PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2009月2月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2009年2月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2009年2月1日(日) ラリー・カールトン 「アイム・ア・フール」

 ラリー・カールトンは僕の大好きなギタリストのひとりです。
 1970年代前半、いろいろなアルバムのミュージシャン・クレジットで彼の名前をよく見かけるようになりました。その後、クルセイダーズに参加しそのメンバーとして1974年来日した時は、かなりの興奮度でコンサートを見に行った記憶が残っています。

 この曲が収録されている『Mr.335 ライヴ・イン・ジャパン』(ALT-10004 限定盤 \2,730)は、ソロ名義としては初めての1978年の貴重なライヴ。麻田浩主宰のトムズ・キャビンが主催したこのコンサートは大成功で、客入りもそのお客さんのノリも良く、フュージョン/ジャズ系のライヴとしては珍しい熱気が会場にあふれていました。

 実はこの1978年11月1日、東京・芝の郵便貯金ホールのライヴは実際に観に行ったのです。それも最前列で・・・。もう30年以上前の話ですが、このアルバムを聴いているとカールトンの気持ちよく弾きまくっている姿が脳裏に甦ってきます。

 この曲「アイム・ア・フール」のみ彼のヴォーカルも聴けるのですが、コンパクトにまとまった間奏はスティーリー・ダンでのプレイを思い出させてくれるくらいキレのある演奏です。森 勉

2009年2月2日(月) ナット・キング・コール 「ラヴ」

『ラースと、その彼女』という映画を鑑賞してきました。(リンク先音が出ます)
 
“彼女を紹介するよ、と連れて来たのは等身大のリアルドール(ダッチワイフ)だった”→(主人公ラースが、ビアンカという名前の人形を兄夫婦に紹介するシーンが流れる)
 昨年映画館やテレビで短いながらそんなインパクトのある予告編を観て、これはコメディーなのだろうと勝手に思っていたのですが、実際観てみると意外とシリアスな内容の物語でした。
 
 優しくて内気なラースが人形にいれ込み、突然おかしくなってしまったと心配しながらも彼に話を合わせ優しく接する兄夫婦と街の人々との交流を描いたお話です。映画の中に嫌な人はほとんど存在せず、ラースが何と葛藤しているのか少し曖昧な感じもあったので感情移入しにくい部分もありましたが、話の設定は面白いなと思いました。
 
 個人的には映画の中で流れる素朴でかわいらしい音楽の方が印象に残りました。冬の風景と相まって、寂しい気持ちになったり、あたたかい気持ちになったり...。
 あと劇中でラースがビアンカに向けて歌うナット・キング・コールの「ラヴ」も。映画の最後には本家の方も流れます。ナット・キング・コールを知らずとも聴けば皆知ってるこの大名曲、映画を観終わって頭の中でグルグルと回っていた人もいたのでは。東尾沙紀

★掲載ジャケットは「ラヴ」収録ベスト盤。(TOCJ-66145 \2,500)

2009年2月3日(火)Helm,Hudson & McCoy 「Ace In The Hole」

 ザ・バンドのドラマー、リヴォン・ヘルム。同じくザ・バンドのキーボーディスト、ガース・ハドソン。
 この二人が参加している新作アルバム(2006年録音)ということで、往年のザ・バンド的なサウンドが楽しめるかも・・・と淡い期待を持って聴いてみたら、思いのほか素晴らしい作品でビックリ! アメリカン・ルーツ・サウンドお好きな方なら気に入ること間違いなしの1枚といっていいでしょう。(『エンジェルズ・セレナーデ』 MSIG-544 \2,940)

 特に冒頭1曲目「Ace In The Hole」。もし何も知らないで聴いたらリトル・フィートの未発表曲と勘違いしてしまいそうなほど、トミー・マッコイのスライド・ギターが“ローウェル・ジョージ”していて、独特な曲のノッタリ感もリトル・フィートとザ・バンドを合わせたような雰囲気。(実際7曲目には「Spanish Moon」というリトル・フィートの曲もカヴァーしています。)

 故リック・ダンコを彷彿とさせる楽曲のA「Sentenced To Love」などトミー・マッコイの歌声も味わい深くてNice! ラストにはフライング・ブリトゥ・ブラザーズ「I'm Pour Toy」(グラム・パーソンズ作)のカヴァーも収録されています。森 陽馬

2009年2月4日(水) ネッド・ドヒニー 「Valentine」

 1970年代から活動しているLA出身のシンガー・ソングライター、ネッド・ドヒニー。彼が1973年に発表した名作1stアルバムはずっと生産中止のままで、なかなか再発されず歯がゆい思いをしているのですが、それを紛らかすように最近聴いているのがこのアルバム『Postcards From Hollywood』(PSCR-9180 \2,500)。

 1991年に発表されたアコースティック・ギター弾き語りのアルバムで、収録曲は7曲と少ないながら彼の代表曲「Get It Up For Love (邦題:恋は幻)」「Whatcha Gonna Do For Me?」、「A Love Of Your Own」、1stにも収録されている「Fineline」などをセルフ・カヴァー。
 シンプルなアレンジながら彼の楽曲のメロディーの美しさが引き立っていて、聴いていると落ち着いてやさしい気持ちになれる極上の1枚。切ない彼の歌声もいいですね。

 一応ヴァレンタイン・デーも近いということで、今日のこの1曲は隠れた名曲「ヴァレンタイン」。この曲で歌われている“ヴァレンタイン”は別れてしまった彼女(ヴァレンタイン)の名前で、歌詞は♪戻ってきてくれー・・・♪という寂しいトーチ・ソング。この曲のオリジナルが収録されている『ハード・キャンディ』は来月3月25日に高音質ブルースペックCDで再発される予定になっています。森 陽馬

2009年2月5日(木) マイ・モーニング・ジャケット 「One Big Holiday」

 久々に体中がグゥワー!と熱くなるライヴを観ました! マイ・モーニング・ジャケット日本公演 at渋谷Duo Music Exchange。(蛇足ですが、この会場、客席にぶっとい柱が2本あって後ろに下がってしまうと観にくくなるのであんまり好きじゃない)

 2005年フジロックで初めて観たときも度肝を抜かれましたが今回も凄まじかった。あの小さいライヴ会場にかなり濃いファンが集まっている雰囲気で、外人が多かったのも印象的。(マイモジャもほぼ毎年出演しているボナルー・フェスのTシャツを着ている外人もいた)
 そんなわけで会場の盛り上がりはハンパぢゃなかったのですが、特に凄かったのがラストにやった「One Big Holiday」。このイントロが流れた瞬間はまさに場内が爆発!したような熱気に包まれて、彼らの演奏も神懸ってましたね。
 うるさいとかラウドな音とはまた違った重量感ある音の塊みたいのを、各々のメンバーがステージ上で作り上げて、客席に投げつけている感じ。うーーん、いい表現が浮かばないのですが、とにかく凄かった。

 ちなみにマイモジャ、オーストラリア公演ではニール・ヤングの前座として出演していたそうです。ニールさんも一緒に来てくれればなあー。
 まあでもここ数年でヴォーカル&ギターのジム・ジェームスが映画『アイム・ノット・ゼア』に出演したり(「Goin' To Acapulco」を歌っていたのが彼)と名実共に欧米では大人気になってしまった彼らなので、あんな小さい会場で彼らを観れるのなんて日本くらいかもしれないし大満足の2時間半でした。6日(金)には大阪・心斎橋クワトロ公演もありますので、大阪方面で気になっている方は見ておいた方がいいですよ。森 陽馬

★掲載ジャケットは最近初国内盤化された彼らのライヴ盤『OKONOKOS』(PCD-25089 \2,625)。

★なお別件ですが、当店店長・森 勉が出演する「Pied Piper Days-ようこそ夢街カフェの指定席へ」というイベントが2月7日(土)に有楽町ケンウッドで行なわれる予定です。

2009年2月6日(金) ジョージィ・フェイム 「シッティング・イン・ザ・パーク」

 ナイス・バラード!

 もとはチェス・レーベルから1960年代に多くのヒットを放ったR&Bシンガーであり、ソングライターである巨漢ビリー・スチュアートの1965年のヒット曲です。
 アメリカでは今でもキチンと評価されている人だと思うのですが、日本では全くといっていいほど知られていないのが残念です。ベスト盤くらいは出して欲しいのですが・・・。

 さて、そのビリー・スチュアートの名曲をナイス・カヴァーしているのが、このジョージィ・フェイム。
 おそらくビリーのヴァージョンを聴いて、1965年当時にすぐカヴァーしたものと思われますが、なかなかいい感じに仕上がっています。ジョージィのハスキーな歌声、いつ聴いてもいいですね。森 勉

★掲載ジャケットは、ジョージィ・フェイムのベスト編集盤『20ビート・クラシックス』(限定紙ジャケ 解説・歌詞付 UICY-93344 \2,500)

2009年2月7日(土)Richie Furay Band 「Flying On The Ground Is Wrong」〜「Do I Have To Come Right Out And Say It」〜「Nowadays Clancy Can't Even Sing」

 2月24日発売予定だったニール・ヤングのアーカイヴBOX。やはり延期になったようです。
 10年以上前から延期を繰り返しているのでもう驚きもしませんが、アメリカのamazonにアップされていたページを見ると次の発売予定日がまだ設定されていないのがやや気がかり。まあ早くて6月頃、予想としてはニールの誕生日(11/12)頃が妥当な線かもしれませんね。いやはや。

 さて、そのニールが1960年代活動していたバンド、バッファロー・スプリングフィールドで共に活動していたリッチー・フューレイ。スティルスとニールの陰に隠れた格好であまり話題にのぼることも少ないのですが、彼のハイトーン・ヴォイスは本当にいいですよね。“ポコ”、“サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド”の楽曲も彼がヴォーカルをとっている曲が一番好きだったりします。

 そのリッチー・フューレイの最新ライヴ盤がこれ。(輸入2枚組CD 『ALIVE』 AAARF-2008 \3,150)
 2007年12月にコロラドで行なったライヴ音源ですが、これが選曲&内容ともNICE! 派手さはないものの的確なバックと娘さん?(Jesse Furay Lynch)も従えて聴かせる往年の名曲にウエスト・コースト/カントリー・ロック好きの方なら感涙すること間違いなしでしょう。ポコや彼のソロのナンバーも出来がいいのですが、バッファロー時代のニール・ヤング作を3曲メドレーでやっているこれを今日の1曲に。

 ちなみにこれは残念なニュースですが、バッファロー・スプリングフィールドのドラマーだったデューイ・マーチンが死去したそうです。合掌。森 陽馬

2009年2月8日(日) Stanton Moore 「Snowball」

 もう毎年のこととなってますが、今年の“ボナルーフェス”、かなりヤバイ面子ですね。

 先日マイ・モジャをここで取り上げたときにも書いた“ボナルー・フェス”。補足しておくと、アメリカはテネシー州の奥地(車で数時間かけないと行けないような場所)にて2002年から行なわれている野外フェスティバルで、見に行った方のレポートや写真を拝見すると、真に<現代ヒッピーのためのフェス>といった趣き。フジロックやグラストンベリーとはまた全然違って、アクセスの悪さや天候の不順さはあるもののそれを乗り越えた上での“天国”がこのフェスにはあるようです。

 今年は6月11〜14日にあるそうですが、再結成PHISH、ブルース・スプリングスティーン、と現在アメリカで最も客を呼べるアーティストが肩を並べたことによりチケット争奪戦も凄いことになりそう。
 ウィルコ、E・コステロ、デヴィッド・バーン、アル・グリーン、アラン・トゥーサン、マーズヴォルタ、ナインインチ〜、ベン・ハーパー、ガヴァメントミュール等など、挙げていたらキリがないのですがまだこれから発表になるでしょうし、これで再結成デッドも出演ということになったら、“ウッドストック50周年記念フェス”と銘打ってもいいくらいのメンツですね。まあ今年は無理ですがいつか死ぬまでに一度は行ってみたいものです。

 さて、ニューオリンズのジャム・バンド、ギャラクティクも今年のボナルーにラインナップされていますが、そのドラマーであるスタントン・ムーアのアルバムが先日発売されました。(『Take It To The Street』 BUF-511 \2,400)
 元々教則本&DVD用に録音した音源で、彼のサイトで配信されていた楽曲だそうですが、これがスタンダードなニューオリンズ・ブラス・ファンクが楽しめてなかなか楽しい1枚。最近のギャラクティクはHIP HOP色が強くなりすぎてしまっていたので、かえってこの作品の方が聴きやすくファンキーでいい感じ。ジョージ・ポーターJrのベースやダーティ・ダズンのホーンもバリバリ入っていてかっこいいです。

 今日の1曲や本文とは全然関係ないのですが、
・デレク・トラックス(ギター)
・タル・ウィルケンフェルド(ベース)
・スタントン・ムーア、もしくはニッキー・グラスピー(ドラム)
このスーパーセッションが実現したらどんな音になるんだろう?と、最近個人的に勝手に夢想して楽しんでいます。森 陽馬

2009年2月9日(月) The Drerek Trucks Band 「Kickin' Back」

 デレク・トラックスの新作国内盤が来週発売ということで、デレクの旧作を復習中。

 『Out Of The Madness』(SICP-1641 \1,785)は1998年発表の2ndアルバムで、ややジャズ的なアプローチも垣間見えた97年発表の1stよりもブルース色が強く、サンハウスの曲やミーターズ「Look-Ka PyPy」なんて曲を取り上げているのも魅力。約11年前、デレクはまだ19歳! もうバリバリスライド弾きまくっています。

 ウォーレン・ヘインズ(デレクと同じく現在のオールマンのギタリスト)が参加した楽曲やファンキー・ロックなF「Alright」もかっこよくてデレクのギターもドライヴしまくってますが、特に凄いのがD「Kickin' Back」。
 ラテン的なリズムを取り入れたインスト・ナンバー(オールマンがサンタナをカヴァーした感じの曲)ですが、この曲のギターがハンパじゃなく凄まじい。オールマンとも関係の深いジミー・ヘリングというギタリストとのツイン・ギターで、後半のギター・バトルが壮絶の一語!

 この曲なんかを聴いてしまうと、現在のデレク・トラックス・バンドも悪くはないんだけれど、デレクのギターに対抗するような強烈なギタリストがもう1人バンドに入った方が、よりアグレッシヴな化学反応が起きていいのではないか?と思ってしまいます。
 クラプトンがデュアンと組んで『レイラ』を生み出したように、デレクもジョン・メイヤーと組んで何かやって欲しいな、とまたもやロック夢想な今日この頃です。森 陽馬

2009年2月10日(火) スティーヴィー・ワンダー 「星に願いを」

 先週の週間天気予報では確か雨になっていたと思いますが、今日は良いお天気で、わりと暖かく過ごしやすい一日でしたね。
 19時半頃、パッと入口に目をやった時に、パルム入口とマンションの間に大きな満月がのぞいていて、思わずハッとするくらいキレイだったのですが、数分後には建物の陰に隠れてしまって妙に残念な気持ちになりました。
 
 ここで「月」が付く曲...「星」にかけまして、スティーヴィー・ワンダーが歌う「星に願いを」。(『わが心に唄えば』 UICY-93866 限定SHM紙ジャケット \2,800)
 
 63年、当時13歳のスティーヴィーがしっとりと「わが心に歌えば」、「スマイル」などスタンダードを歌った一枚。美しいストリングスと、まだ若くまるで女性ヴォーカルのような伸びやかな歌声が、とっても優雅な気分にさせてくれます。
 
 木・金曜日は15〜16度と気温が上がり、いち早く春の陽気が感じられそうです。気温の変化で体を壊さないようにお気をつけ下さい。東尾沙紀

2009年2月11日(水) Kazim Koyuncu 「Ben Seni Sevdugumi」

 もう数週間前になりますが、銀座シネスイッチで上映されている映画『そして、私たちは愛に帰る』を鑑賞。これが素晴らしい映画で、今年のベスト5に入るであろう印象的な作品でした。

 日本で上映されるのは珍しいトルコ-ドイツ映画。トルコの人種間による問題であったり生死がテーマになっている映画なので、全体的には暗いストーリー展開ではありますが、終演後は誰しもが邦題タイトル<そして、私たちは愛に帰る>という言葉を実感として感じられるはず。憎むことよりも愛することを尊重した主人公のささやかな希望が伝わってくるラスト・シーンは地味ではありますが映画史に残る名カットと断言していいでしょう。

 この映画の中ではトルコ音楽も実に効果的に使われていて、特に印象的なのがキャーズム・コユンジュという黒海地方のプロテスト・シンガーが歌う「Ben Seni Sevdugumi」。(元々この曲は2002年にトルコのテレビ・ドラマで使われ大ヒットしたそうなのですが、トルコ人ならば誰でも知っているこの曲をトルコの血を引きながらドイツに長年住んでいた青年は知らない、という設定で使われています。)

 三味線と二胡を合わせたような音色を持つサズという楽器が郷愁を呼び起こさせ、じんわりと余韻を残させてくれる1曲。ちなみに映画全体の音楽はワールド=クラブ・ミュージックの新進気鋭ミュージシャン、“シャンテル”を起用。古き良き伝統音楽と最新のトルコ音楽がミックスされているところも見事です。森 陽馬

★掲載ジャケットは映画サントラの輸入盤『AUF DER ANDEREN SEITE』(AYCD-16 \2,500)。国内盤は発売されていません。

2009年2月12日(木) Samuel Purdey 「Lucky Radio」 

 まさに、スティーリーダン+ドゥービー・ブラザーズ(マイケル・マクドナルド在籍時の中〜後期)!
 ここ最近、スティーリー・ダン・フォロワー的なバンドやアーティストが色々と出てきて、タルクを中心に新世代AORサウンドを志向するミュージシャンが増えてきましたが、その先駆けとも言える英国の2人ユニット、サミュエル・パーディーのCDが再発されました。

 先駆け、と書きつつ実は僕もこのユニットのことは恥ずかしながら知らなかったのですが、1999年にクワトロ・レーベル(懐かしい!)から発売され、当時J-WAVEのチャート<TOKYO HOT 100>で5位までランクアップしたこともあったそうです。クワトロ・レーベルが無くなりしばらく廃盤になっていたのですが、この度未発表音源をプラス&リマスターを施し、約10年の時を経て再び日本で発売となりました。(『Musically Adrift』 XQCF-1013 \2,400)

 メンバーが初期ジャミロクワイのメンバーだったそうですが、そういう予備知識よりもとにかく、AOR好きの方に是非とも聴いてもらいたい1枚ですね。約10年前に発表された作品(録音は97年頃)ながら、今聴いても全然古臭くなく、でも70〜80年代の雰囲気を感じさせるAORサウンドが絶妙。ドナルド・フェイゲンとマイケル・マクドナルドを合わせたような歌声もブルー・アイド・ソウル風味でいい感じ。楽曲もポップでイージーリスニング感覚で楽しめます。

 約10年前の1990年代後半は、日本ではキリンジやスガシカオが頭角を現してきた頃。最近はこういうタイプのミュージシャンがあまり表に出てきていないので、またこういう波が来て新しいミュージシャンが出てくるといいな、と思っています。森 陽馬

2009年2月13日(金)ジュニア・ウォーカー&オール・スターズ 「ショットガン」

 ジュニア・ウォーカーのテナー・サックスとヴォーカルをフィーチャーしたなんともかっこいい楽曲。1965年の大ヒット曲ですが、今聴いてもこの曲の持つグルーヴとファンキーさは現代に通用するものがあると思います。

 ワイルドなテナーの音はもちろんですが、脇役のリズムを刻むギターがいい味を出して、曲を引き締めているようです。

 サックス吹いて、歌も歌って、ライヴではジュニア・ウォーカーは大変だったでしょうね。吹きながら歌えませんからね。
 ハーモニカを吹きながら同時に歌を歌おうとする“桜井ペペ”という芸人さんがいますが・・・。(わかる人だけ思い出し笑いをしてください)

 なお曲を作ったのは、クレジットには“オートリー・デウォルト”という名前が・・・。これはジュニア・ウォーカーの本名だそうです。森 勉

★掲載ジャケットは、ジュニア・ウォーカー率いるグループの65年発表モータウン・デビュー作『プレイ・ショットガン』(UICY-93345 限定紙ジャケット仕様  \2,500)

2009年2月14日(土) Graham Nash 「Try To Find Me」

 グラハム・ナッシュの3枚組CD BOXセット『Reflections』(RHINO R2-446076)。このブックレットが本当に素晴らしい!

 ホリーズのCDデビューが1963年だから、グラハム・ナッシュの音楽活動歴は約46年。それを3枚のCD全64曲にまとめるのは無理というもので、そういう点では収録曲にややボリューム不足の感があることは否めないものの、その不満を補って余りある超充実のブックレットが付いているのです。
 収録されている楽曲1曲ごとに演奏者クレジット・録音日などの詳細な情報はもちろん、その曲にまつわる写真とナッシュ本人による曲解説が付けられ、資料的価値だけでなくとても読み応えもある読み物としても楽しめる約150ページのブックレットです。

 例えば、
★キャロル・キングとのデュエット/共作である「Two Hearts」という曲は、ニコレッタ・ラーソンのトリビュート・コンサートの後にキャロルと何か曲を作ろう、ということで意気投合しできた1曲だった、ということ。
★CSN「These Empty Days」は、ベット・ミドラーが主演した名作映画『フォー・ザ・ボーイズ』のために当初書かれた曲であったが、結局映画ではこの曲ではなく、ビートルズの「In My Life」が使われた、とのこと。
★CSN&Y「Our House」の元となったジョニ・ミッチェルでの家について。
★「Simple Man」はジョニ・ミッチェルと別れた後に書いた曲だった。
★「Better Days」は当時の彼女、リタ・クーリッジのために書いた曲だった。
などなど、他にも彼の楽曲にまつわる様々なエピソードが盛りだくさんで、まさに彼のアンソロジーを楽曲を聴きながら楽しめるBOXセットになっています。

 特に興味深かったのが「Try To Find Me」というディスク3の9曲目に収録されている完全未発表曲にまつわるエピソード。ニール・ヤングとニールの奥さんであるペギ・ヤングが毎年主催しているブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート(障害児を支援するチャリティー・コンサート)に、ナッシュが妻スーザンを連れ添って参加した際のエピソードが発端となって楽曲が作られたそう。派手さはないものの、暖かい彼の人柄が滲み出るようなナッシュらしい1曲です。

 今のところ国内盤は出る予定がないのですが、是非日本語対訳・解説を付けてリリースして欲しいですね。森 陽馬

2009年2月15日(日) ザ・フー 「モータリング」

 昨年日本でも公開されたTHE WHOのドキュメンタリー映画「アメイジング・ジャーニー」のDVDが4月1日にリリースが決定。
 デラックス・エディションには本編未収録のインタビューや、未発表ライヴ集、同時期に公開された『ライヴ・アット・キルバーン』も一緒になった4枚組の豪華版!未発表集には全編ではないと思いますが、リーズ大学でのライブ映像も収録されるそうなので楽しみですね。映画本編もとても面白かったので、見逃したという方、是非ご覧になってみて下さい。(ちなみに『ライヴ・アット・キルバーン』単体でのリリースは今の所なさそうです。)
 
 昨年の来日前に日本独自企画の『マイ・ジェネレイション』の初CD化モノ・ミックス盤(UICY-6988 \1,980)なんてのが出たりして、音源的には2002年に出た2枚組のデラックス・エディションで聴けるものばかりなので特に新鮮味はありませんが、ボーナストラックにも本当にかっこいい曲が多くて、特に「モータリング」というマーサ&ザ・ヴァンデラスのカバーは、独特のリズムと「モータリン〜♪」のコーラスがクセになる踊れる一曲。「ヒート・ウェイヴ」をカバーしているのは有名ですが、個人的にはこちらのカバーの方がかっこよくて好きかも...。他にもジェイムス・ブラウンやジェリー・ラゴヴォイ作の曲を取り上げています。
 
 ちなみに「モータリング」のマーサ&ザ・ヴァンデラスが歌うオリジナルは、ヒット曲ではないそうですが、大体のベスト盤には収録されているようです。まだ聴いた事が無いので、聴いてみないと...。東尾沙紀

2009年2月16日(月) Olivier Peters Quartet 「Wings Of Spring」

 来ましたね、花粉の季節が。
とても暖かかった13日(土)から頻繁にくしゃみがでるようになって、鼻もなんとなくムズかゆい感じ。桜よりもこういうところに春の足音を感じます。

 明日あたりからまた冬の寒さに戻るようですが、“春待ちソング”ということでSpringが入る曲を考えてみました。有名なところでは、
・ビル・エヴァンス「You Must Believe In Spring」
・シャドウズ「春がいっぱい」
・西岡恭蔵「春一番」
・はっぴいえんど「春よ来い」
などでしょうか。個人的にはスピッツ「ただ春を待つ」(98年作『フェイクファー』に収録)なども好きな1曲。

 さて、オリヴェエ・ピータース・クァルテットはドイツのジャズ・バンドで、このアルバム『Wings Of Spring』(CMYK-6144 \2,415)は1980年発表のヨーロピアン・ジャズ名作アルバム。
 2曲目に収録されている「Full Moon」という曲がJAZZ/レアグルーヴ系DJに人気があり、CLUB JAZZ好きな若い世代に人気の1枚ですが、上品&クール、オシャレな作品として幅広い音楽好きの方にオススメです。

 このアルバムに「Wings Of Spring」、「It's Always Spring」と2曲も“Spring”の付く曲が収録。「Full Moon」と同じくジョアン・ジョンソンの天使のような美しい歌声をフィーチャーした「It's Always Spring」もNiceですが、やはりかっこいいインスト・ジャズ・ナンバー「Wings Of Spring」を今日のこの1曲に。最近人気のファイヴ・コーナーズ・クインテットや、日本のクオシモードなど新世代ジャズお好きな方は必聴の1曲です。森 陽馬

2009年2月17日(火) 和幸 「カレーライス」

 加藤和彦(フォーク・クルセイダーズ、サディスティック・ミカ・バンド)と、坂崎幸之助(アルフィー)によるユニット、“和幸”<かずこう>の2ndアルバム『ひっぴいえんど』が本日入荷。
 “70年代のロック台頭期へのオマージュ”と銘打たれている通り、「ひっぴいえんど」、「タイからパクチ」、「ナスなんです」など曲名のみならず、楽曲のアレンジにも様々な細かい部分に70's名曲の要素が散りばめられていて、パロディー的な意味合いではなく、あくまでオマージュとして作り上げられた1枚。

 曲名タイトルを初めて見た時は各曲がもっと笑ってしまうようなアレンジかな、と思っていましたが、どの曲もセンス良く丹念に作られていて、さすが加藤和彦&坂崎幸之助。70'sフォーク/ロック好きな方なら、聴きながら色々と突っ込みつつも楽しめる作品に仕上がっています。

 かまやつひろし「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」のカヴァーも面白いアレンジでしたが、聴きもの(!?)は遠藤賢司の名曲カヴァーF「カレーライス」。
 アコースティック・ギターとコーラスのみのシンプルな編成ですが、そのギターのアレンジがCSN&Y「Find The Cost Of Freedom」(邦題:自由の値)」のフレーズをそのまま使用! つまり「自由の値」のメロディーに「カレーライス」の歌詞をのっけて歌っているのです。コーラスも「自由の値」を意識していて、まさにエンケンの「カレーライス」とCSN&Y「自由の値」をドッキングさせてしまった1曲。

 他の曲にも様々な遊びが入っていて楽しめる作品ですが、ひとつ不満なのがそのリリース形態。初回盤のみDVD付で\3,990ですが、通常盤の方が初回盤のCDより2曲多く入っていて\3,150。つまりDVDが付いているとはいえ初回盤(全12曲入)なのに通常盤(全14曲)より2曲も収録曲が少なくて高いのです。
 ジャニーズ系で時々こういうリリースがありますが、何故に和幸でこういう出し方をするのでしょうか・・・? 売上枚数が伸びる、というよりもかえって混乱を招くのであまり良くないと思うんですけどね。森 陽馬

★掲載ジャケットは通常盤(14曲収録 COCP-35382 \3,150)。

2009年2月18日(水)Derek Trucks Band 「Sweet Inspiration」

 ジェフ・ベックとエリック・クラプトンの共演コンサートが近づいてきましたね。(今週末21、22日にさいたまスーパー・アリーナで開催)

 2月10日某所にて極秘リハーサルが行なわれたそうで、招聘したウドーのHPによると、
“マディ・ウォーターズの「Little Brown Bird」や「You Need Love」のようなブルース・クラシックの他にも、誰もが知っている彼らの代表曲をリハーサルで演奏した”・・・らしいので、共演のステージは1、2曲ではなくそれなりにやってくれそうな感じ。“誰もが知っている彼らの代表曲”というのが気になりますが、とにかくも楽しみですね。

 さて、ギタリスト繋がりで“世界最高のロック・スライド・ギタリスト”デレク・トラックスの新作『オールレディ・フリー』国内盤が本日発売。(国内盤のみボーナス・トラック2曲追加 SICP-2160 \2,520)
 もっとブルース色が強いかな、と思いきやロック&ソウルフルな楽曲・アレンジが程よくブレンドされていて聴きやすい1枚。デレクはこれが6枚目の作品ですがいい意味で入門編としてもオススメの1枚だと思います。

 ボブ・ディラン『地下室』に収録されていた@「Down In The Flood」カヴァーも渋くて良いですが、意外だったのがダン・ペン作のC「Sweet Inspiration」。スウィート・インスピレーションズ、シュープリームスなどソウル系のミュージシャンで有名な曲ですが、デレクのギターが味わい深いこのヴァージョンもかっこいいですね。以前ライヴでこの曲を演奏した際、同じ会場で出演していたサンタナがこの曲を聴き、「これは録音した方がいい!」と進言。今回収録されることとなったそうです。

 ちなみにもう1曲のカヴァー曲J「I Know」(ビッグ・メイベルというR&Bシンガーの隠れた名曲)が個人的にはアルバム中一番のお気に入り。2007年来日公演ですでに披露され、とても印象に残った曲だったのでこうしてオリジナル作でまた聴けるのはうれしいです。森 陽馬

2009年2月19日(木) クリフ・リチャード 「ダディーズ・ホーム」

 クリフ・リチャードのデビュー50周年(ワゥー!)を記念して、2枚組全50曲入りの『オールタイム・ヒット・アルバム』(原題は“50th Anniversary Album” TOCP-70676 \3,500)が1ヶ月ほど前に発売されました。
 本国イギリスではチャート・ヒットが100曲以上あると言われている人ですから50曲ではまだまだ、という感じですが、まずは日本盤として出たことを喜びたいと思います。

 それにしても1950年代後半から2000年代までほとんど休むことなくヒットを出し続け、コンサート・ツアーも続けている彼は本当に音楽超人ですね。近年2回の来日公演を行なっていますが、そのライヴでの観客に対しての誠意とサービスぶりも頭が下がる思いで、こういうことを自然体で続けているからこそ多くのファンにいつまでも愛されるミュージシャンなのだなあ、とそのコンサートを目にして再認識しました。

 さて今日は1982年に日本でもシングル発売されたドゥワップの名曲をカヴァーした「ダディーズ・ホーム」を取り上げます。
 オリジナルは1961年に大ヒットさせたシェップ&ライムライツ。1950年代にはハートビーツで活躍したジェイムス・“シェップ”・シェパードの美声がとっても魅力的な曲でした。

 クリフのヴァージョンは、BBC TVのテレビ・ショーでのスタジオ・ライヴ録音。「サマー・ホリデイ」や「ヤング・ワン」などのオリジナル・ヒットもいいですが、こういったカヴァーもクリフらしい味が出ていて実にイイ出来です。森 勉

2009年2月20日(金) WaJaRo 「One More Time」

 Ino Hidefumi(イノ・ヒデフミ)のアルバムがヒットしたことによって、エレクトリック・ピアノを使用した楽曲やフェンダー・ローズが入っている曲を集めたコンピCDが最近色々と出るようになりましたが、今日紹介するこのCDもフェンダー・ローズの音色が全編にfeatされた作品。

 WaJaRo(ワジャロ)は、日本人3人によるソウル・ジャズ・トリオ。椎名純平のバックなどを中心に活動しているユニットで、この1stアルバムでは音楽好きの方なら聴きなじみのある洋楽名曲&人気曲をジャジーメロウ&グルーヴィーにカヴァー。(『Electric Piano Loves You...』 PCCA-2856 \2,625)

 フェンダー・ローズの美しい音色を活かしつつもソウル/ジャズにこだわらず、クイーン「I Was Born To Love You」、トッド・ラングレン、ジョン・レノン、フェア・グラウンド・アトラクションなどの曲を落ち着いて聴けるようなアレンジで見事料理。ラウンジ・サウンドとしても楽しめる内容なので、さりげないBGMを探している方にもオススメの1枚です。

 我那覇美奈をfeatしたカーペンターズ・カヴァーなどもしっとりとして良かったのですが、ダフト・パンクのヒット曲G「ワン・モア・タイム」のカヴァーがかっこよくて特に気に入っています。オリジナルのポップさにCLUB JAZZ的なアレンジが加味されて最高にクール! フェンダーローズのやさしく美しい音色がお好きな方は要チェックです。森 陽馬

2009年2月21日(土) ATTIC LIGHTS 「BRING YOU DOWN」

以前今日の一曲で紹介させていただいたことのある、パールフィッシャーズ、アリー・カーなど数々のポップ・バンド&シンガーを輩出しているスコットランドのグラスゴーからまたまた素敵な新人バンドが登場しました。

 ATTIC LIGHTSは昨年末デビューアルバムとなる『FRIDAY NIGHT LIGHTS』(Island 1781232)をリリースした5人組。日本でもギター・ポップ・ファンの間では既に注目され、評判のバンドです。
 プロデュースを手掛けるのはティーンエイジ・ファンクラブのフランシス・マクドナルド。BMXバンディッツのダグラス・スチュワートも彼らに音作りに携わり、サポートしているようです。グラスゴーのミュージシャン達は横と横のつながりを大事にしているようですね。

 メロディーもキャッチーで、コーラスにもちゃんと力を入れているようなので、ギター・ポップが好きな方はきっと一曲でも聴いたら気に入るのではないかと思います。
 イギリスではメジャーレーベル(アイランド)からリリースされているので、日本でもちゃんと国内盤を出して欲しいなと思います。息の長いバンドでありますように。東尾沙紀

2009年2月22日(日) Jeff Beck 「A Day In The Life」

昨日ジェフ・ベックとエリック・クラプトン共演コンサートに行ってきました。

 第1部ジェフ・ベックで約50分、セット・チェンジ20分、第2部がエリック・クラプトンで約50分。一度下がったクラプトン・バンドにジェフが参加するかたちで第3部がジェフ&エリックの共演約40分、という構成。
 共演部分は当初ウドーHPで書かれていた“誰でも知っている代表曲を〜”ということは全く無く、ブルース・カヴァー中心に7曲(各々の曲としてはクリーム「Outside Woman Blues」くらい?)とかなり渋い選曲で、“「レイラ」を二人で演奏”なんてことはありませんでしたが、交互にギター・ソロをとる見せ場もたくさんあってとても楽しめました。

 そして最後の最後、アンコールでやった曲がなんと!スライ&ザ・ファミリー・ストーン「I Want To Take You Higher」! 何故にこの曲をやったかは謎ですが、一番テンポが速い曲ということもあり盛り上がりましたね。

 それにしてもジェフ・ベックが本当にすごかった、というのが今回の個人的な感想。もちろんクラプトンもそれなりに良かったのですが、ジェフのギターは特に凄まじかったです。ジェフのセットではわずか22歳の女性ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドを当初注目していましたが、ヴィニー・カリウタ(フランク・ザッパ、チック・コリアなどで有名)の超絶ドラミングが圧巻で、それにノセられ弾きまくる真っ白衣装のジェフ・ベックに結局目がいく、という感じ。第3部の共演セットはクラプトン・バンドがバックでしたが、ジェフのバンドでも見たかったな・・・。(なんて、贅沢な願望ですね) 森 陽馬

★掲載ジャケットはジェフ・ベックの最新ライヴ盤『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ・クラブ』(SICP-2111 \2,520)。このCDに収録されているビートルズ「A Day In The Life」のカヴァーも良かったです。今度3月25日には更に曲を追加したDVDも発売予定になっています。

2009年2月23日(月) プラターズ 「マイ・プレイヤー」

 アカデミー賞が今日発表され、日本映画『おくりびと』が外国語映画賞を見事受賞。これは快挙ですね。反戦をテーマにしたイスラエル映画『戦場でワルツを』が受賞するのかな、と勝手に思っていたのでちょっとビックリ。とにかくも関係者の方々、おめでとうございます。

 作品賞や監督賞など主要部門は『スラムドッグ$ミリオネア』というイギリス映画(出演者&舞台はインドが中心らしい)が受賞。そういうこともあり今回のアカデミーはアメリカ色が薄かったようですが、ブラッド・ピットの主演男優賞などノミネートに多く挙がっていたアメリカ映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を先週見てきました。

 約3時間ということもあり映画を観る前はやや不安だったのですが、全く時間を忘れてしまうほど物語に入り込んでしまい、あっという間の3時間。予想以上に面白い映画でした。ただ、これは意外と好き嫌いが分かれる作品かもしれませんね。おおざっぱな表現ですが、『フォレスト・ガンプ』が好きな人はこの映画も楽しめると思います。ストーリー的には全然違うのですが、時代背景や展開がなんとなく『フォレスト・ガンプ』に雰囲気が似ているんですよね。

 さて、その『ベンジャミン・バトン』は『フォレスト・ガンプ』ほどは音楽が使われていないものの、印象的だったのはプラターズ「My Prayer」。楽曲自体は1956年のビルボードNo.1ヒットですが、1962年頃に主人公二人が惹き合う場面で使われています。
 ちなみに映画の舞台となっているのはニューオリンズ。秒針が逆回転に回る掛け時計やカトリーナのハリケーンといった実際にあった話を映画の中にとけ込ませていたのも印象的でした。森 陽馬

2009年2月24日(火) マデリン・ペルー 「Our Lady Of Pigalle」

 “21世紀のビリー・ホリディ”、“新世代のジョニ・ミッチェル”
と称されている女性シンガー、マデリン・ペルーの新作『ベア・ボーンズ』の国内盤が本日入荷。(UCCU-1188 \2,500)

 前作に引き続き、ジョニ・ミッチェルの元夫であり名ジャズ・ベーシストのラリー・クラインがプロデュースを担当。アコースティックな音感と、音と音の隙間を上品に配置し、彼女のスモーキーな歌声を引き立てている彼らしいプロデュース・ワークで、今作も味わいある1枚に仕上がっています。

 今までの作品ではカヴァーが多かったものの、新作は全曲オリジナルで彼女自身が全曲作詞を担当。スティーリー・ダンのウォルター・ベッカーやジョー・ヘンリーが楽曲を提供していますが、良かったのは7曲目「Our Lady Of Pigalle」。知る人ぞ知るシンガー・ソングライター、デヴィッド・バトゥとラリー・クラインによる共作曲でした。(デヴィッド・バトゥは何年か前に長門芳郎氏による名盤の殿堂シリーズでCD化されたこともありましたね)

 曲の出だしがジョニ・ミッチェル作「Both Sides Now」になんとなく似ていて、歌い方もジョニを意識して歌っている感じ。ちなみに国内盤にはボーナス・トラックとして、この曲「Our Lady Of Pigalle」のフランス語ヴァージョンが追加収録。歌詞・対訳付きで、渡辺亨氏の解説も読み応えがあるのでオススメです。

 ちなみに先日のジェフ・ベック来日公演で超絶ドラミングを披露していたヴィニー・カリウタが、このアルバムでは全編繊細なやさしいドラムを叩いています。森 陽馬

2009年2月25日(水) Ciffones 「Remember Me Baby」

 このページではすっかりお馴染みのイギリスACEレーベルから、また注目の新譜が出ました。大好評のソングライター・シリーズ、今回は待望のバリー・マン&シンシア・ワイル作品集です。全26曲、有名ヒット曲からマニアックな曲まで名曲目白押しといった選曲になっています。(『グリッター・アンド・ゴールド バリー・マン&シンシア・ワイル作品集』 MSIG-554 \3,150)

 その中から山下達郎が『オン・ザ・ストリート・コーナー1』でカヴァーした「リメンバー・ミー・ベイビー」の原曲を。

 彼がカヴァーするまでこのバリー・マン作品は埋もれた存在でしたが、1980年以降山下達郎ファンの間では有名な曲となりました。一般的には白人ドゥワップ・グループ、“アールズ”のヴァージョンで知られているのですが、ここではシフォンズのヴァージョンが収録されています。

 このシフォンズの「リメンバー・ミー・ベイビー」は1970年にB.T.Puppyから出たLPにしか収録されておらず、なかなか聴けなかったのでうれしいCD化となりました。発売は1970年ですが、録音はもっと前に行なわれていた未発表曲だったようで、ちょっと中途半端な歌が貴重度を高めてくれているみたいです。森 勉

2009年2月26日(木) 南 佳孝 TAKIBI隊 「I don't want to talk about it」

 ニール・ヤングの新作(!)が3月31日に発売決定したようです。

 年初に発売予定となっていたブルーレイ10枚組『アーカイヴBOX』は延期となって新作がいきなり発売。・・・ホント、“予定外の予想通り”というかなんというか、いかにもニールらしいですね。
 一般的なニール・ファンからすれば、そんなつまんない新作出すんならBOX早く出せ、ってことになるんでしょうが、いやいや、やっぱりニールは新作ですよ。内容が超つまんなくたって(ニール、暴言スマン!)、ミュージシャン/アーティストとして“前に進んでいく姿勢”を見せてもらえればそれで僕は充分満足。4月以降にカナダ・ツアーも決まってBOX発売はどんどん延びそうな雰囲気ですが、過去の郷愁に囚われているファンを置きざりにするような活動をこれからも期待したいですね。

 さて、ニールの話題が出たので、ちょいニール絡みの1曲。
 2008年12月末に発売となった南佳孝の新作アルバム『camp』(DLDH-1833 \1,890)。ペッカー、竹田元と一緒に“南佳孝TAKIBI隊”という名義でインディーズから発表した作品で、往年の名曲や洋楽カヴァーをレイドバックしたアレンジで聴かせてくれます。

 ヤング・ラスカルズ「グルーヴィン」、プロコル・ハルム「青い影」、マーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」などをゆったり&ゴキゲンにカヴァーしていますが、ニール・ヤングのバック・バンドで有名なクレイジー・ホースに在籍していたダニー・ウィットン作の名曲「I Don't Want To Talk About It」を意外にもカヴァー。この曲、イイ曲なんですよねー。

 ちなみにニール・ヤング『渚にて』に収録されている隠れた名曲「See The Sky About To Rain」に、この曲そっくりなんです。というか、サビはほとんど同じ感じのメロディーですね。
 『渚にて』は1974年発表作ですが、ニール自身は1970年11月末からソロ・ライヴでやっており、このダニー・ウィットン「I don't want〜」は1971年発表のクレイジー・ホース1stアルバムに収録。どちらかがどちらかのを下敷きにしたと思うのですが、ニールとダニー、どちらが先に作った曲だったんでしょうね。森 陽馬

2009年2月27日(金) The Resentments 「Look Up」

 今日東京は朝から雪。積もりはしませんでしたが寒い1日でしたね。
 終日雨空でそんな天候とは合わないかもしれませんが、何故か今日は“カントリー・ロック”な気分なので、最近気に入っているこの1曲をピックアップ。

 アメリカはテキサス州オースティンの凄腕ミュージシャンが集まったバンド、リゼントメンツ。日本にも何度か来日していて、一般的にはほとんど知られていませんが熱心なファンも多いこのグループが6作目となる新作『ローズライト』をリリースしました。(国内CD GT-1013 \2,310)

 メンバーの1人(ジョン・ディー・グレアム)が抜けてしまったものの、その分楽曲にアコーディオンや鍵盤も入り、ドニー・フリッツも参加。アメリカン・ルーツなサウンドに根ざしながらもポップな楽曲が多く、極上のアコースティック・ロックを楽しめる1枚に仕上がっています。

 NRBQのアル・アンダーソンとの共作@「Where Love Can Do」(哀愁漂うアコーディオンの音色がGood!)や、カーター・ファミリーの渋いカヴァーB「Wanderin Boy」、ビリー・ボブ・ソーントンのカヴァーJなんかも彼ららしくていいのですが、軽快なカントリー・ロック・ナンバーA「Look Up」がとにかく最高!

 最近のネオ・カントリーとか言われるバンド達も悪くはないんですが、こういう直球のアコースティック・カントリー・ロックをもっと聴きたいんですよねー。「Take It Easy」をヒットさせていた頃の初期イーグルスや往年のポコみたいな感じで、最近のオススメ・バンドをご存知でしたら是非教えてくださいね。森 陽馬

2009年2月28日(土) フィフス・ディメンション 「ネヴァー・マイ・ラヴ」

 黒人男性3人、女性2人による混声ソウル・グループ、フィフス・ディメンションの1971年発表ライヴ盤が変形紙ジャケット仕様で国内CD化。(BVCM-35590 \2,520) アメリカの再発レーベル、コレクターズ・チョイスから輸入盤でも約2年前に発売されていましたが、今回は歌詞・対訳に丁寧な日本語解説も付いているので、買い逃していた方にはオススメの1枚です。

 ソフト・ロックの名グループ、アソシエイションを手掛けていたことでも有名なボーンズ・ハウがこのライヴ盤のプロデュースを担当。スライの「I Want To Take You Higher」をカヴァーするなどソウルフルな展開もありますが、名セッション・マン、ハル・ブレイン(Dr)とジョー・オズボーン(B)がバックで演奏しているので、Hジミーウェッブ・メドレーにおける「ビートでジャンプ」から「マッカーサー・パーク」までの流れなどは、ソウル・ファンのみならずオールディーズ好きの方でも楽しめる選曲になっています。

 ちなみにアソシエイションのヒット曲「ネヴァー・マイ・ラヴ」(邦題:かなわぬ恋)もカヴァーしていているのですが、ライナーノーツによるとこの曲のみ実際はスタジオで録音した楽曲で、後から拍手をかぶせた擬似ライヴ・ヴァージョンなのだそうです。

 この曲をシングル・カットするために発売元のベル・レコード社長が指示したそうですが、前の曲(C「ローラ・ニーロ・メドレー」)後の拍手から自然な流れで「ネヴァー・マイ・ラヴ」になり、曲中に拍手が起こる部分も違和感があまりないので、一聴するだけでは気付かないですね。森 陽馬





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