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  今日のこの1曲 “Archives”

<2019月5月>

当店ペット・サウンズ・レコード店にて
その日に店内でかけていた曲の中から、
店員の独断と偏見で選んだ“今日のこの1曲”コーナー

2019年5月に更新した“今日のこの1曲”コーナー


廃盤・生産中止、規格番号の変更など、
情報が古くなっている商品もございますが、ご了承くださいませ。

<最新の“今日のこの1曲”はこちらのページをご覧ください>


2019年5月1日(水) スティーヴン・ビショップ 「ワン・ラヴ」

『ディス・イズ・ヨット・ロック』なるコンピレーションCDが発売になりました。
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 WPCR-18190 3,000円+税)

CDの帯に書いてある説明をそのまま紹介すると
<全米音楽シーンに誕生した新ジャンル、それがヨット・ロック!
代表曲から知る人ぞ知るレアな名曲までを収録した2枚組決定盤>
というものです。

なんでも、<ヨット・ロック>をテーマにした本がアメリカで出版(DU BOOKSから翻訳本が出ています)されていて、日本ではAOR/ウエスト・コースト等の呼び名で親しまれているサウンドの音楽を幅広い観点で<ヨット・ロック>と呼んでいるそうな。

このCDは日本で企画・選曲された全36曲収録の2枚組。
クリストファー・クロス、オーリアンズ、アメリカ、リッキー・リー・ジョーンズ、ニコレット・ラーソン、ブレッド、シールズ&クロフツ、ハース・マルティネス、ドナルド・フェイゲン、マイケル・マクドナルド、マーク・ジョーダン、マイケル・センベロ、ロビー・デュプリー等、天気の良い日にヨットでセイリングしているような気持ちの良いサウンドがたくさん集められています。

ヒット曲や有名曲も入っていますが、世界初CD化の珍しいけれどいい曲も2曲収録。
アンブロージア「アウトサイド」(デヴィッド・パック&マイケル・マクドナルドの共作)は、サントラ中の曲でシングル・オンリーだった曲。
マイケル・マクドナルドの妹モーリーン・マクドナルド「トワイス・アポン・ア・タイム」(モーリーン&マイケル・マクドナルド、トム・ファーガソンの共作)もシングル・オンリー曲。

今日の1曲は、ディスク2の1曲目に入っているスティーヴン・ビショップ「ワン・ラヴ」(Unfaithfully Years One Love)。

1984年公開ダトリー・ムーア、ナスターシャ・キンスキー主演ラヴコメ映画の主題歌。
全米87位という最高位ですが、ビッシュらしい美しいメロディーを持った曲。日本初CD化です。森 勉



2019年5月2日(木) 鈴木桃子(COSA NOSTRA) 「Jolie」

ゴールデン・ウィーク前半雨続きでしたが、東京では本日昼過ぎからやっと晴れて心地良い陽気になりました。

そんな穏やかな休日にピッタリ!
明るくて気持ちが華やぐ素敵な女性シンガーのCDをピックアップしましょう。

鈴木桃子『SONGS OF MOMOKO SUZUKI as herself and as COSA NOSTRA』
(国内2枚組CD MHCL-30591 4,000円+税)

1990年代渋谷系や洋楽ファンにも人気があったユニット、コーザ・ノストラ。
その女性シンガーであった鈴木桃子さんが、コーザ脱退後リリースしたソロ作品とコーザ時代の楽曲から自身でセレクトした2枚組全33曲編集盤です。

リズミカルかつグルーヴ感あるサウンドと、バイリンガルを活かした英語詞中心の歌が絶妙に融合♪
コーザの名を当時広めたアル・クーパー「ジョリー」カヴァー含めオリジナル曲も色褪せない魅力がありますね。

ちなみに、彼女は2018年子宮がんを患い闘病していましたが、困難を乗り越え復活!再び歌い始めています。
歌う喜びに溢れた彼女の歌声、エヴァーグリーンな美しさを是非この機会に感じとってください。森 陽馬


2019年5月3日(金) Steve Postell 「Wait Until You Get Here」

シンガー・ソングライター/アメリカン・ロックお好きな方に超オススメ!

スティーヴ・ポステル『Walking Through These Blues』
(国内CD 天辰保文氏による解説付 VSCD-3964 2,315円+税)

ダニー・コーチマー来日公演の名サポートが印象的だったギタリスト/シンガー・ソングライター、Steve Postell。
デヴィッド・クロスビーやダニー・コーチマー他も参加した2019年発表リーダー・アルバムが今作。

これが本当に素晴らしい仕上がり!
近年のいぶし銀ソングライター系作品の中でも指折りの傑作ですね。

4曲目「It's All Over Now, Baby Blue」(ボブ・ディランカヴァー)以外のオリジナル楽曲もすごくイイ曲。

特にリー・スクラー、ワディ・ワクテル、ラス・カンケルがバック演奏の⑦「Wait Until You Get Here」が沁みる!
彼の優しい性格が伝わってくるような温もりある名曲です。森 陽馬


2019年5月4日(土) Curly Giraffe 「a taste of dream」

シンガーソングライター/ベーシスト/プロデューサーとして活躍する高桑圭のソロ・プロジェクト、カーリー・ジラフ。
7枚目となる新作が4月末にリリースされました。

Curly Gifaffe『A Taste Of Dream』
(国内CD PECF-1167 3,000円+税)

前作から約5年と間が空きましたが、自然体な歌と温もりあるメロディ、ウエスト・コースト・ロックのような気持ち良いサウンドは変わらず♪
さらにシンセを用いた楽曲は80'sファンク、AORのテイストも感じさせます。

自宅スタジオでの1人宅録スタイルはそのままに、これまでと異なるのは初の日本語詞曲が収録されていること。
(全12曲中8曲、日本語の曲を歌おうと思ったのは、マック・デマルコによる細野晴臣日本語カヴァーを聴いた事がきっかけだったのだそうです。)

さらにゲスト・ヴォーカルも参加。
歌声が似ている高橋幸宏とのハーモニーが絶妙なフォーク・ソング「break the mold」、藤原さくらのキュートな歌声をフィーチャーした「LA」、ドブロギターの音色も印象的なハナレグミと渋めのナンバー「one」。どのデュエットも必聴です。

本日はタイトル曲「a taste of dream」を。
キラキラとした音に包み込まれるような浮遊感あるアレンジが印象的なフォーキー・ポップな1曲です。
この曲に出てくる<風と戯れている>という詞、カーリー・ジラフの心地良いサウンドを表すのにぴったりなフレーズだなと思いました。東尾沙紀


2019年5月5日(日) The Cinematic Orchestra 「To Believe」 feat Moses Sumney

ゴールデン・ウィーク、終わりが近づいてきましたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。

日中の賑わいも徐々に収まり、夜遅くなるにつれ街中は静かになってきました。
羽根を伸ばした方、ゆっくりしていた方々も息を潜めて連休明けに備えているように感じます。

そんなひっそりとした夜、閉店間際にかけていたのがこの1枚。

ザ・シネマティック・オーケストラ『To Believe』
(国内CDボーナス・トラック追加 解説・歌詞・対訳付 BRC-591 2,400円+税/限定トート・バック付もあり)

Jason Swinscoe(ジェイソン・スウィンスコー)を中心にロンドンで1999年頃結成されたThe Cinematic Orchestra。
2007年発表作『Ma Fleur』以来、約12年ぶりとなるオリジナル・アルバムです。

白昼夢の如きサウンドスケープ、深遠な音世界・美意識は変わらず。
映画を観ているような不思議な気分にさせられる1枚。

今日のこの1曲は、Moses Sumney(モーゼス・サムニー)をfeatした①「To Believe」を。
心の奥底まで響くピアノの奏、哀しさと優しさに満ちた歌声が暗闇に溶けていきます。森 陽馬


2019年5月6日(月) クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング「Almost Cut My Hair」

天辰保文氏にミュージシャンの魅力を語っていただくトーク・イベント<Talking Man>。
2019年6月17日(月)に13回目となる開催が決定いたしました。

Vol.13はCSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)特集!

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2019年6月17日(月)
PET SOUNDS RECORD presents
天辰保文 Talking Man Vol.13 CSN&Y特集
ライヴ・カフェ アゲイン(武蔵小山 当店地下)
18時半開場 19時半開演 入場料1,500円
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デヴィッド・クロスビー(ザ・バーズ)、スティーヴン・スティルス(バッファロー・スプリングフィールド)、グラハム・ナッシュ(ホリーズ)の3人に、ニール・ヤングが加わったCSN&Y。
1969年結成、ウッドストック・フェスティヴァル出演から2019年で50年が経ちました。

各々のソロも素晴らしいのですが、4人の力が合わさった時は何物にも代えがたい感動を与えてくれますよね。
天辰保文さんのお話を伺いながら、CSN&Yの歌と演奏を皆さんで楽しみたいと思っております。

ということで、1970年発表ロック大名盤『デジャ・ヴ』から、デヴィッド・クロスビーの情熱が爆発した「Almost Cut My Hair」を今日のこの1曲に。森 陽馬

★掲載ジャケットは、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング『デジャ・ヴ』
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 WPCR-80356 1,500円+税)


2019年5月7日(火) マーヴィン・ゲイ 「You're The Man」(Alternate Version)

70'sソウル好きの方、マーヴィン・ゲイファンは必聴!
マーヴィン・ゲイが1971年に発表した名盤『What's Going On』後、1972年に録音しながらアルバムとしては当時お蔵入りとなった幻の作品が、レア・トラック等を追加収録し公式リリースされました。

マーヴィン・ゲイ『You're The Man』
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 SWING-O×林剛による対談掲載 UICY-15825 2,500円+税)

「Vote」(投票しよう)と連呼し政治的メッセージが強いタイトル曲「You're The Man」は、1972年シングル発売されており、そのAB面を合わせたPart1&2のフル・ヴァージョンが今作1曲目に収録。

そのシングルverはカーティス・メイフィールドを意識したようなファルセット&ギターで聴かせる熱いアレンジですが、今作14曲目収録「You're The Man」(Alternate Version)の方は後日歌い直したヴァージョン。
「What's Going On」を踏襲したアレンジ&彼らしいソフトな歌い方で、同じ曲ながら全く違った印象を与えます。

他にも『Let's Get It On』(1973)へ繋がる楽曲等、ヒットの裏で苦悩していた彼の想いが伝わってくる全17曲。

なお、国内盤ブックレットに掲載されているSWING-Oと林剛さんによる対談は、マーヴィン・ゲイ及びアメリカ社会の当時の状況や音楽的背景を深く掘り下げており、本作を聴く上でとても参考になりました。
先に発売されていた輸入アナログLPを購入した方にも是非ご覧いただきたい内容ですね。森 陽馬


2019年5月8日(水) ブライアン・ウィルソン 「レイ・ダウン・バーデン」

このところ、ビーチ・ボーイズの話題があまりないのがさみしいですね。
そういう時は自分でいろいろ古い物を漁って、それに託けて楽しむしかないのかもしれません。

ブライアン・ウィルソンがソロ・アーティストとして初来日したのが1999年。
今年は2019年、20周年ですね。

30周年となる1989年は、前年1988年「ココモ」が大ヒットしたことにより、「やっぱりアルバム出した方がいいかな」と、マイク・ラブが言ったか言わないかわかりませんが、過去のヒット曲も含めた形の『スティル・クルージン』を発表しました。

40周年となる1979年はアルバム『L.A.』を3月に発表し、8月にビーチ・ボーイズとして2度目の来日が実現。
江ノ島での『ジャパン・ジャム』にトリとして出演しました。
ブライアン・ウィルソンは不調ながらも初来日、デニス・ウィルソンは不参加でしたが、真夏の野外の海辺というビーチ・ボーイズの曲を聴く上でのシチュエーションとしてはかなり気分がアゲアゲになる感じでのライヴでした。

50周年となる1969年はアルバム『20/20』が出て、シングル・カットで「アイ・キャン・ヒア・ミュージック」、新曲で「ブレイク・アウェイ」が発売されました。

さて、この中から何が一番インパクトがあったでしょうか?
1979年『ジャパン・ジャム』も大興奮でしたが記憶が近いこともあり、20年前1999年7月ブライアンのソロ初来日!
初日の大阪、そして東京での3日連続公演。夢心地の数日間でした。

今日はそのライヴで歌われた「レイ・ダウン・バーデン」。
1998年2月6日に51歳で亡くなってしまった弟カール・ウィルソンを想って作られたという曲です。

心の重荷をおろして、今と向き合おうとするブライアン。
1999年のステージを見て想ったことは、ブライアンはこんなに元気になっているしやる気があるんだということでした。
あれから20年、たくさんの作品とライヴをファンへ届けてくれています。森 勉

★掲載ジャケットは「Lay Down Burden」収録、1998年発表アルバム『Imagination』。
(国内CD 解説・歌詞・対訳付 WPCR-17121 1,296円+税)


2019年5月9日(木) Braxton Cook 「When You Hold Me」

60~70年代、ロック、ソウル、ジャズ等ジャンルを越え融合された音楽の流れをクロスオーバーと言われました。

以後も様々なクロスオーバーが成され、新しい音楽が日々生まれています。
(そもそも、ジャンル自体がミュージシャンのためではなく、CD・レコード店/リスナーのコーナー分けのためにある言葉なのかもしれませんけれどね)

これからの音楽はそのクロスオーバーが更に進んでいくのだろうな、と予感させてくれる1枚を。

Braxton Cook(ブラクストン・クック)『No Doubt』
(国内CD 日本盤ボーナス・トラック3曲追加 解説・歌詞付 SSRI-160 2,381円+税)

ブラクストン・クックはアメリカ/メリーランド州出身、現在はニューヨークを拠点に活動している黒人サックス奏者。
クリスチャン・スコット等ジャズ・ミュージシャンのバックや、2018年大ブレイクしたトム・ミッシュのツアー・メンバーに抜擢されるなど、様々な舞台で近年活躍中。

2019年発表2ndアルバムとなる今作『No Doubt』は、ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンの流れを汲んだ現代ブラック・ジャズに軸を置きながら、クールなソウル・サウンドも聴かせる上品な仕上がり。

2曲目「When You Hold Me」は、スムースなR&Bお好きな方にもオススメなトラックです。森 陽馬


2019年5月10日(金) Rickie Lee Jones 「Rainbow Sleeves」(虹の袂)

リッキー・リー・ジョーンズ1983年発表作『My Funny Valentine』が2019年リマスター&紙ジャケで再発されました。

1981年発表2nd『Pirates』に続き1983年10インチで発売、ジャズ・スタンダードを中心に収録された作品。
ジャズ系ミュージシャンも参加していますが、クロスオーバーという言葉だけでは伝わらない魅力を持った1枚です。

リッキー・リー・ジョーンズ『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』
(国内CD 限定紙ジャケット仕様 解説・歌詞・対訳付 WPCR-18189 2,315円+税)

失恋ジャズ・ナンバー「Lush Life」ライヴ音源、チェット・ベイカー等の名唱で有名な「My Funny Valentine」も魅力ながら、それ以上にトム・ウェイツ作「Rainbow Sleeves」(邦題:虹の袂)での歌声には心動かされるものがあります。

「Rainbow Sleeves」は彼女のデビュー作『浪漫』時付き合っていたトム・ウェイツが書き下ろし録音した楽曲でした。
その後別れてしまった二人ですが、リッキーはその哀しみを振り切る気持ちで今作に収録したのでしょう。
ジャケットに描かれた絵画のように、暗さだけではなく希望の光が差し込むように感じるのはそのせいかもしれません。

なお、リッキー・リー・ジョーンズは2019年5月16日大阪、17日東京にて来日公演を行う予定。
5月15日には新作カヴァー・アルバム『Kicks』をリリースします。森 陽馬


2019年5月11日(土) Neil Young & Stray Gators 「Alabama」

ニール・ヤングファン感涙必至!
新たな発掘ライヴ音源の輸入盤CDとLP発売が6月7日決定しました。(国内盤も後日発売予定)


アーティスト名義がNeil Young & Stray Gators。(!)
タイトルは『Tuscaloosa』(タスカルーサ・・・アラバマ州にある町名)。

ストレイ・ゲイターズはジャック・ニッチェ(P)、ベン・キース(G)、ティム・ドラモンド(B)、ケニー・バットレー(Dr)。
1971年から73年にかけてニールのバックを務めていたメンバーによるバンド名。
ニール・ヤング1972年発表名盤『ハーヴェスト』(「Heart Of Gold」収録)のバックも彼らのよるものです。

ニール自ら監督した映画『Journey Through The Past』にて、ストレイ・ゲイターズとの「Words」スタジオ・ライヴ映像を見ることができ、その演奏のモッタリ感がたまらなく最高だったので、ストレイ・ゲイターズ名義でのライヴ音源発売はうれしいですね。

なお、今回のライヴ盤は1973年2月5日アラバマ州タスカルーサ市のアラバマ大学で行われたコンサート音源。
その日は「Alabama」(アメリカ南部の保守的な体制を批判した曲)も披露されています。

ニール以外のストレイ・ゲイターズ4人は皆天国へ召されてしまった今、心して聴きたいですね。森 陽馬

★掲載ジャケットは「Alabama」収録、ニール・ヤング1972年発表作『Harvest』。


2019年5月12日(日) The Pearlfishers 「You Can Take Me There」

英グラスゴーのシンガーソングライター、デヴィッド・スコットのポップ・ユニット、パールフィッシャーズ。
前作『Open Up Your Coloring Book』から約5年ぶり、8作目『Love & Other Hopeless Things』がリリース。

パールフィッシャーズ『ラヴ・アンド・アザー・ホープレス・シングス』
(帯付国内流通仕様CD MACD84J 2,200円+税/輸入CD、アナログ盤も発売中)

おひさまのようにあたたかく、いつまでも瑞々しい(そしてちょっぴり切ない)パールフィッシャーズの音楽。
のんびりとしたペースながら<新作が今までで一番最高!>と思わせてくれる良質なポップ・アルバムを、初夏の陽気が気持ち良い季節に届けてくれました。

デヴィッド自身で殆どの楽器をこなしている他、Stuart Kidd、Jamie Gash、Colin SteeleなどBMXバンディッツ/パールフィッシャーズゆかりのミュージシャンが参加。

トランペット&フリューゲルホルン、チェロやヴァイオリンの豊かなアレンジやメロディにバート・バカラックの影響を感じさせるタイトル曲「Love & Other Hopeless Things」を筆頭に、柔らかな気分になれるグッド・メロディが満載です。

本日はグラスゴーのBacci Wallaceら女性ヴォーカリストをフィーチャーした「You Can Take Me There」を。
この曲に流れるハッピーなムードと女性陣の爽やかなハーモニー♪とっても心地良い1曲です。東尾沙紀


2019年5月13日(月) サークル 「ハウ・キャン・アイ・リーヴ・ハー」

ビートルズ最後の全米ツアーに前座の一組として参加したサークル。

そのグループ名はジョン・レノンが命名したサークル。

2ndアルバム『ネオン』には「すてきなダンス」(I'm Happy Just To Dance With You)をカヴァーしていたサークル。

・・・と、ビートルズ関連の話題がついてまわるサークルですが、それもそのはず、彼らのマネージメントを引き受けたのは、ビートルズのマネージャーとして名を馳せたブライアン・エプスタインでした。

1966年当時、サークルのレコードを発売していたColumbiaレコードは、日本では文字通り日本コロンビアが販売。
大ヒットした「レッド・ラバー・ボール」も「ターン・ダウン・デイ」も入っていたファースト・アルバムはその2曲だけでなく、他の魅力的な曲も色々と収録されていました。

サークル『レッド・ラバー・ボール』(+8)
(国内CD ボーナス・トラック8曲追加 解説・歌詞・対訳付 SICP-4453 1,300円+税)

メンバーであるトム・ドウズとドン・ダネルマンが書いた「ハウ・キャン・アイ・リーヴ・ハー」は、12弦ギターのイントロが印象的なフォーク・ロック・テイストのいいメロディーの曲です。森 勉


2019年5月14日(火) Neil Young 「Who's Gonna Stand Up?」

映画『魂のゆくえ』(原題:First Reformed』)を新宿シネマートにて先日鑑賞。

名画『タクシー・ドライバー』の脚本を手掛けたポール・シュレイダー監督による牧師の物語。
戦争で息子を失った罪悪感、そして自らの病と聖職者としての心の葛藤を背負う牧師をイーサン・ホークが熱演。

淡々と進む展開で派手な演出はないものの、なかなかに考えさせられる映画でしたね。

教会がおかれている現状、環境問題等、宗教を扱った物語ながら様々な要素も含まれていました。
しかしながら、焦点として描かれていたのは、人間の心の中に潜む苦悩、矛盾する想いでしょうか。

賛否両論あるというラストは、僕も正直言って呆気にとられましたね。
ただ、「絶望と希望は表裏一体」という主人公自身の言葉が序盤にあったように、絶望の淵にいた主人公が生きる希望の光を見つけた、と取れるラスト・シーンはある意味印象的だったと思います。

ちなみに、ニール・ヤング「Who's Gonna Stand Up?」が合唱団によって歌われるシーンが劇中に登場。

「Who's Gonna Stand Up?」はニール・ヤング2014年発表アルバム『Storytone』に収録されているナンバー。
ダリル・ハンナと付き合うようになり、自然保護をテーマにする歌がより多くなった彼の主張が強く表れている1曲。
映画をご覧になれば、何故ニール(カナダ出身)のこの歌が使われたのかわかると思います。森 陽馬

★掲載ジャケットは、『Storytone』からシングル・カットされた12インチアナログ盤。
B面に収録されているクレイジーホースとのライヴ・ヴァージョンはCDアルバム未収録。
Neil Young『Who's Gonna Stand Up?』(輸入LP Reprise 054391969262)


2019年5月15日(水) Rhiannon Giddens with Francesco Turrisi 「He Will See You Through」

ジャケットに映っている錆びた鉄の橋は、どのような物や想いを今まで運び繋いできたのだろうか。

僕らが聴いている音楽やそれを奏でる楽器、そしてミュージシャンはどのような旅をしてここへ辿りついたのか。

リアノン・ギデンズ『There Is No Other』はそんな深い祈りにも似た情感を感じさせる1枚。

Rhiannon Giddens『There Is No Other』
(輸入CD NONESUCH 7559-79253-0)

ノースキャロライナ発男女3人ブルーグラス・バンドCaroline Chocolate Drops後、2015年ソロ1st『Tomorrow Is My Turn』(
2015年4月22日今日のこの1曲)、2017年ソロ2nd『Freedom Highway』(2017年4月1日今日のこの1曲)を発表。Our Native Daughters参加等を経て、約2年ぶり2019年オリジナル・アルバムをNonesuchからリリース。

ジョー・ヘンリーをプロデューサーに迎え、イタリア出身でアイルランド/ダブリン拠点に活動しているミュージシャンFrancesco Turrisi(フランチェスコ・トゥリッシ)と共に5日間で作り上げた入魂作だ。

なんといっても、リアノンの圧倒的な歌声が凄い。
バンジョー等楽器の生々しい音はその歌声をより良く響かせ、聴く者を遠い過去の旅路へ誘う。

味わい深いカヴァー8曲も良いが、強い信念と祈りが込められたラスト12曲目のオリジナル(前作『Freedom Highway』共同プロデューサーDirk Powellとの共作曲)「He Will See You Through」を今日のこの1曲に。森 陽馬


2019年5月16日(木) クラムボン 「はなれ ばなれ」

2019年でメジャーデビュー20周年を迎えた原田郁子、ミト、伊藤大助による3人バンド、クラムボン。
ワーナーから1999年リリースした1stシングル「はなればなれ」が限定アナログEP盤で発売されました。

クラムボン『はなれ ばなれ/パンと蜜をめしあがれ』
(7インチ・アナログEP 完全限定盤 WQKL-1 1,950円+税)

「サラウンド」、「君は僕のもの」、「シカゴ」、「バイタルサイン」、etc...。
クラムボンの名曲はたくさんありますが、僕が一番好きなのはやっぱり「はなれ ばなれ」ですね。

青春、疾走、躍動感、グルーヴ、楽しさ、そして切なさ。
この1曲にクラムボンの魅力の全てが詰まっている、と言っても過言ではないと思います。

♪高いところへのぼろう♪の歌い始めから、2番が♪深いところへもぐろう♪となる対比。
そして、♪深い深いところへ そうすれば ほんとのこと わかるかもしれないね♪と続く歌詞の深み。

20年を経ても色褪せないというか、むしろこの歌の素晴らしさをより実感できるようになったのかもしれません。

ちなみに『シカゴ/君は僕のもの』、『サラウンド/残暑』もアナログEPリリースされる予定です。森 陽馬


2019年5月17日(金) Al Sunny 「Don't Let Nobody Know」

当店でも人気のルーカス・アルーダ、アンドレ・ソロンコをリリースしているフランスのレーベル、Favorite Recordings。

このレーベルから2017年にアナログ&配信のみで発表されたAOR~ブルーアイドソウル・ファン注目の1枚が、金澤寿和氏監修<Light Mellow Searches>シリーズで日本独自CD化されました。

アル・サニー『タイム・トゥ・ディサイド』
(国内CD ボーナストラック2曲 解説付 PCD-24842 2,400円+税)

Al SunnyことAlexandre Tricardはフランス出身の男性シンガーソングライター。

2017年デビュー作『タイム・トゥ・ディサイド』には、哀愁漂うミディアム・バラード「Time To Decide」、80’sディスコ/ブギーな「Open Up Your Eyes」、エレピ&パーカーション擁したグルーヴ・チューン「Don't Let Nobody Know」、ネッド・ドヒニー「Get It Up For Love」(『ハード・キャンディ』収録曲)のカヴァーなど、気持ち良い楽曲が収録されています。

ボーナス・トラックとして「Open Up Your Eyes」12インチ・シングルに収録されたリミックス・バージョン2曲が追加収録されています。
現在は2作目の制作真っ最中の様子です。近いうちに新作も聴けそうですね。

ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス、フリーソウルお好きな方にもオススメの1枚です。東尾沙紀


2019年5月18日(土) Rickie Lee Jones 「Bad Company」

リッキー・リー・ジョーンズ、東京オーチャード・ホール公演を観てきました。

彼女のステージは以前にも観たことがありましたが、今回は特に素晴らしいコンサート!

トリオ編成ながら、ドラム&ヴィブラフォン等を操るMike Dillonと若いギタリストCliff Hinesの演奏が凄かった!
特に、彼女の近作を共同プロデュースしているMike Dillonはヴィブラフォンの腕前が超絶。
片手でヴィブラフォンを奏でながらドラムを叩き、更にシェイカー&パーカッション&コーラスと大活躍でしたね。

あと、リッキー・リーがデビュー40周年ということもあり、昔の曲が多めだったのもうれしかったです。
彼女がピアノを弾き披露してくれた「Living It Up」&「We Belong Together」!
そして名曲「The Last Chance Texeco」は、人生経験を積み更に深みを増した歌声に感動の嵐!

昔の歌でも、新しい音楽が生まれてくる瞬間を感じられて、ステージを見ていてワクワクさせられました。

今日は、5月15日発売された最新作カヴァー・アルバム『KICKS』から。
リッキー・リー・ジョーンズ『KICKS』
(国内CD 天辰保文氏による解説付 PCD-17802 2,700円+税)

彼女は約5年前からニューオリンズ在住で今作もニューオリンズ録音。
共同プロデュースはMile Dillon、バックにはニューオリンズ凄腕ミュージシャンが多数参加。
コンサートではエレキへ持ち替え披露したバッド・カンパニーカヴァーを今日のこの1曲に。森 陽馬



2019年5月19日(日) ドン・マクリーン 「アンド・アイ・ラヴ・ユー・ソー」

『タペストリー』と言えば、1971年にキャロル・キングが発表してその後空前のロングセラーを記録する歴史的名盤のアルバム・タイトルです。

が、その少し前の1970年に発表されていた『タペストリー』というタイトルのアルバムがあったんですね。

発表したのはドン・マクリーン。
1971年秋に発売されるシングル「アメリカン・パイ」、そして同名のアルバムが大ヒットする前のことでした。

ドン・マクリーン『タペストリー』
(国内CD 2019年最新リマスター 限定紙ジャケット仕様 解説・歌詞・対訳付 UICY-78927 2,667円+税)

アコースティック・ギターの弾き語りを中心として地味な作りですが、彼の書くメロディーはこのファースト・アルバムから非凡なものがありました。
今日はその中から「アンド・アイ・ラヴ・ユー・ソー」。

この曲は1973年にペリー・コモによってカヴァーされ有名曲となりました。
そのヴァージョンもとてもいいのですが、このオリジナルとなるドン・マクリーンのヴァージョンもシンプルながら味わい深いものがあります。森 勉


2019年5月20日(月) George Benson 「Walking To New Orleans」

「ブリージン」のヒットで有名なジョージ・ベンソン。
フュージョンのイメージが強いのですが、2013年作はルーツ色濃いナット・キング・コールへのトリビュートでした。

あれから6年、2019年発表最新作はファッツ・ドミノとチャック・ベリーへのトリビュート作!

George Benson『Walking To New Orleans』
(輸入CD PROVOGUE PRD75812)

ナッシュビルのOCEAN WAYスタジオにてレコーディング。
ロック作品を多く手掛けてきたKevin Shirleyがプロデュースを担当。

Greg Morrow(Dr)、Rob Mcnelley(G)、Alison Prestwood(B)、Kevin McKendree(Key)等、白人のカントリー/ブルース・ミュージシャンのバックながら、ソウルフルかつニューオリンズ的な仕上がりです。

今日のこの1曲は、ファッツ・ドミノを意識し味わい深い歌声をじっくり聴かせる「Walking To New Orleans」。
タメのきいたギター・ソロと後半のコーラスNice♪ 森 陽馬


2019年5月21日(火) 吾妻光良&The Swinging Boppers 「大人はワイン2本まで」

<日本ジャンプ・ブルース界のレジェンド>!吾妻光良&The Swinging Boppers。
2013年『SENIOR BACCHANALS』(
2013年10月18日今日のこの1曲で紹介)以来となる新作が発売されました。

吾妻光良&The Swinging Boppers『Scheduled By The Budget』
(国内CD AICL-3699 2,800円+税)

中納良恵がヴォーカル参加した「Misty」カヴァー、人見元基(VOW WOW)が参加した「Try A Little Tenderness」カヴァーも収録されていますが、吾妻さん&スウィンギン・バッパーズならではの日本語ブルースがやっぱり魅力的!

「スマホでゲームじゃもったいない」(①「ご機嫌目盛」より)
「ヤツのスマホの壁紙 近所の犬猫」(③「Photo爺ィ」より)
「SNSで火あぶりだ」(⑨「正しいけどつまらない」より)

ブルース/スウィング・ジャズをルーツにした演奏に、現代を風刺した日本語詞が楽しめる1枚ですね。

今日のこの1曲は、「大人はワイン2本まで それ以上飲むのはコドモさ」と歌われる②「大人はワイン2本まで」。
歌詞の中に、エイモス・ミルバーン、ボビー・ブランドも登場します。森 陽馬


2019年5月22日(水) 優河 「めぐる」

伸びやかで美しい歌声が魅力の女性シンガーソングライター、優河。

2018年発表の名作『魔法』から約1年2ヶ月ぶりとなる最新ミニ・アルバムがリリースされました。

優河『めぐる』
(国内CD PCD-18031 1,800円+税)

表題曲「めぐる」は、中野量太監督、蒼井優、竹内結子ら出演映画『長いお別れ』(2019年5月31日公開)の主題歌として書き下ろされた楽曲。
認知症を患い少しずつ記憶や言葉を失っていく父親と、その家族の7年間を描いた作品です。

「めぐる」を聴くと、家族を失っていく哀しみや辛さではなく、穏やかなな眼差しをもって書かれた曲だというのが伝わってきます。
めぐりめぐる想い出や言葉、感情などすべて包み込んでくれるような力強い歌声がすばらしい1曲。
優河さんの歌声を聴いて映画を観てみたい気持ちもより高まりました。

レコーディングには、優河さんのサウンドには欠かせない千葉広樹、岡田拓郎をはじめ、神谷洵平、林正樹、中村大史(tricolor)、荒内佑(cero)が参加。

ペダル・スティールの音色が歌声と絶妙に絡む「June」、「めぐる」のアコースティック・ギター弾き語りver.など全5曲が収録されています。東尾沙紀


2019年5月23日(木) Dan Fogelberg 「Run For The Roses」

今週末5月26日(日)は競馬の祭典、日本ダービーが行われます。

天皇賞、有馬記念も歴史あるレースですが、ダービーはやはり特別ですよね。
令和初となるそのダービーに、以前から注目していた馬が出走することになりました。
その名も、ランフォザローゼス!

名ソングライター、ダン・フォーゲルバーグの曲名「Run For The Roses」(邦題:バラに向かって走れ)と同じ!
1981年発表アルバム『Innocent Age』収録、1982年シングル・カットされビルボード・チャート18位になった名曲。

なんと!この<Run For The Roses>とはアメリカ競馬のケンタッキー・ダービーを指しているのです!
優勝馬にバラのレイ(首掛け)がかけられることから名付けられたそう。

ダン・フォーゲルバーグの歌「Run For The Roses」もダービーを走る馬へ捧げた歌詞なんですよね。

シーザリオの子供でエピファネイア(ダービー2着)の弟である皐月賞1着馬サートゥルナーリア。
皐月賞2着馬ヴェロックス(ジャパンCでエピファネイアの2着だったジャスタウェイ産駒)は強いと思います。

でも、僕は大好きなダン・フォーゲルバーグの曲名と同じランフォザローゼスを応援しようかな。森 陽馬


★掲載ジャケットはダン・フォーゲルバーグ1981年発表作『Innocent Age』。
クリスマス名曲「Same Old Lang Syne」(
2017年12月23日今日のこの1曲で紹介)も収録されている名盤です。


2019年5月24日(金) Jimmy Webb 「The Moon Is A Harsh Mistress」

ジミー・ウェッブ2013年来日公演で印象に残ったのは、彼が弾くピアノの旋律、その美しさと切なさでした。

滋味を増した歌声もさることながら、イントロのピアノの響きだけで深い感慨を覚えたものです。

そのジミー・ウェッブ、2019年発表最新アルバム『SlipCover』が本日入荷。

Jimmy Webb『SlipCover』
(輸入CD BMG 4050538475821)

ランディ・ニューマン宅のピアノで、ランディ作「Marie」(今作収録)を弾いたのがきっかけとなり制作。
彼がフェイヴァリットな楽曲をピアノ・ソロを中心にカヴァーしたインスト作品です。

ビーチ・ボーイズ「God Only Knows」、ビートルズ「The Long And Winding Road」、ローリング・ストーンズ「Moonlight Mile」、サイモン&ガーファンクル「Old Friend」、ジョニ・ミッチェル「A Case Of You」、ビリー・ジョエル「Lullabye (Goodnight, My Angel)」、スティーヴィー・ワンダー「All In Love Is Fair」、ウォーレン・ジヴォン「Accidentally Like A martyr」、レフトバンク「Pretty Ballerina」に自作曲「The Moon Is A Harsh Mistress」含めた全11曲。

彼らしい旋律が加わり全曲魅力的ですが、やはり「The Moon Is A Harsh Mistress」が最も心に残りました。
今作の続編があるならば、自作曲のみの選曲によるピアノ・アルバムも聴いてみたいですね。森 陽馬


2019年5月25日(土) Kan Sano 「Sit At The Piano」

昨日紹介したジミー・ウェッブとは趣が異なりますが、新世代ピアニストの傑作が出たので紹介しましょう。

Kan Sano『Ghost Notes』
(初回限定2CD OPCA-1041 3,000円+税/限定アナログ盤 OPAE-1012 3,000円+税)

1983年金沢出身ピアニスト/マルチ・ミュージシャン、Kan Sano。
2014年発表作『2.0.1.1.』は
当店が選ぶベスト2014に選出しましたが、今作もクールさを増した素晴らしい1枚!

ピアノだけでなく全ての楽器演奏、歌、作曲、アレンジ、ミックスをKan Sano一人で手掛けた全13曲。
8曲目「DT pt.2」の動画を見ていただければわかるように、テクニックとセンスを併せ持つ才能に脱帽!

ただ、そのテクニックだけでなく、楽曲にメロディアスな部分もあるのが彼の魅力ですね。

今日のこの1曲は、インストながら曲展開に引き込まれる⑨「Sit At The Piano」を。

なお、初回限定盤には、ピアノ・ソロによるソウル/R&B楽曲カヴァー8曲(マーヴィン・ゲイ「What's Going On」、ディアンジェロ「United」等)収録ボーナスCDが付いています。森 陽馬


2019年5月26日(日) フリートウッド・マック 「リトル・ライズ」

2018年12月26日にひっそりと発売されていた内容の濃い3CDベスト・アルバムを紹介したいと思います。

フリートウッド・マック『ドント・ストップ~偉大なる50年の軌跡』
(国内CD 3枚組CD 矢口清治氏解説・英文ライナー訳・歌詞・対訳付 WPCR-18148 3,600円+税)

この手の歴史あるミュージシャンのアンソロジーと言うと大きなBOXに入ったりしているものが多いのですが、このフリートウッド・マックのベスト・アンソロジーは普通のCDサイズ。紙ジャケット風なので厚みも1.5cm程度で場所も取らず、値段も50曲で3,600円+税という、CD棚にもお財布にもやさしいうれしいCDなのです。
音の方もあのビル・イングロット等による2018年最新リマスター!

フリートウッド・マックというグループはメンバーの変化や時代の流れでサウンドも大きく転換しています。
ミック・フリートウッド、ジョン・マクヴィーは不動のメンバーですが、「ブラック・マジック・ウーマン」そして全英No.1のインスト名曲「アルバトロス」を作ったピーター・グリーンを筆頭にブルース・バンド時代を支えたダニー・カーワン、ジェレミー・スペンサー、70年代に入りアメリカン・サウンドを取り入れた時代に「センチメンタル・レイディ」を作ったボブ・ウェルチ・・・。

そして、1975年には以前から才能を開花させつつあったクリスティーン・マクヴィーに加え、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスが加入。黄金時代の快進撃が始まりました。
この3人はそれぞれソングライターであり、個性豊かで強力なヴォーカリストでもあるという強みもありました。
「オーヴァー・マイ・ヘッド」、「リアノン」、「セイ・ユー・ラヴ・ミー」、「ドリームス」、「ドント・ストップ」、「ユー・メイク・ラヴィング・ファン」、「タスク」、「セーラ」、「ホールド・ミー」、「ビッグ・ラヴ」などヒット曲のオンパレード。実に聴き応えがあります。

今日はクリスティン押しで1987年の大ヒット「リトル・ライズ」を。
途中、他の2人の声も出てきます。
1986年に結婚したクリスティンとポルトガルの作曲家エドゥアルド・クィンテラとの共作曲です。森 勉


2019年5月27日(月) スティング 「破壊者 (Demolition Man)」

アルバム『ニューヨーク9番街57丁目』(2016)を引っ提げ、2017年6月に行われた来日公演からもうすぐ2年。
初めて生で観たスティングとバンドの演奏が物凄くかっこよくて、その年に観た洋楽ライヴの中で最も印象に残るパフォーマンスとなりました。

そんなライヴの興奮も甦る!? スティング最新作となる新録セルフ・カヴァー・アルバムが先日リリースされました。

スティング『マイ・ソングス』
(国内CD スティングによる全曲解説/大友博氏による解説・歌詞・対訳付 UICA-1071 2,500円+税)

<ここに収めた曲は、私の人生そのもの、といっていいだろう。それらを再構築し、部分的に修正し、手を加え、そしてそのすべてを、今現在の視点で見つめ直してみた。> (本人コメントより)

オリジナルの雰囲気やテンポはそれほど崩さず、ドミニク・ミラーら現在のバンドとの演奏を軸にしたアレンジと、今のスティングの歌声で、ポリスやソロの楽曲を新たに録音したものです。

数ある楽曲から「ブラン・ニュー・デイ」、「見つめていたい」、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」、「フィールズ・オブ・ゴールド」、「シェイプ・オブ・マイ・ハート」、「孤独のメッセージ」、「フラジャイル」、「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」、「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」他、ずらっと代表曲が選ばれています。

特にポリスの楽曲はサウンドにより厚みが増してとても良いですね!
全体を通してリフのかっこよさ、メロディの良さが再発見出来るアルバムとなっています。
本日は、ライヴの勢いがパッケージされたような、ポリスのナンバー「破壊者(Demolition Man)」を今日の1曲に。

アルバム本編最後の「ロクサーヌ(ライヴ)」に加え、ボーナス・トラックとして「ネクスト・トゥ・ユー」、「アイ・キャント・ストップ・シンキング・アバウト・ユー」等5曲のライヴ音源が追加収録されています。東尾沙紀


2019年5月28日(火) Bruce Hornsby 「Take You There (Misty)」

「ザ・ウェイ・イット・イズ」(1986)で知られるアメリカ男性シンガー/ピアニスト、ブルース・ホーンズビー。
2019年発表新作オリジナル・アルバムは、幻想的かつ叙情的な世界観を感じさせる意欲的な仕上がりでした。

ブルース・ホーンズビー『Absolute Zero』
(国内仕様CD 日本語解説付 BSMF-8028 2,400円+税)

ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンが共同プロデュース&演奏で参加。
ブレイク・ミルズ、ジャック・ディジョネット、更にポール・サイモンとの共演で話題のyMusicも加わっています。

ロックにジャズ、クラシックが合わさった独特な曲展開&演奏を聴かせる1枚。

今日のこの1曲はラスト10曲目「Take You There (Misty)」。
グレイトフル・デッド楽曲の作詞を多く手掛けたロバート・ハンターによって書かれたナンバー。
ブルースの味わい深い歌声とピアノ、そしてオーケストラ・アレンジが見事に融合していますね。森 陽馬



2019年5月29日(水) 木村充揮 「いい事ばかりはありゃしない」

5月21日に紹介した吾妻光良&The Swinging Boppers以外にも、ブルージーな国内新譜が続々出ています。

ブルーズ・ザ・ブッチャー+うつみようこのアルバムは良かったし、W.C.カラスとChihanaを中心にしたユニットWILD CHILLUNも豪放なブルース・ロックでかっこよかったし、T字路sの活躍ぶりもうれしいですね。

更に甲本ヒロト(クロマニヨンズ)と内田勘太郎(憂歌団)によるブルース・ユニット、ブギ連の1stが6月発売決定!
日本ブルース・ブーム再来しちゃうかも!?

そんな中、忘れちゃいけないのがこの人! 木村充揮!
彼の魅力が詰まったライヴ盤が2枚組CDで出ました。

木村充揮『ザ・ライヴ!』
(国内2枚組CD EDCE-1031 4,000円+税)

2018年4月下北沢のライヴハウス(風知空知、440、ラカーニャ)で行われた公演から厳選された22トラック。
藤沼伸一、三宅伸治、梅津和時、有山じゅんじがゲスト参加。

今日のこの1曲は、RCサクセション(忌野清志郎作)「いい事ばかりはありゃしない」カヴァーを。
三宅伸治&梅津和時が参加し3人交互にリードを取ってます。
<天使のダミ声>充揮さんの歌声、やっぱり最高! 森 陽馬



2019年5月30日(木) Nils Lofgren 「Remember You」

ブルース・スプリングスティーン&E・ストリート・バンドのギタリストであり、ニール・ヤング&クレイジー・ホースのライヴにも近年参加(ニール&クレイジー・ホース名義で新作出すという噂)しているニルス・ロフグレン。

彼らしい武骨なアメリカン・ロック魂溢れる2019年発表快作が出ました。

ニルス・ロフグレン『Blue With Lou』(ブルー・ウィズ・ルー ~ルー・リードに捧ぐ)
(国内仕様CD ニルス・ロフグレン本人による解説日本語訳付 MSIG-1284 3,000円+税)

ニルスと彼の妻エイミー・ロフグレンによる共同プロデュース。
アンディ・ニューマーク(Ds)、ケヴィン・マコーミック(B)と自身のスタジオに数週間泊まり込み制作した入魂盤です。

ルー・リードとの共作6曲、彼へ捧げたタイトル曲、トム・ペティへの想いが込められた⑪「Dear Heartbreaker」もNiceですが、今日のこの1曲はラスト12曲目「Remember You」を。

ニルスが飼っていた犬GROUCHO(グルーチョ)が14歳で亡くなったのをきっかけに作られた楽曲。
出会えたことへの感謝、別れの哀しさが伝わってくる味わい深いナンバーです。森 陽馬



2019年5月31日(金) キャロル・キング 「ビリーヴ・イン・ヒューマニティ」(ライヴ)

1970年代に撮影されたキャロル・キングの貴重なライヴ映像がDVDとして発売されました。

キャロル・キング『ライヴ・アット・モントルー 1973』
(国内DVD+CD 英文和訳解説&萩原健太氏による解説付 YMBA-10872 4,600円+税)

スイスのモントルーで行われたジャズ・フェスティヴァルに出演した際の映像で、1973年7月15日モントルー・パヴィリオンでの収録。
64分、全18曲。その内10曲が当時新作として発売されたばかりのソロ第5作目のコンサプト・アルバム『ファンタジー』から、という珍しいセットリストのライヴです。

まず前半は彼女だけのピアノ弾き語りで「空が落ちてくる」、「スマックウォーター・ジャック」、「ホーム・アゲイン」、「ビューティフル」、「アップ・オン・ザ・ルーフ」(ホーン3人入り)、「イッツ・トゥ・レイト」の6曲。
後半は『ファンタジー』のアルバム13曲中10曲をバンドと共に、そしてアンコールは再び弾き語りで「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」、「ナチュラル・ウーマン」といった内容です。

バンドはデヴィッド・T・ウォーカー(ギター)、ハーヴィー・メイスン(ドラムス)、チャールズ・ラーキー(ベース)、クラレンス・マクドナルド(エレクトリック・ピアノ)、ボビー・ホール(パーカッション)、トム・スコット、ジョージ・ボハノンら6人のホーン・セクション。メンツのわりには地味目な音ですが、このバックでキャロル・キングのライヴを見ることができるのはとてもうれしいことです。

31歳のキャロルは長かった髪をショートにしてとてもキュート。
ちょっとパーマがかかり過ぎかな、と思ってしまいましたが...。
なおこのDVDにはほぼ同内容のCDも付いているので、何かしながらのナガラ聴きもOKです。森 勉




これより以前に掲載した“今日のこの1曲”は、
 “今日のこの1曲 アーカイヴス” コーナーにてご覧になれます。■



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