PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2006月3月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2006年3月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2006年3月1日(水)Roger Joseph Manning Jr.「The Land Of Pure Imagination」

 2006年のベスト10(新譜)に入るであろう傑作が早くも登場!

 80年代後期に結成され、ビートルズなど往年のポップ・フィーリングを受け継ぐバンド、としてROCK・POPSファンに愛されたグループ、“ジェリーフィッシュ”の中心人物であったロジャー・ジョセフ・マニングがソロ名義の新作を発売。(PCCY-1764 \2,415)

 これがもう、モロに“ジェリーフィッシュ”!
 全曲の楽器・演奏・ヴォーカル・コーラス・プロデュース全てを、ロジャー・マニング自身が担当していながら、そのサウンドは最高にポップで楽しいバンド・サウンドに仕上がっているから驚き。
 単なる陰鬱な宅録ポップとは違って、マジカルな明るいポップ・フィーリング溢れる作品で、全曲美メロの1枚。

 ジェリー・フィッシュ解散後は、インペリアル・ドラッグというバンド名での作品などを出したものの、今ひとつピンときませんでしたがこれは名盤ですね。
 ジャケット・アートも美しく、アナログ盤も出して欲しいな、と。

 ちなみに、輸入盤は今のところ発売予定がないので、美麗な紙ジャケがうれしい国内盤で是非。森 陽馬

2006年3月2日(木) The Little Willies 「Lou Reed」

 ノラ・ジョーンズがヴォーカル・ピアノを担当した新バンドを結成。
 “リトル・ウィリーズ”(“ウィリー・ネルソンの子供たち”の意?)というグループ名にてアルバムを発表しました。(TOCP-67910 \2,500)

 サウンドや雰囲気は、まさに“21世紀のザ・バンド”といった感じで、予想以上にレイドバックしていていい雰囲気。一般的なファン層の方々がこれを聴いてどう思うかはさておき、ノラ・ジョーンズ自身はどんどんルーツを掘り下げていっているようで、グラミー受賞後のプレッシャーなどはこの作品を聴く限りは微塵も感じられません。

 ハンク・ウィリアムス、エルヴィス・プレスリー、ウィリー・ネルソン、グラム・パーソンズetc...など、カヴァーの選曲がまるでBUFFALO RECORD(当店オススメのアメリカン・ルーツの良盤を多数出しているインディー・レーベル)からの作品のようですが、曲名共々、一番印象に残ったのがこの曲。

 まさにあのヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ルー・リード」を曲名に冠したこのナンバーは、予想に反して(?)楽しいノベルティ・ソングで、ツアーの道すがらメンバー同士の会話をそのまま歌にしたような1曲。

 ♪ニューヨークへ帰る道中あのルー・リードが牛をひいて歩いていたんだ、〜そんなウソだろう、〜フェリーニに似ていたよ、〜どっちかっていうと、ジム・ジャームッシュだろ・・・♪っていう会話的ヴォーカルをゆったりしたジャグ・バンド・スタイルで聴かせてくれます。まさにこの“リトル・ウィリーズ”を象徴する1曲といっても過言ではないでしょう。

 でもそれにしても、これがまたコピー・コントロールCDとは・・・。
 店側が注文する段階での新譜案内書では通常CDの表記だったのに、直前でコピー・コントロールCDに差し替え、ってちょっとそれはないんじゃないの? 東芝さん! 森 陽馬

2006年3月3日(金) ビーチ・ボーイズ 「待ったこの日」

 本日、新店舗予定地の地鎮祭を行いました。

 心配された天気の方も地鎮祭を行っていた間は雨も降らず無事終了。
 来年1月末の完成をメドに今月中旬には着工となります。

 現在は地上にある駅&線路がいつ地下に潜るかで工事の進行状況も変わってきそうなので、“新店舗オープン”が来年1月末〜2月に間に合うかどうかは、“神のみぞ知る”といった感じではありますが、まあとりあえずはやっとスタート地点に立つことができました。

 こういう日こそ店頭でかけなきゃ!ということで、ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』からこの曲を。

 原題は「I'm Waiting For The Day」。5曲目に収録されているナンバー。
 『ペット・サウンズ』はトニー・アッシャーによる作詞が多いのですが、この曲はマイク・ラヴが作詞を担当。
 ブライアンのヴォーカルの美しさもさることながら、曲が進行していくにつれ、ストリングス、コーラス、ティンパニ他、演奏と歌声が渾然一体となっていく抑揚の構成が圧巻。

 店員の僕がこんなことをいうのもなんですが、やっぱり“ペット・サウンズ”の店内で聴く“ペット・サウンズ”はイイですね。森 陽馬

2006年3月4日(土) Michael Franks 「The Lady Wants To Know」

 陽が陰るとまだまだ肌寒い3月初旬ではありますが、今日の昼間は暖かい陽気でしたね。だんだんこういうアルバムが合う季節になってきました。

 75年に名作『Art Of Tea』でメジャー・デビューした白人シンガー・ソングライター、マイケル・フランクスが77年に発表した2ndアルバム『Sleeping Gypsy』(WPCR-2543 \1,785)。

 UAなどがカヴァーしたことで有名な「アントニオの歌」が収録されていることでもよく知られるこの名盤アルバム。
 その曲を筆頭に、ジョー・サンプル、ラリー・カールトン、デヴィッド・サンボーンなど豪華バック陣による演奏で、もちろん全曲素晴らしいアルバムではあるのですが、この作品全体の素晴らしさを一番象徴しているのはやはり、1曲目「淑女の想い(邦題)」の冒頭で聴かれるラリー・カールトンのギターでしょう。

 独特な浮遊感のあるギターの音色・響きが、ラリー・カールトンらしい、というか、それに続くジョー・サンプルのキーボードがよりそれを引き立たせていて、このイントロだけで『Sleeping Gypsy』の世界観を語っているといっても過言ではないでしょう。

 凄腕ミュージシャンの味わい深い演奏に合ったマイケル・フランクスのヴォーカルも力が入らなくて(?)いい感じですが、もしこのアルバムのカラオケがあったら、それはそれで極上のリラクゼーション・アルバムになりそうだな、と思ったりして。

 ちなみにこの曲の歌詞には、ジョン・コルトレーンとマイルス・デイヴィスの人名が登場します。森 陽馬

2006年3月5日(日) ポール・モーリア・オーケストラ 「恋はみずいろ」 

 ここ最近のヒット・チャートもの(邦楽も洋楽も)に対してよく感じることなのですが、アーティストの好き嫌いは別として、聴いて純粋にいいなあ、と思えるメロディーの曲が本当に少ないですよね。

 演奏やアレンジに因る部分もあるのかもしれませんがそれだけでなく、一度聴いただけで口ずさめるようなメロディーのもの、というのが年々減少傾向にあるような気がしてなりません。
 現代の音楽にそんな不満があるせいか、こういうイージーリスニングを聴くとなんかホッとしちゃうのです。(オレがただ単にオジサンになったせいか?)

 おそらく誰もが一度は耳にしたことがあるはず!のポール・モーリア・オーケストラ、1968年に発表された大ヒット曲で、当時全米チャート1位を獲得。アメリカだけでなく世界各国で愛されている名曲で、原題は「Love Is Blue」。2年前ほどにコンピも出て少しだけ話題になったアンドレ・ポップが作曲。森山良子が日本語詞をつけて歌っているのもの有名ですね。

 ベタな1曲ですが僕はこの曲大好き!
 切ないメロディーとストリングスが何時聴いても心癒してくれます。

 それにしてもこういうイージーリスニングが全米1位になるなんて、60年代はホント音楽的にいい時代だったんですね。実験的な音楽・革新的な演奏もいいですが、“いいメロディー”という原点を忘れない聴き手であり続けたい、と思っております。森 陽馬

ジャケットはイージーリスニングの名曲がタップリ72曲!4枚のCDに収録された超お得なコンピ『EASY LISTENING 3000』(UICY-9628 \3,000)

2006年3月6日(月)Tom Petty & The Heartbreakers 「Rhino Skin」

 店頭にあるCDの中には、せっかく仕入れたにも関わらず、売れそうなのになかなか売れないCDというのがあって、このトム・ペティのアルバムも発売された99年からずっーーと店頭に残っていたアルバム・・・。

 7年近くも店頭にあると逆に愛着が涌いてきてしまうもので、もうこれは俺に買ってくれと言っているんだな、と勝手に解釈し自ら購入してしまうことが時々あるのですが、このアルバムもそういう1枚となりました。

 ボブ・ディラン直系と言えるアメリカン・ロックンローラー、トム・ペティが1999年に発表したアルバム『エコー』(WPCR-10213 \2,520)。

 以前からそうでしたが、曲によってはモロにディラン節。
 オリジナル曲ですが「ビリー・ザ・キッド」という曲名のナンバーもあって、“実直なアメリカン・ロック”満載の作品。

 中でも特に印象に残ったのが、14曲目に収録されているこの曲「Rhino Skin」。はっきりいって全く派手さはない、どちらかというと地味めなナンバーなのですが、トム・ペティの抑え目ながらも“らしい”歌声や後半のたどたどしい(?)ギター・ソロになんともいえずニンマリ。

 最近は彼らの活動状況をあんまり把握していないのだけれどそろそろ新作でも出さないかな? 森 陽馬

2006年3月7日(火) 矢野 顕子 feat 忌野清志郎 「ひとつだけ」

 3月8日新譜が色々と入荷。
 大型新譜としては、倖田來未ベスト2、木村カエラ、ソウルヘッド、ソウルドアウト、浜崎あゆみシングル、ダパンプのベスト2、ウルフルズ、小沢健二(新作!)などなど。オリコンの1位は倖田來未になるのでしょう。おそらく。(ちなみにうちでは木村カエラの方が売れてます)

 注目度としては、小沢健二の久々の新作、それも全曲インストとのことで気になっている方も多いとは思いますが、非常に評価の難しい作品(賛否両論ありそうですね。僕は賛と否の間かな)なので、今日の1曲で取り上げるのは後回しするとして・・・。今日の新譜の中で一番素晴らしかったこの1曲を。

 矢野顕子の新作『はじめてのやのあきこ』は、超豪華ゲストを各曲に迎えての新録セルフカヴァーと、新曲1曲+シングル「PRESTO」のアコースティック・ヴァージョンを含むシンプルなピアノ弾き語りアルバム。(YCCW-10021 \2,625)

 どの曲も素晴らしくて、井上陽水とのコラボによる新曲も心に沁みましたが、昔から大好きなこの「ひとつだけ」は本当に感動しちゃいました。

 「ひとつだけ」はもともとは1980年発表アルバム『ごはんができたよ』に収録されているナンバー(後に出たベスト盤には新録による別ヴァージョンも収録)。個人的にこの曲の歌詞は矢野顕子の中でも1、2を争うほどフェイヴァリットなな詞で、それを清志郎とデュエットというのがまさに夢のような共演。
 
 歌だけでなく、矢野顕子のピアノ、中間部分からの清志郎の無垢なハーモニカの響きが交わる部分は、最初聴いて身震いがするくらい心にズドン!ときましたね。
 7曲入りと収録曲は少ないですが全曲珠玉なナンバーですので、是非矢野顕子体験が“はじめて”の方も、“はじめて”でない方も買って聴いて欲しい1枚です。森 陽馬

2006年3月8日(水) 小沢 健二 『毎日の環境学』

 「小沢健二が久々の新作を出して、それが全曲インスト・アルバムだ」というのを聞き、心躍らせて、フリッパーズ・ギターの時のようなポップな楽曲のインストを期待してしまうとガッカリしてしまう方々が多いかもしれません。

 じゃあどんな作品なのか?と問われると結構説明が難しくて、エレクトロニカ・音響的なサウンドに生楽器が随所に散りばめられた音のロード・ムービーとでも言おうか? (これでも全然説明になってないですね。スミマセン。)
 ハウス、アンビエント、ジャズ、とかそういうジャンルともまた全然違って、簡単に言えば、『毎日の環境学』という物語の“サントラ”という括りが一番わかりやすいかと思う。

 そう、『毎日の環境学』という名の物語。

 帯に小沢健二による(と思われる)言葉が書かれているのですが、それを一部抜き出すと、
『灰色は、その歴史を、なるべく人びとに見せないようにしていました。それはあまりにも大きな、楽しさとか、喜びとか、希望とか、優しさとか、おもしろさを、人びとに与えてしまうからでした。』

 うーーーーん・・・。哲学的すぎてわからん。
 まあそういう哲学的なストーリーを“現在の小沢健二”がインストゥルメンタルで表現した作品がこのアルバムということなのでしょう。

 ある意味、ピンク・フロイド『狂気』とかそういう大名盤に化ける可能性も秘めている作品でもあると思うのですが、エレクトロニカ・音響のジャンルを通過していない人にはちょっと退屈してしまうタイプのサウンドかもしれません。(代官山にあるカフェとかレコード店でかかっていると合いそうな雰囲気ではあるのですが・・・。)

 現代の音楽を聴く人の感性と創造性を小沢健二は試しているのかも、とこのアルバムを聴いていて思えてきました。森 陽馬

2006年3月9日(木)Luisito Quintero&Louie Vega feat Anane 「Our Love」

 ルイシート・キンテーロはラテン界の名パーカッショニスト。

 その怒涛のパーカッション・プレイは聴きもので、パーカッション/ラテン好きの方にオススメのアルバムなのですが、それらの限定された音楽ファン層のみならず、CLUB MUSICファンに是非オススメしたい1枚でもあります。
(『パーカッション・マッドネス』 PCCY-1762 \2,520)

 それというのも、現在のCLUB MUSIC界の流れを絶えず左右させる男、といっても過言ではないMasters At Workのルイ・ヴェガが全面プロデュースした作品で、オーガニックなCLUBサウンドに生楽器、パーカッションが渾然一体となったサウンドが楽しめる上品かつゴキゲンな1枚に仕上がっています。

 6曲目に収録されているこの「Our Love」には、ルイ・ヴェガの奥方であるAkaneがフューチャリング・ヴォーカルで参加。グルーヴィーかつ爽やかな歌声を聴くことができます。森 陽馬

2006年3月10日(金) キャプテン・ストライダム 「十五夜」

 元はっぴいえんどのドラマーであり、日本随一の作詞家でもある松本隆が現在主宰しているレーベル、“風待レコード”より先日発売になったキャプテン・ストライダムの2ndアルバム『108 DREAMS』(AICL-1703 \2,854)。

 ヴォーカル&ギターを担当している永友聖也が書くナンバーはどの曲もポップで、そのポップな楽曲と九州男児(宮崎県出身)である彼の男臭くもやさしさをも内包した歌声が絶妙にマッチ。

 アップ・テンポなロック・ナンバー中心ではありますが、その分、5曲目に収録されているこの「十五夜」のようなスロー・ナンバーが沁みてきて、アルバム・トータルに聴いて楽しめる1枚。

 今回のこの新作のチラシに“GREAT POP RECORDS”というページがあり、彼等のルーツとなった作品が10枚セレクトされていて、フランツ・フェルディナンド、ELO、ボストン、10cc、スタ・カン、沢田研二、などが紹介されているのですが、僕がこのアルバム『108 DREAMS』を聴いて一番最初に思い起こしたのは、エレファントカシマシ。

 エレカシほどは尖がっていないものの、まさに“エレカシ直系”の日本歌謡ロック、といっていいでしょう。
 作品を重ねるごとに実験性が押し出されていく新しいバンドやグループが最近は多いのですが、彼等にはこの古き良き“日本歌謡ロック”の道を貫き通して欲しいものです。森 陽馬

2006年3月11日(土)ナイアガラ・トライアングル 「ナイアガラ音頭」

 本日、早くもレコード・コレクターズ誌が入荷。
 今月号の特集は3月21日に30周年記念盤(SRCL-5005 \2,100)の発売を控えている『ナイアガラ・トライアングルVol.1』。

 この『ナイアガラ・トライアングルVol.1』というアルバムは、今からちょうど30年前の1976年に、元はっぴいえんどで自らのナイアガラ・レーベルもすでに主宰していた大滝詠一と、ごまのはえ・ココナツバンクというグループにて活動していた伊藤銀次(今ではウルフルズのプロデューサーとしての方が有名かもしれませんね)、そしてシュガー・ベイブにてすでにデビューしていた山下達郎の3人が、それぞれ曲を持ち寄り完成させたアルバム。(大滝詠一さん曰く、“『ナイアガラ・トライアングル』というのはグループ名なんだよ”とのこと。)

 若き3人の個性と創造性が結実した名作ではありますが、今までの一般的な評価は『ロング・バケイション』や山下達郎『フォー・ユー』などに比べると、段違いに低い、というか一般的に知られていなさすぎの作品ですよね。
 まあこの30周年記念盤の再発をきっかけに、より多くの人にこのノーテンキな音頭も聴いてもらいたいな、と(笑)。

 元ブルース・クリエイションというバンドに在籍し、ソロでは大滝プロデュースにて73年に『悲しき夏バテ』を発表した布谷文夫が“新民謡歌手”としてヴォーカルをとるこの「ナイアガラ音頭」。
♪今日も元気だ〜ゴハンがうまい! 〜 ナイアガラ音頭で踊りゃんせ! かったいこと言わずに踊りゃんせ♪
 音頭に興味のない方でもこのフレーズは一度聴いたら、おそらく一生忘れないことでしょう。そういう意味でも音頭に市民権を持たせた名曲と断言したい1曲。

 先日の布谷文夫さんのライヴで、布谷さんはこの曲をアカペラで披露。録音当時のメンバー(上原裕、田中章弘)も一緒だったので、演奏付きでやって欲しかったなあ、というのが本音ではありますが、30年越しのナイアガラ音頭を生で聴けたのは嬉しかったです。

 ちなみに今回の30周年記念盤に、「あなたが唄うナイアガラ音頭」(カラオケ)がボーナス・トラックとして収録予定になっております。森 陽馬

2006年3月12日(日) ドリス・デイ 「センチメンタル・ジャーニー」

 ドリス・デイ、というと、マリリン・モンローなどと並ぶ1950年代の映画女優の大御所、という印象が強いのですが、いい歌をたくさん歌っていて、特にこのCD(『ゴールデン・ガール』 SICP-5011〜2 \2,940)は僕の愛聴盤でもあります。

 1944年から66年までコロンビア・レーベルに残した名曲を集めた2枚組CDのコンピで、古き良きアメリカのスタンダード・ナンバーがたっぷり全48曲収録。

 2枚目のディスクの後半はガラリと雰囲気の変わったガール・ポップスものが収録されていて、60'sガール・ポップスお好きな方ならそちらの方がゴキゲンかもしれませんが、僕は断然1940〜50年代に録音された上品なオーケストラをバックに唄うドリス・デイの方が好み。

 特に当時大ヒットしたという「センチメンタル・ジャーニー」は、昼夜問わず何時聴いても心和ませてくれる郷愁のナンバー。
 レス・ブラウン楽団の上品かつロマンチックなオーケストラのイントロが長々と続き、まだ歌が出てこないの?と思ったところにドリス・デイの穏やかながら艶かしい歌声が出てくる瞬間がたまりません。森 陽馬

2006年3月13日(月) エレファントカシマシ 「かけだす男」

 先日10日にこのコーナーにて、キャプテン・ストライダムを紹介した際に引き合いに出したエレファントカシマシがどうしても聴きたくなって、今日はこのアルバムをずっと聴いていました。

 1988年EPICソニーからメジャー・デビューしアルバムもコンスタントに発表するも94年に契約打ち切り。心機一転ポニー・キャニオンから96年発表したアルバム『ココロに花を』(BFCA-75501 \2,860)。

 粗野で武骨で不器用なんだけれども、嘘偽り無いあくまでも真正直な宮本浩次の歌声が深くココロに突き刺さる1枚。これはホント名盤ですよね。

 エレカシというと怒りや苛立ちを吐き出すような歌詞を連想してしまいますが、このアルバムは全体的に露骨なラヴ・ソングが中心。でも実際、当時宮本浩次は恋人と別居していたそうで、その正直な気持ちが歌に宿ったのでしょう。

 2曲目に収録されている「悲しみの果て」がシングルで発売され、これも素晴らしい1曲なのですが、これに続く3曲目「かけだす男」は、演奏の疾走感と一見ベタだが宮本の口から発せられると説得力を持つ歌がクソかっこいい1曲。

 エレカシは今度3月29日に新作アルバム『町を見下ろす丘』(TOCT-25987 \3,059)をリリース予定で、これに伴うツアーも決定していましたが、ドラマーの冨永義之が慢性硬膜下血腫・緊急手術となり、3・4月公演予定は中止になってしまった模様。ただ術後は安定しているそうなので、再び“突っ走る”エレカシを見れることを期待しております。森 陽馬

2006年3月14日(火)遠藤 賢司 「やっぱりあなたの歌じゃなきゃ」

 3月15日新譜が色々と入荷。
 主なものとしては、サザンDVD BOX、アジアン・カンフージェネレーション新作、ohana(永積タカシ&原田郁子&オオヤユウスケのユニット)、高橋幸宏さん久々の新作、ベン・ハーパー新作(セキュアCD)、スージー・クアトロ15年振り新作、トレイシー・ウルマン、レイチェル・スイートなどの紙ジャケ、仲間由紀恵withダウンローズなどなど。(明日にはストーンズの紙ジャケが入荷予定)

 そんな中でもこのエンケンの新作にはグッときましたね〜。
 まさに“不滅な男”健在の新作アルバム『にゃあ』(MDCL-1472 \3,150)。

 特に2曲目「やっぱりあなたの歌じゃなきゃ」は、エレキギターに鈴木茂、ドラムに上原裕、ベースに湯川トーベン、と豪華バック陣を従えた楽曲で、曲調もモロにニール・ヤング節!
 
 鈴木茂がニール・ヤングを意識したかのような(?)ギター・ソロをガンガン弾いていて、上原さんのドラム&トーベンさんのベースも重低音がドンドン響き、ファン感涙のナンバーですね。

 「ビートルズをぶっとばせ!」(7曲目)、「宇宙を叩け」(1曲目)や、「ド素人はスッコンデロォ!」(10曲目)なんて曲名の歌も入っていて、こんな歌を歌ってサマになるのは日本ではエンケンぐらいだよなあーと素直に納得。

 ちなみに中のブックレットもニール・ヤング・ネタでした。森 陽馬

2006年3月15日(水) Rolling Stones 「Mother's Little Helper」

 ストーンズは好きなのだが、「コア・ファンでなくてよかった・・・」と思う今日この頃。

 ストーンズ来日公演はさいたまスーパーアリーナでの追加公演も決定。しかしながらそのチケット代金は、S席35,000円! ゴールデン・サークル席(アリーナの前の方)にいたっては65,000円という度肝を抜かれる値段!
 まあ、観に行ったら観に行ったで絶対に楽しいはずなんだけれども、前回のツアーを武道館で見てしまった自分にとっては、武道館よりも一体感が生まれにくいさいたまスーパーアリーナの公演を冷めた目で観てしまいそうで・・・。やはり今回は自重か。

 それに加えて本日発売の紙ジャケ22タイトル。
 一足先に東芝から発売された『スティッキー・フィンガー』(ジッパー付)などのでかジャケ8タイトル加えたら、合計10万円近くになってしまうというから・・・、いやはや。(ユニバーサルからの紙ジャケもいつもは2,100円前後なのに、今回は1枚ものでも2,548円とちょい高めですね。)

 このアルバム『Through The Past Darkly: Big Hits Vol.2』(UICY-93028 \2,548)は、UKオリジナルの八角形にカットされた変形ジャケットを再現。
 しかーし、中身はUS盤の曲目(UK盤とUS盤では当時収録曲が違っていた)のため、よって、オリジナルにこだわった紙ジャケのはずが、ジャケットに書いてある曲目とは違う曲が収録されている、という謎の再発CDになってしまいました。

 まあ、マニアからすればブーイングなんだろうが、収録曲は僕の好きな曲ばかりなので、このアルバムは純粋に好きです、ハイ。
 特にこの「マザーズ・リトル・ヘルパー」。
 “母がドラッグをやっている”といった内容のかなりヤバい歌詞だが、ブライアン・ジョーンズのシタールがその危険な雰囲気を醸し出していて、3分未満の短い曲ながら60年代のストーンズらしいロックなナンバー。さすがにこの曲は今回の来日公演ではやらないかな。森 陽馬

2006年3月16日(木) Lambert and Nuttyecombe 「Waikiki」

 シンガー・ソングライター好きを自認・公言しているくせに、このアルバムは今まで聴いたことがありませんでした。勉強不足でスミマセン・・・。
 長門芳郎氏が監修している“名盤の殿堂シリーズ”の中の1枚ですが、本当にこのシリーズは、詳細な解説・歌詞・対訳付き、そして紙ジャケにも関わらず値段も安くて素晴らしい復刻プロジェクトですね。

 カリフォルニア出身のシンガー・ソングライター、デニス・ランバートと、クレイグ・ナッティカムの二人によるランバート&ナッティカムが73年に発表した2ndアルバム『As You Will』が、その“名盤の殿堂シリーズ”で世界初CD化。(UICY-93010 \2,141)

 ホルヘ・カルデロン、ワディ・ワクテル、リンジー・バッキンガム等渋いメンツがバックを固め、プロデュースはミレニウムやフリートウッドマックを手掛けたキース・オルセンが担当。全体的にフォーキーな楽曲ながらも、所々にペダル・スティールの響きや味わい深い演奏が加味され、まさに70'sソングライター・ファン直球ど真ん中の1枚と言えるでしょう。

 その中にあって4曲目に収録されているこの「ワイキキ」。
 これもタイトルから昼下がりの午後に聴くにはちょうどいい心地良い1曲・・・と思いきや、序盤こそゆったりしたテンポの中ペダル・スティールの響きがイイなあ〜と思っていると、突然中盤からストリング・セクションが入ってきて、ガラッと変わった雰囲気になる不思議なデニス・ランバート作による1曲。

 ライナーノーツを読んで初めて知ったのですが、デニス・ランバートは98年に自殺してしまったようで、そんな意味でも様々な物事の表と裏、光と影を表しているように感じられてくるナンバー。歌詞も決して明るいものではありません。(このアルバムのインナーの写真も含め、ある意味深い作品なのかもしれませんね)

 ちなみに、この曲のストリングス・セクションの中の1人として、クレイグ・ナッティカムのお父さんも参加しているそうです。森 陽馬

2006年3月17日(金) Donald Fagen 「H Gang」

 スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲン 13年振りとなるソロ・アルバム『Morph The Cat』が輸入盤で入荷。

 国内盤(WPCR-12246 \2,580)はもともと3月8日発売予定が、一旦18日に延期になり、再度延期で3月29日発売予定。まあ色々と事情はあるんだろうけれど、輸入盤より2週間遅れっていうのはちょっと売る側としてはツライなあ。解説省いてもいいから、歌詞・対訳付けてもう少し早く安く出してくれた方が買う側も売る側もうれしいんですけどね。

 まあとにかく、この新作、音の方はもう予想通りというか期待通りの出来で、改めて“変わらないことの素晴らしさ”を実感。

 93年発表の前作『KAMAKIRIAD』はスティーリー・ダンの盟友ウォルター・ベッカーがプロデュースだったのですが、今作ではそのウォルター・ベッカーは全く参加しておらず、ドナルド・フェイゲン自らがプロデュースを担当。
 フェイゲン自身の母の死や9.11事件に影響され、アルバム全体のテーマとして“終焉”・“死”がコンセプトとなっているようです。

 まったくでしゃばらないバックの演奏と調和を保ったギターやサックスのソロなど、まさに円熟味を更に増したドナルド・フェイゲンらしいサウンド作りの1枚。彼は現在58歳とのことなので、また13年後・・・とかではなく是非70歳までにもう1枚こういう素晴らしい作品を出して欲しいものだ。森 陽馬

2006年3月18日(土)Nicole Willis & The Soul Investgators「Feeling Free」

 流行りのHIP HOPやら、ここ最近のR&B(この場合、“リズム・アンド・ブルース”と読むのではなく、“アール・アンド・ビー”と読む)に飽き飽きしている方に、是非聴いてもらいたいこの1枚。

 1990年代前半、カーティス・メイフィールドのトリビュート作品などに参加して、晩年のカーティス本人ともコラボレートしていたアシッド・ジャズ系のグループ、リパーカッションズの女性ヴォーカリストであったニコル・ウィリスが、フィンランドのファンク・グループ“ソウル・インヴェスティゲイターズ”を従え録音した、まさに“こういうソウルを聴きたかったんだ!”と実感させてくれる快心の1作。(『Keep Reaching Up』 PCD-23750 \2,415)

 この曲を初めて聴いた人は誰しも、「これっていつ頃の曲?70年代前半?」と思うでしょうが、これは正真正銘!現代の新録音ディープ・ソウル!なのです。(特にこの曲はカーティス・メイフィールドのアノ曲そっくり!)

 他にもモータウン的なリズムの曲や、アレサ・フランクリン、もしくはマーヴァ・ウィットニーを意識したかのような豪快なシャウトを聴かせるファンク・ナンバーまで、とにかく全編最高!

 「現在の録音技術では同じ演奏でも60〜70's当時のような雰囲気が出ない」という声も聞きますが、このアルバムは、その古き良き昔のぬくもりも、更に現代の新しさをも感じさせてくる素晴らしいソウル・アルバムに仕上がっています。

 ソウル好きを自認する方は是非! 森 陽馬

通販コーナーにも掲載いたしました。

2006年3月19日(日)ナイアガラ・トライアングル「ココナツ・ホリデイ '76」

 ナイアガラ・トライアングル Vol.1 30thCDが遂に明日20日(月)入荷。

 30周年盤発売を記念して当店では、特製リーフレットを作成したのですが本日やっと完成。内容はこの『ナイアガラ・トライアングル』発売当時の1976年に1回きり行われた『ナイアガラ・トライアングル発売記念コンサート』の模様を当店店長・森 勉が紙上レポートしたものになります。まあ、この記念盤を聴きつつ、そのライヴの情景を頭に描いていただければ幸いです。

 ということで、今日の1曲はその『ナイアガラ・トライアングルVol.1』より、伊藤銀次作のインスト(?)・ナンバー。
 95年に再発された\1,529盤の『ナイアガラ・トライングルVol.1』では、この「ココナツ・ホリデイ'76」は、エンディングがフェイドアウトされ5分9秒収録のヴァージョンでしたが、今回はちゃんと7分14秒フルで収録。

 さらにボーナス・トラックとして最後の16曲目に「ココナツ・ホリデイ3日目」というトラックが収録されており、これは、この「ココナツ・ホリデイ'76」のバックで怪人・布谷文夫が“アミーゴアミーゴ〜”などと叫んでいる“声”のみを収録したトラック。(ちょっとこれは店頭BGMとしては向かないなあ・・・)

 ココナツ・バンクが2003年に発表したミニ・アルバムに「ココナツ・ホリデイ2003」というのが収録されましたが、今年あたりにフル・アルバム出して、布谷さんに“アミーゴアミーゴ”とまた叫んでもらって、「ココナツ・ホリデイ2006」なんてのも出してほしいものです。森 陽馬

2006年3月20日(月) クラシックス・フォー 「ザ・コミック」

 昨日のこのコーナーにて、当店特典リーフレットの話題にふれた際に『ナイアガラ・トライアングル』発売当時の1976年に1回きり行われた『ナイアガラ・トライアングル発売記念コンサート』の話が出ましたが、そのコンサートで山下達郎がカヴァーしていたのが、このクラシックス・フォーの「ザ・コミック」。

 クラシックス・フォーは、1960年代後半よりアトランタを中心に活動していた白人ポップ・グループで、切ないメロディーとデニス・ヨーストの哀愁漂うヴォーカルが魅力のひとつ。

 一般的には「Spooky」、「Traces」、「Stoomy」などが有名曲で、この今日のこの1曲「The Comic」はある意味それらの曲と比べると渋いナンバーなのですが、今のようにほとんど情報や音源も出回っていない30年前当時に、山下達郎が「Traces」などではなく、この曲を選んでカヴァーしていたという事実は、ある意味すごいなあ、と。

 現在クラシックス・フォーの編集盤は何種類か発売されていますが、代表曲と更にこの「The Comic」が収録されており、全20曲も入ってお得な1,200円(!)というこのベスト盤(TOCP-53379 \1,200)は特にオススメ。

 今日店頭でかけていたら売れてしまって品切れしてしまいましたが、今週末にまた入荷いたしますので、ナイアガラ・ファン、山下達郎ファンの方も是非一聴を。森 陽馬

2006年3月21日(火) Boston Horns feat Sam Kininger 「Pink」

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、王JAPAN世界一 おめでとうございます。

 いつもなら土・日・祭日だと大混雑の武蔵小山商店街も、祝日の昼間にも関わらず、あんまり人が歩いていなくて、関心の高さを感じましたね。集配に来た宅急便の人も、「いつもなら祝日の昼間だと配達に行っても家に人がいない場合が多いのに、今日はほとんどの家に人がいて配達がスムーズだ」と話していました。

 色々と問題も取りざたされた大会でしたが、どの試合も選手が活き活きとした目をして試合に取り組んでいて、やっている方も見ている方もまるで高校野球の時のような純粋な気持ちになれたのが今回の大会の一番の収穫であったのかな、と。余談ですが、僕はMVPを“メキシコ”にあげたいですね(笑)。

 さて、野球ネタだったので野球ジャケ・・・というわけではないのですが、本日入荷した新譜で野球ジャケのがあったので、ちょうどWBCでは8〜9回の攻防だったと思われる時間帯に店でかけていた1枚をご紹介。

 ボストン・ホーンズはヘヴィー・メタル・ホーンズというファンク・グループに在籍していたギャレット・サヴルクとヘンリー・ダグラス・ジュニアの2人が中心となって結成した6人組ジャズ・ファンク・バンド。
 全編ブラスがリードで引っ張るハイ・テンポなファンキー・ナンバーで、ブラス・ファンク好きの方なら間違いなし!の1枚。(PVCP-8241 \2,447)

 この3曲目に収録されているナンバー「Pink」には、ソウライヴにも加入していた名サックス奏者サム・キニンジャーも参加。かっこいい高速ファンクを聴かせてくれます。森 陽馬

2006年3月22日(水) The Four King Cousins 「Love So Fine」

 桜の開花宣言も出されて、やっとこういうソフト・ロック/ポップ/コーラスものが似合う季節になってきました。

 フォー・キング・カズンズはアメリカABCテレビの番組『キング・ファミリー・ショー』から出てきた従妹4人組グループで、1969年に発表されたソフト・ロックの名盤アルバムとされるこのアルバムがめでたく紙ジャケ&デジタル・リマスターで再CD化。(TOCJ-66316 \2,500)

 まあ“ソフト・ロックの名盤”といっても一般的にはほとんど知られていないでしょうが、あまりオールディーズやソフト・ロックに詳しくない方が“ジャケ買い”しても充分に満足してもらえそうな内容、そして素晴らしい選曲の1枚で、一部を挙げると、ビーチ・ボーイズ「God Only Knows」、バート・バカラック「Walk On By」、ビートルズ「Here There And Everywhere」などなど。
 
 その中でも特に好きなのが、やっぱりロジャ・ニコ作(ロジャー・ニコルス)の「Love So Fine」と「I Fell」。
 今作のためにポール・ウィリアムス&ロジャ・ニコがわざわざ書き下ろした「I Fell」ももちろんイイ曲で、ちょっぴり切ないメロディー展開がいかにもロジャ・ニコらしい曲ではあるのでちょっと迷ったが、やっぱり「Love So Fine」の方が馴染み深いので、こちらを今日の1曲としました。

 心弾むテンポのゴキゲンな1曲で、やっぱりロジャ・ニコの曲はかわいい女の子が歌うにかぎるな、と実感。同じくソフト・ロックの人気グループ、カーニヴァルもカヴァーしてますね。

 国内盤ライナー・ノーツは、土橋一夫氏がしっかりとした詳細な解説を書いているので、いつもは買うのをためらう東芝のちょっと高めな値段設定も気にならない1枚です。森 陽馬

2006年3月23日(木) 寺尾 紗穂 「反骨の人」

 当店大推薦!の新世代女性シンガー・ソングライター、寺尾紗穂のソロ・デビュー・ミニ・アルバム(VCCM-2018 \2,000)が本日入荷。

 “声は大貫妙子、歌い方が吉田美奈子、ピアノは矢野顕子”
 “和製ジョニ・ミッチェル”
というありえないような形容詞がピッタリくる奇跡のような女性シンガー。

 それもそのはず? 彼女は、山下達郎・大貫妙子が在籍していた名バンド、シュガーベイブのベーシストであった寺尾次郎の娘さん、というから血というものは不思議なものです。(ちなみに大貫妙子さんの子供、というわけではありません。)

 ただ単に声が大貫さんに似ている、というわけではなく、“唄”にも一本芯が通っていて、それはまさにこのアルバムのタイトル『愛し、日々』(こう書いて、“かなし、日々”と読ませます)に集約されているといっても過言ではないでしょう。

 アルバムは全体的にピアノの弾き語りを中心に、チェロ、ヴァイオリンの奏が隠し味的に添えられているだけで、非常にシンプルな作りですが、それがかえって彼女の透き通るような歌声と感性あるピアノを引き立たせています。
 アルバムの最後に収録されているこの「反骨の人」には、唯一ドラムがフィーチャーされていますが、それもちょうどいい塩梅で、曲全体の雰囲気も引き締まった感じの仕上がり。

 ここ最近は、各メーカーから新しい女性シンガー・ソングライターが多数デビューしていますが、その中でも彼女の感性は突出している印象。ちょっと大袈裟な表現かもしれませんが、まだ24歳というこの若き女性シンガーに日本音楽界の未来を託すつもりで応援し続けていきたいと思っています。森 陽馬

2006年3月24日(金) ロニー・スペクター 「Ode To L.A.」

 「Be My Baby」などでお馴染みの60's名ガール・グループ、ロネッツのリード・ヴォーカリストであり、名プロデューサーであるフィル・スペクターの元奥さんでもあったロニー・スペクターが、なんと約19年振りとなる新作を発売。(VICP-63339 \2,520)

 タイトルがなにやら意味深で『ロック・スターの最期』。
ゲストにキース・リチャーズ、パティ・スミス、故ジョーイ・ラモーンが参加。

 聴く前は正直言って、「期待してないわけではないんだけれど、ちょっと聴くのが怖い・・・」というような心境でしたが、いざフタを開けてると思いのほか良くてビックリ?! なかなかの力作に仕上がっていたのでした。

 特に2曲目の「Ode To L.A.」。
 「これフィル・スペクター・プロデュースの曲です」って言われてもわからないくらい雰囲気が“フィル・スペクターしている”ナンバーで、もうこの1曲だけでも買い!と断言できる好トラック。

 調べてみたらこの曲は、Sune Rose Wagnerという人が書いているのですが、この人はThe Raveonettes(レヴォネッツと読むらしい)というグループに在籍している人で、このグループ自体は、“デンマークのジーザス&メリーチェーン”と呼ばれるくらいノイズ・ギター&轟音ギターに徹しているバンドらしい。(未聴です。勉強不足でスミマセン)

 そんな轟音ギターかき鳴らすようなバンドがこういう超ポップなメロディーの曲を書くのも面白いが、もともとこの「Ode To L.A.」も自分達名義(レヴォネッツ)で歌っていて、その作品にロニー・スペクターも参加していたことがあったようです。

 もう60歳近いロニーではありますが、そういうミュージシャンとコラボレートしているかぎり、『ロック・スターの最期』ということはまだまだ当分なさそうですね。森 陽馬

2006年3月25日(土) スピッツ 「チェリー」

 以前の旧店舗では、店の目の前に桜の木があったので、桜開花を身近に感じることができたのですが、今年は開花宣言もまだピンとこない印象。

 桜が咲き始めると華やかな反面、店舗入り口ドアから桜の花びらが四六時中風にあおられ入ってきて、一日に何度もはき掃除をしなければならず煩わしさを感じることもしばしばありましたが、今になってみるとそれも情緒あるいい思い出です。

ここ最近は‘さくら’と名がつくタイトルの曲が乱立し、楽曲の良し悪しはともかく、やや食傷気味の感もありますが、スピッツのこの曲はいつ何時聴いても、軽くもなく重たくもなく、純粋にいいなあ、と思える1曲。

  1996年にシングル発売、アルバム「インディゴ地平線」に収録されているスピッツの人気曲。
この度、スピッツのシングルを集めたベスト盤が2種、前期と後期に分かれて発売され、この「チェリー」は、前期の方(『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』 UPCH-9231 \2,800)に収録。

 リマスターされたせいか、全体的にひとつひとつの音がクリアになった感じで、以前とはまた違った新鮮な印象を受けました。

 まあこれは余談ですが、今回のシングルベスト盤を聴いて思ったのは、スピッツのイイ曲は必ずしもシングル曲とは限らず、各オリジナル・アルバムの中にこっそりと色々入っているんだよなー、ということ。スピッツはベスト盤しか持っていない、という方は是非各アルバムも聴いてみてくださいね。(ちなみにベスト盤初回限定には、ボーナスCDが付いています。)森 陽馬

2006年3月26日(日) Tower Of Power 「Simple As That」

 この曲が収録された『Dinosaur Tracks』(RHM2-7703 \3,480)は、1999年に出ていましたが通販オンリーというライノ・ハンドメイド・シリーズでの流通のため、聴くことが難しい曲でした。

 最近、運よくこのCDが入荷し、店でしょっちゅうかけています。
 アルバムには1980年から1983年までワーナー在籍時に録音されたのに、未発表のままになっていた14曲が収められています。

 この「シンプル・アズ・ザット」は、メンバーの中心でもあるテナー・サックスのエミリオ・カスティロとバリトン・サックスの“ドク”ことステファン・クパカのバラード作品。

 一般的にはヒューイ・ルイス&ザ・ニュースがアルバム『FORE!』でカヴァーしたヴァージョンが知られています。
 今はなき後楽園球場でのタワー・オブ・パワー・ホーンズをバックにヒューイ・ルイスが歌ったこともありました。熱い夏の日でした。

 この本家のヴァージョンは女性シンガーとマイケル・ジェフリーズとのデュエットのような形で歌われ、途中、彼らならではのホーンのフレーズがとても印象的です。森 勉

2006年3月27日(月)フィッシュマンズfeat 山崎まさよし 「Long Season」

 27日(月)夜、渋谷のレイトショーで、映画『The Long Season Revue 〜 フィッシュマンズ』を鑑賞。

 フィッシュマンズは主に90年代活動していたポップ/ロック・バンドで、浮遊感漂うダブ・レゲエなどのリズムを取り入れた演奏と浮遊感漂う宇宙的ポップ・サウンドが持ち味だったグループ。
 色々とメンバーの加入・脱退などもありましたが、中〜後期は佐藤伸治、茂木欣一、柏原譲が中心となっていました。(佐藤伸治が急逝したため実質的に活動休止になりましたが、茂木欣一はその後スカパラに加入しヴォーカル兼ドラマーとして活躍してますね。)

 この映画は、そのフィッシュマンズが様々なゲスト・ミュージシャン(ハナレグミ、原田郁子、UAなど)を迎え、昨年2005年に行われた復活ツアーの模様と過去の映像をシンクロさせた映像ドキュメンタリー作品。

 実を言うと、僕はあんまりフィッシュマンズは当時聴いていなくて、アルバムも『空中キャンプ』くらいしか持っていなかったのだが、ここ最近のジャム・バンド・ブームなどから比較して、10年くらい先んじていたんだな、ということを改めて感じる映画でした。

 特に圧巻なのが、30分以上にも及ぶ「Long Season」。
 浮遊感ある音世界から、茂木欣一(ドラム)とASA-CHANG(パーカッション)による長いソロ、そして本編に戻っていく構成は、ただ単にその音だけでなく演奏者の緊張感も伝わってきて、観ていて全く時間の長さを感じませんでした。意外にも山崎まさよしのヴォーカルもハマっていて、彼の新味も引き出されていた印象。

 ちなみに掲載ジャケットは、先日発売された「Season」の再発DVD付きシングル。(UPCH-5383 \1,260) 「Long Season」の元となった1996年発表シングル曲です。森 陽馬

2006年3月28日(火)Weldon Irvine 「What's Goin' On」〜「I Love You」

 ソウル大名曲、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」は、本当にたくさんのアーティストがカヴァーしていますが、その中でもインストながら、特に好きなのがこのウェルドン・アーヴィンのヴァージョン。

 ウェルドン・アーヴィンは60〜70年代に活動していた黒人キーボード奏者で、有名なところでは1968年頃、ニーナ・シモンの作品にディレクター&キーボードとして参加。ソロでも何作か出しており、この76年発表『Sinbad』は彼がRCAレーベルに属していたときに発表した6thアルバム。

 “HIP HOPのネタにされた・・・”なんて、よく宣伝文句で使われる作品があり、このアルバムもそういう1枚としてDJなどにも人気のある作品ではありますが、是非、純粋なソウル・ジャズ好きの方にこそ聴いてもらいたい1枚でもあります。

 とにかく参加アーティスト&バック・ミュージシャンが豪華で、名フュージョン集団“スタッフ”の面々(コーネル・デュプリー、スティーヴ・ガッド、クリス・パーカー、ゴードン・エドワーズ)から、リチャード・ティー、ランディ・ブレッカーなど全曲聴き応えあるバックの演奏。そしてウェルドン・アーヴィンの独特なエレピのタッチが絶妙!

 ちなみに続く4曲目「I Love You」もまたスゴくいい曲で、ミディアム・メロウなキラー・チューン!
 ドン・ブラックマンという黒人男性がヴォーカルをとっていて、ライナーノーツに書かれているのを引用すると、“マーヴィン・ゲイとジョニー・ブリストルを足したような反則気味の曲”なのです。
 紙ジャケ&リマスターの限定再発ですので、気になった方はお早めに。森 陽馬

2006年3月29日(水)Kenny Vance &The Planotones 「Angel Baby」

 ホワイト・ドゥーワップ好きな方ならもちろん! コーラスもの、ヴォーカルもの、オールディーズ好きな方には是非聴いてもらいたいオススメの1枚。

 ケニー・ヴァンスは1960年代は、ジェイ&ザ・アメリカンズというグループに在籍。その後1975年にソロ1stアルバム『Vance 32』を発表。その後は音楽ディレクターなどの仕事もしつつ、白人コーラス・グループ、“プラノトーンズ”と共に、彼が昔から大好きだったオールディーズ・ナンバーやドゥーワップ曲をカヴァーしながら地道に活動していましたが、昨年末にこんな素敵な新作アルバムをこっそり発表していたのでした。(『Lovers Island』 666932 \2,394)

 ディオン&ベルモンツもカヴァーしているRobert & Johnnyの「We Belong Together」、ドゥーワップBOXにも収録されている「Diamonds And Pearls」など、曲名を知らなくてもどこかで聴いたことがあるイイ曲をシンプルな演奏をバックに素晴らしい歌声&コーラスで聴かせてくれますが、白眉はやはりこの曲「Angel Baby」。

 ロージー&ジ・オリジナルズというガール・グループの1961年発表名曲。ジョン・レノンも大好きだったようで、カヴァーもしてますね。(ちなみに山下達郎さんの名曲「おやすみロージー」の曲名もこのロージーさんから取られています。)

 その「Angel Baby」をケニー・ヴァンスはシンプルながらも郷愁を誘う素晴らしいアレンジでカヴァー。
 大型店などでは現在、ケニー・ヴァンス『Vance 32』の紙ジャケ(RATCD-4260 \2,625)の方をプッシュして陳列しているかもしれませんが、そちらも良いですが、是非この新作も多くの人に聴いてもらいたいですね。森 陽馬

2006年3月30日(木) Jackie Greene 「Supersede」

 まさに“ボブ・ディラン直系!”の新世代シンガー・ソングライター、ジャッキー・グリーンの新作『American Myth』が発売。(輸入盤 Verveforecast 0602498790861)

 2005年発表の前作『SWEET SOMEWHERE BOUND』もしょっぱなのハーモニカの音色からディランを意識させてくれましたが、今作もそんな雰囲気がプンプン匂う作品に仕上がっています。

 特にラスト前13曲目に収録されている「Supersede」。
 もちろん彼のオリジナル曲なのですが、この曲を聴くたびに頭の中で、ディランの「My Back Page」とこの曲がごっちゃになっちゃうくらい聴いたことがあるような節回しのフレーズが連発!
 もうここまでやっちゃってくれるなら許せちゃう、という感じ。(10分弱という曲の長さもそっくり?)

 なおアルバムのプロデュースはロス・ロボスのSteve Berlin。ゲストにはエルヴィス・コステロとの仕事で知られるPete Thomasなどが参加。

 それにしても何故に国内盤は出ないのか?
 ジャック・ジョンソン系ばかり出していないで、ちょっと地味だけれど、こういういいシンガー・ソングライターもどんどん紹介していってもらいたいものです。森 陽馬

2006年3月31日(金) 大貫 妙子 「新しいシャツ」

 J-WAVEで毎週深夜やっていた『NIGHT STORIES(ナイト・ストーリーズ)』、大貫妙子さんのナビゲーターが今月いっぱいで終了してしまった。

 放送が深夜0時半から3時までという時間帯のため時々忘れてしまうこともあったが、大貫さんが担当の水曜日は毎週とても楽しみにしていたので本当に残念だ。

 “つまらないおしゃべりばかりで音楽がほとんどかからない”
 “音楽がかかったとしても、明らかにタイアップによるお決まりのヒットもの” などといったここ最近のFMラジオの悪しき慣習を排除した本当に理想的な“音楽ナビゲーター”番組だった。

 3/29 深夜3時前、番組のラスト。
 たくさんの感謝のFAXやメールを手にし、感極まって泣いてしまう大貫さんのピュアな気持ちが電波を通して伝わってきて、改めて大貫さんの音楽に対する真摯な姿勢と、ラジオから聴こえてくる音楽の素晴らしさ、というものを実感したのでした。

 そんな大貫さんの“歌”の魅力が真に詰まっているのがこの名作ライヴ『ピュア・アコースティック』(TOCT-9690 \3,059)。 フェビアン・レザ・パネのピアノと弦楽器を主体にしたシンプルな構成が、大貫さんの透明感ある歌声をより際立たせています。時を経ても色褪せないピュアな輝きを放つ続ける名盤の1枚。なお、もともとは87年に発売された作品ですが、現行のCDは94年録音の4曲を追加収録した作品となっています。森 陽


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