PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月8月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年8月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年8月1日(金)YOUR SONG IS GOOD 「THE KIDS ARE ALRIGHT」

 来週にはサマー・ソニックが控えていて、個人的な話ですが、久々の夏フェスなのでとてもウキウキしています。
 
 今年も色んな夏フェスに出演する日本の6人組バンド、YOUR SONG IS GOOD。
 先日リリースされた『THE ACTION』(UPCH-20097 \2,800)はタイトルのイメージ通り、パンクもニューウェイヴもスカもカリプソもごちゃまぜのスピード感溢れるロック・アルバムです。
 
 1曲目が「THE KIDS ARE ALRIGHT」というタイトルで、決してザ・フーに似ている訳ではありませんが、冒頭のギターリフがザ・ジャムの曲に凄く似ていたり、更に曲全体もオルガンが入ったアークティック・モンキーズぽかったりと、偶然だとしてもそこら辺が好きな方なら必ずや反応してしまいそうな曲です。
 
 彼等は今年サマソニには出演しませんが、野外の暑い太陽の下で踊って盛り上がれそうな曲ばかり。久々にこういう元気なロックを聴くのも楽しいですね。東尾沙紀

2008年8月2日(土)Graham Nash & David Crosby 「Southbound Train」

 もうすでにご存知の方も多いと思いますが、キャロル・キングの単独来が11月に決まりましたね。(リンク先はキョードー東京のHP)
 昨年末、キャロル・キングがファーギー&メアリー・J・ブライジと一緒に来日した際「単独ではないから・・・」といって見送った方々、これは見ておいた方がいいですよ〜。チケット代金は高いのですが、キャロルの生のピアノと暖かい歌声には必ずや癒されるハズ。
 昨年の来日では時間の関係もあって曲数が限られてましたが、今回は単独なのでオールディーズ・メドレー(ソングライター時代のセルフカヴァーメドレー)もやるでしょうね。選曲も興味津々です。

 さて、話は変わりますが、個人的に最近良く聴いているのがこの1枚。CSN&Yの二人、グラハム・ナッシュ(元ホリーズ)とデヴィッド・クロスビー(元バーズ)による1972年発表アルバム。(Atlantic 799253 輸入盤で最近再発されました)

 一般的にはCSN&Y『デジャヴ』やCSN作品の裏に隠れてしまいがちの作品ですが、地味ながらもこれがいいアルバムなのです。特に1曲目「サウスバウンド・トレイン」! これはホント名曲!

 グラハム・ナッシュ作の中でも特に人気のある1曲で、ナッシュらしいやさしいメロディー・ラインながら政治的なメッセージも歌詞に込められ、彼のソングライティングの素晴らしさが見事に表われているナンバーです。
 また、ナッシュのヴォーカルにかぶさるクロスビーのコーラスが特にイイですね。CSN&Yはニールやスティルスばかりがクローズアップされてしまうのですが、ナッシュとクロスビーのコーラスこそが生命線だと思うのです。

 ちなみにこのアルバムは、セクション(ダニー・コーチマー、リー・スクラー、ラス・カンケル、クレイグ・ダーギー)の面々が参加していますが、この曲は違うバックメンツで、ジェリー・ガルシアがスティール・ギターを担当。ブックレット内のクレジットに、“To Miss MITCHELL”と表記があり、ナッシュ(交際は1969〜70年頃?)とクロスビー(1968年頃?)、お互いの元彼女であるジョニ・ミッチェルへ捧げられています。森 陽馬

2008年8月3日(日)The String Quartet Tribute To Neil Young 「Southern Man」

 何年も前から出る、と噂されながら、結局まだ発売されていないニール・ヤングの未発表音源・映像をまとめた『アーカイヴBOX』。でも【今年こそはブルーレイ10枚組(!?)で遂に発売】、というニュースが春ごろに入ってきて、先日は【ブルーレイだけでなくCD+DVDの仕様でも発売する】、という情報も流れました。
 しかしながら正式な発表はいまだ無。ニールは今夏もヨーロッパ・ツアーが入っているので本当に今年中に出るかはやや疑問・・・。まあ高額になりそうなので、お金を貯めてこういうCDを聴きながら、気長に待ちたいと思います。

 このCDは、ニール・ヤングの楽曲をヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの弦楽器によるストリングス・アレンジでインスト・カヴァーしたアルバム。(『RUSTED MOON:The String Quartet Tribute To Neil Young』 VITAMIN 8661)。 いや〜、これが意外ながらなかなかイイのです!

 「Rockin' In The Free World」や「Southern Man」、「Ohio」、「Down By The River」など原曲は激しいギターが持ち味の楽曲がストリングス・アレンジになるとあら不思議♪ なんとも美しい交響曲のような趣き。特に「Heart Of Gold」、「Southern Man」などは知らない人が聴いたらオリジナルのクラシックの古典作品、と思ってしまうのでは?と感じられるほど見事なアレンジ。(ちょっと褒めすぎ?) 
 ニール・ヤングはその特徴ある歌声やギターばかり注目されてしまいますが、メロディーメイカーとしての才能も改めて実感させてくれる1枚です。
 ちなみにDoug Munro & Joe Ferryという人がプロデュースを担当。ラストには「N.Y.T」というオリジナル曲も収録されています。森 陽馬

2008年8月4日(月) CSN&Y (Stephen Stills) 「For What It's Worth」

 ナッシュ&クロスビー、そしてニールの話題が出たので、スティーヴン・スティルスの曲もせっかくですから取り上げましょう。

 先日7/26にもこのコーナーで紹介したCSN&Y『Deja Vu LIVE』。これに、スティルスがリッチー・フューレイと共作したバッファロー・スプリングフィールド時代の名曲「For What It's Worth」も収録されています。
 しかしながらここで聴けるスティルスの歌は、ほとんど声が出ていない状態・・・。聴いていて悲しくなるほどなのです。

 このツアーの後、スティルスに前立腺ガンが見つかったことなどから、明らかに体調は悪かったのでしょう。ただ、このヘロヘロなヴァージョンを何故にCDに収録したのか? もちろん、カットすることも簡単だったとは思うのですが、4人のメンバーの作品バランスからやはりスティルス作をもう1曲収録すべき、ということになったのだと思います。(この曲以外で収録されているスティルス作は「Find The Cost Of Freedom」のみ)

 幸いスティルスは前立腺ガンを克服したようで、昨年はCSN名義でツアーし再び元気な姿を見せてくれています。(昨年末、CSNが来日する、という噂もあったのですが流れてしまいましたね。以前来日した時のように3人のみでなく、バンドを引き連れてのツアーだったので楽しみにしていたのですが・・・残念!) 森 陽馬

★ちなみにニール・ヤング新聞の新しい号を作成しました。

2008年8月5日(火) ポール・マッカートニー&ウィングス 「ロケストラのテーマ」

 先日、NHK・BSで1979年12月ロンドンで行なわれた『ガンボジア難民救済コンサート』が放送されていました。

 エルヴィス・コステロ、イアン・デューリー、フー、スペシャルズ、ロックパイル(デイヴ・エドモンズとニック・ロウが並んでの演奏良かった! そこになんとロバート・プラントが加わるというシーンもありました)、そして、ポール・マッカートニー&ウィングスが出演。

 その映像の若いポールにすっかり魅了されてしまったので、今日はソロになってからのポールの足跡が辿れる2枚組ベスト『ウィングスパン(夢の翼)』(TOCP-65746 \3,500)を店頭でかけてしまいました。

 「アナザー・デイ」、「マイ・ラヴ」、「バンド・オン・ザ・ラン」、「ジェット」、「エヴリナイト」、「シリー・ラヴ・ソングス」、「ウィズ・ア・リトル・ラック」、「ジャンク」、「バック・シート・オブ・マイ・カー」、「ブルーバード」などなど挙げていくときりがありませんね。本当にいい曲が多いです。

 近年はポールがビートルズの中で悪者扱いされることが多いようでちょっと残念ですが、生き様をさらし続けて、新しい作品を出し、ライヴを続けるポールはやはり凄い人です。

 さて、今日のこの1曲は、先に挙げた名曲を押しのけてインスト曲。ピート・タウンゼント、デイヴ・ギルモア、ハンク・マーヴィンらのギターがなんとも気持ちよく響いてきます。
 そういえばこの曲、1980年代佐野元春のラジオDJ番組のテーマ曲にも使われていましたね。森 勉

2008年8月6日(水) 斉藤 和義 「僕の見たビートルズはTVの中」

 デビュー15周年盤ということで、斉藤和義のベスト盤が発売。(『歌うたい15』 VICL-63015 3CD \3,330)

 3枚組CDで全41曲(初回盤はボーナス曲3曲追加)、3,330円はちょっと安すぎるのでは?と思えるほど、CD店泣かせの奉仕価格。ミスチルの桜井くんがBank Band名義でカヴァーしたこともある「歌うたいのバラッド」、名曲「歩いて帰ろう」、CMで使われたことで人気の「ウェディング・ソング」ほか、いい曲ばかりなので、斉藤和義をあまり聴いたことがない方にもオススメです。

 その彼の93年発表デビュー曲がこれ。「僕の見たビートルズはTVの中」。
 アコースティック・ギターの出だし&ハーモニカのイントロは、タイトルの“ビートルズ”とはまた違って、ボブ・ディランの影響も感じさせますが、日本語の節回しなどからすると吉田拓郎的な部分もありますね。15年前の曲なのに今聴いても古く感じないのは、いいメロディー&実直な詞世界だからなのかもしれません。

 横文字の歌詞や曲名が多くなってきた邦楽界で、日本語にこだわり、そのわかりやすい日本語の歌詞を大切にしてきた彼の存在はもっと評価されるべきでしょう。これからも末永くマイペースで活動していって欲しい“音楽人”です。森 陽馬

2008年8月7日(木) HASYMO 「Tokyo Town Pages」

 今日東京では神宮外苑で花火大会がありました。僕は店にいたので見に行けませんでしたが、ご覧になられた方、いかがでしたでしょうか?
 学生の時はよく友人と外苑前付近まで行って見ていたのですが、毎度人の多さにゲンナリしてしまうので最近はご無沙汰。周りにたくさんの人がいて、わさわさしている中で見る花火、というのもなかなか楽しくていいんですけれどね。

 “東京”という街は、花火のような華やかな“光”の部分が目立って表に出ている反面、実は“陰”の部分が色濃い街でもあるような気がしています。実際、人と人の結びつきが実は非常に貧弱で、内なる孤独を抱えている人が他県より多い街だと思います。

 8月16日から公開予定の『TOKYO!』という映画は、海外の新進名監督&クリエイターの3監督(ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ)が、その“東京”という不思議な街をテーマに描いた作品で、まだ見ていないものの、鋭い感覚を持った彼等ならば東京の“光”と“陰”を絶妙に描いてくれている、と期待しています。

 その映画の主題歌として起用されているのが、YMOの3人(細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一)によるHASYMOの新曲「Tokyo Town Pages」。
 坂本さんのピアノ、幸宏さんのドラム、細野さんのベース、そしてエレクトロニカを少しまぶしたチルアウト的なインストで、これが見事に、“東京”の華やかさの中に潜む“陰”を美しく描いているのです。

 都会的な香りを秘めながら、夜中に聴いていると東京の闇夜に吸い込まれてしまいそうな素晴らしい音響サウンド。奇をてらった音響や勢いにまかせたインスト・バンドが乱立してきた現世に、東京のHASYMOからの大人のメッセージ、といえる1曲。4曲目のアンビエント・ヴァージョンはまさに“東京の静寂”。明け方にエンドレスで聴いていたいトラックです。森 陽馬

2008年8月8日(金) The Jam 「Eton Rifles」

 明日から開催のサマーソニック08。そのお目当てであるポール・ウェラーが、サマソニの前に渋谷AXで一日だけ単独公演をするというので昨日見に行ってきました。
 
 前座として決まっていたザ・トルバドールズ(ツアーでも大抜擢された新人バンド)が直前でキャンセルとなり、完全にウェラー達だけのライヴとなりました。
 
 新作『22 Dreams』からは核となる8曲、他は殆どが前作『アズ・イズ・ナウ』、『スタンリー・ロード』からのナンバーでした。UKのツアーなどには組まれていなかったジャムの「Carnation」やスタカンのデビュー曲「Speak Like A Child」(これは珍しい!)をアレンジを変えて披露し、更にアンコール前にはまたまたジャムの「Eton Rifles」。この曲を最近のライブで演奏しているのは知っていましたが、ジャーンと始まっただけでもう完っ全にやられました。
 
 昔の曲だけが良かった訳ではなくて、新作の曲も、アルバムの凝ったアレンジで聴くよりもバンドでガツンとやる方が、全然かっこいいなと思うものばかりでした。
 バックのメンバーも若干変わり、フェスの前のリハ的な意味合いもあったのかもしれませんが、手を抜かず全力でやってくれた約1時間40分。ご機嫌なウェラーが見れて非常に楽しいライヴでした。東尾沙紀
 
★ジャケ写真は「Eton Rifles」収録のジャムの4作目『セッティング・サンズ』(UICY-93574 \2.800)。限定紙ジャケ&SHM-CDで再発されました。

2008年8月9日(土) ブラザーズ・フォー 「北京の55日」

 2008年8月8日、北京オリンピックが始まりましたね。
 政治的なことも含めて以前からたくさんの話題を提供してくれたイヴェントです。平和のためのスポーツ祭典なのですから、平和に終わってくれることを願うばかりです。
 ということで、オリンピックとは全く関係なく“北京繋がり”で「北京55日」という曲を。

 1963年公開のアメリカ映画の主題歌です。中国・清の時代1900年、北京での西大后を巻き込んでの義和団事件を描いた戦争歴史スペクタクル映画で、監督は『理由なき反抗』のニコラス・レイ。
 出演はチャールトン・ヘストン、デヴィッド・ニーブン、エヴァ・ガードナー、伊丹十三など。主題歌の作曲及び音楽はディミトリ・ティオムキン。『スミス都へ行く』、「疑惑の影』、『OK牧場の決斗』、『リオ・ブラボー』、『アラモ』など、1930年代から1960年代まで数多くの名作映画を担当した映画音楽の巨匠です。

 イントロの♪ボンボンボンボンボンボン・・・・♪というコーラスが印象的なこの曲は、1963〜64年にかけてラジオでよくかかっていました。テレビの『ザ・ヒット・パレード』などではダークダックスかデューク・エイセスかボニー・ジャックスかが日本語で歌っていたような気がします。

 このCDは1950年代・1960年代のCBS系レーベルのヒットを50曲収録の2枚組(SICP-1846 \2,940)。このブラザーズ・フォー「北京の55日」以外にも、ヴィレッジ・ストンパーズ「ワシントン広場の夜は更けて」、シェリー・シスターズ「セーラー・ボーイ」、アトランティックス「ボンボラ」、ビリー・ジョー・ロイヤル「ダウン・イン・ザ・ブーンドックス」、レインボウズ「バラ・バラ」など当時のヒットパレード番組を知る人にとってはなんとも興味深いものです。森 勉

2008年8月10日(日) shiba in car 「クラクション」

 約2ヶ月前に青山のライヴハウスで、いなかやろう(これがバンド名。すごくイイバンドです)が企画したイベントがあり見に行ったのですが、その時に出ていたのが京都在住の二人ユニット、“shiba in car”(シバ・イン・カー)。

 ロック・バンドが続いたイベント中、女性ヴォーカル&ピアノ+ギター、というシンプルな編成で登場し、独特な浮遊感ある演奏と歌声を披露してくれたのがとても印象に残りました。その“shiba in car”初のアルバム『PASSPORT』(4FMR-1 \2,100)が先日発売。

 港麻里(Vo、G、P)、神宇知正博(G)の二人が紡ぎ出すサウンドは、単なる弾き語りやフォーク・ユニットのそれとはまた違って、不思議な音の隙間があり幻想的な世界観を感じさせます。
 あとこのユニットの魅力はなんといっても、彼女のその脆い歌声にあるでしょう。透き通ったきれいな声色ながら、ともすれば拙く聴こえてしまいそうな歌が幻想的に響いてきて、何故か心のフックにひっかかってくるのです。

 特に1曲目に収録されている「クラクション」。楽曲がポップであるわけではなく、演奏や歌がとびきり秀でているわけでもないのに、何度もリピートして聴きたくなる1曲。6分半近くある長い曲で、後半の幻想的な展開は遠い過去の夢へいざなうかのような脆い美しさに満ちています。

 どことなく、ニール・ヤング「Will To Love」(77年発表『アメリカン・スターズン・バーズ』に収録)の雰囲気に似ている感じがするのは僕だけでしょうか。女性ヴォーカルの港さんとこの作品を手掛けたエンジニアの方がニール・ヤングが好きだったそうなので、あながち間違いではないかもしれません。森 陽馬

2008年8月11日(月) Hands Of Creation 「Give Me Your Music」

 小池龍平(Vo.G)、高田漣(G)、岳史とBIC二人のパーカッショニストによる4人グループだったハンズ・オブ・クリエイション。
 彼等が2006年狭山ハイドパーク・フェスに出演した時見たことがあり、1stアルバムもとても気に入っている作品ですが、現在は小池龍平とBICの二人ユニット編成にチェンジ。先日6日2ndアルバム『Give Me Your Music』(HRAD-32 \2,625)が発売になりました。

 元々この作品は2007年年末のツアー会場で限定発売されていたアルバムだったそうなのですが、タイミング的にはこの夏聴くのにピッタリですね。芝生の上で寝っころがりながら聴くと気持ち良さそうな1枚。心和〜むオーガニックな“グッド・タイム・ミュージック”です。

 ちなみにこのコーナーで7月28日に紹介した『にほんのうた 第二集』(RZCM-45933 \3,150)にも参加しており、アン・サリーとの共演で「たなばたさま」をやっています。アン・サリーの美声を引き立たせるシンプルながらも味のある演奏で、これもオススメの1曲です。森 陽馬

2008年8月12日(火) MUDCRUTCH 「Lover Of The Bayou」

 トム・ペティがハートブレイカーズ結成前1970年代初期に活動していたバンド、“マッドクラッチ”。当時はこのバンド名義では作品を残さずに解散してしまったそうですが、この度再結成して初となるアルバムを発表しました。(WPCR-12975 \2,580)

 いやー、これが素晴らしくイイ! ここ最近のトム・ペティの作品も味わい深くて滋味溢れる内容だったけれど、「スタジオにバンドが集まってバシッと一発で録りました」的な雰囲気(実際スタジオ・ライヴ的な録音方法でレコーディングされたそう)が伝わってきて、武骨なアメリカン・ロックがズシズシと沁み込む1枚です。

 特に11曲目、ザ・バーズ1970年作『タイトルのないアルバム』の1曲目に収録されている曲のカヴァー「Lover Of The Bayou」。
 トム・ペティ長年の盟友、マイク・キャンベルがクラレンス・ホワイトと同じテレキャスターをわざわざ使ってギター・ソロをとっており、アメリカン・ルーツ・ロック・ファンには必聴のシビれる1曲です。

 ちなみにこのアルバムではトム・ペティは全編ベースを担当。マイク・キャンベルとトム・リードンという人がギターを弾いているのですが、このトム・リードンという人。イーグルスのバーニー・リードンの実弟で、なんと、「恋のバンシャガラン」で知られるウエスト・コーストの隠れた名グループ“シルヴァー”でベースを弾いていた人だそうです。
 イーグルス→シルヴァー→トム・ペティ、不思議な感じもしますが、アメリカン・ルーツ・ロックの奥深い繋がりが感じられて面白いですね。森 陽馬

★蛇足ですが、CDのレーベル面もリプリーズ・レーベル好きの方ならニヤリのデザイン。国内盤には歌詞カード&大友博さんによるトム・ペティの歴史もわかるライナーノーツも付いているので国内盤をオススメします。

2008年8月13日(水) 佐橋佳幸 「僕とロージーとみんな」

 数々のセッションに参加してその楽曲を時にはさりげなく、時には大胆に、素晴らしい味付けをしているギタリスト、佐橋佳幸のソロ・アルバム『トラスト・ミー』が最新リマスター、未発表曲2曲追加、及びCDエクストラ(パソコンで見れる動画。ジョン・ホールとのスタジオでの模様)も付いて再発されました。(WPCL-10498 \2,500)

 最初に出たのが1994年ですから、もう14年も前になるんですね。佐橋佳幸33歳の時の作品ということになります。
 このアルバムは彼の音楽ルーツを辿るような音が満載で、70年代ウエスト・コースト・ロック・ファンには堪らない音になっています。

 今日の1曲「僕とロージーとみんな」は、ラス・カンケル、リー・スクラー、クレイグ・ダージ(ドーギーと昔は表記されていました)が参加してのサンフランシスコ録音。日本でホーンとコーラス(村田和人参加)をダビングしています。
 佐橋の歌とうまく溶け合っているリー・スクラーのベースがいい感じでスウィングしているし、クレイグのハモンド・オルガンもいい音を出しています。そして、短いながらも引き締まったギター・ソロが最高。

 レコーディング秘話がたっぷりの山下達郎と佐橋佳幸の最新対談10ページ分のブックレット付です。森 勉

2008年8月14日(木) Talc 「The Out Of Work Clown」

 ロックの新譜で最近よく店内でかけているのが、タルクの新作アルバム『Licensed Premises Lifestyle』(DDCK-1010 \2,415)。

 英国出身の二人ユニットで、1stアルバムは昨年5月6日のこのコーナーでも紹介したのですが、この度2ndアルバムが発売になりました。

 前作に引き続き今作も“スティーリー・ダン”的なメロディー・センスが光る作品に仕上がっており、ここ最近の本家スティーリー・ダン、ドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー(ラリー・クラインプロデュースでこの前新作も発表しました)以上に、70〜80年代のスティーリー・ダン的な雰囲気を感じさせてくれる1枚。
 単なる模倣に終わらず、オリジナリティある現代的なポップ感覚&グルーヴ感があって、個人的にはとても楽しんで聴いています。

 特に3曲目「The Out Of Work Clown」は、あれ?これってスティーリーダンの曲?、と思わず考えてしまいそうなほど、楽曲の展開や演奏がスティーリー・ダンにソックリ! 歌い方もドナルド・フェイゲンを意識している感じです。

 ちなみにアルバム全体としては、“PUB/バーでの様々な出会いや出来事”がコンセプトになっており、各曲の歌詞もバーでの会話やハプニングが軸となって描かれています。森 陽馬

2008年8月15日(金) Terence Boylan 「Don't Hang Up Those Dancing Shoes」

 ジェイムス・テイラーが待望の新作を発表する、という情報が入ってきました。タイトルは『Covers』。自らのルーツとなるようなナンバーをカヴァーしているようで、昨年末発表したライヴ盤と同じヒア・ミュージック(スターバックス&コンコードによる新レーベル)からの発売。国内盤も10月にユニバーサル配給で発売になるようですので、とても楽しみ。

 そして、ジャクソン・ブラウンの新作も9月24日に発売が決定したようです。ここ最近はソロ・アコースティック・ライヴ盤が続きましたが、久々約6年ぶりの新作オリジナル・アルバム。こちらも楽しみですね。(11月には来日も決定したそうです。)

 さて、ジャクソン・ブラウンではないのですが、彼にソックリの歌声で個人的にも好きなアルバムが、このテレンス・ボイランの77年発表アルバム『Terence Boylan』(Wounded Bird WOU-1091)。

 1977年というと、シンガーソングライター・ブームもやや陰り気味で、AOR的な音が流行し出す頃でしょうか。アサイラム・レーベルからの発売ですが、ちょうどその過渡期を感じさせる音作り。ジャクソン似の歌声も切なく響く隠れた名作です。
 ゲストも豪華で、ドン・ヘンリー、ドナルド・フェイゲン、ティモシー・シュミット、アル・クーパー、スティーヴ・ルカサーなども参加しています。森 陽

2008年8月16日(土) Paolo Nutini 「Jenny Don't Be Hasty」

 パオロ・ヌティーニのこの1stアルバム(『these streets』 WPCR-12573 \1.980)が出たのが昨年の3月。
デビュー曲の「ラスト・リクエスト」のビデオを初めて見たのもその頃で、アイドル的なルックス+甘いラヴ・ソングというイメージが先行して、その後はあまり気に留める事もありませんでした。
 
 そんなイメージを取っ払ったのが、先日のサマーソニックでのステージでした。
 見る予定ではなかったため途中からだったのですが、着くなり「Mellow Down Easy」なんて渋いブルースのカバーが聴こえてきて、足を怪我したのか椅子に座りながらのパフォーマンスでしたが、そんな本調子とはいえない状態で時に松葉杖をつきながら歌い踊る彼に、終始圧倒されてしまいました。

 彼のソウルフルな歌声もさることながら、バックの演奏も素晴らしくて、バンド編成にトランペット&サックスと、ブルースハープが入るアレンジも意外とアメリカ的な感じでとてもかっこよかったです。他にもシェールの「Bang Bang」のカバーやカントリーブルース調の新曲を交えながら、この曲で盛り上がって終了しました。
 
 ライブを観た後にアルバムを聴くと、ゆったりした曲が多くて、アレンジもシンプルなので多少物足りなさを感じてしまうのですが、ここで聴ける20歳前とは思えない落ち着いた歌声も魅力的だなと思います。(歌詞はまだまだ若い感じですが)
 
 18歳でアトランティックと契約、現在21歳の彼はこれまでストーンズや、彼憧れのベン・E・キング等大物との共演もある実力派! 次作はライブの雰囲気をそのまま詰め込んだようなファンキーなアルバムになればいいなと思います。これからに期待です。東尾沙紀

2008年8月17日(日) ジューサ 『俳句』

 時差がほとんどないから仕事中は見れないし、今回はそんなに興味ないな・・・、なーんて、始まる前までは思っていた北京オリンピック。なんだかんだ言って、仕事後部屋に帰ると結局テレビをつけて見てしまいますねー。
 男子100mなどを見ると身体能力の違いを感じてしまいますが、その点ではアジア勢は総じて大健闘といえるのではないでしょうか。高校野球にしてもそうですが、人が一所懸命がんばっている姿を見るというのは気持ちいいものです。

 さて、今日紹介するジューサ(Yusa)はキューバ出身の女性シンガー・ソングライター。2002年発表1st『YUSA』は素晴らしい作品で、今でも時々聴くくらいフェイバリットなアルバムですが、その彼女の久々となる3rdアルバム『俳句』が発売。(OMCX-1193 \2,625)

 <俳句のように簡潔でありながら、奥深く、味わい深い音楽である>ということと日本文化へのオマージュも込めて付けられた『俳句』というタイトル通り、シンプルな音作りながら滋味溢れる彼女の歌声が本当に沁みる作品に仕上がっています。
 マリーザ・モンチなどを手掛けているブラジルの新進プロデューサー、アレ・シケイラがプロデュースを担当している、ということもありますが、ジューサの魂宿った歌声が見事に生かされています。

 本日東京は秋を感じさせるような涼しさで、夕方以降は雨も降りましたが、やさしくそよぐ風が心地良い1日でした。ワールド・ミュージックにはあまり馴染みのない方にも秋のBGMとしてオススメの1枚です。森 陽馬

2008年8月18日(月) The Jesters 「The Wind」

 毎月20日に地下のアゲインでやっている僕の好きな曲をかけまくるディスク・ジョッキー・イヴェント『気まぐれ音楽寄席』。今月もやります!
 第17回になる8月20日(水)はドゥワップ・コーラスを特集します。
 “暑い真夏の夜、みんなで涼し気なドゥワップを聴く” − いいですね〜。お待ちしております。

 ドゥワップとは? 一口で説明するのは難しいのですが、1950年代中期〜1960年代前半にたくさん出現した黒人R&Bヴォーカル・グループのムーヴメントを総称して使われる音楽用語です。
 リード・ヴォーカルがいて、バック・コーラスが♪ドゥーワー♪とコーラスする“ドゥワップ”、この語感からきたのでしょうね。

 さて、そのドゥワップの中で最も好きな曲のひとつがこの曲。

♪風が吹く・・・ 彼女はいなくなってしまった
 でも僕の愛は消えない  涼しい夏の夜のあの風を想い出す
 暖かくて優しい彼女は僕の腕の中にいたのに・・・♪
という去っていってしまった恋人を想う歌です。

 ニューヨーク、ハーレム出身の4人組、ジェスターズが1960年に発表した曲で、大ヒットではありませんがいい曲です。
 この曲にはいいカヴァーもありますし、実はジェスターズでもカヴァーで、本当のオリジナルもあるのですが、それは8月20日のイヴェントでくわしく・・・。森 勉

掲載ジャケットは『The Paragons meets The Jesters』(Collectables 5034)。

2008年8月19日(火) Steve Cropper & Felix Cavaliere 「Without You」

 ラスカルズのフェリックス・キャヴァリエ、久々の新作が発売になりました。(Steve Cropper & Felix Cavaliere 『Nudge It Up A Notch』 UCCO-2013 \2,500)

 それもブルース・ブラザーズ・バンドやブッカーT&MG's、最近では忌野清志郎のアルバム・プロデュースなどを手掛けている名ギタリスト、スティーヴ・クロッパーとの共作で、更にソウルの大御所レーベル“STAX”からのリリース! キャヴァリエの前作というと、14年前(1994年)の『ドリーム・イン・モーション』。その前は更に15年前(1979年)ということで、本当に久々!うれしいリリースですね。

 キャヴァリエのソウルフルな歌声は健在で、2曲目「If It Wasn't For Loving You」は楽曲の雰囲気が、“21世紀の「グルーヴィン」”といった感じで思わずニンマリ。
 個人的にはミディアム・ソウル・バラード的な3曲目「Without You」に痺れました。派手さはありませんが、味わい深いキャヴァリエの歌声とクロッパーのギターが絶妙な、“大人のブルー・アイド・ソウル”ナンバーです。

 中盤に意外にもヒップホップを入れた楽曲があったり、ややチープな音感のキーボードを使った曲があるなど、もうちょっとこうしていれば、と思ってしまう部分もあるのですが、それは期待値が大きすぎた故の贅沢というものでしょうか。
 12曲全曲、スティーヴ・クロッパー、フェリックス・キャヴァリエ、プロデューサーとして関わっているジョン・ティヴィン、3人による合作。とにかくも、キャヴァリエのソウルフルな哀愁ある歌声をまた聴けただけで大満足! 是非来日もしてもらいたいですね。森 陽馬

2008年8月20日(水) The Beatles 「A Day In The Life」

 以前にもこのコーナーで話題にしていたニール・ヤング『アーカイヴBOX』。まだ確定ではないものの、どうやら11月3日に海外発売が決定(?)したようです。(リンク先は、英国の音楽誌UNCUTのサイト)

 ブルーレイ10枚組で本当に出るのでしょうかねー。ブルーレイ・プレイヤー買っておかないとなあ・・・。
 それにしても11月は、キャロル・キングやフー、ジャクソン・ブラウンの来日公演が決まっていて、更にはアメリカン・ロック界超大物の来日も噂されている(ファン・サイトなどでは話題になっていて、あのB・DがJCBホールでやるらしい?! ホントー?)ので、なんだか大変な月になりそうです。

 さて、何故に今日のこの1曲がビートルズのこの曲かというと、現在行われているニール・ヤングのヨーロッパ・ツアーで、アンコールで歌われているのが「A Day In The Life」のカヴァーなのです。
 ニール・ヤングは基本的には他人の曲をやることは少なくて、ビートルズのこの曲も自らの作品ではもちろんやっていないし、おそらくライヴでも今まで演奏したことがなかったのですが、このヨーロッパ・ツアーで突然演奏し出したから不思議。(アンコールでやる、というところがミソですね) 某サイトで映像を見ることができたのですが、ニールらしいギターが炸裂していていい感じでした。

 ちなみにこの曲のオリジナルは『サージャント・ペパーズ〜』に収録。先月のレコード・コレクターズ誌『ビートルズ1967-70 50 BEST SONGS』では見事2位にランクインしていましたね。後半の実験的な音世界は圧巻。何度聴いても不思議な1曲です。森 陽馬

2008年8月21日(木) LEZ ZEPPELIN 「移民の歌」

 『ツェッペリンが来日!』、なんて見出しを発見してビックリしてたら、ツェッペリンはツェッペリンでも、“レズ・ツェッペリン”でした・・・。(リンク先は公式サイト。音が出ます)

 レズ・ツェッペリンは、ニューヨーク発女性4人組によるレッド・ツェッペリンのカバー・バンド。先日発売されたアルバムはほぼ完コピながら、なかなかに迫力ある演奏が全10曲楽しめて値段が1,575円とお買い得。(CTCR- 14584 解説・対訳付) 単なる色モノではないようなのですが、なんともこのネーミングが絶妙ですね。
 ちなみに「移民の歌」(原題:Immigrant Song)は、プロレスラー、ブルーザー・ブロディーが入場テーマ曲として使っていたのが印象深いです。

 話は変わりますが、先日お客様からの問い合わせで、ニック・ボックウィンクル(渋いっ!懐かしい!)の入場テーマ曲に関する問い合わせがありました。
 プロレス大全集というCD(VPCC-83014 \2,548) に収録されている曲名では「プロレス・イン・ハワイ」というタイトルが付いているものの、そのCDに収められている音源は、どうやらそのアルバム用のカヴァー・ヴァージョンで、オリジナル・ヴァージョンはCDで出ているか、という問い合わせ。

 いやー、プロレス・マニアの方々に伺ったり、色々と調べたのですがわからないですねー。もしわかる方いらっしゃったら是非教えてください。森 陽馬

2008年8月22日(金)サイモン&ガーファンクル「ミセス・ロビンソン」

 北京オリンピックの野球、星野JAPAN、韓国に負けてしまいましたね。まあでも総合的な感想としては、「野球はやっぱり面白い!」ということを実感しました。特に国際試合。

 独特なドロドロとした緊迫感・雰囲気はやはりオリンピックにそぐわないのかもしれませんが、中途半端な駆け引きがなく、審判への抗議が許されない国際試合は野球本来の醍醐味が楽しめて本当に面白かったです。お金や記録ではない部分で突き動かされるプロ選手の真剣な眼差しからも窺えるように、やはり国際試合は世界的な野球の発展のみならず、日本野球にとっても必要ですね。ちなみに来年2009年、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第2回が行なわれる予定なので、その大会での雪辱に期待しましょう。

 ということで、今日のこの1曲はちょっと野球繋がりのこの曲。
なんで野球繋がりなの?と思われるかもしれませんが、この「ミセス・ロビンソン」の歌詞最後の方に、何故か大リーグの名選手ジョー・ディマジオが脈絡もなくいきなり出てくるのです。
 
 ちなみに映画『卒業』のために書き下ろされた楽曲で彼らの代表曲ともいえるナンバー。1981年の復活セントラル・パークのコンサート(SICP-1540 \2,520)でも1曲目に歌われています。森 陽馬

2008年8月23日(土) ビーチ・ボーイズ 「踊ろよベイビー」

 『ザ・ビーチ・ボーイズ U.S.シングルズ・コレクション ザ・キャピトル・イヤーズ 1962-1965』 これが正式名称のCD16枚組ボックス国内盤が発売になりました。(TOCP-70553 \20,000)
 といってもパッケージが凝ったものなので、アメリカ盤に日本語解説・歌詞・対訳を付けた準国内盤という感じです。

 箱を開けるとまず16枚の紙ジャケがファンを迎えてくれます。ピクチャー・スリーヴがあったものはその写真を。ピクチャー・スリーヴがなかったものはキャピトルのシングル紙袋をあしらったジャケットは見るだけでも充分その時代を伝えてくれます。

 さて、今回のシングル・ボックスには全66曲収められていますが、そのうち8曲が今まで未発表だったヴァージョン/ミックスとなっています。
 ファンでない方には未発表曲でもないのに何をそんなに?、と言われてしまいそうですが、ちょっとでも違って聴こえるのであれば、未発表曲以上の発見や喜びがあるものなのですね、これが。

 その中でもこの「Do You Wanna Dance」の<ステレオ・バッキング・トラック>は絶品です。
 当初のインフォメーションでは<ステレオ・ニュー・ミックス>と発表されてヴォーカル入りが収録されるはずだったらしいのですが、あまりにも素晴らしいバッキング・トラックなので、まずはそれを聴いてほしいという企画者の気持ちがこのようなヴァージョンでの収録になったのではないでしょうか。

 エコーを効かせたハンド・クラッピン、小技をきかせた何本ものギター、そして迫力あるティンパニ。それぞれが初のステレオ・ミックスによって際立った音になっています。ラストに少し出てくるコーラス! これがまたスゴイ刺激的なミックス。リード・ヴォーカルのデニスによる♪カモナ・・・♪がはっきり聴き取れます。オケもコーラスも聴かせたいというミックス担当者の配慮、ありがたくいただきました。

 大好きな「踊ろよベイビー」がますます大好きになったモリ・ツトムでした。森 勉

2008年8月24日(日) Mighty Baby 「A Jug Of Love」

 60年代イギリスで活動していたTHE ACTIONというバンド(ヒットはありませんが、現在もモッズ・ファンの間では根強い人気です)が、解散後にヴォーカリストと別れ、他のメンバーで組んだバンドがこのマイティー・ベイビーというバンドです。

 リチャード・トンプソンのバックなどを務めたこともあるそうです。スーツでビシッときめていたデビュー時に比べると、このジャケに写るメンバーは皆、長髪にヒゲという時代を感じる佇まいです。
 
 この作品は71年に発表された彼等の2ndアルバム(『ア・ジャグ・オブ・ラヴ』 MSIG-339 \2.940)で、全然有名な盤ではありませんが、イギリスの雑誌では“ストレンジ・フォークの名盤”と称されているそうです。
 “ストレンジ〜”なんて書かれているとサイケ・フォークなのかなと思ってしまいますが、全体的にアコースティックを基本としたルーツ・ロック的なアルバムで、タイトルにもなっているこの曲は歌詞対訳が付いていないので内容はわかりませんが、優しいヴォーカルが印象的なとても良い曲です。
 
 “UKのグレイトフル・デッド”と言われているかは定かではありませんが、フォーク・ロックなどお好きな方で興味のある方は是非聴いてみて下さい。東尾沙紀

2008年8月25日(月) Roman Andren 「FELAFLIGHT」

 個人的に2008年ベスト・アルバム候補の1枚、ロマン・アンドレン『ファニータ』(2008年2月18日のこのコーナーで取り上げました)。
 その楽曲をスタジオ・ライヴで新たに録音しなおした作品が発売になりました。(『ファニータ・アンド・ビヨンド〜ライヴ・スタジオ・セッションズ』 PCD-93169 \2,415)

 オリジナル作『ファニータ』(PCD-93064 \2,415)があまりにも素晴らしい出来なので、ライヴで再現するのはかなり困難なのでは?、と思っていたのですが、いざ聴いてみると原曲の美しい旋律&クールな雰囲気はそのままに、生々しいエモーショナルな演奏が加わって、また違った魅力を持った作品に仕上がっていました。

 “スウェーデンのデオダート”と称されることが多いロマン・アンドレンですが、今日のこの1曲「Felaflight」は彼が2004年に発表した1stアルバム『アンベッサズ・ドリーム』(日本未発売)に収録していた曲で、アフロ・ファンクの雄、フェラ・クティに捧げられたナンバーだそう。
 グルーヴィーなファンキー・フュージョンにアフロ・ビートを少し混ぜたインスト・ナンバーで、中間のサックス・ソロと、ロマンのフェンダー・ローズの響きが最高にクール! 是非生のライヴも見てみたいと感じた1枚でした。森 陽馬

2008年8月26日(火) Van Morriosn 「Country Fair」

 北京オリンピックの閉会式は豪華で面白かったですね。様々な演出はもちろんのこと、ロンドンオリンピックへのデモンストレーションとして登場したレオナ・ルイスとジミー・ペイジの共演による「胸いっぱいの愛を」。
 おそらく実際には演奏していなかったと思うのですが、汗をダラダラ流しながら頑張って当てフリする精悍なジミー・ペイジ、素敵でした。

 是非ロンドン・オリンピックの開会式には、3大ギタリスト(エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック)の共演を!なんて思ったのですが、4年後というとみんな70歳手前ですからね。ポール・マッカートニーとかも70歳になってしまうわけだし、はたして4年後オリンピックの音楽的演出はどのようになっているのでしょうか。(今の勢いからすると無難にコールドプレイかな? 世界的な認知度としてストーンズの登場もあり?)

 さて、上記の話題とは関係ないのですが、ヴァン・モリソン旧作の一部がまたもやSHM-CD&限定紙ジャケット仕様で再発売。その中でも特に注目はこの作品でしょう。1974年発表『VEEDON FLEECE』(UICY-93588 \2,800)。

 一般的にはほとんど知名度がなく、有名曲が入っているわけでもないのですが、ヴァン・モリソン好きなら絶対にオススメの音作りと独特な詞世界が素晴らしい隠れた名作。
 『ムーンダンス』や『テュペロハニー』に収録されているような派手な楽曲もないのですが、アルバム全体としての繋がりが素晴らしく、アイルランドへの慈愛に満ちたコンセプト作、ともいえる1枚。ちょっと違うかもしれませんが、『アストラル・ウィークス』にもう少しリズムを加えて、ヴァンが歌い込んだ仕上がり、ともいえるかもしれません。

 ヴァン・モリソンはたくさん作品を発表しているので、どれを買っていいか迷うことも多いと思いますが、ある意味ヴァン・モリソンの魅力が詰まっている1枚でもあるので、『ムーンダンス』などの定番をすでに押えたという方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

2008年8月27日(水) ジョー・アンダーソン 「ヘイ・ジュード」

 映画『アクロス・ザ・ユニバース』、観て来ました。
 ビートルズの曲を使ってのミュージカル映画なので、使用される楽曲、そしてどのようなアレンジ、演奏、歌でカヴァーされているのかに注目していました。
 ですが、予想以上の素晴らしさに約2時間10分、映像に音楽に釘付け状態でした。

 曲の使い方と物語の中へのとけ込ませ方が本当にうまいなぁと思いました。登場人物の役名が、“ジュード”、“ルーシー”、“プルーデンス”、“セディ”など、ビートルズの楽曲からのものだったり、その他ビートルズ好きの心をくすぐってくれる小ネタもたっぷり映画の中に散りばめてあり、制作者のセンスのいい遊び心が伝わってきました。

 この「ヘイ・ジュード」はマックス役のジョー・アンダーソンがリヴァプールに傷心の帰国をした友人のジュードに向けて歌った曲。いいシーンでした。そしてやはり名曲ですね。

 その他、初期のナンバー、「ホールド・ミー・タイト」、「オール・マイ・ラヴィング」、「イット・ウォント・ビー・ロング」、サイケ時代の「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」、そして出演もしているボノが歌う「アイ・アム・ザ・ウォルラス」など、全曲が良かった。久し振りに2度目(!)を観ようかと思っています。

 なおサントラCDは国内盤が出ていません。輸入盤は1枚ものと2枚組が出ていますが、全31曲収録の2枚組(『Across The Universe - Deluxe Edition』 Interscope 0602517469501)がやはりオススメです。森 勉

2008年8月28日(木) James Vincent 「How Can I Thank You Enough」

 武蔵小山商店街に古くから営業していた庶民の陶器店があったのですが残念ながら閉店。かなり広い敷地だったので、次は何のお店ができるのかな?と思っていたら、案の定大手ドラッグストアでした。(まだオープンはしていないのですが、看板が取り付けられていました。)

 もうここ最近の商店街のパターンからして、おそらくそうだろうな、とは思っていましたが、やっぱり味気ないですね。まあ家賃や商店街内出店の保証金からして個人経営店は出店できないような仕組みになっているのが一因ではありますが、ドラッグストアは商店街内にすでにたくさんあるので他の業種の店舗になって欲しかったなあ、というのが正直な感想。

 全国どの商店街でも同じような状況でしょうが、大手チェーン店が出店することにより便利になる反面、個人店の減少により街としての個性がどんどん薄れてしまっています。やはり現代人は利便性追求の風潮が強い印象ですが、はたして個人店の行く末は・・・。中小個人店としてはこれからが踏ん張りどころですね。

 さて、東京はここ最近はずっーと雨が降ったり止んだりではっきりしない天気が続いていますが、“Rain”のタイトルが付いた作品で最近気に入っているアルバムがこの1枚。ジェイムス・ヴィンセント『Waiting For The Rain』(PCD-93137 \2,415)。

 ラテン・ファンク・バンド、アズテカに在籍していたギタリスト、ジェイムス・ヴィンセントが1978年に発表した作品で、今回が正規初CD化。1978年という時代を反映してか、クロスオーヴァーしたフュージョン感覚のナンバーもありますが、全体的にはメロウ・グルーヴが心地良いAOR作として楽しめる作品。特にソウルフルなD「People Of The World」、メロウなE「How Can I Thank You Enough」は絶品。これからの季節にもピッタリなナンバーです。森 陽馬

2008年8月29日(金) 小谷 美紗子 「How」

 現在、東京はハンパじゃない雷雨。落雷の影響で目黒線の一部&東急線も止まっているそうな。昼間は久々に晴れ間が広がって、空もきれいだな、なんて思っていたら夕方以降はこれですからね。ホント、ここ最近の東京は喜怒哀楽の激しい女の子のようにコロコロ変わるよくわからない天気が続いています。(なんのこっちゃ、って感じの例えですね。スミマセン)

 さて、今夜のカミナリのように久々に強烈に刺さった1曲がこれ。小谷美紗子の新曲「How」。

 昨年発表されたアルバム『Out』(これ名盤! HLMCD-5 \2,205)に収録されていた「YOU」も、繰り返し何度も聴き狂ったナンバーでしたが、今回発売されたトリオで制作したアルバム3枚から厳選されたベスト盤『Odani Misako Trio』(UMCK-9236 \2,500)の2曲目に収録されている新曲「How」もキマしたねー。

 彼女の“歌”は、上手いとか声量がどうだとかそういう問題ではなくて、とにかく“心に迫ってくる何か”が痛いほど詰まっていて、聴いていて毎度胸が締め付けられるような気持ちになってくるのです。
 うまく言葉で表せないのがもどかしいのですが、恋愛の初期衝動がそのまま歌として吐き出されているような激情。それが単なる独白に終始せず、ちゃんと音楽として成り立っているところが素晴らしい。“歌”が伝わってくるのです。

 今回のこのベスト盤には、「How」以外に「YOU」も収録。他の楽曲も彼女らしいソングライティングと最高にかっこいい演奏で捨て曲なし! ギターレスのトリオ・バンド、というとクラムボンが有名ですが、小谷美紗子トリオも本当に魅力的です。日本女性ロック好きならば聴き逃し厳禁の1枚ですヨ。森 陽馬

2008年8月30日(土) ゴンチチ 「歩いても 歩いても」

 映画は家庭のテレビで観るもの、という方が現在では多いと思います。DVDやビデオで観たり、ケーブルの映画チャンネルで観たり、テレビも画像・音ともに以前とは比べものにならないほど高性能化しているし・・・。

 1960年代、僕が小・中・高校生だった頃は、まだビデオもなかったし、テレビで映画を放送するということもあまりありませんでした。映画は映画館でないと観れないものだったのです。

 1966年、中学3年の夏休み、その期間約50日(いやぁー、今考えるとすごい長さです)で映画を50本観よう、なんて無謀な計画をたてたことがありました。当時の学生料金はロードショー公開で350円ぐらい。名画座とか3本立てなどは100円から150円で観れたので、レコードに比べると映画はとても安く楽しめる娯楽でした。

 ということで、その1966年の夏はのべ本数で50本以上の映画を観ました。
 ジェリー・ルイスの“底抜けシリーズ”、オードリー・ヘップバーンの『昼下りの情事』、『ローマの休日』、『ティファニーで朝食を』。“007シリーズ”、その他スパイもの、エルヴィス・プレスリー、“若大将シリーズ”、東映のちゃんばらものなどの3本立てで本数をかせぎ、『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』、『ヘルプ』、『ポップギア』、『デイヴ・クラーク・ファイヴの5人の週末』、『クレイジー・ジャンボリー』などの音楽関連映画は、新聞の映画欄で上映館があれば見つけ次第すぐに観に行っていました。

 そんなことを想い出して今年の夏は映画をたくさん観よう、と思っていましたが、あまり行けていないのが現実です。1ヶ月に1本か2本でしょうか・・・。
 でも先日素敵な映画を観ました。公開から随分経ちますが、是枝裕和監督・原作・脚本・編集による『歩いても 歩いても』です。ゴンチチによる音楽もじんわりと心をやわらげてくれるもので、メロディーの良さに何回もリピートしたくなってしまう曲なのです。森 勉

★ゴンチチによるサントラ盤も発売中。(XNHL-15001 \1,500)

2008年8月31日(日) ブロウ・モンキーズ 「 Day After You」

 昨年再結成し、来月18年振りに新作をリリースするという英国のブルー・アイド・ソウル・グループ、ブロウ・モンキーズ。

 近年表立ったニュースが無かった気がしますが、解散後フロントマンのDr.ロバートはバンドとは違ったアーシーなサウンドのソロ作品を何作か発表し、昨年もP.P.アーノルドとのデュエット・アルバムをリリースし、近年のニック・ロウに似た味わいのある歌声を披露していました。

 その彼等の80年代の作品が先日紙ジャケ&ボーナス・トラック(作品によっては未収録)で再発されました。
 皆すっかりおじさんになってしまい、ジャケットに写る麗しいお姿はどこえやら...とまずそこにツッコミを入れてしまいたくなりますがそれはさておき、ソウル愛が盛り込まれたサウンドは基本打ち込みなのですが古臭さをあまり感じさせません。

 そんなソウル愛から彼が好きなカーティス・メイフィールドと共演した曲が収録されているのが87年の3rd『SHE WAS ONLY AGROCER'S DAUGHTER』(BVCM-35411 \2,310)。
 フルートが絡むテンポの良いデュエットで、当時政府を皮肉った歌詞が問題となり、放送禁止となってしまった曲。当時全英5位まで上がった「It Doesn't Have to Be This Way」のビデオもエンハンスドで収録されています。東尾沙紀




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