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  今日のこの1曲 “Archives”

<2023月2月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2023年2月に更新した“今日のこの1曲”コーナー


廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。

<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2023年2月1日(水) スガシカオ 「東京ゼロメートル地帯」

本日発売されたスガシカオの新作『イノセント』がすごくイイ!
何度もリピートして聴いています。

スガシカオ『イノセント』
(初回A 2CD仕様 VIZL-2132 4,950円/初回B ライヴDVD付 VIZL-2133 5,500円/通常盤 VICL-65749 3,300円)

ファンキーな曲もバラードも、スガシカオ節全開の詩世界。
特に、ファンクザウルス名義の歌が面白いですね。
(「メルカリFUNK」や、初回Aのディスク2収録曲「ぼくはマザコン」の歌詞が最高!聴きもの!)

今日のこの1曲は、
♪ぼくがまだトム・ウェイツに夢中になってた頃、好きだった彼女はボン・ジョヴィばかりいつも聴いていた♪
という歌い出しで始まる8曲目「東京ゼロメートル地帯」を。

「昔住んでいた東京の下町が嫌いで出て行ったのに、今はその街が恋しくなって想い出している」という内容の歌で、80's後半を彷彿とさせるグルーヴィー&躍動感あるサウンドに、どこか切なさも感じさせます。

ちなみに、鏡に映ったもう一人の自分=ドッペルゲンガーを見つめているジャケットは、デヴィッド・リンチの『ツインピークス』を彷彿とさせますね。タイトル『INNOCENT』のロゴが逆になっているところも興味深いです。森 陽馬



2023年2月2日(木) 奥慶一 「Night Cruise」

クニモンド瀧口(流線形)が選曲・監修しているシティ・ポップ・コンピのシリーズ『CITY MUSIC TOKYO』。
『CITY POP TOKYO invitation』(
2020年11月4日今日のこの1曲で紹介)は今でもロングセラー中です。

そのシリーズの新しいセレクトCD、ビクター編“signal”が発売されました。

V.A『CITY POP TOKYO signal』
(国内CD クニモンド瀧口による解説・歌詞付 VICL-65779 2,420円税込)

<都会・音楽・東京>をテーマに、シティ・ミュージックの隠れた名曲を集めた全17曲。
障子久美「Truth」(松任谷正隆プロデュース)、長山洋子「あきらかに愛になってた」(安部恭弘作)、松本伊代「それから」(スウィング・アウト・シスター「ブレイクアウト」を彷彿とさせるアレンジは船山基紀編曲)、飯島真理「シグナル」(吉田美奈子プロデュース)、岡安由美子、上田知華、秋本奈緒美、サディスティックス等、曲目を知らなくても、スタイリッシュ&ハイセンスなシティ・サウンドを楽しめる1枚です。

今日のこの1曲は、元スペクトラムのキーボーディスト奥慶一による1981年発表曲「Night Cruise」を。
ゆったりまったりとした心地良いメロウ・インスト・フュージョン♪
ボブ・ジェームス、ジョー・サンプルをお好きな方ならば、リピート確実のナンバーですね。森 陽馬



2023年2月3日(金) ヴァン・モリソン 「ジャッキー・ウィルソン・セッド」

3月にはまたまた新作が発売予定になっているヴァン・モリソン。
2015年に発売された2枚組ベスト盤の中から今日のこの1曲です。

ヴァン・モリソン『エッセンシャル』
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 英文ライナー翻訳あり SICP-4620 3,300円税込)

1965年のゼム在籍時の「グロリア」、「ヒア・カムズ・ザ・ナイト」、ソロになって初ヒットとなった「ブラウン・アイド・ガール」、名曲「ムーンダンス」、「クレイジー・ラヴ」、南沙織「純潔」(作曲:筒美京平)に影響を与えたと個人的には思っている「ワイルド・ナイト」などなど全19曲のディスク1。

イギリスではほとんどシングル・ヒットがない彼にとって珍しく1979年にチャートインした「ブライト・サイド・オブ・ザ・ロード」、1988年チーフタンズと共演した「アイリッシュ・ハートビート」、1989年発表『アヴァロン・サンセット』からおだやかなヴォーカルが印象的な「ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー」(のちにロッド・スチュワートがカヴァーして大ヒットに)、1990年発表の隠れ名盤と言われるアルバム『エンライトメント』からタイトル曲と「リアル・リアル・ゴーン」などなど全18曲収録のディスク2。

とにかく充実のベスト盤です。
今日は個人的なヴァン・モリソンのベスト5に入れたい曲。
1972年「ジャッキー・ウィルソン・セッド」を。
イントロからヴァン・モリソンのヴォーカルがたまりません。森 勉



2023年2月4日(土) Iggy Pop 「Neo Punk」

御年75歳(2023年4月で76歳!)のイギー・ポップが、爆音ロックな新作を出しました。

イギー・ポップ『Every Loser』
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 WPCR-18578 2,970円税込)

現在32歳の若さで多くのヒット作を手掛けてきたプロデューサーのアンドリュー・ワットによる新レーベル、Gold Tooth Recordsからのリリースで、チャド・スミス(レッチリのドラマー)、ダフ・マッケイガン(ガンズのベーシスト)、ジョフ・クリングホッファー(元レッチリのギタリスト)という超強力バック布陣。

前作『Free』(2019)がジャジー&アンビエントな音作りで、レナード・コーエンのトリビュート盤(
2022年10月15日今日のこの1曲で紹介)でも穏やかに味わい深く歌っていたイギーですが、いやいや、ロック魂は健在でしたよ!

今日のこの1曲は、今はセレブで75歳のイギーが自虐的に歌う爆走パンク・ナンバー「Neo Punk」を。

ちなみに、ロックなレールがまだまだ続いていく、ことを感じさせるジャケット・イラストは、ソニックユース『GOO』等のアートワークで知られるRaymond Pettibonによるもの。

「生きとる間はロックしようぜ!」
鮎川誠さんが生前に放ったこの言葉が、心により響いてきました。森 陽馬



2023年2月5日(日) 寺尾紗穂 「家なき人」(Controlled Version)

寺尾紗穂さんが発起人として行っている音楽フェス、りんりんふぇす。
コロナ禍で延期となっていた第10回目が、2023年3月5日(日)外苑前・梅窓院 祖師堂にて開催決定しました。
りんりんふぇす THE BIG ISSUE support live Vol.10

路上生活者が販売員となり、売上の約6割がその人の収入となる仕組みの雑誌『BIG ISSUE』を、より多くの人に知ってもらい、ホームレス問題や自分たちの生活・仕事について考えよう、との目的で行われているイベントです。

第10回目は、吉田美奈子さん、浜田真理子さん他が参加する予定!
クラウドファンディングも行っていますから、是非チェックしてみてくださいね。

今日のこの1曲は、寺尾紗穂が2010年に発表した名作『残照』から、僕が大好きな1曲「家なき人」。

寺尾紗穂『残照』
(国内CD MDCL-1502 3,300円税込)

なお、本作に収録されているControlled Versionは、歌詞に出てくる「びっこ」が放送禁止用語のため、その歌部分が"音"に修正されています。(無修正ヴァージョンは『放送禁止歌』(CXCA-1269 1,100円税込)に収録。)森 陽馬



2023年2月6日(月) The Belles 「Melvin」

60'sガールズ・バンドのマニアックな楽曲を集めた英ACEレコード編集による<Girls With Guitars>シリーズ。
最新盤もいろんな発見があって楽しい1枚です。

V.A.『GIRLS WITH GUITARS GONNA SHAKE!』
(輸入CD ace CDTOP1608)

まず1曲目、ジャケットにも登場している、まだあどけなさの残る女の子4人組、The Belles「Melvin」(1966)。
似ているだけかと思いきや聴きすすめてびっくり!
ゼム「Gloria」を男性<メルヴィン>に置き換えカヴァーしたものでした。

シェル・タルミープロデュースの本格派Goldie&The Gingerbreadsによるレイ・チャールズ作カヴァー「What Kind Of Man Are You」(ハモンドがクール!)、10代の女の子達で結成The Missfitsはジョン・リー・フッカー「Dimples」など当時未発表だったカヴァー3曲を今回初収録、のちにThe Action(ポール・ウェラーが大好きなバンド)として活躍するメンバーらとの男女掛け合いが良いSandra Barry & The Boys「Really Gonna Shake」、日本名の女性ギタリストをフィーチャーしたギター・インストChiyo&The Crescents「Pink Dominos」、タートルズのハワード・ケイランとガールフレンド共作曲The Chymes「Quite A Reputation」、ジミヘンが当時ギタリストを絶賛The Ace Of Cups、14歳のキュートで堂々とした歌いっぷり×ガレージ・バンドの共演Debbie Williams&The Unwritten lawなど全25曲。

他にもカヴァーを中心に興味深い楽曲が色々収録されています。東尾沙紀



2023年2月7日(火) ザ・ビートルズ 「Mr.Moonlight」

映画『ミスタームーンライト 1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢』をTOHOシネマズ新宿にて鑑賞。

日本におけるビートルズ人気、そして1966年来日公演にまつわる秘話を、様々な関係者や著名人の証言で追った音楽ドキュメンタリー作品。
ビートルズの歌はほとんどかからない(諸事情あるのでしょう)のですが、とても丁寧な作りで、興味深いインタビューが多く、僕は予想以上に楽しめました。

ビートルズが来日した時の飛行機に搭乗していた日本航空の客室乗務員(スチュワーデス)、コンドン聡子さんの話が面白かったですね。
ポール・マッカートニーが書いていた手紙の宛名がジェーン・アッシャーだったのを見てポールへの熱意が冷めたことや、ジョン・レノンにスーツのアイロンがけを頼まれ預かった際、そのスーツをこっそり抱きしめた話。そして、有名なあのハッピをメンバー4人にどうやって着てもらったか、の逸話は、とても微笑ましいエピソードでした。

加山雄三、松本隆、きたやまおさむ、ミッキー・カーチス、財津和夫、尾藤イサオ、奥田民生、峯田和伸、井口理(King Gnu)、浦沢直樹等、アーティストも多数出てきます。ビートルズ・マニアの方々は是非!
(ちなみに、本作のポスターやチラシの表紙になっているビートルズの絵は、浦沢直樹さんが描いたものです。)

今日のこの1曲は、「ミスター・ムーンライト」。
この歌の魅力は、なんといっても冒頭、ジョン・レノンによるシャウトでしょう!

なお、『Anthology 1』(掲載ジャケット)の「ミスター・ムーンライト」は、Take1と4を合わせたヴァージョンが収録されています。森 陽馬



2023年2月8日(水) ウィングス 「心のラヴ・ソング」(Silly Love Songs)

たまには、ポール・マッカートニーをたっぷり聴きたい気分、ということで、このベスト盤を。

ポール・マッカートニー『ピュア・マッカートニー ~オール・タイム・ベスト』
(国内2枚組CD 解説・歌詞・対訳付 UCCO-3062 3,850円税込)

2016年に出た全39曲収録のCD2枚組ベストです。
全67曲入り4枚組というのも出ましたが、そちらはお値段も倍になってしまうので、今日はうまみを凝縮したこちらで。

ウィングス時代も含めて、ソロになってからもヒットをたくさん出し続けているポール、本当に本当に凄い人ですね。
コンサートでも、ビートルズ時代から見に来てくれた人々へ最大限のサービス精神には頭が下がります。

今日の1曲は、1976年の大ヒット! いつ聴いても幸せな気分を運んでくれる「心のラヴ・ソング」(Silly Love Songs)を。

ポールと言えば、昨年12月にとんでもないコレクターズ・アイテムが出ましたね。
アナログ・シングル盤80枚を収めた木箱ボックス!!全世界3,000セット限定! 購入できた方、おめでとうございます。森 勉



2023年2月9日(木) バート・バカラック&エルヴィス・コステロ 「God Give Me Strength」

来月発売される予定の洋楽新譜で、楽しみにしているのがこのアルバムです。

バート・バカラック、エルヴィス・コステロ『The Songs Of Bacharach & Costello』
(2023年3月3日発売 国内2枚組CD UICY-16148 3,960円税込)

バート・バカラックとエルヴィス・コステロが組んで、1998年に発表した名盤『Painted From Memory』。
何時聴いても心に沁みる本作の2023年最新リマスターと、未発表&新録曲を追加した2CD盤になります。

キャロル・キングをモデルにしたような女性ソングライターの半生を描いた映画『グレイス・オブ・マイ・ハート』(1996)で印象的に使われた「God Give Me Strength」は、本当にイイ曲ですよね。
バカラックらしいイントロと、コステロによるサビの熱唱を聴くと、胸がギュッと掴まれるような気持ちになります。

と、書いているところで、バート・バカラックの訃報(享年94歳)が飛び込んできました。
音楽への飽くなき情熱が伝わってきた2014年来日コンサートの感動は、今も心の中の大切な場所に、温もりを保ったまま残っています。森 陽馬



2023年2月10日(金) Paul Carrack 「The Only Thing Missing Is You」

午前中うっすらと地面に積もった雪は想像していたよりも早く雨に流されてしまいました。
ドアが開くとヒューッと足元を冷たい風が通り抜け、しんしんと冷える一日でしたが、ポール・キャラックの包容力のある歌声とゴージャスなビッグ・バンドの演奏で心が温まりました。

Paul Carrack『Don't Wait Too Long』
(輸入CD PCARCD36)

英国のブルーアイドソウル・シンガー、ポール・キャラックの最新作は、以前から幾度と共演しているドイツの名門ビッグ・バンド、Swr Big Bandと共に制作したカヴァー・アルバムです。

サム・クック「Bring It On Home To Me」(オルガン・ソロもGood!)、B.B.キング「Cryin' Won't Help You」、レイ・チャールズの歌唱でも知られる「Don't Let The Sun Catch You Cryin'」など1950~60年代のソウル、ブルース、ジャズをメインに、古いもので1920年代のスタンダードから2004年のマデリン・ペルーの楽曲まで幅広く取り上げています。

今日の1曲は、ストリングス・アレンジと中盤のアルト・サックスも聴きものの「The Only Thing Missing Is You」。
ボビー・ブランド2003年最後のアルバム『Blues At Midnight』に収録されている美しいバラードです。
素敵な曲をまた教えてもらいました。東尾沙紀



2023年2月11日(土) ベット・ミドラー 「Boogie Woogie Bugle Boy」

レコード・コレクターズ2023年3月号が入荷。
第1特集は、70年代女性シンガー/ソングライター特集です。


キャロル・キング、ジョニ・ミッチェル等の定番に加え、近年再評価されているヴァシュティ・ヴァニヤン、ジュディ・シル、ジャズ/ソウルから、ブロッサム・ディアリー、ニーナ・シモン、ミニー・リパートン他、幅広く選盤されています。

ベット・ミドラーが1972年に発表した1stアルバム『The Divine Miss M』は、自作曲がないせいか選出されませんでしたが、“シンガー”としての魅力が詰まった素晴らしい作品で、1973年にグラミー最優秀新人賞を受賞しています。

ベット・ミドラー『The Divine Miss M』(邦題:アメリカが生んだ最後のシンガー/ベット・ミドラー・デビュー)
(国内2枚組CD デラックス・エディション 解説・歌詞・対訳付 WPCR-17544 3,025円税込)

デビュー・シングルとなった1曲目「Do You Want To Dance?」のスローなアレンジによるカヴァーがとにかく絶品ですが、今日のこの1曲は、最高にゴキゲンなアンドリュー・シスターズ「Boogie Woogie Bugle Boy」カヴァーを。

ちなみに、ベット・ミドラーのこのアルバム。アゲインの石川さんが大好きな1枚でしたよね。森 陽馬



2023年2月12日(日) ダーレン・ラヴ 「ア・ロング・ウェイ・トゥ・ビー・ハッピー」

フィル・スペクター、ロネッツ、クリスタルズという名前は、ヒット曲を出していた1962~3年当時は知らなかったにしても、1960年代後半には音楽雑誌やレコードの解説で目にしていました。
もちろん音源はあまり聴く機会がなかったので、きちんと理解していたわけではありませんが...。

ダーレン・ラヴ。
この人の名前を知るのは、それよりずっと後の1976年頃のことでした。

1976年にフィル・スペクター・インターナショナルというレーベルから、いろいろなレコードが出て、その中に『レア・マスターズ』というコンピレーションLPが2枚出ました。
そこに、ダーレン・ラヴ名義の曲が数曲入っていて、そこで初めて彼女の声や歌い方を認識したような気がします。

その『レア・マスターズ』に入っていた曲で一番感激したのが、それまでは未発表曲だった「ア・ロング・ウェイ・トゥ・ビー・ハッピー」でした。

1965年6月にゴールド・スター・スタジオで録音されながら、ずっと人の耳にふれることがなかった曲で、プロデュースはフィル・スペクター。アレンジがジャック・ニッチェ。そして、曲を書いたのは、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィンという顔ぶれ。

ダーレン・ラヴ『ザ・サウンド・オブ・ラヴ ~ヴェリー・ベスト・オブ・ダーレン・ラヴ』
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 SICP-20313 2,096円税込)

このCDは、発売から11年以上経っていますが、まだ買えます。
彼女のパワフルな歌声を是非。森 勉



2023年2月13日(月) Justin Hurwitz 「Manny And Nellies Theme」(マニーとネリーのテーマ)

『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督最新映画『バビロン』をTOHOシネマズ日比谷 Dolby Atomosで鑑賞。

映画愛が痛烈に伝わる作品で、上映後は“映画”の世界へ没入して抜け出せない感覚になりましたね。
その映画愛は単なる映画への愛とも違って、今まで映画に携わってきた“映画人”への愛でしょうか。

舞台はサイレント(無声)からトーキーへ移行していく1920~30年代、ある意味なんでもありの映画界。
コンプライアンスや規制が敷かれた現代とはまた違った苦労が、色々描かれています。
でも、その苦労に比例して、映画人たちの映画へかける情熱も、尋常じゃなく凄いんですよね。

「映画は大衆のためのものだ。孤独な僕らに夢を見せてくれる。」
ブラッド・ピット演じるジャックのこのセリフは、チャゼル監督の想いを代弁しているようで、心に刺さりました。

なお、本作の音楽は、今までのチャゼル監督作と同じく、ジャスティン・ハーウィッツが担当しています。

『バビロン』オリジナル・サウンドトラック
(国内2枚組CD 日本盤のみボーナス・トラック追加収録 解説・歌詞・対訳付 UCCS-1331 3,520円税込)

今日のこの1曲は、3台のピアノで録音されている「マニーとネリーのテーマ」を。
美しい音色のピアノと、残り2台は音がズレたピアノをあえて使用し、少し壊れた雰囲気を演出。
物語におけるマリーとネリーの脆くて不安定な関係を表現しているそうです。

<人は亡くなっても、作品は残って永遠に生き続ける。>
映画・音楽・デザインにおける先人たちへの感謝が込み上げてきました。森 陽馬



2023年2月14日(火) ブラッド・メルドー 「Maybe I'm Amazed」(恋することのもどかしさ)

「ビートルズの音楽は、文化や世代の境界線を越える。
あらゆる人々を引きつける即時性と完全性、誠実さが存在している。」(ブラッド・メルドー本人の解説より)

現代ジャズ・ピアニストで名実共に旬な存在、と言えばブラッド・メルドーでしょう。
その彼の新作は、ビートルズ関連楽曲をソロ・ピアノでカヴァーしたアルバムです。

ブラッド・メルドー『Your Mother Should Know : Brad Mehldau plays The Beatles』
(国内CD 日本盤のみボーナス・トラック収録 ブラッド・メルドー自身による解説日本語訳付 2,750円税込)

2020年9月19・20日フィルハーモニー・ド・パリでのライヴ録音。
「I Am The Walrus」から始まり、「Your Mother Should Know」、「I Saw Her Standing There」他全12曲。
ラストは、後のポップ・ソングへの繋がりを表しデヴィッド・ボウイ「Life On Mars?」で締め括られています。

今日のこの1曲は、日本盤のみのボーナス・トラックとして11曲目に収録されている「Maybe I'm Amazed」を。
ポール・マッカートニーが近年のライヴでも披露することが多い1970年ソロのバラード名曲。
ブラッド・メルドーのリリカルなピアノからは、“恋することのもどかしさ”が伝わってきます。森 陽馬



2023年2月15日(水) Young Gun Silver Fox 「Moonshine」

2022年10月リリースの新作が当店でも好評のAORデュオ、ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス。
未発表曲が収録された7インチ・シングルが入荷しました。

Young Gun Silver Fox『Moonshine/Tip Of The Flame』
(輸入7インチ・アナログ LEGO289)

アンディ・プラッツ(vo.)がママズ・ガンとして活動する前の2006年。
英国出身のプロデューサー/コンポーザーのロッド・テンパートン(ヒートウェイヴ/マイケル・ジャクソン「Rock With You」、「Thriller」、ジョージ・ベンソン「Give Me The Night」作者)に送ったデモが耳に留まり、指導を受けながら一緒に曲を書く機会を得たのだそう。

今まで発表されることのなかったその曲が、A面に収録されている「Moonshine」です。
2021年に相方ショーン・リーが手を加え完成し、共作から長い時を経て遂にリリースされました。
(B面は2022年作『チケット・トゥ・シャングリラ』収録曲です)

ロッド・テンパートンへのリスペクトが込められた、ヤング・ガンらしい滑らかで心地良いナンバーです。東尾沙紀



2023年2月16日(木) 大滝詠一 と鈴木慶一(冗談ぢゃねーやーず) 「ゆうがたフレンド」(USEFUL SONG)

2023年3月21日発売、大滝詠一『NOVELTY SONG BOOK』の詳細が発表になりました!

まずは、タイトルが『NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK』へ変更に。
(2023年3月21日発売 2枚組CD SRCL-12450 3,960円税込)

ディスク1は、大滝詠一が歌うコミック・ソング的な楽曲やリズミックなノベルティ曲を11曲収録。
「NIAGARA ROCK'N'ROLL ONDO」から始まり、「ポップスター」、「うなずきマーチ」、ティンパンアレイがバックの「ホルモン小唄~元気でチャチャチャ」、「針切じいさんのロケン・ロール」等注目曲多数!
完全未発表の“新曲”と言える「ゆうがたフレンド」(USEFUL SONG)も入っています!

ディスク2は、『NIAGARA ONDO BOOK』と名付けられた作品集。
「ナイアガラ音頭」、金沢明子「イエローサブマリン音頭」含め、片岡鶴太郎「スリラー音頭~ビートイット音頭」、トニー谷「さいざんすマンボ」等々、色々なONDOが収録予定です。

気になるのは、やっぱり完全未発表曲「ゆうがたフレンド」(USEFUL SONG)でしょうか。

ムーンライダーズの2006年発表曲に「ゆうがたフレンド」(公園にて)があります。
作詞は糸井重里(作曲は白井良明)。キャロル・キング「You've Got A Friend」を意識したタイトル同様、歌詞の最後が「ともだちがいてくれる。葬式までたぶん来てくれる」で、友情がテーマになった歌です。

今回発表される大滝詠一「ゆうがたフレンド」(USEFUL SONG)も作詞は糸井重里ですが、作曲は大瀧詠一、編曲が多羅尾伴内・井上鑑になっていますね。
鈴木慶一がゲスト・ヴォーカルで入っているから、歌詞は同じで楽曲が違うのでしょうかね?
それとも、大滝さんと糸井さん一緒に作った提供曲がボツになった、という昔の話もあるので、その曲かな?
まあとにかくも、3月21日がまた楽しみになりました。

ちなみに、『Novelty Song Book』ディスク1のアナログ盤は4月26日発売予定です。
ジャケットもイイ感じですね! 森 陽馬



2023年2月17日(金) ロン・セクスミス 「What I Had In Mind」

1995年、大学生だった僕は70年代の音楽ばかり聴いていました。(今もだけれど...)

そんなある時、渋谷CISCOへ寄り、店員だった除川哲朗さんに「新しいアーティストも良い作品を出していますよ。」と教えていただいたのが、ジェイホークス『Tomorrow The Green Glass』と、ロン・セクスミス『Ron Sexsmith』。

ロン・セクスミスのアルバムは、エルヴィス・コステロが絶賛している、という記事を読んだことがありましたが、意識して聴いたのはその時が最初だったと思います。

彼の憂いに満ちた歌声を聴くと、あの時の純粋な気持ちと、現代の空気を震わしている新しい音楽を聴くことの大切さを改めて実感するのです。

あれから早28年。2023年で59歳を迎えたロン・セクスミスが新作アルバムを本日発表しました。

ロン・セクスミス『The Vivian Line』
(国内CD 日本盤ボーナス・トラック追加収録 解説・歌詞・対訳付 OTCD-6862 2,750円税込)

彼の初期作にベーシストとして参加していたブラッド・ジョーンズがプロデュースを担当。
時を経ても変わらないロンの、メランコリックかつポップなメロディーセンスが心地良く沁みてくる1枚ですね。

今日のこの1曲は、「Vivian Lineを車で走らせながら、涙はバックミラーを流れていく風景の中へ置き去りにしていけばいいのさ。」と歌われる2曲目「What I Had In Mind」を。

The Vivian Lineは、彼の故郷で現在住んでいるカナダ/オンタリオ州にある国道名だそうです。森 陽馬



2023年2月18日(土) エディ藩 「横浜ホンキートンク・ブルース」

小・中学校の頃、親戚の叔父・叔母が横浜の中華街へよく連れていってくれました。
同年代のいとこ達も一緒だったので、それはとても楽しいひとときでした。

中華街にはたくさんの店がありましたが、行く店はいつも決まって、鴻昌(コウショウ)という小さな店でした。
叔父が、中華街ではこの店が一番おいしい、とよく言っていたことを憶えています。

中学3年生のある日、鴻昌へ行き、食事をして店を出る時レジにいる人を見ると、見覚えのある顔が・・・。
なんと、デビューして間もないゴールデンカップスのギタリスト、エディ藩さんがいるではありませんか。

それまでは全然知らなかったのですが、鴻昌はエディさんの御実家が経営しているとのこと。
それからというもの、ゴールデンカップスがますます好きになったことは言うまでもありません。

ということで、今日はエディ藩さんの名曲「横浜ホンキートンク・ブルース」を。

エディ藩『BLUE JADE』
(国内CD 「横浜ホンキートンク・ブルース」他全9曲収録 UPCY-9738 1,100円税込)

なお、残念ながら、鴻昌は2006年に閉店しています。森 勉



2023年2月19日(日) Joyce with Mauricio Maestro 「Feminina」

世界3大祭の1つ、ブラジル/リオのカーニバルが、約3年ぶりに通常の日程で開幕しました。
近年はコロナ禍で中止&規模を縮小しての開催でしたが、無事行われるようになって良かったですね。

ということで、今日は、リオ出身のジョイスが70年代に録音していたブラジル音楽発掘盤からこの1曲。

JOYCE with Mauricio Maestro 『Natureza』
(輸入CD Far Out Recordings FAR0234CD)

本作は、ジョイス(Joyce Moreno)が1977年にニューヨークで録音するもずっとお蔵入りとなっていました。
名編曲家のクラウス・オガーマンがプロデュースを手掛け、マウリシオ・マエストロ、ナナ・ヴァスコンセロス他に加え、マイケル・ブレッカー、ジョー・ファレル等も参加しています。

彼女がブラジルへ帰国後、3人目の子供を妊娠しニューヨークへ再び戻れなくなったため、クラウス・オガーマンとコンタクトが取りにくくなって、そのままお蔵入りしてしまったようですが、歌・演奏・アレンジ各々素晴らしい内容ですね。

聴きものは、1980年発表名盤『Feminina』に入ることとなる「Feminina」の11分以上にも及ぶロング・ヴァージョン!
後半のジャムっぽいセッションがかっこいい! 森 陽馬



2023年2月20日(月) kiss the gambler 「カルダモン」

本秀康氏主宰・雷音レコードから近年楽曲を発表している女性シンガーソングライター、kiss the gambler

4月5日に谷口雄(ex.森は生きている)プロデュースによる2ndアルバム『私は何を言っていますか?』がLPレコード(配信もあり)でリリースされます♪
新作に先駆け、2023年お正月には「くずもち/さよなら青春(RHION ver.)」、そして本日は新作のリード・トラックとなる楽曲の7インチ・シングルが発売されました。

kiss the gambler『カルダモン/井戸の底の夕日』
(国内7インチ・アナログ RHION31 1,760円税込)

♪寂しさを埋めようと 嘘の笑顔で 誰かに尽くしても 幸せにはなれないさ
 あぁ 美味しいコーラでも 作ろう♪

ワルツのリズムにほのぼのとしたメロディ、飄々とした歌声を聴いてほんわかとした気持ちになる一方、心の奥底を突かれたようでドキッとしてしまいます。
彼女が奏でるピアノに合わせ、厚海義朗(コントラバス)、宮下広輔(ペダル・スティール)、影山朋子(マリンバ)、高橋三太(トランペット他)ら柔らかなバンド・アレンジもとても良い雰囲気です。

雪景色の中で見せる彼女の天真爛漫な魅力が詰まった「カルダモン」のMVも公開されています。東尾沙紀



2023年2月21日(火) アロハ・ブラザース 「浜辺のあの娘」

今日の東京は、冷たい風がびゅうびゅう吹いて、とても寒い1日でしたね。

2月22日は村田和人さんの命日ですので、心も体も暖まるようなアロハ・ブラザースの歌を今日のこの1曲に。

アロハ・ブラザースは村田和人さんと杉真理さんによるユニット。
<世界各国の女性を口説く曲>をコンセプトに様々なオリジナル楽曲を収めた2010年発表唯一のアルバム『世界のアロハ・ブラザース』は廃盤になっていますが、『杉真理 提供曲集』に「浜辺のあの娘」が収録されています。

『杉真理 ミスター・メロディー 提供曲集』
(6枚組CD 全116曲収録 杉真理本人による全曲の楽曲解説付 MHCL-2991 11,000円税込)

「浜辺のあの娘」はビーチ・ボーイズ~1960年代アメリカ西海岸のサウンド&コーラスが感じられるナンバー。
杉さんが手掛けた歌詞には、Wendy、Caroline、SARA、Francis、Lina、Davyが出てきます。
これは杉さんと村田さんの過去の歌に出てくる女性の名前を織り込んだとのこと。

ちなみに、『杉真理 提供曲集』の6枚目のディスクは、全曲須藤薫さんの歌が収録。
そのラストに入っている「Frankyお願い」(須藤薫&杉真理の2012年作『恋愛同盟』収録曲)の歌詞は、杉さんの解説文によると、アロハ・ブラザース「浜辺のあの娘」のアンサー・ソングだそうです。森 陽馬



2023年2月22日(水) SAYAKA 「パラソルと約束」

昨日取り上げた『杉真理 提供曲集』はイイ曲がたくさん入っているので、もう1曲紹介させてください。

松田聖子の娘、SAYAKAが2001年<グリコ・アイスの実>のCMに出演した際、そこで歌われていた幻のデビュー曲が「パラソルと約束」(作曲:杉真理)です。

そのフル・ヴァージョンがこの度初CD化! 本作に収録されました。

『杉真理 ミスター・メロディー 提供曲集』
(6枚組CD 全116曲収録 杉真理本人による全曲の解説付 MHCL-2991 11,000円税込)

杉さん曰く、コンセプトは、<大滝詠一Meets神田沙也加>だったそうです。
聴けば納得! ナイアガラ的なポップ・ナンバーになっていますね。

ちなみに、バック・メンバーは、青山純(ドラムス)、岡沢章(ベース)、渡辺格(ギター)、嶋田陽一(アレンジ&キーボード)、杉真理(作曲&コーラス)という豪華布陣です。森 陽馬



2023年2月23日(木) クローヴァーズ 「ブルー・ヴェルヴェット」

クローヴァーズは1950年代前半から活躍したR&Bコーラス・グループです。
ヒット曲も多く、かなり人気があったようです。

トニー・ベネットが1951年にヒットさせた「ブルー・ヴェルヴェット」をドゥワップ調にして1954年12月に録音。
それがR&Bチャートで話題を呼び、その後多くのドゥワップ・コーラス・グループ - ベロアーズ、ムーングロウズ、パラゴンズ、ダブスなどが、クローヴァーズに影響を受けてこの曲を歌いました。

クローヴァーズはアトランティック・レコード所属ということもあり、サウンドも洗練され、録音状態も良いため(録音エンジニアはあのトム・ダウド!)、多くのコーラス・グループのお手本になったのでしょうね。

クローヴァーズ『ザ・クローヴァーズ』
(国内CD 全14曲収録 解説・歌詞付 WPCR-27567 1,047円税込)

バラードの名曲「デヴィル・オン・エンジェル」も入っています。森 勉


2023年2月24日(金) 「N.E.W.」(映画『BLUE GIANT』サウンドトラックより 音楽:上原ひろみ)

映画『BLUE GIANT』をTOHOシネマズ日比谷 dolby Atomosで鑑賞。

『BLUE GIANT』は2013年に連載を開始したジャズを題材にした漫画。
仙台出身18歳の主人公が世界一のジャズプレイヤーを目指して上京し奮闘する物語です。
この度、アニメーション映画として映像化され、劇場公開されました。

物語的にはツッコミどころ満載ながら、その疑心を弾き飛ばすほど音楽の初期衝動を感じさせてくる映画でした。
ライヴを観て身震いするような感動を覚えたり、バンドで演奏しメンバーと喜びを分かち合う時の笑顔など、忘れかけていた音楽に対する純粋な気持ちを想い出させてくれましたね。

なお、“音が聴こえてくる漫画”として評判が高かった本作の映画音楽は、名ピアニストの上原ひろみが担当し、更に、新進気鋭の石若駿、馬場智章が参加。(上原ひろみは、2013~14年当時から漫画の愛読者だったそう)
漫画ファンの期待を裏切らないどころか、その期待を凌ぐような迫力の音楽になっています。

『BLUE GIANT』オリジナル・サウンドトラック
(国内CD 音楽:上原ひろみ 全29トラック収録 UCCJ-2220 3,300円税込)

今日のこの1曲は、映画内でも印象的な場面で披露された17曲目「N.E.W.」を。
オリヴィエ・ピータース・クァルテットの「Wings of Spring」(1980)にサックスのフレーズとか少し似ていますね。

ちなみに、『BLUE GIANT』の主人公や出てくる人々は、ジャズに強いこだわりを持っていますが、近年の若い世代のプレイヤー&リスナーは、音楽ジャンルをカテゴライズせず聴くようになっているように思います。
ジャズはもちろんのこと、音楽自体を楽しんで演奏したり聴いたりしていきたいですね。森 陽馬



2023年2月25日(土) ブライアン・ウィルソン 「マイ・スウィート・ロード」

2月25日はジョージ・ハリスンの誕生日です。

残念ながら、ジョージは2001年11月29日に58歳で亡くなってしまっていますが、1943年生まれなので、もし生きていたら80歳を迎えました。

ビートルズのメンバーで誰が一番好き?という質問がよくありますが、僕の場合は、全員と答えるようにしています。
しかし、どうしても肩入れしてしまうのが、ジョージ・ハリスンなのです。

1964年4月、日本でのはじめてのLP『ビートルズ!』(A面1曲目が「抱きしめたい」から始まる盤)を買って、特に気に入った曲がA面ラスト7曲目、ジョージがリード・ヴォーカルの「ドント・バザー・ミー」でした。
そして、同年8月に公開された映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』を東銀座の松竹セントラルで観て、もちろん全体がめちゃくちゃ衝撃的だったのですが、ジョージが「すてきなダンス」を歌うシーンが特に印象に残ったんですね。
それからというもの、ジョージのことがまず気になる存在になってしまいました。

ということで、今日はジョージ・ハリスンの曲を。

2014年9月L.A.で行われたジョージ・ハリスンのトリビュート・コンサートを収めたCD2枚組+その映像を収録したDVD付の中から「マイ・スウィート・ロード」を。

『GEORGE FEST:ジョージ・ハリスン・トリビュート・コンサート』
(国内2CD+DVD 解説・歌詞・対訳付 SICX-30031 4,180円税込)

リード・ヴォーカルはブライアン・ウィルソン。
ステージ上には、アル・ジャーディン、ブライアン・バンドのメンバーであるダリアン・サハナジャ、プロビン・グレゴリー、ニック・ワルスコや、ハートのアン・ウィルソンなど上がり、バック・コーラスを担当しています。森 勉



2023年2月26日(日) The Friday Club 「Window Shopping (Live in London 1988)」

1985年にジェリー・ダマーズ(スペシャルズ~スペシャルAKA)プロデュースで、2 Tone Recordsからシングル・リリースされたザ・フライデー・クラブの「Window Shopping」。

女性ヴォーカル2人をメインにしたホーンやヴィブラフォンの軽やかなアレンジが耳に残るこの曲は、近年Free Soulのコンピレーションでも聴くことができ、同時期のスタイル・カウンシルやトレイシーらを想起させるポップな楽曲に私も一目惚れならぬ一聴惚れしてしまいました。

「Window Shopping」が唯一のリリース作品となった彼らの秘蔵音源集が、80~90'sインディー・ポップの再発を専門としているドイツのFirestation Recordsから発売されました。

ザ・フライデー・クラブ『ハーツ・ウィル・ウィン』
(国内仕様CD 解説付 FST195J 3,080円税込)

アルバム用の録音と思われるスタジオ音源8曲、1988年ロンドンでのライヴ7曲、数年前12インチで発表された5曲入りの『Saturday Night and Sunday Morning EP』(スライ&ザ・ファミリー・ストーンのカヴァーも)の計20曲を収録。

演奏はやや粗削りながら、当時の英国バンドらしいブルー・アイド・ソウルな佳曲が並んでいます。

「Window Shopping」は1988年のライヴ音源を収録。この曲を書いたリーダーAbe Brooksと思われる男性が歌っており、シングルとはまた違った味わいです。東尾沙紀



2023年2月27日(月) Sam Gendel 「I Swear」

皆さんが今思っている心の声を代筆しましょう。
「えーーー!? 今日で2月が終わり!?」

さて、新譜は多くなかった2月でしたが、その中から異彩を放つ1枚を紹介しておきましょう。

Sam Gendel『Cookup』
(輸入CD Nonesuch 075597907131/輸入LPは3/3発売予定)

アメリカ/LAを拠点に活動している奇才、サム・ゲンデルが2020年に発表したアルバム『Satin Doll』は、ジャズの名曲を再構築した作品で、久保田麻琴さんが絶賛し評判となりました。
(CDとLPが入荷した頃、ちょうど、新型コロナが世界中に広がっていた時期でしたね。)

その『Satin Doll』と同じNonesuchレーベルからのリリースとなる本作『Cookup』は、90~00年代のソウル/R&Bをカヴァーした作品ながら、前作同様、唯一無二のアンビエントな音世界を楽しめる不思議な1枚。
サックスとクラゲが一体化しているジャケット・デザインのイメージ通り、独特な浮遊感があります。

今日のこの1曲は、All 4 Oneのカヴァー④「I Swear」。
ツインピークスのテーマ曲のような雰囲気ですね。サム・ゲンデルも意識してアレンジしたのかも。 森 陽馬



2023年2月28日(火) ラリー・ジョン・マクナリー 「Ballad of Birmingham」

ピーター・ゴールウェイお好きな方にオススメの新譜この1枚。

ラリー・ジョン・マクナリー『BLACK SWAN』
(国内CD 長門芳郎氏による解説・歌詞・対訳付 全12曲 HYCA-8050 2,640円税込)

1981年発表名作『Larry John McNally』(邦題:シガレット・アンド・スモーク)で知られる男性シンガー・ソングライター、ラリー・ジョン・マクナリー。
2020年発表作『I Rise Up』(
2020年12月9日今日のこの1曲で紹介)に続き、ピーター・ゴールウェイがプロデュースを担当した約2年ぶりとなるオリジナル・アルバムです。

ピーター・ゴールウェイは編曲&ミックスに加え、リズム・トラックの演奏も主に手掛けており、随所にピーター節を感じさせますね。ラリー・ジョンの渋い歌声も魅力的で、なんとも味わい深く沁みる1枚です。

今日のこの1曲は、歌詞にニーナ・シモン「Mississippi Goddam」が出てくる③「Ballad of Birmingham」を。

ニーナ・シモン「Mississippi Goddam」は、1963年アラバマ州バーミンガムで白人至上主義者の教会爆破事件が起きた後にニーナが書いた1964年作の楽曲。
ラリーはこの曲を歌詞に織り込み、Black Lives Matterをテーマに「Ballad of Birmingham」を作ったようです。
なお、アイザック・ヘイズ「Hot Buttered Soul」、アレサ・フランクリンという言葉も歌詞に出てきます。森 陽馬





これより以前に掲載した“今日のこの1曲”は、
 “今日のこの1曲 アーカイヴス” コーナーにてご覧になれます。■



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