が来たのは昨年だったような気がするが、それから発売日が近づく毎に、延期→○月下旬発売予定、という延期リストが届くのがここ最近当たり前になっていたので、逆に今回ちゃんと発売されてきてちょっとビックリ。

 こういうパターンの場合、結構自分の中で期待値が高くなりすぎてしまって、あんなに楽しみにしていたのに聴いてみると案外大したことなかったなあ〜、なんてことよくあるのですが、今回のスティーヴィーの新作! いいですヨ〜!

 まあ人によって、スティーヴィーの新作に何を求めているか、が違うでしょうから、感じ方も多少変わってくるかもしれませんが、僕の場合はファンク色が強すぎるものよりかは、ポップな曲、もしくは「Ribbon In The Sky」などのバラードが好きだったりするので、僕はとても楽しんで聴くことができました。

 特にこの6曲目に収録されている「How Will I Know」。
 デュエット・バラードなのですが、そのデュエットしている相手がAisha Morris・・・。

 そう! この“アイシャ”は、あの76年発表の大名作『キー・オブ・ライフ』に収録されている75年に生まれた愛娘を歌った人気曲「Isn't She Lovely (邦題:可愛いアイシャ)」の“アイシャ”なのです!

 愛娘とデュエット、とは反則に近いですが、またこの曲がイイ曲で・・・。
 おそらく、このアルバムのツアーも行われるでしょうが、是非生ライヴでもこの二人のデュエットを聴きたいですね。森 陽馬

2005年10月21日(金) Sweetback's Theme

 シネセゾン渋谷のレイトショーで、映画『バッドアス!』鑑賞。

 いや〜、これは今年のベスト3に入るくらい面白い映画でした。
 黒人音楽・黒人映画に少しでも興味がある人だったら必見の作品ですね。

 ブラック・ムーヴィーの先駆け、と言える1971年メルヴィン・ヴァン・ピープルズ監督・主演作品『Sweet Sweetback's Baadasssss Song』という映画が、当時どのようにして撮影されていたのかを、そのメルヴィンの息子、マリオ(実際に当時13歳にして父のその映画に出演)が描いた新作映画。つまりは、映画『Sweet Sweetback's 〜』の当時の舞台裏を現在のキャストで描いた作品です。

 まだ当時は無名だったアース・ウィンド&ファイアーが、どのような経緯でこの映画のサントラに参加するようになったか、などのエピソードも面白いですし、インディペンデント映画の様々な苦労や悲喜交交が、色々な視点からも描かれ表現されていて、黒人もの好きではない方でも、インディー映画に興味がある方なら共感できる部分が絶対あるはず。

 この映画の元となったオリジナルの71年作映画『Sweet Sweetback's Baadasssss Song』は、実はまだ観ていなかったので、今度見てみようと思っています。森 陽馬

2005年10月22日(土) OST 『DEEP IMPACT』

 明日10月23日(日)は競馬の菊花賞。
 ディープインパクトという馬が、無敗の3冠馬を懸けて出走する注目のレースです。

 記念すべき3冠の達成を祈願?して、たまたま持っていたサントラ『DEEP IMPACT』を聴いてみました。

 スティーヴン・スピルバーグも製作総指揮に関わっている1998年アメリカ映画。
 ストーリーが、この映画よりも大ヒットした映画『アルマゲドン』に結構似ていて、どちらが先に公開されたかははっきりわからないのですが、未知の彗星が地球に衝突する、というのが大まかな設定。

 音楽は、『タイタニック』と同じジェイムズ・ホーナーが担当。
 歌は入っていないスコア盤で、管弦楽による演奏のサントラ。
 正直言って、ずっと聴いてるとちょっと退屈かも・・・。

 本日22日の東京競馬場最終レースには、約180,000倍!(100円が1800万円!に)というとんでもない高配当の馬券が飛び出しましたが、菊花賞はそこまでの大穴は出ないでしょう・・・。おそらく・・・。
 ディープインパクトの強い勝ち方を期待しています。森 陽馬

2005年10月23日(日) Rebirth 「Evil Vibrations」

The Rebirth ブルーノート東京公演を観に行ってまいりました。

 The Rebirthは、アメリカ、カリフォルニア出身の7人組グループ。
 90年代に一時期ブームになったアシッド・ジャズ・サウンドをもうちょっと洗練させて、フュージョンっぽくした感じの演奏。更にそれにソウルフルな黒人女性ヴォーカルをプラスしたジャズ・ファンク・バンド。

 クラブDJで有名なジャイルス・ピーターソンやキング・ブリット等が絶賛していたこともあり、今日のライヴを見る前は、もっと若々しくそして荒々しいライヴ・パフォーマンスなのかな、と勝手に想像してしまっていましたが、全くそんなことはありませんでした。

 むしろ、非常にこなれた感じのステージングで、バンドとしての音もとてもバランスのいい演奏。
 ドラム&ベース&ギターの人達も一歩引いた抑え目な演奏で、フロントマンと思われるキーボード二人と、女性ヴォーカリストの唄の上手さをとてもうまく引き出していたように感じました。

 また、ソウル・ファンク一辺倒というのでもなく、ちょっとジャズ&スムースな雰囲気の曲もあったり、ブラジリアン・フュージョン的なナンバーも絡めたりと飽きのこないライヴでした。(EW&F「Brazilian Rhyme」もちょろっとやってましたね)

 初来日公演の初日、そしてブルーノートという場所柄ながら、ファンキーな曲などでは観客も立ち上がって大盛況。
 この今年5月に発売された今作(LEXCD-5002 \2,415)で終わることなく、次のアルバムにも期待したいところです。森 陽馬 

2005年10月24日(月) Barbara Mason 「Yes, I'm Ready」

 彼女は1947年フィラデルフィア生まれの黒人シンガー。
 1960年代中期から10年間ほどチャート・ヒットを放ちました。

 コテコテのソウルというよりはポップス感覚のある曲が多く、この曲も個人的にはそんな所が気に入った理由かもしれません。
 なにせ、中学生の時、ラジオから流れてきて、ひと目(ひと聴き)で惚れてしまった曲ですから。

 日本ではあまり知っている人は少ないかもしれませんが、アメリカでは1965年の大ヒットです。
 “ARCTIC”という日本ではレーベル契約がない会社からの発売なので、彼女の曲の良さが伝わっていないのでしょうね。

 この曲の他、「サッド・サッド・ガール」という曲もあります。
 ARCTICレーベルで出したヒットは、すべて彼女自身の作品ということで、作詞・作曲の才能もあった人です。
 (でも歳を考えると17歳の時に発表した曲なんですよ、この「イエス、アイム・レディー」は。本当に自分で作ったのかなぁ〜・・・。でもここは信じましょ。)

 1970年代からはブッダ・レーベルに移籍し、この曲も再録音されていますが、やはりオリジナル・ヴァージョンが一番。森 勉

2005年10月25日(火) Neil Young 「Here For You」

 ニール・ヤング新作の国内盤がやっと発売。

 すでに何度かこちらでも紹介していますが、思っていたよりも聴きこんでくるうちにより深みが感じられるようになってきましたね。

 最近のお気に入りはアルバムの7曲目に収録されているこの曲。
 異論もあるでしょうが、僕としてはなんとなく
“78年発表名作『Comes A Time』に収録されている「Lotta Love」が、時を経て成熟させたナンバー”
という印象を受けました。
 
 季節の移り変わりと時の流れ。
 しかしながら変わらぬ愛する人への想い。
 それが色彩感あふれる歌詞で描かれていて、ジェイムス・テイラーのようなソング・ライティングに心沁みます。
 ベン・キースのペダル・スティールも渋くて最高。

 ちなみにこの新作に付いているDVDはいいですね。
 スタジオでの録音風景と共にアルバムの曲が流れるのですが、ペダル・スティールやドラム・セットの後ろから捉えたカメラ・ワークが多く、楽器をやっている人ならもちろん、そうでない方にも興味深い映像です。

 この作品の核が、ベン・キーズのペダル・スティールだ、ということを再認識できました。森 陽馬

2005年10月26日(水) Jackson Browne 「Fountain Of Sorrow」

 大好きなアーティストなのに、その人のコンサートに行くと、なんともいえず歯痒い思いがしてしまう・・・。
 ジャクソン・ブラウンが昨年来日して行ったアコースティック・ライヴもそういう複雑な思いが交錯したコンサートだった。

 ジャクソン・ブラウンは70年代から活躍しているシンガー・ソングライター。
 以前、彼がバック・バンドを引き連れて来日公演を行った際にも、ライヴ中に観客から「この曲をやってくれ!」という無理な注文が再三なされることがあったが、彼はそういう声に嫌な顔ひとつせず誠実に対応して、ギター1本でその曲を突然やってくれたりする光景が何度も見られた。

 当然のことながら、そういうリクエスト曲は古い曲で、もちろん僕らも聴きたいナンバーであることは確かなのだが、その分、本当はやりたくはないであろうその曲をファン・サービスのためにやってくれる彼の痛いくらいのやさしさがなんとも歯痒いのだった。
 
 その思いは昨年のこのツアーでもあって、彼の友人であった故ウォーレン・ジヴォンの曲のリクエストの声がかかった時、僕は一瞬眉をひそめてしまった。それはたしかに聴いてみたい曲ではあるが、ジャクソンは本当にその曲をやりたいのだろうか?(そんな僕の杞憂をあざ笑うかのように、彼はそのリクエストにも応えてくれたが・・・)

 ある意味、彼のこのアコースティック・ツアーは、そういうファンへのリクエストに応えるためのライヴ、でもあるのだろうが、彼の誠実さ・優しさに触れれば触れるほど何故かやるせない思いが強くなってしまったのは僕だけだろうか?
 
 前に進んでもらいたいアーティストなのにファンは懐かしい古い曲を望んでいる・・・。
 自分も含めそういう我儘なファンを前に、彼はこれからもずっと“プリテンダー”という十字架を背負って生きていかなければいけないんだろうな、と思いながら、この曲(74年発表名盤『Late For The Sky』に収録)を再びリピートしてしまうのでした。森 陽馬

10月26日発売ジャクソン・ブラウン『ソロ・アコースティック vol.1』(MHCP-895 \2,520)より。

2005年10月27日(木) Santana feat Michelle Branch 「I'm feeling you」

 サンタナの新作がもうすぐ発売になる、というのは知っていたので、ラジオからこの曲が流れてきた時、「あっ、これが新曲だな」というのはすぐにわかりました。

 2002年発表アルバム『Shaman』に収録されたミッシェル・ブランチをヴォーカルに迎えた「ゲーム・オブ・ラヴ」は、シングル・カットもされ当時大ヒット。超ポップで爽やかな楽曲は僕もお気に入りだったのですが、まさに今回もその曲の雰囲気を踏襲した1曲。

 キャッチーでポップな楽曲にサンタナ独特のギター・フレーズがフィーチャーされていて、ミッシェル・ブランチのヴォーカルもNice!

 “柳の下のドジョウ狙い”とかツっこまれても反論はできませんが、クラプトンなどとはまた別の意味で若々しいサンタナのギターがかっこいいナンバーですね。

 新作アルバム『All That I Am』(BVCP-21424 \2,548)は11月9日発売予定。ジョス・ストーン、ロス・ロンリー・ボーイズ、ロバート・ランドルフ、スティーヴン・タイラー、ブラック・アイド・ピーズのメンバーなども参加しています。森 陽馬 

2005年10月28日(金) The Doobie Brothers 「You're Made That Way」

 先日、朝、テレビでメジャー・リーグ・ベースボールのワールド・シリーズ(アストロズ対ホワイトソックス)を見ていたら、試合前のアメリカ国家をマイケル・マクドナルドが歌っていました。

 なかなかの熱唱だったのですが、昔ながらの彼の声とちょっと雰囲気が変わっちゃったなあ、と思いました。きっと曲が合っていなかったんですね。

 ノドの奥から唇までの間に妙な時間差があって出てくるような彼独特の魅惑の声を聴きたいと思い、久しぶりに出してきたのが、このドゥービー・ブラザーズの『リヴィン・オン・ザ・フォルト・ライン』。

 1977年発表。彼がドゥービーのメンバーになってからの2作目のアルバムです。

 シングル・ヒットはありませんが、A面の1曲目を飾った印象に残っている曲。
 曲を作った3人のプレイがさりげなくフィーチャーされています。
 マイケルのキーボード、キース・ヌードセンのイントロのドラムス、ジェフ・バクスターのギター(特に短い間奏、かっこいい)。

 この後、「エコーズ・オブ・ラヴ」、「リトル・ダーリン」、「ユー・ビロング・トゥ・ミー」と続くA面の流れは、今聴いてもとってもゆったりとした気分を運んできてくれるものです。
 初期のドゥービーらしくはないけど・・・。森 勉


★トップページにも記載いたしましたが、12月初〜中旬に
仮店舗での営業再開が決定いたしました。

2005年10月29日(土) Soul Generation 「Wait So Long」

“甘茶ソウル”なんて造語が作られ、一時期ブームになったことがありましたが、このアルバムはまさにその“甘茶ソウル”の王道をいくような1枚。

 72年発表、ニュージャージー出身のソウル4人組グループの唯一のオリジナル・アルバム『Beyond Body & Soul』。

 クリフ・パーキンスという人が中心人物で、彼がファルセットで歌うリード・ヴォーカルが一番のセールス・ポイント。ファルセットで歌うヴォーカリストはジャンル問わずたくさんいますが、彼のファルセットはとりわけ高音で美しい響き。

 実際この曲のシングル盤は、グループ名義ではなく、“Cliff Perkins”名義で当時発売されていたようで、もちろんこのソウル・ジェネレイションのアルバムにも収録されていますが、4人組コーラス・グループの作品にも関わらず、コーラスが全く入っていない、という珍しいナンバー。
(なので、ソロ名義でシングルは発売されたのかも。例えは悪いですが、ビーチ・ボーイズの「キャロライン・ノー」が当時、Brian Wilson名義でシングル発売されたのと同じ?)

 ちなみにこのグループの良さは、ヴォーカルだけではなくバックのサウンドも素晴らしいところ。
 ジョー・サンプル(p)、チャック・レイニー(b)、ポール・ハンフリー(dr)などがバックを固め、クルセイダーズお好きな方にも注目の1枚です。
(しかし現在はこのアルバム廃盤。再発希望) 森 陽馬 

2005年10月30日(日) saigenji 「Breakthrough the Blue」

  サイゲンジは、ブラジル音楽をルーツに、その屈指の個性で様々なセッションに参加。自らの作品も発表し、徐々に知名度も上がってきた日本人ギタリスト&ヴォーカリスト。

 今年5月に行われた日比谷野音のイベントでも、多彩な出演者の中で一番の盛り上がりだったのが印象深いのですが、その彼がブラジルで録音してきた新作アルバム(4thアルバム『ACALANTO』 TOCT-25770 \2,500))が先月遂に発売になりました。

 初のメジャー・レーベルからの発売ということもあって、今までのインディーズ作の良さとは違ったメジャー感ある仕上がりを危惧していましたが、ブラジルのリオ録音ということもあってか、洗練された素晴らしい演奏をバックに彼の個性はより輝きを増した印象で、全体的にとても聴きやすく、かつ完成度の高い仕上がり。

 特に1曲目に収録されているこの曲は、疾走感あふれるナンバーながら、どの楽器もでしゃばっておらず、心地良く聴けるクールなナンバー。
 サイゲンジのギター&ヴォーカルももちろんですが、ドメニコという人のドラム、そしてジョアン・ドナートの息子にあたるドナチーニョのローズ・ピアノの音色が最高。

 ちなみにアルバム・タイトルの『ACALANTO』は、ポルトガル語で“子守唄”の意。森 陽馬

2005年10月31日(月) cocco 「あなたへの月」

 くるりのメンバーと組み、SINGER SONGERとして今年復活したコッコ。

 ポップで聴きやすいメロディー&サウンドをバックに、伸び伸びと歌うコッコも悪くはないのですが、僕はどっちかというとやはり、ソロでやっていた頃の方が好きかな、と。

 危うい歌詞とヘヴィーなサウンド、ディストーションの効いたノイジーなギターの隙間を縫うように、それらとは対照的な無垢で澄んだ声で歌うコッコが、僕にとってはやはり魅力的でした。

 その中でも特に愛聴していたのが、この曲。
 2ndアルバム『クムイウタ』に収録されているのですが、Dr.Strange Loveのベーシストでもある根岸孝旨がプロデュースを担当していて、音の壁と化したギターの咆哮&轟くドラムの唸りが刺激的。

 ちなみに、シングル「雲路の果て」のカップリング、及びベスト盤には「あなたへの月」new mixヴァージョンが収録されているのですが、そちらの方は、イントロの静かなピアノ部分を省き、ギターのmixを更に上げたかんじのヴァージョン。
 こちらの方のmixも好きなのですが、今日はあえて嵐の前の静けさを象徴するイントロが付いたオリジナルのアルバム・ヴァージョンを。森 陽馬




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