PET SOUNDS RECORD
今日のこの1曲 アーカイヴス


  今日のこの1曲 “Achives”

<2010月2月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて、
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2010年2月に更新した“今日のこの1曲”コーナー。
廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。


<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2010年2月1日(月) ジェイソン・ムラーズ 「Make It Mine」

音楽界で非常に栄誉あるアメリカのレコード大賞、“グラミー賞”。
 第52回の受賞者が昨日発表になりました。

 今回のグラミー主要部門は、ビヨンセ、テイラー・スウィフト、レディー・ガガによる三つ巴。あと、キングス・オブ・レオンというロック・グループが<Record Of The Year>を獲得しましたが、メディアの話題はやはりマイケル・ジャクソンの特別功労賞でしょうか。授賞式全てを見たわけではありませんが、やや新鮮味に欠ける印象のラインナップでしたね。

 その中で注目は<Best Male Pop Vocal Performance>。
 ジョン・レジェンド、シール、マックスウェル、スティーヴィー・ワンダー、という黒人4人の強力ノミネート者を破り、見事ジェイソン・ムラーズが受賞しました。(ノミネートは5組なのでジェイソン以外は皆黒人だったわけです)

 「Make It Mine」という曲で獲得しましたが、この曲が収録された2008年発表の3rdアルバム『We Sing, We Dance, We Steal Things』(WPCR-13556 \1,980)は本当にいいアルバム! 当店の2008年ベストに選出しなかったのが悔やまれるくらい、最近になってより素晴らしさを再認識している1枚です。

 日本では「I'm Yours」という和み系の曲がFMでよくオンエアされましたが、個人的には@「Make It Mine」、C「Butterfly」、I「The Dynamo Of Volition」が最高にかっこよくてお気に入り。
 昨年末12月6日に紹介した彼のライヴ盤『ライヴ・オン・アース』(国内CD+DVD WPZR-30359 \3,480)でのヴァージョンもオススメです。

 ちなみに<Best Pop Collaboration With Vocals>というデュエット&コラボ賞もあって、そこでもジェイソン・ムラーズ&コルビー・キャレイ「Lucky」が見事受賞を果たしました。
 この「Lucky」、そして「Make It Mine」も収録されている3rd『 We Sings,〜』は、発売からまだ2年しか経っていませんが、00年代の大名盤!と評してもおかしくない素晴らしいアルバムです。まだ持っていない人は今からでも是非チェックしてみてください。森 陽馬

2010年2月2日(火) 冨田 ラボ 「パラレル」 feat 秦基博

 “日本のバート・バカラック”と評され、数多くの素晴らしい作品をプロデュースしている名コンポーザー、冨田恵一。
 “冨田ラボ”名義による3rdアルバム『Shipahead』が本日入荷。(RZCD-46436 初回DVD付 \3,465)

 2003年発表『Shipbuilding』、2006年発表『Shiplaunching』に続く“ship”三部作のラストを飾る今作にも豪華ゲストが多数参加。

 鈴木慶一が作詞を担当し佐野元春が歌うA「ペドロ〜消防士と潜水夫」(佐野さんの歌い方が鈴木慶一そっくり!)、吉田美奈子節全開のJ「千年紀の朝」、C一十三十一による「夜奏曲」他、お馴染みのキリンジ、ケミストリー、安藤裕子等、ミュージシャンの個性を活かしつつも、冨田恵一によるサウンド・メイキングの妙が随所に感じられる統一感ある仕上がりです。

 その中でも白眉はE「パラレル」。
松本隆による切ない歌詞と、秦基博の歌声が本当に素晴らしい1曲!

 松本隆&冨田ラボの最強タッグは今までにも、「眠りの森 (feat ハナレグミ)」という名曲を生み出していましたが、この「パラレル」はそれを凌ぐくらいのイイ曲! ホント、この最強タッグで1枚アルバムを丸々作ってもらいたいです。

 ちなみに初回盤のDVDには「ペドロ〜消防士と潜水夫」のビデオ・クリップ(佐野元春さんがほんのチョット出てきます)、「あの木の下で会いましょう」のビデオ・クリップ(安藤裕子がキュート♪)が収録されています。森 陽馬

2010年2月3日(水) ジョニー・スミス・クァルテット 「ウォーク・ドント・ラン」

 「ウォーク・ドント・ラン」(近年は「急がば廻れ」という邦題はあまり使われなくなったようです)と言えば、ヴェンチャーズ1960年の大ヒットですが、作曲したのはジョニー・スミス。
 白人ジャズ・ギタリストとして、ジャズ界では名の通った存在の人です。

 1954年に発表されたアルバム『MOODS』の中に収録されている「ウォーク・ドント・ラン」が最初のヴァージョンで、ヴェンチャーズのボブ・ボーグルとドン・ウィルソンはそれを聴いて自分達も演奏しよう、ということになったのだと思われます。

 こちらは1967年録音の『カレイドスコープ』(UCCV-9417 解説付 \1,100)に収められている再演ヴァージョン。
 ヴェンチャーズの演奏を聴いた後のセルフ・カヴァーということになります。

 なんとも格調高い「ウォーク・ドント・ラン」になっていて、一音・一音丁寧に音を刻んでいくジョニー・スミスの指の動きが、聴いていると頭に浮かんできます。ピアノのハンク・ジョーンズも好サポートしています。

 今回このCDが、ユニヴァーサル・ミュージックより<ヴァーヴお宝コレクション>というシリーズで、なんと1,100円(!)という安い価格で再発されました。

 その他に「酒とバラの日々」、「マイ・フーリッシュ・ハート」、「ドリームズヴィル」等スタンダード曲も収録。ゆったりしたジャズを聴きたい方にオススメです。森 勉

2010年2月4日(木) ミッドレイク 「Bring Down」 

 UKを中心に高い評価を受けた前作『The Trials Of Van Occupanther』2007年1月21日にこのコーナーで取り上げました)から約3年。
 テキサス州出身の5人組、ミッドレイクが3作目となる新作『The Courage Of Others』(HSE-70094 ボーナス・トラック追加収録 \2,490)をリリースしました。

 様々なタイプの曲が収録され、アメリカン・ルーツ・ロックからの影響が濃かった前作に比べると、今作ではブリティッシュ・フォーク、サイケ、トラッドに近づいた作品。
 全体的なトーンはより暗く重くなりましたが、持ち味である美しいコーラスは前作とかわらずです。フルートが全体を通して効果的に使われています。

 今日のこの1曲「Bring Down」ではレーベルメイトの女性シンガーStephanie Dosenをフィーチャリング。サビにかけて段々と盛り上がる展開がドラマチックな一曲です。

 幻想的で美しいコーラス、一般的にヒットしないけれどメディアの評価は高いという点でフリート・フォクシーズと共通する部分も多いのかもと思ったら、イギリスでは2組とも同じ、ベラ・ユニオンというレーベルに所属しているというのを最近になって知りました。

 フリート・フォクシーズに比べると暗めですが、深い森の中に迷い込んだような独特の詞の世界、サウンドはハマるととても心地良いですよ。東尾沙紀

2010年2月5日(金) Roman Andren 「Let It Out!」

 “2008年ベスト・アルバム”に選出したロマン・アンドレン。
 昨年8月の来日公演では素晴らしいライヴも見せてくれた彼の最新アルバム『カラー・グリーン』が先日発売になりました。(PCD-93317 解説・歌詞・対訳付 \2,415)

 映画『地獄の黙示録』の元となった小説「闇の奥」(ジョセフ・コンラッド著)からインスパイアを得て作られた1枚、ということで前作とはまた違った趣のコンセプト・アルバム。

 前作ではアナログ的質感だったサウンドも、今作ではキレのある演奏を全面に押し出した音作り。2008年8月にリリースされた『ファニータ&ビヨンド:ライヴ・スタジオ・セッションズ』というスタジオ・ライヴ作品に近いサウンド・アレンジですね。

 “コンセプト・アルバム”と書くと、重たい作品?、と身構えてしまうかもしれませんが、全然そんなことはなく、歌が入っている8曲の歌詞も“LOVE”をテーマにした詞なので、北欧産ブラジリアン・ジャズ・アルバムとして楽しめる1枚に仕上がっています。

 特に、来日公演でも披露されたH「Let It Out!」はNICE!
 弾むようなピアノのリズムにグルーヴィーな演奏と多幸感溢れる歌詞が見事に絡み合ったゴキゲンな1曲です。森 陽馬

2010年2月6日(土) Dionne Bromfield 「My Boy Lollipop」

 なんと! 13歳!!!

 ロンドン出身の黒人女性シンガー、ディオンヌ・ブロムフィールドの1stアルバム『Introducing Dionne Bromfield』(LIONESS 2720319 \2,500)。
 彼女はまだ13歳だそうですが、これが素晴らしいアルバムなのです。

 エイミー・ワインハウスが設立したレーベル“LIONESS”からのリリースということで、サウンドは今風のR&B的な感じではなく、生演奏を基にしたルーツ色ある音作り。

 13歳のあどけなさと、堂々としたソウルフルな佇まいが同居した彼女の歌声がまた魅力的で、同じく英国のソウル・シンガーであるジョス・ストーンや先輩エイミーほどアクの強さがないのがイイ感じ。

 選曲もソウル/オールディーズ・ファンのツボを見事に突いていて、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルで有名な「Ain't No Mountain High Enough」、マーヴェレッツ「Beachwood 45789」、シフォンズ「He's So Fine」など、60'sソウルの名曲をゴキゲンなアレンジでナイス・カヴァーしています。

 特にC「マイ・ボーイ・ロリポップ」!
 ミリー・スモールで有名なガール・ポップ名曲を伸び伸びと歌っていて最高! (曲後半の口笛も彼女自身?)

 ソウル・ファンはもちろん、ガール・ポップ好きの方にも大推薦の1枚です。森 陽馬

2010年2月7日(日) マーク・リンゼイ 「イッツ・トゥ・レイト」

 ポール・リヴィア&レイダーズは1960年代中期に、「ジャスト・ライク・ミー」、「キックス」、「グッド・シング」などヒットを連発し活躍したアメリカのビート・グループ。
 そのリード・ヴォーカルがマーク・リンゼイでした。

 歌もうまいし、声もいいし、時にはワイルドにシャウトして・・・。
 それはそれはかっこいい存在で、女の子はもちろん、男の子にも人気がありました。

 その彼が1969年からはソロ活動も開始。
 このアルバムは1971年に出たソロ3作目です。(『君の友だち』 限定紙ジャケット仕様 SICP-1696 \1,890)

 当時話題になっていたシンガー・ソングライターの曲を取り上げています。
 クリス・クリストファーソン、デヴィッド・ゲイツ、ゴードン・ライトフット、ジミー・ウェッブ、そしてこの曲はキャロル・キング。

 ちょっと力の抜いたソフトな歌い方とラストの幻想的な演奏がいい雰囲気を醸し出しています。ちなみに「You've Got A Friend」(きみの友だち)も歌っています。森 勉

2010年2月8日(月) Robert Francis 「Junebug」

“レッチリのジョン・フルシアンテにギターを教わった”
“ライ・クーダーからギターを贈られた”
“ジェイソン・ムラーズのマネージャーが発掘”
“若き日のスティーヴ・アールとも比較されるアメリカン・ロックの救世主”

 上記の宣伝文句とジャケット写真にひかれて購入。最近店でよく聴いているのが21歳男性シンガー・ソングライター、ロバート・フランシス、昨年末に発売になったアルバム『Before Nightfall』。(輸入CD Atlantic 521111)

 率直な感想としては、“ブルース・スプリングスティーン+U2”といった感じですね。歌声がブルースとボノを足して2で割った雰囲気。

 サウンドもちょっとU2っぽいメロディーの楽曲に、アメリカン・ロック的なタイトな演奏が入る曲が多いです。聴く前はライアン・アダムスやサンヴォルトのような渋いルーツ・ロックを想像していましたが、それともちょっと違うアメリカン・ロック。

 一言で評すると、“ブルース・スプリングスティーンの作品からアクを抜いてU2風味を加えすっきりさせた1枚”。
 かっこいい曲も多いのですが、完成度が高すぎるせいかちょっときれいにまとまり過ぎている印象も若干ありますね。もっと豪放にギターを弾きまくる曲とかがあってもよかったような気がします。

 今日のこの1曲は2曲目に収録されている「Junebug」。
 この曲はイントロやサビのメロディー、そしてアレンジもモロに“ブルース・スプリングスティーン+U2”しています。森 陽馬

2010年2月9日(火) 矢野顕子 「きよしちゃん」

 矢野顕子の新作『音楽堂』が本日入荷。(YCCW-10108 \3,150)

 今回の新作は、ピアノ弾き語りアルバム。
 T・ボーン・バーネットがプロデュースした前作『akiko』も素晴らしい作品でしたが、唯一無二のピアノ・ワールドが無限大に広がる弾き語りスタイルはやっぱりイイですね。

 タイトルが『音楽堂』となっている通り、レコーディングは神奈川県立音楽堂にて一発録り。92年発表名作『スーパー・フォーク・ソング』から矢野さんの作品をいくつか手掛けてきた吉野金次がエンジニアを担当しており、凛とした彼女の歌とピアノをより引き立たせています。

 第4弾となる今回の弾き語り作品も選曲が面白くて、くるり「グッドモーニング」&「春風」、ムーン・ライダーズ「犬の帰宅」、岡林信康「嘆きの源にある時も」、山口百恵「いい日旅立ち」、エルレガーデン「右手」(これがイイ!)から、洋楽ではウィーザー「Say It Ain't So」、ドン・マクリーン「Vincent」、そして上原ひろみ作「Green Tea Farm」など、様々なジャンルから取り上げ、それを矢野顕子流アレンジでカヴァーしています。

 でもやっぱり一番のハイライトは、矢野顕子作H「きよしちゃん」。

 忌野清志郎に癌が見つかった2006年頃、矢野顕子が彼を励ますために作ったと思われる楽曲。これまでライヴでは演奏されていましたが、今回初めてCDに収録されました。

 他の人が歌うとクサくなりそうな歌詞ですが、彼女が歌うと胸に沁みますね。というよりも、この曲は矢野顕子以外には歌えない1曲、矢野顕子だからこそ書けた1曲と言っていいと思います。

 矢野顕子的な歌い方をするミュージシャンや、影響を受けたピアノ・シンガーも色々と出てきましたが、やはり“矢野顕子”はオンリーワンな存在だ、と今作を聴いて改めて実感しました。森 陽馬

2010年2月10日(水) Dr.Feelgood 「Roxette」

 日本では今のところ公開未定ですが、イギリスでは今月初旬からドクター・フィールグッドのドキュメンタリー映画『Oil City Confidentialが公開されています。

 監督はザ・クラッシュやセックス・ピストルズなど、ロック映画を撮っているジュリアン・テンプル。
 日本でもパブ・ロック好きな方、影響を受けたというミッシェル・ガン・エレファントを通じてのファンも多いと思いますし、是非日本公開してほしいものです。
 予告編をサイト上で見る事が出来ます。ウィルコ・ジョンソン在籍時を中心にライブ、インタビュー映像を交えた映像がかっこいいです。

 もうひとつ、こちらも日本公開は未定ですが、1月から公開されているアン・デューリーの伝記映画「Sex & Drugs & Rock & Roll 」(リンク先音がでます)。
 こちらはドキュメンタリーではなく俳優が演じているものですが、予告編を見るとイアン・デューリー役のアンディ・サーキス(ロード・オブ・ザ・リングのゴラム役など)が雰囲気出ていてすごく面白そう!
 音楽はブロックヘッズのチャズ・ジャンケル。
 こちらも併せて是非公開して欲しいです。

 掲載ジャケットは、ドクター・フィールグッドの『ダウン・バイ・ザ・ジェティー』(TOCP-53848 \1,500)。
 ウィルコのカッティング炸裂の必殺ナンバー「She Does It Right」、ベース・ラインとブルース・ハープがかっこいい「Roxette」など収録。75年発表の名盤です。東尾沙紀

2010年2月11日(木) Tom Waits 「Grapefruit Moon」

 当店で大推薦している大橋トリオが、3月10日にカバー・アルバム『FAKE BOOK』(RZCD-46458 \2,100)をリリースします。
 8曲入りながら、選曲が実に多彩!
1.Dancing In The Moonlight (キング・ハーヴェストで有名 隠れた名曲!)
2.travelling (宇多田ヒカル)
3.贈る言葉 (海援隊)
4.HUMAN NATURE (マイケル・ジャクソン)
5.I'm Yours (ジェイソン・ムラーズ)
6.Grapefruit Moon (トム・ウェイツ)
7.Dreams (クランベリーズ)
8.突然の贈り物 (大貫妙子)

 彼の公式サイトで何曲か試聴できますが、どの曲も“トリオ・スパイス”がまぶされていてイイ感じ! 発売が楽しみです。(当店のみの特典も作成予定です)

 この中で特に好きな曲というと、やはりトム・ウェイツ「グレープフルーツ・ムーン」でしょうか。

 フジテレビ開局50周年記念ドラマ『不毛地帯』のエンディング・テーマに「トム・トラバーツ・ブルース」が使われ、一般的にもトム・ウェイツ人気が再燃。個人的に昔トム・ウェイツを集めたことがあって、中〜後期のダミ声にも一応免疫がありますが、やっぱり1st『クロージング・タイム』が一番好きですね。

 イーグルスもカヴァーした「Ol'55」ももちろん名曲だけれど、沁みるのは11曲目「Grapefruit Moon」&ラストのインスト「Closing Time」。イントロ&曲中のピアノが本当に素晴らしい! (ちなみに三軒茶屋に“Grapefruit Moon”というライヴ&バーがあります。)

 なお、この『クロージング・タイム』含むトム・ウェイツの初期7作が完全限定紙ジャケット仕様で3月10日に発売決定。リマスターもされており値段も各2,200円とお手頃です。
 1st『クロージング・タイム』と2nd『土曜日の夜』は人気が高い作品なので、購入予定の方は早めにチェックしておいた方がいいかもしれませんね。森 陽馬

2010年2月12日(金) Tift Merritt 「Something To Me」

 2008年発表作のため、“2009年ベスト・アルバム”には選出しませんでしたが、昨年一番よく聴いたのはこのアルバムかもしれません。
 女性シンガー・ソングライター、ティフト・メリットの3rdアルバム『Another Country』。(Concord 088872304550)

 これは本当に素晴らしい1枚! 00年代のソングライター名盤として後々にも語り継がれていく名作だと個人的には思っています。

 ジェイ・ホークスやブラック・クロウズを手掛けたことで知られるGeorge Drakouliasがプロデュースを担当。彼の爽やかなアコースティック・ロック・アレンジと、彼女の口ずさみやすいメロディーが見事に融合しています。
 2002年発表の1st『Bramble Rose』、Lost Highwayレーベルからリリースした2004年発表2nd『Tambourine』もいい作品ですが、僕はこの3rdが一番好きですね。チャーリー・セクストンもギターで参加しています。

 国内盤は出ていないため日本での一般的な知名度は全くなく、どちらかというとカントリー寄りですが、女性シンガー&アメリカン・ロック好きの方に是非聴いてもらいたいミュージシャン。
 シャリル・クロウやルシンダ・ウィリアムスを更にポップにし聴きやすい楽曲にした感じで、本当に捨て曲がないオススメの1枚です。森 陽馬

2010年2月13日(土) ニック・ロウ 「プア・サイド・オブ・タウン」

 ♪ドゥッ・ドゥ・ドゥワー シュビ・ドゥビ♪
というイントロのリフレインにまずノックアウトされてしまいます。

 ジョニー・リヴァースが1966年に放った大ヒット曲のカヴァーです。

 さすが、ニック・ロウ、心ニクイ選曲!
と2001年の発表当時、各方面で大絶賛されていました。
 あれから早9年、この曲の良さを忘れないために取り上げてみました。

 1966年は今でも語り継がれる名曲の宝庫の年で、「サウンド・オブ・サイレンス」、「ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト」、「男が女を愛する時」、「グッド・ヴァイブレーション」、「カリフォルニア・ドリーミン」、「サニー」などがヒットしました。
 「プア・サイド・オブ・タウン」はその中に入っても見劣りしない名曲なのですが、ジョニー・リヴァースのこの曲が入った国内盤がCD化されないので、その頃を知っている人ぞ知る、という曲になってしまっているのが残念です。

 ニック・ロウのヴァージョンはオリジナルに忠実ながらも、出だしのドラムスや途中でさりげなく入るオルガンなど、新しいアイディアでこの名曲を盛り上げてくれています。森 勉

★アルバム『ザ・コンヴィンサー』に収録。(SCCD-8 \2,500)

2010年2月14日(日) ALO 「Put Away The Past」

 70年代ルーツ・ロック、アコースティック〜オーガニックなサウンドを聴かせるサンフランシスコ出身の4人組、ALOが前作『Roses&Clover』から約3年振りとなる新作『Man Of The World』をジャック・ジョンソンのレーベルBrushfire recordsからリリースしました。(国内盤が出る予定は今のところございません。)

 前作は2007年個人的ベストアルバムの中の一枚でした。
 4人の演奏力に圧倒された同年の単独公演も素晴らしく、とても印象に残ったライブでした。

 新作発売まで少し間があきましたが、その間にメンバーのザック・ギル(vo,key)、ソロ・アルバム・リリース。旧友ジャック・ジョンソンのサポートでの来日などあり、全くニュースが無かった訳ではありませんでした。

 共同プロデュースを務めるジャック・ジョンソン所有のハワイ・オアフ島のスタジオで録音された今作は、前作以上にゆったりとした曲が増え、終始リラックス・ムード。
 前作の「Maria」のようなフックになる曲は少ないものの、セッションの中でうまれたであろうジャム・バンド的な展開やシンプルなメロディーは聴くほどにじわじわと浸透していきそうです。随所に聴けるペダル・スティールがとても心地良い音をしています。

 今回もザックをメインに各メンバーのリード・ヴォーカル曲も収録。(ジャック・ジョンソンが歌う曲もあり!)
 やはり皆が曲を書けて歌えるというのは強味ですね。皆それぞれ良い声をしていてドラマーのDaveはハスキーで素敵な声。全員が影響を受けていると思いますが、特に彼の書くメロディーが一番70年代ロック的かなと思いました。
 
 ライブの即興演奏で様変わりしそうな曲ばかりなので、また単独来日してくれるといいなと思います。
 アコースティック・ロックお好きな方におすすめの一枚です。東尾沙紀

2010年2月15日(月) Irma Thomas 「Shelter In The Rain」

 東京は冷たい雨。
 2月はただでさえ28日しかなく売上も悪い月なので困ったものです。
 雨の名曲はたくさんありますが、今日は00年代の慈愛溢れるこの1曲。

 ♪君が思い悩んでいるとき、そして、にわか雨に遭ってしまった時、私が君が駆け込めるための雨宿りの場所になってあげるよ。♪
と、歌われるこの「Shelter In The Rain」はスティーヴィー・ワンダーが2005年に発表したアルバム『タイム・トゥ・ラヴ』に収録されているナンバー。
 元奥さんで2004年に逝去したシリータへ捧げた曲であり、またカトリーナ被害にあったニューオリンズ被災者への救済ソングになった名曲です。

 今日はその名曲を“ニューオリンズのディーヴァ”、アーマ・トーマスが歌っているヴァージョン。

 アーマ・トーマスは、トレイシー・ウルマンでヒットした「Break-A-Way」やストーンズがカヴァーした「Time Is On My Side」、雨の名曲「It's Raining」を歌っていることで知られるニューオリンズを代表する女性黒人シンガー。

 彼女の2006年発表アルバム『After The Rain』(Rounder 2186-2)にこの曲が収録されており、ピアノをバックに歌い上げるシンプルなヴァージョンですが、ニューオリンズ住民の様々な思いがその歌声に集約されているようで、ステーヴィーのヴァージョンとはまた違う求心力を感じます。

 他の曲には名スライド・ギタリスト、サニー・ランドレスも参加しており、ブルージーな味わい深い演奏も魅力。ニューオリンズ新名盤といえる内容なので、“雨の名曲”を集めている方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

2010年2月16日(火) サイトウタクヤ 「君は蜃気楼」

 流線形、フラッシュバックあの人、ジャンクフジヤマなど、昨年は現代日本シティ・ポップの良い作品が色々と出ましたが、今日紹介するサイトウタクヤの最新アルバム『GOLDEN MAGIC』(OMCR-1 \2,300)は、その中に入っても指折りの1枚と言っていいでしょう。

 サイトウタクヤは秋田県出身の男性シンガー・ソングライター。
 寺尾紗穂さんも所属していたikanika MUSIC LABORATORYからアルバム『rain fruits music』をリリースし、このコーナーで取り上げたことがありましたが(2006年6月9日)、今回はその前作をはるかに凌ぐ仕上がり。

 Makkin & the new music stuffのリーダーであり、名ベーシストの松木“Makkin”俊郎を中心としたバックの演奏がとにかく素晴らしく、温かみのあるサウンド・アレンジもNice!

 “下北沢の冨田ラボ”と言われるその松木俊郎以外にも、寺尾紗穂さん、シーナアキコ、只熊良介やタバコジュースのメンバーが参加。サイトウタクヤが書く良質な楽曲に、優しいオーガニックな色彩を添えています。

 完全自主制作盤のため、一般流通はまだしていませんが、日本シティ・ポップ作随一の完成度。サニーデイ、キリンジ、ママレイド・ラグなどがお好きな方には絶対に聴いてもらいたい1枚ですね。

 ちなみに3月7日(日)千歳船橋APOCシアターにてアルバムのレコ発ライヴがあり、寺尾紗穂さん他参加しているメンバーが集結して行なわれるそうです。気になった方は是非チェックしてみてください。森 陽馬

通販コーナーに掲載いたしました。

2010年2月17日(水)バート・バカラック 「サウス・アメリカン・ゲッタウェイ」

 今月も20日が近づいてきました。
 アゲインでのDJイベント、今回の特集は『映画音楽』です。

 グラフィック・デザイナーの高瀬康一さんをお招きして、二人で好きな映画音楽をかけまくりながら語り合いたいと思います。
 王道からレアものまで、アメリカ映画、ヨーロッパ映画、色々と幅広くかかる予定です。高瀬さんも映画が大好きな方なので、独自の視点で選んだ珍しくてイイモノを披露してくれると思います。

 2月20日は土曜日なのでいつもより早めの16時半オープン、17時スタートです。よろしくお願いいたします。

 さて、今日のこの1曲はバート・バカラックの才気が爆発したサントラ盤『明日に向かって撃て!』(UICY-3569 \1,835)から、「サウス・アメリカン・ゲッタウェイ」(邦題:自由への道)です。

 スキャットがうまく使われていて、アレンジャーとしてのバカラックの素晴らしさが伝わってきます。

 ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス。
 映画に出演した役者さんたちも音楽と共に、印象に残っている名作ですね。森 勉

2010年2月18日(木) アン・サリー 「こころ」 

 以前、当店の旧店舗前にあった桜の木
 武蔵小山駅前開発に伴い千葉の土気へ移植され、毎年徐々に花も咲くようになってきていました。(詳細は上記リンク参照)

 ところが突然、移植先の造園会社から、「桜の木を本日切る」という連絡が。
 どういう事情で、切る、ということになったのかははっきりわからないのですが、桜の木は私たちの所有物でないもののとりあえず切るのを待ってもらう要請を出しました。

 新たな移植先候補を今検討中で、移植を担当した品川区にも了解を得ようとしているところです。
 なんとか切らずにまた移植できればいいのですが・・・。
 この件に関しては、また新たな展開があったらご連絡いたします。

 今日のこの1曲は、旧店舗閉店前、よくかけていた1枚。
 アン・サリーの2003年発表アルバム『デイ・ドリーム』。(BVCR-14008 \2,835)

 同時発売された『ムーン・ダンス』も素晴らしい選曲ですが、こちらもビーチ・ボーイズ「ディズニー・ガール」、細野晴臣「三時の子守唄」、吉田美奈子「レインボー・シー・ライン」など名曲揃い。
 特に、沢知恵作による「こころ」は感動的です。森 陽馬

2010年2日19日(金) ホセ・フェリシアーノ 「ハートに火をつけて 〜Light My Fire」

 待望の日本初CD化です。(『フェリシアーノ!』 SICP-2556 \1,995)
 2010年リマスター、そして世界初紙ジャケット化。
 うれしいですね。これで我が家のノイズだらけのアナログ盤でなくて、いい音のCDで名盤を心ゆくまで楽しめます。

 全11曲、1曲1曲が素晴らしく、全曲がカヴァーでありながらホセ・フェリシアーノのヴォーカリスト、ギタリストとしての個性がたっぷり味わえる作りになっています。

 ホセ・フェリシアーノは1945年プエルトリコ生まれ。
 目が不自由というハンデがありましたが、1960年代前半からニューヨークで音楽活動を始めました。1968年に発表になったこの『フェリシアーノ!』というアルバムでブレイクするまでの4年間、レコードは出していましたがほとんど無名の存在でした。

 しかし、RCAレーベルのスタッフ&プロデューサーであるリック・ジェラード(ジェファーソン・エアプレインをメジャーに導いたプロデューサー)の勧めで、前年1967年に大ヒットしたドアーズの「ハートに火をつけて」をカヴァーしたことが大成功への糸口になりました。
 ホセのつまびくガット・ギターとラテン風味たっぷりのヴォーカルがうまくブレンドした「ハートに火をつけて」はドアーズとはまた違った魅力をこの曲に与えてくれています。

 1968年全米第3位の大ヒットを記録したこのホセ・フェリシアーノのカヴァーのおかげで、ドアーズの「ハートに火をつけて」がリヴァイヴァル・ヒットし、No.1になった1年後にまたチャート・インするという珍しいことも起こりました。

 この曲以外にも、ビートルズの3曲、ジェリー&ペースメイカーズの名曲「太陽は涙がきらい〜Don't Let The Sun Catch You Crying」、バート・バカラック、フレッド・ニール、トム・パクストン作品など、すべてナイス・カヴァーです。森 勉

2010年2月20日(土) Kevon Edmonds 「Never Let You Down」

 一昨日のこのコーナーで書いた“千葉に移植された桜の木”。
 更なる移植の場所がほぼ確定しました。
 品川区の了承&返答待ちですが、とりあえず切られることは回避できて一安心。老木なので新たな移植に耐えられるか不安もありますが、移植された場合、また新たな花が咲くことを祈りたいと思います。

 さて、今日のこの1曲は、メイズ feat フランキー・ベヴァリーのトリビュート・アルバムより。(『トリビュート・トゥ・メイズ』 PCD-17314 \2,310)

 メイズは70年代から活動しているソウル・グループ。
 現在国内盤がちゃんと出ていないため一般的な知名度はありませんが、昨年9月に15年ぶりの来日も果たし、スムース・ソウル・ファンの間では人気の高いミュージシャンです。

 そのメイズへのトリビュート・アルバムが昨年末に発売。こういうトリビュート盤はえてして、個性を出すためにオリジナルを大きく崩したアレンジであったり、歌もかなりフェイクされて歌われたりしますが、この作品は歌も演奏もアレンジもメイズ・サウンドを踏襲しておりすごく聴きやすくてイイ感じ。

 それというのも、フランキー・ベヴァリーの息子であり、実際にメイズに加入していたこともあるアンソニー・ベヴァリーが企画を担当。以前メイズに在籍していたメンバーの一部がバックを固め、極上のスムース・ソウルを聴かせてくれます。ムーディーな夜に聴きたいオススメの1枚。

 現代フィリー・ソウルの雄、ミュージック・ソウルチャイルドが歌う@「Silky Soul」他、どの曲もメロウなアレンジで良いですが、切ないミディアム・バラードG「Never Let You Down」がいいですね。
 ちなみにこれを歌っているケヴォン・エドモンズは、ベイビーフェイスのお兄さんだそうです。森 陽馬

2010年2月21日(日) ピーター・ガブリエル 「フィラデルフィア」

 プログレッシヴ・ロックの名バンド、ジェネシスに在籍し、ソロでも長きに渡って活動してきたピーター・ガブリエルがカヴァー・アルバムを発売。(TOCP-66925 \2,500)

 “『スクラッチ・マイ・バック』(僕の背中を掻いてくれ)”と名付けられたこの作品は、普通のカヴァー・アルバムとはちょっと違うコンセプト。
 「君は僕の曲を1つやってみてくれ、そうしたら僕も君の背中を掻いてあげる」という意味も込められており、当初はこのアルバムと同時に、カヴァーされたミュージシャンがピーター・ガブリエルの曲を歌うトリビュート的作品もリリースされる予定だったそうだ。(後々出る予定らしい)

 デヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」、ポール・サイモン「ザ・ボーイ・イン・ザ・バブル」、レディオヘッド「ストリート・スピリット」他、ピーター・ガブリエルらしい一筋縄でいかない選曲が面白いが、その中でも意外だったのはニール・ヤングの曲を取り上げていること。

 今まであまり接点がなかった二人だが、今回取り上げた「フィラデルフィア」(ジョナサン・デミ監督映画『フィラデルフィア』の主題歌。オリジナル・アルバム未収録曲)はピーター・ガブリエルの声に合っている印象。いつか出るであろう、ニール・ヤングがピーターの曲を歌うのも楽しみだ。

 ちなみにこのアルバムは、ギターとドラムを使用しない、というルールを作ってピーター自身が制作したそうで、基本的にピアノとオーケストラが中心の演奏。静寂の暗闇から浮き出てくるようなピーターの歌声が印象的な1枚だ。森 陽馬

2010年2月22日(月) ザ・シルキー 「悲しみはぶっとばせ」

 珍しいCDが出ました。
シルキー。(MSIG-624 解説・歌詞・対訳付 \2,835)
・・・といっても一般的には全く馴染みのない女1人男3人によるイギリスのフォーク・グループです。

 このCDが出るまで、40年以上も記憶の中から消えたような存在になっていましたが、やはり曲が曲だけにちゃんと憶えてはいました。
 ビートルズの映画『HELP!』の中で歌われた「悲しみはぶっとばせ」(You've Got To Hide Your Love Away)のカヴァーです。

 レコード会社はフォンタナ・レーベルでしたが、ブライアン・エプスタインがマネージメントを担当していたこともあり、この曲録音時にはスタジオ内に、
・プロデューサー(アドバイザー)としてジョン・レノンが、
・ギタリストとしてポール・マッカートニー(イントロのエレキ・ギター?)が、
・見学者(?)としてジョージ・ハリスンがいた、
と、ライナーノーツには書いてあります。

 1965年にイギリスでは28位、アメリカでは10位を記録するヒットになっています。サウンドは当時多くいたフォーク・ソングを歌うグループと同じですが、やはりビートルズの曲を歌って1965年にヒットを放ったという実存価値は高いものがあります。

 このCDは全16曲入り。ボブ・ディランのカヴァー11曲、シルキーのメンバーによるオリジナル4曲という構成で、60'sフォーク熱を感じられるCDです。森 勉

2010年2月23日(火) カジヒデキ 「恋の汽車ポッポ 第二部」

 “大滝詠一/ナイアガラ”恒例の3.21リリース。
 今年は『大瀧詠一 Song Book T』と『大瀧詠一 Cover Book T』、2タイトル発売予定ですが、更にもう1枚『オムニバス1〜大瀧詠一ファーストアルバム・カヴァー集(1980〜2010)』が急遽ラインナップに加わることになりました。(DDCB-12340 \2,500)

 『Song Book T』と『Cover Book T』がナイアガラ・レーベル(ソニー・ミュージック)からのリリースであるのに対して、『オムニバス1』はインディー・レーベル(バウンディー)からの発売ではありますが、発掘音源に加え更に新録音曲が5曲も入っているのが魅力。

 曽我部恵一、小島麻由美、カコイミク、HMOとかの人(初音ミク・オーケストラ)、と新録曲は豪華メンツ。
 中でもカジヒデキさんによる「恋の汽車ポッポ第二部」は多幸感溢れるアレンジで良かったですね。結構凝った音作りながら、とても楽しい1曲に仕上がっています。

 他にも高田渡が歌う「それはぼくぢゃないよ」(怖+高田渡名義)など、あまり知られていない発掘音源もあり、更に、ジャケット・デザインが中山泰によるアート・ワーク!
 特典も作成予定ですので、ナイアガラ・ファンは是非チェックしてみてください。森 陽馬

2010年2月24日(水)ザ・バーズ&ザ・ビー 「朝からゴキゲン (I'm Into Something Good)」

 時期はもう過ぎてしまいましたが、先日『バレンタインデー』という映画を鑑賞しました。(公開初日が2月12日だったのでまだやっています)

 アシュトン・カッチャー、ジェニファー・ガーナー、グラミーを受賞し話題となったテイラー・スウィフトなどが出演。バレンタインデー当日、15人それぞれ物語があるけれど全てどこかで繋がっていて、登場人物が多い分テンポのいい展開は最後まで楽しんで観る事が出来ました。

 マイケル・フランティ&スピアヘッド、ダイアン・バーチ、ウィリー・ネルソンが歌う「君住む街で」、マルーン5による「今宵の君は」(フランク・シナトラ)、エイミー・ワインハウスによる「Cupid」、インド・ポップ調の「涙をとどけて」などなど劇中で流れる音楽も印象に残ったものが多かったです。

 そしてもう一曲、ザ・バード&ザ・ビー(ローウェル・ジョージの娘イナラの男女2人組ポップ・ユニット)による、ゴフィン/キング作の「朝からゴキゲン (I'm Into Something Good)」もエレ・ポップ・アレンジのとてもかわいらしいカバーが耳に残りました。

 ちなみにザ・バーズ&ザ・ビーは4月にダリル・ホール&ジョン・オーツのトリビュート・アルバムをリリースする予定です。東尾沙紀

★掲載ジャケットは、『バレンタインデー』映画サントラ盤。(国内盤 UICO-1181 \2,500)

2010年2月25日(木) ピノ・ドナッジョオ 「この胸のときめきを」

 2008年に発売されて大好評を博したACEレーベルのオムニバスCD『You Heard It Here First!〜名曲の履歴書』の第2弾が発売されました。(MSIG-636 解説の対訳付 \3,150)

 大ヒットしたヴァージョンがオリジナルだと思ったら、それより前に録音された本物のオリジナルがこれです!、というシリーズのVol.2。
 前回のVol.1に続いて今回もなかなか興味深い曲が全24曲並んでいます。この中から今日は「この胸のときめきを」。

 英語のタイトルは、「You Don't Have Say You Love Me」。
 1966年にダスティ・スプリングフィールドの歌で世界的にヒットし、1970年にはエルヴィス・プレスリーのドラマティックな歌唱もヒットしました。

 この歌の元はイタリアの歌で、1965年サンレモ音楽祭の参加曲でした。
 イタリア人のピノ・ドナッジョオとヴィト・パラヴィチーニの共作で、ピノ自身が音楽祭では歌いましたが、残念ながら入賞曲にはなりませんでした。

 しかしイギリス人のサイモン・ネピア・ベルとヴィッキー・ウィッカムが英語の詞を付けて、ダスティが歌ったら大好評になり現在に至っています。
 ピノ・ドナッジョオのイタリア語によるオリジナル・ヴァージョンは、長い間簡単には聴けない状態でしたが、ここにめでたく他の貴重曲とともにCD化となりました。カンツォーネと呼ばれる60'sのイタリア映画は本当にいい曲が多いですね。

 なおこのピノは、後に映画音楽の世界で活躍しブライアン・デ・パルマ監督とのコンビで『キャリー』、『殺しのドレス』、『ミッドナイト・クロス』、『ボディ・ダブル』などで美しいスコアを書いている才人なのです。森 勉

2010年2月26日(金)スウィング・アウト・シスター 「風のささやき」

 学生時代によく聴いたアルバム、というのが皆さんもあるでしょうが、僕にとってはこのスウィング・アウト・シスターの2ndアルバム『カレイドスコープ・ワールド』がその1枚。ドリカムの1stと共によく愛聴していました。

 そのスウィング・アウト・シスターの2nd『カレイドスコープ・ワールド』(UICY-94227 \2,800)と1st『ベター・トゥ・トラベル』(UICY-94426 \2,800)が、限定紙ジャケット仕様&最新リマスター&SHM-CD&新規ボーナス・トラック追加で再CD化。

 すでに持っているアルバムですし値段もちょっと高いかな、と感じましたが、最新リマスターで音はすごく良くなっていて、低音のリズム・トラックと、ジミー・ウェッブによるオーケストラ・アレンジがより鮮やかになった印象。B「Forever Blue」の切ないオーケストラの響きは絶品ですね。

 個人的にはそのBや@「You On My Mind」、E「Waiting Game」が大好きな曲ですが、今日の1曲には新規ボーナス・トラックとして追加されたO「風のささやき」(原題:The Windmills Of Your Mind)を。

 ミシェル・ルグランが音楽を担当し、スティーヴ・マックイーン&フェイ・ダナウェイが主演した名作映画『華麗なる賭け』の主題歌。オリジナルの歌はノエル・ハリソンが歌っていますが、最近では竹内まりやさんが2003年発表作『Longtime Favorite』でカヴァーしていたことでも有名な1曲。

 スウィング・アウト・シスターのヴァージョンは元々A「Where In The World」のシングルに収録されていた楽曲だそうで、シンプルなピアノをバックにしたアレンジ。地味ですがこうしてリマスター収録されたのは嬉しいですね。森 陽馬

2010年2月27日(土) カコイミク 「Digidigi Lala」

 大橋トリオ新作カヴァー・アルバム『FAKE BOOK』が3月10日発売ということで、店内中央特設コーナーでは大橋トリオコーナーを設置。関連作品含め展示しております。

 大橋トリオ名義以外にも色々と注目の作品がありますが、その中で大橋トリオファンにオススメなのがこの1枚。カコイミク2009年7月発表ミニ・アルバム『DIGIDIGI LALA』(PWSR-1021 \1,500)。

 大橋好規(大橋トリオ)がほぼ全面プロデュースしており、演奏やコーラス、ミックスなども担当。更に作曲も数曲担当しているので、楽曲によっては大橋好規が歌えば、そのまんま大橋トリオになってしまいそうな雰囲気の仕上がり。

 特にタイトル曲B「Digidigi Lala」。
 いかにも大橋トリオらしいテンポの良いミディアム・ナンバーで、クールかつかっこいい1曲。作曲&ドラムやギターなどの演奏も大橋好規。是非大橋トリオ名義でもセルフ・カヴァーしてもらいたい楽曲ですね。

 ちなみに、カコイミクは3月21日発売『オムニバス1〜大瀧詠一ファーストアルバムカバー集(1980〜2010)』にも参加(大橋トリオプロデュースではありませんが)しており、「水彩画の町」を歌っています。森 陽馬

2010年2月28日(日) ビューティフル・サウス 「Woman In The Wall」

 今日で2月も終わり。
 今月はやはりオリンピック中心の1ヶ月でしたが、特に先日のフィギュアスケート女子フリー! 浅田選手とキム・ヨナ選手の19歳対決、放送を見ているこっちまでも心臓が飛びでそうな程ドキドキしました。

 さて、その浅田選手&キム・ヨナ選手が生まれた1990年。
 人それぞれに思い浮ぶ作品があるかと思いますが、イギリスの人気バンド、ビューティフル・サウスの1stアルバム『Welcome To The Beautiful South』の国内盤が最初にリリースされたのが90年2月末でした。(正確にはイギリス本国でのリリースは89年です。)

 ポップなメロディー、男性ツイン・ボーカルに女性コーラス、シンプルなアレンジ。初めて聴いた時は素敵なラヴソングでも歌ってるのだわ〜なんて思い歌詞を読んでみると、そのギャップに驚かされました。

 政治的なもの、殺した妻を壁に埋めてしまった夫の話、更にはここに書けないちょっと汚い言葉までも。(それをキレイなメロディーに乗せて歌うのですからちょっと怖い)
 しかし瞬く間に本国で人気バンドとなったのは、そういう彼らの書く曲が他にないものだったからでしょう。

 中心人物だったポール・ヒートンは脱退、バンドは現在The Southと名前を変え再始動。ライブも定期的に行われているようです。東尾沙紀

★現在出ている国内盤は以下の規格番号です。(UICY-3398 \2,141 ボーナストラック5曲)






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