PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2009月1月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2009年1月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2009年1月1日(木) Kenny Rankin 「House Of Gold」

 新年あけましておめでとうございます。
 今年もペット・サウンズ・レコード店をよろしくお願い致します。

 元旦なので街は静か・・・、と思いきや商店街はチェーン店が増えたせいかドラッグ・ストアを中心に開いている店が例年より増えた印象。東京は天気も良く絶好の散歩日和だったこともあって歩いている人も多かったですね。

 穏やかな楽曲を聴きたくて、今日店頭で何度かかけていたのはケニー・ランキンのアルバム。その中でも特に『ケニー・ランキン・アルバム 愛の序奏』(VACM-1350 \2,625)は晴れやかな昼下がりにピッタリの1枚でした。

 ケニー・ランキンは1960年代から活躍している男性シンガーソングライターで、このアルバムは1977年に発表した6作目。決して気張らないやさしく暖かい歌声はジェイムス・テイラーをちょっとソウルっぽくした雰囲気で、どの曲もこの人が歌えばケニー・ランキンの曲になってしまう、という希有なヴォーカリスト。

 今日のこの1曲「House Of Gold」はあのカントリーの大御所、ハンク・ウィリアムスのカヴァーなのですが、とてもカントリーのカヴァーとは思えない絶妙なアレンジで、中間に入るストリングスも感動的に響いてきます。

 スティーヴン・ビショップ「オン・アンド・オン」、ヤング・ラスカルズ「グルーヴィン」、ジョージ・ハリスン「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」などのカヴァーも彼らしいNiceな出来ですが、個人的には自作曲のB「Make Believe」、H「I Love You」が気に入っています。森 陽馬

2009年1月2日(金) スムースエース 「きらめき」

 2001年小坂忠さんのコンサートでバック・コーラスを担当、自身の作品のみならず細野さん&幸宏さんの楽曲に参加するなど活動してきたコーラス・グループ、スムースエース。
 メジャーデビュー時は4人組だったものの現在は重住ひろこ、岡村玄の2人ユニットとなっている彼らですが、最新アルバム『きらめき』が昨年こっそりリリースされていることを最近知りました。

 実はこのアルバム、お客様から教えていただいた作品で、その後取引先やディストリビューターなどで問い合わせたもののどこも取り扱いなし。結局メンバーの方へ連絡を取って直接送ってもらい、やっと聴くことができた1枚なのです。

 最近では空気公団の新作『メロディ』にコーラス参加、他にも数多くの名作に客演してきた重住ひろこの歌声は清々しい“きらめき”に満ちており、心地良い女性ヴォーカル・アルバムとして和める1枚に仕上がっています。

 派手さはないものの、一本芯の通った歌心がやさしく馴染んでくるアルバム。こういう音楽の良心・誠意が伝わってくる作品に今年もたくさん出会いたいな、と思っています。森 陽馬

2009年1月3日(土) はっぴいえんど 「明日あたりはきっと春」

 この曲が収録されたはっぴいえんどの3rdアルバム『HAPPY END』は個人的にはかなり好きなアルバムなのですが、『風街ろまん』に比べると一般的評価があまりないのが残念です。

 解散が決まってから制作・録音されたこともあり、各メンバーのソロ作品の持ち寄りのように言われても仕方がないのかもしれません。がしかし、1曲1曲の仕上がりは彼らが一歩進んだ感があります。

 特に鈴木茂作品の3曲は、松本隆の詞の世界を見事に曲に乗せ、“はっぴいえんど的楽曲”を表現していると思います。
 今日はその中から細野晴臣のベースラインと大滝詠一の♪ウーウーウー♪のコーラスが印象的なこの曲。

 はっぴいえんどといえば2月18日に加藤和彦&坂崎幸之助のユニット和幸(かずこう)”が『ひっぴいえんど』という70年代ロック台頭期へのオマージュ・アルバム出すそうです。曲目を見ると・・・。
 「タイからパクチ」、「ナスなんです」、「あたし元気になれ」、なんていうタイトルがあります。どんな曲なのでしょうか? 聴くのが楽しみです。森 

2009年1月4日(日) レモン・パイパーズ 「グリーン・タンバリン」

 新年早々、エレクトリック・シタールの音が聴きたくなったので、何かないだろうかと考え、引っ張り出してきたのがこのレモン・パイパーズです。(ベスト盤 BVCM-35299 \1,890)

 今から41年前、1968年1月からの数ヶ月間はラジオからよく流れていた曲です。全米No.1にもなりましたし、日本でも当時、日本コロンビアから出たシングル、アルバムと共に、結構話題になっていたと思います。

 鼻にかかったリード・ヴォーカルの独特な歌声、エレクトリック・シタールの響き、♪グリーン♪という歌詞のところでのオーヴァー・エコー、エンディングのインドっぽいドラミング、など今聴いてもとても新鮮なサウンドなのです。

 このレモン・パイパーズを発売したブッダ・レーベルは1910フルーツガム・カンパニーとか、オハイオ・エクスプレスなどのバブルガム・ミュージックを売りにしていましたが、レモン・パイパーズはそれとはちょっと違ったサイケでソフト・ロック的な雰囲気を発散していました。森 勉

2009年1月5日(月) ダン・ペン 「Tiny Hinys And Hogs」

 年が明けてから家の片付けをしたり、外へ出掛けたりで、家でのんびりと音楽を聴く事もあまり無かったので、今年はこの人の歌声を聴きながらのんびりとスタートするのも良いなと思いました。

 ダン・ペンが昨年自主制作でリリースした新作『junkyard junkey』(DND-002)。
 前作『ブルー・ナイト・ラウンジ』に続くデモ・シリーズ作品集の第2弾のようなものだそうですが、全体的に穏やかで、非常に聴きやすい作品でした。
 打ち込みを使ったラフなものありますが、ホーンやストリングス等が入る曲もありますし、何より70歳近いダン・ペンの味わいのある歌声はまだまだ健在といった感じです。
 
 ジャケットに車が写っている彼の旧作『ノーバディーズ・フール』、『ドゥ・ライト・マン』、そして今作のタイトル"junkyard(廃品投棄場)”、及びジャケットの雰囲気(道具を持つダン・ペンは正に廃車場で働く修理工のような佇まい)と、彼の車好きが滲み出ているなぁと改めて思ったのですが、曲が始まり少し間を置いてエンジン音が登場する曲がありました。(ブックレット内にはそのエンジン音の主であろう、ちょいワル親父のバイク軍団The Hogsの写真が載ってます。)
 
 私も徐々にエンジンをかけていこうと思います。今年もよろしくお願い致します。東尾沙紀

2009年1月6日(火) 小坂 忠 「ゆうがたラブ」

 2009年もあっという間に1週間が経ってしまいましたが、楽しみな新譜情報も色々と入ってきました。個人的に楽しみな新譜は、

・デレク・トラックス新作 国内盤ボートラ2曲追加 2/18発売
・ユニコーン 再結成・新作 2/18発売
・エゴラッピン 新作 2/18発売
・サカナクション 新作 1/21発売 (J-POPイチ押し)
・小坂忠 10枚組完全限定BOX(\22,000) 3/18発売

 特に小坂忠さんのBOXは廃盤になっていた初期作『ありがとう』、『もっともっと』はもちろん、レアな音源や映像も収録された8CD+2DVDという豪華仕様。更に新作も同時発売予定、ということですからとても楽しみです。

 そのBOXに入る予定の映像として、1975年静岡駿府会館で行なわれたサンシャイン・コンサートにおける小坂忠&ティンパンアレイのライヴが入るそうで、これはティンパン・ファンにとっても必見の映像となりそうですね。
 「機関車」や「ゆうがたラブ」など、『ほうろう』収録曲を中心に演奏されたようですが、この当時のティンパンの演奏は凄いものが多いので、脂の乗りきったティンパン&忠さんの映像はこのBOXの目玉となるでしょう。(バラ売りはないのかな・・・?)
 ちなみに「ゆうがたラブ」。CDでは山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子がコーラス参加していて、その掛け合いがかっこいいのです。 森 陽馬

2009年1月7日(水) The FLAVORS 「My Little Girl」

 東京は冷たい風が強く、肌寒い日が続いていますが、そんな寒空を吹っ飛ばすような爽快な1枚!

 The FLAVORS(フレイヴァーズ)はアメリカン60'sをルーツに持つ日本人3人組バンド。
 ビーチ・ボーイズやサーフィン/ホットロッド好きであるのが伝わってくる楽曲やその60's的エッセンスがある部分はチャーリー&ザ・ホット・ホイールズに似通ったところもありますが、所々でBOXやキャロルっぽい雰囲気、はたまたフィル・スペクター&ナイアガラ的なカスタネットが入ったポップな楽曲もあり、インディーズ制作ながらとても楽しめるミニ・アルバム。

 一般流通されておらず、メンバーの方に直接連絡を取って商品(『The FLAVORS In Japan!』 \1,500)を置かさせてもらっているのですが、いつかライヴも見てみたいですね。
 ちなみにMyspaceにページがあり試聴できますので興味ある方はそちらもチェックしてみてください。森 陽馬

2009年1月8日(木) Birgit Lystager 「Pa Regnbuevej (Make It With You)」

 名前はビアギッテ・ルゥストゥエア、と読むそうです。
 難しい発音だと思ったらデンマークの人で、歌はすべてデンマークの言葉で歌われています。このアルバムは1970年に発表されたもので、A&Mレーベル系(バート・バカラック、セルジオ・メンデス&ブラジル'66)のカヴァーでゆったり楽しませてくれるものです。

 この曲はブレッドの1970年大ヒット曲。当時最新ヒットをカヴァーしたかたちで、演奏・アレンジは完コピという感じですが、彼女の声とデンマーク語の語感がなんとも夢見心地にさせてくれます。

 その他、ブレントン・ウッドの「ギミ・リトル・サイン」、ボビー・ヘブ「サニー」などのカヴァーも入っていて、ミドル60'sポップス・ファンにはグッとくる選曲のアルバムです。森 勉

2009年1月9日(金) ボブ・ディラン 「北国の少女」

 まだ“2009年”という西暦を言い慣れていない感があるが、今年は音楽界にとっては何かいいこと、面白いことが色々と起こりそうな予感もする。
 ということで、勝手に2009年音楽界大予想!(というか希望的予想!)
★ウッドストック40周年記念ライヴ開催・・・(実現可能性 50%) これはありえそう。夢の狂演再び?

★ビートルズ『アビー・ロード』40周年記念盤発売・・・(実現可能性 10%)『イエロー・サブマリン』も一応40周年記念だが・・・。

★ブライアン・ウィルソン来日公演・・・(実現可能性 70%) 新作も昨年出たし、初来日からちょうど10周年だし。

★ジャパン・ジャム30周年記念! 江ノ島でビーチ・ボーイズ再び!・・・(実現可能性 10%) サザンに1日だけ復活してもらってなんとかならないものか。

★モータウン創立50周年! ジャクソン5再結成・・・(実現可能性 5%) マイケルの最近の行動はよくわからん。

★ニール・ヤング アーカイヴBOX 遂に発売!・・・(実現可能性 75%) ブルーレイ10枚組。今年は本当に出そう。

★ボブ・ディラン 『ナッシュビル・スカイライン』40周年記念! ナッシュビル録音の新作発売・・・(実現可能性 7%) アーカイヴではなくてそろそろ新作を・・・。

★ジミー・ペイジの新バンド始動!・・・(実現可能性 50%) “レッド・ツェッペリン”名義にはならないと思う。

 他にも色々とありそうだが、大物絡みではこんなところか。でも昨年はスライ来日、なんていう年初には予期できないようなこともあったので、そういうサプライズを今年も期待したいところ。

 ちなみに上記関連の話題で、ボブ・ディラン『ナッシュビル・スカイライン』のアウトテイクが収録されたマスターテープが発見され、それが海外のオークション・サイトebayで3万ドルで落札されたそうだ。
 それがディラン本人の下へ渡るのではなくて、何故かebayに出品され3万ドルの値段で落札されて一般の人に渡ってしまう、というのがなんか寂しい・・・というか時代なんでしょうかね。
 そういうこともあったのでディランには、「アウトテイクなんて大したもんじゃねえよ。ナッシュビルで新しいの作ってやるからそれを聴け!」とか言って何かやってくれることを期待。森 陽馬

補足:『ナッシュビル・スカイライン』は1969年発表ナッシュビルで録音された作品で、ディランが澄んだきれいな歌声でカントリー・ソングを歌っているのが特徴。賛否両論あるが、穏やかなディラン作として隠れた人気も高い1枚。(MHCP-375 紙ジャケ \1,890)

2009年1月10日(土)David Crosby & Graham Nash 「To The Last Whale」

 ニール・ヤングのBOXはまだ未確定な部分が大きいが、グラハム・ナッシュのBOX(RHINO編集3枚組CD)は2月発売がほぼ決定しているようだ。

 ホリーズ、CSN、CSN&Y、C&N、そしてソロ活動なども含め、キャリアのわりに作品数はそれほど多くないものの、それでもデビューしてから40年以上になるグラハム・ナッシュ。それを3枚組CDにまとめるのはちょっと中途半端かな、という気がしないでもないが、今までの彼の一般的な評価は低い感があるので、アンソロジー的な作品がリリースされることは意義深いことだと思う。誰でも知っているような大ヒット曲はないが、どんな時代・環境・作品でも良質な楽曲を書く優れたシンガー・ソングライターである点はソングライターの見地からももっと注目されるべきだろう。
 そんな彼の充実作がこの1975年にデヴィッド・クロスビーとの連名で発表した『Wind On The Water』。(昨年末に紙ジャケ&最新リマスターで再発。AIRAC-1500 \2,730)

 このアルバムの一番の特徴は、70年代ジェイムス・テイラーのバックをやっていたことで知られる凄腕バンド、“セクション”がバックを担当していることだ。ダニー・クーチのギター、リー・スクラーの渋いベース・ライン、ラス・カンケルのドラム、クレイグ・ダーギーのピアノ、それに更にデヴィッド・リンドレーのスライドやジェイムス・テイラー&キャロル・キングのコーラスが加わってくる。まさに70年代のアメリカの良心ともいえるサウンドだ。

 楽曲も粒揃いで感動的なクロスビー作@「Carry Me」も素晴らしいが、ナッシュ作ではアルバムの最後に収録されている一見穏やかな「To The Last Whale」。クロスビーのスキャット曲「Critical Mass」とナッシュ作「Wind On The Water」が組曲的に繋がっている構成で、歌詞の内容は反捕鯨メッセージ・ソングとなっており、ナッシュらしい主張が込められた1曲。彼の歌声に内包されているやさしさと、静かなる力強さが僕は大好きだ。森 陽馬

2009年1月11日(日) The Perceptions 「Right The Wrong」

 力が込められているのはいいことだと思うのですが、時には程よく力が抜けている方がいい場合もあったりしますよね。

 全然音楽と関係ない話題ですが、武蔵小山に深夜0時までやっているスーパーがあって、23時頃に買いに行くとちょうど生鮮ものやパンとかに半額シールが貼ってあるのでよく使っています。
 ここで会計後、買ったものを袋詰めしている時に半額になっていない商品があったことに気付いて、この割引シールを後から申告したら店員の方に「大変!申し訳ございませんっ!」って物凄く謝られちゃったことがありました。
 もうね、なんつうかこっちが恥ずかしいというか恐縮してしまうというか・・・。逆に、こっちが許してくれ、って感じになってそういう時ホント困っちゃいますよね。それがバーネット(ロール・パンみたいな丸っこいパン)3ヶ入り210円の半額だったりして、そうするとたった105円なんで、そんなに気合入れて謝らずにそこはサラッとスルーして105円分だけ返金してくれた方が気が楽だったりしますよね。

 ・・・なんて、もう全く意味のない例え話をしてしまいましたが、音楽でも気合が入りすぎた音よりも、適度に力が抜けている演奏の方が耳に馴染んでくることが多かったりします。
 そういう意味では、このパーセプションズ。予想よりも聴きやすいライトなジャズ・ファンク・サウンド、程よく力が抜けた演奏でリラックスして聴くことができました。(PCD-17253 \2,625)

 このパーセプションズというのは激熱の新世代UKジャズ・ファンク・バンドの猛者達によるグループで、当店でもロングセラーのサウンド・スタイリスティックスやスピード・メーター、更にジェームズ・テイラー・カルテット、スノウボーイなど豪華メンツが集ったスペシャル・ジャズ・ファンク・ユニット。新譜案内書でもその解説文は読んでいたので、ニューマスター・サウンズのようなガンガン前に出ていくような熱い音を想像していたのですが、聴いてみるとファンクとフュージョンのちょうど中間を行くようなサウンドで、時間や場所を選ばずに楽しめそうな1枚です。
 実際タイトな演奏の曲もあったりするのですが、それがあまりしつこくなく聴けるのはミックスのせいでしょうか。音圧のバランスが良くて上品に聴ける音作り。アシッド・ジャズ好き、インスト・フュージョン・ファンの方にオススメです。森 陽馬

2009年1月12日(月) The Ovations 「So Nice To Be Loved By You」 

 レコード・コレクターズ最新号が入荷。今号は恒例の2008リイシュー・アルバム・ベスト特集で、どのジャンルもほぼ無難な選出だったと思うのですが、予想外だったのがR&B/ソウル部門。2008年春頃にイギリスのKENTレーベルから発売されたオヴェイションズの編集盤(『One In A Million』 CDKEND-294)がランクインすらしていませんでした。ベスト3には確実に入ると思っていたのでちょっと意外。

 The Ovationsはメンフィス出身の黒人ルイス・ウィリアムスを中心に結成されたコーラス・グループ。彼らの音源は以前VIVIDから発売されていたこともありましたが長らく廃盤状態。初期のゴールド・ワックス・レーベル在籍時の音源は数年前にCDで出ましたが70年代“サウンド・オブ・メンフィス”というレーベルの音源は現在出ていなかったため待望のCD化。未発表曲や貴重な発掘デモ音源も収録されているので、入門編としてはもちろん、ソウル・マニアの方にもオススメの1枚です。

 ルイス・ウィリアムスの歌声&歌い方はサム・クックにそっくりなので、スウィート・ソウルもややディープめな楽曲もしつこくなく聴きやすいメンフィス・ソウルとして楽しめます。僕が特に好きなのは5曲目に収録されている「So Nice To Be Loved By You」。泣きのスウィート&メロウなメロディーとバック・コーラス、そしてルイスの歌声は本当に絶品! 2分半の短い1曲ではありますが、何度リピートしても飽きない感動のナンバーです。(サム・クックがもし生きていたら、70年代にはこういう歌を歌っていたかもなあ、と夢想できますよ)

 ちなみに2月20日に国内盤も発売が決定(P-VINE PCD-17263 \2,625)したので、これから購入しようと思っている方は国内盤を待ってもいいかもしれませんね。森 陽馬

2009年1月13日(火) ボズ・スキャッグス 「Some Other Time/We're All Alone」

 ボズ・スキャッグスの新作『スピークロウ』(初回DVD付 UCCU-9674 \3,000)が発売。

 前作『バッド・ビューティフル』に続き“ジャズ・スタンダード・カヴァー第2弾”アルバムで、ギル・ゴールドスタイン(P)、ボブ・シェパード(Sax)、マイク・マイニエリ(Vib)等ジャズ界の名ミュージシャンをバックに従え、大人の夜を演出する上品なジャズを聴かせてくれる素敵な1枚に仕上がっています。

 ボズの昔と変わらぬ落ち着いた渋い歌声、そして抑え目なバックの演奏も文句なし。男性ジャズ・ヴォーカル作品としては、本当に素晴らしい1枚だと思う。
 ・・・けど何か物足りない・・・、と感じるのは僕だけではないはず。

 ホント、ジャズ・アルバムとしては普通にいいアルバムだと思うのですが、こればっかりは“ボズ・スキャッグス”という名前がある悲しい性。“『シルク・ディグリーズ』のボズ・スキャッグス”を聴いてしまっている人にとっては、どうしてもあの時代のボズに期待してしまうのはしょうがないと思います。実際、僕もその中の一人。

 ビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビー』に収録されていることで有名な「Some Other Time」から、自身の代表曲「We're All Alone」へとなだれ込んでいくメドレー的楽曲が国内盤ボーナス・トラックとして収録されていることも、そういう思いに拍車をかけてしまっている感があります。(よりによって「We're All Alone」が最後の最後に出てくるとは・・・。)

 ボズのインタビュー(ブックレット参照)で、「ギル・ゴールドスタインがいろいろ試しているうちに、ごく自然に<ウィ・アー・オール・アローン>へと展開していったんだ。」と話しているが・・・。なんかやや強引な持ってき方というかあざとく感じてしまうのは僕がひねくれているからかな。森 陽

2009年1月14日(水) スクイーズ 「Tempted」

 今年一発目のライブ、12日は吉祥寺スターパインズ・カフェ、13日は横浜サムズ・アップに、グレン・ティルブルック(スクイーズ)の来日公演を観に行ってきました。

 前回の来日は2006年秋。昨年はスクイーズを再結成し、英米でライブも行っていたのですが、今回も彼一人とギター2本でのパフォーマンス。2部構成で約2時間、こんなに時間が早く感じたのは初めてというぐらいあっという間!見てる人皆を笑顔にさせるパワフルで楽しいひとときでした。

 来月イギリスでリリース予定の新作から少しと、ソロ、スクイーズからまんべんなく演奏され、間にはビートルズ「You Can't Do That」、モンキーズ「I'm A Believer」、ジミヘンの「Voodoo Chile」などカバー曲も演奏してくれました。スクイーズの中でも彼自身お気に入りというだけあって82年作『EAST SIDE STORY』(POCE-1131 \2,625)からは特に多く演奏されました。(当時2枚組にして、デイヴ・エドモンズ、ニック・ロウ、コステロ、ポール・マッカートニーに片方ずつプロデュースを頼む計画だったとか...実現したら凄かったかも?!)
 アルバムではポール・キャラックがメイン・ヴォーカルを担当する「Tempted」も横浜で聴く事が出来ました。ライブではお客さんとの一体感も生まれるスクイーズ屈指の名曲です。

 ソロ3枚目となる最新作『Pandemonium Ensues』は、彼を支えるバンドThe Fluffersとの名義で来月初旬に出る予定なのですが、このジャケットが緑と黄色の正に''ペット・サウンズ''カラー。以前無人島の一枚に『ペット・サウンズ』を挙げていた彼、あくまでも推測ですが、ブライアンの新作も聴いて触発された部分もあるのではないかと思います。ライブ終了後本人と触れ合う機会があったので、東京に「ペット・サウンズ・レコード」というCDショップがあるんだよというのを何気にアピールしてみました。ちゃんと伝わっているといいのですが(笑)。 東尾沙紀

2009年1月15日(木) ニール・ヤング 「Broken Arrow」 

 レココレ最新号<2008リイシューベスト>のROCK部門で、意外にも高評価でビックリ!? ニール・ヤング1968年のライヴ盤『シュガー・マウンテン・ライヴ・アット・カンタベリー・ハウス・1968』。約1ヶ月遅れではありますが国内盤が発売になりました。(WPZR-30318 \3,480)

 このCDは曲間MCが結構長いので、国内盤にはその対訳が付いているのはいいですね。大鷹俊一さんによる解説も基本的な情報はもちろん、結構マニアックな情報も盛り込まれていて勉強になりました。
 そのMCは、65年頃本屋でアルバイトしていた時に“クスリ”をやってヘロヘロになりながら仕事をしてクビになった、というどうしようもない話題や、バッファロー時代のライヴのことなどを話しており、観客を楽しませようとしているニールが初々しくて、歌詞カードを読むだけでも楽しめます。

 ちなみにこのライヴ盤で1点疑問に感じているのは、「I Am A Child」が収録されていないこと。
 1968年11月9日&10日のライヴ音源が元になっているものの、CD化に際して曲順もかなり変えられており、カットされている曲があるのは事実ですが、その2日間で「I Am A Child」は4回も披露されているのです。(ライヴ自体が入替え制の2回まわしだった可能性もあり) ですが何故かこのライヴ盤には収録されていないのは何故? 前回の1972年発掘ライヴ音源『ライヴ・アット・マッセイホール』に収録されていた、ということもあるのかもしれませんが、ニール自身が気に入らないテイクだった可能性もありますね。

 ちなみに最近のニールは?というと、自身のオフィシャルHPで今年に入ってから新曲「Fork In The Road」を突如アップするなど依然絶好調。昨年末のコンサートでは全26曲中9曲も新曲を披露するなど相変わらずROCKな“攻め”の姿勢は健在で、噂のアーカイヴBOXよりも先に新作を出しそうな勢いです。森 陽馬

ニール・ヤング新聞の新しい号16号(“ニール・ヤングの2009年大予想”特集)も作成いたしました。フリーペーパーですので店頭でご自由にお取りいただけます。

2009年1月16日(金) ニルソン 「リヴァー・ディープ・マウンテン・ハイ」

 ファンの間ではすっかり新年の風物詩化している大滝詠一と山下達郎によるラジオでの対談番組<新春放談>ですが、今年はうれしいことに3週目まで突入!ということで1月18日も放送されるそうです。

 1月11日に放送された2週目は久し振りに大滝−山下のオールディーズ噺が聞けて大満足のひとときでした。
 ソングライター:エリー・グリニッチ&ジェフ・バリーを中心に、フィル・スペクター、ガール・シンガー、そして最後は故・遠藤実まで実に充実した楽しい放送で、この二人にはもっともっと音楽、特にオールディーズについて語って欲しいな、と思いました。

 ということで、今日はエリー&ジェフの作品集から、番組の中でも出てきたこの曲。
 アイク&ティナ・ターナーのヴァージョンはフィル・スペクターのオーヴァー・プロデュースを感じますが、このニルソンのヴァージョンは楽曲の持つ魅力をシンプルに表現していると思います。

 なおこのACEレーベルのコンピレーションは昨年10月5日にもこのコーナーで紹介しましたが、その後ブックレットの英文解説の日本語訳が付いた国内盤も発売になっています。(『ドゥ・ワ・ディディ エリー・グリニッチ&ジェフ・バリー作品集』 MSIG-524 \3,150) 森 勉

2009年1月17日(土) John Frusciante 「Central」

 レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト、ジョン・フルシアンテのソロ作『The Empyrean』(エンピリアン・・・天・天球の意。古代ギリシャでは理想郷のようなニュアンスの意もあったらしい)が先日発売。
 レッチリのベーシスト、フリーや、元ザ・スミスのジョニーマーも参加。音楽誌や案内書などに、<ジョンの最高傑作!>という文句が躍っていたので期待して購入・聴いてみました。

 確かに、ジョン・フルシアンテ名義の作品としては、今までで一番整合感があってアナログ感のある聴きやすい音色、ということもあり、最高傑作、と言っていいかもしれません。ただそれはあくまで、ジョンのソロの中で、ということで、レッチリ的サウンドを期待している人にはガッカリする要素も多分に含まれていると思います。

 ジョンのソロを聴いたことがある方ならわかるかもしれませんが、彼の音楽的志向はレッチリの作品のそれとは全然違っていて独特な世界観があり、うちの店的な変な例えになってしまいますが、サウンド的にも歌詞の面でも、ビーチ・ボーイズのアルバムとデニス・ウィルソンのソロ作ぐらいの差異がある、と言っていいと思います。

 特に今作は宗教的な側面も垣間見え、バンド・サウンドでありながら変わったリズム感のある楽曲が多いため、最近のレッチリのようなポップ感ある楽曲は少なく、だからといって全編にダイナミズムなロック・サウンドが溢れているというわけでもありません。ティム・バックリィのカヴァー「Songs To The Siren」をやっている、ということもあるかもしれませんが、<ティムの息子ジェフ・バックリィがキング・クリムゾン的コンセプトで作品を作った>ような印象を受けました。(これまた変な例えでスミマセン)

 ただ、つまらない作品かというとそういうわけではなくて、7分以上に及ぶ8曲目「Central」は、美しいストリングスの音色&メロディーとジョンの荒々しいギター&ロックなサウンドが合わさったかっこいい1曲。一筋縄ではいかない独特なジョンのギターと世界観が好きな方なら楽しめる1枚だと思います。
(ちなみに、ジョン・フルシアンテは“現代3大ロック・ギタリスト”の中の一人と言われているそうですね。もう二人はジョン・メイヤーとデレク・トラックス。)

 なお国内盤(DDCB-12504 \2,500)にはボーナス・トラックが2曲追加。歌詞・対訳、及びジョン本人による作品解説と大鷹俊一氏によるライナーノーツも付いており、ジョン・フルシアンテへの愛が伝わる丁寧な作りで好感が持てます。森 陽馬

2009年1月18日(日)吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ 「齢には勝てないぜ」

 “日本ジャンプ・ブルース界の重要文化財”こと、吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズの結成30周年記念となる新作『スウェッティン・ボールルーム』(HOTRCD-1 \2,940)が急遽発売。

 久々のNEWアルバムは2007年9月22日、23日鶯谷にある東京キネマ倶楽部で行なわれたライヴ盤で、約78分ギッチリ収録。今までCDに収録されたことがなかった楽曲から、国分友里恵が参加したジャジーなナンバー(「I Can Dream,Can't I」、「Do You Ever Think Of Me」)、藤井康一、松竹谷清が参加したブルース・ナンバーまで、最近の時事ネタも含めた歌詞も楽しい、ゆるゆる♪ゴキゲンな楽しい1枚です。

 ライヴの出だし(CDトラックでは2曲目)に演奏される「齢には勝てないぜ」は、1991年発表名作アルバム『STOMPIN’&BOUNCIN’』に収録されている1曲ですが、曲に入る前の吾妻さんのシャウト(というかMC)が面白いです。

 ちなみに初回盤にはステッカーが封入。ブックレット内には<LIVE DVD Coming Soon!>と書いてあるので、いつになるかわかりませんが、今年中には映像も出るかもしれませんね。森 陽馬

2009年1月19日(月) LACROSSE 「NO MORE LOVESONGS」

 このかわいいのかそうでないのか不思議でインパクトのあるジャケットのアルバムは、スウェーデンのストックホルム出身の6人組バンド、ラクロスのデビュー作。(『THIS NEW YEAR WILL BE FOR YOU AND ME』 TR-111)
 
 紅一点NINAのヴォーカルをメインに、残りの男性メンバーがバック・コーラスを付ける...というよりも終始ユニゾン状態。決して歌が上手いとはいえませんが、一斉に声を出すって楽しい!とばかりに時折ホーンなどを交え、とにかく明るく元気な曲が詰まったギターポップ・アルバムです。マジック・ナンバーズの方が落ち着いていると思いますが、この2組少し似ているかなと思いました。
 
 2007年リリースのアルバムですがタイトルの''NEW YEAR''にちなんで。
 訳が合ってるかわかりませんが、「この新年は君と僕のために」ってタイトルも素敵。気温がぐんとあがった本日にぴったりの一枚でした。東尾沙

2009年1月20日(火) サカナクション 「黄色い車」

 2009年のベスト・アルバム候補が早くも登場!!!
間違いなく“2009年J-POP名盤”と後々評されるであろうサカナクション新作3rdアルバム『シンシロ』が本日入荷。(VICL-63223 初回限定 \2,100)

 2008年1月にリリースされた前作『NIGHT FISHING』も素晴らしい作品<2008年ベスト5>に選出しましたが、この新作はそれを更に進化させた内容! とにかく曲・演奏がかっこいい! まさにバンド名の如く“サカナがアクションしている”ように前にガンガン進んでいくような勢いを感じさせる1枚です。

 エレクトロニカとJ-POP、ダンス、ロック、更にコーラスの魅力などを1曲の中にブチ込みながら、それでいてポップな魅力を失わずに聴かせるソングライティングは本当に見事。1曲目「Ame(B)」の衝撃も捨てがたいのですが、個人的に一番気に入っているのは7曲目「黄色い車」。
 エレクトロニカ色が一番薄い楽曲ながら、中盤転調してからのダイナミズムな演奏が感動的なくらい強烈。何度聴いても飽きません。

 3月7日赤坂ブリッツ公演は即日ソールドアウト、とのこと。今年大ブレイク確率100%の札幌出身5人組“サカナクション”。名前だけでも憶えておいて損はないですよ。森 陽馬

2009年1月21日(水) Hayley Sales 「Traffic」

 “サーフィン界のノラ・ジョーンズ”!?
最近気に入って、店頭でよくかけているのがこのヘイリー・セールズという女性シンガーのデビュー・アルバム『サンシード』(PCCY-80060 \1,980)。

 ワシントン出身の22歳で現在はカナダ・バンクーバー在住サーファーでもある彼女。このアルバムは20歳の時に自らプロデュース&ミックスも担当し作り上げた作品だそうで、アコースティック/オーガニックなサウンドとノラ・ジョーンズ似の爽やか&キュートな歌声がゴキゲンな1枚です。

 ブックレットに掲載されているインタビューによると彼女の父は、「グレイトフル・デッドに曲提供したり、マイルス・デイヴィスのレコーディングにも参加したことがある60's真正ヒッピー・ミュージシャン」だったそうで、ワシントンに住んでいた頃は地下にレコーディング・スタジオもあったとのこと。(デッド関連の楽曲クレジットで、Salesと付く名前の人を探しましたが結局わからず・・・。彼女の父の名前ご存知の方いらっしゃったら教えてください。)

 そういう素養もあってか、単なる開放感あるジャック・ジョンソン的サウンドのみならず、独特なポップ・センスも持ち合わせていて、国内盤ボーナス2曲含む全16曲、通して飽きずに聴ける完成度のアルバムです。
 特に気に入っているのは6曲目「Traffic」。アップ・テンポながら程よい遊びと間がある演奏、彼女の美声に心弾む1曲。

 トリスタン・プリティマンやコルビー・キャレイお好きな方ならもちろん、エディ・リーダーなどの女性シンガー好きの方にもオススメ。この1枚で終わらず是非引き続き作品を出していってほしいですね。森 陽馬

<1/22追記>
このヘイリー・セールズの父は、Richard Salesという人でした。リンク先の公式?ページ見ると、ホント“60'sヒッピー”といった感じですね。(情報を送ってくれたHさん、Sさん、ありがとうございました。)

2009年1月22日(木) Fleet Foxes 「Your Protector」

・アメリカのBillboard誌“批評家が選ぶ2008ベスト・アルバム”にていきなり1位を獲得。
・日本の名音楽誌、CDジャーナル誌にて“2008ベスト・アルバム大賞”を獲得。
・中川五郎氏、松永良平氏、五十嵐正氏ほか、多くの音楽評論家が2008ベストに選出。

と、もう尋常じゃないほど高評価連発! アメリカはシアトルを拠点に活動しているバンド、FLEET FOXES(フリート・フォクシーズ)。昨年夏には発売になっていたものの恥ずかしながらちゃんと聴いたことがなかったので、本日購入しアルバム通して聴いてみました。(輸入盤 SUB POP SPCD-777)

 松永良平氏は“山のビーチ・ボーイズ”と評しており、メンバーは“バロック・ハーモニック・ポップ・バンド”と自らを称しているこの新人バンド。僕が聴いてみて一番最初に感じたのは、“マイ・モーニング・ジャケットが牧歌的ヨーロピアン音楽をバックに歌っている”という印象でした。

 歌声がとにかくマイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェームスにそっくりで、そのヴォーカルに独特なエコーとコーラスがかぶさるという図式。バンジョー、マンドリン、ピアノ他様々な楽器を使いながら、それらの音はあまり前に出ず、幻想的な音世界とコーラスの渦の中に溶け込んでいく感じ。
 たしかにこれは完成度が高くて、作品としての統一感も抜群。16世紀オランダの画家ピーテル・ブリューゲルによる『ネーデルラントの諺』という名画をあしらった気品漂うジャケットからも名盤の臭いがプンプン漂ってきますね。

 ただ、個人的にはちょっと食い足りないかな、という感想も持ちました。
 ガツン!といきなりくる作品ではなく、じわじわ沁みてくる系統のアルバム、ということはわかっているのですが、なんか聴いていて鬱になりそうな暗さを感じてしまうんですよね。聴いて楽しい1枚、というよりは、<ヨーロッパ奥地の山小屋で寒い冬を凌ぎながらしんみり聴く1枚>といったところでしょうか。(いやー、こんなこと書くと、お前わかってねえな、と怒られそうですね。失礼いたしました)

 シアトルでは大人気だそうなので、ライヴも見てみたいところ。輸入盤には英語歌詞カードも入っていないので、是非対訳付けた日本盤も出してもらいたいですね。今後の動向にも注目のバンドです。森 陽馬

2009年1月23日(金) Ty Karim 「Don't Let Me Be Lonely Tonight」

 ノーザン・ソウル、ディープ・ソウル、60〜70's女性ソウル・シンガーお好きな方なら絶対に気に入ること間違いなし! ミシシッピ出身、ロスを中心に活動していた黒人女性シンガー、タイ・カリムの音源がコンプリートのかたちでめでたくCD化。(Ty Karim 『The Comlete TY KARIM 〜 Los Angeles's Soul Goddess』 Kent CDKEND-308)

 レコード・コレクターズ誌最新号のディスク・レビューでも鈴木啓志氏が絶賛していますが、レアなシングル音源から未発表音源まで全23曲がいい音で楽しめ、ブックレットもしっかりしており充実のリイシュー。さすがソウルのオイシイ盤を多く手掛けてきているメーカー、“KENT SOUL”。素晴らしい仕事ぶりです。(ちなみにこのKENT SOULは、オールディーズのリイシューでも知られるUKのメーカー、“ACE”傘下のレーベルです。)

 タイ・カリムの歌声はややハスキーながら黒人的な力強さに溢れていて、ソウルフルな魅力がタップリ。ちょっとモータウン風な@「Lighten Up Baby」(1966)がポップな魅力もあっていいですね。
 意外なところではジェイムス・テイラーの「寂しい夜 Don't Let Be Me Lonely Tonight」をカヴァー(1973)。後期1980年の音源(「Keep On Doin' Whatcha' Doin'」 George Griffinという人とのデュエット)も入っていますが、どちらもいいアレンジでNICE!

 一般的にはあまり知られていない彼女ですが、ディープ・ソウル・ファン/マニアだけで楽しむにはもったいない1枚。ソウル好きの方に幅広くオススメしたいリイシュー盤です。森 陽馬

2009年1月24日(土)コニー・スティーヴンス 「シックスティーン・リーズンズ」

 彼女は1950年代後半に女優としてデビューし、1959年から始まったアメリカのテレビ・ドラマ「ハワイアン・アイ」のレギュラー出演がきっかけとなり、スターの仲間入りを果たしました。

 日本では少し遅れて1963年頃からの放送だったと思いますが、子供心に「アメリカの女優さんはきれいだなあ」という印象でした。テレビの画面で見る彼女はこのアルバムのジャケット写真より数段キュートでした。

 ルックス的なことはさておき、歌もいかしています。
 60'sらしい王道のガール・ポップスです。
 この「シックスティーン・リーズンズ」は1960年の大ヒット。コニー・スティーヴンス自身がこの曲を歌っている姿を見たことがないので、この曲を聴くと映像的には、映画『マルホランド・ドライヴ』を思い出してしまいます。

 2001年デヴィッド・リンチ監督の問題作ですが、劇中、女優のオーディションのシーンでこの曲がかかるのです。まあ!なんという選曲。もう1曲かかるのは、これまたリンダ・スコットの「I've Told Every Little Star」でした。森 勉

★ジャケットは1960年発表2ndアルバム。(『シックスティーン・リーズンズ』 WPCR-75410 \1,800)

2009年1月25日(日) Dave Clark Five 「Over And Over」

 昨年11月末に入荷した時にもこのコーナーで紹介したデイヴ・クラーク・ファイヴ。

 大好評でその後売り切れてしまい、再オーダーしてもなかなか入らなかったため、「早くも廃盤か?!」、「またかよ、デイヴ・クラーク勘弁してくれよ」、という声も上がったりしていましたが、先日めでたく再入荷しました。良かったです。
 発売されてもすぐに市場から消えてしまう彼らのCDが今まで多かったので、今回は少しずつでも長く店頭に置いておきたいのですが・・・。

 さて、前回の今日のこの1曲は「ビコーズ」でした。名曲が多くて今回もどれにしようか迷いましたが、「オーヴァー・アンド・オーヴァー」にしました。
 ボビー・バードのカヴァーですが、完全にDC5のスタイルになっていて、デイヴ・クラークのドラム連打が心地良いミディアム・テンポの楽曲になっています。

 この曲は1965年11月に発売され、1966年1月に彼らとしては初であり、唯一の全米ナンバー・ワンに輝いています。ヴォーカルのマイク・スミスによる「アウン・・・アウン」のフレーズが耳に残る名曲です。森 勉

2009年1月26日(月) J.D.サウザー 「I'll Be Here At Closing Time」

 2月に予定されていたジャネット・ジャクソン来日公演、“諸外国の経済危機の影響”により来日延期となってしまったそうです。
 現在日本でのジャネット・ジャクソンの人気度は高いとは言えないでしょうし、実際はチケットが売れていなかった(まあこれも経済危機の影響と言えなくもない)のかもしれませんが、こういうニュースを聞くと来日アーティストの興行の難しさを感じてしまいますね。

 来日といえば、今週J.D.サウザー久々の来日公演があるようです。(1/28〜29 ビルボード・ライヴ)
 約25年ぶりのアルバムも発売されましたし、まだ席も余裕がありそうなので、もし時間ができれば行きたいなと個人的に思っています。

 さて、その彼の新作『イフ・ザ・ワールド・ワズ・ユー』(SICP-2130 国内盤ボーナス・トラック1曲追加 紙ジャケット仕様 \2,520)。
 ボズ・スキャッグスの新作と同じくジャジーな仕上がりの1枚で、正直言えばもうちょっとAOR/ウエスト・コースト的な雰囲気だったらよかったのになあ、と思ってしまうのですが、1曲目「I'll Be Here At Closing Time」(邦題:閉店時間に僕は)は、彼らしいメロウかつ切ないスロー・ナンバーでいいですね。
 来日公演では「Last In Love」などもやってくれるのでしょうか? 期待と不安が半々といったところです。森 陽馬

2009年1月27日(火) 坂本 龍一 「After All」

 昨年3月に発売されていたHASYMOのライヴDVD『HAS/YMO』(RZBM-45824 \6,825)。マスターの問題による映像と音のズレにより回収&交となったそうです。(それにしてもcommmonsレーベルのWEBサイトはクールなデザインながら相変わらず閲覧しにくいですね・・・)

 そのDVDに関しては発売当初からお客様より問い合わせがあって、メーカーにも様々な方面からクレームがきていたようなのですがやっと回収&交換。この10ヶ月の間に購入された方で、インターネットをやらない方(やっていてもcommmonsのHPを見ない方)は返品交換に気付かない可能性が高いので、ちょっと処理が遅すぎたような気がします。
 もしお持ちの方がいらっしゃったら、上記commmonsのサイトに返送先や問い合わせ先が記されていますのでご参照ください。

 さて、そのcommmonsからのリリースではないのですが、1987年発表坂本龍一の人気作『NEO GEO』が限定紙ジャケット仕様&「Risly」のクリップDVD付&ボーナス・トラック追加で本日入荷。(MHCL-1363 \3,150)

 ビル・ラズウェルとの共同プロデュースで、坂本龍一らしいピアノの美しいメロディーと沖縄・バリの民族的アジアン・テイストな楽曲が合わさった1枚。イギー・ポップがヴォーカルをとりシングル・カットもされた「Risky」の別ヴァージョンとインスト・ヴァージョンがボーナス・トラックで追加されそれも聴きものですが、アンビエントで心地良い余韻を残すG「After All」が個人的には気に入っています。
 現在のHASYMOの編成でセルフ・カヴァーしたら、絶対にいい感じになりそうな気がするのですがどうでしょうかね。森 陽馬

2009年1月28日(水) ベン・クウェラー 「Old Hat」

 誰が言ったか“世界三大ベン”の一人、テキサス出身のシンガー・ソングライター、ベン・クウェラー君が2年半ぶりに4枚目となる新作(『Changing Horses』 DDCB-12240 \2,310)をリリースしました。
(ちなみに残りの2人はベン・フォールズ、ベン・リーで、この3人でザ・ベンズというユニットを組んだ事も。)
 
 10代から活動しグランジやマシュー・スウィート直系のパワーポップ・ソングも沢山歌ってきた彼ですが、今作『Changing Horses』は現在27歳くらいになった彼が自身のルーツの一つであるカントリー・ロックに取り組んだ一枚。
 これまでのアルバムにもそういう類の曲は数曲含まれていましたが、今回はいつもより落ち着いた雰囲気です。スティール・ギターなど郷愁を誘うサウンドもなかなか良くて、シンプルで聴きやすいアルバムです。
 特別歌の上手いシンガーではないですが、少年ぽさの残る淡々とした歌い口も好きになるとなんだか魅力的です。

 マルチ・プレイヤーでもある彼、アルバムのほとんどの演奏を一人でやっているそう。彼の原点が詰まった、まったりのんびりと聴ける一枚です。東尾沙紀

2009年1月29日(木) クリス・デュアーテ&ブルーストーン・カンパニー 「Back In Town」

 最近骨のあるブルース・ロックを聴いていない!、とお嘆きの方。これは男汁あふれるかっこいい1枚で激オススメ。(クリス・デュアーテ&ブルーストーン・カンパニー 『396』 PCD-24213 \2,520)

 クリス・デュアーテは、1994年にメジャー・デビューしたテキサス出身のブルース・ギタリスト&ヴォーカリスト。スティーヴィー・レイヴォーンのスタイルを踏襲している、と言われるそのギターは豪放かつかっこいいフレーズ連発でとにかく最高! 歌もテキサス魂が炸裂!(と書くと、僕はテリー・ファンクを思い出してしまいます・・・)していてイイっすね。

 その彼の良さをより引き立てているのがなんといってもブルーストーン・カンパニーによる熱い演奏。元々ジャムっぽい魅力を持った彼らにしては比較的まとまった感じの演奏なのかもしれませんが、クリスの良さをガンガン引き出して、更に住友俊洋(G)によるデュアン・オールマン的スライド・ギターが堪らなく絶妙。聴きものです。

 現在ツアー中で、東京近郊では1/31(土)目黒BLUES ALLEY JAPAN、2月1日(日)横浜Thumbs Upにてライヴがあります。(行きたいんだけれどその日僕休めないんですよね・・・残念!) 気になった方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

2009年1月30日(金) chocolatre 「メアリー」

 サザンオールスターズ、ポルノグラフィティ、福山雅治ほか、最近ではフランプール、Perfume等が所属していることで知られる音楽・芸能事務所“アミューズ”。
 レーベルとしては以前まで映像関連ソフトのリリースが多かったのですが、ここ数年CDも頻繁にリリースするようになりました。(昨年はフランプール、パリスマッチ、テレサ・ブライトの新作などが発売)

 そのアミューズから先日1月21日発売されたショコラトルというユニットのCD『コピ・ルアック』(ASCM-6042 \1,500)。これがすごくポップなアルバムで、クラムボン、aiko、パリスマッチなどの女性ヴォーカル好きの方に大推薦したい1枚でした。

 “ショコラトル”は女性ヴォーカルあずとマーシー(B)&只熊良介(Dr)による3人組ユニット。aikoの声色を更に甘くウィスパー&ハスキーにした感じの歌声に、カーディガンズを彷彿とさせるようなスウェーディッシュ・ポップ的楽曲が心地良くブレンド。特に1曲目「メアリー」の弾むようなピアノのリズムが絶品!です。

 この作品が素晴らしいのは彼ら3人のポップ・センスの高さもあると思いますが、パリスマッチの杉山洋介がプロデュースを担当していることも大きいと思います。楽曲の端々にパリスマッチ的なフレーズが出てきたりして、派手さはないものの上品な演奏のアレンジは本当に素晴らしい! 良質なポップ・ソング6曲が気持ちいい作品です。森 陽馬

2009年1月31日(土) イーグルス 「How Long」

 2009年、早くも1ヶ月が経ってしまいました。早いものです。
 月の締めながら、箸休めとして先日見に行った<J.Dサウザー at Billboard Live Tokyo>のレポート&感想を申し上げることにしましょう。

 僕が見に行った回は半分〜3分の2くらいのやや寂しい客入り。(カーラ・ボノフの時よりは入っていたかも)
 ビルボード・ライヴにしては入場料が安かったので予想はしていましたが、バック・ミュージシャンはついておらず、J.D.サウザー1人によるギター&ピアノ弾語りスタイルでのライヴでした。

 彼の風貌は最新作ジャケットと同様髭はなく、太ってはいないもののかなり老けてしまった印象を受けました。ピアノでも何曲かやりましたが基本的にはギターの弾き語りで、淡々と最新作及び昔の作品の曲をやっていきます。
 元々そこまでギターテクニックに定評がある人ではないので、サイド・ギタリストを付けてもっと歌に集中させてあげたいな、と思える場面が結構ありました。約1時間半の地味なステージ、歌声自体にそれほど衰えは感じませんでしたが、やはりバック・バンドがついたかたちでも聴いてみたかったですね。

 ・・・と、不満ばかり書いてしまいましたが、昔から彼の曲に親しんできた方ならほのぼのと楽しめたのではないでしょうか。彼自身の代表曲「ユア・オンリー・ロンリー」はもちろん、イーグルスの人気曲「ニュー・キッド・イン・タウン」、アンコールで歌ったイーグルス「ベスト・オブ・マイ・ラヴ」をやった時はさすがに場内も盛り上がっていました。(ちなみにどちらもJ.Dが曲作りに絡んでいます)

 個人的にはイーグルスの最新作に収録されているJ.D.サウザー作「How Long」のセルフ・カヴァーを聴けたのが嬉しかったですね。
 開始15分後くらいに客席からリクエストで「How Long!」と声がかかった時は、J.Dが腕時計を見て「About 15 minites」なんてジョークではぐらかしていましたが、ショーの中盤でいきなりやってくれました。手拍子も起こって拍手も一番大きかったような気がします。

 ちなみにイーグルスの方は、今年3月から全米ツアー、6月からヨーロッパ・ツアーが組まれています。秋くらいに来日して、イーグルス・ヴァージョンの「How Long」も生で聴けるといいんだけれどなあー。森 陽馬

★掲載ジャケットはイーグルスの2007年発表作、今のところの最新アルバム『Long Road Out Of Eden』。3,800円で出ていましたが3月4日2,980円に値段が下がって再発になるようです。





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