PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2006月4月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2006年4月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2006年4月1日(土) ブルース・ジョンストン 「ディズニー・ガール」

 1960年代中期からビーチ・ボーイズに加入し、70年代に一時期グループから離れたこともありましたが、現在でも“ビーチ・ボーイズ”のメンバーとして活動し続けているブルース・ジョンストン。
 彼が1977年に発表したソロ・アルバム『歌の贈りもの(原題:Going Public)』が、最新デジタル・リマスター&ボーナス・トラック追加収録&限定紙ジャケットにて再発されました。(MHCP-973 \1,890)

 バニー・マニロウが歌いグラミー賞も受賞した名曲「I Write The Songs」も好きなナンバーですが、やはりブルースと言えば、ベタかもしれませんがこの「ディズニー・ガール」でしょう!

 ビーチ・ボーイズが71年発表に発表した名作『サーフズ・アップ』に収録されていたブルース作の再演ですが、こちらのソロ・アルバムに収録されているヴァージョンは、よりテンポを落としゆったりした雰囲気、浮遊感ある仕上がりになっています。
 どちらのヴァージョンが好きか?と聴かれると迷ってしまいますが、昼下がりの午後にまどろみながら聴くならこちらの方が、まさに夢見心地になれることでしょう。

 ちなみにボーナス・トラックには、アルバム最後に入っていた「パイプライン」(オリジナルはシャンティーズ、サーフ・インスト名曲のカヴァーです)のシングル・ヴァージョンとディスコ・ヴァージョンを追加収録。余談ですがこのブルースの「パイプライン」はビーチ・ボーイズ・ファンには滅法評判が悪くて毛嫌いしている人が多いのですが、改めてこうやって聴くと、そんなに悪くはないと僕は思うのですが・・・。まあアルバム全体の統一性からは外れているかもしれませんが、SOUL/DISCO的な側面から聴くとなかなか良いですよ。森 陽馬

2006年4月2日(日) Montefiori Cocktail 「Comment Te Dire Adieu」

 「Comment Te Dire Adieu」というタイトルだけだとわかりにくいかもしれませんが、この曲はセルジュ・ゲンズブール作、フランソワーズ・アルディが1960年代にヒットさせた邦題「さよならを教えて」という曲。
 フレンチ・ポップス好きでない方でも、おそらくどこかで耳にしたことがあるキュートなナンバーです。

 この名曲をカヴァーしているのが、モンテフィオーリ・カクテルというフェデリコ&フランチェスコ双子兄弟によるユニットで、そんな彼等のベスト盤がイタリアの名レーベル<IRMA(イルマ)・La DOUCE>より先日リリースされました。(IRM-820 2枚組CD \2,499)

 彼等のサウンドは?というと、早い話が“CLUB/LOUNGE MUSIC”になってしまうのかもしれませんが、単なる打ち込みのサウンドとは一味も二味も違っていて、兄弟の演奏するキーボードとサックスの生音が絶妙に配置されており、ハイセンスな音作りはとってもク〜〜ル! (大貫さんのラジオ番組でも「On A Clear Day」という曲がかかりましたね。)

 この曲以外にも、2枚組CDに、ボビー・ヘブ「Sunny」のカヴァーや、Readymade Remix(小西康陽Remix)、須永辰緒Remixなど含め、全30曲+ビデオ・クリップを収録しており、かなりお得な内容。
 例によって、IRMAレーベルらしい凝った作りのジャケット装丁で、この1枚で様々な楽しみ方ができる美味しい作品に仕上がっています。

 ちょっとシャレたイージー・リスニングなんかを探している方にはオススメの1枚ですね。森 陽馬

2006年4月3日(月) Ben Taylor 「Nothing I Can Go」

 2006年になってからもう3ヶ月以上経過してしまっているのに今更・・・の感もありますが、“2005年 私的BEST ALBUM”は文句なくこのアルバムでした。

 ジェイムス・テイラーの息子、ベン・テイラーの2ndアルバム『Another Run Around The Sun』(IRIS 01823)。

 ジェイムス・テイラー&カーリー・サイモンの子供ということで、顔だけでなく、声もお父さんそっくり!
 でもただ単にそれだけではなくて、全曲素晴らしい内容のアルバムで、お父さんのジェイムス・テイラーが2002年に発表した名作『オクトーバー・ロード』(SICP-215 \2,520)と共に、もう何度繰り返し聴いたかわからないくらい、大好きなアルバムになりました。

 とびきり優れた演奏である、とか、力強いメッセージを発している、とか、高尚な詞世界、というわけではないのだけれども、聴くたびに様々な悲喜交々(特別な出来事とかではなくて、日常のそこかしこに転がっている喜びや悲しみ)を実感させてくれ、それが僕の心の奥底に眠っていた何かを刺激してくれるのです。

 モノクロになってしまった思い出、そして、すでに失ってしまった純粋な心を今一度呼び醒ます音楽、というのが、人それぞれにあるはずで、僕にとってはこのアルバムが正にそういう作品なのです。

 あなたの“2005年 この1枚”、“心の1枚”はなんでしたか? 森 陽馬

2006年4月4日(火) Livingston Taylor 「There I'll Be」

 昨日からの流れ、というわけではないのですが、ジェイムス・テイラーの弟にあたるリヴィングストン・テイラーの新作が国内盤で本日発売になったので、ご紹介しましょう。(『There You Are Again』 UCCT-1159 \2,548)

 兄のジェイムス・テイラーと比べると、地味な印象が拭えないイメージもありますが、その歌声は、もう本当に聴き分けが困難なくらいお兄さんにソックリですし、繊細な歌心・メロディーもテイラー・ファミリーならではのやさしい“肌触り”。(あえて“耳障り”ではなく、こう書かせていただきます)

 6年ぶりとなるこの新作は、今までにないようなアプローチのナンバーもありますが、気負うことのないその語りかけるような歌声と音作りは変わらず健在。

 2曲目に収録されているこの曲「There I'll Be」は、ビートルズの「ブラックバード」を弾いていて思いついた曲、とのことですが、ナッシュビルで一度録音したものの、これに兄ジェイムス・テイラーのギターが入ったら・・・、と考え出したら居ても立ってもいられず、兄と共に改めて再録音。更には姉であるケイト・テイラーもコーラスで参加するという、まさにテイラー・ファミリーによる新曲となったそうです。(天辰保文さんのライナー・ノーツ参照)

 それにしても、直輸入盤に解説・歌詞・対訳付き、という仕様ではありますが、よく国内盤で、それもユニバーサル配給で出してくれましたよね。担当者の英断に感謝!
 これからもこういう仕様で全然構わないので、いいものを小ロットでも積極的に国内盤で紹介していって欲しいですね。森 陽馬

2006年4月5日(水) 岡林 信康 「アイ・シャル・ビー・リリースト」

 日本60〜70's反戦フォークの雄、岡林信康の3作品が限定紙ジャケット&デジタル・リマスターでCD化されました。

 中でも73年大晦日に行われたこのライヴ盤『1973PM9:00→1974AM3:00』(MHCL-765 \3,150)は、この度初CD化!
 
 バック・メンツが松本隆(ds)、細野晴臣(b)、矢野誠、鈴木慶一(kb)、伊藤銀次(g)という豪華布陣で、なかなかにタイトな演奏を聴かせます。

 「岡林信康は音的にはどんな感じ?」と聞かれると、この時期の岡林信康は正に“和製ボブ・ディラン”といった雰囲気で、日本フォークを聴かず嫌いの人にも是非聴いてもらいたい3枚です。

 特に10分以上にも及ぶ「ホビット」は鳥肌もの。(この「ホビット」という曲の歌詞はスゴいですねー。日本RAP・HIP HOPの原型、という方もいらっしゃいますが、それも存分に頷ける内容。こんな詞を歌う現代の人はあんまりいないですよねー。)

 ちなみに松本隆さんがはっぴいえんど解散後、ドラムを叩いている作品はあんまりないので、そういう意味でも貴重な音源といえるでしょう。森 陽馬

2006年4月6日(木) ジーン・ピットニー 「ルイジアナ・ママ」 

 もう新聞などの訃報欄でご存知の方も多いかもしれませんが、60年代を代表するアメリカのポップ・シンガー、ジーン・ピットニーが急逝しました。

 まだ65歳。現在、イギリス・ツアーの真っ最中だったそうで、4月4日も公演を行い、次の日5日朝、ホテルで亡くなっているのを発見されたそうです。

 ジーン・ピットニーというと、やはりこの曲!
 本国アメリカではヒットしていませんが、日本ではヒットした「ルイジアナ・ママ」。

 漣健児が日本語訳を担当し、飯田久彦がヒットさせたヴァージョンも有名です。(通販コーナーにも掲載している『漣健児コレクション』にも収録。“from New Orleans”の歌詞部分が何度聴いても“ホニオリン♪”と聴こえるんですよね)

 なお、ジーン・ピットニーは歌だけでなく、作曲家としてもいい作品をたくさん書いていて、この「ルイジアナ・ママ」も彼の自作曲。
 ちなみに、フィル・スペクター・サウンドで有名なクリスタルズの有名曲「He's A Rebel」も彼のペンによる作品です。合掌。森 陽馬

2006年4月7日(金) 寺尾 紗穂 「反骨の人」

 この『愛し、日々』(VCCM-2018 \2,000)という6曲入りのアルバムが出てから、2週間が経ちましたが、いまだに繰り返しよく聴いています。近年珍しいことです。

 基本的にピアノ弾き語り、曲によって最小限のサポート楽器(バンジョー、アコーディオン、ヴァイオリン、チェロ)だけなのに、とても惹かれるものがあるのです。

 6曲全部いいのですが、今日はラストに入っている「反骨の人」。
 
 言葉の選び方も印象的だし、ピアノのハネ方も妙に心を揺さぶってくれる。このアルバムの中で唯一入るドラムスの音も抑制の効いたいいアクセントになっている。

 そしてなんといっても彼女の声、芯の強さを包み込んだ透明感のあるヴォーカルは、最近はとんとお目にかかれなかったものです。
 エンディング近くのピアノ・ソロもいい余韻を残してくれます。

 ライヴで聴いたまだ音源化されていない新曲「ねぇ!彗星」も早くCD化されないかなぁ。森 勉

2006年4月8日(土)Modern Folk Quartet 「This Could Be The Night」

 サントラ・オールディーズの再発を中心に出している良質レーベル、Varese Sarabandeから昨年発売されたMFQのライヴ盤が、VIVIDサウンドから国内盤で発売(VSCD-2122 \2,520)。

 1962年にハワイで結成されたモダン・フォーク・カルテット。
 オリジナル・メンバーは、チップ・ダグラス、ジェリー・イエスター、サイラス・ファーヤー、ヘンリー・ディルツの4人で、彼等の4声コーラスの美しさが魅力です。

 このライヴ盤は、1978年にカリフォルニアはパサディナにある名高い老舗クラブ、アイスハウスで行われた未発表ライヴ集で、人気曲「ドリーム」、「ムーンライト・セレナーデ」、ラヴィン・スプーンフルの名曲「グッド・タイム・ミュージック」などを収録。

 更にボーナス・トラックと称して3曲追加収録されているのですが、その中にこの「This Could Be The Night」が収録。同じ1978年のライヴかどうかはクレジットがないのでわからないのですが、ホーンが入った楽しいアレンジでやっています。

 ハリー・ニルソン作のこの曲は、もともとフィル・スペクターがプロデュースしてシングル発売される予定だったのものの、スペクターの奇行?により発売中止となっていたナンバー。(スペクターBOXなどで聴くことができます)
 山下達郎氏の素晴らしいカヴァーも有名ですね。

 ちなみに何故か、CDケースに記載のクレジット、ブックレットの曲目には、「This Could The Night」となっていて、“Be”が抜けているのですが・・・。単なる誤植? 森 陽馬

2006年4月9日(日)Buckwheat Zydeco 「Why Does Love Got To Be So Bad?」

 2006年2月7日のこのコーナーで取り上げたニューオリンズ救済アルバム『アワ・ニューオリンズ』(WPCR-12241 \2,680)。このアルバムに収録されていたバックウィート・ザディコの音源にいたく感動してしまったので、ベスト盤も店頭に入れました。

 ニューオリンズのフランス系黒人が発祥となっているザディコ音楽。
 アコーディオン奏者としてニューオリンズを拠点に古くから活動しているバックウィート・ザディコですが、エリック・クラプトン(デレク&ドミノス)のこんな曲もカヴァーしています。

 邦題「恋は悲しきもの」。オリジナルはエリック・クラプトンとデュアン・オールマンの火の出るようなギター・バトルが熱いナンバーですが、なんとこのバックウィート・ザディコのカヴァーにも、エリック・クラプトンがギターで参加しているのです。

 曲自体はほぼ完コピですが、オリジナル・ヴァージョンのツイン・ギターになる部分では、バックウィートのアコーディオンとクラプトンのギターがクロスする展開になっていて、クラプトン・マニアの方が聴いても文句なしの仕上がりのはず。

 それにしても今年のニューオリンズ・ジャズ・フェスのメンツは凄いですねー。
 B・スプリングスティーン、B・ディラン、ミーターズ、アラン・トゥーサンwithE・コステロ、ハービー・ハンコック、ポール・サイモン、ロバート・ランドルフ、そしてファッツ・ドミノがいっぺんに見れるフェスなんてそうはないですよねー。公式サイトみたら行きたくなってきてしまった・・・。森 陽馬

2006年4月10日(月) デレク・アンド・ドミノス 「いとしのレイラ」

休みを利用して、映画『トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男』鑑賞。

 トム・ダウドは一般的には知られていませんが、1949年から現代(2002年死去)にいたるまで、数多くの名作(ロック・ソウル・ジャズなどジャンルを問わず)のレコーディングに携わってきた名エンジニアでありプロデューサー。

 要するに表舞台には出てこないけれど、レコード・CDを商品化するためになくてはならない裏方さんのような役割の人で、この映画はそんな彼の仕事にスポットを当て、本人を含め様々なミュージシャンや関係者の証言で構成されたドキュメンタリー映画。

 ホント、ありきたりな感想で申し訳ないが、改めてドム・ダウドの偉大さを知ったと共に、レコーディングにおいてミュージシャンはもちろん、エンジニアの人の重要性というのを思い知らされた映画でありました。

 最近は聴くのをちょっとご無沙汰していたジョン・コルトレーンや、サザン・ロックなんかをまた聴いてみたくなったなあ、というベタな感想と共に、これまたベタではありますが、「レイラ」の曲の深さを「クラプトンもデュアンも譜面なんてなかった」というトムの話や、後半のピアノ中心によるインスト部分に関してのミックスしている映像などにおいてより感じました。

 トムは“魔法・奇跡が起きた”と称してましたが、30年以上の時を経ても色褪せないこの曲を聴くにつれ、まさにそのスタジオで“奇跡”が起きていたんだな、と実感。やっぱりデュアンのスライド・ギターはいいですね。森 陽馬

2006年4月11日(火) 高田渡/高田漣 「銭がなけりゃ」

 昨年(2005年4月)急逝したフォーク・シンガー高田渡と、その息子で今や売れっ子ペダル・スティール・ギター奏者である高田漣が、2003年3月27日NHK-FMの人気音楽番組「Live Beat」用に共演し、公開録音された音源がCDで登場。(HRAD-11 \2,625)

 正直あまり期待してなかった、というか、どうせいつもの調子で・・・と思っていたのですが、息子の漣が途中「今日は調子いいね」(笑)と父の渡さんに話しかける例を出すまでもなく、高田渡のトーク(もちろん歌&ギターも♪)が冴え渡っていて、ホント面白くも感慨深い作品に仕上がっています。

 はっきりいって、CD66分収録中、“歌”・“演奏”の部分よりもMC・おしゃべりの部分の方が多いような気がしないでもないのですが、そのおしゃべりから歌への流れも絶妙でまさに職人芸!といえる1枚。そのユルさ加減に、はたまた漣のユル〜いペダル・スティールが入り、和みの極致と化すライヴはオリジナル盤をだいたい持っているという方でも全編聴きものです。

 ここではあえて書きませんが、公開録音とは思えないような(といっても渡さんのライヴでは日常茶飯事)ことや、CDの一番最初に入っている高田渡のMCも、当時としては笑いのタネだったわけですが、今こうやって聴くとなんだか沁みてきますね。CD帯に記載されている鈴木慶一の解説が泣けます。森 陽馬

2006年4月12日(火)クレイジーキャッツ&YUMING 「Still Crazy For You」

 クレイジーキャッツ結成50周年ということで、新しい編集盤CDのリリースや、昔の映画のDVD化などクレイジー関連のリリースが色々とありましたが、そういう企画の中でもこれはファンにとっては本当に嬉しい盤が発売になりました。(TOCT-4982 \1,500 初回盤DVD付)

 一応、クレイジー・キャッツ名義では20年ぶりとなる新曲。

 松任谷由実が作詞・作曲を担当し、歌は谷啓さんとユーミンがデュエットしているのですが、そのバックで、植木 等さんが台詞で参加。
 そして、犬塚 弘(B)、桜井センリ(P)の演奏に、更に、今は亡き、ハナ肇(Dr)、安田 伸(Sax)、石橋エータロー(P)の演奏をライヴ音源からサンプリングして重ねることによって、往年のクレイジーのメンバーがこの1曲の中で共演するという粋な作品に仕上がっています!

 曲自体もゆったりした雰囲気ある大人なラヴ・デュエット・ソングで、ちょっと不安定で朴訥だけれども味わいある谷啓さんのヴォーカルが沁みますね。

 初回盤に付いているDVD映像(プロモーション・ビデオとレコーディング風景)も見モノです。(もちろん合成ですが、ジャケットもイイですね♪) 森 陽馬

2006年4月13日(木) HY 「森」

 沖縄出身のグループ、HY、4thアルバムが発売。
 (『Confidence』 HYCK-10004 \2,300)

 初期の頃は“沖縄のレッチリ”なんて表現していたのですが、どんどんポップ色が強くなっていって、今作ではもう沖縄色だとか、ミクスチャー的な要素はほとんど影を潜めてしまった感じ。
 (ちなみにプロデュースは、ユニコーンやスピッツ、チューブなどのプロデュースを手掛けたことでも有名な笹路正徳。)

 HYのポップな曲は好きではあるのですが、アルバム全体から考えるともうちょっとロック色あるナンバーも聴きたかったな、というのが率直な感想。

 まあでも、ある意味、どれもイイ曲、とも言えるアルバムかもしれませんね。その中でも曲名からついつい最初に聴いてしまったのがこの曲。

 “HY節定番のラブ・ソング”といえるポップでやさしいメロディーのナンバー。中間にアコースティック・ギターのソロが入るのですが、それが結構いい音色していて、クレジットには書いてないのですが少し気になりました。森 陽馬

2006年4月14日(金) Ronnie Foster 「Superwoman」

 東芝から出ている紙ジャケはどのタイトルも高くて、欲しいタイトルのものでも値段を見ると購買意欲が失せてしまったりするのですが、同じ東芝から出ているものでも、ここ数年の間発売されているブルー・ノートの1,500円シリーズは安いのでとても重宝しています。

 特に現在、“ブルーノート1,500円シリーズ 3枚買ってもう1枚!”というセールがあり、CDに貼ってあるステッカーを3枚集めて応募するともう1枚CDがもらえる超お得なキャンペーン(切手代350円分は必要ですが)をやっているので、僕もこの機会に持ってなかったジャズの定番アイテムを揃えているところ。

 その中でこれは今まで聴いたことがなかった1枚でしたが、買って聴いてみたらとても良かったのでご紹介。

 ロニー・フォスターは、名キーボード奏者として、スティーヴィー・ワンダー、ジョージ・ベンソンなどの作品に参加し、現在はプロデューサーとしても活躍。その彼がまだ22歳であった1972年に録音した隠れた名作アルバムがこの『Sweet Revival』(TOCJ-6710 \1,500)。

 バーナード・パーディ(dr)、デヴィッド・スピノザ(g)、ジョン・トロペイ(g)などの凄腕ミュージシャンをバックに、ビリー・ポールのソウル・バラード名曲「ミー&ミセス・ジョーンズ」や、オージェイズの曲などを取り上げていて、彼のオルガンの音色がとても気持ちいい1枚。特にスティーヴィー・ワンダーのこの曲「スーパーウーマン」はグルーヴィーでかっこいい出来。

 ちなみにロニー・フォスター自身、スティーヴィー・ワンダーはかなりフェイヴァリットだったようで、彼が74年に発表した次のオリジナル・アルバムでもスティーヴィーの名曲「ゴールデン・レディ」をカヴァーしています。森 陽馬

2006年4月15日(土) アストラッド・ジルベルト 「イン・マイ・ライフ」

 他サイトなどでご覧になってもうご存知の方も多いかもしれませんが、ビートルズの米キャピトル社から当時発売された編集盤をCDで復刻するシリーズの第2弾『Capitol Albums: Vol.2』、回収・交換に関する話題。

 初期にプレスされた盤に封入りされている「Rubber Soul」と「VI」のモノラル・ミックスが、オリジナルのモノ・ミックスではなく、ステレオ・ミックスから作られたもので間違って収録されていることが発売後に判明したようで、海外では回収・交換を始めているそうだ。(記事はこちらこちら

 こういう公のWEB上で不謹慎な発言かもしれないが、ホント、わざとやったのか?と疑いたくなるようなキャピトル側のミスではないだろうか。

 全世界にいるビートルズのマニアは、そういう間違って収録された盤を欲しがることは目に見えているし、かといって、その回収・交換に関しては、必要最低限のアナウンスしかされておらず、大手各店舗でも注意書きなども特になく、公然と売れるだけ売ろう、という姿勢が見え見えで、真摯に“音楽を聴きたい”と思っている我々にとってはまったくもって不愉快な話だ。

 何故か5月31日(輸入盤に国内解説付)と6月28日(国内プレスで、CCCDになるかどうかは未定・・・)とで、2種類発売になる予定になっているこのBOXの国内盤に関しても含めて、謎だらけですね。

 ということで(?)、今日の1曲は、アストラッド・ジルベルトの68年録音のボサノヴァ名作『ウィンディ』(UCCU-9222 \1,500)より、ビートルズの名曲カヴァー。ほぼ完コピで、ボサノヴァというよりも普通のポピュラー・ボーカル的な雰囲気。舌ったらずな英語で歌う彼女のヴォーカルがキュートな1曲です。
 先日、これらボサノヴァの名作群が1デジタル・リマスターされ、更に1,500円という廉価で再発されました。森 陽馬

2006年4月16日(日) アール・クルー 「遠い昔」

 一昨日のこのコーナーで取り上げたブルーノートの1,500円シリーズ。これも“3枚買ってもう1枚”セールにつられて購入した1枚。

 70年代に活躍し今なお健在の名フュージョン・ギタリスト、アール・クルーによる77年録音の大ヒット・アルバム『フィンガーペインティング』(TOCJ-6713 \1,500)。

 オーリアンズの名曲「Dance With Me」の軽やかなカヴァーが収録されていることで有名な1枚ですが、個人的には2曲目に収録されているこのジェイムス・テイラー作「Long Ago And Far Away」(邦題:遠い昔)がお気に入り。

 オリジナルのジェイムス・テイラーのヴァージョンは、71年発表名作『マッド・スライド・スリム』(WPCR-2514 \1,785)に収録されており、ジョニ・ミッチェルの美しいコーラスが印象的なナンバー。
 このアール・クルーによるインスト・ヴァージョンもその清々しくも切ないオリジナルの雰囲気を受け継いだ極上のフュージョン・サウンドに仕上がっています。

 この完成度はアール・クルー本人のギター・テクニックによる部分ももちろん大きいでしょうが、やはりデイヴ・グルーシンによるプロデュース・ワークが柱となっているのかもしれませんね。森 陽馬

2006年4月17日(月) 立川藤志楼 「堀の内」

新宿末広亭・4月中席(11日から20日)に、立川藤志楼こと高田文夫が高座に上がる、というのは前からチェックしていたので、久々に寄席へ。

 藤志楼効果で超満員、という噂は聞いていたので立ち見も覚悟していたのですが、18時過ぎくらいに着いた時には2階席がまだ空いており、座って鑑賞することができました。(中入り前後の19時にはその2階席もすでに満席)
 藤志楼は寄席7日目ということでさすがに疲れてきたのか? もしくはサービス精神旺盛なのか、噺はさておきシークレット・ゲストを次々と高座に呼び寄せました。

 まずは鶴瓶。そして立川談春。次に、松村邦洋。これで終わりかと思いきや更にダンカンまで顔見せ。
 さすがに末広亭は沸いてましたが、これだけでサゲようとした藤志楼を客が許すはずがありません。万雷の拍手を浴びて、しばらく考えた後、「堀の内」という粗忽噺を軽くやり終了。

 初めて寄席に来た方は喜んだかもしれませんが、正直言うと、どうせならゲストなしでその「堀の内」を中途半端なかたちではなく、しっかりとやって欲しかったなあ、というのが本音。(まあ先にも書いた通り、寄席初心者の方のためのサービス、の意味合いもあってのゲストだったのかもしれませんが・・・。)

 ちなみに一番客席を沸かせたのは昇太の新作落語でしたが、寄席に来たなあ、と個人的に一番実感したのは東京ボーイズのユル〜い雰囲気の掛け合いを聞いていた時でした。森 陽馬

2006年4月18日(火)ゴスペラッツ「星空のサーカス〜ナイアガラへ愛を込めて編〜」

 鈴木雅之がラッツ&スターの佐藤善雄&桑野信義、ゴスペラーズのメンバー(村上てつや&酒井雄二)と組んだ、その名も“ゴスペラッツ”が本日入荷。(初回限定盤 ESCL-2612 \3,000)

 懐かしの「ハリケーン」や、井上大輔の未発表作品はもちろん、竹内まりや作品「リンダ」のカヴァーなど、どの曲も聴きものですが、ナイアガラ・ファンにとっての注目はやはり、5曲目「星空のサーカス」でしょう。

 ラッツ&スター時代のカヴァーになりますが、副題に“ナイアガラへ愛を込めて編”とあるようにかなり凝った作りになっており、1979年シャネルズ時代に大瀧詠一がプロデュースした「スパイス・ソング」という曲が織り込まれたナンバーに仕上がっています。
 アレンジは井上鑑、そしてドラムスは林立夫、・・・とくると、録音したスタジオには大瀧さんがいたのではないか?と勘ぐりたくなりますね。

 ちなみにブックレットのクレジット欄にはメンバーの名前の次に、“補佐人”として大瀧詠一さんの名前がちゃんとクレジットされており、CDの帯にも<補佐人 大瀧詠一>の文字が!(具体的に何をやったのかは特に記載されておりませんが・・・)。

 ちなみにこの曲の前、4曲目に収録されている「Interlude 〜 クイズ♪バーボボバー♪物語」は、ドゥーワップ・ファンには是非聴いてほしいトラック。(曲というかトラック、なのです) 単発・企画ではなく是非続けていって欲しいグループですね。森 陽馬

2006年4月19日(水) Neil Young 「Heart Of Gold」

 今日の新聞を見てビックリ! ニール・ヤングが新曲を録音した、というニュースが片隅ながら記事になって載っていたからです。(ちなみに詳しい記事<海外サイト>はこちらこちら

 タイトルは「LIFE WITH WAR」とのことで、ブッシュ政権・戦争を痛烈に批判したプロテスト・ソングになる模様。

 ニールのオフィシャルHPに行くと、トップページの下の方にテロップで、ニール本人のコメントが流れているのですが、この新曲をニール自身、“フィル・オクスやボブ・ディランのメタル版”、“Metal Folk Protest”なんて表現していて、その新作が待ち遠しいかぎり。

 実は、当店で作成しているニール・ヤング新聞の新しい“11号”がもうすぐ完成予定で、それには現在全米公開されているニールの映画(ジョナサン・デミ監督)『Heart Of Gold』やそのサントラ盤の発売(5月発売予定)などについてまとめてみたのですが、もう完全にニールは“次”へ行っちゃってますね!

 ちょうど1年前、脳の病気で入院→手術した人間とは思えない精力的な動き。(病気→手術→父の死→新作『プレーリー・ウインド』→映画『Heart Of Gold』→そして再び新作!)

 ニールの“Heart Of Gold”を探し求める旅はまだまだ続きそうだ。森 陽馬

2006年4月20日(木)Derek Trucks Band 「Sahib Teri Bandi / Maki Mandi」

 現オールマン・ブラザーズ・バンドの若きリード・ギタリスト、デレク・トラックスが、ソロ名義で約4年ぶりにスタジオ録音した作品『SONGLINES』を発表。国内盤が今週入荷になりました。(SICP-1064 \2,520)

 派手さはないものの、彼の今までの作品の中でも一番“味”の染みた1枚に仕上がっていて、まだ数回しか聴き返していませんが、聴くたびに新しい発見や素晴らしさを発見できそうな作品。

 この今日の1曲は、イスラム教神秘主義スーフィズムの宗教音楽カッワーリーの代表的な歌手(この説明はライナーノーツより引用)である故ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの曲を2曲繋げてカヴァーしたナンバーで、「Maki Mandi」の方は、前作でもヌスラットの親族でもあるラハット・ファテ・アリ・ハーンをフィーチャーリングしてやっていたり、ライヴでも演奏していたナンバー。

 先日のピーター・バラカンさんのラジオでこの曲がかかったそうで、今日、それを聴いたという方で購入された方もいらっしゃったのですが、オールマンの音楽性とは違い、デレクのワールド・ミュージック的志向が存分に出た壮大な渋いインスト曲で、パーカッションとデレクのギターの絡みがゆったりしたテンポながら奥深いリズムを生み出している1曲。

 ちなみに補足しておくと、デレク自体は特にイスラム教信者とかではなく、宗教は関係なく、アメリカのゴスペルと同じようなエネルギーを感じたから取り上げたそうで、まだ26歳という若さながら、そういう姿勢で音楽に取り組んでいる彼にはホント尊敬してしまいます。

 なお、国内盤にはボーナス・トラックで、トラディショナル曲「Greensleeves」のブルージーなカヴァーも追加収録。森 陽馬

2006年4月21日(金)Magnolia Electric Company 「The Dark Don't Hide It」

 ニール・ヤングが新作を録音した(それもニール曰く“メタル・フォーク・プロテスト”ソング!)という報を聞いて、俄然個人的にも盛り上がり、その勢いに乗って、ニール・ヤング新聞11号も完成! 店内で自由に取れるようになっておりますので、興味ある方は一読を。

 で、そのニール・ヤング新聞にも掲載したのですが、ニールのフォロワー的なアーティストをこちらでもご紹介。

 オハイオ州出身のジェイソン・モリーナ率いるバンド、マグノリア・エレクトリック・カンパニー。(PCD-23624 \2,415)

 もともとジェイソン・モリーナという人は、ウィル・オールダム主宰のレーベル、パレス・レコードというところから、“SONGS OHIO”名義で作品を発表しており、それはアシッド・フォーク的な地味〜な感じでしたが、このアルバムはまた違った魅力を感じさせる作品に仕上がっていて、特に注目は冒頭のこの曲「The Dark Don't Hide It」!

 最初の一音からしてニール・ファンがのけ反ってしまいそうなくらい“70'sのニール・ヤング&クレイジー・ホース”している豪放なナンバーで、ヴォーカルの危うさもサウンドももろにニールって感じ。
 いや〜〜、これはマジでニール・ファン必聴のナンバーですね。

 他の曲も、アコースティックのニールって雰囲気のナンバーもあったり、女性ヴォーカルのトラッド的な地味な曲もあり、シンガー・ソングライターファンにも楽しめる作品。カヴァーはありませんが、彼等の音楽好きが反映された1枚といえるでしょう。森 陽馬

2006年4月22日(土) デヴィッド・フォアマン 「ワン・ファイン・デイ」

 このCDが人知れず発売になって、もう6年が経ちました。

 デヴィッド・フォアマン。
 ほとんど無名に近いシンガー・ソングライターの唯一のソロ・アルバムで、1976年アリスタから発売されました。(BVCM-37128 \2,000)

 ピアノ弾き語りに少しの楽器が加わる地味な作りのアルバムですが、結構じわじわ沁みてくる曲が多く、時々引っぱり出し、聴いてみたくなってしまうのです。(ジャケットはちょっと怖い感じですが・・・)

 1曲目の「ドリーム・オブ・ア・チャイルド」はブルース・ジョンストンの「アイ・ライト・ザ・ソング」や「ディズニー・ガール」の雰囲気を持った曲で、アメリカン・ノスタルジックを感じさせてくれます。
 この曲を今日の1曲にしようと思ったのですが、やはり発売当時このアルバムを聴くきっかけを作ってくれたキャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作品のカヴァーを選びました。

 オリジナルのシフォンズのヴァージョンとは全く違ったスローなテンポでのカヴァーで、「ワン・ファイン・デイ」の新たな魅力を伝えてくれます。
 ケニー・ヴァンスがバック・コーラスで参加。 森 勉

2006年4月23日(日) Steely Dan 「Kid Charlemagne」

現在、店内入ってすぐの中央コーナーでは“日本のファーク特集”を展開中。

 で、洋楽ロック・コーナー側の中央フェイス・コーナーでは狭いスペースながらも、“このギターソロがイイ!特集”というのをやっていて、この1枚はそこで展開している中の1枚。スティーリー・ダン 76年発表の名作『幻想の摩天楼(原題:The Royal Scam)』(UICY-3025 \2,039)。

 スティーリー・ダンというと、『エイジャ』、『ガウチョ』がクローズアップされることが多いのですが、アルバム全体の流れとかジャケット等の面でいうと、僕的にはこれが彼等の最高傑作です。

 特に1曲目「Kid Charlemagne」で聴けるラリー・カールトンのギター!
 これはもう、彼のアルバムといっても過言ではないくらいの名演で、曲の最後、彼のギター・ソロが続いているのにフェイドアウトしていってしまうのが、なんとも口惜しいですね〜。

 ドラムはおそらくバーナード・パーディ、ベースはチャック・レイニーという超豪華なリズム隊。別テイクなんかもあるんでしょうが、いつか公式で発売されないですかね。

 ちなみに今夏、スティーリーダン(ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカー)とマイケル・マクドナルドが組んで、アメリカ・ツアーすることが決定した模様。(詳細はオフィシャル・サイトのこちら) 果たして日本には来るのか? 森 陽馬

2006年4月24日(月) 井上 陽水 「クレイジー・ラブ」

 映画『かもめ食堂』を鑑賞。

 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、3人が主演している邦画なのですが、全編北欧のフィンランド・ロケという作品で、大らかなストーリー展開ということもあり予想以上に楽しく見れました。
 刺激はほとんどないですが、平和で嫌な人間が1人も出てこなくて、心地良い余韻の残る快作です。

 その余韻をより雰囲気良くしているのが、エンディング・テーマであるこの曲。井上陽水の「クレイジー・ラブ」。

 1980年発表『EVERY NIGHT』(FLCF-3851 \2,200)に収録されていた隠れた名曲で、彼のベスト盤などにも収録されています。(掲載ジャケットは当時のオリジナル・アルバム)

 アレンジは元はっぴいえんどのギタリスト、鈴木茂が担当。ちゃんとクレジットを確認していないのですが、おそらくあの“らしい”ギター・ソロも鈴木茂だと思います。

 何故井上陽水の数ある歌の中から、この曲をエンディング・テーマに選んだのか興味深いところですね。森 陽馬

2006年4月25日(火) Grin 「See What Love Can Do」

 グリンは、ニルス・ロフグレンが在籍していたグループ。

 ニルス・ロフグレンはソロ・アーティストとしても知られていますが、ニール・ヤング・ファンにとっても馴染み深いギタリスト&ミュージシャンで、ニールの代表作『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』や『今宵この夜』などのレコーディングにも参加しています。

 そんな彼がソロ活動&それらのセッションに参加する前、1969〜70年頃に録音し発表したこの作品がCD化。(VSCD-4201 \2,625)

 中古LPは持っている(はず)なのに一度聴いたきり、しまいっぱなしで聴いていなかったのですが、久々にこのCDで聴いたら、思っていたよりかなり良かったのでこちらでもご紹介。

 ニール・ヤング&クレイジーホース(故ダニー・ウィットン&ラルフ・モリーナ)も参加していて、特にこの曲は「あっ!ニールの声!」っていうのがわかるくらいコーラスが入っています。

 ニルスは1952年生まれということですから、この作品を録音したのはまだ17〜18歳だったということですよね。そういう観点からもなかなかよくできている作品だと思いました。森 陽馬

2006年4月26日(水) ママレイド・ラグ 「レイン」

 佐賀出身の男性二人、田中拡邦と江口直樹によるグループ、ママレイド・ラグがオリジナル・アルバムとしては4年ぶりとなる2ndアルバムを発売しました。(AICL-1742 \3,059)

 『喫茶ロック NOW』というコンピに収録され注目されることとなった彼等は、はっぴいえんどのフォロワー、として紹介されることが多いのですが、それはやはりサウンドだけでなく、田中拡邦の歌い方による部分が大きいのでしょう。

 声質は違いますが、この「レイン」という曲などを聴くと、歌い方・歌唱法がモロに大滝詠一のヴォーカルに影響を受けているのが実感できます。

 アルバム全体的に切ないポップ・センスが溢れた1枚で、安心して聴ける作品ですので、スピッツやキリンジなどがお好きな若年層の方はもちろん、30〜40代のシティポップ好きの方にも是非聴いてもらいたいアルバムですね。

 話は変わりますが、8曲目に「菜の花」という曲が収録されており、その曲のイントロがジョージ・ハリスンのアノ曲にソックリ!(というかほとんど同じ?)
 ちなみにその“ジョージ・ハリスンのアノ曲”も発売当時、シフォンズのあの曲に似ているということで訴えられたことがあるので、ママレイド・ラグは大丈夫かな?(なーんて) 森 陽馬

2006年4月27日(木) Jamie Foxx 「Storm (Forecass)」

 映画『Ray/レイ』でアカデミー主演男優賞を受賞した俳優ジェイミー・フォックスが新作CDを発売。

 この人俳優だと思っていたのですが、以前にもCD出していたんですね。恥ずかしながら知りませんでした。(94年に『Peep This』というタイトルの作品を発表。現在は廃盤)

 で、2ndアルバムとなるこの『Umpredictable』(BVCP-24099 \2,200)。
 率直に言うと無難というか、まあ“安心して聴けるここ最近的なR&Bアルバム”、といったところでしょうか。悪くはないのですが、ガツン!と来るような曲は正直言ってあんまりなかったですね。

 でもその中でも気に入った曲は何曲かあって、これはその中の1曲。
 タイトル通り、カミナリや嵐の前触れのようなSEが入っていたり、曲の前後に、天気予報で“storm”を告げるラジオ?の声が入っていたり、と往年のソウル名曲によくあるパターンをちゃんと踏襲したバラード・ナンバー。雰囲気あるセクシーな出来に仕上がっています。

 それにしても、どの曲もエロい歌詞ばかりでビックリ。
 まあこれも昔のスウィート・ソウルのマナーを継いでいる、といってしまえばそれまでですが、11歳になる娘がいる歌手がこういう詞の歌を歌っている、というのがいかにも“黒人音楽”だな、とも思っちゃいました。森 陽

2006年4月28日(金) 江利 チエミ 「I Get A Kick Out Of You」

 戦後、多種多彩な文化が日本に入り、それらがクロスオーヴァーされいい意味でモダンな時代であった昭和30〜40年代の日本音楽界。その中でも今まであまりクローズ・アップされることがなかったスウィング・ジャズの名曲・名演を掘り下げる好企画がキング・レコードより登場。

 江利チエミ、東京キューバンボーイズ、スマイリー小原&スカイライナーズ、白木秀雄の4タイトルが今週発売になりましたが、元シンバルズの土岐麻子(名SAX奏者、土岐英史さんの娘さん)が選曲した江利チエミのこのコンピは、特に素晴らしい1枚でした。(KICS-2468 \2,300)

 江利チエミというと、当時は、“美空ひばり”、“雪村いづみ”と並び“3人娘”と呼ばれていたものの、現在は彼女らに比べると一般的な認知度は低いように感じるのですが、このCDを聴けば、その強烈な存在感あるヴォーカルに圧倒されることでしょう。

 どの曲も聴きものですが、バックの演奏も熱いこのコール・ポーター作を取り上げてみました。
 これが録音されたのが1961年!
 今でこそ海外のアーティストの曲を気軽にCDで聴ける時代ですが、1961年当時にこれだけの演奏、歌唱をほぼ耳コピのみでやっていたというのは本当に凄いな、と。

 今でも歌のうまい“ディーヴァ”と言われるような歌手はたくさんいますが、彼女のような説得力のある歌唱を聴いてしまうと、他のものがとても幼稚に感じられてしまうくらいの衝撃です。ジャケットも良いですね。森 陽馬

2006年4月29日(土) 寺尾 紗穂 「隠れてないで」(新曲)

 寺尾紗穂 レコ発ライヴ@池の上Bobtail。
 店を途中で抜け出して見に行ってまいりました。

 彼女のライヴは初めてでしたが、CDで聴くのとはまた違った、生の息遣いというかピアノのアタックなどが、心地良く胸にジーンとくる感じでとても良かったです。

 今日のこの1曲「隠れてないで」は、CDには入っていない新曲ですが、また新しい魅力を垣間見るようなナンバーでした。ギター、ドラムが入った編成でやったら、より映えそうな曲。今後にも期待です。

 ちなみに今日のライヴは、寺尾さんの他に、ギター弾き語りの女性シンガー、mikeという方(ジョニ・ミッチェルのカヴァーなどもやっていました)と、casaというグループの古賀夕紀子さん(金延幸子やエリス・レジーナのカヴァーもやっていてすごい美声!)のライヴも素晴らしくて、とても感銘を受けました。

 「日本の音楽はダメだ」とか愚痴っているような人は、グチグチこぼしていないで、是非こういう志を持って音楽をやっている人たちのライヴを見に行ってもらいたい、と真に思いましたね。

 なお、寺尾さんの初のワンマン・ライヴが5月21日下北沢のラカーニャあるそうです。気になる方は是非足を運んでみてください。森 陽馬

2006年4月30日(日) オーリアンズ 「ダンシング・イン・ザ・ムーンライト」

 「ダンス・ウィズ・ミー」のヒットで知られるオーリアンズが、なんと9年ぶりとなるオリジナル・ニュー・アルバムを長門芳郎氏主宰のレーベル、ドリームズヴィル・レコードよりリリースしました。(YDCD-122 \2,625)

 全盛期ほどの高音ヴォーカル&コーラス、というわけにはさすがにいきませんが、往年を彷彿とさせる爽やかなメロディーと小気味良い演奏は健在で、ジョン・ホールの復活にも拍手を送りたいですね。

 オリジナル曲の中にももちろんいい曲がありましたが、やはりハイライトはこのナンバーでしょう。キング・ハーヴェストというグループが72年に放った名曲「ダンシング・イン・ザ・ムーンライト」のカヴァー。

 オリジナルよりも若干テンポを落とし、円熟味を感じさせる演奏&コーラスと共に、中間部分ではジョン・ホール自らが叩くスティール・ドラムが隠し味になっていて、ゴキゲンな1曲に仕上がっています。

 何故にこの曲のカヴァーか? というのにはちゃんとワケがあって、元々オーリアンズの前身バンドでボファロンゴ(BOFFALONGO)というグループがいたのですが、そのグループのメンバーであったウェルズ・ケリーの兄、シャーマン・ケリーが書いたこの曲を、ボファロンゴ名義で1970年当時、シングル発売していたことがあるそうなのです。

 結局そのボファロンゴ名義の方はヒットしませんでしたが、ボファロンゴからオーリアンズとキング・ハーヴェストへグループが枝分かれして、その後キング・ハーヴェストのヴァージョンが大ヒット・・・と。
 つまり、オーリアンズ名義としては36年越し?の「ダンシング・イン・ザ・ムーンライト」だった、というわけです。

 そういう意味合いも踏まえつつ、オリジナル・ヴァージョンと共にこの曲を改めて聴くと、感慨もひとしおですね。森 陽馬


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