PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月7月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年7月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年7月1日(火)The Beach Boys 「Do You Wanna Dance?」 stereo backing track

 久し振りの更新となります。このコーナーも更新が滞ってしまい、ご心配お掛けして申し訳ございませんでした。

 何故かFTP転送ができなくなり、更に古いデータが消えてしまったりして、ちょっと手間取ってしまいましたが一応復旧。ただ、また調子が悪くなる可能性もあるので、このコーナーも近いうちに別アドレスのブログに移行しようかと思っております。
 しばらくはこのページのまま継続していきますが、もしアドレスが変更になる際にはリンク先をトップページ、及びこちらでも告知いたしますので、これからも末永くよろしくお願い致します。

 さて、今日から7月ということで久々の更新はやはりビーチ・ボーイズでしょう! 当店の更新が滞っていた間の6月後半は天気が悪い日が多く、すっきりしない空模様でしたが、ビーチ・ボーイズ関連アイテムは色々と入荷。
 特に注目のデニス・ウィルソン『Pacific Ocean Blue』(国内盤は7月23日発売)と共に発売になったのがコレッ! ビーチ・ボーイズ『US Single Collection 1962-65』。

 入荷する前は、はっきりいって期待していなかった、というか、数年前に同じくCapitolが制作したビートルズUS盤BOXの装丁が正直イマイチだったので半信半疑だったのですが、実際に入荷して手に取ると・・・、いやーーー、マニア心をくすぐられる仕様ですねー。

 まず箱上部の手触りからしてゴキゲン。中のブックレットも独特な手触り感。当時のUSシングル盤ジャケットを模した紙ジャケに1枚1枚入れられているシングルも、最初は聴くのにいちいち取り替えるのがめんどくさそう、とか思っていたのですが、こうやって取り替えて聴く、という行為は、最近便利になったi-podで聴くのとはまた違った音楽の楽しみ方を思い出させてくれるようです。

 そのマニア心を更にくすぐるかのように、このBOXで初お披露目の未発表ステレオ・ミックスも収録されており、ビーチ・ボーイズ・コア・ファンに特にオススメなのが、今日のこの1曲「Do You Wanna Dance?」のカラオケ(Stereo Backing Track)。
 ホント、このカラオケはいいですね! 生な感じが伝わってくる演奏ももちろんですが、後半ラスト間際に突如コーラスが加わる部分が鳥肌が立つほどかっこいいっ! 演奏が止まった後もしばらくコーラスが続くのがまたいいのです。森 陽馬

(久々の更新なのに、コアな話題になってしまいスミマセン)

2008年7月2日(水) ビートルズ 「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」

 ミュージック・マガジン社から出ている音楽雑誌『レコード・コレクターズ』7月号の特集は、<ビートルズ 1962〜1966年ベスト・ソングス50>! ビートルズ愛好家25人が好きな曲ベスト20を選び、それを集計したものを<前期ビートルズのベスト50>として掲載しています。

 僕も選者のひとりとして順位をつけて20曲を選びましたが、前期と言ってもアルバムとしては『リヴォルヴァー』までの変革の時期も含んでしまうので難しかったですね。
 でもこういう企画は楽しいです。ひとつのたたき台があると会話も弾み、様々な意見や感想が聞けて、音楽の楽しみ方はいろいろ、十人十色。そこが面白いところだと思います。

 さて、この曲は初期の曲の中でもかなり好きな曲で個人的には8位という上位に入れたのですが、皆さんの支持があまりなく、ベスト50には残念ながら入っていませんでした。
 日本盤LP『No.2』のA面2曲目、イントロのヴァースのところ、
♪僕がどれだけ君をあいしているのか、どれだけ君を想っているのか、君にはわからない・・・♪
とジョージ・ハリスンが歌うのを何回聴いたことか。世の中の女の子だけでなく、男の子もノックアウトされてしまいました。

 イギリスではシングルとして発売されませんでしたが、アメリカでは1964年春、全米2位まで上昇した大ヒット曲。日本でもシングルになり、人気のあった曲です。森 勉

(掲載ジャケットは、現行CDで収録されている『プリーズ・プリーズ・ミー』)

2008年7月3日(木) 大橋トリオ 「そんなことがすてきです」

 HPの更新が7月から再開できて、何人かの方から祝辞(?)をいただきました。ホント、こんな小さな店のたいしたことないHPをご覧になっていただき、感謝と共に恐縮しきりです。この場を借りて御礼申し上げます。

 さて、更新が滞っていた間に売れていたCDというと、やはりコールドプレイでしょうか。
 売れた、といってもうちのような店ではたかが知れていますが、「あのiPodのCMでかかっているアーティストは?」という問い合わせで購入される50代の方や、「友だちに薦められて・・・」と言って買いに来るCDをあまり買ったことがないような女の子がいるなど、まるで20世紀のようなレコード・CDの売れ方です。
 <21世紀最大のロック・バンド、最新作>という帯の文句は誇張しすぎ?、なんて最初は思いましたが、あながち侮れないかも。

 で、今現在うちの店でよく売れているのは、大橋トリオの新作『This Is Music』(PWSR-1018 \1,800)。昨年末に発表された1st『プレタポルテ』(PWSR-1017 \2,000)は今でも売れ続けていて評判も上々。(2008年4月3日のこのコーナーでも取り上げてました)
 その前作『プレタポルテ』の流れを引き継ぐ全8曲で、今作もほぼ全ての楽器(ギター、ベース、ドラム、キーボードなど)を彼1人で担当。1人でありながら“トリオ”のようなオーガニックかつクールな音作りが印象的です。

 日本語詞の曲は8曲中3曲でしたが、4曲目に収録されているこの曲「そんなことがすてきです」は素朴ながらも穏やかな彼の作風が歌声にも反映されていていい感じの1曲でした。他の楽曲もジャジーなアプローチながら、ポップに聴かせるセンスがお見事。幅広く色んな人に聴いてもらいたい邦楽のオススメ盤です。森 陽馬

2008年7月4日(金) Jonna Lee 「I Wrote This Song」

 モノクロのシンプルなジャケットが良い、ヨンナ・リーの「10ピーシズ,10ブルージズ」。(PCD-93136 \2.415)
 
 彼女はスウェーデン出身で、ストックホルムとロンドンを行き来しながら活動するシンガーソングライター。彼女が書くメロディは、いわゆるスウェディッシュ・ポップという感じではなく、「イギリスの、雨がいつも降ってる天候が好き。」と語るように、そんな情景が思い浮かぶ、寂しげな雰囲気を持った曲が多く、サウンドはアコースティックを基本に、地味なのですが聴くごとに味が出そうなアルバムだなと思います。
 
 ファイストがよく引き合いに出されるようですが、この「I WROTE THIS SONG」という曲はアルバムの中では比較的ポップで、ザ・カーディガンズのニーナにも雰囲気が似ているかなといった印象を受けた曲です。これにはスーパーグラスのドラマーが参加、ドラムとバック・ヴォーカルを担当しています。
 
 他に彼女が歌を書く上で影響を受けているという、イギリスの男性SSW、エド・ハーコートが3曲を共同プロデュース。「AND YOUR LOVE」という曲にデュエットで参加しています。東尾沙紀

2008年7月5日(土) Jan & Dean 「Surf City」

 ブライアン・ウィルソンの新作『That Lucky Old Sun』。海外では9月2日発売ですが、国内盤は9月10日に発売が決定したようです。(EMIの公式ページにも記載されています。詳細はまだはっきりとわかりませんが、限定仕様、DVD付仕様、紙ジャケ仕様、アナログ盤など、色々な仕様で出るようです・・・。)

 なお上記にリンクしたEMIのページで、ブライアンのキャピトル・レコードでのインタビュー映像も見ることができます。相変わらず?ぶっきらぼうな受け答えではありますが、またツアーに出て元気な姿を見せて欲しいですね。

 さて、東京は昨日・今日と夏らしい陽気で、梅雨明けの到来を期待させてくれる暑さでしたが、それに合わせるようにジャン&ディーンの新しい編集盤が入荷してきました。(輸入盤2枚組CD 『The Complete Liberty Singles』 Collector's Choice CCM-949)

 タイトル通り、リバティー・レーベル時代のシングルA面&B面を全て収録。ブライアン・ウィルソン作「Surf City」、「Drag City」、「Ride The Wild Surf」なども収められた全42曲で、ここ最近はジャン&ディーン関連作品のリリースが少なかっただけにサーフ音楽ファンにとってはウレシイ1枚ですね。

 ちなみに明日6日(日)、当店地下にあるアゲインで辻堂の音楽カフェ“ブランディン”によるDJイベントがあり、<サーフィン・ホットロッド/エレキ・インスト>特集で行なわれます。コアなサーフ・ファンは要チェックですよ♪ 森 陽馬

2008年7月6日(日) STS9 「Metameme」

 最近は超大物の来日が少ないかな、なんて思っていたら、ここ1ヶ月くらいで続々と決まってきましたね。
スライ&ザ・ファミリー・ストーン(8/31、9/2 東京Jazz&ブルーノート)
ジョアン・ジルベルト(11/1〜 東京国際フォーラムなど)
The Who (11/13〜 大阪、東京日本武道館など)
ビリー・ジョエル (11/18 東京ドーム)
スティング (12/16 オーチャード・ホール)
レディオヘッド、レニー・クラヴィッツ、シェリル・クロウなども決定。ポール・マッカートニー(現在海外でツアー中)なんかもそろそろ?という噂があるので期待したいところ。

 さて、大物ではないのですが、個人的にライヴを生で見てみたいな、と思っているのがSTS9。(実名は“Sound Tribe Sector 9”)
 北カリフォルニア出身のジャム・バンドで、ここ最近のスタジオ作品はエレクトロニカ的要素が強まり、独特な浮遊感あるエレクトロニカとプログレッシヴなロック・ジャム/ジャズが渾然一体となったサウンドを聴かせてくれるバンドです。
 2003年にフジロック、数年前に朝霧JAMという野外フェスに来日してましたが、アルバムと違いライヴになるとガンガン前に出るようなアグレッシヴな演奏になり、とてもかっこいいのです。

 今作『PEACEBLASTER』(MCN-3019 \2,730)は久々のスタジオ・アルバム。やはりエレクトロニカ要素がふんだんに盛り込まれていますが、タイトル“Peaceblaster”(造語のようです)からも推察できるように、世界平和や地球環境問題などもコンセプトに敷かれているようで、単なる音遊びだけの作品ではないことが窺えます。ジャム・バンド・ファンのみならず、音響もの、ポストロック好きの方も2008年注目・必聴の1枚でしょう。森 陽馬

2008年7月7日(月) ニック・デカロ 「オンリー・ウィズ・ユー」

 ニック・デカロ・ファン、及びデヴィッド・T・ウォーカー・ファン、そして山下達郎ファンの方々、お待ちどうさまでした。永らく廃盤になったままだったアルバム『ラヴ・ストーム』が再発になりました。(VICP-64153 紙ジャケ \2,500)

 1990年に発売されたこのアルバムは、9曲中7曲が山下達郎の楽曲をカヴァーしたもので、その当時も話題になった1枚です。

 バック・ミュージシャンも豪華で、ハーヴィー・メイスン、ジョン・ロビンソン、ニール・ラーセン、ディーン・パークス、そしてこの曲では大フィーチャーされているデヴィッド・T・ウォーカーと、腕利きが集まって、ニック・デカロのソフトで落ち着いたヴォーカルをサポートしています。

 ゆったりとしたスウィート・ソウル系のバラード「タッチ・ミー・ライトリー」もいいけれど、今日はイントロ、ミドル、エンディングと、デヴィッド・Tのギターソロたっぷりの「オンリー・ウィズ・ユー」に身を任せたい気分。森 勉

2008年7月8日(火) ポール・ウェラー 「Push It Along」

 2枚組LPを想定してつくられた全21曲、68分あまり。輸入盤CDは一般的に1枚ものとして流通していますが、いやはやこれが全英1位になるとは驚きです。
 前作から約3年ぶり、輸入盤から約一ヶ月遅れでポール・ウェラーの新作『22 DREAMS』国内盤が本日リリースされました。(初回限定のみボーナスCD付の2枚組、限定紙ジャケSHM-CD仕様 UICI-9032 \3,500)

 前作『As Is Now』はほぼバンドの4人で作られたシンプルなアルバムでしたが、今作は共同プロデュースに名を連ねるサイモン・ダイン(ヌーンデイ・アンダーグラウンド)の影響が大きく、サイケ、ジャズ、ソウル、ラテン、トラッド、インストを挟みつつ、くるくるとまさに万華鏡のように変化していく音作りがされています。
 
 参加アーティストに、お馴染みのスティーヴ・クラドック(オーシャン・カラー・シーン)の他、リトル・バーリー、ロバート・ワイアット、グレアム・コクソン、元ストーン・ローゼスのアジズ・イブラハム、オアシスのノエルなど。長年ウェラーを支えてきたドラマーのスティーヴ・ホワイトは1曲のみの参加です。
 
 今日のこの1曲はイントロが一瞬だけビーチ・ボーイズ(注:一瞬です笑)→ストーンズ風リフへと変化する12曲目「Push It Along」という曲です。アルバムの中でも、ライヴ映えしそうなノリのいい曲なので、8月サマソニでも演奏してくれるだろうと思います。
 今回ピアノを沢山弾いているのが印象的なのですが、今のところピアノの弾き語りなどで聴かせる静かな曲が一番良いかなと個人的に思います。東尾沙紀

2008年7月9日(水) GALLOW 「unwise romance」

 “渋谷系”という音楽的括りも、今となってはかなり古い過去の言葉となってしまいましたが、このGALLOWのアルバムは、真に“渋谷系へのオマージュ”、“『カメラ・トーク』への21世紀からの返答”といえる作品ではないでしょうか。

 GALLOWというのは、日本の人気ロック・グループ、“ビートクルセイダーズ”の中心人物であるヒダカトオルが中心となって活動しているポップ・ユニット。2006年に発表した1stアルバム『PARKEST!』もなかなかいい作品でしたが、本日発売の2ndアルバム『Too Virgin!!』(CHRS-18 \2,500)は更にポップ感が増し、全体的に楽曲や演奏も格段にゴキゲンな雰囲気! これは名盤でしょう。

 モータウン名曲「ヒートウェイヴ」を彷彿とさせる心弾むリズムから、モロにフリッパーズ・ギターを意識したようなメロディーへとなだれ込む@「unwise romance」がいきなりNICE! これ以外の曲もキャッチー&ポップな魅力がタップリ♪

 キャプテン・ストライダムの永友さんがコーラスで参加しているほか、スクービー・ドゥやYOUR SONG IS GOODのメンバーなどゲストも多数。ややパンクよりのビークルとはまた違ったサウンドなので、ビークルをあまりご存知でない方にこそ聴いてもらいたい1枚です。ホント、フリッパーズ/渋谷系お好きだった方は要チェックですヨ! 森 陽馬

2008年7月10日(木) 大橋 卓弥(fromスキマスイッチ) 「Magic Girl」

 最近J-POPで個人的にすごく気に入ってよく聴いているのがこの1枚。スキマスイッチのヴォーカリスト、大橋卓弥のソロ・アルバム『Drunk Monkeys』(AUCK-18030 初回DVD付 \3,360)。

 タイトルの“Drunk Monkeys』というのは、このアルバム全曲のバックを務めているバンド名から取られていて、このバック・バンドがとにかく素晴らしい!
 スキマスイッチ2007年ツアーのサポート・メンバーから主に選出されていて、古田たかし(Ds)、斉藤有太(key)、山口寛雄(B)、新井健(G)という布陣。このソロ作のために集められたメンバーながら、大橋卓弥含め長年練り上げながら成長してきたグループのように、“バンド”しているのです。

 どの曲のメロディーもポップでオススメですが、特に気に入っているのはちょっぴり切ないスキマスイッチ特有のメロディー・ラインが印象的な3曲目「Magic Girl」。
 なんといってもギタリスト新井健のプレイが冴え渡っていて、「タイトゥン・アップ」を思い起こさせるようなソウルフルなカッティングから、後半1分半にもわたるギター・ソロへの流れがクールでかっこいいです。

 他にも後半の転調がマリーナ・ショウ「Street Walking Woman」を少し連想させる@「はじまりの歌」や、イーグルス的?なI「Spiral」など様々な名曲へのオマージュも感じ取れる名作ですね。森 陽馬

2008年7月11日(金) エルヴィス・プレスリー 「ハウンドドッグ」

先日、映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』を鑑賞。

 賛否両論あるようですが、いやー、僕はものすごく楽しめましたね。緊迫した場面でも爆笑してしまうようなファンタジー・ワールドに、楽しさを通り越して感動すら覚えました。こういう娯楽作に莫大な金額をつぎ込むスピルバーグ&ルーカス、改めて恐るべし!

 さて、この映画は1957年という設定なので、オールディーズが劇中でも時々かかるのですが、映画冒頭ではエルヴィスのこの名曲がガツンとかかります。

 実際、エルヴィスのこの曲がビルボード・チャート1位になったのは1956年なので、設定とは1年違いなのですが、まあ細かいことは置いといて、そういう時代背景だった、ということで。
 更なる続編は1964年の設定にしてもらって、今度はビーチ・ボーイズをガンガン流してほしいものです。森 陽馬

★掲載ジャケットは、エルヴィスの1956〜57年の映像を中心に構成されたDVD、エルヴィス・プレスリー『グレイト・パフォーマンス Vol.1』(VABZ-1313 \2,625)。初回限定価格ということで廉価で再発されました。

2008年7月12日(土) Van Morrison 「Moon Dance」

 昨日に続いて映画ネタですが、『奇跡のシンフォニー』という映画(リンク先音が出ます)も先日鑑賞。

 ツッコミどころ満載の奇跡的アンビリーバブルな展開、そして主人公の少年が初めてギターを見てさわったばかりなのに超絶テク→クラシック界に入ってもモーツァルト並の神童ぶり、というまさにファンタジーなストーリーなので、実写でありながらまるでディズニー映画を見ているような作品。
 でもこの映画の主題ともいえる“いい音楽”が主要部分でうまく使われていて、楽しく見ることができました。

 特にこの映画内で重要なキーワードとなっているのがヴァン・モリソンの名曲「ムーンダンス」。
 印象的な場面でアレンジを変えて何度か使われているので、これからご覧になられる方は是非「ムーンダンス」のメロディーを心の奥底に秘めながら、映画を見てみてください。

 ちなみに、ジョナサン・リース・マイヤーズ演じるミュージシャン役のバンドが演奏している劇中の曲などは、ビリー・ジョエルや最近ではシェルビィ・リンの新作を手掛けていることで有名なフィル・ラモーンがプロデュースを担当。
 更には、デヴィッド・クロスビーがサントラにヴォーカルで参加し、主人公のギター・スタイルについて、「マイケル・ヘッジス風の演奏スタイルでやってみたらどうか?」と助言するなど、聴き所の多い映画です。森 陽馬

★ジャケットはヴァン・モリソン1970年発表の名作アルバム『ムーン・ダンス』(WPCR-75420 \1,800)。最新デジタル・リマスターで再発されました。

2008年7月13日(日) ジム・ウィーダー 「パーコレイター」

 気持ちのいいロック・ギター・インスト・アルバムを見つけました!
といっても、最近発売されたものではなく、もう一年以上前の2007年3月にすでに出ていたものですが・・・。
 去年の3月といえば、ちょうど新店舗をオープンして、すったあ〜もんだの時期だったので、つい聴きそびれていたのです。(ジム・ウィーダー『パーコレイター』 YDCD-126 \2,625))

 さて、ジム・ウィーダーはウッドストック近くのキングストン出身ギタリスト。1980年代はリヴォン・ヘルムのRCOオールスターズに参加してその名を知られるようになり、1970年代はロビー・ロバートソンが抜けた後のザ・バンドのギタリストとして、アルバム及びライヴで活躍しています。

 愛用のテレキャスターから紡ぎ出される音はなんとも心地良い音色で、アップテンポもバラードも一音一音が粒立って聴こえてきます。
 思わず「カッコイイ!」と声をかけたくなるフレーズもたっぷり散りばめてあって、ヴォーカルがなくても全く問題なしです。

 ラスト10曲目のバラード「プレイヤー」にもクラッときましたが、アルバム・タイトルでもあり、弾きまくりタイプの2曲目を。森 勉

2008年7月14日(月) Earl Klugh 「Sleepyhead」

 東京はここ数日暑い日が続いています。真夏到来はまだ先かもしれませんが、東京の蒸し暑さはここ数年ちょっと異常な感じですね。単なる暑さではなく、各戸の室外機や様々な要因がヒーターの役割を果たして、より体感温度が上がっている印象です。

 そういうこともあって、最近の朝イチは清涼感あるサウンドが聴きたくなって、自然とこのCDをかけてしまっています。名ジャズ/フュージョン・ギタリスト、アール・クルーの新作『The Spice Of Life』(KOCH CD-4500)。

 今のところ国内盤が出る予定がないので、まだあまり知られていないのですが、これがなんとも心地良い1枚で、まさに“フュージョン・ギター・アルバム”のお手本のような作品。

 アール・クルー往年の名作『フィンガー・ペインティング』を彷彿とさせるような昔と変わらないギターの響きと飾らないバック演奏。オリジナル曲が中心ながら、そのオリジナル曲がどこかで聴いたことがあるような美しいフレーズ連発で、何時聴いても極上のBGMとして機能してくれます。

 カバーはスタンダード曲「My Foolish Heart」、セロニアス・モンク「Bye Ya」などをやっていますが、オリジナル曲A「Sleepyhead」の切なくもやさしいギターの音色がやはり一番彼の持ち味が出ていてNice! ちなみにSleepyheadは「寝坊」、「ねぼすけな子供」の意。森 陽馬

2008年7月15日(火) PUPA 「Tameiki」

 今年は色々な場所で様々な野外フェスティバルが開催されますが、気になっているのは高橋幸宏さんと信藤三雄さんが主催するイベント“WORLD HAPPINESS”

 8月10日に夢の島公園陸上競技場で開催。“ラヴでピースな大人のための野外フェス”と銘打たれていて、チケット購入者にはレジャーシート付き。(おそらく少人数で場所取りしないように、という配慮と思われます)
 出演アーティストは、HASYMO、鈴木慶一&曽我部恵一、東京スカパラ、ボニー・ピンク、シーナ&ロケッツ、そして、高橋幸宏さんの新ユニット、PUPAなどがラインナップされており、タイムテーブルがまだ発表になっていないものの、和やかなフェスになりそうな予感がありますね。

 さて、そのPUPAの1stアルバム『floating pupa』(TOCT-26573 \3,000)が先日発売。
 このPUPA(ピューパ)は、高橋幸宏を中心に、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の6人によるユニット。サウンド的にはここ最近の高橋幸宏さんのソロに、各々のメンバーが味付けをした音響・アンビエント・ポップ的な音作り。最初聴いたときは、ちょっと地味かな、という印象もありましたが、何度か繰り返し聴いているとじわーと味が出てくる作品ですね。

 各々のメンバーが楽曲制作をしているのですが、個人的には高野寛が単独で作詞・作曲を手掛けた5曲目「Tameiki」という曲が気に入りました。
 この曲もややエレクトロニカ的なサウンドではありますが、いかにも高野寛らしいちょっと切ない節回しの楽曲で、生のバンド・サウンドで聴いたらより良く響きそうな1曲。ちなみに高野寛はこのアルバム内、ギターだけでなく、エレクトリック・シタールなども弾いて大活躍しています。森 陽馬

2008年7月16日(水) ペドラーズ 「引潮」

 昨年7月29日にも取り上げました、60〜70年代にイギリスで活動していたオルガンを中心としたトリオ、ザ・ペドラーズ。
 
 以前CBS時代の音源を集めた2枚組編集盤が出ていたので、それをお持ちの方は曲がかぶってしまいますが、今回その絶頂期ともいえるCBS時代(67〜69年)のオリジナルアルバム3枚が国内盤紙ジャケ&最新リマスター&ボーナストラック収録で再発されました。
 
 今日の一曲は68年の3rdアルバム『スリー・イン・ア・セル』(AIRAC-1475 \2,730)に収録、ライチャス・ブラザーズなどで有名な「引潮<Ebb Tide>」のカバー。しっとりとした原曲を軽快な感じでカバーしています。オルガン&Vo.のロイ・フィリップスの男の色気たっぷりの声もこの曲の雰囲気にぴったりです。
 
 その他にミュージカルからの引用「晴れた日に永遠が見える」やコール.ポーターの曲を取り上げ、オルガン、ベース、ギター、ドラム、60年代らしいストリングスも交えアレンジ。この作品から徐々に増えるオリジナル曲も素晴らしいものばかり!
 
 当時大ヒットしていないため、今ではオリジナルLPが高値で取引される希少な存在となっていますが、今回の再発で気軽に聴けるようになったのは嬉しい事です。ジャズ・スタンダードを多く歌っている彼等ですが、モッズなどブリティッシュ系全般がお好きな方はきっとドンピシャだと思います。東尾沙紀

2008年7月17日(木) DOUBLE FAMOUS 「Me & Bobby Mcgee」

 野外フェス、といえばこのバンド、“ダブル・フェイマス”。そのライヴ・パフォーマンスには定評があって、とにかくライヴでのノリ、メンバーから伝わってくる気合がハンパではない。もちろん、技術的なセンスであるとか楽曲も素晴らしいが、観客を楽しませようとするサービス精神がズバ抜けていて、毎度圧倒されてしまうのです。

 青柳拓次、栗林慧、栗原務が中心となって活動しているそのダブル・フェイマスも今年で結成15周年。ソロ活動に専念していた畠山美由紀がバンドメンバーに復帰して、久々の新作『DOUBLE FAMOUS』(RZCD-45997 \2,900)を先日発表しました。

 “大人のためのオーガニックな多国籍ポップ・ミュージック”といった趣きで、畠山美由紀の歌声もソロ時にも増してより色っぽく、そして穏やかになった印象。ジャニス・ジョプリンで知られる今日のこの1曲「ミー・アンド・ボビー・マギー」のカヴァー(クリス・クリストファーソン作)も見事“ダブル・フェイマス”流に仕上げられています。

 ちなみに今年は、フジロック、北海道のライジング・サン、福岡のSUNSET LIVEなどの野外フェスに参加予定。フェス行かれる方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

2008年7月18日(金) UNDERCOVER EXPRESS 「Mad Pierrot」

 “ファンク・シーンに謎の覆面集団が出現!”、という売り文句がついている“アンダー・カヴァー・エクスプレス”というインスト・ファンク・バンド。本日発売のCD『ファンク・カヴァー大全』(PCD-93151 \2,415)を早速聴いてみて思わずニンマリ♪ やっぱり!日本ファンク・シーンではお馴染み!関西のあのグループによる変名バンド作品でした。

 その元祖のグループは元々、JBをルーツにしたオリジナル曲をコンセプトとして活動を続けているので、今回のこのカヴァー・アルバムは別名義としたのでしょう。アイザック・ヘイズやミーターズ、カーティス・メイフィールド、S・ワンダーからビートルズ、そしてアーチー・ベル&ザ・ドレルズの定番「タイトゥン・ナップ」まで、ツボを心得たかっこいいファンク・カヴァーを聴かせてくれます。

 その収録曲内で異色ながら、斬新かつクールだったのがこの曲「マッド・ピエロ」。オリジナルはYMO。1stアルバムに収録されている細野さん作のカヴァーで、これが見事、彼等らしいオーセンティックなファンク・アレンジで料理されています。

 ちなみに1週間後に迫ったフジロック、7/26(土)11時フィールド・オブ・ヘブンのステージに彼等が出演することになっています。盛り上がり必至!なのでフジロック行かれる方は是非見て来てくださいね。森 陽馬

2008年7月19日(土) ワルター・ワンダレイ 「サマー・サンバ」

 暑いですね。暑中御見舞申し上げます。

 やはりこう暑いとちょっと涼しくなれる音楽が聴きたくなります。そんな時にまず思い浮かぶのが、このワルター・ワンダレイ『サマーサンバ』なのです。

 1966年5月の録音。この当時のワルター・ワンダレイの弾くオルガンはなんとも独特の響きで、心地良い風を運んできてくれるようです。

 冷房のきいた店内から、ガラス越しに見える夏空を眺めながら聴くゆったりとしたボサノヴァ・オルガンの音色はなんとも格別で、夏もいいものだなぁと思ってしまいます。森 勉

2008年7月20日(日) ベリンダ・カーライル 「カリフォルニア」

 19日(土)、ベリンダ・カーライルのライヴ(at ビルボード・ライヴ東京)を見てきました。

 アコースティック・ギター二人、パーカッション、ピアノ、計4人のアコースティック・セット的なバックを従えて登場した彼女は、多少ふくよかになった感もありましたが、もうすぐ50歳には見えない女性としての魅力がまだあって、ショーの間ステージ上をダンスし笑顔をふりまいていたのが印象的でした。

 歌い方が昔よりも素直な発声になったものの高音などの伸びは変わらずセクシー。昨年発表した全曲フランス語で歌った作品も何曲か披露しましたが、やはり1980年代後半全盛期の曲を中心に歌ってくれました。

 当時学生だった僕は、父が作ってくれた“洋楽テープ”を毎日のように擦り切れるほど聴いていて、それに収録されていた「Heaven Is A Place On Earth」は本当に何度も繰り返し聴いたものです。1989年発表の名作『ランナウェイ・ホーシズ』からの楽曲「Leave A Light On」、「La Luna」、「Vision Of You」など大好きだった曲もやってくれて、アレンジは違えど彼女自身の歌声を生で聴けて、中学生に戻ったような気持ちになれました。

 ちなみに、意外?にも96年発表作「A Woman & A Man』から「カリフォルニア」という曲もやってくれました。
 オリジナルにはコーラスでブライアン・ウィルソンが参加している1曲。ベスト盤(VJCP-68195 \2,548)にも収録されているので、ビーチ・ボーイズ・ファンでご存知ない方は是非チェックしてみてください。

 余談ですが、来日情報はたまたまその日に情報誌で知り当日フラッと行ってみたのですが、多少空席が目立ちましたね。個人的にはとても楽しめたのですが、もっと多くの人に見てもらいたかったな、とも思いました。森 陽馬

2008年7月21日(月) コシミハル 「タイプライター」

 細野晴臣さんが主宰する新レーベル、“デイジー・ワールド”から第一弾リリースとして、コンピが2種発売になりました。
 1枚は、『細野晴臣アーカイヴス Vol.1』とタイトルが付けられたCDで、映画サントラなどに提供したインスト楽曲を中心に、新録ヴォーカル曲も収録したコンピもの。(COCP-35066 \2,940) 細野さんらしい独特な不思議かつモンドな音世界を楽しめます。

 そしてもう1枚が『デイジー・ホリデー』(COCP-35067 \2,520)というコンピCD。細野さんとゆかりのあるミュージシャンや、実際にラジオでかけた曲などが全22トラック収録。これがなんとも細野さんらしいユーモア感があふれた作品に仕上がっていて、思わずニンマリ♪の1枚なのです。

 細野さんご本人の絡んだ音源(現在廃盤になっているTIN PANの曲もあり)から青柳拓次、キセル、ハミングキッチン、高田漣、星野源など新しい世代のミュージシャンが新旧の楽曲を提供。更にデイジーならではの浮遊感漂うコントも挟んで、まさにラジオ“Daisy Holiday”(インターFM 毎週日曜深夜1時半〜2時)をそのままCDに詰め込んで聴いているような作品です。

 このCDの2曲目に収録されているのが、コシミハルさんによるルロイ・アンダーソンの迷曲(?)カヴァー。
 ルロイ・アンダーソンは以前2007年6月23日のこのコーナーで店長が取り上げたことがありましたが、ちょっと変わった音楽家で、この曲はまさにタイプライターの音を音楽とを融合させているのが面白い1曲。
 ちなみにこのコシミハルさんのヴァージョンは、元々は『パスピエ』という80年代に発表したアルバムに収録されていたナンバー。なお、コシミハルさん久々の新作も、このデイジー・ワールド・レーベルから8月6日に発売予定になっています。森 陽馬

2008年7月22日(火) 湯川 潮音 「恋は月をめざして (Voyage of the Moon)」

 “清々しい澄んだ歌声” 彼女のヴォーカルには本当に混じりものが無い、透き通った湧き水のような趣きがあります。

 元・子供バンド、遠藤賢司バンド、そして名ベーシストとして多くのセッションに参加している湯川トーベンの娘さん、湯川潮音の2年半ぶり2ndフル・アルバム『灰色とわたし』(TOCT-26518 \2,800)はロンドン録音。
 クマ原田氏によるアコースティックなアレンジ&プロデュースが絶妙で、彼女のその美声を見事に引き立てています。

 黒沢健一が作曲した「シェルブールの雨」、オオヤユウスケ作の「しずくのカーテン」、そしてその他の彼女自身の作品はどの曲も美しいのですが、その中で唯一のカヴァーがこのメリー・ホプキンの「Voyage Of The Moon」。
 金延幸子に例えられることが多い彼女のその歌声に合った雰囲気の楽曲です。

 ちなみにジャケットは彼女の自画像油絵。1983年生まれの25歳。アーティストとしてこれからの可能性を無限大に感じさせてくれる女性シンガーです。森 陽馬

2008年7月23日(水) デニス・ウィルソン 「アイ・ラヴ・ユー」

 今年の夏は、ビーチ・ボーイズ・ファンにとっては“散財の夏”として記憶に残るかもしれません。
 6月にオリジナル・アルバムが1,500円でど〜んと28枚も再発。解説・英文ブックレットの和訳、歌詞、そしてその対訳も付いての1,500円はお得な感じなので、僕もまた買ってしまいました。初めて日本でCDが出た時の盤と2イン1で出た輸入盤を持っていたのですが、それより音は確実に良くなっていますね。
 それからそのオリジナル・アルバムの紙ジャケもど〜んと出ました。ということで、店頭のビーチ・ボーイズ・コーナーがパンパンの状態になってしまっています。

 そして、遂に再発! デニス・ウィルソン『パシフィック・オーシャン・ブルー』。1977年に発表した唯一のソロ・アルバムがリマスター、ボーナス曲プラス、更に2ndアルバムとして録音されながら発売されなかった幻の作品『バンブー』の音源も収録した2枚組レガシー・エディションでの発売。ジャケットの作りなどデザイン性も優れていて、手にするだけでもうれしい盤となっています。

 さて今日のこの1曲は、未発表の中からディスク2の11曲目に入っている「アイ・ラヴ・ユー」。
 前半はデニスのしゃがれ声、後半は美しいコーラスで展開される約2分間の小品的ナンバー。途中で終わる感じの曲ですが、デニスの可能性を示してくれる楽曲といえます。

 この後もビーチ・ボーイズ関連の国内盤としては、8月20日にビーチ・ボーイズUSシングル・コレクション(7/23から延期になったもの)、9月10日にブライアン・ウィルソンの新作がリリースされる予定になっています。森 勉

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2008年7月24日(木) 原田 郁子 「ユニコーン」

 明日からフジロックですね。(厳密には前夜祭で今頃盛り上がっているのでしょうが) 残念ながら今年は不参加。清志郎のキャンセルは残念ですが、一般的に言われているほど出演アーティストは悪くはないと僕は思います。特に明日25日(金)は魅力的なラインナップですね。

 日本人では、くるり、原田郁子、エゴラッピン、スペシャル・アザーズ、羊毛とおはな、シャーベッツなど。海外アーティストでは、RODORIGO Y GABLIERAから始まり、トラヴィスやマイブラ復活も興味深いですが、ファンク系が充実していて、ブーツィ・コリンズ、ギャラクティク、ニューマスター・サウンズなど盛り上がり必至のアーティストが目白押し。ああー、楽しそうで羨ましい! 来年は頑張って参加を目指したいと思います。

 さて、その明日出演組で原田郁子さんの新作『ケモノと魔法』(COCP-34976 限定ブック付 \3,675)から1曲。

 東京、山梨、ニューヨークなど様々な場所で録音されたソロ2ndは、クラムボンのアルバムとはまた違って、彼女のやさしく、暖かく、美しく、でも内面に秘められた激しい思いが見事に“音”と“歌”に描かれた名作。極力シンプルなバックで、一聴するとかなり地味な仕上がりに感じるかもしれませんが、でもそのシンプルなバックの一音一音がちゃんと意志を持っていて、聴きかえす度に彼女のその歌声とピアノの奏に感動させられます。

 特に10曲目「ユニコーン」。友部正人が作詞を担当しているのですが、クラムボン初期の名曲「はなればなれ」のアンサー・ソングというか繋がりを感じさせる歌詞にはからずもなっていて、郁子さんの今にも泣きそうな歌声と相まって、心震わせる1曲に仕上がっています。これホント名曲ですね。

 ♪いつか君が年をとって またぼくに会いたくなったら♪ という歌いだしからして、ちょっとしんみりしてしまう楽曲ですが、おそらく彼女のこれからの長いキャリアにおいても、代表曲となりそうな予感の1曲です。森 陽

2008年7月25日(金) ワズ 「HOME」

 子どもの頃に10ccの曲を聴いてギターを手にしたという、74年生まれ、オハイオ州出身の男性シンガーソングライター、WAZ(ワズ)。(「The Sweet Bye And Bye」DQC-87 \2.400)
 
 現在メジャーで活躍し来日経験もあるカリフォルニア出身の正統派シンガーソングライター、ピート・ヨーンと彼は学生時代からの親友であり、ピートがデビューした後も何年かは彼のバックでギターを弾いていたそうですが、02年以降はソロとして活動を始め、先日ようやくインディーズからアルバムをリリースしました。
 
 ハーモニーがきれいで穏やかなメロディが60〜70年代の懐かしさを感じさせる冒頭の2曲に、ジェイホークスを連想させるものや、アルバムの中で最もポップな曲は、声と曲の雰囲気がベン・クウェラーに似ていたりと、地味なのですが、これが本当に良い曲が詰まったアルバムなのです。
 
 切ないメロディが印象的なのですが、決して暗いという感じでは無く、温もりのある作品です。アメリカ、トッド・ラングレンなどお好きな方にもおすすめです。東尾沙紀

2008年7月26日(土) CSN&Y 「Find The Cost Of Freedom」

 CSN&Y(クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング)の新作CD『デジャヴ・ライヴ』輸入盤(Reprise 512606-2)が入荷。
 今月から全米で公開されているニール・ヤング監督映画『デジャヴ』のサントラ盤で、2006年CSN&Y名義でのツアーライヴ音源+ニール・ヤングによる「Living With War」の新録インスト、という内容。

 ちょうどそのツアーが行なわれていた2006年は、ニール・ヤングが発売予定だった『ハート・オブ・ゴールド』映画サントラ盤を急遽発売中止にし、ブッシュ政権批判&戦争反対を痛烈に打ち出した作品『Living With War』を出したばかりの時期。その流れを汲んでのライヴ・ツアーも、“Freedom Of Speech Tour”と銘打たれ、CSN&Y名義ながら、ややニール・ヤング寄りの選曲・ショー内容であった、と言われてました。
(バックのメンツもニール・ヤングの盟友<リック・ローサス(B)、チャド・クロムウェル(Ds)、ベン・キース(g)など>で固められ、ロック色の強い演奏でした。)

 このサントラ盤も16トラック中半分がニール・ヤング作。ただ、その映画『デジャヴ』が反戦のテーマを投げかける内容ということもあり、必然的にそのコンセプトに合う歌ということでニール作が多くなったのでしょう。(実際は、ちゃんとコンサート中に各々のメンバーのソロ・コーナーなども設けられており、CSN&Yとしての代表曲もちゃんと披露されているのです)

 ニール・ヤング・ファンには慣れっこながら全体的に演奏やコーラスなどがややラフな出来で、CSNファンには物足りないかもしれませんが、これはこれで、彼等が過去の名声だけで生きているのではなく、“ROCK”への姿勢をいまだ失っていないことを証明しているライヴ盤、と言えるでしょう。

 ちなみに国内盤も9月にちゃんと発売されるそうです。輸入盤は英語の歌詞カードも付いていないので、是非国内盤では歌詞・対訳を付けてほしいところ。映画も是非遅くなってもいいので日本公開して欲しいですね。森 陽馬

2008年7月27日(日)バリー&ザ・タマレーンズ 「I Wonder What She's Doing Tonight」

 発売が1ヶ月ほど延びていたバリー&ザ・タマレーンズのCD(『恋の危険信号』+4 WPCR-75415 \1,800)がめでたく発売となりました。

 帯の<世界初CD化>の文字が誇らしげで、当時アルバム未収録でシングルのみのリリースだった4曲も収録されており、本当に価値のあるCD化と言えると思います。オールディーズ/ポップス好きの方は買っておいて損はないと思いますヨ。

 バリー&ザ・タマレーンズはバリー・デヴォーゾンを中心とした3人組コーラス・グループ。50'sホワイト・ドゥーワップを基調としながらも、その後に活躍するアソシエイション、ハプニングスにも繋がるようなコーラス・センスはとても貴重な存在なのです。

 1963年に全米21位まで上昇したこの曲をフィーチャーしたアルバムは、中古レコード店で見つけてもそれなりに高かったので本当にうれしい発売です。佐々木雄三さんによるくわしい解説も音を聴くのがより一層楽しくなるものです。

 なお、1968年にモンキーズとも関係の深いトミー・ボイス&ボビー・ハートがヒットさせた「アイ・ワンダー・ホワット・シーズ・ドゥーイング・トゥナイト」とは同名ですが違う曲です。森 勉

2008年7月28日(月) 遠藤 賢司 「黄金虫」(こがねむし)

 高校野球の甲子園出場校が決定したり、花火大会が各地で開催されはじめて、いかにも“日本の夏”という風情が感じられるようになってきましたね。「暑い夏は嫌い」という方が多いのですが僕は日本の夏が大好き。日本で生まれて良かったな、と一番感じられる季節です。

 季節感、という点では、童謡・唱歌も日本が誇れる美しく素晴らしいものだと思います。その馴染みある童謡・唱歌を旬な日本人アーティストがオリジナリティあふれるカヴァーで聴かせてくれるアルバムが、この『にほんのうた 第二集』(RZCM-45933 \3,150)。
 2007年10月に発売された『にほんのうた第一集』(RZCM-45660 \2,940)もコーネリアス、キリンジ、大貫妙子などによる歌・アレンジが斬新でとても楽しめましたが、今作も聴き応えある内容。

 アン・サリー&Hands Of Creationによる「たなばたさま」は期待以上に和みの1曲でNice!。高橋幸宏&権藤知彦によるpupa的「シャボン玉」、原田知世&鈴木慶一「あめふりくまのこ」、おおはた雄一「朧月夜」、畠山美由紀 with ASA-CHANG&ブルーハッツ「浜辺の歌」など、どの曲も美しい原曲に新たなスパイスが効いていて、単なるオムニバスや唱歌集とは違った風味を味わえる1枚に仕上がっています。

 その中で異質なのが、なんといっても遠藤賢司による「黄金虫」!
 いや〜、これは凄い! こがねむしがこんな激情エンケン・ロックになろうとは・・・。恐るべしエンケン! バックは湯川トーベン(B)、石塚俊明(Ds)というお馴染みの布陣。エンケン好きの方なら一聴の価値ありです。

 ちなみにこのCDは坂本龍一が主宰するレーベル、commonsからのリリース。音だけでなくジャケットやブックレットの装丁も凝っていて価値ある芸術的な作品です。森 陽馬

2008年7月29日(火) 元 ちとせ 「熱き心に」

 延期になっていた『歌鬼(Ga-Ki) 阿久悠トリビュート』が本日入荷。(UPCH-20095 初回盤に“阿久悠オリコン・データ・ブック”付 \3,000)

 鈴木雅之による「ジョニイの伝言」(塩谷哲編曲によりジャジーな仕上がり)、一青窈による「白い蝶のサンバ」(武部聡志編曲)ほか、森山直太朗、中西圭三、工藤静香feat押尾コータロー、甲斐よしひろ、山崎ハコ、杏里、音速ライン「恋のダイヤル6700」(コレかっこいいです)などが収録。

 その中で印象に残ったのはやはり、元ちとせによる大瀧詠一作「熱き心に」。彼女独特の声とコブシ回しが存分に効いていて、なかなかに“熱い”「熱き心に」です。

 編曲は羽毛田丈史(最近は中孝介や柴田淳のプロデューサーとして活躍)。ドラムに山木秀夫、ベースに美久月千晴。弦一徹ストリングスも入っています。そして、いいギターを弾いているのが石成正人。古内東子のバックでいい仕事をしていた隠れた名ギタリストです。

 ちなみに昨日7月28日は大滝詠一さんの誕生日でした。今年で60歳。遅ればせながらおめでとうございます。森 陽馬

2008年7月30日(水) ホルヘ・サンタナ 「Oh! Tengo Suerte」

 このアルバム(『ホルヘ・サンタナ』 BG-5047 \2,688)のレコードが出たのが1978年。30年前ですね。

 その頃は某レコード店の御茶ノ水店に勤めていて、店頭でこのレコードをよくかけた覚えがあります。フュージョン/AORテイストのものがよく売れていた時代だったので、お客さんの反応もよく隠れたベスト・セラーでした。

 目玉はなんといってもこの曲。高中正義、1976年発表1stソロ『セイシェルズ』の1曲目をナイス・カヴァーしています。

 ホルヘ・サンタナはカルロス・サンタナの4つ年下の弟で、1970年初めにはマロというラテン・ロック・バンドやっていました。
そんなこともあり、このヴァージョンは高中ヴァージョンを忠実にカヴァーはしていますが、後半パーカッション(ティンバレス)がフィーチャーされ、サンタナ直系の音を感じさせてくれます。

 どうしてこの曲をカヴァーしたのかはよくわかりませんが、日本用の選曲ではないようなので、何かで高中正義のLPを手に入れ気に入ったのではないでしょうか。この曲はインストですが、他の曲では軽快なヴォーカル曲も魅力です。

 そういえばこの曲、レコード時代は「セイシェルズ」と表記されていました。森 勉

2008年7月31日(木) Myron 「Beautiful Love」

 今年出たソウルの新譜では、アル・グリーンの新作(6月18日のこのコーナーでも取り上げました)がダントツに良くて、今でも店内でよくかけていますが、マイロンのこのアルバム『Myron & The Works』(PCD-93110 \2,415)も同じくらい素晴らしい作品で気に入っています。

 マイロンは、ダニー・ハサウェイ直系といわれる自作自演型ソウル・ミュージシャン。今年春注目されたライアン・ショウとはまた違って、現代R&Bのいい部分も取り入れたスムースかつクールなソウル・サウンドが魅力。歌声もあまりシャウトはせず、ソフトな歌い回しなので、夜静かな音で聴いていても楽しめる作品です。

 2004年発表の前作『Free』でも“新世代ソウル”の質の高さを感じさせてくれましたが、今作は演奏面でも格段にアップ! なんといってもバックがミシェル・ンデゲオチェロ(b)、チャールズ・ヘインズ(ds)、ロバート・グラスパー(Key)、という布陣。打ち込みに頼らず、グルーヴ感あふれるセッションで録音されたオーガニックな演奏が味わい深くて、70'sニューソウルの香りをも感じさせます。

 ディアンジェロや生音重視のR&B好きの方、オーガニック・ソウル好きの方にも是非聴いてもらいたい傑作です。森 陽馬




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