PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2009月4月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2009年4月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2009年4月1日(水) メル&ティム 「Starting All Over Again」

 スタックスの名盤SHM-CD紙ジャケ再発10タイトルの中の一枚、ミシシッピ出身の従兄弟デュオ、メル&ティムの『スターティング・オール・オーヴァー・アゲイン』(UCCO-9548 \2,800 ボーナストラック4曲追加)。
 
 スタックス移籍第一弾として72年にマッスル・ショールズで録音された代表的作品です。(ロジャー・ホーキンス、デヴィッド・フッドの他、ドナルド・ダック・ダンなどが参加。) 甘すぎず、渋すぎず、2人のヴォーカルも素晴らしいアルバムです。
 
 ダン・ペン作の「I'm Your Puppet」(この曲は好きなので反応していまいました)や、最後の♪シュビドゥパッパラ〜が印象的なドゥーワップ・カバー「What's Your Name」、サム&デイヴの「Wrap It Up」、ボーナストラックにアラン・トゥーサンの「Yes We Can Can」などなど。耳馴染みのあるどのカバーも秀逸です。ヒット曲でもある「Starting All Over Again」は後にホール&オーツが取り上げています。

 帯の裏に''70年発表''、''72年マッスルショールズ録音''と2つ記載されていて、私のようにあまり知らない人が見ると困惑してしまいそうな書き方がされていますが、正しいのは72年の方だそうです。東尾沙紀

2009年4月2日(木) INGERA 「Life Goes On」

 2009年、早くも4月になってしまいました。
 「桜が咲く頃には駅前広場ができて、うちの店周辺もスッキリしているだろうから楽しみ♪」なんて年初は思っていましたが、工事は一ヶ月以上遅れているようでゴールデン・ウィーク中の完成も難しい状況だとか・・・。
 でも、なんとなく駅周辺も変わってきましたよ。駅出入り口と商店街の間に屋根を作ったり、公衆トイレが新しくなったり。“離れ小島”状態だったうちの店ももうすぐ陸繋がりとなりそうです。

 さて、暖かくなった陽射しを浴びながら聴きたいオススメ女性ヴォーカル・アルバムをご紹介。
 昨年のベスト5に選出したロマン・アンドレン『ファニータ』にも作曲&コーラスで参加していたインゲラ・ヤンソンというスウェーデン出身女性シンガー・ソングライターのデビュー・アルバムが本日発売になりました。(『ALL THESE CHOICES』 PCD-93232 \2,415)

 歌声&歌い方がアン・サリーにとても似ていて、まさに“スウェーデンのアン・サリー”といった雰囲気。アコースティック・サウンドを基調にしたブラジリアンかつフォーキー&ジャジーな楽曲もNICE!作詞・作曲・プロデュースも彼女自身ですが、ミックスはロマン・アンドレンが担当しており、彼女の美声を活かした上品な音作りに好感が持てます。ショート・カットで引き締まった佇まいのジャケット写真もいいですね。森 陽馬

2009年4月3日(金) SPECIAL OTHERS 「PB」 

 フジロックサマーソニックの出演ミュージシャンがだいぶ発表されてきました。それなりに大物もラインナップされていますが、個人的には今ひとつまだグッときてない感じですね。
 “白いサム・クック”ことイーライ・ペーパー・ボーイ・リード、どんな編成でやるのか興味深いトータス、内容は期待はしないけれど見届けたいファンキー・ミーターズ、あの名プログレ・バンド、ゴングなど見てみたいミュージシャンもいるので、毎度のことながら行ったら行ったで楽しめそうですが、前売りチケット購入まではまだ踏み込めないですね。夏はまだ先ですが、どれかの野外フェスは行きたいなと思っています。

 さて、フェス向きバンド、といえば日本のインスト・ジャム・バンド“SPECIAL OTHERS”(スペシャルアザース)。彼らの3rdフル・アルバムとなる新作『PB』が発売となりました。(VIZL-328 初回ライヴDVD付 \2,980)

 初期に比べ最近の作品は売れ筋狙い?のせいかメジャー的な軽さが気になって今ひとつピンと来なかったのですが、今作はポップでかっこいいメロディーラインが際立っており、ライヴ映えしそうな楽曲が多いですね。リズムがもっと重たい感じでもいいかな、という気もするのですが、まあこれはこれで彼らの入門編としても聴きやすい仕上がりだと思うので良しとすべきかも。フェスへ向かう車の中で聴きたい1枚です。森 陽馬

2009年4月4日(土)フランク永井 「プリテンド」含む“ポピュラー・メドレー”

 “魅惑の低音ヴォーカル”などと書くと昭和臭く思われてしまうかもしれませんが、このフランク永井が取り上げたジャズ・ナンバーを集めたコンピCD『フランク、ジャズを歌う』(VICL-63274 2CD \3,990)を聴いて、改めて低音の良さを再認識しました。

 海外のジャズ&スタンダード・ナンバーを中心に2枚組CDに全50トラック。ジェントルな歌声はまさに“和製ビング・クロスビーorペリー・コモ”といった雰囲気で、バックの演奏&上品なオーケストラ・アレンジも素晴らしいものが多く、聴いていて心温まる作品集です。

 このCDに収録されている1970年のライヴ音源(『歌手生活15周年リサイタル』東京厚生年金会館より)でのMCで、ビング・クロスビーに大きな影響を受けた、ということをフランク永井自身語っており、ナット・キング・コール、アンディ・ウィリアムス、ペリー・コモ、更にはエルヴィス・プレスリーの名前も出しているのが印象的。

 そのMCに続いて歌われる「センチメンタル・ジャーニー」、「ファイヴ・ミニッツ・モア」。そしてナット・キング・コールで有名な「プリテンド」から、「トゥー・ヤング」、「エニー・タイム」、「愛の讃歌」、「慕情」と続く“ポピュラー・メドレー”は、彼のジャズ/スタンダード・ヴォーカルに対する思いの強さも伝わってきて、聴いていてジーンとくるものがあります。
 ブックレットには、各曲の解説・歌詞・対訳も付いており、ジャズ&昭和歌謡好きの方にはもちろん、フランク永井に特に思い入れがない方にもオススメしたい1枚ですね。森 陽馬

2009年4月5日(日) ハンキー・パンキー 「ハンキー・パンキー」

 エル・アールの黒沢健一&秀樹兄弟がパンダの兄弟という企画で久し振りに共演した音源を集めた5曲入ミニ・アルバムが出ました。(Hanky Panky 『In Touch With Hanky Panky』 UICZ-4197 \1,600)
 彼らの音楽的素養と趣味がタップリつめ込まれている作品に仕上がっています。

 この曲は1966年にトミー・ジェイムス&シャンデルズが全米No.1にしたヒットのカヴァー。あの“チャボ”こと仲井戸麗市がコーラスとギターで参加しています。ブックレット内のコメントでもチャボが書いていますが、とても楽しいレコーディングだったそうです。そんな雰囲気が伝わってくるワイルドでいいカヴァーです。

 ちなみに曲だけでなく、ジャケット及びタイトルの『In Touch With 〜』にも古い音楽ファンなら反応してしまうのでは・・・。
 元ネタは1960年代中期に活躍したブリティッシュ・デュオ、ピーター&ゴードンのセカンド・アルバムです。森 勉

2009年4月6日(月)ポール・ウェラー「Let It Be Me」 (エヴァリー・ブラザーズのカヴァー)

 ポール・ウェラー、ただ今来日中です。
 初日の3日(クラブ・チッタ川崎)、4日(新木場スタジオコースト)に行ってきました。昨日名古屋が終了し、今日一日休みを挟んで、福岡→大阪→最終日の広島へと続きます。
 
 ギターのスティーヴ・クラドック以外のメンバーが変わって初めて観た昨年のサマソニ出演時に比べると、バンド(Keyを加えた5人編成)がだいぶまとまってきたなという印象を受けました。他の4人全員がコーラスが出来るので、ウェラーのライブでハモリがバシッと決まるというのがとても新鮮な感じがしました。
 
 アクションも多く、とてもパワフルなライブでした。途中イスに座ってのアコースティック・コーナーで、ジャム時代の「The Butterfly Collcter」、アルバム『AS IS NOW』の曲からのザ・フー「Magic Bus」、ウェラーがキーボードに移ってエヴァリー・ブラザースの「Let It Be Me」など珍しいカバーも演奏してくれました。
 ただキーボードやシンセの音が、ウェラーの歌やピアノに被さってちょっと邪魔だなと...。全員がフル稼働じゃなくて、ひく所はひいてもいいのになと今回観て感じたことでした。
 
 今回は主に最新作『22 dreams』、『Stanley Road』から中心に演奏され、新曲も2曲披露。昨年観た時も思いましたが『22 dreams』の曲はライブの方がかっこいいと思いました。東尾沙紀
 
★掲載ジャケットはSHM-CD紙ジャケ再発された2005年発表全編カバーアルバム『Studio 150』(UICY-93567 \2800)。「Let It Be Me」、「Family Affair」が追加収録されています。

2009年4月7日(火) Neil Young 「Just Singing A Song」

 ブルーレイ10枚組アーカイヴBOXの話題で盛り上がっているニール・ヤング、なんといきなり新作『Fork In The Road』を発表しました。

 現在も続いているツアーのメンバー(ベン・キース(G)、アンソニー・クロフォード(key)、リック・ローサス(B)、チャド・クロムウェル(Dr)、ペギ・ヤング)でスタジオに入り、「いっちょアルバム作ってみるかー」といった感じで録音したような武骨な荒々しいロック・アルバムに仕上がっています。

 輸入盤(reprise 518041-2)にはDVDが付いており、3曲のビデオ・クリップとビートルズの名曲カヴァー「A Day In The Life」のライヴ映像(2008年10月19日のライヴ)が収録。
 ビデオ・クリップに関しては、これまたニールらしいラフなもので、何故かボート(カヌー?)を漕ぎながら歌っている「Just Singing A Song」など意味不明でツッコミどころ満載な内容ですが、ファンとしてはある意味健在なニールを見れてうれしいですね。

 作品全体として楽曲的には悪くなくニール・ヤングらしさはあるのですが、強烈に秀でたアルバム、とはいえない感もある(とか言いつつ、一ファンとして気に入ってかなり聴きまくってますが)ので、やはり一番の注目は「A Day In The Life」のライヴ映像かもしれません。後半ニールらしさが爆発し弦を引きちぎっての熱演はファン必見のかっこよさ。4月22日発売予定の国内盤にはこの映像が入ったDVDが付かないのが残念ですね。森 陽馬

2009年4月8日(水) James Taylor 「Shiver Me Timbers」

 昨日紹介したニール・ヤングに続いて、ジェイムス・テイラーも新譜を発表。(輸入CD 『Other Covers』 Hear Music 31385-02 今のところ国内盤発売予定なし)

 新譜といっても昨年発表したカヴァー・アルバム『Covers』のアウト・テイク集で、おそらく同時期に録音されたものだと思われますが、収録されているカヴァー全7曲、前作『Covers』には収録されていなかった音源なので純粋に新たな音源として楽しむことができました。
 チャック・ベリー作「メンフィス」、エディ・フロイド「ノック・オン・ウッド」、ウィルソン・ピケット「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」などソウルフルな選曲の中で、意外(?)だったのがトム・ウェイツのカヴァー「シヴァー・ミー・ティンバーズ」。

 トム・ウェイツ1974年発表の名作2ndアルバム『土曜日の夜』に収録されていたスロー・ナンバーで、ジェイムス・テイラーらしい心暖まる歌声が印象的な仕上がり。クラリネットのやさしい音色をいかした温もり伝わるアレンジも素晴らしいですね。

 何故に『Covers』に収録されなかったのか不思議なくらい完成度の高い仕上がりですが、もうそろそろカヴァーではなくオリジナルの新作も聴きたいところ。そして久々の来日(キャロル・キングとのジョイント・ライヴとかだったら最高!)も是非いつか実現させて欲しいものです。森 陽馬

2009年4月9日(木) 松任谷由実 「夜空でつながっている」 

 ベテラン・ミュージシャンの新譜ということで、日本ではユーミンの新作『そしてもう一度夢見るだろう』が発売になりました。(TOCT-26810 \3,000)
 「最近のユーミンはちょっと・・・」という方でも、今作は穏やかに聴いて楽しめる作品に仕上がっていると思います。その所以として、ユーミンらしい往年のメロディー・ラインが各曲で出てくる、というのももちろんありますが、アル・シュミットによる絶妙なミックスも大きな要因でしょう。

 アル・シュミットは1970年代から活躍している名エンジニア。バック演奏はツボを心得た適度な音のミックスに抑え、ミュージシャンの歌声を活かすのが得意な彼ですが、今作でも演奏の音感を70年代的な温もりで包むことによって、派手さはないものの聴いていて心地良く、なおかつ統一感ある1枚に仕上げています。(ちなみにそのバック演奏では、ヴィニー・カリウタが10曲中6曲ドラムを叩いており、随所で渋い技を披露しています)

 特に9曲目「夜空でつながっている」は80年代のユーミンを彷彿とさせるスロー・ナンバー。やや陳腐な歌詞ではありますがユーミンらしいイイ曲ですね。この曲からラスト「人魚姫の夢」へと繋がる流れは本当に素晴らしく、聴きものです。

 あと注目は5曲目「黄色いロールスロイス」で加藤和彦とデュエットしていることでしょうか。イントロはモロにR・ストーンズ「ブラウンシュガー」ですね。この曲のみバックをVITAMIN-Q(屋敷豪太、土屋昌巳、小原礼、加藤和彦)が担当しています。森 陽馬

2009年4月10日(金) ヤードバーズ 「ストロール・オン」

 1960年代中期に活躍したイギリスのビート・グループは、本当にどのグループを聴いてもそれぞれの良さがあって、もう40年以上聴き続けているのに飽きがくるということがありません。

 先日もマインドベンダーズを紹介しましたが、今日はヤードバーズの登場です。今回ボーナス・トラック入りで5種類が紙ジャケット化されました。この時期のイギリスのグループの発売は、各国によって内容が違ったり、曲が入れ替わっていたりでややこしいのですが、今日はこの『ハヴィング・ア・レイヴ・アップ』の中のボーナス・トラックから選んでみました。(ボーナス曲10曲追加 VICP-70089 \2,800)

 このアルバムは1966年アメリカでの2ndアルバムとして発表。
 「ハートフル・オブ・ソウル」(ハートせつなく)、「アイム・ア・マン」、「シェイプス・オブ・シングス」のシングル・ヒット3曲を収録していますが、今日はボーナス曲ラストに入っている「ストロール・オン」。
 ミケランジェロ・アントニオーニ監督による映画『欲望』のために、「トレイン・ケプト・ア・ローリン」の歌詞を変えて新しく録音し直したもので、ジェフ・ベックとジミー・ペイジの強烈なツイン・ギターが魅力なのです。
 昔は『欲望』のサウンド・トラック盤でしか聴けなかったのですが、最近ではこうしてヤードバーズのアルバムの中の1曲として聴けるようになりました。それにしてもカッコイイ演奏です。

 この曲でのベックとペイジのギター・バトルは、1966年11月に発表される名サイケ・シングル「ハプニングス・テン・イヤーズ・タイム・アゴー 邦題:幻の10年」<今回同時に出た『ロジャーズ・ジ・エンジニア』にボーナス・トラックとして収録されています>に受け継がれていくのですね。森 

2009年4月11日(土) MOCKY 「Birds Of A Feather」

 東京では桜も散ってきて、だいぶ暖かくなりました。やっぱり寒々しいよりはポカポカ陽気の方が音楽を聴いてて心地良く感じますね。

 そんな暖かい昼下がりの午後、昼寝をしながらのんびり聴きたいのがこの1枚。MOCKY 『Saskamodie』 WB-36 \2,520(税込)。

 カナダ出身、現在はアムステルダム在住のマルチ・ミュージシャンであるMOCKY(モッキー)。ロックでもポップでもなく、だからといってジャズでもソウルでもなく、テクノや音響、CLUB MUSICともちょっと違う“現代のイージー・リスニング”といった雰囲気の1枚。ギター、ベース、ドラム、リコーダー、フェンダー・ローズなど生音中心の音作りで、ほのぼの和める極上のインスト・ミュージックを聴かせてくれます。

 3曲目に収録されている今日のこの1曲「Birds Of A Feather」では朴訥とした彼の歌声も聴けますが、それ以上にイントロ&中間部で聴ける口笛のメロディーが秀逸! 夢見心地にさせてくれるゴキゲンなナンバーです。
 2007年i-PodのCMで使われ世界的に大ヒットした女性シンガー、ファイストやそのプロデューサーでもあった奇人ゴンザレスも参加しています。森 陽馬

2009年4月12日(日) The Cookies 「I Never Dreamed」

 1960年代前半に活躍したガール・グループ、クッキーズのアンソロジー的なCDが再編集され、グレードアップした形で発売されました。(The Cookies 『Chains/the dimension links 1962-64』 RPM Retro-844)

 以前出ていたSEQUELレーベルのベストは全16曲入りでしたが今回は全24曲。クッキーズが別名で発表したThe Palisades (パリセイズ)、シンデレラズ (The Cinderellas)、ハニー・ビーズ (The Honey Bees)の音源も収録された充実の内容です。

 クッキーズと言えばキャロル・キングが楽曲提供していた曲が多く、このCDでも24曲中13曲がキャロル作品なのです。彼女の作品でない曲でも、アレンジはキャロル、プロデュースはジェリー・ゴフィンが担当しているのが22曲も収録されているので、ガール・グループもののなかでも特にオススメの1枚です。

 この曲「I Never Dreamed」はそのキャロル・キングのアレンジが光っている1曲。ジェリー・ゴフィンとラス・タイトルマンの作品です。ラス・タイトルマンは作品の数は多くありませんが、アルドン系のソングライターで、ブライアン・ウィルソンと「ゲス・アイ・ダム」を書いたりしたことでも知られています。また1970年代後半にはリッキー・リー・ジョーンズのプロデューサーとしても名を売ったなかなかの才人です。

 最後に一言。そう、この曲を聴くと、金沢出身のガール・ポップ・バンド“ルラル”を思い出します。2004年発表のアルバム『夢みがちクローバー』の中でこんなマニアックな曲をナイス・カヴァーしていましたね。森 勉

2009年4月13日(月) Melody Gardot 「Pretend I Don't Exist」 

 現在、店内中央コーナーでは“新世代ミュージシャン注目盤特集”で、ジャンル問わず、最近リリースされた新しい世代のアーティストの新作・名作・オススメ盤をご紹介しています。
 女性ヴォーカルものでは、メジャー・レーベルからではありますがメロディ・ガルドーの新作2ndアルバムが期待通りの内容で、最近の音楽はあまり聴いていない、という方にも聴きやすいオススメできる作品でした。(『マイ・オンリー・スリル』 UCCU-1186 \2,300)

 メロディ・ガルドーは1985年生まれのフィラデルフィア出身の女性シンガー。
 昨年発表されロングセラー中の1stアルバム『Worrisome Heart』(邦題:夜と朝の間で)は、“女性トム・ウェイツ”といった雰囲気で夜聴くのにピッタリのJazzyな内容でしたが、今作はラリー・クラインがプロデュースしていることもあって、前作の流れを引き継ぎつつも、シンガー・ソングライター的側面も感じさせる楽曲とストリングス・アレンジをうまくミックスし全体的に穏やかな仕上がり。

 本編ラストに収録されている「Over The Rainbow」以外、ほぼ全曲彼女自身による作詞・作曲ですが、数曲でノラ・ジョーンズ「Don't Know Why」を手掛けたジェシー・ハリスが参加しており、特に国内盤のみのボーナス・トラックとして収録されている「Pretend I Don't Exist」は、実にジェシー・ハリスらしい1曲。シンプルな楽曲ながら、淡い味わいが彼女の歌声と合っていますね。森 陽馬

2009年4月14日(火) Joshua James 「The New Love Song」

 昨日に続いて、新世代ミュージシャン特設コーナーにて最近リリースされたもので紹介しているのが、ジョシュア・ジェイムスのアルバム『The Sun Is Always Brighter』(LEXCD-9002 \2,205)。

 1983年生まれのネブラスカ出身男性シンガー・ソングライターで、この作品は昨年から輸入盤では出ていたようですが、この度ジャケットを新装し国内盤が発売されました。

 音楽ライターの天辰保文さんが自身のブログで紹介し気になっていた1枚(国内解説も天辰さんが書いています)で、派手さはないものの落ち着いて聴ける良質なシンガー・ソングライター作品でした。

 歌声はなんとなくジェイムス・ブラントに似た雰囲気で、サウンドはアコースティックを基調にしたシンプルなアレンジ。1曲目「The New Love Song」も地味な楽曲ではありますがじわじわと沁みてくる1曲。ブレット・デン、レイ・ラモンターニュ、ジェイムス・ブラントお好きな方は要チェックのニューカマーです。森 陽馬

2009年4月15日(水) 寺尾 紗穂 「よみ人知らずの歌」

 来週22日に発売予定、当店大推薦の女性シンガー寺尾紗穂さんの新作、『愛の秘密』(MDCL-1493 \3,150)のサンプルCDが届きました。一足早く聴かさせていただきましたが、すごくいいアルバムですよ!
 前作までの弾き語りスタイルを引き継ぎつつも、全体的なサウンドとしては今までよりも明るい印象を受ける仕上がり。当店では発売記念で紗穂さんのご厚意により独占インタビューを行わせていただき、そのインタビューを基にしたリーフレットを作成する予定です。
 紗穂さんの作品に触れたことがある方ならももちろん、まだ彼女の作品を1枚も持っていない方にもオススメですので、新作『愛の秘密』、チェックしておいてくださいね。

 さて、ちょうど2年前の今頃、2007年4月に発表された寺尾紗穂さんの『御身』を店でかけて聴いていました。
 ほとんどの歌詞を彼女、もしくは紗穂さんの友人で彫刻家・作詞家の都守美世が書いていますが、ラストの「よみ人知らずの歌」のみ尾崎翠という人になっています。

 この尾崎翠という人は作家で、この曲は『歩行』という短編小説の冒頭に書かれた詩に曲を付けたものだそうです。
 ちなみに、『第七官界彷徨』というこの人が書いた小説がありますが、寺尾紗穂さんが在籍しているThousands Birdies' Legs(サウザンズ・バーディーズ・レッグス)の2ndアルバムに同名タイトルの楽曲が1曲目に収録されています。森 陽馬

2009年4月16日(木) 冨田ラボ feat.キリンジ 「エトワール」 

 少し情報が遅いかもしれませんが、昨晩ネット検索していてゴールデンウィークにこんなイベント(TOKYO M.A.P.S)があるのを知りました。
 昨年も開催されたそうですが、今年はこのイベントの中心となる大貫妙子さんの呼びかけで集まった12組ほどのアーティストで、六本木ヒルズアリーナで無料ライブ・イベントを行なうそうです。
 
 特に大貫さんが出演する4日は、他におおはた雄一、Port Of Notes、bird+冨田ラボが出演。観光客も含め多くのお客さんで混雑しそうですね。次の日にはハミングキッチンも出演するそうです。(スケジュールを見ると一つ空いてる枠があるのが気になります...。) 場所柄、大人のプチ夏フェスみたいな感じになりそうですね。
 
 このイベントに出演される冨田ラボさんの久々のシングルが先日リリースされました。(RZCD-46167 \1,050)
 約5年ぶりの共演となるキリンジをヴォーカルに迎えた「エトワール」と、黒木メイサ主演の映画『昴』のメイン・テーマ「コール・ド」、「エトワール」のインストゥルメンタルを収録した全3曲。

 昔からのキリンジ+冨田ラボファンにとって、待ちに待った再コラボといった感じでしょう。ジャケット・シールの「冨田ラボ再始動!」に期待!東尾沙紀

2009年4月17日(金) Patti Smith Group 「Frederick」

 先日原宿にあるTOKYO HIPSTARS CLUBの2Fで展示されている金坂健二『アメリカを撮る』写真展を見てきました。(4月19日まで展示)

 金坂健二は1960年代アメリカのヒッピー文化/カウンター・カルチャーをリアルに捉えた写真家・文筆家で、当時はアンディ・ウォーホールやアレン・ギンズバーグとも交流が深かった日本人。
 会場はそれほど広いスペースではないのですがその彼の貴重な写真や思想が展示されており、当時のアメリカの空気感が伝わってくる写真を無料で見ることができます。アメリカン・ヒッピー文化に興味がある方なら表参道〜渋谷・原宿を散歩がてらフラッと寄ってみるのもいいかもしれませんね。

 その彼の写真にパティ・スミスが写っているものもありました。ニューヨークを拠点に活動していたパティですから、ウォーホールのファクトリー繋がりで、金坂健二とも交流があったんでしょうね。

 今日のこの1曲は、今年のフジ・ロックに来日も決まったパティの名曲「フレデリック」。1979年発表トッド・ラングレンがプロデュースした4thアルバム『ウェイヴ』(BVCM-37930 \2,310)に収録されている彼女の隠れた代表曲で、後に夫となる元MC5のフレッド・スミス(1994年に死別)へ捧げたナンバー。鈴木祥子さんも2006年発表作『鈴木祥子』でカヴァーしています。森 陽馬

2009年4月18日(土) 大橋トリオ 「そんなことがすてきです」

 東京の桜の花はもう散ってしまいましたが、皆さんは今年どちらへお花見に行かれましたか? 例年に比べて雨が少なかったせいか、今年は長く桜が楽しめてよかったですよね。

 僕はといえば先週、武蔵小山駅前から千葉へ移植された桜の木を見に行ってきました。(経緯などはこちらのコラム・コーナー参照
 移植されてから今年で5年目ですが、ものすごくきれいに咲いてましたよ。写真をこちらに掲載しましたので、当店旧店舗前の桜を憶えていらっしゃる方、是非ご覧になってください。

 現在の武蔵小山駅前はというと、開発がかなり進んで当店周辺の道もだいぶ舗装されてきました。来月には車・バスが迂回できるロータリーも完成予定で、人の流れも変わってきた印象ですが、なんか味気ない雰囲気の駅になってしまいましたね。まあ“時の流れに身をまかせ”ということで、しょうがないことなのかもしれません。

 さて、その移植された桜の木を見に行く道中、そして暖かい陽射しが心地良くなってきた店内でも最近よく聴いているのが大ロングセラーのこのアルバム。大橋トリオ『This Is Music』(PWSR-1018 \1,800)。
 日々生活していると、感動・感謝という言葉を忘れがちになるのですが、本当は日常のあちこちにそういう“すてきなこと”が転がっていて、僕らはそれに気付いてないだけなんですよね。この歌を聴くと、“すてきなこと”、“さりげない幸せ”について考えを新たにさせてくれるような気がします。森 陽馬

2009年4月19日(日) WEE 「You Can Fly On My Aeroplane」

 先日店頭でお客さまと2008年リイシューの話をしていたときに、レアなソウルものでオススメ&教えていただいた1枚。ウィー『ユー・キャン・フライ・オン・マイ・エアロプレーン』(PCD-17226 \2,625)

 いやー、これはイイですね!
 キャップソウル・レーベルのソングライターだったノーマン・ホワイトサイド(フォーミンツというグループにも曲を書いていた人です)が中心となって結成されたグループ、“WEE”。1977年にOWLレーベルから発表した超レア・アイテムらしいのですが、この作品だけでも奇跡のCD化なのに未発表も7曲追加で全19曲!どれもスムース&メロウなソウルで捨て曲なし! ホントこれは買いの1枚ですね。

 曲や歌はどんな雰囲気?と聞かれると説明が難しいのですが、アイズレーの超メロウな曲を更にスムース・ジャズ的なアレンジにしてフェンダー・ローズを全編に配した感じ、とでも申しましょうか。まあファンキーなソウルではなく、70年代中〜後期のフィリー・ソウルとかお好きな方なら絶対に気に入ること間違いなしでしょう。

 “ソウル”、というと“夜”とか“ダンス”とか、そうでないとディープなイメージもあって、朝・昼時や穏やかな春には不向きな感もありますが、このアルバムは朝早起きしたときゆったり聴くのにもちょうどいい超ゴキゲンなメロウ・グルーヴ。フェンダー・ローズの音色が本当にゆるやかでゴキゲン♪ フュージョン/AOR好きの方にも大推薦のアルバムです。

2009年4月20日(月) the fascinations 「'round about midnight feat. 黒船レディ」

 マイルス・デイヴィスが第一特集の『レコード・コレクターズ誌』最新号。やっぱり売行き悪いですねー。
 今までの実績からして、“ビートルズ特集”など一般的にも認知度のあるロック特集号より、ソウル/ジャズ関連を特集する号の方が断然売れないのです。(なので、熱望されているソウル関連の特集などはあまりやらないのでしょう。)
 第ニ特集のハンブル・パイを第一特集にした方が良かったのではないか?と思うのですが、まあでもたまにはジャズの第一特集号があっても、ということかもしれませんね。

 さて、ヴィブラフォン奏者・渡辺雅美を中心とした日本人新世代ジャズ・バンド、ファッシネイションズの新作『latona』が先日発売。(HCCD-9528 \2,625)

 前作『クワイエット・ダンス』(2007年12月5日のこちらのコーナーでも取り上げました)はクラッシュの名曲をクール&センス抜群にカヴァーしていたりして、当店でもロング・セラーとなりましたが、今作もハイセンスな活きのいいヴィブラフォン・ジャズを全編で聴かせてくれる作品に仕上がっています。

 ラスト9曲目では、マイルス・デイヴィスで有名な「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(元々はセロニアス・モンク作)を現代的ジャズ・アレンジもまぶしてカヴァー。エゴラッピン的な魅力も持つグループ、“黒船レディと銀星楽団”の女性ヴォーカリスト、黒船レディこと水林史がヴォーカルで参加しており、色っぽい歌声を披露しています。森 陽馬

2009年4月21日(火) Third Creation 「Rolling Down A Mountainside」

 昨年10月にユニヴァーサル・ミュージックより発売された『ソウル・ギャラクシー〜ギャンブリング・トゥ・スウィート・ハーモニー』は、かなりマニアックな選曲ながら普通に聴いて心地良い曲ばかり!と評判も良く、当店でもいまだベストセラー続行中なのです。

 うれしいことにその第2弾が出ました!(『ソウル・ギャラクシー〜イン・ザ・マジック・オブ・モータウン』 全24曲入 UICZ-1314 \2,500)
 今回も選曲・監修は川畑満男氏。解説は吉岡正晴氏。全24曲どの曲もみんないい曲ばかり! 恥ずかしながら今回も1曲も知りませんでした。モータウン・レーベルにもまだ知らないものがいっぱいあるんですねぇ。

 今日はその中から女性の素敵な声が印象的なレオン・ウェア作品のこの曲。1973年発表の作品だそうです。エンディングのギターはデヴィッド・T・ウォーカーだろうな、というような音色です。

 その他、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズのプロモーションのみの片面シングル楽曲とか、テディ・ランダッツォがアレンジ&プロデュースをしたテンプテーションズ音源など、有名アーティストの珍しい曲も良かったなぁ〜。森 勉

2009年4月22日(水) 寺尾 紗穂 「口の角」

 今日は寺尾紗穂さんの4枚目となる新作『愛の秘密』(MDCL-1493 \3,150)の発売日。今回初めて寺尾さん自身が登場しているモノクロのジャケットも印象的です。
 
 軽快な「お天気雨」から始まる今作は、ピアノのみで歌われる曲は2曲ほどで、シンプルな編成のホーンやストリングス、トンコリ(アイヌの伝統的な弦楽器)、寺尾紗穂さんがフェンダー・ローズを弾いている曲も。
 SAKEROCKの星野源さん&伊藤大地さん、ママレイド・ラグの田中拡邦さん、レーベルメイトのサイトウタクヤさん等がゲスト参加しています。
 
 春らしさを感じさせる「口の角」や都守美世さん作詞の「ハイビスカスティー」が個人的にお気に入りです。一人の女の不幸を歌った「狂女」という曲も注目の一曲。
 
 寺尾さんへの独占インタビューを掲載したオリジナル・リーフレットはお買い上げでなくても、店内でご自由にお持ちいただけるようにしてありますので、ご興味ある方は是非ご覧下さい。

 ♪素敵な風があなたに吹きそうよ〜♪
今年も寺尾さんの歌声が爽やかな風を運んできてくれました。東尾沙紀

2009年4月23日(木) ブッカー・T 「Native American New Yorker」 feat ニール・ヤング

 “ブッカー・T”というと、「グリーン・オニオン」を筆頭に穏やかなグルーヴ感あるソウル・インスト、というイメージでしたが、MG's名義の作を含めても約15年ぶりとなる新作(今作)は意外でしたね。
 もう1曲目からして歌のない“ロック”・サウンド! リズムももちろんですが、ギターの音色からしてROCKの匂いをプンプンとさせていて、色んな意味で面白く楽しい1枚でした。(『ポテト・ボール』 EICP-1169 \2,520)

 まず耳に入るのは荒々しい音作り。それもそのはず3日で録音・ほぼ一発録り、だそうで、緻密に計算された楽曲というのではなく、その録音スタジオで立ち会って聴いているような空気感が詰め込まれた作品になっています。
 そのバックのサウンドを担っているのが、新世代バンド、“ドライヴ・バイ・トラッカーズ”。ジョージア州アセンズで90年代中期に結成、ということなので、メンバーは30代半ばくらいか。(そのメンバーの中心人物はマッスルショールズの名セッション・ベーシスト、デイヴィッド・フッドの息子だそうです)

 そしてなんといっても、注目はニール・ヤング!
 ほぼ全編であのエレキ・ギターを弾いていて、自身のアルバムほど自己主張が強いフレーズは弾かないものの、彼らしいギターの唸りを随所で聴かせてくれています。もちろんロック・ナンバーだけではなくて、ソウルフルな展開の楽曲もオススメ。エピタフ/Antiレーベルから発売ということもあってか、トム・ウェイツの最近の曲F「Get Behind The Muke」のカヴァーをやっているのも面白いですね。

 ちなみに、ブッカー・Tってもう70歳越えてるかな、と勝手に妄想していましたが、実際は1944年11月12日生まれ。なので、現時点でまだ64歳なのですね! ものすごく歳をとったイメージがありましたがまだまだこれからでしょう。フジロック来日も決まったようです。蛇足ではありますが、ニール・ヤングは1945年の11月12日生まれ。ブッカー・Tとは同じ誕生日で1年違いということになります。森 陽馬

2009年4月24日(金) アラン・トゥーサン 「Winin' Boy Blues」

 ニューオリンズの名コンポーザー/黒人ピアニスト、アラン・トゥーサンの新作『ザ・ブライト・ミシシッピ』(WPCR-13336 \2,680)。昨日ここで紹介したブッカー・Tの新作とは全然毛色の違う作品ですが、いやー、これはこれで素晴らしい新作でしたね。

 2005年ハリケーン・カトリーナの被害を受けたニューオリンズへのチャリティー企画としてノンサッチ・レーベルがリリースしたオムニバス作品『アワ・ニューオリンズ』にて、全体のプロデュースを担当していたジョー・ヘンリーがこのアラン・トゥーサンの新作も手掛けており、バックにはT・ボーン・バーネット人脈のジェイ・ベルローズ、マーク・リボーから、ニューオリンズが誇る名トランペッター:ニコラス・ペイトン等が参加。ニューオリンズの土の匂いが音から伝わってきそうな温もりあるサウンドを聴かせてくれてます。

 ちなみに今作でアランはほとんど歌を歌っておらず、全曲ニューオリンズのトラディショナルなインスト・ジャズ(11曲目のみヴォーカルあり)で占められているため、一聴するだけだとすごく地味に感じる方が多いかもしれませんが、そのシンプルなピアノの響きが聴くごとにじわじわ沁みてきます。

 それを象徴しているのが5曲目に収録されているジェリー・ロール・モートンの「Winin' Boy Blues」。(ジェリー・ロール・モートンは、1920年代(!)に活躍したピアノ奏者)
 若き名ピアニスト、ブラッド・メルドーが参加し、アラン・トゥーサンとの二人だけによるピアノ演奏を聴かせる1曲ですが、表情豊かな穏やかな連弾が古き良きニューオリンズを回想させてくれます。ジャズ・ピアノ好きの方に是非聴いてもらいたい1枚ですね。森 陽馬

2009年4月25日(土) サンドパイパーズ 「グァンタナメラ」

 サンドパイパーズはLAで活動していた男性3人組のコーラス・グループで、この「グァンタナメラ」は1960年代中期のヒット・ソング・ファンには、なんとも印象に残る曲だったと思います。

 レターメンなどとはちょっと違うテイストのコーラスに女性の声が絡み、スペイン語の語感が英語とは違ったやわらかな雰囲気を伝えてくれます。
 プロデュースはトミー・リピューマ。バックのサウンドもA&Mレーベルらしい質の高さです。

 日本では永らくCDが出てなかったサンドパイパーズですが、今回はピチカートファイヴの“小西康陽セレクション”ということでのCD化です。ありがとう!小西くん!
 このアルバムを含めて彼が選んだ200枚のアルバムのディスク・ガイド本『マーシャル・マクルーハン広告代理店』が5月に出る予定になっています。

 なお「グァンタナメラ」は、1966年の大ヒットですが、このアルバム『スパニッシュ・アルバム』(UCCU-3109 \2,000)は1969年発表の彼らがスペイン語で歌った曲のみを集めた好編集LPを世界初CD化したものです。森 勉

2009年4月26日(日) Seawind 「He Loves You」

 25日(土)はあいにくの天気でしたが、今日は本当に心地良い陽射しでしたね。こんな日は店を飛び出してドライヴに行きたくなってしまいますが、次回ドライヴに行く機会があったら、絶対に持っていこうと思っているのがこの1枚。シーウインド29年ぶりの新作『Reunion』(VRCL-20001 \2,800)。

 ハワイ発1970年代に活躍したフュージョン/AORグループ、シーウインドが再結成し新たに録音された作品で、セルフ・カヴァーの再録に加え新曲も収録されていますが、これが本当に素晴らしい出来!
 単なる“懐古的再結成”なサウンドではなく見事に現代の音ともマッチしていてブリージンな演奏もNice! 女性ヴォーカリスト、ポーリン・ウィルソンの歌声も衰えを感じさせず、クールでとても美しいです。

 1曲目に収録されている「He Loves You」にはアル・ジャロウがゲスト・ヴォーカルで参加。爽やかなエレピの音色&ポーリンの伸びやかな歌声がすごく気持ちよくて、聴いているだけでウキウキしてきますね。
 アン・サリーが1stアルバム『Voyage』でカヴァーしていたのでご存知の方も多い1曲かもしれませんが、他の楽曲も“クールでかっこいい大人のリラクシング・フュージョン・ポップス”満載!。70'sフュージョン/女性ヴォーカルお好きな方にこの春大推薦のアルバムです。森 陽馬

2009年4月27日(月) Dan Hicks & The Hot Licks 「Subterranean Homesick Blues」

麻田浩さんが主宰するプロモーター、“トムズ・キャビン”。
 古くは77年にトム・ウェイツを呼んだり、約10年前にはダン・ペン、2005年&2006年には狭山でハイドパーク・ミュージック・フェスを開催。記憶に新しいところではトニー・ジョー・ホワイト、ジェフ・マルダーなど、様々なアーティストの“音楽愛”が伝わる貴重なライヴを僕らに届けてくれたトムズが窮地に立たされているらしい。

 トムズ・キャビンのHPに麻田さんからのお知らせが掲載されていますが、それによると最近の観客減・資金面不安から、プロモーターとしての存続が困難になった、とのこと。今月はエイモス・ギャレットが全国ツアー、来月にはダン・ヒックスも来日予定となっていますが、スポンサーがつかない限りこれ以後の活動は全くの未定、という状況のようです。

 社会全体の不況はもちろん、音楽業界自体が全く儲からない業種であるのに現状の落ち込み具合を加味すると、やはり実際問題先行きは厳しいかもしれませんね。年に1回・細々とでもいいから活動を続けていけるといいんですけれどね。

 ということで、今僕らに協力できることは今度あるダン・ヒックスのライヴを、チケットをちゃんと買って見に行くことでしょう。5月27日渋谷クワトロか全国ツアーが始まりますので、地方の方も是非チェックしてみてください。

 今日のこの1曲はそのダン・ヒックスの新作アルバム『タングルド・テイルズ』(VICP-64673 \2,625)に収録されているボブ・ディラン名曲カヴァー。ほぼ期待通りのダン・ヒックス的ゆるゆる感あるグッド・タイム・ミュージックに仕上がっています。森 陽馬

2009年4月28日(火) ミズノマリ 「春の嵐」〜「恋をする」

 パリス・マッチの女性ヴォーカリスト、ミズノマリがソロ・アルバム『mariage』(ASCM-6045 \2,000)を発売。

 7曲入りのミニ・アルバムですが、筒美京平、小西康陽、片寄明人、古内東子、堀込高樹ほか参加アーティストが豪華。それぞれの楽曲がそのゲストアーティストの色に染まっていながらも、ミズノマリさんのセクシーな歌声はより引き立っていて、とても楽しめる1枚でした。

 特に絶品だったのがキリンジの堀込高樹が作詞・作曲、サウンドのプログラミングや楽器なども全て手掛けた1曲目「春の嵐」。
 そして、作曲を大御所:筒美京平、作詞が恋の歌を書かせたら現代No.1の古内東子、更にプロデュースを冨田恵一が手掛けた2曲目「恋をする」。
 この2曲はどちらも甲乙つけがたいくらい素晴らしいポップ・ナンバーで、1曲に絞れなかったので今日は2曲挙げさせてもらいました。

 @「春の嵐」はまさにポップな“キリンジ”ワールドになっていて、パリスマッチの時とは違ったミズノマリさんの爽やかヴォーカルがゴキゲンな1曲。A「恋をする」は“冨田恵一サウンド”と筒美京平楽曲の相性の良さを感じさせる1曲。是非、古内+筒美+冨田トリオで、もう1曲作ってほしいですね。森 陽馬

2009年4月29日(水) Tammy Montgomery 「Make The Night A Little Longer」

 キャロル・キングとジェリー・ゴフィンの素晴らしい楽曲が集められた好選曲の作品集が、またACEレーベルより発売になりました。タイトルは『ハニー&ワイン〜アナザー・ゴフィン&キング・ソング・コレクション』(MSIG-566 \3,150)。

 もちろん2007年に出た『ゴフィン&キング・ソング・コレクション 1961〜1967』(MSIG-423 \3,150)とのダブリはありません。全26曲、有名ヒット曲となかなか聴けないレア曲がほどよいバランスで収録されています。今日はレアな方でいってみましょう。

 タミー・モンゴメリー。
 ほとんど知られていない名前ですが、この後1965年からはモータウンと契約し、マーヴィン・ゲイとのデュエットで有名になるタミー・テレルなのです。
 1961年の録音、とのことですので、なんと彼女はまだ15歳! 若さにまかせた青い歌い方ですが、1970年に病気のため24歳で他界してしまう彼女のごく初期の貴重なレコーディング曲です。

 それにしても、キャロル・キングの書く曲はどうしてこんなにフィットしてしまうのでしょう。このCDも店で家で当分CDプレイヤーの中で回り続けるでしょう。森 勉

2009年4月30日(木)トラッシュキャン・シナトラズ feat カーリー・サイモン「Should I Pray?」

 結成20年を越え、マイペースに活動を続けるスコットランド出身バンド、トラッシュキャン・シナトラズが約4年半ぶりに5作目となる新作「In The Music」(VICP-64691 \2,625)を日本大幅先行でリリース。(海外では7〜8月発売とまだまだ先です。)

 新作が出たので、久々に昔のアルバムも数枚聴き返してみましたが、何年経ってもバンドが作り出す瑞々しいメロディーは変わりませんね。今作は「LOVE」をテーマに、ニューヨークで録音。鳴らしすぎない、詰め込みすぎないシンプルなアレンジと、フランシスの穏やかな歌声&ハーモニーが聴いていて本当に心地良い一枚。

 今回どういう経緯で参加したのかがわからなかったのですが、カーリー・サイモンが一曲コーラスで参加しています。言われないと聴いた感じはわからないかもしれません。歌詞のテーマは重めですが、アルバムの中でも際立って良い曲です。この曲はヴォーカルのフランシスの実姉、エディ・リーダー(元フェアグラウンド・アトラクション)とバンドの共作。

 昨年10月に配信限定リリースされたシングル「Oranges And Apples」も収録。この曲はシド・バレットに捧げたものだそう。中盤からの約3分間の演奏にグッときます。
 地味ですが何度も何度も聴き返したくなるアルバムです。メンバーによる簡単なライナーノーツ付き。東尾沙紀





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