PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2009月8月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2009年8月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2009年8月1日(土) アップルジャックス 「テル・ミーホエン」

 今日はブリティッシュ・ビートでいきましょう。アップルジャックス!
 日本では全く無名の存在ですが、本国イギリスでは1964年にチャートイン・ヒットを3曲出した6人組です。

 アルバムは1枚だけデッカ・レーベルから発表。1990年ぐらいに一度、ボーナス4曲追加されCD化されたことがあったものの、最近はあまり見かけない盤でしたが、今回めでたくボーナス曲をたっぷり追加して再CD化となりました。(MSIG-592 \2,835)

 このアップルジャックス、アメリカではヒットに至らなかったので、経由的な問題もあり日本では話題にならなかったのでしょうね。
 レノン=マッカートニー作品「ライク・ドリーマーズ・ドゥ」(ビートルズ・ヴァージョンは『アンソロジー1』に収録)を歌ったりしているんですが・・・。そう、ボーナス曲として入っているビートルズ・カヴァー「ベイビーズ・イン・ブラック」はなかなか良かったです。

 「テル・ミー・ホエン」はデビュー・ヒット。1964年のイギリスを感じさせてくれるサウンドで、サビのメロディーが最高にポップで昔からお気に入りの1曲なのです。(レコード・コレクターズ2009年8月号ブリテッシュ編1954-66名曲ランキングでは、<森 勉 選ベスト25>の第18位に入れました!)

 曲を作ったのはレス・リードとジェフ・スティーヴンス。
 「見つめあう恋」(ハーマンズ・ハーミッツ、カーペンターズ)、「ドーター・オブ・ダークネス」(トム・ジョーンズ)などを書いているコンビです。

 作曲のレス・リードは他の人とのコンビでもいい曲をたくさん作っていて、僕好みのメロディーが多いんですね。例えば、「よくあることさ」(トム・ジョーンズ)、「ラスト・ワルツ」(エンゲルベルト・フンパーティング)、「エヴリバディ・ノウズ」(デイヴ・クラーク・ファイヴ)など。
 ACEレーベルで、レス・リード作品集なんて作ってくれたらうれしいな。森 勉

2009年8月2日(日) CSN&Y 「Teach Your Children」

 センチメンタル・シティ・ロマンスのコンサート(at モーション・ブルー横浜)を見に行ってきました。

 普段、モーション・ブルーはブルー・ノートやビルボード・ライヴのように二部入替え制でライヴが行なわれるのですが、本日は特別興行で入替えなし。めでたく超満席で、ライヴも素晴らしいの一語。休憩挟んでタップリと見ることができました。

 1stアルバムに収録されている「マイ・ウディ・カントリー」(当時VANのCM曲として使われたナンバー。山下達郎もコーラスで参加している1曲)など、センチの持ち味であるコーラスが見事な初期のナンバーもたくさんやってくれて、客席も温かい雰囲気でとても良かったです。
 個々の活動も忙しいかもしれませんが、2〜3ヶ月に1回は定期的にこのフル・バンド形式(ドラムに元シュガーベイブの野口昭彦、ベースに瀬川信二が参加した5人センチ)でライヴを継続していってもらいたいですね。

 さて、数年前からセンチのサポートでお馴染みの若きファンキー・ベーシスト、瀬川信二さんのソロ・コーナー(?)もあり、とても変わった楽器“koyabu board”(コヤブ・ボード)を使って、グラハム・ナッシュ作、CSN&Y「Teach Your Chirdren」のカヴァーをやってくれました。

 このコヤブ・ボード、見た目は“弦が琴のように多数あるギター”といった感じですが、ベース音も出せて、<一台三〜四役>の不思議な楽器でした。まだ一般的ではないようですが、ベースを弾きながらシンガー・ソングライター的なことをしたい方やギターのテクニックに自信がある人にはオススメかもしれません。

 なお明日3日(月)には、小坂忠さんにセンチの中野督夫&細井豊さんが参加するライヴが横浜サムズアップであります。ゲストも多数出演予定ですので是非チェックしてみてください。森 陽馬

★掲載ジャケットはグラハム・ナッシュのアンソロジー3CD BOX。

2009年8月3日(月) Marlena Shaw 「You Taught Me How To Speak In Love」

 昨日に続きライヴ・レポートになってしまいますが、先日1日、マリーナ・ショウのライヴ(at ビルボード・ライヴ東京)を見てきました。

 マリーナ・ショウは1942年生まれの黒人女性ソウル・ジャズ・シンガー。これまでも来日公演を行なったことはありましたが、今回はデヴィッド・T・ウォーカー(G)、チャック・レイニー(B)、ハーヴィー・メイスン(Dr)、ラリー・ナッシュ(P)という超豪華バック・メンツ!
 まさに“1974年録音の名作『Who Is This Bitch, Anyway?』を35年の時を経て生バンドで再現”という夢のようなライヴでした。

 まだビルボード・ライヴ大阪公演が残っているので、あまりネタバレできませんが、ステージ・パフォーマンス及び会場の雰囲気も暖かみがあってとても良かったです。
 マリーナ・ショウは足が悪いようで最初杖をついてステージ脇に出てきましたが、マイクを持つとシャキッとして昔と変わらぬ歌声を披露してくれました。バックの演奏も、各々の超有名ミュージシャンのテクニックを堪能する、というのではなく良い意味で一体感があって、サイモン&ガーファンクルのコンサートの時に感じたのと同じような、年輪を重ねた深みのある歌声&演奏に癒される思いでした。

 で、今日のこの1曲はその名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』(TOCJ-6731 \1,800)に収録されており、今回のライヴでも披露された「You Taught Me How To Speak In Love」。
 この曲が終わった後、近くのカップルが「サザンの曲に似ているね」なんて話していましたがその通り! サザンオールスターズ「いとしのエリー」の元ネタ、と言われていて、全体的なメロディーがそっくりの1曲ですね。 ラリー・ナッシュのフェンダー・ローズがすごくいい音で鳴っていたのが印象的でした。森 陽馬

2009年8月4日(火) Soul Bossa Trio 「Still A Friend Of Mine」

 東京はここ数日、雨が降りそうで降らず結局陽射しが出てきてやや蒸し蒸しする、という天候が続いています。もう8月だというのにはっきりしない梅雨空模様ですが、そんな日和にのんびり聴きたい女性ヴォーカル・アルバムが今日入荷してきました。
 アン・サリー『ムーン・ダンス』&『デイ・ドリーム』を手掛けたことで知られるゴンザレス鈴木によるユニット、“ソウル・ボッサ・トリオ”の新作『For Once In My Life』(XQGW-1002 \2,200)。

 今作はハワイ録音で、女性ヴォーカリストにはハワイ出身のサリー・モリタというシンガーを起用。シャーデーとスウィング・アウト・シスターを足して2で割ったような雰囲気の透明感ある爽やかな歌声が魅力的です。

 マリア・マルダー「真夜中のオアシス」、デルフォニックス「ララ・ミーンズ・アイ・ラヴ・ユー」、ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイで知られる「Where Is The Love」、ニール・セダカ「Laughter In The Rain」などを、ハワイ録音らしいオーガニックかつ穏やかなアレンジでカヴァーしていますが、特に気に入ったのが1曲目「Still A Friend Of Mine」。

 インコグニートによるこの人気ナンバーを、スムースなアレンジで絶妙に料理。90年代初夏の昼下がり、FMからはこういう曲がよくかかっていたよなあ、と、新しいのに懐かしさをも感じさせてくれる極上の1曲です。森 陽馬

2009年8月5日(水) デヴィッド・T・ウォーカー 「Didn't I Blow Your Mind」

 1973年発表の名作アルバム『プレス・オン』(VACM-1298 \2,625)に入っているデルフォニックスのヒット曲のカヴァーです。

 スウィート・ソウルな原曲もいいのですが、とにかくデヴィッド・T・ウォーカーの手さばき、というか指さばきが見事。

 こういうスローな曲での音の取り方は本当に絶妙で、主メロを追いつつも独特のくずしがあちこちにフレージングされて、それがとても気持ち良く響いてくるのです。

 歌モノのバックのデヴィッド・T・ウォーカーもいいのですが、ワン&オンリーのプレイがたっぷり楽しめるソロ・アルバムはやはり格別。特に現在ビデオ・アーツ社が出しているオード・レーベルの3枚はどれも持っていて損のない名盤だと思います。
 契約が切れたりすると、また長い間入手困難状態になる可能性もあるので押さえておきたいですね。森 勉

2009年8月6日(木) Jesse Winchester 「Stand By Me」

 ジャクソン・ブラウン、ジェイムス・テイラー、ボビー・チャールズ、ダン・ペン、故ロン・デイヴィス、キャット・スティーヴンス、来日も決まったドニー・フリッツなど、昨年から今年にかけて、ベテラン・シンガーソングライターの“新作”で良い作品がたくさんリリースされていますが、今日紹介するアルバムは地味ながらその中に入っても指折りの素晴らしい1枚でした。

 ジェシ・ウィンチェスターはアメリカ南部ルイジアナ出身の男性シンガー・ソングライター。ヴェトナム戦争への徴兵を忌避しカナダに一時期亡命。1970年、味わい深いウッドストック・サウンドの名作を多数リリースしているベアズヴィル・レーベルから、ザ・バンドのロビー・ロバートソンのプロデュースで発表したデビュー・アルバムが名盤として有名で、その後はぽつりぽつりと作品をリリース。そして、久々約10年ぶりとなる新作がこの『Love Filling Station』です。(Appleseed APR CD1116)

 ナッシュビル録音のシンガー・ソングライター/ルーツ・サウンド作品ですが、同じナッシュビル録音でもエルヴィス・コステロの新作のような重厚なルーツ作というのと違い、更にルーツを掘り下げた感もあるディランの新作ともまた違って、全体的にほのぼの&ゆったりとした空気が流れている和やかな1枚。

 彼のその穏やかな歌声&奇をてらわないシンプルなバック演奏は、イーグルスやJDサウザーをも想起させる聴きやすいリラックスしたもの。派手さはないですがこのアルバム、ホント!聴くほどに沁みてきてイイ感じです。

 今日のこの1曲、ベン・E・キング、そしてジョン・レノンでも有名な「スタンド・バイ・ミー」も、フィドルの響きが郷愁を誘うとても良質なカヴァーですね。
 これ以外のオリジナル曲もいい曲ばっかりなので、ジェシ・ウィンチェスターを知らなくても、アメリカン・シンガー・ソングライター好きの方には是非聴いてもらいたいアルバムです。森 陽馬

2009年8月7日(金) Annett Louisan 「Sexy Loverboy」

 思わずジャケ買いしたくなるこちらのアルバムは、ドイツの人気女性シンガー、アネット・ルイザンの4枚目の新作。
輸入盤は以前から大型店等に置かれていたので、このジャケットに目を奪われたという方も多いのではないでしょうか。作品自体は2008年となっていますが、先日国内盤が発売されました。(『快楽主義=パートタイムヒッピー=』 原題は『teilzeithippie』 SICP-2317 \2,520 国内盤ボーナストラック4曲追加収録)

 60年代から抜け出て来たような佇まい(32歳にしては凄く貫禄のあるような感じですが)と、甘ったるく可愛らしい歌声が魅力的。普段あまり馴染みの無いドイツ語も、意外と柔らかい雰囲気で、聴いてると段々クセになる感じ良いですね。

 音を聴く前は壮大で華やかな感じを想像していましたが、全体的にアコースティック・ギターを基調とした穏やかな曲が多く、他にもストリングス、ブラス、マンドリン、ピアノ、オルガンなどを交え、ポップス、ジャズ、カントリー、ブラジル音楽などが上手く昇華された一枚となっています。生の演奏を大事にしている感じも好印象です。

 今日の一曲は「セクシー・ラヴァーボーイ」という曲。ギターフレーズが、ビートルズ「I Feel Fine」風なギター・ポップ・ソング。タイトルや曲毎に付いている邦題はちょっとヘンですが、良いメロディの曲が多いのでそれに捉われず、興味のある方は聴いてみて下さい。ギター・ポップ、フレンチ・ポップスなど好きな方にもおすすめです。東尾沙紀

2009年8月8日(土) Simone White 「YAKIIMO」

 最近リリースされた洋楽女性シンガーもので、オススメしている作品をもう1枚。(シモーン・ホワイト 『やきいも』 PCD-93261 \2,415)

 シモーン・ホワイトはハワイ出身、カリフォルニア在住の女性シンガー・ソングライター。“ジョニ・ミッチェルとカレン・ダルトンを足して2で割った感じ”の歌声が特徴的。ちょっと鼻にかかったような独特な響きがあって、ナッシュビル録音による弾き語りをメインにしたシンプルなバックも、彼女のそのヴォーカルを引き立てていて地味ながら味わいある仕上がりです。

 詞も変わっていて、特にタイトルにもなっているD「やきいも」は、サビの部分でまさに焼き芋を売るようなフレーズで♪おいしい〜やきいも♪と歌われています。
 彼女が日本に滞在していた時のやきいも屋さんからインスピレーションを受けて作った曲ですが、違和感は不思議となく、日本の季節感というか焼きいもを売っている叙情的な情景が目に浮かんでくるような1曲。

 アルバム・ラストにはW.Cハンディ(村上春樹『1Q84』にもルイ・アームストロングの歌で出てきましたね)の名曲「St.Louis Blues (セントルイス・ブルース)」のカヴァーも収録。弾き語りですがこの1曲もオススメ。
 
 なおダブル・ジャケットの内側に、ちょっと変わった馬のイラストが描かれており、この作品を象徴しているような寓話的絵柄です。購入された方はご覧になってみてください。森 陽馬

2009年8月9日(日) 山下達郎 「僕らの夏の夢」

 アニメ映画『サマーウォーズ』、観てまいりました。

 平日の昼間の回だというのに映画館はかなりの混雑ぶりで、学生達は夏休みなんだなあということを再認識しました。それにしても観に来ていた年齢層が若かった。ほとんど十代、二十代だったんではないでしょうか?
 五十代後半の僕は完全に浮いていましたが、『俺はテーマ曲である山下達郎の「僕らの夏の夢」を劇場で聴くために来ているんだぞ』という看板を首からぶらさげている気持ちで胸を張ってロビーを歩いていたのですが・・・。若者にはどんな風に見えたことやら・・・。

 映画自体もそれなりに楽しめましたね。
 主人公のふるさとが長野県上田市ということで、上田市のタツロー・ファンはさぞ喜んでいるのではないでしょうか。

 さて、エンディング・テーマ「僕らの夏の夢」ですが、映画にふさわしい曲調でさすがは山下達郎、と思わせてくれるものでした。
 ラジオで流れているのを聴いた時の第一印象は、「地味すぎるのでは?」と思ったのですが、劇場の良いオーディオ環境でイントロから終わりまで聴くとやはり違いますね。タツローならではの音の細かさを感じましたし、主題歌としての存在感がありました。

 劇場内は5.1chサラウンドで流れているようでしたが、混雑により座った席が端だったため、サラウンド効果味わえなかったのが残念でした。これから主題歌を聴きに行こう、という方は、是非真ん中の良いお席で・・・。
 なお、CDの発売は8月19日です。森 勉

★RCA/AIRイヤーズ、ジグソー・パズル・プレゼント・キャンペーンも実施されます。RCA時代のCDお買い上げの方に先着でもれなくジグソー・パズルをプレゼント! 通販コーナーにも掲載しています。

2009年8月10日(月) The Jayhawks 「Tailspin」 

 1980年代中期にゲイリー・ルーリスとマーク・オルソンを中心にアメリカ・ミネアポリスで結成。古き良きアメリカン・ロックを伝承しているロック・バンド、ジェイ・ホークス。

 名作『Tomorrow The Green Grass』後脱退していたマーク・オルソンがゲイリー・ルーリスとデュオ・アルバムを今年発表(3月10日のこのコーナでも掲載)。マーク・オルソンが再加入してのジェイ・ホークスの活動も気になるところですが、この度彼らのベスト盤が発売されました。(『Music From The North Country』 ameican 47043-2)

 通常CD1枚仕様も出ていますが、レア音源を集めたボーナスCDと主にビデオ・クリップを収録したDVDも付いたデラックス・エディションも同時発売。ジェイ・ホークスはまだ何も持っていない、という方は1枚もので充分だと思いますが、ファンにとってはこのデラックス・エディションが内容充実していてオススメですね。

 このボーナスCDの中に、今のところの最新オリジナル・アルバム『Rainy Day Music』に収録されていた「Tailspin」という曲のアーリー・ヴァージョンが収録されているのですが、これがオリジナル・ヴァージョンと全然違っていて、正直今ひとつの出来。これを聴いて、改めてオリジナル・ヴァージョンの良さを再認識すると共に、『Rainy Day Music』をプロデュースしたイーサン・ジョーンズの見事な仕事ぶりを実感しました。

 イーサン・ジョーンズはライアン・アダムス、レイ・ラモンターニュ、ジェイ・ホークスなどの作品に関わっているプロデューサー/ミュージシャン。彼が参加している作品は要チェックですね。森 陽馬

2009年8月11日(火) クレイジー・ケン・バンド 「かわいい訪問者」

 横山剣率いるクレイジー・ケン・バンドがメジャー・レーベルのユニバーサル・ミュージックに移籍。“ダブルジョイ・インターナショナル”という新たなレーベルも立ち上げ、約1年ぶりのアルバム『ガール!ガール!ガール!』を発表しました。(初回DVD付 UMCK-9223 \3,800)

 オリジナル・アルバムとしては11枚目となる作品。ここ最近はややマンネリな感(なんていったらファンに怒られそうですね)もありましたが、移籍第一弾ということもあってか今作は凄く“イイネッ!!”な1枚ですねー。

 演奏に勢いがあって、どの曲からもシングルがきれそうな粒揃いの楽曲。2002年『グランツーリズモ』を彷彿とさせるような疾走感もあり、ロック、ジャズ、ソウルなど今まで以上のごった煮ブレンドも剣さんの日本語詞と見事に融合しています。

 ファンキーでかっこいいO「かわいい訪問者」、ハモンドの音が痺れるハイテンション・ナンバーP「本牧宇宙人」、知らないで聴いたらレッチリかと思っちゃいそうなロック・インストQ「Gimme A Goldfish」、ジョン・コルトレーン「マイ・フェイヴァリット・シングス」のサビを織り込んだR「山の音」(Remix by Sunaga t Experience)と続く後半は特に圧巻! 剣さんの♪おくさ〜ん♪のフレーズがクセになりそうなC「昼顔」とかもらしさ爆発でイイですね。

 でも一番耳に残ったのはO「かわいい訪問者」。この曲何かに似ている!と思って考えていたら、久保田利伸「Dance If You Want It」の歌い回しにソックリ!?のような気がしてきました。(ご存知の方どうでしょうか?)

 とにかくも、クレイジー・ケン・バンドは一時期聴いていたけど最近は・・・、という方。新作は特にイイネ!イイネ!イイネッ!な超オススメなアルバムなので、是非聴いてみてくださいネッ! 森 陽馬

2009年8月12日(水) ダイアン・バーチ 「ナッシング・バット・ア・ミラクル」

 最近、毎日聴きたくなってしまう1曲です。名前はダイアン・バーチ。
 アメリカ出身の新人女性シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム『バイブル・ベルト』に収録されています。(国内盤ボーナス・トラック2曲追加 TOCP-66901 \2,200)

 どの曲も出来が素晴らしいのですが、特にこの曲にハマりました。
 まずこの4曲目を聴いて、1曲目に戻って通しで聴いて、もう一度4曲目を、というパターンで聴きたくなってしまいます。

 プロデュースはスティーヴ・グリーンバーク、ベティ・ライト、マイケル・マンジーニによる共同作業。この3人はジョス・ストーンのアルバムで成功を収め、今回も初めて自分の作品を発表する新人のダイアンをいい形に導くサポートをしていると思います。
 バックの演奏も出すぎず、引っ込みすぎず好印象でした。

 ダイアンのキーボード(この曲ではフェンダー・ローズ&ピアノ)に、ドラム、ベース、ギターというシンプルなフォー・リズムは彼女の歌をいい感じで包み、吸収してくれています。
 裏ジャケット、ブックレット内の写真も魅力的。森 勉

2009年8月13日(木) Chie 「Samurai」

 日本人女性ブラジル/ボサノヴァ歌手、というと小野リサが有名ですが、今日紹介するchieさんも良い作品が多くオススメです。

 特に2004年発表の1stアルバム『sabia』は、現代ボサノヴァの新しい波を体現しているセルソ・フォンセカがプロデュース。ブラジルのリオ・デ・ジャネイロにて録音された作品で、とても完成度が高い“21世紀ブラジル/ボッサ”の名作だと僕は思っています。

 バックの演奏がとてもナチュラルで、彼女の美声と絶妙にマッチ。ジョビン作「三月の雨」、カエターノ作「Sou Sua Sabia」、ミルトン・ナシメント作「Travessia」(トラヴェシーア)など、選曲もイイですね。
 個人的にはジャヴァンの名曲「Samurai」のカヴァーが気に入っています。

 この名盤、以前は3,000円弱で出ていましたが、この度発売元ビデオ・アーツ・ミュージックのキャンペーンで、なんと!1,000円で限定再発売!(VACZ-1379 \1,000)
 良いアルバムをまずは聴いてもらおう、というセールのようで、アン・サリーやジョイスの娘アナ・マルチンスの作品も1,000円。ジャケットは簡素なものに変り、歌詞カードも省略されていますが、持ってて損なしのアルバムなのですごくお得だと思います。森 陽馬

★なお、掲載ジャケットは2004年に発表された時のもの。

2009年8月14日(金) Neil Young 「I've Loved Her So Long」 

 ビートルズのBOXセット発売日が1ヶ月を切りました。(9/9発売)
 ビートルズ・ファンにとっては散財の2009年となるのでしょうが、散財ということに関してはニール・ヤング・ファンも負けていません。

 2009年1月に1968年ライヴ音源の国内盤、『ハーヴェスト』&『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』のSHM-CD、4月に新作アルバム、ライヴ盤のアナログLP、CSN&Yのアナログ盤、6月にブルーレイ10枚組アーカイヴBOX(8CD、10DVDも同時発売)、と怒涛のリリース・ラッシュ。更に追い撃ちをかけるように、初期名盤4作が新たにリマスターされ先日発売されました。

 <A CLASSIC NEIL ALBUM REMASTERED FROM THE ORIGINAL ANALOG MASTER TAPES BEACAUSE SOUND MASTER>
と書いてあるシールがジャケットに貼ってあり、ジャケットのデザインもオリジナル仕様。(1stアルバムは、ジャケットにNEIL YOUNGの文字が刻印されていないアナログ盤1stプレスのものを採用。ちなみにCDは全品プラケース)

 おそらくアーカイヴBOX発売に際して、ついでにオリジナル・アルバムの音源も今回リマスターしたのだと思われます。音はどうかな?と思い、先日出たSHM-CD仕様と店内で聴き比べしてみましたが・・・。うーーーん、僕には音の違いがわからなかったですね・・・。
 オリジナル・アナログ・マスターを使用している、ということで、音圧を極端に上げたりしているわけではなく、オリジナル盤を忠実に再現、といったリマスターのようです。

 今のところ輸入盤のみですが、ワーナーの方によると国内盤も秋以降に発売予定、とのこと。ちなみに、同じマスターを使用した輸入アナログ盤も再発される模様。夏以降もニール・ヤング・ファンの散財は続きそうです。森 陽馬

★掲載ジャケットはライ・クーダーもプロデュースに関わっている1969年発表1stアルバム。ジャケ上部にNEIL YOUNGの文字が無いオリジナル仕様。(Reprise 9362-49790-5 \1,490)

2009年8月15日(土) Secret Powers 「Counting Stars」

 ELO、ジェリーフィッシュの影響を感じさせるサウンドと、コーラスをふんだんに盛り込んだポップ・ソングを聴かせるのは、アメリカ・モンタナ州出身の6人組バンド、Secret Powers。(『EXPLORERS OF THE POLAR ECLIPSE』 輸入盤 543-2)

 作品自体は2008年と、ちょうど1年くらい前のもののようですが、今年に入ってからネット上や音楽誌などでレビューを見掛けるようになりましたね。

 暗めな印象を与える地味なジャケットですが、キーボードを軸とした元気な曲が多く、ちょっとひねったメロディがとにかく楽しい一枚。ただメイン・ヴォーカルの声が結構ガツッとくるパワフルな感じなので、人によっては好みが分かれるかもしれません。(他のメンバーが歌う曲も少しあります。)

 コーラスの面などでは彼らも好きであろうビーチ・ボーイズからの影響も感じさせますが、サウンドは上に書いた通り、ELO、ジェリーフィッシュ的な感じに仕上がってます。

 パワー・ポップ、ハーモニー・ロックなどお好きな方にオススメの一枚です。東尾沙紀

2009年8月16日(日) マイケル・フランクス 「ブルーにならないで」

 先日、銀座松屋でやっている『熊田千佳慕展』を見てきました。

 熊田千佳慕は、虫や植物・動物など自然を愛し、90歳を越えながらも繊細なタッチで絵を描き続けていた男性画家。“プチ・ファーブル”と呼ばれるほど昆虫への愛ある描写は素晴らしく、イタリアのボローニャ国際絵本原画展に入選するなど海外からも評価されている98歳の名画家です。

 しかしながら、8月13日にその熊田さんが逝去。8月12日(水)から24日(月)まで銀座松屋でこの方の絵画展をやっているということで伺いましたが、逝去の報がメディアで紹介されたこともあり、老若男女様々な方が見にこられていて混雑していましたね。
 でも熊田さんの絵は、間近で拝見すると単なる細かい描写だけでなく、大好きな自然への愛が感じられて、とても良かったです。昆虫に興味ある方、絵がお好きな方は是非。

 さて、昆虫が写っているジャケットのCD、で思いついたのはこの1枚。
 マイケル・フランクス『スリーピング・ジプシー』(国内CD WPCR-75210 \1,800 ジャケットの右下の端に蛾が描かれています)。

 昼下がりの午後聴くのにピッタリな1枚で、ラリー・カールトン、デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー、ジョー・サンプルなどJazz/フュージョン系の名アーティストが多数参加。UAがカヴァーしたことでも有名な「アントニオの歌」を中心に心地良く聴ける1977年発表の名盤アルバムです。

 今日の1曲には、ユッタリした雰囲気の楽曲が多い中で、一番クールにそしてグルーヴィに聴かせるD「Don't Be Blue」。
 デヴィッド・サンボーンのサックス・ソロ、ジョー・サンプルのエレピ・ソロがゴキゲン♪ 森 陽馬

2009年8月17日(月) asana 「kupu kupu」

 昨日に続いて、蝶ジャケの1枚。(といっても今作はシルエットですが)

 asana(アサナ)は、名古屋在住の浅野裕介によるオーガニック音楽プロジェクト。ジャンベ、ガムラン、カリンバ、ウクレレ、シタール、トランペット、アナログシンセなど様々な楽器を1人で多重録音し、独特なオーガニック・インストに構築。
 彼のルーツでもあるバリ島の音楽にポスト・ロック的なアレンジ、そしてCLUB MUSIC的な展開で聴かせる曲もあるので、アンビエントものお好きな方からレイ・ハラカミなどのテクノ好きにもオススメです。

 このアルバム『kupu kupu』は彼の2002年発表1stアルバムで、近年は廃盤状態でしたが、4曲を再レコーディングし更にボーナス・トラックを追加。先日新装再発されました。(EASL-8 \2,200)
 生楽器の音響もの、ちょっと多国籍な雰囲気のオーガニック・インストお探しの方にはピッタリですね。
 
 ちなみに新作『suar』(EASL-7 \2,380)も同時発売され、こちらも心地良いサウンドを聴かせてくれますが、収録曲大半に女性ヴォーカルをfeat。歌声も悪くはないのですが、インストのみがいい、という方はこちらの1stの方がよいかもしれません。森 陽馬

2009年8月18日(火) 安達久美クラブパンゲア 「Cause We've Ended As Lovers」(哀しみの恋人達)

 8月19日発売の新譜が本日入荷。(嵐ベスト盤、電気グルーヴ新作、山下達郎新曲、ウッド・ストック40周年記念BOXなど)
 この中で特に問い合わせが多かったのが嵐のベスト初回盤。すでに予約完売の状態で、在庫の有無をここ最近では珍しいくらいよく聞かれましたね。

 ジャニーズ系商品の限定盤や人気初回盤の一部は、セールス配分というのがあって、その店の規模や仕入れ額などに応じて入荷枚数が制限されてしまうことが多々あるのですが今回の嵐もそういう配分があり入荷は本当に少なかったです。全国的にみてあと20万枚とか追加で作っても全然売れそうな感じですが、あえて初回盤を品切れさせて話題性を作ろう、というのがプロダクション側の考えのようです。(レコード・メーカーは作りたかがっているようです)

 この不況の最中に売れるものをわざと作らず、音楽業界は何を考えているんだ?と他業界からバカにされそうですが、今はレコードを“売る”時代ではなくて、あくまでレコード(CD)はそのアーティストの“話題性を作るための道具”にすぎなくなってしまった、ということでしょうね。
 CDを本当に欲しがっている人には供給されず、ネット通販専門の業者に多く出荷され転売屋に渡り、オークションに高値で出品、という構図は、CDに限らずコンサート・チケットも含め、転売に関する法規制をしないといつまで経っても解決しないでしょう。困ったものです。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、今日よく店内でかけていたのがこの新譜。安達久美クラブパンゲア『L.G.B』(VAZS-3 初回DVD付 \3,675)

 日本屈指の女性ギタリスト、安達久美を中心として、則竹裕之(dr)、河野啓三(key)、清水興(b)という凄腕メンツによるインスト・ユニットで、ブルージーなロック・ナンバーからフュージョン曲、ジェフ・ベックを彷彿とさせるオリジナル楽曲を聴かせてくれます。
 彼女のギターがかっこよくて、早弾きギターとはまた違ったグイグイ引っ張っていくフレーズが魅力的。松原正樹、今剛、Tスクエアなどの作品お好きな方にもオススメです。

 オリジナル曲の充実ぶりも聴き所ですが、アルバム最後にはスティーヴィー・ワンダー作でシリータが歌った名曲「Cause We've Ended As Lovers」(邦題:哀しみの恋人達)のカヴァーが収録。有名なジェフ・ベックによるカヴァー・ヴァージョンが下敷きになっているようです。森 陽馬

2009年8月19日(水) Mercy 「Love (Can Make You Happy)」

 1969年全米2位を記録した大ヒットなのに、あまり知られていないこの曲。ソフト・ロック・ファンには是非聴いてもらいたい1曲なのです。

 このマーシーというグループは、ほとんど“ワン・ヒット・ワンダー”(一発ヒット屋)なので、どうしてもこうしたオムニバス盤に時々収録されるだけなので、注目度も薄くなってしまうのでしょうね。

 フロリダのマイナー・レーベル、Sundiから発表された曲ですが、逸話&謎の多いグループのようです。
 ヒットを出した頃にはもうグループは解散していた、とか、ジャケットに写っている女性3人は歌っている人たちと関係ない人物だとか、ヒット数ヶ月後にワーナーから発表されたLPに収録されたヴァージョンは再録音(出来は悪くないと思います)だったり、とか、色々と裏話がありますが、とにかく曲の良さは折り紙つきです。
 さわやかなコーラスとシンプルな演奏が涼しい風を運んでくれるようです。

 この「ラヴ」は最初に書いたように全米2位止まりだったわけですが、その時の1位はビートルズ「ゲット・バック」でした。
 もし相手がビートルズでなければ1位になっていたかも・・・、なんて考えているあなた、もうヒット・チャート・マジックの面白さにハマりはじめているかも・・・。

 この曲が入ったコンピCDは、ACEレーベルの“CHARTBUSTERS USA”シリーズのスペシャル・エディション『Sunshine Pop』というものです。(ACE CDCHD-1228)
 1960年代中期から後期にかけてのヒット曲が全26曲収録。現在は国内盤が出ていないタートルズ、クリッターズ、ペパーミント・レインボー、サンシャイン・カンパニー、ネオン・フィルハーモニック、フォーラムなども収められています。森 勉

★8月20日(木)には当店地下アゲインにて通常通り、気ままなDJイベント『気まぐれ音楽寄席』を行なう予定です。

2009年8月20日(木) Andy Lewis & Paul Weller 「Are You Trying To Be Lonley」

 ACID JAZZレーベル設立21周年を記念して、美味しいとこどりのコンピレーション『London Street Soul - 1989-2009:21 Years Of Acid Jazz』がACEの傘下レーベル、BGPからリリースされました。(輸入盤 CDBGPD-200)

 人によっては、あれもこれも入ってない!と言われそうですが、膨大な曲の中から厳選した全18曲を収録。
 レーベル初期のヒット、ブラン・ニュー・ヘヴィーズの「Never Stop」や、黒人女性ヴォーカルをフィーチャーしたジェイムス・テイラー・カルテットの「Love Will Keep Us Together」、マザー・アースの「JESSE」(ブレンダン・リンチRemix)など人気曲も押さえてあるので、入門編として聴くには最適の1枚でしょう。

 1曲目に収められているのは、現ウェラー・バンドでベースを担当しているアンディ・ルイスとポール・ウェラーの共同作による「Are You Trying To Be Lonely」。この曲はアンディ・ルイスのアルバムにも収録されていますが、2007年にシングル&7インチで先行リリースされたノーザン・ソウル・テイストの踊れる一曲!

 最近はフジロックに出演した事以外は特に目立った話題の無かったポール・ウェラーでしたが、来年春頃には新作をリリースするのでは?、との話も出てきているので期待が高まります。東尾沙紀

2009年8月21日(金) Little Walter 「Juke」

 1950年代に隆盛を極めたシカゴの名レーベル、“チェス・レコード”のストーリーを描いた映画『キャデラック・レコード』を観てきました。

 いやぁ、コレは面白かった! ビヨンセがエタ・ジェイムス役で出ている、くらいの予備知識しかなかったのですが本当に楽しめました。
 チェスの物語なのにボ・ディドリーが出てこない、とか細かい突っ込みどころ含め、脚色された部分も多々あると思いますが、それでも映画としてはめちゃくちゃ面白かったです。ソウル/ブルース詳しくなくても音楽好きの方だったら絶対にオススメの映画ですね。

 ビヨンセも雰囲気出てて良かったけれど、個人的にはリトル・ウォルター役の人(コロンバス・ショート)と、チャック・ベリーを演じたHIP HOPミュージシャンのモス・デフの演技が良かったですねー。
 映画内の音楽も素晴らしくて、“Music Producer - Steve Jordan”のクレジットを見て納得。劇内にて歌われるチェスの名曲郡も最高で、それぞれの役者本人が歌う歌唱は本当に見事でした。

 ちなみに、黒人音楽/チェスの物語であるにも関わらず、映画内で“ビーチ・ボーイズ”に関する場面があるのです! この件に関してはまた明日ということで。森 陽馬

★掲載ジャケットは、映画内でフィーチャーされたチェスの楽曲を、オリジナル・ヴァージョンで収録したコンピCD。(『ベスト・オブ・チェス・レコード〜キャデラック・レコード・オリジナルズ』 歌詞・対訳付 UICY-1444 \2,500)

2009年8月22日(土) Beach Boys 「Surfin' USA」

 昨日取り上げた映画『キャデラック・レコード』の話題の続きですが、この映画、名黒人ミュージシャンを多数輩出したチェス・レコードの物語でありながら、ビーチ・ボーイズがかかる場面が出てきます。

(ネタバレになってしまうので、知らないでおきたい、という方は、以後の文章は鑑賞後にどうぞ)

 どういう使われ方をしているかというと、<チャック・ベリーがTVでビーチ・ボーイズ「サーフィンUSA」が流れているのを聴き、自身のヒット曲「Sweet Little Sixteen」のメロディーが盗まれた!と騒動になる>という映画内の場面で、「サーフィンUSA」が流れるのです。

 実際にビーチ・ボーイズ「サーフィンUSA」は、チャック・ベリー「Sweet Little Sixteen」を下敷きにした楽曲で、そこにサーフィンの名所の数々を織り込んだ歌詞&美しい厚みのあるコーラス・ハーモニーを味付けした63年発表のヒット・ナンバー。(ドライヴ感あるドラムはハル・ブレイン)

 確かにブライアン・ウィルソンが「Sweet Little Sixteen」のメロディーを拝借したかたち(後にクレジットは作曲:チャック・ベリー/作詞:ブライアン・ウィルソンに改められます)ではありますが、ビーチ・ボーイズの「サーフィンUSA」は、“サーフィン・ミュージック”というものがインスト中心だったこの時代に、“サーフィン・ソングの歌モノ”の地位を確立し、オリジナルとはまた違った新しい魅力を楽曲に付加した名曲と評価されていいと思います。

 ちなみにチャック・ベリーが14歳少女売春容疑で逮捕され刑務所生活していたのは1960年初頭から1963年の間。その間にビーチ・ボーイズ、ローリング・ストーンズ、そしてビートルズがレコード・デビューしています。まさにロックの歴史を象った時期と言えますね。森 陽馬

★映画内でかかった「サーフィンUSA」がビーチ・ボーイズのヴァージョンだったかどうか、書きながら不安になってきました。(カヴァーだったかも?) ちゃんとエンド・クレジットで確認しなかったのですが、もしご覧になってクレジットを確認された方いらっしゃいましたら是非教えてください。

<8/23追記>
映画内でかかる「Surfin' USA」は、“The Will Lee Voices”というグループによるカヴァーでした。情報ありがとうございました。

2009年8月23日(日) Eddie Reader 「Sweet Mountain Of Love」

 今日は素敵なカヴァー曲を紹介したいと思います。

 フェアーグラウンド・アトラクションのエディー・リーダーの新しいアルバム『Love Is The Way』(国内盤ボーナス・トラック2曲追加 VICP-64749 \2,625)を聴いていたところ、6曲目に聴き覚えのあるメロディーが・・・。
 すぐにはなんの曲か思い出せないでいたのですが、サビのところの歌詞がタイトルをコールしてくれるので思い出しました。

 なんと、ブライアン・ウィルソンが携わった女性グループ、“スプリング”。1972年発表唯一のアルバムに収められている曲でした。

 その当時、ブライアン・ウィルソンの奥さんだったマリリンとその姉ダイアンの二人による“スプリング”(イギリスに同名のグループが存在していたので、“アメリカン・スプリング”と呼ばれることが多い)は、やはりビーチ・ボーイズ・ファンには必須科目のひとつと言えるでしょう。
 残念ながら、現在は以前出ていたスプリングのCDが入手困難な状態になっていますが、いつかまた再発してもらいたいものです。

 それにしても、「スウィート・マウンテン」(オリジナルはこのタイトルです)を取り上げるなんて、本当にいい趣味しています。

 近年エディー・リーダーの連れ添いであるトラッシュキャン・シナトラズのジョン・ダグラスによるサジェスチョンでしょうか?
 アルバム全体としても素晴らしい出来で、「パーフェクト」ぐらいしか知らないフェアーグラウンド・アトラクションのファンの方にもオススメです。

 もちろんブライアン・ウィルソンのコア・ファンは一度は是非お耳に。森 

2009年8月24日(月) ルビナーズ 「ヘイ・リタ」

 10月31日、11月1日と来日が決定した。スポンジトーンズ。
 80年代にデビューし、ビートルズ愛に溢れたリヴァプール・サウンドを聴かせるアメリカの4人組バンドです。場所は高円寺HIGHと、新宿JAM。いまだ現役という事で、どんな演奏を聴かせてくれるのか、ビートルズのカバーも飛び出すのか? 今から楽しみです。

 今日の一曲はスポンジトーンズ...では無く、2年前同じく新宿JAMで来日公演を行なったルビナーズの『ベースメント・テープス』(AIRCD-73 \2,625)というアルバムから。

 80〜81年、3rdアルバム用に制作されたものの、当時お蔵入りになってしまい、91年にやっとリリースされた一枚。こちらは長らく廃盤だったものにボーナストラック3曲(83年のデモ)を追加&紙ジャケとして再発されたものです。

 黄色いジャケットにはDemoの文字がありますが、ボーナストラック3曲を除く13曲は、デモという感じはまったく無く、楽曲、ハーモニーなど抜群に良いものばかり!

 フライング・マシーン「笑って!ローズマリーちゃん」のアンサーソングであるという「ヘイ・リタ」や、先達のバンドへのオマージュ、アニメ・ソング風など遊びも詰まった捨て曲無しの一枚です。彼らもまた来日してくれると良いですね!東尾沙紀

2009年8月25日(火) ジョージ・ベンソン 「セイリング」

 明け方はめっきり涼しくなって秋の到来が感じられるようになりましたが、今日は秋のBGMにピッタリ合いそうなニュー・アイテムをご紹介。

 名ジャズ・ギタリストであり、シンガーとしても名唱を多く残しているジョージ・ベンソン。アル・ジャロウとの共作『Givin' It Up』から約3年ぶりとなる新作アルバム『Songs And Stories』(国内盤ボーナス・トラック1曲追加 UCCO-1085 \2,500)が本日入荷しました。

 全体的に歌モノ中心の作りですが、1曲1曲がとても充実。
 ジェイムス・テイラー作「Don't Let Me Be Lonely Tonight (寂しい夜)」のブラジル/サンパウロ録音によるカヴァー、ダニー・ハサウェイの娘であるレイラ・ハサウェイをfeatしたビル・ウィザース書下ろし新曲C「A Telephone Call Away」、それに続くのがダニー・ハサウェイの名曲「Someday We'll All Be Free」カヴァー、スモーキー・ロビンソン書下ろし新曲I「One Like You」(リー・リトナー参加)、スティーヴ・ルカサー&デヴィッド・ペイチ作の新曲B「Show Me The Love」、ラモン・ドジャー作新曲J「Living In High Definition」、今作のプロデュースも担当しているマーカス・ミラーによる新曲G「Exotica」、トニー・ジョー・ホワイト作名曲H「Rainy Night In Georgia」カヴァーなど、ギターも歌も魅力的な楽曲が並んでます。

 その中から今日はクリストファー・クロス「セイリング」のカヴァー。
 歌モノが続く作品にあって、この曲は彼らしいメロウなギター・インストを聴かせるブラジル録音のナンバー。
 「実際に海の上にいるような気分で演奏した」と彼自身インタビューで答えているように、聴いているこちらも“セイリング”している気分になれる極上の1曲です。森 陽馬

2009年8月26日(水) ビル・ウィザース 「消えゆく太陽」

 もう約3週間前の話になってしまうのですが、ロマン・アンドレンの初来日公演を東京コットン・クラブで見ることができました。

 ロマン・アンドレンが昨年1月にリリースしたアルバム『ファニータ』は、2008年ベスト5に入れた作品だったので、初めてのライヴ、期待に胸膨らませて見に行きましたが、その期待以上に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
 彼の弾くフェンダーローズはもちろん、黒人ギタリスト&若き凄腕ベーシスト&手数多いドラマー&熱いパーカッショニスト&ミニスカートがセクシーだった女性シンガーなどメンバー各々見せ場十分でとても楽しかったです。

 そのライヴはオリジナル曲中心でしたが、ビル・ウィザースの名曲「Ain't No Sunshine」(邦題:消えゆく太陽)のカヴァーを他の曲と繋げて演奏していたのが印象に残っています。

 基本的にオリジナルに忠実なアレンジで、以前ネヴィル・ブラザーズのアーロン・ネヴィルがレパートリーとして歌っていたこともありましたね。曲自体は1971年発表ヒット曲ですがどちらかというと比較的地味な1曲。歌詞に深みがある?せいか、ミック・ジャガーがカヴァーした「Use Me」、名曲「Lean On Me」など、ビル・ウィザースの曲は意外とカヴァーされることが多いですね。

 ちなみに昨日紹介したジョージ・ベンソンの新作に、ビル・ウィザースによる書下ろし新曲も収録。ビルはすでに音楽界から半引退状態だったようですが、この曲のみジョージ・ベンソンに向けて新曲を書き下ろしていて、ビル・ウィザースらしいメロディーを聴かせています。森 陽馬

★掲載ジャケットは「Ain't No Sunshine」収録、ビル・ウィザースお買い得ベスト盤。(MHCP-1120 \1,785)

2009年8月27日(木) Tron Jensen 「Searching For An Island」

 音楽評論家の天辰保文さんが解説を書き、推薦されていたので、気になって早速購入。

 トロン・イェンセンはノルウェーの男性シンガー・ソングライターで、この作品『ノルウェーの海 (原題:Ocean)』がデビュー・アルバム。(SICP-2289 \2,520)
 ジャケットのイメージから、ジャック・ジョンソン的な雰囲気の音かな?と思って聴いてみると、全然そうではなくて、“ジャクソン・ブラウンとU2を合わせて叙情的な風味を混ぜた感じ”の1枚でした。

 特に1曲目「Searching For An Island」。
 歌い回しというかメロディーの作りがジャクソン・ブラウン的、更にイントロのギターがデヴィッド・リンドレーのような音色なので、声は全然違うのですがジャクソン・ブラウンの曲みたいです。(切ない船出を想起させる歌詞もジャクソン・ブラウンが書きそうな詞ですね。) 地味ではありますが個人的にかなり気に入っている1曲。

 ちなみに他の曲は、“U2とシンプリー・レッドに影響を受けたヨーロッパ・シンガー・ソングライター・サウンド”。
 アルバム後半には、ギリアン・ウェルチ作「神のハイウェイ (原題:Orphan Child)」のカヴァーもやっています。森 陽馬

2009年8月28日(金) Luciana Souza 「Amulet」

 ジョニ・ミッチェルの元夫であり、名ベーシスト/プロデューサーとして知られるラリー・クライン。その彼の現在の奥方であるブラジル/サンパウロ出身女性シンガー、ルシアーナ・ソウザの新作が発売。(『TIDE』 輸入盤 universal 531729)

 約2年前に発表された前作『The New Bossa Nova』(2007年8月31日の今日のこの1曲コーナーでも取り上げました)では、ビーチ・ボーイズ「God Only Knows」やジェイムス・テイラー「Never Die Young」を取り上げながらも、全体的なサウンドは非常にシンプルな作りで、正に“新しいボサノヴァ”といった1枚でしたが、今作はその音色を継続しながらも演奏がよりふくよかになった印象。

 彼女の美声と上品なアコースティック・サウンドが聴くほどに心地良く馴染んでくる極上のブラジル/ジャズ・ヴォーカル盤。女性シンガー好きの方に絶対おすすめの1枚ですね。

 今作はブラジル系カヴァーとオリジナルが中心で、ポップス系のカヴァー曲はほとんどないのですが、アルバム最後に「Amulet」というポール・サイモン作の曲が収録されていました。

 今までのポール・サイモンのアルバムには入っておらず、今年2月、あるイベントにサイモン&ガーファンクルとして出演した際初披露された楽曲のようなので、ポール・サイモンによる新曲のようです。

 歌詞はなく、独特な節回しのスキャットと叙情的なアコースティック・ギター(ラリー・クラインが弾いてます)による約2分の小品的ナンバーで、このアルバムではラストに収録されていますが、S&G「Sound Of Silence」のプロローグとしても使えそうな感じ。ポール・サイモンの独唱ヴァージョンも聴いてみたいですね。森 陽馬

2009年8月29日(土) アッタ・アイザックス 「メレ・リイ」

 たまには歌のない、のんびりとしたインストゥルメンタルを聴きたくなります。そんな時最適なのがこのアルバムです。

 アッタ・アイザックスといっても、よっぽどのハワイ音楽ファンでないと知らない名前だと思いますが、ロック・ファンには、ライ・クーダーの名作『チキン・スキン・ミュージック』にギタリストとして参加していたので、そのクレジットで名前を憶えている方もいらっしゃるかもしれませんね。

 このアルバムはその彼の唯一のソロ・アルバム。
 1972年ハワイのサウンズ・オブ・ハワイ・スタジオでの録音で、とても珍しい幻の名盤だそうですが、なんと昨年日本で世界初CD化されたのです。(『アッタ』 OMCX-1203 \2,415)

 気持ちをゆるやかにしてくれるハワイのスラック・キー・ギター。本当にいいですね。

 この「メレ・リイ」という曲は解説によると、“小さな(リイ)・曲(メレ)”という意味だそうで、2分間のちょっとした小品ですが、なんともいい雰囲気を運んできてくれます。森 勉

2009年8月30日(日) Brendan Benson 「Eyes On The Horizon」

 アメリカのポップ・シンガー、ブレンダン・ベンソンが4年ぶり4枚目となるソロ・アルバム『My Old Familiar Friend』(国内盤ボーナス・トラック2曲追加 HSE-70076 \2,490)をリリースしました。

 96年デビュー、13年でアルバム4枚と作品数も多くはないので、ブレンダンって誰?という方も多いかもしれませんが、最近だと2006年にジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)と組んで成功を収めた“ザ・ラカンターズ”のメンバー...、ということでピンとくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 ジェイソン・フォークナー(ジェリーフィッシュ)と共作していた1st、2ndなどは地味ですが正統派アメリカン・ポップスといった感じの爽やかな曲が多かったので、私は後追いで聴いてすぐ好きになりました。

 Evan B.Harrisというイラストレーターが手掛けたジャケット(独特ですが素敵な絵です)だけを見ると、すごく渋いルーツ音楽的なことをやってるのかなと思ったのですが、1曲目から彼らしいポップ・ソング炸裂でなんだかホッとしました。キーボードの音が初期のコステロを連想させます。

 プロデュースを手掛けるのが、ギル・ノートン(ピクシーズ、フー・ファイターズ)という人で、いわいる最近のロックの音という感じですが、ストリングスが使われていたり、曲によって声の重なり方が気持ちいい瞬間があったり、彼の書くまっすぐな中にもひねりの聴いたメロディー満載で、聴きやすいアルバムです。

 彼の師匠ともいえるジェイソン・フォークナーも9月2日に日本先行で新作がリリースされます。東尾沙紀

2009年8月31日(月) ジャンクフジヤマ 「秘密」

 今までにも“山下達郎フォロワー”であるとか、似た雰囲気のサウンドを聴かせる作品は時々出てきていましたが、今日紹介する藤木直史こと“ジャンクフジヤマ”は、今までで一番“初期の頃の山下達郎”を彷彿とさせる新世代のミュージシャンと言えるでしょう。

 お客様から教えてもらって先日チェックしていたのですが、別方面からの情報で、村上ポンタさんが注目しているアーティストとして彼の名前を挙げていた、という話も伺い、早速商品を注文して聴いてみました。(『A COLOR』 PRM-10 \1,800)

 1曲目「秘密」の冒頭、「スパークル」的なギターのカッティングによるイントロが出てきて思わずニヤリ♪
 そして、歌声が出てきて更にビックリ! 声の質は若干違うものの歌い方や雰囲気は本当に山下達郎さんにソックリですね。

 CDの帯に“シティ・ポップ”という言葉が使われている通り、サウンドや曲調は最近のチャート系J-POPとは違い、70'sの温もりを感じさせる穏やかなもの。
 まだこのミニ・アルバム1枚しか出ていませんが、ポップなメロディ・センスも良いのでこれからが楽しみ。11月26日には目黒ブルースアレイで、村上ポンタさん(ds)、松原秀樹さん(b)、天野清継さん(g)他豪華バックメンツを従えライヴをやるそうです。森 陽馬






トップへ
戻る