PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月11月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年11月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年11月1日(土) ハンバート・ハンバート 「国語」

 CISCO RECORDSが倒産してしまったらしい。
 すでに昨年末に渋谷などにあった店舗は閉店して、今年はネット通販及びレーベルとしての営業を行なっていたようなのですが、その事業からも撤退するようです。

 アナログ・レコードが売れなくなった、というような内容が上記リンクの記事にも書いてありますが、実際中古業者の方からお話を伺うと、やはり中古レコードは在庫の回転率がここ最近かなり悪くなってきているとのこと。
 でも不思議と新品アナログのリリースはそれほど減っていないような感じです。(ジェイムス・テイラーやブライアン・ウィルソンの新作、レッド・ツェッペリンの再発などはアナログでも出ていますね)

 最近では、このハンバート・ハンバートの最新作『まっくらやみのにらめっこ』のアナログ盤も発売されました。(CXLP-1052 \3,150)
 以前にも紹介しましたがこのアルバムに入っている曲の歌詞はどれも強烈ですね。特に5曲目「国語」の歌詞は音楽業界内で働いている者にとってはズシンときます。

 ちなみにこのアナログ盤は500枚限定で、CDアルバムには収録されていない「ピアノを弾きながら」がボーナス・トラックとして収録。うーーーん、僕も最近、昔ほどアナログ盤を買わなくなったのですがこれは迷いますね・・・。森 陽馬

2008年11月2日(日) Ginny Arnell 「Dumbhead」(日本語ヴァージョン)

 1963年暮から1964年にかけてのスマッシュ・ヒット(TOP40には入らなかったけれどそれなりにヒットした曲をこう呼びます)となった「ダムヘッド」は、♪ズーズズ・・・♪というへんなコーラスと間奏のカズーが有名なガールポップです。

 今回オリジナル・アルバムにシングル曲をプラスした全18曲入りのCDが発売になりました。(『Meet Ginny Arnell』 DECKCD-106)

 テディ・ランダッツォがプロデュース&ソングライティングを担当した1965年のシングル曲である17曲目「A Little Bit Of Love (Can Hurt)」、18曲目「I'm Getting Mad」を聴き終えた後、なんと!もう1曲入っているではありませんか。ジャケットの曲目表には何の記載もありませんが、19曲目が入っています。

 曲はなんとなんと!「ダムヘッド」の日本語ヴァージョン!!!
 ジニー・アーネルのなんともかわいらしく流暢な日本語にシビレることうけあい。1964年夏に日本のみで発売された貴重なシングルを入れてくれるなんて再発担当者の心意気を感じます。
 60'sガールポップ・ファンは必聴です! 森 勉

2008年11月3日(月)マシュー・スウィート 「SUNSHINE LIES」

 アメリカのパワーポップといえばこの人、マシュー・スウィートがバングルスのスザンナ・ホフスとカバーアルバムを出したのが2年ほど前。よく店頭でもかけていたなぁと記憶しています。(タイトルにvol.1と付いていましたが、続きはちゃんと出るのでしょうか?)
 マシュー個人名義のアルバムとしては4年ぶり、今作でちょうど10枚目となります。(「SUNSHINE LIES」PVCP-8257/\2.415)
 
 90年代なんて最近だな〜と思っていても、代表作の「ガールフレンド」が出てからもう17年...彼も10月で44歳を迎え、声も太くなったなぁと感じます。でも年齢もキャリアもそこそこなのに、なんだか少し頼りなさが漂っているのが彼らしくて良いなと思います。
 今作にも一曲だけですが、スザンナ・ホフスが1曲参加。少しだけですが、彼女のあの印象的な声で、美しいコーラスを聴くことが出来ます。
 
 新作はガツンとしたロックと彼らしいポップでハーモニーがきれいな曲が大体半分ずつ収録。最初はちょっと雑多な印象を受けましたが、なかなか良いアルバムではないでしょうか。聴き込む程に良いと思います。
 また彼が仲の良いシンガー2人と組んだソーンズのように穏やかなフォーク・ロックを聴かせるアルバムも作ってほしいなと思います。(ソーンズはこの時期にぴったりです)
 
 かなり余談ですが、虫がすごく嫌いな方、ブックレットを開かれる時は注意して下さい!(虫のどアップの写真が載ってます笑) 東尾沙紀

2008年11月4日(火) デヴィッド・T・ウォーカー 「愛のテーマ」

 いやーー、コレはイイ! 期待はしていましたが、その期待以上の出来といっていいでしょう。名ギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカーの新作『Thoughts』(UPCH-20113 \2,500)。

 全曲心地良いインスト・フュージョンで、書き下ろしの新曲3曲もいい感じですが、なんといってもカヴァーの選曲が最高!
 個人的に大好きな1曲であるスティーヴィー・ワンダー「リヴォン・イン・ザ・スカイ」、スタイリスティックスのバラード曲の中でも特にお気に入りの「誓い(You Make Me Feel Brand New)」をやってくれているだけでも狂喜ですが、それに加えてクルセイダーズ「ストリート・ライフ」、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ「二人の絆」など、ソウル・ファンにとっては堪えられないメロディーをデヴィッド・Tの見事なギターの音色で聴けるのだからホント贅沢な1枚です。

 その中からベタですが、2曲目「愛のテーマ」(Love's Theme)。
 バリー・ホワイト(ラブ・アンリミテッド・オーケストラ名義)による1973年全米ビルボード1位となった名曲で、何故かこの曲のみ、あのワー・ワー・ワトソンが参加。彼らしいリズム・ギターを聴かせ相変わらずの名脇役ぶりを発揮しています。70年代からセッションで一緒になることが多かった二人。この曲のリズム・ギターをワー・ワー・ワトソンに弾かせるとはニクい演出ですね。

 ちなみにこの新作、録音はハリウッドのスタジオですが、日本制作によるものでドリカムのレーベル(DCT recordsでユニバーサル配給)から発売。ジャケットがもうちょっとなんとかならなかったのか(重厚なイメージの方が良かったのでは?)とも思えたのですが、この素晴らしい内容ならばそれも目をつぶりましょう。

 1stや『プレス・オン』お好きな方なら絶対にオススメ。2008年ベスト5候補!といっても過言ではない1枚の登場です。森 陽馬

2008年11月5日(水)ジョニー・ティロットソン「ポエトリー・イン・モーション」

 ジョニー・ティロットソンの日本盤が出るのは、なんと11年ぶりのことです。うれしいことに2種類出ました。

 彼がデビューした1958年から1963年まではケイデンス・レーベルに所属。1960年に全米2位まで上昇した「ポエトリー・イン・モーション」、1961年全米7位「ウィズアウト・ユー」がアメリカでは代表曲でしたが、当時日本ではケイデンスの販売権がなかったので、「ポエトリー・イン・モーション」は1964年になって、やっと日本でもシングル発売されました。
 “イン・モーション”が取れて、邦題「ポエトリー」として多くのポップス・ファンに注目された曲でした。

 「キューティー・パイ」、「プリンセス・プリンセス」、「ドリーミィ・アイズ」の3曲も日本では有名曲で、ジョニー・ティロットソン自身が書いた曲なんですねぇ、これが。
 ソングライターとしての才能ももっと評価されていいジョニー・ティロットソンなのです。

 それにしてもこの「ポエトリー・イン・モーション」のハツラツとした歌声はいつ聴いてもいいですね。森 勉

★掲載ジャケは『ジョニー・ティロットソンズ・ベスト』+12(VICP-64556 限定紙ジャケ \2,520)。62年発売のアルバムに12曲もボーナス・トラックが追加収録されています。

2008年11月6日(木) 坂本 美雨 「おだやかな暮らし」

 坂本龍一と矢野顕子の娘である坂本美雨、約1年ぶりの新作5thアルバム『ZOY』(YCCW-10092 \2,800)が発売。

 彼女の歌声はお母さんにそっくり、というわけではないのですが、どことなく声の雰囲気が似ていて、ただ単に歌が上手というのとは違った清い美しさがあります。
 今までの作品ではその歌声が今ひとつ活かせていない感がありましたが、今作はどの曲も彼女の歌声が前面に出ていて、好感の持てる仕上がりでした。

 その中でも白眉は2曲目「おだやかな暮らし」。
 おおはた雄一作詞・作曲で、クラムボンも2006年作のカヴァー・アルバム『LOVER ALBUM』及びライヴ盤『3 peace live at 百年蔵』でカヴァーしている隠れた名曲。
 おおはた雄一本人もギターで参加し、また高田漣が味わいのあるペダル・スティールを聴かせてくれています。

 他の楽曲では、高木正勝や勝井祐二など様々なフィールドからゲストが参加。それでもとっちらかった感はなく、どの曲も彼女の美声が心地良く響いてきます。森 陽馬

2008年11月7日(金) 原田 郁子 「銀河」

クラムボンの原田郁子、ソロ3作目『銀河』(初回限定生産ブックCD付 COCP-35210 \3,675)が先日発売。

 一般的な女性ヴォーカル好きの方や、クラムボン・ファンの間では評価が分かれるところかもしれませんが、個人的な見解でいえばこのアルバム、今年6月に発表された『ケモノと魔法』と共に、後々まで“名盤”と語られるであろう作品になるでしょう。

 心弾むようなポップな楽曲ではないし、印象的なフレーズが散りばめられているわけでもないのですが、タイトル『銀河』通り、宇宙の闇に吸い込まれていくような静寂の中から湧き上がってくるような独特な音世界と、原田郁子の無垢な歌声が見事に融合。人の心の中にある光と影が見事に表現された1枚、と感じました。

 特に1曲目「銀河」。現在ガンで闘病中の忌野清志郎が歌とギター、ブルースハープで参加。原田郁子の歌声と重なり合う瞬間はなんともいえない気持ちにさせられるナンバーです。
 iTunesでショート・ヴァージョンが先行配信されていたそうですが、このアルバムには約15分近いヴァージョンが収録。夜遅くに星を眺めながら聴きたいですね。森 陽馬

2008年11月8日(土) ポール・ウェラー「The Poacher」(ロニー・レインのカバー)

 今年は、新作も出た、来日公演も見れた、で、ポール・ウェラーに関しては充実した一年だったなぁ...と、締めくくるにはまだ早いとばかりに、BBCの音源集なんてのがまた出てしまいました。
 
 今のところ国内盤が出る予定はありません。(珍しい、というか何故?)
 輸入盤の豪華盤は、4枚組全74曲とたっぷり。全曲リマスターされています。中にはインタビューなどが載った写真満載の64ページのブックレット付きです。(昨年発売された4枚組ベスト『ヒットパレード』と同じ形態です。)
 
 ディスク1、2には92〜08年のラジオ・セッション40曲、ディスク3、4には91〜98年のライヴ音源34曲が年代順に収められています。
 未発表曲もいくつかあり、ロニー・レインの「The Poacher」、ライブ・ディスクの方に「Just Like Yesterday」(タイトルも曲も初めて聴きました!)、アイズレー・ブラザースの「Work To Do」、あとこれは未発表ではありませんが、マンフレッド・マン「Pretty Flamingo」、マーヴィン・ゲイ「What's Going On」などカバーも数曲。
 
 今日の一曲はロニー・レインの「The Poacher」(『How Come』というアルバムに収録)。
 2000年発表作『ヒーリオセントリック』というアルバムの中にロニー・レインに捧げた曲がありましたが、ウェラーがロニーをカバーしているのは初めて聴きました。いちファンである彼の愛情あるカバーです。こちらは97年のバンド演奏での音源。
 他は特に真新しい曲はありませんが、アコースティックのバージョンなどで聴くとやはり一味違うものです。
 
 来月にはBBCの映像版、DVD2枚組がリリース予定です。(こちらは国内盤が出ます。)東尾沙紀

2008年11月9日(日) 大橋 好規 「kawaranaimono」

 まだまだ先、と思っていたキャロル・キングの公演が早くも明日に迫ってきましたね。急に冷え込んできたので、キャロル大先生には風邪をひかないように日本ツアー頑張ってもらいたいものです。

 さて、キャロル・キング、ジェイムス・テイラーの影響を大きく受けていて、ここ最近人気急上昇中、当店でもずっと大推薦している“大橋トリオ”こと、大橋好規のインスト・アルバムが先日発売になりました。(大橋好規『borderless』 PWSR-1020 \2,000)

 友人である村上淳の映画に提供していたインスト楽曲等を集めた作品で、正直あまり期待していなかったのですが予想に反してこれが素晴らしい内容。個人的に自分の部屋でかなりヘヴィー・ローテーション中です。
 大橋トリオの作品と同じく、今作に収録されている楽曲の演奏もすべて彼ひとりによる多重録音。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、フェンダーローズなどが有機的に絡み合って、単なるイージーリスニングとは違ったオーガニックなポップ感覚溢れるインストに仕上がっています。

 歌が入っていないのがもったいない、と思える反面、これはこれで耳ざわりのよいBGM・音響、として楽しめる1枚。でもやっぱりこれで歌詞がのったら、更にいい雰囲気の曲になりそうだな、という楽曲ばかりで、彼のポップ・センスには毎度のことながら唸らされます。ジャズ好きの方にも是非聴いてもらいたい1枚ですね。森 陽馬

2008年11月10日(月) The Gaslight 「It's Just Like Magic」

 すっかり冷え込んできたので、店も暖房を入れるようになりました。
 そんなこともあって、あっという間に秋が終わり冬到来、を実感する今日この頃ですが、そんな寒い夜にオススメしたい極上スウィート・ソウル・コンピが登場。(V.A 『ソウル・ギャラクシー』 UICZ-1304 \2,500)。

 伝説のソウル・バー“テンプス”、“ミラクル”のオーナーである川畑満男氏による選曲・監修で、ほとんどがこのCDでしか聴けないようなソウル・マニア垂涎の全20曲。更に吉岡正晴氏による詳細な解説、原盤番号のデータ記載もあるので、ホント、スウィート・ソウル・ファンにはウレシイ1枚ですね。

 どれもイイ曲ですが、特に目玉は11曲目に収録されているガスライト「It's Just Like Magic」。
 1975年にシングル盤でしか発表されなかった楽曲(ガスライトはアルバムを発表しておらず、当時シングル5枚しか出していなかったそうです)で、これが本当に素晴らしい甘〜いバラード・ナンバー。
 この曲以外にも、4曲目のAmbition、8曲目The Newcomers、20曲目Chapter Oneなど、どれも聴きものの極上スウィート・ナンバー連発!なので、アーティスト名&曲名を知らなくてもソウル好きの方なら愛聴盤となることうけあいです。

 先々週サンデーソングブックでも紹介され、山下達郎さんも大絶賛していたこのコンピ。2008年リイシュー・アルバム<ソウル部門>はこの1枚抜きには語れない!と断言できますね。もちろん、ソウル詳しくない方にもオススメの1枚ですよ。森 陽馬

2008年11月11日(火) Terry Huff & Special Delivery 「The Lonely One」(45 Version)

 昨日に続いて、寒くなると聴きたくなる“スウィート・ソウル”。
 名盤として外せないのがこのアルバム。テリー・ハフ&スペシャル・デリバリー『ザ・ロンリー・ワン』+4。(PCD-93146 \2,415)

 1976年発表作で全曲甘く切ないスウィート・ソウル。テリー・ハフのファルセット・ヴォーカルとバックのコーラスもさることながら、楽曲がとにかくイイですね。
 ちなみに彼らの最初のヒット曲「I Destroyed Your Love」(このアルバムにも収録)は、テリー・ハフが離婚した後作った曲だそうで、失恋の歌詞&切ないメロディー、張り裂けんばかりの彼のファルセット・ヴォイスが胸に迫ります。

 ちなみに、10曲目にボーナス・トラックとして収録されている「The Lonely One」(45 Version)というのはシングル・ヴァージョンのことで、2曲目のアルバム・ヴァージョンより1分ほど長い約4分30秒のトラック。
 今年8月に紙ジャケで再発されたこの盤はデジタル・リマスターも施されたので、ソウル・ファンならば一家に一枚! 必携盤ですね。森 陽馬

2008年11月12日(水) Neil Young 「Birds」

 今日11月12日はニール・ヤング63歳の誕生日! おめでとうニール!

 今年のニール・ヤングはヨーロッパ、アメリカを精力的にツアー。今月末からカナダ〜アメリカ・ツアーがまた始まり、来年1月はオーストラリア・ツアーを敢行。この流れで日本&アジア・ツアーも・・・、という噂があるのですが、まだ決まっていないみたいですね。来るとしたら来年2月! 現在のバンド(“Neil Young & His Electric Band”というバンド名が付いています)がロックな感じで良さそうなので、是非日本にも立ち寄ってもらいたいですね。

 リリース面では、ニール・ヤングの未発表音源&映像を収録したBOXセットが今年は遂に発売!と宣言されていたものの結局発売されず・・・。でも先日アメリカのamazonに遂にアップされました! それも予想通りブルーレイ10枚組!(1/27発売予定 約400ドル)
 ブルーレイ・レコーダーはまだ買わなくていいや、なんて思っていましたが、見れる環境を準備しておかなければいけませんね。(ちなみに同じ内容で、DVD10枚組というのも同時発売されるようですが、輸入盤はリージョン1なので一般的な国内機種では見ることはできません。国内盤が出るかどうかは未定)

 さて、そのBOXに先駆けて、ニールがバッファロー・スプリングフィールドを脱退しソロ・デビューする間に行なった1968年のライヴ音源が12月初旬に輸入盤で発売することになりました。
(『Sugar Mountain Live At Canterbury House 1968』 国内盤は1/14発売決定)

 23歳になる直前のライヴ、ということでジャケ写を見ても若いですねー。基本的にバッファロー時代の曲とソロ1stからの曲が中心ですが、70年発表名作『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』に収録された「Birds」もすでに演奏されていて、初お披露目の貴重な初期ライヴ・テイクなのでとても楽しみです。

 ちなみに9/28このコーナーで紹介したニルス・ロフグレンのニールカヴァー・アルバムも「Birds」が1曲目でしたね。ニルスはデビュー前の1968or69年に、ニールのライヴを見に行き楽屋に入っていって、ニールに自作の曲を聴いてもらった、というエピソードもあるぐらいなので、おそらくこの時期のニールの「Birds」を生で聴いているのでしょう。それを踏まえてニルスの「Birds」を聴き返すとまた感慨深いものがあります。森 陽馬

★掲載ジャケットは『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』。12月10日に限定SHM-CD仕様(WPCR-13241 \2,300)での発売も決まりました。

2008年11月13日(木)キャロル・キング「プレザント・ヴァレイ・サンデー」

 キャロル・キングが昨年に続いて来日! 昨年はちょっと毛色の違う人達とのジョイントでしたが今回は単独公演。「今日は何番目に出るんだろう?」なんて心配なしにコンサートに出かけられます。

 で、さっそく渋谷オーチャード・ホ−ルのライヴに行ってきました。
 ジャパン・ツアーは始まったばかりなので、これからコンサートに行かれる方にネタバレしないように多くは語らないようにしますが、めちゃくちゃ良かったですね!
 ライヴは途中休憩をはさんで、一部50分、二部&アンコールが60分、というゆったりとした中にも、緊張感を持って見れる構成でした。

 さて、この曲はキャロルとジェリー・ゴフィンがモンキーズのために書いたもので、1967年全米3位まで上昇した大ヒットです。当時のビート・グループらしいかっこいいリフを持った曲で、時代が移り変わろうがその時代に合った曲が書けることを証明した職業作曲家としての意地が感じられる1曲なのです。
 スタジオ録音でのセルフ・カヴァーはありませんが、近年はライヴで好んで取り上げています。1990年初来日の時も演奏しましたし今回もやってくれました。

 いくつになってもキュートさを失わない永遠の笑顔と歌声。そして、芯の強い考え方と楽曲の確かさに感動!のライヴでした。
 この2枚組のライヴ盤(『ベスト・ヒッツ・ライヴ〜リヴィング・ルーム・ツアー』 VICP-63999 \3,150)は、見る前に聴いても良し、見た後に聴いても良し、のここ数年いつも手元に置いておきたいCDになっています。森 

2008年11月14日(金) Ray Lamontagne 「Meg White」

 “新世代シンガーソングライターの新星”、“21世紀シンガーソングライター名作”、なんて売り文句に踊らされて、買って聴いてみるとあんまりピンとこない、ということが多々あるのですが、このアルバムはいいですね! かなり気に入って最近よく聴いています。

 レイ・ラモンターニュはニューハンプシャー出身1973年生まれの男性シンガー・ソングライター。靴工場で働いている時にラジオからかかってきたスティーヴン・スティルス作「Treetop Flyer」に触発されて音楽の道を志した、という異色?な経歴の持ち主。
 先日発表された新作アルバム『Gossip In The Grain』(輸入CD RCA 88697-326702)は約2年ぶりとなる3作目ですが、ややかすれ気味ながらもソウルフルな彼の歌声が、アコースティックなサウンドと相まって心地良く沁みる傑作に仕上がっています。

 1曲目「You Are The Best Thing」のようなホーンが入ったソウルフルなアレンジはヴァン・モリソンを彷彿とさせるものがあり、更に3曲目「Sarah」はヴァンの『アストラル・ウィークス』に入っていてもおかしくないような雰囲気を持った1曲。

 かと思えば、2曲目「Let It Be Me」はジェイムス・プラントばりの泣きのメロディーが炸裂した名曲で、また4曲目「I Still Care For You」はモロにジェフ・バックリィが乗り移ったかのようなナンバーだったりするなど、様々な彼の魅力が全10曲の中に込められながらも、散漫にはならない統一感があるのがこの作品のいいところ。

 ちなみに6曲目に収録されている「Meg White」が面白い歌詞で、まさにあのロック・グループ、“ホワイト・ストライプス”の女性ドラマーである“メグ・ホワイト”(ジャック・ホワイトのお姉さん)のことを歌っているのです。
 今のところ国内盤が出る予定はないのですが、とても良質な作品なので是非リリースしてもらいたいですね。森 陽馬

2008年11月15日(土) Led Zeppelin 「Good Times Bad Times」

 先日より来日中のThe Who。昨日は横浜アリーナでしたが、観に行かれた方々の話を伺うと皆、「素晴らしかった!!!」と大絶賛していますね。僕は武道館に行く予定ですが、渋谷シアターNで現在上映中のライヴ映像『ザ・フー:ライヴ・アット・キルバーン』も先日鑑賞し、個人的にもかなり盛り上がってきました。19日の武道館は当日券も出るようですので、迷っている方は見ておいた方がいいかもしれませんよ。

 さて、それとうってかわって同じくイギリスの大御所バンド、レッド・ツェッペリン。2007年12月に再結成ライヴをやって、遂に完全復活!世界ツアーも!?と言われてきたのに、なにやら雲行きが怪しい。
 ヴォーカリストのロバート・プラント抜きでツアーをやる、という噂がここ最近出回っていたので、デマであってほしいなあー、と思っていたのですがどうやら本当みたいですね。(リンク先はヤフー・ニュース。ジミー・ペイジのスポークスマンによる発言)

 現在ヴォーカリストをオーディション中らしいが、ホント、ツェッペリンはクイーンみたいになってほしくないですよね。(ってクイーンの悪口ではありませんのであしからず) 昔のような高い声が出ないのは百も承知。キーを落としても全然構わないのでロバート・プラントには頑張ってもらいたいものです。
 ちなみにこの今日の1曲は1stアルバムの1曲目。昨年のその再結成コンサートでも1曲目に演奏されました。森 陽馬

2008年11月16日(日)ポール・スティール「I Will Make You Disappear」

 作詞作曲は勿論、アレンジ、オーケストラのスコアも自分で書くという才能溢れるイギリス出身の22歳、ポール・スティール。先日リリースされたデビュー作『ムーン・ロック』(TOCP-66840 \1,980)はポップス好きは素通り出来ないカラフルで楽しいアルバムです。
 
 最初に聴いて真っ先に思い浮んだのが、ロジャー・ジョセフ・マニングJr.(ジェリーフィッシュ)でした。メロディや一人多重コーラス、自身を音楽オタクと語るところからして、ロジャーとの共通点は多そうです。
 
 聴き進めていくうちに、彼のポップな曲を作る上で、ベースになっているのはビーチ・ボーイズかなと思いました。この曲は彼がポップスとして初めて書いた曲だそうで、正にお手本はビーチ・ボーイズ!な一曲。実際、ブライアンの『スマイル』にはとても影響を受けているようです。テルミンのような音が入っている曲もあります。
 その他ジェフ・リンのエッセンスも少し。最近のアーティストだとMIKAなどがお好きな方にも結構ハマるのではないでしょうか。
 
 オーケストラなどを使った音作りはデビュー作とは思えない豪華さ! 最初はポリドールからリリースされる予定だったもののデビューシングルが不発だったため、現在は自主レーベルから出しているというちょっと不運な彼ですが、これからも沢山ポップな曲を書いて頑張ってほしいなと思います。(国内盤はEMIから。昔のデザインを意識した帯が付けられています。)東尾沙紀

2008年11月17日(月) Roger Smith 「Beach Time」

 昭和30年代半ば、日本でも放送されていたアメリカ・テレビドラマ『サンセット77』は、『ハワイアン・アイ』、『うちのママは世界一』、『ララミー牧場』、『パパはなんでも知っている』、『名犬ラッシー』などと並んで当時の人気番組でした。

 『サンセット77』と言えば、あのフィンガースナッピング(指パッチン)が有名な主題歌と、いつも髪をくしでとかしているエド・バーンズ扮するクーキーが思い出されます。
 そして主役であるロジャー・スミス扮する私立探偵ジェフ・スペンサーの精悍さは、小学生が見ても惚れ惚れするものがありました。

 本来の俳優であるロジャー・スミスが1959年にちょっとヒットさせた「ビーチ・タイム」は、ほんわかムードのなかなかいい曲でした。曲を作ったのはボブ&ディックのシャーマン兄弟。

 なおロジャー・スミスはこの後アン・マーグレットと知り合い1967年に結婚。ロジャーは彼女のマネージメントという裏方に回り、女優アン・マーグレットをサポートするようになりました。僕の大好きなアン・マーグレットのハートを射止め、彼女を支えたロジャー・スミス。あなたはなんてカッコよくて、うらやましい存在なのでしょう。

 この曲が収録されているのは『The Golden Age Of American Popular Music Vol.2』(ACE CDCHD-1191)。今では忘れがちになる1956〜1965年のヴォーカル・ヒットが全28曲収められています。森 勉

2008年11月18日(火) Jimmy Vann Band 「The Upper Left Hand Corner Of The Sky」

 “ソフト・ロック名盤”も出尽くした感がありましたが、こんな作品が残っていました。カナダ出身のジミー・ヴァンを中心にしたグループ、ジミー・ヴァン・バンドの1971年発表作『ジ・アッパー・レフト・ハンド・コーナー・オブ・ザ・スカイ』(VSCD-2158 \2,625)。

 ジャケットは本などで見たことがありましたが、恥ずかしながらこの作品初めて聴きました。1曲目のタイトル曲が評判通りの名曲でしたが、アルバム全体的にもかなりイイ感じです。ロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズお好きな方なら気に入ることうけあい。

 「青春の光と影」(ジョニ・ミッチェル作)、エヴァリーで有名な「レット・イット・ビー・ミー」なども男女ソフト・コーラス的アレンジでカヴァーしており、他のオリジナル曲も清々しい男女コーラスをいかしたゴキゲンな楽曲。でもやっぱり一番の聴き所は1曲目ですね。
 ボッサ的リズムにハッピーな混声コーラスの重なり方がとにかく素晴らしい、“ロジャニコ+アニタ・カー+セルメン”的なキラーチューン! ソフト・ロック・ファンならば持っておいたほうがいい1枚ですね。森 陽馬

2008年11月19日(水) トリオ・ヴァロアー 「FUOCO」(ジミヘンの「Fire」のカバー)

 ポール・ウェラー、また来日が決まりました。
 来年の4月上旬、福岡、広島、名古屋、大阪、関東はクラブチッタ川崎と新木場スタジオコーストに決まりました。

 今年の夏、サマソニとその前に一日単独公演を行いましたが、時間も短く物足りなかったので、今回は割りと小さめの会場でたっぷりと見られそうです。多分バンドで来ると思うのですが、やっぱりこの人がバックに居ないとなぁと前回新体制のバンドを見てそう感じました。
 
 この人というのが長年ウェラーのバックを支えてきたドラマー、スティーヴ・ホワイト。
 今はデーモン・ミンチェラ(元オーシャン・カラー・シーンのベーシスト)と共にウェラーの元を離れ、新たに“トリオ・ヴァロアー”というジャズファンク・トリオを結成活動中。先日国内盤もリリースされました。(『リターン・オブ・ジ・アイアン・モンキー』 PCD-93188 \2,415) ベース、ドラムと共に、主体となるオルガンを担当するのがこれまたウェラーのバックも務めた事があるセッション・ミュージシャン、シーマス・ビーゲン。
 
 オリジナル曲が4曲と、先行シングルのエイミー・ワインハウス「リハブ」、ストーンズ「黒くぬれ」、JBの「ソウル・パワー」、ミーターズ「ファンキー・ミラクル」、ジミヘン「ファイアー」の他ジミー・マクグリフ、ロニー・スミスなど疾走感のあるカバーが満載!全編インストです。イタリアのレーベルから出してるという事もあって、殆どのタイトルがイタリア語で表記されています。

 演奏はホーンなどが入る以外はシンプルで良いです。アシッド・ジャズ全盛のなんだか懐かしい感じも。スティーヴ・ホワイトはロック・ドラムだけじゃなく、いろんな叩き方が出来てとても好きなドラマーです。日本では地味な存在の彼らなので単独来日はまず無いかなと思うのですがこれは是非ライブで見てみたい! あと、自身の活動が一段落したらまたウェラー・バンドに戻ってきて欲しいです。東尾沙紀

2008年11月20日(木) Wilson Pickett 「In The Midnight Hour」

 The Who日本公演も無事終了。ロジャー・ダルトリーの声の調子がイマイチだったとか、ピート・タウンゼントは腕はガンガン振り回すけれどもうジャンプはしない、とかそういう野暮なことを言わなければ、本当に素晴らしいライヴでしたね。武道館2日間行きましたが、特に17日はびっしり満席&異様な盛り上がりで武道館がライヴハウスのように感じました。(19日は2階席が半分くらいの入り。) 最終日のピートの上機嫌さと見ると、また来てくれそうな雰囲気も漂ってましたが、何はともあれThe Whoには“ロック”し続けてもらいたいものです。

 “ロック”といえば、日本は清志郎!
 なんと!20日ブッカーT&MG'sのブルーノート公演に飛び入りで出てきたそうです!

 いやーーー、フジロックをキャンセルしてからずっと音沙汰がなく、その間に筑紫哲也さんがガンで亡くなられたりして、清志郎はどうしているんだろう・・・、と思っていたのですが!

 記事によるとウィルソン・ピケットの定番曲「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」をやったそうです。ブッカーT&MG'sと清志郎とは、『メンフィス』というアルバムで共演したり、今のところの最新作『夢助』がスティーヴ・クロッパープロデュースだったりするので、清志郎も観に来るかもしれないな、くらいには思っていましたがまさかステージ上で歌うとは。

 完全復活にはまだまだ道のりは険しいかもしれませんが、またステージ上で彼の勇姿を見れることを心待ちにしましょう。森 陽馬

2008年11月21日(金) VETIVER 「Roll On Babe」

 かわいい少女がアナログ・レコードを持って部屋で佇んでいる美麗ジャケット。レコード・マニアならばこのジャケットだけでもついつい手にとってしまいたくなりますが、内容もかなりマニア受けしそうな渋〜い1枚なのです。

 VETIVER(ヴェティヴァー)は、Andy Cabic(アンディ・キャビック)を中心とした最近のロック・バンド。デヴェンドラ・バンハート周辺の新世代フォーク・シーンの一派らしく、音は最近のグループとは思えないほど枯れた味わい。(ちなみにジャケットには女性が写っていますが、メイン・ヴォーカルは男性です。)

 今年発売されたこの『Thing Of The Past』(輸入CD Gnomonsong GONG-11 国内盤の発売予定はなし)は1970年代ルーツ・ロックのカヴァー・アルバムとなっていて、この選曲がまたまた渋い!
 ノーマン・グリーンバウム、ボビー・チャールズ、マシューズ・サザン・コンフォート、ホークウィンド、ガーランド・ジェフリーズなどの曲を取り上げ、それを更にレイドバックしたアレンジでカヴァーしています。

 今日のこの1曲に挙げた「Roll On Babe」は元々はデロール・アダムズの楽曲ですが、一般的にはロニー・レインのヴァージョンで有名な1曲。そのロニー・レインのレコード・ジャケットがさりげなくこのVETIVERのジャケットにも写っているのがいいですね〜。と思ったら、ボビー・チャールズやノーマン・グリーンバウムのジャケットもよーく見ると写っていて思わずニヤリ。どうやらこのアルバムでカヴァーしている曲のオリジナルLPはこのジャケットのどこかに仕込んであるようです。

 ちなみに3曲目「Sleep A Million Years」(KATHY HEIDEMAN作)には、伝説の女性ブリティッシュ・フォーク・シンガー、Vashti Bunyan(ヴァシュティ・バニヤン)がfeatヴォーカルで参加。清々しい美声を聴かせてくれています。森 陽馬

2008年11月22日(土) Laura Nyro 「Up On The Roof」

 現在の仕事に就いたきっかけというのが誰しもあるだろうが、CD店で働いている僕にとってのきっかけは、“ローラ・ニーロ”だった。

 学生の時は正直言うと、音楽は好きだけれども父と同じような職業には就かないだろうな、と思っていた。だが、その思いを180度変えてくれたのが、1994年ローラ・ニーロ来日公演。
 神々しいまでの歌声、美しいピアノの奏。そして時間が止まったかのようなあの空気感を体験したことによって、陳腐な言い回しながら、音楽の素晴らしさというものに改めて感動して、音楽に関わる仕事をしたい、と初めて思ったのだった。

 もちろんその後も、様々な素晴らしい音楽に出会い、そして代え難い想いを与えてくれたコンサートを数多く見ることができたが、昨日21日に見たキャロル・キングのコンサートは、ローラ・ニーロ来日公演の時に感じさせてくれた“初心”の“音楽の素晴らしさ”を再び僕に呼び覚ましてくれた。

 高音になるとややかすれてしまうキャロルの歌声は、上手いor下手という基準ではない音楽の暖かさ・やさしさ、というものがギュッと詰め込まれていて、そのやさしい温もりが僕らの心を包み込んでくれるかのようだった。

 東京国際フォーラムでやさしく語りかけるように歌ってくれたキャロルの「Up On The Roof」。そしてローラ・ニーロによるカヴァーを聴きながら、約14年前に想いを馳せてみる。「あの頃と同じような無垢な心・イノセンスを僕は取り戻せるのだろうか」と。森 陽馬

★ジャケットは「Up On The Roof」のカヴァーが収録されているローラ・ニーロ『魂の叫び』(SICP-1955 \1,890)。

2008年11月23日(日) ダイアモンズ 「ベニスの夜空」

 映画『GSワンダーランド』を観てきました。実に楽しい映画でした。
 プロデューサーの一人である永森裕二と監督の本田隆一が書いた脚本が素晴らしく、GS(グループ・サウンズ)が流行していた時代の雰囲気がうまく伝わってきました。

 映画の中で人気グループになるタイツメンのメンバーを演じた栗山千明、石田卓也、水嶋ヒロ、浅利陽介の4人の若い俳優たちもなかなかの熱演でした。タイツメンの事務所社長兼マネージャー役の武田真治も実にハマリ役でファッションもイカしていました。

 そして音楽。この映画のために作られた楽曲はBGMも含めてどの曲も1968年前後の時代の香りがたっぷり沁み込んでいます。主題歌的な「海岸線のホテル」はなんと!筒美京平&橋本淳が新しく書き下ろしたもの。温水洋一がクールファイヴの前川清のように熱唱する「あなたのフリをして」もいいし、ナックルズのサイケな曲(京都で活動しているというサイクロンズが演奏している)も60年代中期から後期のバンド・サウンドを再現していて感心してしまいました。

 僕が一番気に入ったのは、タイツメンの前身“ダイアモンズ”が屋上で演奏していてプロにスカウトされるきっかけとなった「ベニスの夜空」。
 60年代らしい荒唐無稽な歌詞に、初期のビートルズっぽい勢いのある演奏が最高。これを作曲・編曲しているのは元ファントムギフトのベーシスト、サリー久保田。本当にいい味出してます。
このサントラCD(CDSOL-1260 \2,400)ともども映画も大推薦です。森 

2008年11月24日(月) Dave Clark Five 「Because」

 60年代ブリティッシュ・ビートの雄であるところのデイヴ・クラーク・ファイヴ。(以下DC5)
 こういう言い方をすると大滝詠一のラジオ番組『ゴー!ゴー!ナイアガラ』を思い出す方もいらっしゃるでしょうか。<リヴァプール・サウンド>特集でもかかりましたし、1976年12月にはDC5特集も組まれました。2001年秋から2002年春までラジオ日本で放送された『ゴー!ゴー!ナイアガラ・アーカイヴス』では、数ある特集の中からDC5特集が再放送されたりもしました。1964年当時からDC5を聴いている者にとっては、『ゴー!ゴー!ナイアガラ』は1970年代に彼らの素晴らしさを唯一伝えてくれる番組でした。

 ということでデイヴ・クラーク・ファイヴ、待望のCDが出ました。
 リーダーのデイヴ・クラークが自分で音源を管理している関係でなかなか“モノ”が出ないアーティストとして有名な彼らですが、オフィシャルとしては10数年ぶりのCD化です。またすぐに廃盤になってしまうかもしれませんのでご注意を。

 タイトルは『The Hits』。ドラムの連打が印象的な「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」、「ビッツ&ピーセス」、「キャッチ・アス・イフ・ユー・キャン(若さをつかもう)」、大迫力サウンドの「エニー・ウェイ・ユー・ウォント・イット」、全米No.1ヒット「オーヴァー&オーヴァー」、バラード名曲「カム・ホーム」、「エヴリバディ・ノウズ」、そしてシングルB面なのによくぞ収録してくれましたの「アイル・ビー・ユアーズ・マイ・ラヴ」など全28曲。

 なんと未発表だった「ユニヴァーサル・ラヴ」という曲も含まれています。デイヴ・クラーク自身によるリマスターにより音もバッチリです。
 今日のこの1曲は、ベタですが「ビコーズ」。オルガンとギターのアンサンブルが素敵な1964年の大ヒット。本当にいい曲です。森 勉

2008年11月25日(火) 竹内まりや 「最後のタンゴ」

 紅白歌合戦の出演歌手が決定しましたね。
 密かに竹内まりやさんの出演も期待していたのですが残念ながら出演者リストにはなし。NHK連続ドラマ『だんだん』の主題歌&ナレーションを担当したり、NHKの音楽プログラム『SONGS』に出演したり、そしてNHKラジオ『ラジオ深夜便』のテーマ曲を手掛けるなど、何かとNHKとの“縁の糸”があるような気がしていたのですが・・・。いつか「人生の扉」をセンチをバックに従えて(←ここ重要!)紅白で歌ってほしいものです。

 さて、そのNHK『だんだん』の主題歌である「縁の糸」、及びNHK『ラジオ深夜便』テーマ曲「最後のタンゴ」、そして3曲目に「アップル・パップル・ピリンセス」(1981年のNHK「みんなのうた」テーマ曲をリマスターで収録)を収録したシングル盤が本日入荷。(初回限定盤のみCD-EXTRAで「元気を出して」のミュージック・ビデオ収録 WPCL-10627 \1,200)

 個人的に気に入っているのは2曲目「最後のタンゴ」で、今までのまりやさんにはなかったような大人なタンゴ歌謡。作曲はまりやさん本人ながら、アレンジを服部克久、そして歌詞を作家の伊集院静が手掛けています。
 ♪ あなたの匂いが好きよ シャツに滲んだ汗まで
 独り占めしていたいの 抱いて抱いてもっと ♪
なんて歌詞をまりやさんに歌わせてしまうとは、さすが伊集院静。まりやさんの歌声もどことなくセクシーな印象です。

 山下達郎「ずっと一緒さ」、まりやさんの前作「幸せのものさし」、更には松たか子さんの作品にも参加している後藤勇一郎ストリングスが上品な弦を聴かせてくれているのも聴き所です。森 陽馬

2008年11月26日(水) The Electones 「Take Two」

 恥ずかしながら最近知ったのですが、電子オルガンの1種である“エレクトーン”は、ヤマハ製の商標登録だそうです。つまりエレクトーンのような電子ピアノ・オルガンもヤマハ製以外はエレクトーンとは言わないのだそうで、今までそれっぽいオルガンを全て“エレクトーン”と言ってしまっていた自分が恥ずかしいです・・・。

 さて話変わって今日の1曲。その名も“エレクトーンズ”はロサンゼルスを拠点に活動している3人組オルガン・ジャズ・バンド。

 最近の“オルガン・ジャズ”というと、タワー・オブ・パワーに影響を受けたラッドを筆頭に、“ハモンド・オルガン引き倒し!”的な熱いジャズ・ファンク・サウンドを想像してしまいますが、このエレクトーンズは、現在の音とは思えないようなレイドバックした70〜80'sフュージョン風な音作り。クール&グルーヴィーな曲展開でありながら、聴いていて“心地良い懐かしさ”すら感じさせるサウンドです。

 エレクトーンを弾いている中心メンバーのマイク・ボルガーはライ・クーダーの最近のアルバムなどにも参加している名セッションマン。
 改造された70年代YAMAHAのヴィンテージ・オルガンから紡ぎ出されるオルガン・サウンドと、暖かみある音色のギター・フレーズがゴキゲンで、さりげないBGMとしても楽しめる1枚です。森 陽馬

2008年11月27日(木) 空気公団 「あすにつづくわたし」

 先週はThe Whoとキャロル・キングのコンサートを見れて豪華な1週間(ジャクソン・ブラウン、ブッカーT&MG's見れなかったのは残念!)でしたが、そうこうしているうちに今年も残すところあと1ヶ月余り。
 今週末29日(土)に東京ローカルホンクのワンマン・ライヴが渋谷のロック喫茶BYGであってとても楽しみにしているのですが、それ以外は年末ライヴを見に行く予定は今のところなし。皆さんの年末のご予定はいかがでしょうか?何かオススメなライヴありましたら是非教えてください。

 今年は生のスライも見れたし印象に残るライヴが多く、良い1年でしたが、そのライヴ始めは何だったかというと1月5日に見た空気公団のイベント“空装”だったことを思い出しました。(2008年1月5日のこのコーナーを参照
 これもまた印象深い催しでしたが、その“空装”から11ヶ月弱を経て、空気公団のオリジナル新作アルバム『メロディ』が遂に発売。(KKFS-1 初回紙ジャケ \3,200)

 空気公団らしい飾り過ぎないサウンドに山崎ゆかりさんのやさしい歌声が聴くほどに温かく馴染んでくる期待通りの内容。空気公団のオフィシャル・サイトから言葉を借りると、“秋冬の長い夜、ふと読み返したく手紙のようなシンプルな暖かさ”を感じられる作品です。

 どの曲も穏やかでありながら聴き応えある楽曲ですが、耳に残ったのは8曲目「あすにつづくわたし」。今までの空気公団の歌は、女性ヴォーカルでありながらほとんどが“僕”(実際7曲目「隙間の雨にさよなら」も“僕”)で歌われていましたが、この曲は“わたし”で歌われているのが特徴。
 あとタイトル曲「メロディ」も聴きもの。スムースエースの重住ひろこさんのコーラスが美しいですね。森 陽馬

2008年11月28日(金) Kenmochi Hidefumi 「Falliccia」

 「2008年のCLUB MUSIC界はハウスが大流行!」、なんて一般的には言われていましたが、それもひと段落した感があって、現在はノリ重視よりもリスニング感覚で聴けるインストもののニーズが高まってきているように感じます。

 もちろん歌モノのジャジー・ハウスも根強いのですが、最近は「歌が入っていないものの方がいい」という方も多いです。音楽を聴く環境・聴く時間が変化してきたのが一因でしょう。

 さて、そういう雰囲気のCDで今オススメしているのがこのアルバム。
 Kenmochi Hidefumi(釼持英郁)はギター、キーボードなどの生楽器から打ち込みまでを一人で操り音を紡ぎ出す日本人クリエイター。ヌジャベスも深く関わっているHydeout Productionsから先日リリースされた『Falliccia』(HPD-11 \2,500)は、オーガニックなエレクトロニカと暖かい生楽器の音色が見事に融合していて、非常に心地良い仕上りです。

 全曲インストですが飽きがこなくて、さりげないBGM/心地良いリスニング・ミュージックとしても楽しめる好作。Ino hidefumiやNo.9などのインスト好きの方、はたまた音響・CLUB MUSIC好きの方にも推薦の1枚です。森 陽馬

2008年11月29日(土) Hollyridge Strings 「I Get Around」

 1950年代、1960年代は歌モノでヒットしていたアーティストをインストでカヴァーするアルバムが多数制作されました。
 このホリーリッジ・ストリングスはそんなカヴァー・アルバムの中でも昔からマニアの間では語られ続けている有名なものです。ロック・ジャンルの楽曲をクラシカルなオーケストラションで聴かせてくれる点が実に新鮮で、その楽曲に潜んでいたそれまで気付かなかった魅力を感じさせてくれることも多くあるのです。

 今回はうれしいことにホリーリッジ・ストリングスが出したビーチ・ボーイズ・カヴァーものがCD化されました。1964年発表の『ソングブックVol.1』と1967年発表『ソングブックVol.2』が全曲1枚のCDで聴ける2イン1の形での発売です。(Collector's Choice CCM-966)

 「Don't Worry Baby」、「Fun Fun Fun」、「Wendy」、「Little Saint Nick」などが収録されている『Vol.1』はステュ・フィリップスがアレンジ。シェリー・フェブレーやジェームス・ダーレンなどのアレンジでも有名な人です。

 「Good Vibrations」、「God Only Knows」、「Surfer Girl」などを収録した『Vol.2』は、ペリー・ボトキン・ジュニア(バリー・デヴォーソンとのコンビで「コマネチのテーマ」をヒットさせたりしました)と、モート・ガーソン(ルビー&ザ・ロマンティックスが全米No.1にした「Our Day Will Come」を作曲)がアレンジを担当。

 この今日の1曲「I Get Around」をはじめ、適度なメリハリのある管弦楽といった感じでアレンジされており、ビーチ・ボーイズ・ファン以外の方にもさりげなくブライアン・ウィルソン作品の素晴らしさをアピールできるかも。森 勉

2008年11月30日(日) Rebecca Martin 「You're Older」

 90年代からニューヨークを中心に活動している女性シンガーソングライター、レベッカ・マーティン。
 昔ジェシー・ハリス(ノラ・ジョーンズの「Don't Know Why」の作者)とONCE BLUEというユニットを組んでいたり、自身のアルバムも数枚出しており、これは4年ぶりとなる最新作。(輸入CD『The Growing Season』 SSC-1178  1月には国内盤がリリースされるようです。)
 
 彼女の夫であり、ベーシストのラリー・グレナディアなど、ジャズ系のミュージシャンがバックを務めており、フェンダー・ローズやヴィブラフォン等も交え、シンプルで控えめな演奏で彼女の歌声を引き立たせています。(一瞬ですが、原田郁子さんの声にも少し似ているかと。)
 
 彼女自身が弾くアコースティック・ギターも心地良い響き。曲も静かなものが多いのですが、楽曲の展開がちょっと変わってるかなというのとヨーロッパの雰囲気も少し感じられるなぁと思いました。聴く度に新しい発見がありそうな一枚です。

 ジャズ好きな方に限らず、フォーク、女性SSWお好きな方にお勧めのアルバムです。東尾沙紀





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