PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月5月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年5月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。

廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年5月1日(木) カスケーズ 「悲しき雨音」

 早くも5月になってしまいましたね。皆さんゴールデン・ウィークはいかがお過ごしでしょうか?
 武蔵小山は、というと意外?ながら毎年結構静かで、店自体も結構暇だったりします。武蔵小山は住んでいる人の方が多いので行楽に出てしまって、その予定のない人が商店街でプラプラしている(失礼)という感じです。

 さて、5月・6月のリリースは再発が色々と出る予定で、特にワーナーの“Forever Young”シリーズがスゴク充実。世界or日本初CD化を含め、リンダ・ルイス『ラーク』、アソシエイション『バースデイ』なども久々に再発。名作が限定盤ではなく、手に入りやすい価格(\1,800)で出るのは買う側にとってももちろんですが、売る側にとってもうれしいものです。

 オールディーズ・ファンにとっての目玉としては、バリー&ザ・タマレーンズのアルバムが世界初CD化されることでしょうか。

↑バリー&ザ・タマレーンズ『恋の危険信号』+4 (WPCR-75415 \1,800)

 カスケーズを手掛けたバリー・デヴォーゾン自らがバンドを結成し1963年に発表したポップ・アルバムで、表題曲「恋の危険信号」はゴキゲンなメロディーが心弾む名曲! シングルのみでリリースされた4曲をボーナス・トラックとして追加し更に2008年最新デジタル・リマスターも施されるそうですので、60'sポップス・ファンは要チェックの1枚ですね。

 ということで、今日のこの1曲はそのバリー・デヴォーゾンが手掛けたカスケーズの名曲「悲しき雨音」(原題:「Rhythm Of The Rain」 VSCD-1672 \2,200)。“雨”のオールディーズ名曲としてよく知られているので、曲目ご存知でない方もどこかでお聴きになられたことがあると思います。1963年のヒット。
 ちなみに、バリー&ザ・タマレーンズの今度再発されるアルバムにもこの「悲しき雨音」が収録されています。森 陽馬

2008年5月2日(金) Ally Kerr 「The Toothbrush Song」

 BMXバンディッツのメンバーにデモ・テープを送ったことからデビューに至り、ティーンエイジ・ファンクラブのノーマン・ブレイクなどもお気に入りに挙げているグラスゴー出身の男性シンガーソングライター、“アリー・カー”。

 彼の新作2ndアルバム『オフ・ザ・レーダー』(STSN-101 \2,300)をプロデュース&参加しているのは、これまたグラスゴー出身のポップ職人、2008年2月29日のこのコーナーでも取り上げたパールフィッシャーズのデヴィッド・スコット。(1stも彼のプロデュース)
 歌い方などどことなくデヴィッドに雰囲気が似ていて、アリーの方がアコースティックのシンプルなアレンジなので、素朴でかわいらしい歌声が際立っているように思います。

 彼が書く歌詞にもそんなかわいらしい人柄が出ていて、
♪コップには2つの歯ブラシが立っている〜それは僕にとって勝利(Victory)を象徴してるんだ〜だってそれを見ると僕は笑顔になってしまうから〜♪
 その名も「歯ブラシソング」。
何気無い歌詞なのですが、とても印象的でした。
 
 ネオアコやフォークの懐かしい雰囲気も持ち合わせていて、聴いていてとても心地良いです。聴き込むほどに好きになるアルバムです。東尾沙

2008年5月3日(土) The Rag Dolls 「Dusty」

 今日入荷してきた輸入盤の中から、いち早く封を開けて聴いたのが今日のこの1曲。ラグ・ドールズの「ダスティ」!

 以前、山下達郎さんのサンデー・ソングブックでもかかったことがある60'sガールポップの隠れた名曲で、今までちゃんとした形でCDでは聴けなかった楽曲なのです。それがリマスターされ迫力ある音になっているわけですから、この1曲だけでも買いのコンピですね。(『Early Girls Vol.5』 ACE CDCHD-1181)

 ラグ・ドールズはボブ・クリュー・プロダクションお抱えの3人組ガール・グループで、“女性版フォー・シーズンズ”といった雰囲気のコーラスが魅力! この「Dusy」は、フォーシーズンズの名曲「シェリー」をボブ・クリュー的にアップグレードさせたような楽曲で、サビのたたみかけるようなコーラスと演奏がとにかく最高。フィル・スペクター・サウンド好きの方にも聴いてもらいたいナンバーです。

 ちなみにこのコンピ。他にもダイアン・リネイ「ネイビー・ブルー」(これも超名曲!)や、パリス・シスターズのフィル・スペクター作「Be My Boy」、ゴフィン&キング作の珍しいTina Robin「Play It Again」、アンドレア・キャロル「It Hurts To Be Sixteen」、「ゴナ・テイク・ア・ミラクル」でヒットする前のロイヤレッツ「Blue Summer」などなど、とにかく挙げていくとキリがないほど珍しいイイ曲揃い! ガール・ポップ・ファンは必携の1枚となりそうです。森 陽馬

2008年5月4日(日) Neil Young 「Ohio」

 今から38年前、1970年5月4日。アメリカ・オハイオ州にあるケント大学にて行なわれていたベトナム戦争に対する抗議集会中、オハイオ州兵士がその学生達に発砲し、4人が亡くなってしまう、という事件が起こった。
 この事件の記事を読んだニールがすぐにギターを手に取り、怒りと悲しみを唄と詞に込め、CSN&Yで録音したのが今日のこの1曲「オハイオ」。

 当時大統領であったニクソンを歌詞の中に実名を出して批判。後半に繰り返される♪Four Dead in Ohio♪の連呼。そして、デヴィッド・クロスビーの泣き叫ぶようなコーラス。この曲が持つ“熱”は時を経ても全く冷めることなく現代にも響いている。

 そのニール・ヤングが今年初め、ベルリン国際映画祭にて自らが手掛けたCSN&Yのドキュメンタリー映画『デジャヴ』を出品したのだが、その記者会見が世界の音楽ファンに衝撃を与えた。
「音楽が世界を変えられるという時代は過ぎ去ったのだ」と発言したのだ。

 2001年9.11同時多発テロの後は当時放送禁止になったジョン・レノンの「イマジン」を歌い、2006年にはブッシュ政権を痛烈に批判する作品『Living With War』を発表するなど、常に“戦って”きたニール。その彼が発した先の言葉に、一部のロック・ファンは失望してしまったようだ。

 ただちょっと待ってほしい。一見するとこの発言は後ろ向きであるものの、ニールは決してあきらめてはいない。実際彼の公式サイト(音が出ます)では、今でもイラクで亡くなった兵士の数(4000名を越えたようだ)をカウントし、ブッシュ政権の残任期間をカウントダウンし、様々な戦争に対する記事&メッセージを自らの歌とともに発信し続けている。

 更に自らの言葉で、「友人が“Don't Give Up”って言ってきたけど、俺は諦めてなんかいない」と語り、「音楽が世界を変えるということができないということはわかっているが、それでも俺は歌い続けていくだろう」と力強く発言しているのだ。

♪ロックン・ロールは絶対に滅びやしない♪(「Hey Hey, My My」より)
 そう、まだニールは“ロックン・ロール”し続けている。「オハイオ」で燃えた“ロックする魂”は、いまだ“ロールし続けている”のだ。森 陽馬

2008年5月5日(月) ポニー・テール 「二人は片想い」

 小島康子と桜庭由子による女性デュオ、ポニー・テイルが1976年に発表した唯一のアルバムが、5曲のボーナス・トラックを追加して再発されました。(BRIDGE-121 \2,625)

 アルバムのプロデューサーは朝妻一郎。アレンジと演奏はムーン・ライダーズが担当し、良質のポップスを聴かせてくれます。

 この「二人の片想い」はユーミンの作品。
 3月に発売され大好評だったコンピ『音壁JAPAN』にも収められていたフィル・スペクター調60'sガール・ポップ風の曲です。

 ポニー・テールの二人は当時いろいろな曲のコーラスにも参加していましたが、一番印象に残っているのは、ムーン・ライダーズの「マスカット・ココナッツ・バナナ・メロン」でしょうか。森 勉 

2008年5月6日(火) Shelby Lynne 「Just A Little Lovin'」

 ゴールデン・ウィークも本日で終了。東京はラストの6日以外はあいにくの天気でしたが、皆さんはどんな休日をお過ごしになりましたでしょうか?
 雨も降ったりしたので、店内では比較的静かな音が程よく沁みた、ということもあり、連休中はこのアルバムを一番良く聴いていました。

 シェルビィ・リンは、グラミーを受賞したこともあるカントリー系の女性シンガー・ソングライター。今作『Just A Little Lovin'』(Lost Highway 448254)は、ダスティ・スプリングフィールドが歌っていた楽曲を歌う、というコンセプトのアルバムなのですが、これが素晴らしく良い!

 イギリス人であるダスティ・スプリングフィールドが1969年にメンフィスで録音した名作『Dusty In Memphis』へのアンサー・アルバムとでもいうのでしょうか?事実、シェルビィの今作のジャケはダスティの手の置き方に似ていますよね。
 ←ダスティ・スプリングフィールド『Dusty In Memphis』のジャ

 このシェルビィ・リンの今作、肝はなんといってもフィル・ラモーンがプロデュースしている、ということでしょう。彼のアレンジは一聴すると地味ですが、それがヴォーカリストの歌声を引き立てているのです。

 ちなみに今日のこの1曲「Just A Little Lovin'」はバリーマン作。隙間のあるバックの演奏が渋い! 他にもラスカルズ「How Can I Be Sure」も聴きものです。森 陽馬

2008年5月7日(水) マイクロスター 「魔法のドア」

 当店が大推薦しているユニット、“マイクロスター”。5月21日に発売される記念すべき1stアルバム『microstar album』の音資料が到着しました。

 いやーーー、これ!ホント名作ですヨ!
 今年の年末、音楽専門誌で特集されるであろう<2008年ベスト・アルバム>にはおそらく各誌ピックアップすることでしょう! それくらい素晴らしいポップ・アルバム。というか、これをポップ部門で取り上げなくて、他の何が“ポップ”なんだ、と突っ込みたくなるくらい、“ポップスの夢”がタップリ詰まった1枚なのです。

 フィル・スペクター的なエコーがかかっているとか、バカラックのような美しいメロディー/音作りであるとか、ドラムがハル・ブレインっぽいとか、ナイアガラ的なアレンジが出てくるとか、そういう細かい部分ももちろん魅力だけれども、そんなことよりもとにかく、マイクロスターを聴くと、ビーチ・ボーイズが永遠の夏を聴く者に見させてくれたように、3分間の魔法の世界に誘ってくれるのです。

 なお、6月8日(日)には、当店地下のライヴ・カフェ・アゲインにて、マイクロスターの発売記念イベント(なんと入場無料!要予約)も開催が決定しましたので、ポップ・ファンはもちろんのこと、マイクロスターに少しでも興味を持った方は是非参加してみてくださいね。森 陽馬

2008年5月8日(木) Carly Simon 「Island」

 スターバックスとコンコード・レーベルが共同で設立し、昨年はポール・マッカートニー、ジョニ・ミッチェル、ジェイムス・テイラーの新作をリリースしたレーベル、“ヒア・ミュージック”。

 ジェイムスの元奥方でもある女性シンガー、カーリー・サイモンもその“ヒア・ミュージック”からこの度新作を発表しました。(『This Kind Of Love』 UCCO-3004 \2,500)

 前作『Into White』(2006年12月31日のこのコーナーでも取り上げました)はカヴァー中心の選曲でしたが、今作は自作曲で固められ、ほぼ全編ブラジル音楽にインスパイアされたアレンジ。なんと、そのアレンジをジミー・ウェッブが手掛けており、上品な大人のブラジル・ヴォーカル・アルバムといった趣きの1枚に仕上がっています。

 今日のこの1曲は、カーリー・サイモンとジェイムス・テイラーとの間に生まれた息子、ベン・テイラー作による楽曲で、いかにも彼らしいシンガー・ソングライター的ないい雰囲気のナンバー。
 8曲目には、カーリーの娘、サリー・テイラー作によるボサノヴァ・ナンバー「When We're Together」も収録されています。森 陽馬

2008年5月9日(金) ファイン・フレンジー 「Borrowed Time」

 今週は期せずして女性ヴォーカルものが続いてしまいましたが、もう1枚オススメしているアルバムを紹介しましょう。

 ファイン・フレンジー(A Fine Frenzy)は、アリソン・シドルというシアトル出身22歳の女性シンガーによる1人ユニット。彼女は若いながらも音楽だけでなく文学作品も色々と読んでおり、“Fine Frenzy”というユニット名も、シェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』から取られたそうです。(ファイン・フレンジー『海からの贈りもの』 国内盤ボーナス・トラック収録 TOCP-66783 \2,500)

 かくいう僕もジャケットに引かれて購入したのですが、そのジャケットのイメージ通り清楚かつ透き通った美声で、サラ・マクラクランを力強くした感じ。サウンドはピアノを基調にしたシンガーソングライター作に程よくストリングスやオーガニックな音が味付けされており、その美声を引き立てています。

 昨年はルーファス・ウェインライトのオープニング・アクトなども務めており、この作品もメジャーのEMIからのリリースではありますが、どことなくカナダ的な雰囲気も持ち合わせているので、これから先も一発ヒットなどを狙うのではなく、K.D.Langなどのように地道に活動していって欲しいニューカマーです。森 陽馬

2008年5月10日(土) ロリー・ブロック 「Spiritual」

 先日店長が取り上げたスキーター・デイヴィスと共にリリースされたジャケガイノススメ・シリーズ中の1枚。現在もブルース・ギタリスト/シンガーとして活動中の白人女性、ロリー・ブロックの75年発表ソロ・デビュー作(「ロリー・ブロック」BVCM-35254 \2310)を、最近気に入ってよく聴いています。
 
 店長が店頭演奏用にLPからMDに落とした音を聴いたのが最初で、当時全然ヒットしなかったそうですが、全曲彼女による楽曲はどれも素直に良いなと思えるものばかりでした。
 
 プロデュースには元ブラッド・スウェット&ティアーズのスティーヴ・カッツ。オーケストラのアレンジは同じくBS&Tにいたフレッド・プリシャス。スティーヴ・カッツ含め、ルー・リードに関連するミュージシャン達がバックを務めており、かわいらしい三日月ジャケのデザインもまた、ヴェルヴェッツ〜ルー・リードのジャケットを手掛けていた人なのだそうです。
 
 楽曲はソウル寄りで、ファンキーなものからゴスペル・バラード、カントリーと様々。曲によってはローラ・ニーロを思わせるパワフルでのびのびとした歌声も良く、ピアノの弾き語りで聴かせるこのバラードではしっとりとした歌声が心地良い一曲です。
アメリカの女性シンガーがお好きな方はチェックしてみて下さい。東尾沙

2008年5月11日(日) サカナクション 「雨は気まぐれ」

 2008年前半のJ-POP音楽シーンで、一番の話題と躍進を見せたのはなんといっても“Perfume”でしょう。彼女達自身の知名度が一気に全国区になっただけでなく、プロデューサー中田ヤスタカ(capsule)により、普段CDを聴かないような一般人にもエレクトロニカ/テクノが普及したことは音楽業界にとっても非常に大きかったと思います。(ホント、貢献度という点では2008年のレコード大賞にしてもいいのではないでしょうか。)

 でも個人的には今ひとつグッとこなくて、まあ好き嫌いは人それぞれなのでしょうが、あの無機質な歌い方がダメなようです。実際Perfumeにとっては、その無機質さが売り、ということもあって、ライヴ時はほとんど全て口パク。歌入れの際も、中田ヤスタカが彼女達に感情を入れないで歌うように指導しているそうです。
 一昔前までは、アイドルが歌番組に生出演してヘロヘロな音痴でも生歌で歌っていたものでしたが、それはもう時代遅れなのでしょうね。

 さて、話変わって今日のこの1曲、サカナクション。
 札幌で活動していた山口一郎(Vo&G)と岩寺基晴(G)含む男3人女2人による“エレクトロニカ・ダンス・ポップ・バンド”で、例えるなら、<ハナレグミorくるりが、エレクトロニカが入ったダンス・ポップを歌っている>雰囲気なのです。

 このユニットの音を好きになったのは、エレクトロニカを使用していながら、曲が非常にポップで、そして何より、“バンド”を感じさせてくれるから。
 宣伝文句では、“踊れるエレクトロニカ・ポップ”とも言われていますが、そこに生バンド的なグルーヴが加わることによって、まさに“サカナ”が“アクション”しているような前に進んでいく勢いがビンビン伝わってくるのです。さりげなくもかなり高度な演奏力と切ない節回しの詞世界もNice!

 今日のこの1曲には本日のはっきりしない天気もあって、4曲目「雨は気まぐれ」にしましたが、1曲目「ワード」がオススメ。隙間のある出だし&Aメロから印象的なフレーズを畳みかけるサビへの展開が聴いてるとクセになります。森 陽馬

2008年5月12日(月) ジミー・スミス 「ザ・キャット」

 ハモンド・オルガンの音色というのは、なんて魅力的な響きなのでしょうか。楽器は弾けない僕ですが、フット・ペダルを駆使したりして弾けたら気持ちいいでしょうね。

 1960年代オルガン・ジャズの名曲といえば、この「キャット」でしょうか。
 ルネ・クレマン監督、アラン・ドロン、ジェーン・フォンダ主演の映画『危険がいっぱい』(原題:Joy House)の中で使われ、1964年シングル盤としても発売されました。

 ビルボードのヒット・チャートにもチャートインしたり、日本のラジオのヒット・パレードにも登場していたので、中学生でもオルガン・ジャズに親しめる時代でした。(映画音楽がよくかかっていた『ユア・ヒット・パレード』などで聴いた記憶があります)

 作曲、ブラス・アレンジはラロ・シフリン。かっこいい曲です。森 勉

2008年5月13日(火) 寺尾 紗穂 「風はびゅうびゅう」〜「立つことと座ること」

 デビュー時から応援している女性シンガー・ソングライター、寺尾紗穂の新作3rdアルバムが本日発売。(『風はびゅうびゅう』 MDCL-1488 \3,150)

 寺尾紗穂名義としては約1年ぶりとなる今作は、前作『御身』の流れを引き継ぎつつも、前2作にはない重厚さ、凛とした作品本来の力強さを感じさせてくれる1枚。やや暗めなテーマの楽曲が多いものの、それが重すぎず、かといって軽くもなく、じわっと心に沁み込んでくる。まるでアキ・カウリスマキの映画を観ているような印象だ。

 5曲目「何時かの幾つかの色」のように、今までにないようなバンド・アレンジの楽曲もとても新鮮ではあるが、このアルバムはそういう楽曲単位ではなく、“風”の流れを追うように全11曲を通して聴かないと本当の良さが伝わらないような気がする。

 1曲目♪風はびゅうびゅう ふきすさぶのでした♪と歌われるその“風”は、アルバムラストの「立つことと座ること」で、
♪風が鳴るのは愛しい者のため 〜 風がこんなに強く吹くのはもつれる過去を吹き飛ばすため 〜 この風の果てる場所が知りたい♪
と歌われることにより、実際は果てることはないであろう“風”の行方を僕等聴く者に郷愁を持って思い描かせてくれるからだ。森 陽馬

2008年5月14日(水) ASIA 「Voice Of America」

 5月12日に東京国際フォーラムで行なわれたエイジアのコンサートに行ってまいりました。
 今回のエイジア来日公演はオリジナル・メンバーの4人で、ジョン・ウェットン(B.Vo/元キング・クリムゾン、UK等)、スティーヴ・ハウ(G/イエス)、ジェフ・ダウンズ(Key/バグルス等)、カール・パーマー(Dr/EL&P等)という布陣。もちろんエイジアのヒット曲や今年発表した新作からの曲もやっていましたが、各メンバーが在籍していた往年の名曲が連発!

 いきなり前半にイエスの名曲「ラウンドアバウト」が炸裂したかと思いきや、中盤にはEL&Pの「庶民のファンファーレ」(これ、かっこよかった!)、そして、キング・クリムゾンの名曲「クリムゾンキングの宮殿」が登場!
 まさかここでクリムゾンの曲が聴けるとは、と思っていたら、その次がいきなり雰囲気変わって、バグルス「ラジオスターの悲劇」が急投下! 1階席はほぼ総立ちで一気に場内ノリノリ!(ジェフ・ダウンズが銀ラメの衣装に着替えたりして芸が細かい)・・・と、まさに“ブリティッシュ・ロックのファンタジー・ショー”でしたね。正直言ってあまり期待していなかったのですが、予想以上に楽しめてとても良かったです。

 約2時間20分近いライヴだったのですが、中盤あたりには各メンバーによるソロ・アコースティック・コーナーも設けられており、そこでジョン・ウェットンが「ブライアン・ウィルソンに捧げた1曲です」とMCで紹介して演奏したのがこの今日の1曲「Voice Of America」。

 エイジアが1985年に発表したアルバム『Astra』に収録されているこの曲は、実際にジョン・ウェットンがブライアン・ウィルソンをテーマに作った楽曲で、僕は勉強不足で知らなかったのですが、今までにもライヴでよく演っているようです。
 この日は全体的にジョン・ウェットンのヴォーカルマイクが大きすぎて、時々音が割れてしまったり耳が痛かったりするほどだったのですが、この時のアコースティック・ヴァージョンは比較的心地良く聴くことができました。
 それにしても、ジョン・ウェットンがわざわざMCまでしてこの曲を演るとは、よっぽど彼はブライアン好きなのかもしれませんね。森 陽馬

★掲載ジャケットはエイジアのベスト盤『ゴールド』(UICY-1347 2CD \2,980)。「Voice Of America」も収録されています。

2008年5月15日(木) アルミナム・グループ 「Milligram Of Hapiness」

 まさに“アメリカのキリンジ”!
 アルミナム・グループはシカゴを中心に活動しているジョン&フランク・ネイヴィン兄弟によるロック・ポップ・ユニット。ここ最近はアルバムを出していませんでしたが、約4年半ぶりとなる久々のオリジナル5thアルバム『リトル・ハピネス』(PCD-93106 \2,415)を先日発表しました。

 今までの作品に引き続き気持ち悪いジャケットで、一見するとサイケなアーティスト?と思われるかもしれませんが、音自体はとても聴きやすい音響ポップで、気張らないヴォーカル共々洗練されたポップ・サウンドを聴かせてくれます。

 シカゴ音響派のジョン・マッケンタイアがドラムやミックスなどで参加しているので、シー・アンド・ケイクやハイラマズ、後期のGREAT3などがお好きな方にもオススメの仕上がり。
 ちなみにこのアルバムは3部作中の3作目なので、これが気に入った方は前々作『ハピネス』、前作『モア・ハピネス』もチェックしてみてください。森 陽馬

2008年5月16日(金) Gerald Alston 「You Send Me」

 5/31、6/1にビルボードライヴ東京で来日公演を行なう予定のソウル・ヴォーカル・グループ、マンハッタンズ。
 そのリード・ヴォーカリストであるジェラルド・アルストンの新作『Sings SAM COOKE』が、本人の自主インディー・レーベルから発売されました。

 タイトル通り、サム・クックの名曲をカヴァーしたアルバムですが、モーメンツやレイ、グッドマン&ブラウンで知られるアル・グッドマンがほぼ全面プロデュースしていることもあり、80's的スウィートな魅力も感じられるアーバンなヴォーカル作品に仕上がっています。

 「Sentimental Reasons」や「A Change Is Gonna Come」、「Wonderful World」などの定番曲も、ジェラルドの気張らないさらりとした歌い口ながら、力強さもある歌声が結構ハマッていて、サム・クックを聴いたことがない方にも聴きやすい1枚と言えるでしょう。

 その中でもやはり1曲目「You Send Me」。サックス・ソロを織り交ぜ、中間部分に甘い語りを入れるなど、甘く切ないアーバンな香りを散りばめたアレンジがNice! 「You Send Me」“都会のマンハッタン 大人ヴァージョン”といった感じでオススメです。森 陽馬

2008年5月17日(土) スクイーズ 「Sunday Street」

 スクイーズのこれまでの作品の中でも、このアルバム『PLAY』(91年作・最近US盤でCDが再発になりました。)は、地味で暗めな曲が多いのですが、その中で、ずば抜けて明るい「Sunday Street」という曲を聴くといつも、無意味にテンションが上がってしまいます。
 
 日曜日、カップルが過ごす休日を歌ったこの曲はレコード会社に気に入られ、シングルにもなった曲なのですが、スクイーズが歌いそうないかにもなポップ・ソングのイメージが強いという理由でメンバー間の評価はイマイチのようです。
 
 元気のいいホーンに、突き抜けるようなギター・ソロ、♪On Monday〜Sunday♪のコーラスが楽しいサビ、ゴスペル風コーラスが繰り返される終盤など、やや大袈裟かもしれませんが、聴いていて本当に気持ちいい曲です。
 これからの季節、ドライブしながら聴くのにぴったりの曲だと思います。免許も車も無い私が言っても説得力に欠けますが...(笑)
 
 今作にはスティーヴ・ナイーヴがキーボード、ブルース・ホーンズビーがアコーディオンで参加しています。この曲だけでなく、他にもいい曲があるので興味のある方は是非。東尾沙紀

2008年5月18日(日)Jive Five 「My True Story」

 山下達郎の新曲「ずっと一緒さ」発売/FMサンデーソングブック800回記念のイヴェント、<アコースティック・ミニ・ライヴ>に運良く当選!! 東京の分はハズレだったのですが、大阪厚生年金会館・芸術ホールの分が当たり、思わぬ小旅行気分を味わってきました。
 たった6回のライヴとはいえやはり千秋楽を聴きたいということで、大阪にも応募したのですが、まさか当選するとは・・・。とにかく出してみるものですね。

 さて、ライヴの内容ですが、ミニ・ライヴというネーミングですが、スクリーンに映し出された過去のツアー映像を含めて約2時間。久し振りのライヴを堪能できました。
 難波弘之のピアノ、伊藤広規のエレキ・ベース、そして山下達郎のアコースティック・ギター&パーカッションいろいろ、という編成。曲目など詳しいライヴ・レポートは別の機会にゆずるとして、今日の話題はドゥワップなので、今回のミニライヴでもありましたよ、アカペラ・コーナー! 相変わらず、素晴らしい声量で聴きほれてしまいました。

 ということで、達郎ファンは必携!と言われる『Doo Wop Box』4枚組全101曲(RHINO R2-71463)。名曲タップリ、達郎がカヴァーした曲も結構入っているこのBOXの中から、次の『オン・ザ・ストリート・コーナー Vol.4』には是非歌って欲しいジャイヴ・ファイヴの「マイ・トゥルー・ストーリー」。

 1961年に全米3位と大ヒットしましたが、あまりカヴァーされていないようなので、達郎節で聴きたい1曲です。森 勉

2008年5月19日(月) マウンテン・モカ・キリマンジャロ 「BAGGY PANTS」

 久々にファンクで、キターッ!と思える作品が出てきました。それも日本人ファンク・バンド!埼玉発のグループ、その名も、“Mountain Mocha Kilimanjaro”(『マウンテン・モカ・キリマンジャロ』 PCD-22313)。

 トランペット、サックス入りの男性6人グループで、ミーターズやJBファンクをお好きな方なら、一音でノックアウト必至のサウンド。楽曲は全てオリジナルですが、全曲がファンク・マナーにのっとった音作りなのでキラーなリフが連発! 聴いていて飽きないし、どの曲聴いても「これ今のバンドなの?}と思ってしまうような“70's FUNK”した作品です。

 今日のこの1曲も、モロにジェイムス・ブラウン的なキラー・チューンで、タイトルも「HOT PANTS」ならぬ「BAGGY PANTS」! オーサカ=モノレールの曲を更に勢いをつけてソリッドにした雰囲気なナンバーですが、アルバム全体的に録音が<オープンリール一発録り>とのことなので、音の感じも適度にアナログ的な質感があってイイですね。全曲インストというのも潔い!

 ミーターズ的なニューオリンズ・ファンク、JBファンクお好きな方から、現代の新世代ファンク・バンド、ニューマスターサウンズなどが気に入っている方にも超オススメの1枚です。森 陽馬

2008年5月20日(火) 堺 正章 「忘れもの」

 最近はすっかり連ドラを見なくなってしまったが、学生時代の友人とこの前会ったとき、「堺正章が出ているドラマ『無理な恋愛』が結構面白いんだよ」という話を聞いた。

 さすがに途中からドラマを見るほどの熱意はないが、このドラマの堺正章本人が歌う主題歌「忘れもの」(VICL-36433 \1,200)を聴いてみたところ、これが思いのほかイイ。

 上品なオーケストラ/コーラス・アレンジがもろに“ナイアガラ”な感じで、雰囲気としては、“21世紀の「冬のリヴィエラ」”! 早速クレジットをチェックすると、アレンジが清水信之だった。

 このアレンジャーの方は以前にEPOの楽曲や池田聡の名曲「モノクローム・ビーナス」、そして竹内まりや「不思議なピーチパイ」などを手掛けている名編曲者で、作詞:秋元康、作曲:Gajin(中村雅人)という布陣共々見事な仕事ぶりだ。ここ最近にはなかった古き良き日本の歌謡曲に仕上がっている。

 ちなみに2曲目「サイケなハート」は、秋元康&後藤次利という黄金コンビ。ムッシュかまやつも参加している。森 陽馬

2008年5月21日(水) Brian Wilson 「This Whole World」

 すでにビーチ・ボーイズ・ファンの方々はチェック済みかもしれませんが、ブライアン・ウィルソン待望の新作が遂に発売決定しましたね!(リンク先はCDジャーナルのNewsページ。米国発売9/2発売。)

 1年くらい前から出る、とか、録音した、とか噂ばかり入ってきて、結局2007年内にはリリースされませんでしたが、ブライアンの公式ページでは何曲か聴けたりしたときもあったので、リリースが近づいていることは確実に伝わってきていました。
 そして遂に公式発表! それも今回は以前ビーチ・ボーイズで所属していたCapitol(キャピトル・レーベル)からのリリース、ということで、本当にうれしいかぎりです。

 ヴァン・ダイクが絡んでいるとか、朗読が入っているとか、曲目もすでに決定しているようなので色々な情報も耳にしますが、いやー、もう、とにかくリリースされるだけでいいんですよね。ブライアンの場合は。(レコード店員のくせに無責任な発言でスミマセン・・・)

 作家・重松清さんのある短編小説の中の言葉で、
「ロックは始めることで、ロールはつづけること。〜二つ合わせてロックン・ロール〜」
という一節が出てくるのですが、ブライアンにしても、マイク・ラヴのビーチ・ボーイズにしても今なお、「ロールし続けていること」が“素敵じゃないか”、と思うわけです。
 ちょっと話がそれましたが、今回Capitolからのリリースということですが、もういっそのことマイク・ラヴのビーチ・ボーイズもCapitolと契約してもらって新作出して、そしてブライアンやアルと共演、と、まさにビーチ・ボーイズ・ファンにとってのカリフォルニアの夢を是非とも実現してほしいものですね!

 さて、今日のこの1曲は、ブライアンが1999〜2000年に行なっていたツアーの音源としてCD化されている『ライヴ・アット・ロキシー』より。1999年の来日公演は本当に良かったですね。個人的には2曲目に演奏された「This Whole World」を生で聴いた感動がいまだ冷めません。森 陽馬

2008年5月22日(木) マイクロスター 「フィーリン!」

 マイクロスター、待望のファースト・フル・アルバムです。2001年に3曲入りのミニ・アルバムを聴いて以来、夢にまで見たアルバムが発売になりました。

 ヴォーカル、エレキ・ベース、作詞担当の飯泉裕子と、ギター、打ち込み、その他バック・トラック作り全般、作曲担当の佐藤清喜によるマイクロスターは、今、日本で一番ポップで刺激的なユニットだと思います。
 音の緻密さもさることながら、メロディーのよさは特筆もので、3曲入りに収録されていた「スウィート・ソング」は初めて聴いてから7年経過し、ほとんど毎日聴いていても飽きがこない、という不思議な力を持った曲なのです。

 さて今日はその「スウィート・ソング」の前、1曲目を飾る「フィーリン!」。BMXバンディッツのダグラス・T・スチュワートによる短いナレーションに導かれて飛び出してくる、とびっきりイカしたナンバーです。僕の採点は100点満点に限りなく近い“98.6”といったところでしょうか。

 音だけでなく、紙ジャケット(初回のみ)のデザインや貼り合わせにもこだわりが感じられるアルバムです。
 是非直接手にとってその感触をお確かめください。CDレーベルの色も<ペット・サウンズ>カラーであざやか♪ 森 勉

2008年5月23日(金) Jim James & Calexico 「Goin' To Acapulco」

 先日、ボブ・ディランの自伝的作品と言われている映画『アイム・ノット・ゼア』(監督:トッド・ヘインズ)を鑑賞。
ご覧になった方々の話を伺うと、賛否両論どころか“否”の方が多かったりしたので、あまり期待せずに観に行ったのですが・・・、これが予想以上に面白い映画でした。

 ただ、ボブ・ディランをよく知らない人、もしくは彼のアルバムを数枚しか持っていないような“なんとなくディラン好き”な方には、はっきりいってオススメできない映画でもあります。(しかしながら裏を返せば、大のディラン好きほど楽しめる映画だといえるでしょう。)

 ディラン好きでないとオススメできない理由は、まず“自伝的映画”と謳われているものの、そんじょそこらの単なる自伝とはわけが違って、ディラン本人の名前は出てこないし、時系列は無視されてるし、1本筋の通ったストーリーでもないし、・・・ということで、ディラン・ファンでない方がご覧になっても支離滅裂にしか感じない可能性があるからです。

 つまりは“ディランの自伝的エピソードをモチーフにフィクションに仕立てた映画”なのですが、その分、ディランの小ネタがセリフやエピソードのそこかしこに入っているので、ディラン・マニアにとっては、例えば、「ここは『ブロンド・オン・ブロンド』あたり、イーディと付き合っていたあたりがモデルになっているんだな」などと、想像しながら楽しめる、というわけです。

 ジム・ジェイムス(マイ・モーニング・ジャケットというグループのヴォーカリスト)とキャレキシコが歌うこの曲は、元々の「Goin' To Acapulco」が収録されていた『地下室』のジャケットの雰囲気と、70'sディランのツアー“ローリング・サンダー・レビュー”、そしてディランが出演していた当時の映画『ビリー・ザ・キッド』のストーリーがミックスされて表現されたシーンで使われています。独特な寓話的イメージがジム・ジェイムスの歌声と共に脳内に広がってくる不思議な魅力を感じさせる場面と歌でした。

 ちなみに映画を観終わってから知ったのですが、映画内でシャルロット・ゲンズブール演じる奥さんと離婚をしてしまう役柄のヒース・レジャーが、実生活でも離婚してしまい今年1月に急死してしまったそうです。(ちなみにその離婚した奥さんミシェル・ウィリアムスは、この『アイム・ノット・ゼア』でイーディ的な役で出演しているのです)
 不思議な繋がりというか現実とリンクしてしまう部分があるなど、この映画の魔性的な恐さを感じさせるエピソードでした。森 陽馬

2008年5月24日(土) Donnie Fritts 「My Friend」

 じめじめと蒸し暑くなってくると、個人的にアメリカ南部の音楽/スワンプ/渋いロックを不思議と聴きたくなります。
 そんな気分になった週末、スワンプ・ロック/アメリカン・ルーツ・ロック好きの方なら一度は名前を聞いたことがあるであろうドニー・フリッツのなんと!新作!が入荷してきました。(輸入CD 『One Foot In The Groove』 LMR-1)

 南部の重鎮:ダン・ペンによるプロデュース、スプーナー・オールダム、トニー・ジョー・ホワイト参加、とくれば、もう音は保障されたようなもの。ツボを心得たタメの効いた演奏と、ややヘロヘロなドニーの歌声が味わい深い1枚です。

 中のブックレットによると、ドニー・フリッツは2001年に重病で生死を彷徨ったそうですが、友人などの支えにより見事復活。こうして、アルバムをレコーディングできるまでに回復したそうです。

 なお、このアルバムは、2006年に亡くなった彼の友人、Bill Blackburnに捧げられており、8曲目には「My Friend」という曲も収録。滋味あふれるハーモニカの音色と渋い彼の歌声が沁みます。森 陽馬

2008年5月25日(日) 杉 真理 「ワンダフル・ライフ〜君がいたから〜」

 5月23日に渋谷O-EASTで行なわれた<杉真理 30周年記念ライヴ>に行ってきました。

 30周年にふさわしいスペシャルなゲストが多数出演し、杉真理とのジョイント・ライヴ&トークを楽しむことができました。
 根本要、須藤薫、村田和人、黒沢秀樹、堂島孝平、安部恭弘、伊藤銀次、松尾清憲、そしてシークレット・ゲストだった佐野元春。杉と佐野が一緒のステージに立つのは、1981年12月3日、大滝詠一のヘッドフォン・コンサート以来だそうです。

 そしてステージでは初めて歌うという「Bye Bye C-Boy」を二人で披露してくれました。そしてその次はなんと!そこに伊藤銀次も加わり、新旧ナイアガラ・トライアングルによる「A面で恋をして」を。
 佐野が♪夜明けまでドライヴ〜♪のところを、CD以上に強調して歌い、大いに盛り上げてくれました。

 さて、今日のこの1曲は、当日は安部恭弘とのデュエットで歌われた「ワンダフル・ライフ」。(1990年作『ワンダフル・ライフ』に収録 MHCL-1294 限定 \2,500)
 CDでは竹内まりや、山下達郎がハーモニー・ヴォーカルで参加。佐橋佳幸のジェイムス・テイラー風のギターがなんともいい味の1曲です。森 

2008年5月26日(月) Neil Young 「Love Is A Rose」

 今、ニール・ヤング・ファンの間で話題になっている?のが、アーカイヴBOX&ブルーレイ。
 もう何年も前から「今年は出る!」と本人が言いながら、結局発売が先延ばしとなっていたアーカイヴBOX。ニールの未発表音源をどっちゃり詰め込んでCD8枚&DVD2枚でリリース、という話もあったのですが、それがDVD8枚になる、とか色々と噂が噂を呼んでいたのです。

 しかしながら、先日ニール本人がマイクロシステム社と共に会見し、らのアーカイヴBOXをブルーレイ10枚組で今年の秋に発表する、と発表したのです。(上記リンクは、日本のIT Media社HPのニュース欄)

 ちょっ! えっ?! ブルーレイ10枚組?!
 いやはや、なんぢゃその容量の大きさは? 値段は? ホント出るの?! という感じですが、本当に発売されたら、これはある意味音楽界にとっては画期的なリリースとなるでしょうね。
 ブルーレイのソフトはまだまだヒット映画の一部しかリリースされていない現況なので、音楽ソフトとしてのブルーレイの真価がニールのアーカイヴで試される、というわけです。いやはや。

 ブルーレイのハードは当分買う予定なかったのですが、早速量販店に寄っては、価格や性能をチェックしている今日この頃であります。(でもまだちょっと高いんだよなー。)

 ということで、ニールの楽曲から「Love Is A Rose」。
元々、ニールの未発表曲で「Dance Dance Dance」という曲があるのですが、この曲を少し改作したのがこの曲。リンダ・ロンシュタットが1975年作『哀しみのプリズナー』の中で歌っており、おそらくニールがリンダに捧げた1曲なのだと思います。
 ニールのヴァージョンは70年代にリリースされたベスト盤『Decade』(WPCR-1189 \3,568)にしか今のところ収録されておりません。森 陽

2008年5月27日(火) Bonnie Raitt 「I Thought I Was A Child」

 “ワーナー・ブラザーズ・レコード創立50周年記念”ということで、ここ最近は生産中止となっていた名盤が“フォーエバー・ヤング・スペシャル・リリース”と銘打たれて、最新デジタル・リマスター(一部除く)で色々と発売。
 その中でお気に入りの1枚、ボニー・レイット『テイキン・マイ・タイム』(WPCR-75393 \1,800)。

 1973年発表3rdアルバム。当時まだ23歳(!)の彼女が、オーリアンズのジョン・ホールプロデュースにより、リトル・フィートの面々やタジ・マハールなどをゲストに迎え制作した名盤で、アメリカン・ルーツ・ロックの滋味深さを感じさせてくれる作品です。

 今日のこの1曲「I Thought I Was A Child」(邦題:幼かった私)は、ジャクソン・ブラウン作。ジャクソン・ブラウン自身は2nd『For Everyman』で歌っていますが、こちらのボニーのヴァージョンもいいですね。ピアノはビル・ペイン、ギター・ソロはジョン・ホール、そしてアール・パーマーがドラムを叩いています。

 ちなみに今回の再発は小尾隆さんによる新ライナー・ノーツ。
小尾さんは春日出版から発売の新刊『My Favorite of US Records』(今週末入荷予定)を著作され、6月5日(木)には当店地下のアゲインにて、出版記念トーク&DJイベントが開催されます。60〜70'sアメリカン・ロックお好きな方は是非そちらの本もチェックしてみてください。 森 陽馬

2008年5月28日(水) おおはた雄一 「Martha」

 超ダミ声になった今のトム・ウェイツもいいけど、やっぱり初期が一番!という方が実際多いはず。
 特に『クロージング・タイム』は今でもよく聴くのですが、このアルバムの何がいいか、っていうと、1曲目「Ol'55」の演奏に入る前、トム・ウェイツ自身が小さい声でボソッと囁くようにとるカウント♪1、2、3、4♪。これがイイんですねー。
 朴訥で地味だけれど、この♪1、2、3、4♪こそが、このアルバム、そしてトム・ウェイツのイメージを決定づけた、といっても過言ではないと思うのです。

 さて、今日紹介するシンガーソングライター/ギタリスト、おおはた雄一が久々のアルバム『Small Town Talk』をリリース。(WPCL-10452 \3,150)
 2006年発表の前作『ふたつの朝』でも細野さんの「ハリケーン・ドロシー」をカヴァーしていて、その渋いルーツぶりを垣間見せていましたが今作は更にルーツ・ミュージック/アコースティックな音作りにこだわった1枚に仕上がっています。

 ボビー・チャールズの名曲として名高いタイトル曲「Small Town Talk」、B・ディラン「Don't Think Twice〜」、ジェイムス・テイラー「Don't Let Me Be Lonely Tonight」、高田渡「コーヒーブルース」などを絶品アコースティック・ギターを交えカヴァーしているのですが、その中でトム・ウェイツの1stに収録されている名曲「マーサ」もカヴァー。

 2分半ほどの短いギターインストによるカヴァーなのですが、この曲の最初になんと!♪1、2、3、4♪のカウントが入っているのです。
 トム・ウェイツのオリジナルの「マーサ」にはカウントは入っていないのですが、トム・ウェイツをカヴァーするということで、あえてこの♪1、2、3、4♪のカウントをおおはた雄一が冒頭に入れたのでしょう。
 うーん、さりげないけれど見事な演出! ささやかながら、彼のトム・ウェイツへの愛情が伝わってくる1曲です。森 陽馬

2008年5月29日(木) Melody Gardot 「Worrisome Heart」

 7月2日には『夜と朝の間に』という邦題タイトル(原題は『Worrisome Heart』 Universal 1749640)で、日本デビューも決まっているフィラデルフィア出身の女性シンガー、メロディ・ガルドー。
 
 店頭で初めて聴いたのですが、これがとっても良いです。
 邦題やモノクロ・ジャケのイメージ通り、音数の少ないジャジーな演奏が夜にぴったりです。
 
 まだ22歳とは思えない落ち着いた歌声も良く、ノラ・ジョーンズに似た雰囲気で、曲によってはアン・サリーにも歌い方が似ていて、ゆったりした気分で聴ける一枚です。
 
 トム・ウェイツ、ノラ・ジョーンズのファースト等がお好きな方ならきっと気に入るのではないかと思います。静かな夜にきっと心地良い気分にさせてくれると思います。東尾沙紀

2008年5月30日(金) オムトン 「縞々1」

 彼女たちのライヴを一度でもご覧になれば、夢の中を浮遊するようなマリンバの音色と反復するリズムに、強く魅了されることでしょう。女性3人打楽器ユニット“オムトン”。3枚目となる新作アルバム『3』(CXCA-1229 \2,500)が先日発売。

 澤口希、佐藤貴子、高橋若菜の3人が、マリンバ(木琴の一種)、パーカッション、ピアノなどで奏でるその音楽は全曲インスト。しかしながら、耳を澄ますと声が聞こえてきそうな、不思議な浮遊感漂う独特なサウンドなのです。

 ジャズでもなく、クラシックでもなく、ミニマル・ミュージックとか音響とも違う“温もりのある音楽”で、CDをかけていると音が風のようにそよいでいるような独特な感覚を味わうことができます。

 オーガニックなインストゥルメンタルお好きな方から民族音楽をよく聴いている方、そして叙情的な素敵なBGMをお探しの方にも大推薦の1枚です。森 陽馬

2008年5月31日(土) Christian Prommer's Drum Lesson 「Firecracker」

 クラフトワーク「ヨーロッパ急行」、デリック・メイ「Strings Of Life」、Ame「Rej」...etc。これらテクノ/ハウス/CLUB MUSICの人気曲を打ち込みではなく、生ジャズ・バンド・アレンジでカヴァーしたのがこのアルバム。

 “Christian Prommer's Drum Lesson”は、新世代フューチャー・ジャズ・バンド、“トゥルビー・トリオ”のメンバーであるクリスチャン・プロマーが中心となって結成したグループで、CLUBヒット曲を上品なジャズで聴かせてくれるオシャレな1枚です。

 国内盤(VICP-64094 \2,625)のみのボーナス・トラックとして、YMOで有名な「Firecracker」が追加収録。リリカルなピアノの響きがムーディーな夜にピッタリなナンバーにアレンジされています。
 ちなみにオリジナルは細野さんも大のフェイヴァリットとして挙げているエキゾティック・サウンドの大御所、マーティン・デニーのナンバーで、この曲がきっかけでYMOが結成された、という話もあるらしい。

 なお、「Firecracker」は国内盤のみのボーナス・トラックなのでお得ではあるのですが、UK輸入盤には、国内盤には入っていないダフトパンクの「Around The World」カヴァーが収録。これが結構かっこいいヴァージョンだったりするので、非常に悩ましいところです。森 陽馬





トップへ
戻る