PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2008月9月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2008年9月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2008年9月1日(月) The Chordettes 「Lollipop」

 “コーデッツ”、というグループ名はご存知でなくても、「ロリポップ」という曲はみなさんどこかで聴いたことがあるのではないでしょうか?

 時は1949年(!)、ウィスコンシン州で結成された女性4人によるコーラス・グループ、“コーデッツ”。ガール・グループというと、ロネッツやシレルズなどを連想されるかもしれませんが、コーデッツが活動し出したのはもっと昔、エルヴィス・プレスリーやビートルズが登場するより前のことです。
 
 彼女たちの楽曲は当初アカペラで歌われる曲が多く、“ジャケガイノススメ・シリーズ”で発売されたコロンビア・レーベル時1954年作『リッスン』(MHCP-1262 \1,890)もアカペラ曲が中心でしたが、1950年代中盤ケイデンス・レーベル時の作品は、その美しい4声コーラスにバック演奏がつき、ポップ感覚がグーッとアップ!(「ロリポップ」はその典型的な1曲ですね)

 今回の再発では、ケイデンス時代の録音曲を未発表作も含めほぼ全曲3枚のCDに収録しており、ガール・ポップの元祖といっても過言ではない楽しいゴキゲンなナンバーが目白押し! 「ロリポップ」しか知らない、という方にもオススメできる作品です。

 ただこのCD、新マスタリング&デジタル・リマスター、ということで、実際に新しいマスターを使用、及びリマスターも施されているそうなのですが、アナログ・レコードの針音が結構入っており、曲によっては針音がかなりプチプチ聞こえる音質です。音源自体はもちろん素晴らしいのですが、CDに針音が入っているのは耐え難い、という方は一度音質を確認してから購入を決断された方がいいかもしれません。森 陽馬

★ジャケット写真は「Lollipop」収録の1955年作『クローズ・ハーモニー』に+10曲のボーナス・トラックを加えた作品。(CDSOL-1255 \2,520)

2008年9月2日(火)Sly & The Family Stone 「I Want To Take You Higher」

 “奇跡”と言われたスライ&ザ・ファミリー・ストーン、ブルーノート来日公演に行ってきました。本当に来るのか?とか、麻薬逮捕歴があるためビザがおりないのでは?、という噂もありましたが無事来日した模様。8月31日東京国際フォーラムで行なわれた東京JAZZではきちんと?ステージをこなした、と聞いていたので今日もワクワクしながらブルーノートへ向かいました。

 2部(21時30分開演予定の回)だったのですが、開場を待っていると、「どうやら1部は大変だったようで、45分経ってもスライ本人が出て来ず、結局15分くらい出てすぐステージ降りてしまった」という情報を小耳に・・・。嫌になってキャンセルして帰ってしまうのでは、という不安が噴出するも20分押しでやっと開場。そして21時55分くらいにメンバー登場し無事開演しました。

 スライ本人抜きのバックバンド(オリジナル・メンバーは3人入り)で「Dance To The Music」、「Everyday People」を立て続けに演奏。一気にヒートアップし、東京JAZZでは4曲目くらいでステージ上に出演したらしいんだよなー、と期待していたものの、5、6曲目終わった後でもなかなかスライは登場せず・・・。
 最初はノリノリだった場内も「オイオイ、本当にでるの?」という雰囲気になってきて、徐々に微妙な空気になりましたが、その時!赤いパーカーを着たスライがたくさんのSPを従えてついに登場! 真っ赤なパーカーの帽子を目深くかぶって独特な危険オーラを発しながらステージ上に!

 これで一気に場内は総立ち!大盛り上がりの観客!
しかしそれも束の間、「I Want To Take You Higher」の♪ハイアー♪連呼時に、立ち上がってフラフラしながら曲中にいきなり退場・・・!結局スライ本人がステージ上にいたのはおそらく15分くらいだったのではないでしょうか? その後アンコールなどもありましたがスライ本人がステージ上に戻ってくることはありませんでした。

 わずか3曲。たったの15分。でもライヴ終了後は場内皆「伝説を見た!」という感慨で満足そうな面持ちでした。実際のショーは約1時間半。オリジナルメンバー3人を含めたバンドも、うまいとかどうとかそういう問題ではなくてとても良かったし、なんかブルーノート内が“スライLOVE”的な雰囲気に包まれていました。人それぞれかもしれませんが中身の濃いショーで個人的には本当に楽しめた一夜。悪魔に魂を売ったかのようなスライのあの表情は一生脳裏に焼きついて離れなさそうです。森 陽馬

2008年9月3日(水)Clare & The Reasons 「Everybody Wants To Rule The World」

 ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドに在籍、マリア・マルダーの元夫としても知られるアメリカン・ルーツ・ミュージック界のいぶし銀シンガー&ギタリスト、“ジェフ・マルダー”。
 その彼の娘、クレア・マルダーのアルバムが国内盤で先日発売になりました。(クレア&リーズンズ 『ザ・ムーヴィー』 PBCM-61031 \2,520)

 タイトルやジャケットからも窺えるように、クラシックなアメリカ映画をイメージしたかのようなノスタルジックな音作り。ジャジー&フォーキー、そしてバイオリンやチェロが入って幻想的かつドリーミーなサウンドに、キュートな彼女の歌声(カーディガンズのニーナになんとなく似ているかも)が魅力的な1枚です。

 すでに輸入盤で昨年末発売になっていましたが、この国内盤にはティアーズ・フォー・フィアーズの名曲「ルール・ザ・ワールド」のカヴァーが追加収録。普通ボーナス・トラックというとアルバムの最後に収録されているものですが、何故か8曲目に挿入されるかたちで収録されています。

 ちなみに「Love Can Be A Crime」という曲ではヴァン・ダイク・パークスがピアノで参加。4曲目「Alphabet City」では、お姉さんのジェニ・マルダー(ジェフ・マルダー&マリア・マルダーとの間の娘)も参加しています。森 陽馬

2008年9月4日(木) Carson & Gaile 「Something Stupid」

 全26曲収録のこのCD、テーマは“あのヒット曲、実はこれがオリジナルなんですよ!”といった感じでしょうか。

 ノリにノっているイギリスのACEレーベルがまたまた内容の濃い素晴らしいコンピレーションCDを作ってくれました。(V.A 『You Heard It Here First!』 ACE CDCHD-1204 \2,415)
 ヒット・ヴァージョンはよく聴いていたものでも、ここに収められたそのオリジナルと言われるものは、初めて聴く曲も多く、ヒットポップスの奥深さが感じられる選曲に脱帽の1枚です。

・トロッグス 「ワイルド・シング」
・ゲイリー・ルイス&プレイボーイズ「ディス・ダイアモンド・リング」
・ミリー・スモール 「マイ・ボーイ・ロリポップ」
 この3曲はてっきりこのヒット・ヴァージョンがオリジナルだと思っていたのですが、このCDに収録されているものが最初だったんですね。それぞれなかなかいい雰囲気で本当に勉強になります。

 1967年の大ヒット、フランク・シナトラとナンシー・シナトラとの親子デュエット曲「サムシング・ステューピッド」(邦題:恋のひとこと)も原曲があったんですね。
 この名曲を作ったのは、ヴァン・ダイク・パークスのお兄さんであるカーソン・パークスというところまでは知られていたのですが・・・。カーソン&ゲイルというデュオで録音していたんですね。この二人のハーモニーが新鮮で、しばらくはこのCDが手離せなくなりそうです。森 勉

2008年9月5日(金) テネイシャスD 「The Metal」

 以前購入していた『テネイシャスD』映画前売鑑賞券。そろそろ見に行こうかな、と思っていたら本日が最終日だったので、あわてて見てきました。

 いやー、いかにもアメリカン!なB級映画で、一般の人にはあまりオススメできない内容ではありましたが、久々に見たお下品かつおバカな映画でそれなりに楽しめました。

 くだらない?ストーリー展開ではありますが、いきなりミートローフ(注釈:食べ物ではなく、ハードロック・バンドね)のヴォーカリストの人が出てきたり、ロニー・ジェイムス・ディオ(レインボー、ブラック・サバスのヴォーカリストとして有名)が歌いまくったり、元ニルヴァーナ&フー・ファイターズのデイヴ・グロールがクライマックスで出演したり、と、ロック・ファンには見逃せない小ネタも満載なので、ハード・ロック好きの方はいつかDVDか何かでチェックしてみてください。

 ちなみにこの「The Metal」という曲は最後のタイトル・ロールでかかっていたメタル賛歌。“コミック・メタル・ソング”といった感じでしょうか。(サントラ盤『テネイシャスD 運命のピック』 EICP-1013 \2,520)

 なお“テネイシャスD”の主人公二人、ジャック・ブラックとカイル・ガス。ストーリー上の仲良しコンビかな、と思いきや、二人が俳優としてはまだそれほど有名でなかった1990年代前半に出会って、ブレイクする前1994年頃から実際に“テネイシャスD”というバンドで活動していたそうです。
 バカバカしいストーリー・・・なんて思っていましたが、映画前半<売れない共同生活>の場面は実体験なのかも。それを知ると、単なるおバカ映画というだけではなく、やんちゃな二人の演技が微笑ましく感じられてきます。森 陽馬

2008年9月6日(土) Brian Wilson 「Forever She'll Be My Surfer Girl」

 ブライアン・ウィルソンの新作『ラッキー・オールド・サン』。輸入盤CDは先日発売となったのですが、国内盤のDVD付仕様の方が9月10日発売予定から1週間ずれて17日発売となってしまいました。(国内盤CDのみの紙ジャケ仕様、及びアナログ盤は予定通り10日発売)

 いやー、まいりましたね。当初はCDのみの盤もDVD付仕様も同じ10日発売だったため、イニシャルオーダー(最初に入ってくる枚数の注文数)は、DVD付仕様盤の方を多めにオーダーを出していたのです。もちろんどの店もそうかもしれませんが、1週間延期になったからといって、イニシャルオーダーの変更はできません。輸入盤はすでに発売になっているので国内発売とのタイムラグが2週間以上も開いてしまうことにより、多くの方が輸入盤へシフトしてしまう可能性も。ホント、販売元のEMIはしっかりしてもらいたいものです。

 おそらく、付属のDVDに字幕を付ける作業があるため延期となってしまったのだと思うのですが、どうせだったら、国内盤ボーナス・トラックも収録してもらいたかったですね・・・、などと愚痴ばかり言っていてもしょうがないのですが、とにかくもブライアンの新作。内容は素晴らしい1枚です。

 まさに『SMiLE』の続編、といっても過言ではないでしょう! 全曲が繋がっておりどの曲も粒揃いの出来。ブライアンのヴォーカルも絶好調! ブライアン・バンドのコーラスも随所に配置されていて期待以上の完成度です。
 タイトル・曲名だけでもグッとくる曲が多いのですが、特に5曲目「Forever She'll Be My Surfer Girl」はタイトルだけでなく楽曲もイイですね! 独立した1曲としても充分シングルカットできる内容! 聴く度に新しい発見が出てきそうな美しい新作でした。森 陽馬

2008年9月7日(日) スーパー・バター・ドッグ 「外出中」

 先週、日比谷野音でクラムボンのライヴを見ました。
 追加公演の日でしたが、その日は雨も降らずいい天気で、しゃぼん玉がきれいでしたね。(クラムボンの野外ライヴの定番で、入場時にしゃぼん液とストローを各自1つもらえて、みんな公演中にしゃぼん玉を作って遊んでいるのです。曲を聴いているより、しゃぼん玉を作るのに一生懸命になってしまうのですが・・・)

 その日に、解散するスーパー・バター・ドッグに捧げます、といってやった曲が、この名曲「外出中」。
 スーパー・バター・ドッグはハナレグミの永積タカシ、現マボロシの竹内朋康を中心とした日本ファンク・バンドで、90年代後期はコンスタントに作品を発表していましたが、ここ最近は各々のソロ活動が中心。あまりスーパー・バター・ドッグとしては活動していませんでしたが、先々月くらいに解散を発表したのです。

 「外出中」はそのスーパー・バター・ドッグが1998年に発表した楽曲で、クラムボンは2006年に発表した作品『Lover Album』でカヴァーしていました。永積タカシの作詞・作曲。
 スーパー・バター・ドッグというと、竹中直人が自ら監督した映画のタイトル&主題歌に「サヨナラCOLOR」を起用したことで有名ですが、他の曲もかっこいいナンバーや「外出中」のような哀愁あふれる曲もあるので、今回発売になったベスト盤(TOCT-26652 2CD \3,500)を入門編として是非聴いてみてください。

 ちなみに野音では、ラスト2曲くらいでいきなりどしゃぶりが降ってきて、簡易かっぱを持っていったにもかかわらず、足元はびしょびしょになってしまいました。今夏は雨具が手離せないですね。森 陽馬

2008年9月8日(月) Van Morrison 「I Forgot That Love Existed」

 以前、このコーナーでもちょろっと書いたボブ・ディラン11月に来日の噂。ほとんど決まっていたのに、中国公演がキャンセルになってしまい、結局アジア・ツアーそのものがなくなってしまったようです・・・。(ディランのツアー情報を集めている海外のサイト、Bob Linkにその件が掲載されています)
 JCBホールでやる(!)という噂だったので、見たかったなあー。チケット代2万円(?)が浮いたと思えばホッとした感もありますが、まあまた仕切り直しということで。来年には元気な姿を見せて欲しいものです。

 そのかわり10月22日にSONYからボブ・ディランの未発表音源集が発売決定。しかーし!これも曲者で、通常1枚ものが2,520円、通常2CDが3,780円、そして、完全限定3,000セットの特殊仕様ボーナスCD付3枚組が、31,500円(!)という訳わかんない値段設定。豪華パッケージ&これでしか聴けないボーナスCDというのは魅力ですが、それにしても3枚組CDで31,500円とは・・・。

 さて話は変わりますが、この人もいつか日本に来てもらいたいですね。ヴァン・モリソン、1993年12月録音のライヴ・アルバム『ナイト・イン・サンフランシスコ』(UICY-93594 2CD \3,800)。ヴァン・モリソンのライヴ盤というと、やはり74年発表名作『魂の道のり』が有名ですが、この90年代のライヴ盤もとにかく最高!
 「テュペロ・ハニー」、「ムーン・ダンス」〜「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とかもいいけれど個人的には、後期の隠れた名曲「I Forgot That Love Existed」がイイですね!

 豪華バックメンバーが後半ソロを回してメンバー紹介。ロニー・ジョンソン(ギター)、ケイト・セント・ジョン(オーボエ)、そして、キャンディー・ダルファー(サックス)から、ジョージ・フェイム(オルガン)という流れは聴きモノ!

 そしてこの曲の最後の方で、何故かボブ・ディラン「見張り塔からずっと」(原題:All Along The Watchtower)の歌詞を二節ほど引用して歌うのが不思議。歌詞がどうこうより、歌の節回しが似ているからかもしれませんが、ヴァンのアドリブでしょうか。とにかくも他の曲も素晴らしいので、一般的にはあまり知られていない作品ですが、ヴァン・モリソン好きの方は必聴の1枚です。森 陽馬

2008年9月9日(火)ブライアン・ウィルソン 「サザン・カリフォルニア」

 ブライアン・ウィルソンが元気です。ほぼ全曲新曲のニュー・アルバムが完成し本日国内盤が発売になりました。

 タイトルは『ザット・ラッキー・オールド・サン』。途中4ヶ所に入る語りも含めて全17曲のコンセプト・アルバムです。
 ブライアンの半生が織り込まれた自伝的な詞とカリフォルニア(ロサンゼルス)がテーマになった詞が溶け合い、それに素晴らしいメロディが付き、見事な作品に仕上がっています。

 今年6月でブライアンは66歳。新しい作品を生み出そうとする意欲とそれをグレードの高い形で成し遂げられる才能がまだまだあることに驚かさせられます。いろいろな意味でブライアンのまわりにサポートするいい人々が集まっているんでしょうね。
 よく考えてみると、ブライアンのバンドはもう10年近くも一緒にステージをやっているんですね。ブライアンがビーチ・ボーイズのメンバーとライヴで演奏していた期間よりもずっと長く一緒にツアーしていることになります。多くのライヴをこなすことによって、ブライアンのやり方を熟知してきているのですね、このバンドは。
 その成果が『スマイル』の時と同様にこの新作でも充分に表われていると思います。演奏もコーラスも曲の構成もあうんの呼吸が感じられます。

 この曲はアルバムの17曲目、感動のラスト・ソングです。歌詞の中に♪Singing with my brothers・・・♪というフレーズが出てくるだけでもグッときてしまうのですが、この曲の展開が本当に素晴らしいのです。
 トータル・タイム40分たらずですので、是非1曲目から通して聴いて、この曲にたどりついて、じっくり聴いてみてください。

 なおDVD付の国内盤は発売日が1週間ずれ、9月17日発売となりました。DVDの内容は、キャピトル・スタジオの録音風景とブライアン及びバンド・メンバーへのインタビューが約20分、スタジオでのライヴの模様が6分というものです。森 勉

2008年9月10日(水) Tahiti 80 「One Parachute」

 タヒチ80が3年半振りに新作をリリース。
 
 昨年はヴォーカルのグザヴィエが、“アックス・リヴァーボーイ”の名でソロ・アルバムを出していましたが、グループとしての新作を待っていたファンの方も多いでしょう。
 
 今回で4作目となる新作のタイトル名『Activity Center』(VICP-64388 \2.520)は赤ん坊のおもちゃからとられたそう。今作もおもちゃ箱=彼等の所有するスタジオで録音され、セルフ・プロデュースにも挑戦しています。
 
 音的に「アックス〜」とそんなに変わらないかなといった印象もありますが、こちらは更にキャッチーな曲が満載です。随所にコーラスも入っていますし、カスタネットのクリっという音が入る曲があったりと、音楽マニアの彼ららしい小ネタ(?)も入っています。
 歌詞に「明治神宮」という言葉が入っている、日本のファンには嬉しい一曲も。
 
 夏の終わりにぴったりの爽やかなポップ・ソングが詰まっています。東尾沙紀

2008年9月11日(木) Brent Cash 「More Than Everything」

 ブライアンの新作は評判も上々で店内でもヘヴィーローテーション中ですが、それと同じくらい気に入って、ここ数日よく聴いているのがこのアルバム。ブレント・キャッシュ『How Will I Know If I'm Awake』(VSCD-9346 \2,730)。

 ブレント・キャッシュという人はアメリカ、ジョージア州出身のシンガー・ソングライター。裏ジャケの写真を見ると、そんなに若くはなさそうに見えますが、この作品がデビュー・アルバム。
 マルチなミュージシャンのようで、リード・ヴォーカルやギター、オルガン、ドラム以外にプロデュースやアレンジも自ら担当。楽曲も全10曲オリジナルでホント捨て曲なし! かなり質の高いポップ・アルバムです。

 英国のシンガー、クリス・レインボウが“一人ビーチ・ボーイズ”なんて呼ばれていたことがありましたが、まさにそんな雰囲気で、そのクリス・レインボウに更に、ソフト・ロック的・A&M的センスとAOR風味も加えた感じ、といえばわかりやすいでしょうか。今日のこの1曲はアルバムのラスト・ナンバーで、センチメンタルなスロー・ナンバーですが、こういう曲もとても魅力的です。

 心弾むようなソフト・ロック・サウンドとコーラス、そして良く練られたアレンジと見事なバッキングは、ビーチ・ボーイズ的ポップス・ファンなら必聴モノ! 今夏話題となった最強のビーチ・ボーイズ・フォロワー・バンド“エクスプローラーズ・クラブ”とはまた違った意味で、素晴らしいビーチ・ボーイズ・フォロワーの傑作誕生です。森 陽馬

2008年9月12日(金) Nina Vidal 「No Umbrella」

 東京は久々にカラッと晴れて30度以上の暑さになりましたが、真夏のようなジトジト感はなく夜も過ごしやすくなりましたね。そんな秋の夜長にピッタリのアルバムが先日発売。

 ニーナ・ヴィダル(本名はニーナ・シモン・ヴィダル)はニューヨーク出身の黒人女性ヴォーカリスト&ピアニストで、このアルバム(POCE-30004 \1,800)がデビュー作。

 黒人でありながら、シャーデーのような清涼感ある歌声と、オーガニックなジャジー・ソウルがなんとも心地良い1枚。2007年個人的なベスト5にも挙げたヤンナやシャーデーお好きな方ならツボ間違いなしのオススメ盤です。

 今日のこの1曲には、穏やかなホーンと彼女自身が弾くピアノの響きがやさしくそして切なく沁みるオリジナル曲E「No Umbrella」を選びましたが、ジョニ・ミッチェル「River」、エヴリシング・バット・ザ・ガール「Driving」のカヴァーもなかなかの出来で、国内盤ボーナス・トラックには、ボブ・マーリィ「Waiting In Vain」カヴァーも追加収録されています。森 陽馬

★話は変わりますが、先日このコーナーで書いたボブ・ディランの31,500円の3CD国内盤BOXは発売中止となりました。(輸入盤は限定仕様で出るようです。)なお、国内盤は2CDのみ発売となりました。

2008年9月13日(土) jew's-ear 「Nasca」

 最近は、このコーナー以外は更新が滞ってしまい申し訳ございません・・・。諸事情で通販コーナーをリニューアルしなければならず現在少しずつ作っているところ。今月中には完了する予定です。そうしたら、コラム・コーナーなども色々更新したいな、などと思っているのですが、期待せずにお待ちくださいませ。

 さて、たまには日本のイキのいいジャズ・バンドを。
 jew's-ear(“ジューズイアー”と読みます)は大阪出身の5人組インスト・ジャズ・ロック・バンド。最近はちょっとオシャレなCLUB JAZZ的なアレンジのジャズ・グループが日本では流行っていますが、このバンドは荒々しいロック的アプローチがあり、なかなかかっこいいです。プログレっぽい展開の楽曲もあり、インストですが聴いていて飽きがこない仕上がり。

 菊地成孔を中心としたジャズグループ、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENの2007年ライヴでは前座を務めたこともあったそうで、その系統のジャズがお好きな方や、SOIL&"PIMP"SESSIONSお好きな方にもオススメの1枚。ライヴも見てみたいバンドです。森 陽馬

★ジャケットは7月に発売されたアルバム『Tong Pei』(PCD-93153 \2,415)。

2008年9月14日(日) 鈴木祥子 「まだ30代の女」

 先日リリースされ、店内でよく聴いているのが鈴木祥子さんの約2年8ヶ月振りの新作『SWEET SERENITY』(MHCL-10092 \3,000)です。
 
 今月でデビュー20周年! 小倉博和(山弦)、告井延隆(センチメンタル・シティ・ロマンス)、武川雅寛(ムーンライダーズ)、太田譲(カーネーション)など豪華なゲストが参加しています。スライド・ギターやペダル・スティールなどを配したアレンジで、祥子さんのルーツのひとつでもあるアメリカ音楽的な穏やかなムードが漂います。
 
 そして特筆すべきはやはり東京ローカル・ホンクがバックをつとめるこの曲!
 メンバーの方と昔からお知り合いだったそうで、この二組の共演!というだけでとてもワクワクしていたのですが、これが実に良い曲です。控え目ですがホンクの優しいコーラスものり、木下さん&井上さんがとってもいいギター・ソロを弾いているのでそちらも聴きものです。
 (11月に共演するイベントが決まっています。要チェック!)
 
 あと歌詞に、♪なんぎや、ほんまに♪というフレーズが出てくるのですが、これは祥子さんが京都に数年住まれていた時に身に付いた関西弁でしょうか。
 「女っちゅうのは難儀な生きものやな〜でも女でいるのはやっぱりええわ」なんて言葉が凝縮されているようで深いなぁ・・・、なんて勝手な解釈をしてしまいました。
 
 全9曲35分ほどで聴いてると本当にあっという間なのですが、前作同様、「本当は哀しい関係」,「逆プロポーズ(仮。)」などタイトルからして祥子さんらしい詞世界は健在、歌声、何重にも重ねられたハーモニーが心地良い1枚です。東尾沙紀

2008年9月15日(月) Jesse Malin 「I Hope I Don't Fall In Love」

 今夜、当店地下アゲインで、サドルズというバンドとビート・キャラバンというバンドのライヴがあり、夜の休憩30分を利用してサドルズのライヴを見ることができました。
 サドルズは“日本のトム・ペティ+ウォーレン・ジヴォン”といった武骨なアメリカン・ロックがかっこいいバンドで、11月にはアルバムも発売するそうなので、これからも注目したい楽しみなグループです。

 さて、今年発売された作品でイキのいい武骨なロックを聴かせるアルバムというと、このJesse Malinの新作はなかなか良かったですね。

 ジェシー・マリンはニューヨーク出身の新世代男性ロック/シンガー・ソングライター。2002年頃デビューしてからコンスタントに作品を発表してきましたが、今年発表したこのアルバム(『On Your Sleeve』 TPLP-898CD)はカヴァー・アルバム。
 といっても、単なるありきたりなヒット曲を取り上げているわけではなくて、ニール・ヤング「Looking For A Love」、クラッシュの隠れた名曲「Gates Of The West」、同じくニューヨークの大先輩、ルー・リード作の「Walk On The Wild Side」、ジム・クロウチの名曲「Operator」などをストレートなロックンロールでカヴァー! 彼の音楽好きがひしひしと感じられる楽しくもかっこいい1枚です。

 今日のこの1曲には、トム・ウェイツの渋いこの曲を選びました。「Ol'55」ではなくてこの曲を選ぶところが渋いっ! ライアン・アダムスやウォール・フラワーズがお好きな方にもオススメのアーティストです。森 陽馬

2008年9月16日(火) Louis Armstrong 「That Lucky Old Sun」

 ビーチ・ボーイズ関連情報コーナーを久々に更新しました。各国盤のジャケットの違いなどをザッと検証してみましたので、今回のブライアンの新作を購入された方、これから購入しようと思っている方、ご参照ください。

 あと、レコード・コレクターズ2008年10月号、メタリカが表紙・特集の号ですが、112ページ〜113ページにブライアン・ウィルソンのインタビューが掲載されています。父の勉が質問作成・文章を担当していますので、そちらも是非ご覧になってみてください。

 さて、そのブライアンのインタビューでも語られていましたが、今回の新作タイトル『That Lucky Old Sun』。これはアメリカのスタンダード・ナンバーから取られており、フランク・シナトラ、サラ・ヴォーン、フランキー・レイン、レイ・チャールズなど様々な人に歌われている楽曲です。

 ブライアンは、ルイ・アームストロングのヴァージョンを気に入っているようで、わざわざレコーディング前にレコード店でそのルイが歌っているヴァージョンが入ったCDを購入。アレンジはもちろん違いますが、ルイの「ラッキー・オールド・サン」を下敷きにしたようです。

 残念ながら、現在国内盤でルイのこの曲が入ったCDは生産中止となっているのですが、輸入編集盤では収録されているアルバムが何枚かあります。1949年という約60年前の古い楽曲ですが、ブライアンの新作気に入った方は一聴をオススメします。森 陽馬

★掲載ジャケットはその「That Lucky Old Sun」収録のベスト盤。(『20th Century Masters The Millennium Collection』 Geffin 7708-02)。

2008年9月17日(水) ハービー・ハンコック feat ジョニ・ミッチェル 「River」

 早いもので今年も9月中旬。各メーカーからクリスマスのオーダーが続々と来て、季節の移り変わりの早さを感じさせます。(先日備品を買いに浅草橋のシモジマへ行ったら、クリスマス包装・展示グッズがすでに山ほど置いてあってビックリ!)

 さて、今年ジョニ・ミッチェルのトリビュート・アルバムでグラミーを受賞したハービー・ハンコックがベスト盤を発売しました。
 このベスト盤のラストに、ジョニ・ミッチェルをfeatした名曲「River」のライヴが収録。今年3月、米国Yahoo! Music公開ライヴでのプレミアムなライヴ音源で、これが初CD化。

 バックが超・超豪華メンツで、ハービーの他に、マーカス・ミラー(B)、ヴィニー・カリウタ(Dr)、若手ギタリスト、リオーネル・ルエケ(G)、ボブ・シェパード(sax)という最強布陣。ジョニの歌声は当時のような高く澄んだ声色ではありませんが、崇高な雰囲気を醸し出しており、永遠に続いてほしいと思わせる素晴らしい5分間の静かなる熱演です。

 ちなみにCDのみの盤も出ていますが、国内盤はボーナスCDとボーナスDVDが付き、更にSHM-CD仕様という2CD+DVD限定盤も発売。(UCCV-9363 \3,300) DVDにこのライヴ音源の映像も入っているので買うならこちらでしょうね。森 陽馬

2008年9月18日(木) Benjamin Taylor 「It's Only Love」

 通販コーナーの更新が鈍くなってしまい申し訳ございません。サーバーの関係から今月中に通販ページを新しく作成し直さなければならず、一から作っている最中。20日までにはなんとかしたいな、と思っているので、リニューアルしたらちゃんと竹内まりやさんのベスト初回盤などもアップしたいと思っています。お待たせして申し訳ございません。

 さて、10/1にはジェイムス・テイラーの新作が発売になりますが、それに先立って(?)、息子のベン・テイラーの新作が発売になりました。(『The Legend Of Kung Folk』 輸入盤 IRIS 1006)

 1stアルバムはイマイチだったものの、前作2ndアルバム『Another Run Around The Sun』(2006年4月3日の今日のこの1曲で取り上げました)があまりにも素晴らしい作品だったので、新作が出ると聞いて、期待半分・不安半分の心持ちでしたが・・・。やっと入荷してきたこの新作、これは十分合格点をあげられる出来なのではないでしょうか。

 あまりピンとこない曲も数曲ありましたが、それ以外の大半の楽曲は前作の流れを引き継いでいて、父譲りの穏やかな歌声とサウンドが沁みる1枚。
 今のところのお気に入りは4曲目「It's Only Love」。他にも同じくジェイムス・テイラー&カーリー・サイモンとの間に生まれたベンの妹、サリー・テイラーがコーラスで参加している曲やジェイミー・カラムがピアノで参加している曲もあり、もっと聴き込めば、より良く感じられてきそうなアルバムです。
 ちなみに今までは“Ben Taylor”でしたが、何故か今回は、“Benjamin Taylor”名義となっています。森 陽馬

★9月20日(土)14時より当店地下アゲインにて、森 勉によるDJイベント『気まぐれ音楽寄席』が行なわれます。今回の特集は“竹内まりや”! 乞うご期待!?

2008年9月19日(金) はっぴいえんど 「朝」

 金延幸子『み空』のアルバムが品切れしていたので注文を出したら、メーカーから<廃盤予定>の返答がきて入荷しませんでした。
 どうやら現在リリースしているエイベックス・イオとURCレーベルの契約が切れたようで、今月末でURCレーベルの商品が全て廃盤になるようです。

 URCレーベルの商品は今までにも権利がコロコロと変わっていて、以前10年ほど前にキング・レコードから出ていたのが廃盤になった後は、エイベックス・イオが紙ジャケ仕様&リマスターなどでもリリースしてくれて一段落した感があったのですが、この度また一時期の間URCレーベルの商品が市場から消えてしまうことになりそうです。

 おそらく近いうちに、その権利を買い取ったレーベルから新しい仕様で出る可能性が高いのですが、マニアの方はこの度廃盤になる“エイベックス・イオ盤”、店頭に残っている在庫でラストになるので買っておいた方がいいかもしれませんね。

 ちなみに、こんなものも出ていました。URCでかジャケ仕様CD。
 ジャケットをLPサイズにして、中はCDという中途半端?な体裁だったため、発売された時は物議を呼びましたが、まあこんな仕様ではもう2度と出ないでしょうから、コレクターは必携?! とにかくも、はっぴいえんどの1st、2nd『風街ろまん』は早く出し直してもらいたいものです。森 陽馬

★掲載ジャケットははっぴいえんどの1st、通称『ゆでめん』のでかジャケ仕様CD。(IOCD-40093 \2,980)

2008年9月20日(土) Carole King 「So Far Away」

 やっと通販コーナーをリニューアルいたしました。まだ掲載アイテムが少ないのですが、徐々に増やしていきたいと思っています。(入力方法なども若干変わりましたが、もし不明な点ありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお問い合わせください。もしくは直接メールでご注文いただいても結構です。)

 さて、1960年代から現在にいたるまでポップス・ミュージック業界で活躍されてきた朝妻一郎氏の書籍『ヒットこそすべて』(白夜書房)が入荷しました。

 ナイアガラ関連に関する記述も多いので大瀧詠一ファンの方にオススメしている書籍ではありますが、中をパラリと見たところ(約480ページもあるのです!まだチラ見しかしていません・・・)、音楽好きの方・音楽業界の方なら必読の1冊と言えそうです!
 大瀧詠一さんとの対談以外にも、木崎義二さんや亀淵昭信さんとの対談、最近では秋元康氏との対談も掲載されており、最近の音楽の話題(「千の風になって」に関する記述も)などもあったりして、厚さはあるものの楽しく読めそうな内容です。

 また更には、“ライナーノーツ・セレクション”というコーナーも随所にあり、当時朝妻さんが手掛けたライナーノーツが掲載されているなど、まさに“オール・アバウト・朝妻一郎”。
 その“ライナー・ノーツ・セレクション”も様々なジャンルのアーティストのものを書かれていらっしゃいましたが、定番としてキャロル・キング『つづれおり』のライナーもうれしいことに掲載。キャロル・キングがいかにソングライターとして優れているかがわかりやすく書かれており、このしっかりした内容のライナーを情報が少ない当時に書かれていらっしゃったのは本当にすごいことだな、と実感できました。読破まで時間がかかりそうですが、毎日寝る前にでも少しずつ読んでいこうと思っています。森 陽馬

2008年9月21日(日) コーデッツ 「避暑地の出来事」

 台風も過ぎて、9月も下旬へさしかかり、朝早く・夜は涼しい風が吹き始めました。今年の夏も本当に暑い夏でしたが、終わってみるとちょっと恋しくなりますね。僕のような歳になると、桜の季節と同様あと何回夏を迎えられるだろうと多少センチメンタルな気分になってしまいます。

 ということで、夏を惜しんで夏の歌を。
 1950年代に大活躍した女性4人のコーラス・グループ、コーデッツによる「避暑地の出来事」です。

 彼女達はウィスコンシン出身。「ロリポップ」、「ミスター・サンドマン」などのヒットを放ち、1960年代ガール・ポップ・ブームの橋渡しをした本当に美しいハーモニーを聴かせてくれるグループです。

 原題は「Theme From A Summer Place」。1960年代に大ヒットしたパーシー・フェイス・オーケストラの歌詞付ヴァージョン、ということになります。ヴォーカル入りはディック・ローマン、レターメンがヒットさせていますが、ジュリー・ロンドン、ジョニー・ソマーズなども歌っています。
(ちなみにこの曲、「夏の日の恋」という邦題の時もあります。)

 コーデッツは今回3枚CD化され、ボーナス曲もタップリ収録されています。3枚で実に72曲、彼女達の歌が聴けます。森 勉

★掲載ジャケットは62年作『日曜日はダメよ+15』(CDSOL-1257 \2,520)。

2008年9月22日(月) Aimee Mann 「Borrowing Time」

 もう一年近くも前になりますが、車のCMで流れていた「ユー・アー・ソー・ビューティフル」をカヴァーしていた女性ヴォーカルはエイミー・マンだったんだ...と今更なのですが、新作『スマイラーズ』(原題は『@#%&*! SMILERS』 SICP-1950 \3,000)のライナーで知りました。(その曲は未CD化、残念。)

 他にもブライアンも参加していた「Arctic Tale(北極のナヌー)」のサントラにも曲を提供していたのですが、エイミー自身としての新作は2005年のクリスマス・アルバム以来となります。
 
 輸入盤はブック型になっていて凝った造り。4ヶ月遅れで発売となった国内盤は、初回デジパック仕様で簡素な造りながら初回には日本のみPVを2曲収録したDVDが付いています。中に挟まっているブックレットはレトロなチラシを集めたようなカラフルでかわいいデザインになっています。
 
 今作はエレキ・ギターを一切使っていないそうなのですが、キーボードで様々な音を作り出しているので、物足りなさは全然感じません。ストリングスやホーンを使った曲もあり、この曲はそのホーンが力強く響く一曲。低い中にも力強さと、優しさがある声だなと改めて思いました。
 タイトルの『@#%&*!』には聴く人それぞれが思う卑語を入れてほしいとの事。笑顔ばかりをふりまく文化を皮肉ったタイトルなのだとか。歌詞も含め実に彼女らしいですね。東尾沙紀

2008年9月23日(火) Aretha Franklin 「Spanish Harlem」(LIVE)

 話題にするのが遅れてしまいましたが、山下達郎さんのツアーが決定しましたね。(リンク先はスマイル・カンパニー、達郎さんのツアー・スケジュール)
 すでにファン・クラブ会員には優先予約抽選用紙が配布されているので、うちのお客様のファンの方々から、どの日を第一希望にするか伺ってみたところ、やはり一番人気(?)は、今年で最後となる年末の大阪フェスティバル・ホール、もしくは初日の厚木、といった感じですね。

 王道の中野サンプラザも来年4月にあるのですが、ちょっと先になってしまうので、今年中もしくは来年あたまに見ておきたい、という方も多いです。公演数は多いものの、どこもそれほど大きくないホールが中心なので、一般のチケット争奪戦は必至でしょう。久々のツアーということで、セットリストも楽しみ。定番化していたバック・メンバーも数名変更がある、という話なので、そこらへんも興味津々。なんにしても、年末とはいえもうあと3ヶ月でツアーは始まるのですね。早いものです。

 さて、ライヴといえば、アレサ・フランクリンのこの盤は素晴らしかったです。(『Oh Me Oh My:Aretha Live In Philly.1972』 RHM2-7757 \3,380)
 アメリカの優良レーベル“RHINO”の中にある限定商品を中心にセレクトしているプロダクト、“ライノハンドメイド商品”の中の1枚。7,500枚限定商品、ということで、一時期は仕入れ価格がやたら高かったのですが、やっとそこそこの値段で取れるようになりました。(ちなみに7,500枚限定のナンバリングは、中のブックレットに記載されています)

 アレサのライヴ盤というとやはり『ライヴ・アット・フィルモア』が有名ですが、それを凌ぐような内容の出来! アレサの歌声はもちろん選曲もバツグン! そして何よりバック・メンツが超ファンキー! ブックレットに記載がないので推測ではありますが、おそらくこのドラムはバーナード・パーディ、ギターはコーネル・デュプリーでしょう!

 「Spanish Harlem」は、ベン・E・キングやローラ・ニーロの名唱で有名ですが、それらのゆったりしたヴァージョンとは全く違った激ファンキー・ヴァージョンで、このライヴ盤は特にかっこいいですね。この曲の後、「Chain Of Fools」〜「See Saw」〜「Respect」などになだれ込んでいく展開はソウル・ファンなら悶絶必至! いやー、こういうライヴ音源。まだあるならどんどん出してもらいたいものです。森 陽馬

2008年9月24日(水) ローラ・ニーロ 「マネー」

 ライヴ盤、といえば、ローラ・ニーロの名ライヴ作『光の季節 コンプリート』もボーナス・トラック追加&デジタル・リマスターで先日再発になりました。(SICP-1957 \1,890)

 70年代前半の作品は内省的&シンプルなサウンドでしたが、このライヴは比較的ジャズ/フュージョン系のサウンド。ローラが1976年に発表したアルバム『スマイル』(チャリー・カレロがプロデュース)後のツアーでのライヴ録音ということもあり、収録曲も『スマイル』から中心の選曲。ジョン・トロペイのギターが冴え渡っていますね。

 ちなみに山下達郎の1976年発表ソロ・デビュー作『サーカス・タウン』、ニューヨーク・サイドのプロデューサーもチャーリー・カレロ。そしてジョン・トロペイがギターを弾いているので、ローラ・ニーロの『スマイル』&このライヴ盤と『サーカス・タウン』を聴き比べてみると、同じ空気感であるのがわかります。お持ちの方は是非お試しを。

 あと、今回の紙ジャケ再発盤にはボーナス・トラックが2曲(「Emmie」と「Timer」の別ライヴ・ヴァージョン)収録。僕が持っているのは1993年初めてCDで出た盤なので音圧も低いんですよね・・・。やはり買い直すべきか・・・。森 陽馬

2008年9月25日(木) no.9 「future airport」

 ここ最近深夜に作業することが多いのですが、そんな時よく聴いているのがこのアルバム。no.9『usual revolution and nine』(LNR-4 \2,310)。

 no.9(“ナンバー・ナイン”と読みます)は、日本人クリエイター城隆之による一人ユニット。ジャンルを言葉で表すと、<音響・インスト>なのですが、今作ではオーガニックなエレクトロニカと生楽器を見事に融合させていて、心地良く聴けてなおかつクール&かっこいいインストが楽しめる1枚に仕上がっています。

 この手のものは、期待して聴くと前衛的になりすぎていたり、無駄に入っている自然音が聴いていて逆に落ち着かなかったりすることが多々あるのですが、このアルバムは全くそんなことがなく、かえってテンポいい生楽器サウンドにリズム感があって、ジャズ/CLUB MUSIC的な感覚でも聴けるのがいいところ。

 レイ・ハラカミやイノヒデフミ、ロータス、オーガニック・インストからラウンジ・ミュージックお好きな方にもオススメしたいアルバムです。森 陽馬

2008年9月26日(金) Booker T & The MG's 「Green Onions」

 ディランの来日は流れてしまいましたが、それでも11月は見に行きたいライヴが目白押し。フー、キャロル・キングがあるので、今回はパスしようと思っていたジャクソン・ブラウン(リンク先はウドーのページ)が、ソロではなくバンドでくる、というので思案中。来週発売の新作は雑誌のレビューなどを読むと地味な出来のようですが、ファンとしてはやっぱり見ておいた方がいいかも。

 更には同じような日程で、ブッカーT&MG'sの来日公演がブルーノートであるらしいので、これも魅力的ですね。

 ブッカーT&MG'sは、ソウルの名レーベル、スタックス・レーベルのバック・バンドとして活躍したインスト・ソウル・バンド。オーティス・レディングやサム&デイヴの名曲でバックを務めているのも彼ら。モータウンの映画がヒットしたことにより、ファンク・ブラザーズに脚光が当たった時期がありましたが、同じようにブッカーT&The MG'sももっと注目されていい存在でしょう。

 更に今回は、ブッカーTと同じくオリジナル・メンバーの中心人物であるスティーヴ・クロッパー(最近だとブルース・ブラザーズとしての活躍や忌野清志郎のプロデューサーとしての方が有名?)、ドナルド・ダック・ダン(名ベーシスト。ニール・ヤングのバックも一時期やっていました)も一緒に来日するとのこと!
 意外にもまだまだ席には余裕があるようなので、もし日程が調整できたら、“生「Green Onions」”を聴きにいこうかな、と思っています。森 陽馬

★掲載ジャケットはライノ編集2枚組ベスト。(RHINO R2-77660)

2008年9月27日(土) 浜口 茂外也 「Under The Boardwalk」

 今日の東京は陽射しがあるもののとても涼しい1日で、本当に秋が来たんだな、と実感できた1日でした。そんな心地良い日和にのんびりとした気分で聴きたいアルバムを発見。
 昭和の名作曲家:ハマクラさん(浜口庫之介)の息子さんであり、古くはティンパン・アレイ系の名セッション・パーカッショニスト、最近はハリー・ホソノ・クインテットなどのバックで活躍している職人ミュージシャン、浜口茂外也の新作オリジナル・アルバム『月影の恋』。(EGDS-31 \2,625)

 CDの帯に、“今甦る、大人のための踊れるラテン歌謡”と書いてある通り、聴いていてほのぼの和めるゴキゲンなラテン歌謡作品に仕上がっています。“ラテン歌謡”なんて書くと、ノリがいいイメージが湧いてしまうかもしれませんが、ゆったりしたリズムで落ち着いて聴ける“大人のリズム”です。

 ビーチ・ボーイズがカヴァーしたことでも有名なボビー・フリーマン「Do You Wanna Dance」、ビル・ウィザース「Ain't No Sunshine」、名曲「キサス・キサス・キサス」、エンリコ・マシアス「恋人」なども、茂外也さんの朴訥としたやさしい歌声とラテン歌謡リズムの独特なオーガニック演奏で料理され、聴いていて思わず微笑みが生まれてくるような1枚。

 11曲目に収録されているドリフターズで有名な「アンダー・ザ・ボードウォーク」には、細野晴臣さんもヴォーカルで参加。細野さんの低音ヴォイスも魅力的です。
 ちなみにジャケットの造りも温もりが伝わるいいデザイン&体裁。茂外也さん本人による解説も付いています。森 陽馬

通販コーナーにも掲載しました。

2008年9月28日(日) Nils Lofgren 「I Am A Child」

 ニルス・ロフグレン、というとブルース・スプリングスティーンのバンド、“E・ストリート・バンド”のギタリスト、というイメージが強いかもしれませんが、ニール・ヤングとも縁が深いミュージシャンでもあります。

 というのも、ニルスが音楽業界に入るきっかけを作ったのはニールヤングで、1970年まだ17〜18歳であったニルスを『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』のレコーディングに参加させたのもニール本人の意思だったようです。(前年の1969年、ニールの楽屋にニルスが押しかけ、ニルスが自らの演奏を披露した、というエピソードがあるそう。楽屋に飛び込んだニルスも凄いが新作のレコーディングに起用したニールも凄いですね)

 そのニルス・ロフグレンが、なんとニール・ヤングの曲を全曲カヴァーする、という作品を発表しました。(『The Loner-Nils Sings Neil』 HYP-8261)

 全曲ギターorピアノによる弾き語り。基本的にオリジナルの完コピではありますがこれがイイ! カヴァーしている楽曲は初期の曲中心で、沁みる「Birds」で始まり、人気曲「Only Love Can Break Your Heart」、「like A Hurricane」から、バッファロー・スプリングフィールド時代の名曲「On The Way Home」、「Mr.Soul」、「I Am A Child」など全15曲。共同プロデュースに多くのニール作に参加しているデヴィッド・ブリッグスが関わっている、というのもミソ。「カヴァーはあまり興味ない」という方にもこれはオススメできる内容です。

 ちなみにCDジャケット内側には、“1970 was a very magical year in my life”という書き出しで始まるニルス本人による解説があり、またニールと二人でギターを持って語らっている写真も掲載され、音だけでなくジャケット体裁もニールへの愛が伝わってくる1枚。個人的にこの秋ヘビーローテションになりそうなアルバムです。森 陽馬

2008年9月29日(月) 竹内 まりや 「元気を出して」

 竹内まりやの30周年を記念して、そのヒット曲を凝縮した3枚組ベストCD『エクスプレッションズ』が10月1日に発売されます。(WPCL-10611 初回限定のみボーナス・カラオケ・ディスク付 \3,980) 明日30日には店頭に並ぶ予定ですが、全42曲から今日はこの曲を。

 今までは竹内まりやの持ち歌として人気投票の第3位にランクされる「元気を出して」ですが、もともとは1984年、薬師丸ひろ子への提供曲だったのです。

 なんでもこの曲は、ジェイムス・テイラーと別れて落ち込んでいたカーリー・サイモンに元気を出してもらいたい、というイメージで書いたものだそうです。そういえば、カーリー・サイモンは当時、失恋の曲ばかりを唄った『トーチ』というアルバムを出していましたね。それだけつらかったのでしょう。少しでもその心の傷を癒してあげたい、というまりやさんの優しい眼差しが、この曲にはよく表現されていると思います。

 1987年に発表された『リクエスト』でまりやヴァージョンが始めて世に出てから20年以上たちますが、いまだに「元気を出して」には不思議な“歌のチカラ”があるような気がします。山下達郎のアレンジの素晴らしさもこの曲に普遍的な魅力を加味していますし。

 今回の新しいマスタリングは達郎の弾くアコースティック・ギターの音が際立ち、後半の薬師丸ひろ子によるコーラスはより清らかな川の流れを感じさせてくれます。森 勉

★ちなみに『エクスプレッションズ』発売記念リーフレットも作成いたしました。今回は内容も充実?! 当店にてお買い上げの方に差し上げます。

2008年9月30日(火) ジャクソン・ブラウン 「ジャスト・セイ・イエー」

 髭を蓄えたおじいさんのイラストか、と思ってジャケットをよく見たら、ジャクソン・ブラウン本人でビックリ! 「この人はいくつになっても変わらず若々しいな」と今までは感じることが多かったのですが、彼もずいぶんと歳をとってしまったものです。そんなジャクソン・ブラウン久々のオリジナル新作アルバム『時の征者』(SICP-2004 \2,520)が本日入荷。

 正直言って、ここ最近のアルバムはインパクトに欠ける出来の作品が続いていたので、新作のアナウンスがあった時もさほど期待はしていなかったのですが、やっと聴けた今作。これはイイですよー!
 サウンドやアレンジは地味ではありますが、楽曲のメロディーが往年を彷彿とさせるような味わいがあり、抑え目ながらもツボを心得たバックの演奏がNICE! ジャクソンらしいやや翳りのある心情を内側に向けたタイプの歌詞も健在で、あきらかに彼の近作の中では一番の出来といえる作品に仕上がっています。

 1曲目「Time The Conqueror」、2曲目「Off Of Wonderland」と冒頭2曲からいきなりいい曲が続きますが、どこかで聴き覚えがあるようなデジャヴに襲われるイントロが印象的な9曲目「Just Say Yeah」。この曲はいかにもジャクソン節という感じの節回しで、今のところの一番のお気に入り。ついついリピートしてしまいますね。

 ちなみに国内盤ボーナス・トラックには、デヴィッド・リンドレーをfeatした必殺ライヴ音源「レイト・フォー・ザ・スカイ」が追加収録。もちろん素晴らしいのですが、中途半端に小出しにしないで、どうせなら1枚丸まるちゃんとしたかたちのライヴ盤として出してもらいたいですね。アルバム『時の征者』としては、10曲目「Far From The Arms Of Hunger」で幕を閉じるのがあるべき正しい形のように感じました。森 陽馬




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