PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2009月3月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2009年3月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2009年3月1日(日) キース・ジャレット 「マイ・バック・ペイジズ」

 キース・ジャレットの名前を知ったのはこの曲が収録されているアルバム『サムホエア・ビフォー』(WPCR-75354 \1,800)がちょうど発売された1969年でした。

 渋谷百軒店周辺の道玄坂小路(“フレッシュ・ベーカリー”というとても美味しいパン屋さんもあった道玄坂から東急本店側に抜けられる細い道です)にあったジャズ喫茶<デュエット>で聴いたのが初めてだったと思います。

 まだ高校生だったので、普段はビルボードのチャートに登場してくるような洋楽ポップスばかり聴いていましたが、友人に誘われるがままに<デュエット>を訪れ、その後一人でもちょくちょく通うようになっていました。ちょっと大人になった気分で、何か考え事をしたい時はジャズを聴こうなんて思っていたんでしょうか・・・。

そんなある日、店内で流れてきたのがこの「マイ・バック・ペイジズ」でした。
 どこかで聴いたことあるメロディーと思っていたら、バーズがやっていたボブ・ディランの曲だということが後でわかりました。あの曲がこんな感じになるんだなあ、と感心した記憶が残っています。

 チャーリー・ヘイデンのベース・ソロから始まり、キース・ジャレットの原曲のメロディーを残しつつも、自由な発想による繊細なタッチのピアノ・プレイは、発表から40年経つ現在でも瑞々しい響きに満ちています。森 勉

2009年3月2日(月) 畠山美由紀 「罌粟」

 様々なアーティストのプロデュースを手掛け、今や“日本のバート・バカラック”と評されている名ミュージシャン、冨田ラボ(冨田恵一)の久々となる新作が4月1日に発売が決定したようです。(『Colps De Ballet/バレリーナ』 両A面シングル RZCD-46167 \1,050)
 特に「バレリーナ」はキリンジをfeatした楽曲のようで今から楽しみ。最近のキリンジの作品も良いのですが、やはり「エイリアンズ」を筆頭に冨田恵一さんが絡んだ曲が印象深いので、久々の再合体に期待大です。

 冨田恵一さんが関わっている楽曲で他にもいい曲がたくさんありますが、最近“これは名曲だ”と再認識したのが今日のこの曲。畠山美由紀さん2003年発表アルバム『WILD AND GENTLE』(BFCA-84004 \3,000)に収録されている「罌粟」(けし)。

 作詞をあの松本隆が担当。その独特な世界観を冨田恵一さんによる穏やかかつ雄大なストリングス・アレンジで包み込んでおり、“冨田恵一ワークス”の中でも確実にベスト10に入る秀曲。
 ちなみにシングル・カットなどはされていないため、カヴァーはまだ誰にもされていないのですが、大貫妙子さんの歌で聴いてみたいな、と個人的に思っています。森 陽馬

2009年3月3日(火)SANDII + BUN 「うれしいひなまつり」

 今これを書いているのは3日夜24時。みぞれ混じりの雪がかなり降っています。積もりそうなタイプの雪ではないのですが、ひなまつりの日に雪というのも珍しいですね。今年東京ではほとんど雪が降らなかったので、寒いのは困りものですが、3月に雪を眺めるというのもたまにはいいものです。

 さて、そんな日本的な風情を感じながら聴くのにピッタリなアルバムが本日入荷。坂本龍一が総合監修した人気シリーズ第3弾『にほんのうた 第三集』(RZCM-46136 \3,150)。

 三波春夫+コーネリアス、キリンジ、大貫妙子などが参加した『第一集』、穏やかなアン・サリー+ハンズ・オブ・クリエイションがあると思いきや遠藤賢司「黄金虫」が超強烈だった『第二集』と、どちらも評判が良かったのですが、今作『第三集』は全体的な統一感もあって更にいい感じ。

 小川美潮「花のまち」から始まり、ううあ(UA)「春が来た」、曽我部恵一「荒城の月」、ムッシュかまやつ+竹村延和「春の小川」、吉田美奈子「早春賦」など全11曲。意外なとことではショーン・レノン「櫻」、あとラストに収録されている浜田真理子「春の唄」が良かったですね。

 今日はひなまつりということでこの曲を選びましたが、これが面白い不思議なアレンジ。ハワイ/フラ・ダンサーとして今なお活躍中のサンディーと、KOH-TAOという一人ユニットで多国籍エスニック・サウンドを志向しているBUNによるコラボレートで、カリンバを用いた“スピリチュアル・エスニックひなまつり”を聴かせてくれます。森 陽馬

2009年3月4日(水) Vince Taylor 「Brand New Cadillc」

 全身黒、皮の手袋に、でっかいネックレスにリーゼントがバシッときまってる、見るからにワルなイギリスのロックンローラー、ヴィンス・テイラーの新しいベスト盤がAceからリリースされました。(『Jet Black Leather Machine』 ACE CDCHD-1213 \2,280)

 50年代後半から年代順に、「Sweet Little Sixteen」、「Long Tall Sally」、「Hi Heel Sneaker」、「Twenty Flight Rock」他カバーを含む、Parlophoneなど4つのレーベルから全22曲が収録されています。

 1曲目はクラッシュ・ファンにはお馴染み『ロンドン・コーリング』の中で彼らがカバーしている「Brand New Cadillac」。
 「おお、この人がオリジナルだったのか!」と初めて知り聴いてみましたが、聴き慣れているせいかクラッシュの方がかっこいいなと思ってしまいました(笑)。

 動く彼も見たいとyoutubeを検索してみると結構色々あって、バイクにまたがって歌ったり、腰をクネクネして踊り歌ったり、まさに当時の不良といった佇まい。“ちょっと頼りないエルヴィス”のようですが、そのスタイルは当時のイギリスの若者や日本のミュージシャンにも多大な影響を与えているのだなと知りました。
 シャウトあり、バラードあり。Mojoのジャーナリストによるライナーノーツや写真も掲載したブックレットも充実しています。東尾沙紀

2009年3月5日(木) LISA 「Moon Song」(桑田佳祐「月」のカヴァー)

“スウェーデンの歌姫リーサが桑田佳祐の名曲群を英語カヴァー!”

注文書でこれを読んだときは、「えてしてこういう企画のアルバムはつまらない作品なんだよな・・・」と想像していたのですが、発売されたこのCDを聴いて完成度の高さにビックリ! 全体的に上品なアレンジで、嫌味のない彼女の美声も素晴らしい力作でした。

 この企画決定後、LISAは桑田佳祐の楽曲約100曲をわざわざ取寄せ全曲耳を通し、自分自身に語りかけてくるようなメロディラインの曲をセレクト。11曲に絞りこんでから、原曲の英語直訳詞を読み、それを踏まえた上で自分なりの英語詞を付け加えていったそうです。

 そして何よりバックの演奏が素晴らしい。打ち込みはほとんどなく生演奏主体の音はとってもエレガント。JAZZYなアレンジと桑田佳祐ポップ・フィーリングが相まった極上の仕上がりなので、桑田佳祐を聴かない女性ヴォーカル好きの方にもオススメできる1枚です。

 今日のこの1曲は個人的にも大好きな「月」のカヴァー。エリック・クラプトン『アンプラグド』に収録されていた「Old Love」を意識したようなアレンジですね。
 ちなみに他の楽曲も粒揃いで、B「No Maybes」(明日晴れるかな)、D「Lovers Again」(風の詞を聴かせて)ではなんと、あのデヴィッド・フォスターが参加。ピアノを弾いています。森 陽馬

2009年3月6日(金) Jorge Dalto & Super Friends 「Poinciana」

 ホルヘ・ダルトという名前は知らなくても、ジャズ/フュージョン好きの方なら、“ジョージ・ベンソン『ブリージン』でキーボード&エレピを弾いていた人”といえばわかるのではないでしょうか。

 ディスクガイド本『FUSION』でも紹介されていながら、近年はずっとCDが出ていなかった名作、ホルヘ・ダルト&スーパー・フレンズ『ランデブー』が遂にやっとCDで発売されました。(QIAG-70002 \1,980)

 今作は1983年発表の日本制作盤(録音はニューヨーク)で、ジャケットは山下達郎『FOR YOU』などで知られるイラストレーター鈴木英人氏によるもの。
 ホルヘ・ダルト&“スーパー・フレンズ”という名義になっている通り、バックのミュージシャンが超豪華で、ジョージ・ベンソンはもちろん、デヴィッド・サンボーン、スティーヴ・ガッド、アンソニー・ジャクソン、エリック・ゲイル他凄腕達が軒並み参加。83年作ながら70年代的なアレンジなので、ジョー・サンプル『虹の楽園』&『カーメル』、ベンソン『ブリージン』あたりがお好きな方には超オススメの1枚ですね。

 特にA「ポインシアナ」はジョージ・ベンソンのギターが最初から最後まで全面にフィーチャーされており、まさに心地良い“ブリージン”な1曲。
 ちなみに今作は彼の2ndアルバムで、76年発表1st『CHENERE』、84年発表3rd『NEW YORK NIGHTLINE』も同時再発。こちらもオススメです。森 陽馬

2009年3月7日(土) サカナクション 「三日月サンセット」

 大ブレイク寸前の札幌出身バンド、サカナクションのライヴ“SAKANAQUARIUM 2009”at 赤坂ブリッツ を見てきました。

 いやー、凄いですね。ガンガン前に進んでいく勢いに圧倒されっぱなしの2時間。今まで彼らを、“エレクトロニカ・ダンス・ポップ・バンド”と称していたこともあったのですが、その考えを改めなければいけないほど、ポップな楽曲をグルーヴィーなロック・サウンドに昇華させていて、CDとはまた全然違ったライヴ・アレンジがとてもかっこよかったです。

 そのグルーヴ感を生み出しているのは、女性ベーシスト草刈愛美によるところが大きいでしょう。先日ジェフ・ベックのライヴで見た若き女性ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドにもビックリしましたが、彼女の存在感とベース・ラインにも強烈な印象を受けました。

 MCで彼らも言っていましたが、J-POP(エンターテイメント・ミュージック)とアンダーグラウンド・ミュージックの狭間を縫うようにアクションしていって、これからもポップなイイ曲を書いていって欲しいです。
 なお、今日のこの1曲「三日月サンセット」は2007年発表の1st『Go To The Future』(VICB-60023 \1,500)に収録。CDで聴いた時はエレクトロニカ的要素を強く感じましたが、ライヴで聴くと超ポップで、一体感あるバンド・サウンドも素晴らしいものがありました。森 陽馬

2009年3月8日(日) Jelly Beans 「How Fine Can One Guy Be」

 雛祭りは過ぎてしまいましたが、女の子の節句に合わせたような60's良質ガール・ポップスを集めたコンピが出ました。『Where The Girls Are Vol.7』がそれです。(ACE CDCHD-1218)
 1997年にVol.1が出て以来、<ヒットしていないのにこんなにイイ曲ありました>をコンセプトにしたACEレーベルの隠れたベストセラー・シリーズです。

 今回は1962年から1967年までの全26曲。そのうちなんと!7曲が未発表音源というレア度が増した編集になっています。
 ユートピアズ、ジッパーズ、パフズ、スパークールズなど、なじみのない名前が多いのですが、内容は60'sポップス好きの方にはたまらないものばかりです。
 ソングライター・ファンとしては、バリーマン&シンシア・ワイル、ヘレン・ミラー&ハワード・グリーンフィールド、トニー・ハッチ作品も気になるところです。

 今日は3曲目に収録されているジェリー・ビーンズの未発表ものを。
 プロデュース、アレンジ&コンポーズはエリー・グリニッチ&ジェフ・バリー! 1964年にレッドバード・レーベルより「アイ・ウォナ・ラヴ・ヒム・ソー・バッド」、「ベイビー・ビー・マイン」のヒットを出した彼女たちのアルバム用にその当時録音されながら、結局アルバム自体がお蔵入りになってしまったために発表されなかった曲のようです。
 エリー&ジェフ作品らしい、♪ランデラン♪コーラスが入ったいい曲です。森 勉

2009年3月9日(月) Michiluca 「ミチルカ」

 邦楽女性ヴォーカルもので、今オススメしているのが“ミチルカ”というユニット。

 2004年にモプシー・フロプシーというユニット名で活動開始。2006年と2007年にmona recordからミニ・アルバムを発表しどちらも素晴らしい出来だったのでこのコーナーでも取り上げたことがありましたが、昨年“Michiluca”と改名しこの度アルバム『ミチルカ』を発表しました。(UVCA-2001 \1,890)

 女性ヴォーカル和津実さんの歌声はクラムボンの原田郁子似。アコースティックなサウンドを基調にしながらもグルーヴィーな演奏も聴きどころで、ジャズ、ボッサ、ソウルフルな魅力を開放感あるポップな楽曲に昇華させています。これからの季節にピッタリ合いそうな1枚。

 アルバムのラスト6曲目、ユニット名をタイトルにした曲「ミチルカ」はなんとなく曲の雰囲気がクラムボンに似ていますね。オレンジペコーがお好きだった方にもオススメです。森 陽馬

2009年3月10日(火)Mark Olson & Gary Louris 「Bicycle」

 ニール・ヤングの魂、アメリカン・ロックの良心を受け継いでいる名バンド、ジェイホークス。90年代に発表した名作『 Tomorrow The Green Grass』以降、ヴォーカリストのマーク・オルソンが脱退してしまい、その後はゲイリー・ルーリスが中心となってジェイホークスは活動していましたが、この度二人が奇跡の再合体! マーク・オルソン&ゲイリー・ルーリス名義でCDを出してくれました。

 ジェイホークス・ファンの僕にとっては本当に待望の1枚。マーク・オルソンが脱退した後のジェイホークスのアルバムもいい作品があるのですが、やはりこの二人によるツイン・ヴォーカルが沁みますね。

 収録曲はすべて二人の共作による全15曲。アルバム全体的にアコースティック・ギターを基調にしたサウンドで、ジェイホークスよりもやや枯れた雰囲気ではありますが、この二人らしいメロディ・ライン&コーラスは健在。2曲目「Bycycle」は往年のジェイホークスを彷彿とさせるいい曲。あと4曲目に収録された 「Saturday Morning On Sunday Street」なんかはサイモン&ガーファンクルみたいな1曲ですね。他にもイイ曲たくさんあるのでしばらくはこれがヘビーローテーションになりそうです。

 ちなみにジェイホークス名義ではオリジナル・アルバムを2003年『Rainy Day Music』以降出していないので、マーク・オルソンに再加入してもらって、是非また素晴らしい作品を作ってもらいたいものです。森 陽

2009年3月11日(水) SIJI 「Irinajo」

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、盛り上がってますね。
 ついつい僕もマクドナルドでセットを購入しWBCクリアファイルをゲット。8種あるうち松坂か小笠原がいいかな、と思っていたのですが、選手集合2でしたね。(ファイルはランダムで配布されるので選べないのです。後々に今大会の注目選手がわかるのでこれはこれでまあ良いのかも)

 さて、WBCとは特に関係ないのですが、ワールド・ミュージックで最近気に入ってよく店頭でかけているのが、SIJI(シージー)というナイジェリア出身のミュージシャンによる新作2ndアルバム『AdeSiji』(PCD-93217 \2,415)

 見た目やナイジェリア生まれということからアフロ・ファンクっぽいのかな、と思いきや、洗練されたクールなCLUBサウンド、ブラジリアンなリズム、そしてソウルフルな歌声がかっこよくて、ワールド・ミュージックにあまり馴染みのない方でも聴きやすい1枚に仕上がっています。

 最近のR&B的な楽曲や、シンガーソングライターとしてじっくり聴かせるナンバーも収められていますが、ファンキーな演奏&ホーンがヨルバ語で歌われるソウルフルな歌声と合わさってかっこいい10曲目「Irinajo」がやっぱりいいですね。
 “ハイブリッド・クロスオーヴァー・アフト・ソウル” おすすめの1枚です。森 陽馬

2009年3月12日(木) バートン・クレーン 「月を眺めよ」

 本日レコード・コレクターズ誌の最新号(2009年4月号 アイランド・レコード特集)が入荷。

 今号が出るのを楽しみにしていたのですがそれは何故かというと、この号の好評連載『レコード・コレクター紳士録』に、当店地下にあるライヴカフェ・アゲインの店主、石川茂樹さんが紹介されているからです。
 大滝詠一さんとの縁や当店ペット・サウンズ・レコード店の話も出てきますので、是非ご覧になってみてくださいね。

 その石川茂樹さんが自費制作したのがバートン・クレーンのCD(『バートン・クレーン作品集』 NEACH-123 \2,000)。
 昭和初期(1931年録音!)、バートンさんは当時はジャーナリストとして来日していたそうですが、変な日本語で歌う独特な彼の歌は今聴いても新鮮で面白いですね。石川さんの音楽への熱意・愛情が伝わってくるブックレット・解説も読み応えがあって素晴らしい1枚です。森 陽馬

2009年3月13日(金) Ron Davies 「You Come, Call On Me」 

レコード・コレクターズ誌の先々月号(2009年2月号 2008リイシューベスト)、122ページで特集されている“ヴェテラン・シンガー・ソングライターたちによる2008年の新作アルバムの充実ぶりをふり返る”(文・宇田和弘氏)。

 ここで取り上げられているロン・デイヴィスの遺作が気になったのでオーダーして聴いてみましたが、これが本当に素晴らしい! アメリカン・ルーツ・ロック/シンガー・ソングライター作品今年のベスト3に入れたいくらい沁みる名作でした。

 ロン・デイヴィスはルイジアナ生まれ・Pacific Northwest育ちのシンガー・ソングライター。70年代に発表した『U.F.O』、『サイレント・ソング』というアルバムはシンガー・ソングライター・マニアの間でも評判の高い作品ですが、2003年にナッシュビルで録音されたこの遺作『Where Does The Time Go』(輸入CD LC-RD-1 \2,280)は、その70年代のアルバムを凌ぐくらい滋味深い1枚に仕上がっています。

 派手さはないもの全10曲暖かみが伝わるイイ曲、音と音のすき間が心地良いアコースティックを基調にした演奏、味わいある彼の歌声、絶妙のユルさ、どれもがサジ加減抜群!極上の音感です。

 ダン・ペンやリック・ダンコの遺作などが気に入っている方、アメリカン・ルーツ・ロック好きの方は必聴のアルバムですよ。森 陽馬

2009年3月14日(土) Beach Boys 「Keep An Eye On Summer」

 おかげさまでペット・サウンズ・レコードも新しい店舗になってから3月15日で2周年を迎えることになります。(トータルすると1981年4月オープンから28年になります。)

 いつも御愛顧いただいているお客様のおかげと感謝しております。ありがとうございます。

 ということで、毎月20日に当店地下アゲインで行なっている、僕の好きな曲をかけまくり、勝手なことをしゃべるDJイベント『気まぐれ音楽寄席』も、3月20日(金・祝)はスペシャル! オクラホマ・プレイリーズをゲストにお招きして、難易度の高いビーチ・ボーイズのハーモニーをライヴで再現してもらう予定です。もしかしたら、こんなマニアックな曲もやってくれるかも・・・。

 予約問い合わせなどくわしいことは、アゲインまでよろしくお願いいたします。森 勉

★掲載ジャケットは64年発表『Shut Down Vol.2』。

★なお新店舗2周年記念として、1,000円以上お買い上げの方に当店オリジナル・ハンド・タオルをプレゼント中! 数に限りがございますので、なくなり次第終了となります。御一人様一つとさせていただきますがご了承くださいませ。

2009年3月15日(日) ウーター・ヘメル 「march, april, may」

 2007年のデビュー作が世界的にヒットし、日本でも美形ゆえ特に女性に人気がある...というイメージがある32歳のオランダ出身シンガー、ウーター・へメル。

 2枚目となる新作(『ノーバーディーズ・チューン』 BSCJ-30117 \2,415)は前作に引き続きオランダ気鋭のプロデューサー、ベニー・シングスがプロデュース。(自身でもアルバムを数枚リリースし、最近だとジョヴァンカという女性シンガーをプロデュースした注目の男性ミュージシャンです) 作詞・作曲は全てウーターが手掛けています。

 前作のヒットに伴い、レコード会社からはカバー・アルバムを出しては?と提案されたそうですが、今作品のタイトル&表題曲「ノーバディーズ・チューン」の歌詞に、
 ♪僕は誰にも左右されない 僕だけの歌を歌うんだ♪
と、甘めの恋の歌が多い中、その曲には彼の強い意志が表われています。

 ジャズ・シンガーとして紹介されているのをよくみますが、ジャジーな曲にポップス、AOR、シンガーソングライター的要素を盛り込んだ、形に捉われない曲作りがされています。彼の優しく穏やかなヴォーカルを引き立たせるポップス・ファンのツボをついたアレンジ(ちょっとソフトロックっぽいものもあったり)もグーです。

 今日の1曲はタイトルで選んだところもありますが、雨が上がった後の爽やかさを連想させるポップ・ソング。「Tiny Town」という曲もお気に入りです。日本盤にはボーナストラックが3曲追加収録されています。東尾沙

2009年3月16日(月) アン・サリー 「Someday」 

 最近ご来店いただいた方ならご存知だと思いますが、当店及び武蔵小山駅周辺は現在大工事中。店の前にはバスも乗り入れするようなロータリーができる計画で、本来なら今月中に完成する予定だったそうですが、結局1ヶ月遅れとのこと。ただゴールデン・ウィークまでには間に合わせなければいけない大人の事情があるとかで、現在急ピッチで工事が進んでいます。

 そのため、昼も夜も関係なく歩道規制や大きな音が出るような工事(東急側の工事と、品川区側の開発工事と、電気・水道工事とがゴチャゴチャ状態)が頻繁に行なわれていて、日によっては静かな音楽だと店内でも聴こえない始末。困ったものです。

 ただ不思議と昨日・本日は終日音が出る工事は行なわれていなかったので、このCDを春の陽射しと共に心地良く店内で聴くことができました。(『雪と花の子守唄 バカラック・ララバイ集』 LRTCD-32 \2,940)

 大ロングセラー&大好評だったビートルズ子守唄カヴァー集『りんごの子守唄』関連の新シリーズで、今回はバート・バカラックの名曲を子守唄的静かなアレンジでカヴァーした好企画盤。
 羊毛とおはなでブレイク中の千葉はな、人気女性シンガー、コトリンゴや土岐麻子、歌だけでなくギターも素晴らしいおおはた雄一にサイゲンジなどのミュージシャンが美しい旋律のバカラック・ナンバーをやさしいアレンジでカヴァーしています。もちろんプロデュースは鈴木惣一郎氏。

 元々原曲がイイ曲なのでどれも良かったのですが、一番のサプライズ&感動はラストに収録されているアン・サリーが歌う「Someday」という曲。この楽曲はバカラックの未発表曲だそうです!
 穏やかながらも切ない雰囲気を持っていて、エルヴィス・コステロとの共作で話題となった後期名盤『ペインテッド・フロム・メアリー』収録曲に似たメロディーの楽曲ですね。コステロが歌っても合いそうな感じ。

 それにしてもアン・サリーの歌声は本当に素晴らしい! この1曲だけでも買う価値ある1枚ですよ。森 陽馬

2009年3月17日(火) 小坂 忠 「セルフィッシュ」

・ボブ・ディランが新作を4月下旬に発売することが決定
・ニール・ヤングは3月31日に新作(!)を発売
・アラン・トゥーサンが4月下旬に新作発売
と、4月はベテラン・シンガーの新作が続々と出るようです。楽しみですね。

 さてそれに先駆けて、還暦になった小坂忠さんの新作『コネクテッド』(VIZL-325 初回DVD付 \3,600)が本日入荷。2001年に発表した『People』以来約8年ぶりとなるオリジナル・アルバムですが、やっぱり忠さんの歌声はいいですね。
 現在は本業が牧師さんということもあり、ソウルフルな力強さの中に暖かみがあって、70年代名作『ほうろう』から更に、歌声に深みが増している印象です。

 今作は佐橋佳幸プロデュースで、小原礼(ベース)、高橋幸宏(ドラム)、Dr.Kyon(キーボード)が中心にバックを担当。さながら、“小坂忠withサディスティック・ミカ・バンド”というような布陣ですが、サウンドはミカ・バンドとはまた全然違って、ソウルフルな温もりある音感が心地良く沁みてきます。

 楽曲は小坂忠さんのオリジナル曲以外に、佐橋佳幸、佐野元春、小原礼、高野寛&細野晴臣、スキマスイッチの大橋卓弥、Dr.Kyonなどが手掛けており、どの曲も忠さんの“良心”を引き出していて気に入っていますが、H「セルフィッシュ」が特に好きですね。
 この曲、なんか山下達郎っぽい雰囲気だな、と思っているのですがいかがでしょうか? 佐橋佳幸が書いた曲・詞だからかもしれませんが、達郎さんにも是非歌ってみて欲しい1曲です。森 陽馬

2009年3月18日(水) Stanley Clarke 「Journey To Love」〜「Hello Jeff」

 先月さいたまスーパーアリーナで行なわれたジェフ・ベック&エリック・クラプトンの競演コンサート、WOWOWでこの前放映されたそうですね。

 WOWOW未加入なので残念ながら映像見ていないのですが、ご覧になった方いかがでしたでしょうか。まあ契約の問題など色々とあるのでしょうが、こういうライヴ映像が地上波で放映されたら、新しい音楽ファンができてくれると思うんですけれどね。NHKなんかは昔の洋楽の貴重映像がたくさん残っていると思うので、是非定期的に地上波で色々と蔵出ししてもらいたいものです。

 さて、来日公演以来個人的にもジェフ・ベック株が急騰中で、今更ながらジェフ・ベック関連の音源を色々と聴いているのですが、このスタンリー・クラークの1975年作『Journey To Love』(EK 36974 \990)もジェフ・ベックが参加している1枚。

 スタンリー・クラークは1970年代から活躍している黒人ジャズ・ベーシスト。チック・コリアの名作『リターン・トゥ・フォーエヴァー』でベースを弾いているのもこの人です。
 そのスタンリー・クラークが1975年に発表したリーダー作がこの名作で、2曲目「Journey To Love」(タイトルもいいですね。美しい1曲)、3曲目「Hello Jeff」(ドラムはレニー・ホワイト。これは完全にロックな1曲ですね)にジェフ・ベックが参加。彼らしい流麗なギター・ソロを弾いています。森 陽馬

2009年3月19日(木) 山下 達郎 「幸せにさよなら」

 今年もナイアガラ記念日の3月21日がもうすぐやってきます。(勝手に制定してしまっています。)
 2009年の出し物はかねてからのインフォメーション通り、山下達郎がナイアガラ・レーベルに残した楽曲を集めた『TATSURO from NIAGARA』(SRCL-5010 \2,100)。

 シュガー・ベイブ『ソングス』と『ナイアガラ・トライアングルVOL.1』のアルバムから山下達郎が歌っている楽曲を集めたものなので、その2枚を持っていればOK、と思いがちですが・・・。<ナイアガラ・リリースに同じものなし>という格言があるようにヴァージョン違いの曲も入っています。

 ということで、今回一番の目玉は「幸せにさよなら」の山下達郎リード・ヴォーカル・ヴァージョン。作者である伊藤銀次、及び大滝詠一&伊藤銀次&山下達郎が交互に歌うヴァージョンは発表されていましたが、山下ヴァージョンは本邦初! 自分の曲でなく歌入れも何回もトライできなかったというハンデはありますが、なんともいい雰囲気を伝えてくれるヴァージョンです。今から33年ほど前の若い達郎の未発表! よくぞ発表してくれました。

 ただ、サビの部分は始めから伊藤銀次ひとりが歌うアレンジのため、全編達郎がひとりで歌っているわけではありませんのであしからず。
 そう、バックの演奏も前のヴァージョンと違いますので、お聴き漏らしのないように。森 勉

★『タツロー・フロム・ナイアガラ』、3月21日発売ですが本日入荷しました。当店のみの特典もご用意しております。

2009年3月20日(金) 小坂 忠 「はぐれ雲」

 先日も取り上げた小坂忠さんの新作『コネクテッド』(初回 VIZL-325 \3,600)。個人的にはすごく気に入っていてこればっかり聴いています。

 しかしながら、ミュージック・マガジン最新号(2009年4月号)に掲載されているディスクレビューでは、このアルバムがけちょんけちょんに酷評。人それぞれ色々な聴き方があるものだな、と思いましたが、忠さんのこの作品を応援する意味でももう一度ここで取り上げることにしました。

 たしかに1975年発表『ほうろう』は素晴らしい名作で、今作でもそれを彷彿とさせる楽曲もあり引き合いに出したくなる気持ちもわかるのですが、この新作は根本的な意味合いで『ほうろう』とは全く違うアルバムであって、比較して語られるべきではないと僕は思います。

 音楽の楽しみ方は十人十色で、<音楽を理論的に解析して聴くこと/演奏・歌詞の整合性などを踏まえ音楽を質ではかること>もその一つかもしれません。ただ、その音楽を作り出したミュージシャンの人生を享受することによって得られる感動も、音楽を聴く上での大きな楽しみであるはずです。(ブライアン・ウィルソン、ポール・マッカートニー、ボブ・ディラン、ニール・ヤング他ベテラン・アーティストの新作が世間的に支持されているのもそういう音楽の楽しみ方があるからでしょう。)

 あえて『ほうろう』と比較するならば、聴き手に与える感動の質が34年前の作品と今作とでは全く異なるアルバムだ、といえるかもしれませんね。
 『ほうろう』後、娘さんの火傷&治癒を境に牧師さんになり、様々な遍歴を経て2001年久々に細野さんプロデュースで『PEOPLE』を発表→8年を経て久々にこの『コネクテッド』を発売、そして現在も牧師さんとして毎日のように教会に立っている忠さんの歌声は、より深い滋味を伴って胸に響くのです。

 7曲目「はぐれ雲」は小原礼作詞・作曲のロックン・ロール・ナンバー。歌詞に“Let's Spend The Night Together”、“Sunshine Of Your Love”、“Mr. Tambling Man”、“Strawberry Fields Forever”など音楽ファン馴染みの曲名が散りばめられ、他の人が歌うと陳腐に感じそうなこの曲も、忠さんが歌うからこそ意味を持ってくる、と感じられます。
 全11曲、悪意のない“良心”に包まれた1枚です。森 陽馬

2009年3月21日(土) Raphael Saadiq 「Never Give You Up」

 昨年4/25にこのコーナーで紹介したライアン・ショウ、UKから飛び出した“白いサム・クック”ことイーライ・ペーパーボーイ・リード(10/16に紹介を筆頭に、60〜70's黒人音楽に回帰した新世代ソウルを聴かせる作品が最近続々と出てくるようになりましたが、このラファエル・サーディック(元トニートニートニー)の新作もいい時代の“ソウル”が詰まっている“渋かっこいい”アルバムでした。(『The Way I See It』 SICP-2133 \2,520)

 一聴するだけだと、モータウンの発掘レア音源か?、と思っちゃうくらいスピーカーから響く音の感覚や楽曲、そしてラファエルの歌までも60〜70年代にタイムスリップしてしまったように感じさせられる1枚。しかしながら、全曲ラファエル自身によるオリジナル曲でもちろん最近の録音。ソングライティングの素晴らしさも特筆するものがあります。(ちなみにギター、ベース、ピアノ、ドラムなどの楽器もほぼ全てラファエル自身によるもの)

 デルフォニックスを彷彿とさせるフィリー・ソウル仕立ての極上スウィートH「Oh Girl」もイイ曲ですが、スティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加(!)しているミディアムJ「Never Give You Up」を選出。

 LAに来ていたスティーヴィーにラファエルが直々に電話しレコーディングが実現。曲中ラファエルが「カモン!スティーヴィー!」とふってからスティーヴィーのハーモニカ・ソロという構成は何度聴いてもグッときますね。ホントこれは新世代ソウルを代表する名曲ミディアム・ナンバーでしょう。森 陽馬

2009年3月22日(日) Sam Bostic 「Zodiac Sign」

 昨日紹介したラファエル・サーディックの新作は素晴らしい作品でしたが、このサム・ボスティックのアルバムも新世代ソウル/R&B新作群の中では特筆ものの1枚でした。(『ソウル・スプリーム』 PCD-24221 \2,520)

 サム・ボスティックは90年代中期に活動していたアメリカ/オークランド発ソウル・トリオ“art'n soul”(アーティン・ソウル)のリード・シンガーだった黒人ミュージシャン。最近は他アーティスト作品にちょこちょこ参加するくらいだったようですが、10年以上の時を経てやっとソロ・デビュー・アルバムを発売しました。

 ラファエルの作品に比べると、90年代以降のR&B色が強いかもしれませんが、楽曲は全曲捨て曲無しのミディアム〜スローで固められ、打ち込みはほとんど使わず生演奏中心の音作り。カーティス・メイフィールドが現代に生きていたらこんな作品を作ってくれていたかもしれないな、とも思える極上の仕上がりです。

 特に4曲目「Zodiac Sign」。なんとこの曲ラファエル・サーディックとの共作で、この上なくメロウで切ない極上スウィートR&Bな1曲! イントロのエレクトリック・シタール使いだけでもうメロメロです。彼のファルセット・ヴォイス&コーラスの重ね方もいいですね。
 ディアンジェロ、ジョー、ミュージック・ソウルチャイルドお好きな方、もしくはニーヨから入った最近のR&Bリスナーにも是非聴いてもらいたいおすすめのアルバムです。森 陽馬

2009年3月23日(月) スクイーズ 「クール・フォー・キャッツ」

 『猫ジャケ本』第2弾が出ました。(書籍 ミュージック・マガジン社)
 今回は猫が好きな人達(以外にも?)の間ではとても有名なブサかわ猫のまこちゃんが表紙です。レコードに囲まれちゃって素敵です。
 
 今回も知らないものがたくさん掲載されていましたし、今まで気付かなかったものも色々ありました。(ディランが猫を抱いているのは意識して見てませんでした!)
 
 かわいい猫の写真ではありませんが、自分の好きなグループのジャケットで一枚ありました。スクイーズのセカンド・アルバム『クール・フォー・キャッツ』(POCE-1129 \3,255)。
 タイトルもキャッツです。タイトルと同名曲も彼らのヒット曲となりました。79年という時代もあり、おもいっきりシンセの音が入ったアレンジですが、メロディーは際立ってます。いつかの音楽誌で鈴木慶一さんが俺の100枚にも選ばれていて嬉しかった一枚です。
 
 この『猫ジャケ本』、普段音楽を聴かれない方や贈りもの用に購入していかれる方もいらっしゃいます。これは貰うときっと嬉しいと思います。これから第3弾、第4弾と出るんでしょうか。個人的にはうさジャケ本が出たらいいなと思います。東尾沙紀

★本日の掲載ジャケットはスクイーズではなくて、『猫ジャケ2』の表紙です。

2009年3月24日(火) イントゥルーダーズ 「ラヴ・イズ・ライク・ア・ベースボール・ゲーム」

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、日本チーム優勝おめでとう!

 それにしても決勝戦の日本対韓国は稀にみる素晴らしい試合でした。ハラハラドキドキの緊迫した流れの中、両チームともいいプレイが随所に出て、これぞ世界ナンバーワンを決めるに相応しい戦いを見せてくれました。
 日本が先制しホームランで追いつかれるも勝ち越して2点差としたのに9回土壇場で同点にされる。しかし延長10回用意されたかのようなチャンスに千両役者のイチローが決勝点となる2点タイムリー! シビレましたねぇー、本当に。
 こういう試合でみんなが一番注目しているところでのイチローのタイムリー、僕の中ではあの長嶋・王の数々の勝負強いシーンと同様に一生記憶に残る名場面となりそうです。それにしても韓国も本当にいいチームですね。ひたむきなプレイのひとつひとつに感動しました。

 ということで、今日は野球がテーマの曲を選んでみました。
 フィラデルフィアのソウル・ヴォーカル・グループ、イントゥルーダーズが1968年にスマッシュ・ヒットさせた「ラヴ・イズ・ライク・ア・ベースボール・ゲーム」。(『スーパーヒッツ』 限定紙ジャケ EICP-965 \1,890に収録)
 好きなあの娘を口説いて恋のホームランを狙ったのに、気負いすぎて三振して(フラレて)しまった、というお気楽な歌ですが・・・。
 とにかくも日本チームおめでとう。原監督お疲れ様でした。森 勉

2009年3月25日(水) BIG MAYBELLE 「PITIFUL」

 本日3月25日はアレサ・フランクリンの誕生日。
ということで、アレサがカヴァーした楽曲のオリジナル曲を集めた好企画盤『リスペクト〜アレサ・フランクリン・クラシックス』(原盤はACE PCD-17267 \2,625)から今日のこの1曲。

 アレサ・フランクリンがカヴァーしたことで有名なナンバー「リスペクト」などのオリジナル・アーティスト・ヴァージョンが24曲収録されていて、さすがACEらしいナイス・コンピ。ブルージーな50年代の楽曲から、ゴスペル、ブルース、そして同時代的なソウル・ナンバーなど、黒人音楽好きの方なら持ってて損なしの1枚です。

 個人的に好きな1曲「That's The Way I Feel About 'Cha」(昨年発売された1972年フィラデルフィアでの未発表ライヴCDにも収録されていましたね)のボビー・ウォマックによるオリジナルも入っていてうれしかったのですが、“アレサのルーツ”としてはこういう曲に魅力を感じました。

 ビッグ・メイベルは1950年代に活躍していていた女性R&B/ブルース・シンガー。名前通りかなりの巨漢だったようで、今日のこの1曲「Pitiful」でも迫力あるダミ声シャウトを聴かせてくれますが、アレサはその歌い方にかなり強く受けていたんだな、と感じることができます。
 あとオーティスでも有名な「Try A Little Tenderness」のオリジナル、リトル・ミス・コーンシャックスという人の歌も良かったですね。ちなみにこの2曲とも1952年録音曲。

 なお、アレサのおばにあたるクララ・ワードというゴスペル・シンガーの歌もラストに入っています。これは1949年録音。どちらも時代をあまり感じさせない素晴らしい音質で、選曲・ブックレットの解説共々ACEのイイ仕事を改めて実感させてくれます。(国内仕様盤はP-VINEからで国内解説も付いていますが、ブックレット英語解説の対訳が付いてないのがチト残念。) 森 陽馬

2009年3月26日(木) CSN&Y 「Cowgirl In The Sand」

 ニール・ヤングの新作『Fork In The Road』がもうすぐ発売ということで、かねてから噂のあったブルーレイ10枚組『アーカイヴBOX』はどこかに吹っ飛んでしまった・・・、と思っていたのですが、どうやら6月2日に発売が正式決定したようです。(リンク先はCDジャーナルの情報サイト)

 収録曲もやっと公表されたので、いよいよ本当に出そうですね。本腰を入れて(?)、ブルーレイ・レコーダーの品定め&購入をこの春しなくては!
 それにしても困りものなのがその仕様。@ブルーレイ10枚組、ADVD10枚組、BCD8枚組、の3種類で発売されるようです。ブルーレイ&DVDでしか聴けない&見れないディスクも入っているので、ブルーレイ10枚組はファン必須となりそうですが、音源を聴くためにわざわざブルーレイにディスクを入れてテレビの前でしか聴けない、というのはちょっと面倒。やっぱりCD8枚組版も必要かな・・・と思案中です。いやはや。

 しかしながらマニアにとってこの内容はやはり魅力的ですね。未発表曲満載で、既発曲もミックス違いやヴァージョン違いがタップリ。そして悪名高い?映画『Journey Through The Past』も遂に初DVD化。なんだかんだいって楽しみです。
 バッファロー・スプリングフィールド以前にニールが組んでいたバンド、クワイアーズの音源やCSN&Yの未発表ライヴ音源も入るようで、コア・ファンでも聴いたことがないトラックが多そうな感じ。是非詳細な解説も欲しいところですが、国内盤はやっぱり出ないんだろうなあ・・・。森 陽馬

★掲載ジャケットはCSN&Yの名作ライヴ『4 WAY STREET』(WPCR-75051 2CD \3,000)。昨年アメリカで公開された映画『CSN&Y デジャヴ・ライヴ』の日本公開も是非とも今年実現させて欲しいものです。

2009年3月27日(金) Great 3 「Bee」 Rei Harakami REMIX

 近年は矢野顕子と組んだyanokami(ヤノカミ)などの活動でも知られる京都在住エレクトロニカ・アーティスト、レイ・ハラカミのREMIXワーク集CDが2種発売。

 3rd『レッド・カーヴ』以降のワークスを集めた『ゆうげ』(IDCA-2002 \2,625)には、くるり、UA、ナンバー・ガール、Great 3、ショコラ、二階堂和美などレーベルの枠を越えて様々なミュージシャンの楽曲をレイ・ハラカミがプロデュースorREMIXしたトラックが収録。全曲見事にレイ・ハラカミ色に染められており、不思議と統一感ある仕上がりになっています。ヤノカミが気に入った方にオススメの1枚。

 その中でもくるり「ばらの花」とともに、印象的なトラックがGreat3の2曲「Bee」と「Oh Baby Plus」。2002年当時聴いたときは、個人的にGreat3のロック的志向なイメージが頭に残っていたせいか、もしくはまだエレクトロニカの免疫がなかったせいか全然ピンとこなかったのですが、今こうやって聴くと片寄明人さんの歌声と、レイ・ハラカミによる浮遊感あるエレクトロニカ音色との相性も抜群な印象。

 ちなみに話題は変わりますが、Great 3ベーシスト高桑圭のユニット、Curly Giraffe(カーリー・ジラフ)の新作EPが5月13日に発売決定。CHARA、Cocco、ボニー・ピンク、新居昭乃を各曲ゲスト・ヴァーカルにfeatし、白根賢一、堀江博久、名越由貴夫による凄腕バックによるクールでかっこいいサウンドを聴かせてくれる新作。Great 3ファンならずとも要チェックです。森 陽馬

2009年3月28日(土) The Baker Brothers 「Fly Like An Eagle」

 今月はソウルフルなアイテムばかり取り上げてしまった感があるのですが、もう1枚、ファンキーでかっこよかった新譜をご紹介。

 ベイカー・ブラザーズはイギリス出身の白人3人による新世代ジャズ・ファンク・グループ。初期の作品は荒々しいロック・ジャズ的なアレンジが持ち味でしたが、最近は演奏もアレンジもやや洗練されてきた印象。ヴォーカルをfeatする楽曲も増えてきましたが、アメリカの新世代ジャズ・ファンク・バンド、ソウライヴがヴォーカルをメンバーに招き入れ消化不良な作品をリリースしてしまったのとは対照的に、彼らの作品の完成度はどんどん増しているように感じます。

 今作『AVID SOUNDS』(TOCP-70707 \2,800)はカヴァー・アルバムですが、選曲やアレンジもセンス抜群で、“現代のスティーリー・ダン”とも称されるAORグループ、タルクをfeatしたシカゴ「Street Player」、ファンキーでかっこいいギル・スコット・ヘロン「Lady Day And John Coltrane」、そしてとびきりクールなインスト新曲「Blandford Super Fly」など聴き所満載の内容。彼らのルーツを知る上で入門編としてもオススメできる1枚です。

 その中でもスティーヴ・ミラー・バンドのファンキー・ナンバー「Fly Like An Eagle」。HIP HOPのサンプリング・ネタとしてDJ世代にもよく知られている1曲ですが、スペーシー&ヒップなかっこいいアレンジでカヴァーしています。森 陽馬

2009年3月29日(日) マインドベンダーズ 「ラヴ・イズ・グッド」

 ユニヴァーサル・ミュージックが相変わらず魅力ある紙ジャケCDをどんどん発売しています。3月25日にはブリティッシュ・ビートの渋めどころ、デイヴ・ディー・グループ、エーメン・コーナー、マージービーツ、そして今日紹介するマインドベンダーズがどーーーんと出ました。

 マインドベンダーズは最初、ウェイン・フォンタナのバックアップ・グループとしてデビューしましたが、1965年後半からは独立して活躍。1965〜6年にかけてアメリカの女性ソングライター・コンビ、トニー・ワイン&キャロル・ベイヤー(・セイガー)が書いた60's屈指の名曲「ア・グルーヴィー・カインド・オブ・ラヴ」(邦題:恋はごきげん」)を本国イギリス及びアメリカでも大ヒットさせました。その「恋はごきげん」は本当にイイ曲で大好きなのですが、今日はそのB面曲を。

 「ラヴ・イズ・グッド」はメンバーのエリック・スチュアート作品。後に10ccを結成するあのエリックなのです。
 この曲のギター・リフ・・・、どこかで聴いたことがある・・・。そう、つい、♪とぼけた顔してバン・バン・バン♪と歌ってしまいそうです。あのスパイダーズ「バン・バン・バン」の元ネタなのですね。
 当時は全くこの曲を知りませんでしたが、かまやつさんはさすがですね。やっぱり目のつけどころが素晴らしい。森 勉

★掲載ジャケットは「ラヴ・イズ・グッド」そして「恋はゴキゲン」も収録されているマインドベンダーズ66年発表アルバム。(UICY-94017 \2,800)

2009年3月30日(月) デヴィッド・キャシディ 「トゥモロー」

 3月ももうすぐ終わり→4月から新年度ということで、様々な部署・部門で新編成が行なわれているようです。(TV番組も今週から編成替えが多いようで、本日から始まったTBS系NEW番組『総力報道!THE NEWS』(月〜金 17時50分〜)では山下達郎の新曲「ミューズ」がかかっていましたね。)

 音楽業界も例外ではなく主たるところでは、4月1日よりBMGレーベルの商品全てを株式会社ソニー・ミュージック・ディストリビューションが販売委託することになる旨、先日通知されました。(すでにBMG JAPANのHPも4月からの問い合わせ先がソニーに変更になる件が告知されています。)
 昨年すでにBMG自体がソニー傘下となっていたのでこうなることは時間の問題だったわけですが、音楽業界大変革の第一歩ですね、これは。

 このBMGがソニー傘下となったことがどういうことかというと・・・、
・クロマニヨンズ、シャーベッツ(浅井健一)、小田和正、スガシカオ、スキマスイッチなどアーティストの新作も次回はソニーから発売?

・エルヴィス・プレスリーがソニーから出ることになる。つまり、大滝詠一とエルヴィスがレーベル・メイトになった。

・RCAの音源がソニー傘下となったことで、山下達郎『フォー・ユー』などRCA作品もソニーに。

・ラヴィン・スプーンフルなどブッダ・レーベルの音源もソニーから色々と再発されるかも?

 エルヴィスがソニーから出る、というのが時代の流れを感じますね。まあでも、面白い企画やコンピが制作される可能性も広がるので、良い方面へ向かうことを願って期待したいですね。

 ちなみに今日のこの1曲は先日BMGから発売になったデヴィッド・キャシディの再発CD『青春の館』(BVCM-35613 限定紙ジャケ \2,520)よりウィングスのカヴァー曲。全4種出ましたがどれも長門芳郎氏監修による丁寧な作りのリイシューでこのアルバムは世界初CD化。ブルース・ジョンストンもプロデューサーとして参加しているので、ビーチ・ボーイズ・マニアの方も要チェックの1枚です。森 陽馬

2009年3月31日(火)BOSSA RIO 「Do You Know The Way To San Jose」(サンホセへの道)

 1970〜71年ごろ、ラジオからこの曲がよく流れていました。

 てっきりセルジオ・メンデス&ブラジル66の新しいアルバムからの曲だと思っていたら、このボッサ・リオというグループだったのですね。まあセルジオ・メンデスがプロデュースしているので、同じような感じは当たり前なのかもしれません。

 「サンホセへの道」はディオンヌ・ワーウィックが1968年にヒットさせたバート・バカラック作品。セル・メンとしては「ルック・オブ・ラヴ(恋のおもかげ)」でバカラックの曲はカヴァーして研究済だったせいか、非常にいい仕上がりになっています。

 この当時のA&Mレーベルは本当に質の高いアルバムばかりで、A&Mならではのポップ感覚とサウンドが聴く者を心地良くさせてくれます。森 勉

★掲載ジャケットは最近再発されたBOSSA RIOの1970年発表デビュー・アルバム。(RevOla CRREV-277)





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